JP3983280B2 - 乳ガンの治療のためのリガンドアンタゴニスト - Google Patents

乳ガンの治療のためのリガンドアンタゴニスト Download PDF

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Description

発明の背景
発明の分野
本発明はポリペプチドリガンド及びレセプター相互作用の領域に関するものであり、特に乳ガンの治療のためのアンタゴニストの使用に関するものである。
背景技術の説明
リガンド誘導レセプターオリゴマー化は、細胞外リガンド結合領域を含むチロシンキナーゼレセプターという大きな群へのシグナル導入の機構として提案されてきた(総説についてはYarden et al., Ann. Rev. Biochem. 57:443(1988)及びUllrich et al., Cell 61:203(1990)を参照)。これらのモデルにおいて、レセプター(R)あたりのホルモン1分子(または1サブユニット)(H)の結合はH22複合体の生成を誘発すると考えられてきた。例えば架橋および非解離的電気泳動の研究は、表皮成長因子(EGF)はEGFレセプターの二量化とそれに続く細胞内チロシンキナーゼの自動燐酸化と活性化を促進することを示唆している(Shector et al., Nature 278:835(1979);Schreiber et al., J. Bio. Chem.258:846(1983);Yarden et al., Biochemistry 26:1434(1987);Yarden et al., Biochemistry 26:1443(1987))。インシュリンレセプター(Kahn et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U. S. A. 75:4209(1978);Kubar et al., Biochemistry 28:1086(1989);Heffetz et al., J. Biol. Chem. 261:889(1986)、血小板由来成長因子(PDGF)レセプター(Heldin et al., J. Biol. Chem. 264:8905(1989);Hammacher et al., EMBO J. 8:2489(1989);Seifert et al., J. Biol. Chem. 264:8771(1989))及びインシュリン様成長因子(IGF−I)レセプター(Ikari et al., Mol. Endocrinol. 2:831)を含む他のチロシンキナーゼレセプターの研究は、レセプターのオリゴマー化は生物学的効果と固く結ばれていることを示している。他のグループは最近、細胞外結合領域との複合体としてポリペプチドホルモンを結晶化した(Lambert et al., J. Biol. Chem. 264:12730(1989);Gunther et al., J. Biol, Chem. 265:22082(1990))。しかし、これらの及びその他のレセプターにおけるリガンド誘導による変化の構造的摂動と必要性の詳細な分析は、これらの膜関連系の複雑さと高度に精製した天然または組換えレセプターの適当な量の不足のために妨げられている。
精製されたレセプターが入手できれば、ホルモン−レセプター複合体の性質が認識されるようなアッセイ方法が構築される。アメリカ特許第5057417号においてはhGH結合アッセイが、組換えhGHレセプター(hGHbp)またはhGH結合蛋白の細胞外領域と結合するため低温のhGHとの125I−hGHを用いて行われ、生じた複合体をポリエチレングリコールを添加してhGHbpに対する抗体で処理し得られた複合体を沈澱させている。これらの免疫沈澱アッセイはhGHがhGHbpと1:1の複合体を形成していることを示唆する。この免疫沈澱アッセイは、結合した125I−hGHの量を正確に検出するが、1:1のモル比の指示は不正確である。
hGHレセプターおよび結合蛋白のために種々の固相アッセイが用いられている。そのようなアヅセイは、結合hGH量を検出するが、hGHのレセプターに対するモル比率は検出しない。hGHレセプターを含む膜分画または固相の結合アッセイは、活性レセプターの総量及び/または内因性hGH結合量の検出ができないのでhGHとレセプターのモル比の決定には適当でない。EGFにおけるような過去の研究に基づき、hGH−レセプター複合体はH22テトラマーであろうと考えられている。
ヒトの肝臓からクローニングしたhGHレセプター(Leung et al., Nature 330:537(1987))は、単一の細胞外領域(約28kD)、貫膜セグメント及び公知のチロシンキナーゼや他の蛋白と相同でない細胞内領域(約30kD)を持っている。しかしながら、hGHレセプターの細胞外領域部分はプロラクチンレセプターの細胞外領域と構造的に関連し(Boutin et al., Cell 53:69(1988))そして少なくとも8コの他のサイトカイン及び関連するレセプターと広義に関連している。Escherichia coli内で発現するhGHbpは1リットルあたり数十ミリグラム程度分泌される(Fuh et al., J. Biol. Chem. 265:3111(1990))。高度に精製したhGHbpは、血清中に見いだされる天然のhGHbpに比べhGHに対して同等の特異性と高度の親和性(KDは約0.4nM)を保持している。
hHGは、胎盤性ラクトゲン、プロラクチン及びその他の成長ホルモンの遺伝子的および種的変異型を含む相同なホルモン類の一員である(Nicoll et al., Endocrine Reviews 7:169(1986))。その類の中でhGHは広い種特異性を持ち、そしてクローン化した体因性の(Leung et al., Nature 330:537(1987))またはプロラクチンレセプター(Boutin et al., Cell 53:69(1988))の何れかと結合する点において特異的である。hGHにクローン化した遺伝子はEscherichia coli中の分泌形態として発現され(Chang et al., Gene 55:189(1987))そのDNA及びアミノ酸配列が報告されている(Goeddel et al., Nature 281:544(1979);Gray et al., Gene 39:247(1985))。hGHの三次元構造はまだわかっていない。しかしブタの成長ホルモン(pGH)の三次元折りたたみパターンは適度の解決と精製で報告されている(Abdel-Meguid et al., Proc. Natl. Acad, Sci. U. S. A. 84:6434(1987))。:hHGレセプターと抗体結合部位は、同族体スキャニング突然変異誘発で同定されている(Cunningham et al., Science 243:1330(1989))。N−端末アミノ酸で欠失または変異させた成長ホルモンは公知である。次を参照せよ。Gertler et al., Endocrinology 118:720(1986);Ashkenazi et al., Endocrinology 121:414(1987);Binder, Mol. Endo. 7:1060(1990);WO 90/05185。hGHのアンタゴニスト変異型はChen et al., Mol. Endo. 5:148(1991)とそこに引用の文献ならびにWO 91/05853に記載がある。hGH変異型はCuningham et al., Science 244:1081(1989);Science 243:1330(1989)に開示されている。
多くのポリペプチドリガンドとレセプターとの相互作用の様式は明確でないので、そのようなリガンドのアミノ酸配列変異型を作り出して所望の性質を得ることは困難である。本質的に、本技術においては変異型を無作意に、つまり幾つかの場合には類似の作用をもつリガンドや動物同族体の相同性分析から、またはフラグメント例えばトリプシン消化フラグメントの分析からの案内によって導いている。ついで本技術は、所望の活性たとえばアゴニストまたはアンタゴニスト活性の候補となるべきものをスクリーニングする。このスクリーニング方法は、例えば形質転換動物を使ったりして(WO 91/05853)長期間と高い経費がかかる。候補品の選択の効率化の改良の方法が必要である。特にアンタゴニストやアゴニストとしての候補品に焦点をあてる方法が必要とされている。アンタゴニストとは天然のリガンドの生物学的活性を阻害しまたは拮抗する物質であり、一方アゴニストとは天然のリガンドよりもそれ自体大きな活性をもち但しそれ自体は生物学的活性をもたないものである。
