JP3984467B2 - 水ジェット推進艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水ジェット推進艇に関する。
【0002】
【従来の技術】
水ジェット推進艇は、エンジンで駆動されるインペラを備えたジェット推進機の噴射ノズルから水を後方に噴射することにより前進するものであり、跨座式シートに跨った操縦者が操舵ハンドルを操作してディフレクターを左右に揺動させることにより旋回するようになっている。
【0003】
かかる水ジェット推進艇には、艇体の両側部後方にスポンソンが取付けられていて、艇体が低速で直進するときにはスポンソンの下部が水中を進行することにより艇体の直進性が確保される一方、艇体が旋回するときには片側のスポンソンが水面をグリップすることによって艇体の横滑りを防止してハードなコーナリングでの安定性が確保されるようになっている(例えば、特開2001−233288号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、水ジェット推進艇を滑走(プレーニング)させている時に、エンジンが停止またはアイドリング状態になったような場合には、噴射ノズルから水が後方に噴射されなくなって、操舵ハンドルを操作してディフレクターを左右に揺動させても旋回することが困難になるが、このような場合でも旋回できるようにすることが要望されている。
【0005】
本発明は、上記要望を満たすためになされたもので、エンジンが停止又はアイドリングの状態で艇体が滑走しているときにおける艇体の旋回性が向上する水ジェット推進艇を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンで駆動されるジェット推進機のインペラで発生する噴流を噴射ノズルから後方に噴射することにより推進する水ジェット推進艇において、艇体は、ハル部材がV型であり、この艇体の両側の船側板の下部に取付けられたスポンソンの外面側下部に、長さ方向に延在するウイング部が一体に形成され、このウイング部は、チャインの水平ラインよりも下方位置で外側方に突出されているとともに、水平ラインに対して所定の角度で上向きに傾斜されている平坦面を有していることを特徴とする水ジェット推進艇を提供するものである。
【0007】
本発明によれば、艇体が滑走しているときにエンジンが停止又はアイドリングの状態になった場合に、操縦者がその身体を旋回したい方向に傾けると、重心位置が移動して艇体がその方向に傾き、傾いた側のスポンソンのウイング部が水中に没するので、艇体の傾いた側の水抵抗が増すことで艇体がその方向へスムーズに旋回するようになる。また、スポンソンにウイング部を一体に形成するだけで良く、機械式装置や電子式装置が一切不要であるので、コスト安で信頼性も高くなる。なお、水ジェット推進艇は、艇体の下部が水中に没して、水を掻き分けながら航走する排水量航走(トローリング)状態から、水面に対して艇体が大きい傾角の前上がり姿勢で航走する遷移航走状態を経た後に、水面に対して艇体が小さい傾角のほぼ一定の前上がり姿勢で航走する完全滑走航走(プレーニング)状態となる。本発明の滑走とは、完全滑走航走は勿論、遷移航走をも含むものである。
【0008】
また、上記スポンソンは艇体の船側板の下部に取付けられ、このスポンソンのウイング部は、チャインの水平ラインよりも下方位置で外側方に突出しているから、滑走中に艇体を傾けた時にウイング部が水中に没しやすくなる。
【0009】
さらに、ウイング部は、水平ラインに対して所定の角度で上向きに傾斜されている平坦面を有する構成であるから、直進滑走中にウイング部が水中に没しにくくなる。
【0010】
また、艇体は、ハル部材がV型であるから、艇体を容易に傾けることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0012】
図1〜図3に示すように、水ジェット推進艇1は、正面視でV型のハル部材2とデッキ部材3とがその周縁部で接合されて艇体4が構成されて、この艇体4の内部の前後方向のほぼ中央位置に形成されたエンジンルーム5には、クランク軸16が艇体4の前後方向に延在するようにハル部材2に設置されたエンジン6が搭載され、このエンジン6の前方には燃料タンク7が設置されるとともに、エンジンルーム5の後方のポンプ室9にはジェット推進機10が設置されている。
【0013】
デッキ部材3の前上部には操舵ハンドル12が設けられ、このデッキ部材3の後上部にはシート台13が設けられ、このシート台13の上部には前後方向の跨座式シート14が着脱可能に取付けられている。
【0014】
エンジン6のクランク軸(出力軸)16にはカップリング17を介してインペラ軸18が連結され、このインペラ軸18には、ジェット推進機10のインペラハウジング10aに収容されたインペラ(不図示)が取付けられ、このインペラハウジング10aの後端部に噴射ノズル19が設けられ、この噴射ノズル19にディフレクター20が取付けられている。
【0015】
そして、エンジン6で駆動されるジェット推進機10のインペラで発生した噴流を噴射ノズル19から後方に噴射することにより艇体4が推進されるとともに、跨座式シート14に跨った操縦者が操舵ハンドル12を操作してディフレクター20を左右に揺動させることにより旋回されるようになる。
【0016】