プロラクチン(PRL)及び成長ホルモンが乳ガンの発達と進行に役割をもっていることは実験動物で良く確立されている(Tornell et al., Int. J. Cancer 49:114(1991))。例えば高い血清レベルの成長ホルモンは乳ガンの形成を誘発し(Tornell, id.)、いっぽう成長ホルモンの循環レベルの減少は乳ガンの抑制と関連している(Phares et al., Anticancer Res. 6:845(1986))。高い血清レベルの乳腺刺激ホルモンは若干の研究では乳ガン患者で見いだされているが(Maddox et al., Brit. J. Cancer 65:456(1992))、ほかの研究ではそうではない(Love et al., Cancer 68:1401(1991))。乳ガンの生体組織検査の40−70%はプロラクチンレセプターの存在が陽性である(Bonneterre et al., Cancer Res. 47:4724(1987);Murphy et al., Cancer Res. 44:1963(1984))。
培地におけるヒトの乳ガン細胞のほとんどはプロラクチンレセプターを含んでいる。実際、乳ガン細胞系の大多数は2−10倍のプロラクチンレセプターを過剰発現している(Shiu, ”Prolactin, Pituitary Hormones, and Breast Cancer,”in Hormones and Breast Cancer, Pike et al., eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1981))。乳腺刺激ホルモンは培地においてヒト乳ガン細胞系MCF−7の成長を誘導することが見いだされている(Biswas et al., Cancer Res. 47:3509(1987))。T47D及びMCF−7ヒト乳ガン細胞系は共に、ヌードマウスでの固形腫瘍として成長するとプロラクチンおよび成長ホルモンに感応する(Welsch et al., Cancer Lett. 14:309(1981))。T47D及びMCF−7は何れも高いレベルのプロラクチンレセプターを含んでおり、しばしば乳腺刺激ホルモンや乳ガンの関連性のためのモデルとして用いられる(Shiu, id.)。
従って本発明の目的は、アゴニストまたはアンタゴニストポリペプチドリガンドの効率的な選択のための改良された方法を提供することである。
他の目的はリガンドレセプターと1:2の逐次複合体を形成するリガンドを検出する方法の提供である。
別の目的は、そのようなリガンド−レセプターの1:2複合体の形成を阻害しまたは促進する能力のある候補物質をアッセイすることである。
追加的な目的は、アゴニストやアンタゴニストとして作用する能力のあるポリペプチドリガンドのアミノ酸配列変異型の提供である。
他の目的は、ガン細胞による例えばプロラクチンレセプターのような成長ホルモンレセプターまたは成長ホルモン類似体レセプターの発現を特徴とする、乳ガンまたはその他のガンの治療の提供である。
本発明のその他の目的、内容や特徴は次の説明や請求の範囲を検討することから更に明瞭となるであろう。
発明の概要
予期しなかったことに我々は次のことを見いだした。すなわち成長ホルモン及びそれに属する一群の配座リガンドは、最初のリガンド部位(部位1)が一つのレセプターと結合し次いで第2の部位(部位2)が他のレセプター分子と結合して1:2複合体を生じる、という具合にレセプターと1:2複合体を形成する能力があることを見いだした。本発明の適用されるリガンドは、非ヘリックス(らせん)アミノ酸配列で両端が分離され終わっている4つの両親媒性の逆平行アルファヘリックス領域を含む単量体リガンドである。以下に詳細に説明するように、部位1及び/または部位2へアミノ酸配列変異型を導入することにより、該リガンドのアゴニストまたはアンタゴニストアミノ酸配列変異型を効果的にデザインすることが、成長ホルモン、プロラクチン及び胎盤ラクトゲンについての我々の研究との類推で可能となった。
2つの部位の複合体形成アッセイは、リガンドアゴニストまたはアンタゴニストである物質のスクリーニングに用いられる。そのような物質は本質的に限定がなく、かつリガンドや結合蛋白またはレセプター変種のアミノ酸配列変種と同様に有機の非蛋白化合物を含むものである。
そのようなアルファヘリックスリガンドの新規なアミノ酸配列変種もまた記載される。特に、リガンドの部位2でのレセプターとの親和性を減少させまたは消滅させる部位2におけるアミノ酸配列変異から成るところのポリペプチドリガンドのアンタゴニストが提供される。理想的にはリガンドアンタゴニスト類似体は、部位2のレセプター親和性が低いかまたは無く、そして部位1のレセプター親和性が高い。
更には、一方または両方の部位でのリガンド親和性を上昇する部位1または/及び部位2で変異をもつアゴニストリガンドアミノ酸配列変種が提供される。好ましい実施態様においては両方の部位の速度定数は、2量体複合体のリガンドの平均滞留時間が所望の反応をおこす複合体に必要な時間より大きいか同等であるように選択される。リガンドのポリペプチドアゴニスト変種は以下から成る方法で同定される。すなわち(a)変異をリガンドに導入してアゴニスト候補を作成する;(b)候補がその第一のリガンド部位を介してレセプターに結合する親和性を決定する;(c)候補がその第二のリガンド部位を介してレセプターに結合する親和性を決定する;そして(d)もしアゴニストが天然のリガンドより大きい親和性で第一および第二の部位の一方または両方で結合したときは、そのアゴニストを候補として選択する。
本発明によれば、通常、まず第一のリガンド部位を介してレセプターポリペプチドに結合し次いで第一部位とは別の第二のリガンド部位を介してレセプターポリペプチドの第二のコピーに結合するポリペプチドリガンドのアゴニストまたはアンタゴニストを検出する方法を提供する。その方法はリガンドの第二のレセプター結合部位における、レセプターへのポリペプチドリガンドの親和性に対する候補品の効果を決定することから成る。部位1の相互作用は、上述のMab5のような部位2をブロックする抗体を用いる免疫沈澱で決定される。もしくは実質的にレセプターと1:1の複合体のみを形成する野生型のリガンドの量を決定し、次いでその比率でレセプターと天然のリガンドと拮抗する候補品の能力を決定する。部位2の相互作用は三元複合体を形成する候補品の能力を調べることによりアッセイされる。
候補品がリガンドのポリペプチド類似体であるときは、部位2での類似体の結合の欠如をアンタゴニスト活性と積極的に関連づけることができる。レセプター部位2に対して天然のリガンドより大きい親和性で結合する能力は、アゴニスト活性と関連している。アンタゴニスト及びアゴニスト活性は共に、天然のリガンドよりも大きい親和性で部位1に結合する候補の能力と積極的に関連している。小さい分子や他の非類似の候補は、部位1及び/または部位2への天然のリガンドの結合を促進または抑圧する能力についてアッセイされる。アンタゴニストは、部位1及び/または部位2、但し好ましくは部位2での天然のリガンド−レセプター結合を阻害する能力についてスクリーニングされる。これは、たとえは部位2不能のリガンド変異型をポジティブコントロールとして用いることにより、部位1でリガンドレセプター結合を抑圧せず部位2で阻害するアンタゴニストの同定を許容する。
候補品の効果は、天然のポリペプチドリガンドの存在下、または天然のポリペプチドリガンドの活性と比較して測定することが出来る。最初のやりかたにおいては、野生型リガンドによるレセプター相互作用における候補品の効果が測定される。次の場合においては野生型リガンドの活性が正の対照として使用され、候補品(通常はリガンドのアミノ酸配列変異型)のレセプター結合特性を野生型リガンドの不存在下に測定する。しかし一般的にはアゴニストやアンタゴニスト候補のアッセイは、野生型リガンドの存在下での競合アッセイで最も良く行われる。
我々はまたGHレセプターを結合する能力のある選択された抗体はGHのアンタゴニストまたはアゴニストとして作用することを決定した。従って成長ホルモンの欠乏または過剰の治療におけるGHのアンタゴニズムやアゴニズムの方法が提供される。
本発明の他の観点は、細胞を成長ホルモン類似体の効果的量と接触させ、プロラクチンレセプターを発現する細胞の成長を阻害する方法を提供する(ここで、該類似体はプロラクチンレセプターと結合するアンタゴニストである)。
本発明の他の観点では、患者に成長ホルモン類似体の効果的量を投与し、患者の乳ガンの治療方法を提供する(ここで、類似体はプロラクチンレセプターと結合するアンタゴニストである)。
【図面の簡単な説明】
図1a及び1b。図1a:hGHとhGHbpの間の複合体の結晶。このhGH/hGHbp複合体は、10mMトリス(pH8.0)と100mMのNaClで平衡化したセファデックスG75−100サイズの排除カラム上で複合体を精製することによって得られる。複合体を含む高分子量のピークは、遊離のhGHから分離し、プールし、濃縮する。成分は、1ml/minの流量で線形アセトニトリル勾配でアイソクラチックに溶離する(図1b)。勾配は破線で示した矢印のところで開始する;214nmでの吸収を実線で示す。
図2。4:3、3:1、2:1、1:1及び0.5:1に対応する種々の比率のhGHbpとhGHのゲル濾過クロマトグラフィーである。各々の混合物におけるhGH濃度(hGHが各々20μM及び40μMである場合の1:1及び0.5:1の比率のときを除き10μMに固定)とhGHbp濃度は、280nmでの吸収に基づく。セファローズ12FPLCカラム(Pharmacia)に100マイクロリットルの蛋白サンプルを加え、そして溶離した。ピークは280nmにおける吸収で監視した。
図3。複合体が種々の抗モノクローナル抗体で沈澱されるhGHbpへのhGHの結合のスキャッチャード分析である。
図4。hGHbpと結合するため作り出されたhGHbpとヒトプロラクチン(パネルA)もしくはヒト胎盤ラクトゲン(パネルB)の変種との2:1比率またはhGH(パネルC)のゲル濾過クロマトグラフィー。
図5。hGHとhGHbpとの滴定熱量測定。hGHbp(10mMトリス(pH:8.0)中15μM)を1.37mlの滴定セル(MC2滴定熱量計、Microcal Incorporated, Northampton, MA)に入れ、25℃で平衡化する。この溶液にhGH(10mMトリス(pH:8.0)中437μM)を4μL増加分加える。各々の注入はそれらの間に5分間の間隔をとって8秒間おこなう。
図6。hGHとhHGbpを1:1の比率で混合する前(−)及び後(..)のそれらの個々のスペクトルの和の遠紫外部(パネルA)または近紫外部(パネルB)における円二色性スペクトル。遠紫外および近紫外スペクトルは、各々0.01cmと1.0cmのセル中で0.2nmおよび0.5nmの間隔で集めた。
図7。hGHとhGHbpを1:1の比率で混合する前(−)及び後(..)のそれらの個々のスペクトルの和の蛍光発光スペクトル。
図8。hGHの順次の添加による10nMS237C−AFのホモクエンチング。培養後、島津RF5000U分光蛍光光度計を用い490nmの励起1と512nmの発光1(バンド幅は各々3nm及び10nm)で蛍光測定を行った。
図9。S237C−AFのhGH誘導二量化のIC50測定。結合緩衝液(20mM Tris.HCl pH7.5, 0.1% BSA, 0.02% NaN3)中のS237C−AF(図8に記載のようにして製造)の系列的希釈(3倍)を20nMから0.08nMの範囲で行い、1.0mlのアリコートをアッセイ管に分配した。同様にhGHを系列的に但し1mMから0.004mMの範囲で希釈した。hGH希釈のアリコート10ml(hGHとS237C−AFモル比は1:2)と緩衝液のみをアッセイ管を含むS237C−AFに加え、混合し、そして暗所で25℃に5時間かけて平衡化した。平衡化のあと、励起バンド幅を10nMとした以外は前述と同様(図8)にして蛍光を測定した。IC50値を、4パラメーターの曲線適合から得た半極大値D F/Foを与えるhGH濃度として計算した。6つの独立した実験の平均から0.54(±0.14)というIC50値を計算した。
図10。過剰のhGHまたはhGH変異体によるhGH誘発S237C−AF二量化の反転。S237C−AFとhGHを各々10nM及び5nMの濃度まで結合緩衝液で希釈し、1.0mlのアリコートをアッセイ管に入れる。次いでhGH、変異体または緩衝液の系列的希釈のみを加え、混合物を暗所で25℃に5時間培養して平衡化させ、図1で述べたようにして蛍光を測定する。データの点は3回の測定の平均値で、1はhGH、sはK172A/F176A、nはhPLリクルートを表す。誤差のバーはSEMを与える。
図11。hGH(hGHbp)2の結晶構造。太い線の中央の上部はhGH分子を表す。このhGH分子は2つのhGHbp分子(一つは左側、そしてもう一つは右側)に結合する。これらhGHbp分子の各々は、単一鎖で結合した2つの領域をもつ;上方の領域はhGH分子と同じ高さであり、他の領域は垂直で図の下方へと突出している。hGHbpのこれらの最後の2つの領域は最下部で互いに接触している。
図12。成長ホルモンレセプターに特異的な抗体に対応する体重増加。モノクローナル抗体であるMab263を8匹のラットに投与(1.05kg/kg)し、対照群には希釈剤のみを投与する。毎日の体重を測定する。
図13。hGH−mG−CSFハイブリッドレセプター含有の、hGH−誘発FDC−P1細胞の増殖(Bass et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 88:4498(1991))。細胞を、10U/mlのIL−3、10μMのb−メルカプトエタノール及び10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したRPMI1640培地中において37℃、5%CO2で成長させる。細胞をIL−3無しに同じ培地で洗浄しそして、高い濃度のhGHで18時間処理する前に、4x105/ml(1)、2x105/ml(1)及び1x105/ml(n)密度の100μlのアリコート中の96−ウエルのプレートに植える。DNA合成を測定するため、細胞を20μlの培地内で1μCi/ウエルの添加によって[3H]−チミジンでパルスを行う。4時間後、細胞を収集しガラスフィルター上で洗浄する。シンチレーションカクテルの2ミリリットルを添加し、ベックマンLS1701シンチレーションカウンターで計数を行う。各々のデータ点は3回の測定の平均であり、誤差のバーは標準偏差である。
図14。hGH変異型によるhHG−誘発細胞増殖のアンタゴニズム。細胞を図13のようにして作成し、高い濃度の部位1変異体(K172A/F176A)(1)、部位2変異体(G120R)(n)、部位1変異体/部位2変異体の結合増強物(H21A/R64K/E174A/G120R)(n)及び野生型hGH(1)を加えた1nMのhGHで培養する。
図15a、15b及び15c。IL−6アンタゴニストまたはアゴニストを作成における変異に適したヘリックス部位を仮定した車輪状のプロット。これらの図の残基の番号づけはN−末端を前残基として開始していることに注意。
図16。hGH、PRLまたはG120Rに対するT47D細胞の応答。T47D細胞を、示されたホルモン濃度で培養する。細胞濃度は105/mlであり、最終容量は100μlであった。誤差のバーは3回の測定からの標準偏差である。白ヌキのバーは亜鉛の追加のないアッセイを表し、灰色のバーは25μMの硫酸亜鉛でのアッセイを表す。対照はアッセイ培地のみである。
T47D細胞増殖のアゴニスト(A)またはアンタゴニスト(B)としてのhGHまたはG120Rの用量依存的アッセイ。(A)ではhGHまたはG120Rを25μlの硫酸亜鉛と共にまたは無しでT47D細胞で培養し、増殖を3H−チミジンの取り込みによって測定する。(B)においてはT47D細胞を硫酸亜鉛と共にまたは無しで1nMのhGHと共に高い濃度のG120Rで培養する。