上記艇体4の両側後部には、合成樹脂若しくはアルミ合金製のスポンソン(スタビライザ)31がそれぞれ取付けられていて、この各スポンソン31は、艇体4が低速で直進するときにはスポンソン31の下部が水中を進行することにより艇体4の直進性が確保される一方、艇体4が旋回するときには片側のスポンソン31が水面をグリップすることによって艇体4の横滑りを防止してハードなコーナリングでの安定性が確保されるようになっている。なお、図中の符号L1は艇体4が静止状態又は低速航走での喫水線を表し、符号L2は艇体4が高速航走による滑走状態での喫水線を表している。
【0017】
上記スポンソン31は、図4および図5に詳細に示すように、ハル部材2の船側板2aの下部外面に当てがわれ、この下部内面に、スポンソン31との間にワッシャ34aを介してブラケット32が当てがわれて、このブラケット32は、複数本のボルト33でワッシャ33aを介して船側板2aに予め固定されるとともに、スポンソン31は、複数本のボルト34で船側板2aを介してブラケット32に固定されるようになる。
【0018】
上記スポンソン31の外面側下部には、長さ方向に延在して外側方に突出するウイング部31aが一体に形成されている。
【0019】
このウイング部31aは、船側板2aと船底板2bとの境界であるチャイン2cの水平ラインH1よりも下方位置で外側方に突出するように設定されるとともに、図5から明らかなように、水平ラインH2に対して所定の角度θで上向きに傾斜されている平坦面31bを有している。
【0020】
上記ウイング部31aの突出量Tは、例えば約25mm(1インチ)〜約75mm(3インチ)程度の範囲であるのが好ましく、約50mm(2インチ)程度が最も好ましい。また、角度θは、0〜40度程度の範囲であるのが好ましく、約20度程度が最も好ましい。さらに、ウイング部31aの肉厚tは、約40mm程度が好ましい。上記ウイング部31aは、スポンソン31の長さ方向に連続している必要は必ずしもなく、中間で切れたような形状であっても良い。
【0021】
上記のような水ジェット推進艇1であれば、艇体4が滑走しているときに、ストップスイッチ等を押してエンジンを停止したり、スロットルレバーを放してアイドリングの状態になった場合に、跨座式シート14に跨った操縦者がその身体を旋回したい方向、例えば左側に傾けると、重心位置が左側に移動して艇体4が左方向に傾き、傾いた側のスポンソン31のウイング部31aがそのときの水面L3(図5参照)から水中に没するようになる。したがって、艇体4の左側の水抵抗が増すことで艇体4が左方向へスムーズに旋回するようになる。逆に、操縦者が身体を右側に傾けると、艇体4が右方向へスムーズに旋回するようになる。
【0022】
また、スポンソン31にウイング部31aを一体に形成するだけで良く、機械式装置や電子式装置が一切不要であるので、コスト安で信頼性も高くなる。
【0023】
さらに、スポンソン31のウイング部31aをチャイン2cの水平ラインH1よりも下方位置で外側方に突出させているから、滑走中に艇体4を傾けた時にウイング部31aが水中に没しやすくなるとともに、ウイング部31aを水平ラインH2に対して所定の角度θで上向きに傾斜させているから、直進滑走中にウイング部31aが水中に没しにくくなる。さらにまた、上記艇体4のハル部材2がV型であるから、フラット型と比較して操縦者が艇体4を容易に傾けることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、艇体が滑走しているときにエンジンが停止又はアイドリングの状態になった場合に、操縦者がその身体を旋回したい方向に傾けると、重心位置が移動して艇体がその方向に傾き、傾いた側のスポンソンのウイング部が水中に没するので、艇体の傾いた側の水抵抗が増すことで艇体がその方向へスムーズに旋回するようになる。また、スポンソンにウイング部を一体に形成するだけで良く、機械式装置や電子式装置が一切不要であるので、コスト安で信頼性も高くなる。
【0025】
また、スポンソンは艇体の船側板の下部に取付けられ、このスポンソンのウイング部は、チャインの水平ラインよりも下方位置で外側方に突出しているから、滑走中に艇体を傾けた時にウイング部が水中に没しやすくなる。
【0026】
さらに、ウイング部を水平ラインに対して所定の角度で上向きに傾斜されている平坦面を有する構成であるから、直進滑走中にウイング部が水中に没しにくくなる。
【0027】
さらにまた、艇体のハル部材がV型であるから、艇体を容易に傾けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水ジェット推進艇の側面図である。
【図2】 水ジェット推進艇の正面図である。
【図3】 水ジェット推進艇の要部側面図である。
【図4】 スポンソンの斜視図である。
【図5】 スポンソンの取付け部分の断面図である。
【符号の説明】
1 水ジェット推進艇
2 ハル部材
2a 船側板
2c チャイン
4 艇体
6 エンジン
10 ジェット推進機
11 インペラ
12 操舵ハンドル
19 噴射ノズル
31 スポンソン
31a ウイング部
H1,H2 水平ライン
θ 角度
Claims (1)
- エンジンで駆動されるジェット推進機のインペラで発生する噴流を噴射ノズルから後方に噴射することにより推進する水ジェット推進艇において、
艇体は、ハル部材がV型であり、この艇体の両側の船側板の下部に取付けられたスポンソンの外面側下部に、長さ方向に延在するウイング部が一体に形成され、このウイング部は、チャインの水平ラインよりも下方位置で外側方に突出されているとともに、水平ラインに対して所定の角度で上向きに傾斜されている平坦面を有していることを特徴とする水ジェット推進艇。
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