図18。MCF−7細胞の、種々のhHG類似体に対する応答。MCF−7細胞を、50μMの硫酸亜鉛と共に(灰色のバー)または無しに(白ヌキのバー)3日間hGH、PRLまたはG120Rと共に培養する。
好ましい実施態様の説明
本発明の方法はアゴニストまたはアンタゴニストポリペプチドリガンドの同定を容易にする。一般的に、本発明は次のように実施される。
まず、レセプターと1:2の3成分複合体となるリガンドを同定するために、リガンドとそのレセプターの会合の化学量論を決める。会合の化学量論は、下記の方法の一つを用いる生理学的条件下でリガンドとレセプターに対する比率を測定して決定される。すなわちX線結晶学、セファローズゲルを用いたサイズ排除クロマトグラフィ、抗体結合研究、走査熱量測定、BIA−コア分析およびCDまたは蛍光スペクトル分析。リガンド−レセプター複合体のX線結晶構造は有用であるが、決して記載の化学量論を決定するに必要なものでない事を了解すべきである。好ましくは、蛍光ホモクエンチング方法は以下に述べるようにして用いられる。この方法においてはレセプターは次のように位置したフルオレセインでラベルされる。すなわちレセプター2分子が滴定で定められたようにリガンドで結合されたとき、フルオレセイン分子は互いにクエンチし溶液のフルオレセインは減少する。ここに記載の技術はそれ自体が公知であり、当業者の技術範囲内にある。
好ましくはレセプターの細胞外領域が化学量論分析で用いられる。すなわち分析は、膜挿入または疎水性会合の能力のない削除されたまたはその他の処理をされたトランスメンブラン領域を持つレセプター変異型と共に試験管内で溶液中で行われる。必要に応じ、細胞質領域もまた削除される。そのようなレセプターは公知であり、組換え細胞培養内で発現しそしてそこから回収できる。
もしレセプターが1コより多いポリペプチド鎖を含有しておれば、好ましくはレセプター製造はレセプターポリペプチド鎖の全てを含有する。また、もしも3成分複合体が2つの異なったレセプター鎖から成っておれば(例えばα及びβ鎖を含むIL−2またはIL−3レセプター複合体の場合;Teshigawa et al.,J. Exp, Med. 165:223(1978)など)、分析は両方の鎖で行われる。この場合、各々のレセプター鎖への結合は連続して一元的にのみ進行する。会合の順序は、異なるレセプター分子が含まれているときは容易に決定される。
幾つかのレセプターは1:2複合体をつくるが、レセプターは各々が1つより多い鎖を含むことがある。もしリガンドが鎖の1コと結合するのみで他のものは結合鎖の適当なコンホメーションの保持に必要でないときは多鎖レセプターの使用は不要であろう;リガンド結合に必要な鎖のみ存在が必要である。
1:2複合体を形成するリガンドは、2つの別の結合部位を介してそれらのレセプターと結合する。レセプター類がまず一つの部位(部位1)にそして次に他の部位(部位2)に、連続的な順序で2つの部位に結合することが見いだされたことが本発明の顕著な特徴である。この逆の順序の発生は見いだされていない。この理解はアンタゴニストリガンドの生成のために特に重要である。第一の部位へのリガンドの親和性が保存される(もし高められるのでなければ)ことは重要である。さもなくばリガンド類似体は全くレセプターと結合しない。その一方、第2の部位の結合の効果的な破壊または阻害はアンタゴニスト活性のための属性である。
本発明によってリガンド結合部位とその添加順序が定められる。部位1と2は、以下に詳しく説明するように候補リガンドのコンホメーションを成長ホルモンのそれと比較することによって同定される。それらはアラニン走査または他の系統的な変異誘発方法、たとえばカセット突然変異、PCR突然変異またはアラニン走査などで更に十分に解決される。コンホメーションの分析は変異型を作成しスクリーニングする前にかなり狭められるべき潜在的部位1と2残基の分野を許容する。
いずれの場合においても、機能的部位1と不能部位2変異を持つリガンド類似体は、それが三元のリガンド:レセプター複合体を形成できないことで同定される。ただしそのような変異型はレセプターと1:1の複合体を形成可能であろう。一方、機能的部位2と不能部位1変異を持つ類似体は、レセプターとは全く結合できないであろう。この決定のために用いるアッセイはポリペプチドの会合の検出に用いるいかなるアッセイであってもよい。ゲル濾過などと同じように以下に示すホモクエンチングアッセイが用い得る。
コンホメーション分析は、両親媒性のαヘリックス性モノマーリガンド類からのリガンド候補の選択性を高める。そのようなリガンドは成長ホルモン、胎盤ラクトゲン及びプロラクチンとコンホメーション的に関連しているので、成長ホルモン構造からの類推によりこれらのリガンドの部位1と2と決定することは簡単である。反語的には、例えばEPO、α−インターフェロン、β−インターフェロン、GM−CSF、G−CSF並びにインターロイキン−2、3、4、6、及び7のようなリガンドの一次アミノ酸配列は、成長ホルモン、胎盤ラクトゲンまたはプロラクチンとあまり類似していない。しかしこれらのリガンド(普通はサイトカインまたはホルモン)が一般のコンホメーション構造原理で分析されるとき(Bazan et al., Immunol. Today 11:350(1991);Chou et al., Biochemistry 13:222(1974))は、それらはある共通の構造特性を持つものである。最も顕著なことはそれらは、各々が実質的に非ヘリックス構造(蛋白端末のN−及びC−端末配列とヘリックスのあいだのループ)によって先行され及び後行されている4つの優位の両親媒性のαヘリックスで特徴づけられている。優位のαヘリックスは典型的には約15−30の残基長さをもっている。それらはN−端末からの順序によりA−Dと命名される。短いヘリックスセグメントは、優位のヘリックスと結合したループとして存在し得る。
このようなリガンド類のαヘリックスは両親媒性である。換言すれば普通それらは、ヘリックスの片側に疎水性残基を、そして反対側に親水性残基を持っている。ヘリックスの各3.6の逐次残基を、ヘリックスはしごの意味においてターン(turn)と命名する。ヘリックスの末端での若干の小さな論争が考えられる。すなわち各々のαヘリックス末端は、用いたアルゴリズムと技術者の判断に応じて約1−3残基の変動があり得る。この種のリガンド類の間の相同性の全体的な欠如にも関わらず、若干の保守的な残基がヘリックスにおいて見いだされ、それらは成長ホルモンと共にリガンドの構造配列を援助するのに用いることが出来る。
成長ホルモンおよび相同のリガンドプロラクチンと胎盤ラクトゲンについての我々の分析は、このグループの4級αヘリックスサイトカイン及びホルモンの部位2は本質的に(a)N−端末からおおむね最初の3〜4ターンまで延びる配列と(b)ヘリックスCのおおむね中央の4〜5ターンから成ることを示した。すなわち部位2は非連続であり、両セグメントは蛋白中で密接しており、その態様でレセプターと相互作用している。部位2領域の片方または両方は変異されている。ヘリックス形の疎水性残基は一般に変異誘発の候補選択の目的のためには無視されるが、時折はそれらは候補の機能的完全性に影響する。加えて、部位2中のすべての残基がレセプター結合に機能的または構造的関与をもつものではないであろう。しかしこの原則の適用は、アンタゴニストまたはアゴニスト活性をスクリーニングの必要のある候補の数を大いに減少するものである。
アンタゴニスト変異型は、以下に詳しく説明するように候補位置にある固有の残基の電荷、疎水性または大きさの実質的変化によって特徴づけられる。これは一般に、問題の残基を置換するか削除することにより達成される。若干の例においては所望の効果は、機能的または構造的に活性な部位2残基の隣接位置へ残基を挿入することで達成可能である。アンタゴニストの生成の目的は、部位2におけるレセプター結合の除去または固有のリガンドに対して少なくとも約2倍減少することである。これは、レセプターとの構造的相互作用(水素結合、塩架橋、疎水性相互作用など)に重要である固有残基の一つまたはそれ以上の特性の劇的な変化によって最も効果的に達成される。そのような残基は接触残基と呼ばれる。または残基は、レセプターと直接接触せずに接触相互作用に関与する残基の適切な位置ぎめに重要な位置で選択される。そのような残基は機能的残基と呼ばれる。
典型的には、約20以下の位置(残基)が部位2変異型の生成に潜在的興味がある(但し疎水性両親媒性残基を除く)。これらのうち各アミノ酸グループの代表的なものだけが候補の創製に用いられる。すなわち、通常、部位2中の各々の残基について、19の天然残基を残した19の変異体のスクリーニングが必要な訳ではない。そのかわりに残基グループの代表的なものが選択される。一般的にこれらのグループは、(a)正に荷電した残基(K,R及びH)、(b)負に荷電した残基(D及びE)、(c)アミド(N及びQ)、(d)芳香族(F、Y及びW)、(e)疎水性基(P、G、A、V、L、I及びM)並びに(f)無電荷の親水性残基(S及びT)である。更に、アンタゴニスト候補を作成するときは、5クラスの代表残基のスクリーニングよりもむしろ、適切な残基におけるいかなる実質的変異型も部位2を無力にするので、典型的には1−3クラスを選択するだけで十分である。下記の表Iaを参照のこと。最末端の置換は向かい側との結合の選択で生産される。例えばもしも元来の残基がアラニン(少し疎水性)であれば、向かい側の置換基は親水性、嵩高、そして荷電されているグルタミン酸であろう。更に残基が、進化多様性を示すものから選ばれる。すなわち、もし動物種リガンドがhuレセプター部位2に結合しなかったときは、変異型残基は候補として選択される。そのようにしてアンタゴニストを含むような変異体の適切なプールは典型的には約20から約60の部位2変異型を含むであろう。部位2のアゴニストの候補の選択のためには、すこし別の戦略が用いられる。部位1に関する下記の討論を参照のこと。そのようなプールの生産とスクリーニングは不適切な実験を含まず、そして当業者の技術範囲の中にある。
置換アミノ酸の選択はまた、残基がαヘリックス中にあるか非ヘリックス構造の中にあるかを考慮せねばならぬ。もしも残基がヘリックスターンの一部分であれば、置換は好ましくはプロリンやグリシンのような、ヘリックスブレーカーではない。その一方、もしもプロリンやグリシンが野生型ヘリックス中に見られたならば、それらの置換はヘリックスコンホメーションを不安定化しないので自由に置換してよい。
部位1はまた不連続部位でもある。それは(a)ヘリックスAの中央部40%(多分ヘリックスAの部位2のC−端末と重複して)、(b)ヘリックスAとBを結合するループのC−末端2/3rd(好ましくはC−末端1/2)及び(c)ヘリックスDのC−末端1/2(好ましくは1/3)に位置する3つのセグメントから成る。この比率はアミノ酸残基の線形配列を表す。部位2アンタゴニスト変異で用いた戦略と対照的に、部位1領域にある残基は修飾されておらず(アンタゴニストの場合、部位2のみが変異により不能化される)または修飾される場合、部位1への変化は結合を分裂させぬように選択される。その理由は、部位1を不能化することは大抵の実施態様では好ましくないからである。そのかわり、目的は部位1の親和性を約10%から2倍を越えるまで増加させることである。すなわちこれらの領域中の残基は一般的に(削除または隣接挿入よりもむしろ)置換され、そして最初のスクリーニングは阻害決定因子(特に荷電したときに嵩高い側鎖がリガンド−レセプター結合相互作用を阻害または妨害する残基)を同定するためにアラニン走査と共に行われる。いったん阻害残基が同定されると、アゴニストまたはアンタゴニストの部位1置換は、表Iaの「アゴニスト」置換から選択される。種多様性分析はまたアゴニストの同定においても役に立つであろう。再び、部位1変異のために約20以下の位置が選択される必要があろう。一般に各々の位置における変異は、もとの残基グループの残余のものや、よりかさの低い側鎖を有する、次に最も密接に関連したグループ(表Ia)の残基による置換及び/又は不変である。
Figure 0003983280
例示グループは指定の野生型残基を除く;グループのメンバーは上記の本文中に記載してある。
各々の部位は幾つかの不連続的領域を含んでいるので、変異が領域のどれか一つに導入される。すなわち与えられた部位の各々の領域を変えることは必要でない。部位2のヘリックス領域(ヘリックスAまたはC)好ましくはヘリックスCは、部位2のための好ましい変異誘発位置である。部位1のヘリックス領域(へリックスAまたはD)好ましくはヘリックスDは、部位1のための好ましい変異位置である。典型的には、1つの残基のみが各部位に対して変異される。但し各々の部位の各々の領域中の少なくとも1つの残基(部位2には2コ;部位2には3コ)を変異するのが本発明の範囲に入る。他の実施態様では2つまたはそれより多い残基、通常は約5コまでの残基が各領域で変異される。
変異誘発または変異のためのヘリックス残基の選択は、図15a、b及びcに示すようなヘリックス車輪ダイアグラムの構築によって促進される。これらは通常のやりかたで作製され、部位1及び2のヘリックス部分中の変異の標的位置の同定に有用である。興味ある特定の残基は、ヘリックスコンホメーションを不安定化する残基、非嵩高残基および親水性残基である。
置換、挿入、削除または結合はスクリーニングの候補の作製には有用であるが、残基変更の効果は残基それ自体以外に延び得る。例えばレセプター結合を防ぐ部位2を修飾する方法は、部位2にN−またはO−結合グリコシル化部位を導入することである。この部位は酵母や高級真核細胞中に発現するときにグリコシル化され、そして立体障害により部位2結合と拮抗するであろう。このやりかたの一つの利点は、近隣の嵩高いグループの挿入が結合阻害に要するすべてであるために、部位2構造残基の正確な位置を決定するのに必要なことである。他の利点は循環半減期を調節(たとえば増加)し、また変異型の免疫原性を減少する能力である。従って例えば本発明は、ここにおけるリガンド(例えばIL−2)のヘリックスA及び/またはC(好ましくはC)中のグリコシル化部位の挿入を包含する。
次に候補アゴニスト及びアンタゴニストの安定性を、アゴニストまたはアンタゴニストとして機能的に働くことの候補の能力についてスクリーニングする。そのようなアッセイは通常のもので広く知られている。例えば典型的には、野生型のリガンドの能力と活性を調べるのに用いる通常のアッセイがある。その変わりにまたはそれに加えて、レセプター化学量論を決定するのに用いるアッセイが用いられる(特に、部位2でなく部位1に結合するアンタゴニストを同定するために)。これらのアッセイそれ自体はルーチンなもので、特別の実験を必要としない。
ヒトの成長ホルモンに関して部位2構造残基は、T3、I4、L6、L9、N12、L15、R16、R19、Q22、Y103、N109、D116、E119、G120及びT123を含む。部位2機能的残基はF1、I4、L6、R8、D116及びE119を含む。いかなる残基もこれらの位置のどれか一つまたはそれより多いところで置換され、元来の残基は削除されるか他の残基がその近辺に挿入される。上記したように、または通常はアンタゴニストまたはアゴニスト効果が求められているかどうかに依って同じかまたは別のクラスのメンバーが置換される。これらの位置の一つもしくはそれ以上のところまたはその近傍に導入された変異は、部位2結合に影響するであろう。一般に変異に好ましい残基は、少なくとも1つの変異をN−末端領域/ヘリックスA中の指定領域に、そして他の1つをCヘリックス特にF1、I4、L6、D119及びG120中に含む。hGHアンタゴニストの例は次のものを含む。すなわちI4A/L6A/G120AhGH、I4A/L6A/G120A/T123AhGH、F1A/I4A/G1201/T123AhGH、FlA/I4A/G120FhGH及びF1T/I4F/L6R/G120R/T123DhGH、更には部位1とそのレセプターの親和性を増大するようなE174、H21、R64、K172及び/またはF176のような残基での付加的な変異をもつ既述のいかなるものも含む。例えばE174は好ましくはSに変異され、しかしまた他の実施態様ではG, V, L, I, A, T, D, N, Q, H, K, R, M, F, Y, WまたはPから選択される残基に変異される。F176は好ましくはYに変異され、そして最適にはE174S、R168N、D171S/A及び/またはI179T(ヘリックスせんDからの)と、並びにヘリックスA、F10A、M14W、H18D及びH21Nからと共に用いられる。2つの部位1hGH変異型は、野生型ホルモン(F10A/M14W/H18D/H21N/R167N/D171SまたはA/E174S/F176Y/I179T)であるGHbpと約30倍強固な結合をもつファージミッドスクリーニング(Phageimid Screening)で同定されている。これらの部位での変異は、アゴニストまたはアンタゴニストを生成するために部位2で上述の変異と結合される。アンタゴニストの例は次のようである。すなわちF1A/I4A/F10A/M14W/H18D/H21/G120R, F, Y, W, D, EまたはI/R167N/D171SまたはA/E174SまたはA/F176Y/I179T hGH;F1A/I4A/H21A/R4K/E174A hGH, I4A/G120R/E174A hGHまたはI4A/G120I/E174A hGH。
他のアンタゴニストの実施態様ではI4A、L6A、F1及び/またはG120が削除されこれらの残基の一つまたはそれ以上が削除され、その一方では残る残基は置換され、そして/または一つまたはそれ以上の残基がこれら残基の近傍に挿入される。置換、削除および挿入の結合は有用である。それらの選択は単に成長ホルモンの活性の最適化の問題である。そのような結合は次のものを含む。すなわちF1(D)/I4A/G120I/E174A及びI4(D)/G120(K)/E174A。
部位1と2の位置での変異の効果は一般に結合と親和性を抑圧するであろう。但しこれらの部位での選択的修飾はまたルーチンなスクリーニングで決定される親和性の増大をもたらし得る。例えばE174(S、G、AまたはT)並びに21、18及び64位置での変異はGHbpに対する部位1の親和性を増大することがわかっている。
hGH部位1構造的残基は次のようである。すなわちH18, H21, Q22, F25, K41, Y42, L45, Q46, P61, S62, N63, R64, E66, R167, K168, D171, K172, T175, R178, C189。部位1の機能に影響する側鎖をもつ残基は次のようである。すなわちP5, R6, F10, M14, F54, E56, I58, S62, N63, R64, E66, Q68, Y164, D171, K172, E174, T175, F176, R178, I179, C182, V185。レセプターに対する部位1の親和性を増大する好ましい残基はH21、R64及びE174である。一般的に部位1残基は単に置換されるのみで削除はされずまたその近傍に挿入もされない。更に部位1置換は一般に、表Iaからわかるように、元来の残基と同じかまたは密接に関連する基から取り出される。通常はアゴニストとアンタゴニスト活性は部位1がレセプターに結合することを必要とするので、部位1を重度に動揺させることは好ましくない。にもかかわらず、例えばE174Aのような例外があるので、最適のものを決定するには置換のパネルをスクリーニングするのが望ましい。
他の成長ホルモン中の類似の残基は同様にして容易に同定され修飾される。例えばhGH中のI4は、bGH中のM4に対応する。残基の数の幾つかの変化は、成長ホルモンをhGHの他のアレレや他の種から比較すると存在し得ることに注意せよ。もしも動物GHが相同の位置にヒトGHと同じ残基を含まないならば、置換した残基は動物残基からのものとは異なっており、そして好ましくはその位置でヒトの残基とは異なっている。さもなければ変異誘発のための残基の選択は既述のものと同じやりかたで行われる。
構造分析または分子モデル化は、他のリガンド、すなわち4つの逆平行の両親媒性のαヘリックスを含むモノマーポリペプチドリガンドでの変異のための類似の配列を同定するために用いられる。候補リガンドの構造はChow Fassman分析を用いて決定され、次に各々のリガンドに対する部位1と2中に位置する類似の残基が同定される。幾つかの例においては構造研究は既に発表されており、種々の領域中の残基を成長ホルモンと比較して部位1と2を同定するのが必要なことの全てである。単量体リガンドは、正常の生理学的条件下での循環におけるモノマーとして見いだされたものである。
そのようなリガンドの現在知られている実例は次のものを含む。すなわちEPO、GM−CSF、G−CSF、インターロイキン2、3、4、6及び7、胎盤ラクトゲン及びプロラクチン、α−インターフェロン、β−インターフェロン。これ以外のものは将来同定され得るし、本発明の教示はそれにもまた同等に適用できる。
これらのリガンドのアンタゴニスト候補の生成のために、実質的な変異を次の2つの領域の一つまたは両方に導入する。(a)N−端末からAヘリックスのN−端末1/3へ;(b)Cヘリックスの概ね中央1/2(好ましくは1/3)。これらの領域はhGHの部位2領域に対応する。アゴニストは、あまり嵩高でなく及び/またはあまり荷電してない置換を部位1及び/または2に導入して行われる。最適のアンタゴニストはレセプター結合を防ぐか実質的に削除するために部位2お変異するか、またはそのレセプターに対する親和性を増大するために部位1を変異することによって生成される。ここに見られるように、部位1はアゴニスト及びアンタゴニスト実施態様の両方においてレセプターに対する親和性を増大するために修飾される。
成長ホルモン以外のリガンドのアンタゴニストやアゴニスト変異型が製造されるようなやりかたの説明として、後記の表Ibが参照される。該表はhPRL、IL−2、LK−4、IL−4、IL−6,GM−CSF、G−CSF及びEPOのために必要な部位1と2の主要なそして大切な決定因子を開示する。各部位のヘリックス決定因子は各リガンドのヘリックス領域を同定しそしてhGHの類似領域と比較することによって選択される。同様な分析は、hGH以外のリガンドの構造または機能に貢献する非ヘリックス領域の同定に用いられる。表Ibは、アンタゴニスト変異型はN−端末の部位2領域よりもむしろ部位2のヘリックス残基を標的として好ましくは行われるという本発明者の考えを反映している。しかし部位1と2のための非ヘリックスの類似残基もまた変異し得る。部位1と2のための表Ibの残基は、表示するリガンドのためのレセプターと構造的または機能的に相互作用する少なくとも1つの残基を含むものと信じられる。これは、O−またはN−結合グリコシル化部位を創製するように3つの領域の一つまたはそれ以上で残基を置換するか、その領域または部分を削除することによりその3つのヘリックス領域または部分の1−3コのブロックアラニンスキャニングまたはホモローグスキャンニングで容易に確認できる。いったん領域の活性が確認されると、鍵となる機能的または構造的残基を同定するために残基から残基へのアラニンスキャンニングを用いることは容易である。
表Ibのためのヘリックス構造情報は次から得た。すなわちDeVos et al.,Science 225:306(1992)(hGH);Bazan et al., Immunol. Today 11:350(1991)(hPRL, IL-6, IL-2 and EPO);Lokker et al., EMBO J. 10:2125(1991);Bazan et al., op.cit.(IL-2);Diederichs et al., Science 254:1779(19**)(GM-CSF)。上述のように他のリガンドに関するこのような情報はモデル化、NMRまたは好ましくはX線結晶学的分析で得られる。
表Ibにおける部位の指示は、ヘリックスAの0.07から0.5の長さ及びヘリックスCの0.5から0.8の長さの部位2に基づくコンタクトパッチの計算で得られた。これらの部位は概略と考えられ、適当な精製を必要とするであろう。各々の部位は配列から±1〜5残基に位置しているであろう。
Figure 0003983280
アンタゴニストの作成において標的のヘリックス残基中へ導入される残基または構造はふつうは同じもの(上記参照)でなく、好ましくは置換される残基よりも一段と嵩高いものである。ほかの実施態様では部位残基は削除され、または他の残基(例えばGやPのような、ヘリックスブレーカー)が部位残基の近傍に挿入される。次に候補の一群が作成され、最適の候補を同定するためにここに述べる方法でスクリーニングされる。しかし、たとえ変異型リガンドが元来のリガンドに比べてアゴニストまたはアンタゴニストとして作用できなくてもその変異型はリガンドのために普通に用いられるものとして(ここで変異型は元来のリガンドと概ね同じ活性を保持している)またはレセプターと結合できない免疫試薬(例えば診断試薬)として有用であることは強調されねばならない。
IL−2アンタゴニスト候補の作成の代表的な概要表Icに示す。この概要で表Ibで同定した推定上の部位2残基は、減少したレセプター結合のために好ましくはアミノ酸で置換される。付加的な他の置換もまた表に示してある。
Figure 0003983280
IL−6ヘリックスA、C及びDの代表的なヘリックスホイールプロットは各々図15a、b及びcに示す。ヘリックスAで潜在的に興味あるのはD54、R58、E51、K55、T48、R52、Q56及びS49であり、ヘリックスCにおけるそれはK157、A158、Q155、Q152、K156及びV149である。
hPRLに対する類似のプロットは、修飾部位2のための位置は次の残基であることを示唆する。すなわちH58, D69, H55, D48, N59, V52, D45, Y56, R49(ヘリックスA);K143, Q150, G157, E146, Q164, R153, L160, S142, E149, S163, V145, K152, E148, H166, E156, E159(ヘリックスC)。
興味のあるhPRL部位1(ヘリックスD)残基は次のようである。すなわちC202,R220, S191, K209, N198, L216, R205, S194, N212, H201, C219, E190, H208, Y197, K215, R204, D211, L193, L200, K218。hPRL残基は前配列=1のN−端末Mから番号づけを始める。
無論ここのアゴニストやアンタゴニストはまた、部位1及び/または2に見られるものより付加的な残基中へ変異が導入されるリガンドを含む。例えば候補は免疫親和性精製を促進するために他のポリペプチドと融合され、領域または残基を削除され、例えばリガンドの活性フラグメントをつくるため所望の活性に関与せず正当なコンホメーションの保持に不要なものを置換または挿入し、または通常のやりかたで変異される。
リガンドがレセプターに結合するKa、すなわち親和性定数は、問題の部位でレセプターからリガンドが解離する速度(「オフ」の速度)でリガンドがレセプターに結合する速度(「オン」の速度)を割った比率である。高度親和性相互作用はオン速度が優先的である。アンタゴニストは普通は部位1で高度親和性変異をもつであろう。たいていどちらかの部位での高度親和性変異は、レセプターの性質に応じて所望される。もしリガンドがレセプターに結合し、三元レセプター複合体が連続シグナルよりもむしろ単一を出すならば、レセプターに極めて高度親和性をもつリガンド類似体は、アンタゴニストとして作用し始めるほど長くレセプターを占拠し得る。例えばもし細胞の特性変化のシグナルを出すのに二量体レセプターにとっては20−30分必要であれば(例えば蛋白を解放したり有糸分裂を促進したり)、アゴニストリガンドが速度定数をもつことは不要でありレセプターを何時間も占拠することになる。すなわちアゴニスト親和性はもっともよく最適化されるべきで、それによって変異は、レセプターシグナル事項を完結するに要するのと概ね同じ時間後にレセプターから解離される。高い部位1のKaは不活性部位2を持つアンタゴニストにとって完全に望ましく、何故ならばこれはアンタゴニストによるレセプター部位1の占拠を高めそれにより元来のリガンドに有り得るレセプターを結合するからである。すなわちアゴニスト変異は最も好ましくは二量体レセプターのシグナル特性と速度定数一致性をもち、一方アンタゴニストは部位1では高い親和性をもち部位2では親和性が低いかまたは無い。Kaは、与えられたリガンド変異型について例えばファルマシア社から商業的に入手可能なBIA−コア装置を用いて容易に測定できる。
三元複合体を形成するリガンドとそのレセプターの能力はまた、複合体の形成に影響を与えるが但しリガンドアミノ酸配列変異型でない物質の終末点の便利なアッセイとして役立つ。例えばもしアゴニストまたはアンタゴニスト効果のために一群の非ペプチドまたは短いペプチド分子候補をスクリーニングしたいときは、候補の存在または非存在下で三元複合体の形成を調べるだけでよい。複合体の形成を抑圧する候補はアンタゴニストとして作用し、複合体形成に必要なリガンドとレセプターの量を減少するものはアゴニスト候補である。レセプターまたはリガンドに対する非特異的効果、たとえば蛋白変性はCD研究のような通常の分析から排除される。
同様にこのアッセイ方法は変異型レセプターとそれらの活性の検出に有用である。例えば変異体レセプターは、リガンド結合部位について元来のレセプターと競合する能力を測定することで、その結合能力を正確にアッセイできる。ホモクエンチングを用いるそのようなアッセイにおいてフルオレセインでラベルしたレセプターは、限られた量の元来のリガンドに加えられ、そしてラベルしたレセプターと競合する候補レセプターの能力を標準レセプターと比べての蛍光の増大によって測定する。蛍光のクエンチングもしくは増大はまた、レセプター数の半分を1つの発蛍光団でラベルし残り半分を増大もしくはクエンチした分子でラベルして検出することができる。そのようなやりかたは広く知られており、一般に三元アッセイに適用可能である。このアッセイはまた、単に複合体の分子サイズをみるだけで部位1と2の結合の分析ができるように変更できる。もしリガンドとレセプターが適当な比率にも関わらずまったく複合体を形成しないときは、部位1は欠陥があるかまたは(レセプターが候補のときは)リガンド部位1に対するレセプター結合部位が不完全である。もし1:1複合体のみが形成されれば(たとえ適切な量のリガンドまたはレセプターが存在していても)、リガンド部位2(または使用候補に応じてそのレセプター部位)がレセプターとの結合能力において不完全である。同様の分析は、野生型の蛋白よりも大きい親和性のある部位1または2で結合できるリガンドまたはレセプターを同定するのに用いられる。
複合体形成のアッセイ
三元複合体の検出のためのアッセイ方法は次のものを含む。すなわち複合体の分子量の測定、レセプター上のラベル間の蛍光発光または蛍光消光またはその他のエネルギー移転測定、バイアコア(Biacore)分析、ゲル排除クロマトグラフィー、天然ゲル電気泳動、等電点電気泳動、沈降法および透析法。この他の適当な方法は次のようである。すなわちレセプター−リガンド部位に結合する抗体の使用、偏光の旋光、クロマトグラフィー及び核磁気共鳴。クロマトグラフィーにはゲル濾過、イオン交換および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)の種類がある。非複合のリガンド及び/またはレセプターの背景において三元複合体形成の測定ができるような如何なる分析方法も用い得る。
リガンドとそのレセプター
構造的に分析されそしてもし適当ならば変異されているリガンドは例えば次のようである。すなわち成長ホルモン、インシュリン様の成長因子、副甲状腺ホルモン、インシュリン、レラキシン、糖蛋白ホルモン例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH)、造血成長因子、肝臓増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤ラクトゲン、腫瘍壊死因子(α及びβ)、ミュラー管抑制物質、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、インテグリン、トロンボポイエチン、神経成長因子たとえばNGF−b、血小板誘導成長因子、形質転換成長因子(TGF)(例えばTFF−α及びTGF−β)、インシュリン様成長因子IおよびII、EPO、骨誘導因子(Osteoinductive Factors)、インターフェロン(例えばインターフェロン−α、β及びγ)、コロニー刺激因子(CSFs)例えばM−CSF、GM−CSF及びG−CSF、インターロイキン類(ILs)例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8並びにその他のポリペプチド因子類。好ましいリガンドは例えばG−CSF、GM−CSF、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、IL−7、EPO、成長ホルモン、胎盤ラクトゲン及びプロラクチンのようなヘリックス形のモノマーサイトカイン類/ホルモン類である。これらのリガンドのレセプターは、上に選択され記載されたhGH、アンタゴニストまたはアゴニストと同様なやりかたで用いられる。
以上の議論はアミノ酸変異に焦点があてられた。しかし同様の目的はまた、インビトロ方法によって標的残基を共有的に修飾して達成される。これは、レセプターに結合する標的位置の残基の側鎖の能力を阻止しまたは修飾する化学的修飾の如何なるタイプによってでも行われる。得られる効果は、もしも共有修飾が標的残基に対して十分に特異的であれば、例えば置換的変異と同じである。特異性は、所望の側鎖と好ましく反応する物質の選択によって得られる。追加的な特異性は、保護されるべき領域と結合する抗体で他の側鎖をブロックして達成される。修飾は結合に直接関与する一つまたはそれ以上のアミノ酸であり得る(構造残基)。またはコンホメーションの保持を行うレセプター結合の領域中もしくは近傍のアミノ酸がインビトロで共有的に置換される。共有的修飾は例えば酸化、還元、アミド化、脱アミド化、縮合などの反応や、例えばポリサッカライドやポリエチレングリコールのような嵩高い基の置換を包含する。蛋白にそのような基(例えばポリエチレングリコール)を共有的に加えるための方法は公知である(例えばDavid, et al., U. S. Pat. No. 4,179,337参照)。
システイン残基は、クロロ酢酸やクロロアセタミドのようなハロアセテート(及び対応するアミン)と最もふつうに反応してカルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を与える。システイン残基はまたブロモトリフルオロアセトン、a−ブロモ−b−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル1−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノールまたはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールと反応して誘導体化される。
ヒスチジル残基はpH5.5−7.0でジエチルピロカルボネートと反応して誘導体化される。何故ならばこのものは比較的ヒスチジル側鎖に特異的だからである。パラブロモフェナシルブロミドもまた有用である。この反応はpH6.0で0.1Mカコジル酸ソーダ中で好ましく行われる。
リジニル及びアミノ端末残基はコハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの化合物での誘導体化はリジニル残基の電荷を逆にする効果がある。アミノ含有残基の誘導体化のこれ以外の適当な試薬は次のものを含む。すなわちイミドエステル例えばメチルピコリンイミデート;ピリドキサルホスフェート;ピリドキサール;クロロボロハイドライド;トリニトロベンゼネスルフォン酸;O−メチルイソ尿素;2,4−ペンタンジオン;並びにグルオキシレート及びポリエチレングリコールやその他の嵩高い置換基のエステルとのトランスアミナーゼで触媒された反応。
アルギニル残基は若干の通常の試薬たとえばフェニルグリオキサール、2,3−ブタジノン、1,2−シクロヘキサンジオン及びフェニルグリオキサールの一つまたはそれ以上との反応によって修飾される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン機能基の高いpKaのためにアルカリ性条件で行う必要がある。更にこれらの試薬はアルギニンε−アミノ基と同様、リジン基と反応できる。
チロシル残基の特異的修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物やテトラニトロメタンとの反応によるチロシル残基へのスペクトルラベルの導入に特に興味をもって行われる。最も普通にはO−アセチルチロシル種及び3−ニトロ誘導体を得るためにはN−アセチルイミジゾール及びテトラニトロメタンを各々用いる。チロシル残基は、ラジオイッムノアッセイに使用するラベルした蛋白を作るために125Iまたは131Iでヨード化する。既述のクロラミンT方法が適当である。
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)はカルボジイミド(R’−N=C=N−R’)との反応で選択的に修飾される。ここにRとR’は異なるアルキルであって、例えば1−シクロヘキシル−3−(2−モルフォリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドである。更にアスパルチル及びグルタミル残基はアンモニウムイオンと反応してアスパラギル及びグルタミニル残基に変換される。
グルタミニル及びアスパラギニル残基はしばしば脱アミド化されて各々対応するグルタミル及びアスパラチル残基となる。またはこれらの残基は穏和な酸性条件下で脱アミド化される。これら残基のいずれの形も、本発明の範囲に入る。
その他の修飾は次のものを含む。すなわちプロリンとリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基の水酸基のホスホリル化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のa−アミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins:Structure and Molecular Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86(1983))、N−末端アミンのアセチル化ならびにいろんなC−末端カルボキシル基のアミド化。
hGHbpの2つの結合部位の証拠は抗体結合から生じる。hGHのhGHbpへの親和性は、hGHbpから[125I]hGHを置換し、グリコシル化したウサギGHレセプターから得た抗レセプターモノクローナル抗体(Mab5)との複合体を沈澱することによって測定される(Barnard et al., Encocrinology 115:1805(1984);Barnard et al., Biochem. J. 231:459(1985))。このアッセイを用いてのスキャッチャード分析は、hGHとhGHbpが1:1の複合体を形成することを示す(Leung et al., Nature 330:537(1987);Fuh et al., J. Biol. Chem. 265:3111(1990);Barnard et al., Endocrinology 115:1805(1984);Barnard et al., Biochem. J. 231:459(1985);Spencer et al., J. Biol Chem. 263:7862(1988))。別のMAbsセット(MAb387または3D7)を使っての置換曲線のスキャッチャード分析は、1つのhGHbpに対して0.5のhGHの化学等量を与える。これらの結果は、もしMab5がhGHの第2の部位への結合のためのhGHbpの決定因子をブロックするものであるとすれば説明可能である。
各々のhGHポリペプチド上の2つの結合部位の証拠は、hGH(Cunningham et al., Science 244:1081(1989))とhGHbp(実施例2)の間の結合決定因子のスキャニング−変異分析でモノクローナル抗体を用いることによって開発された。これらの研究で同定された決定因子は1:1複合体の形成の調整に重要である。このデータに基づいて、本発明者はこれらの決定因子をhGHの非結合同族体へあてはめ、そしてhGHbpへ固く結合した類似体を製造した(Cunningham et al., Science 247:1461(1990))。8つの置換基をhPRLへ、または5つをhPLへ導入して本発明者はhGHbpと結合し1:1複合体を形成する変異型を製造した。
これらのhPRLまたはRL変異型(図4A及びB)がhGHbpの1または2分子と結合するかどうかの決定のためにゲル濾過を行った。hGHbpとホルモンの比が2:1のとき、hPRLの両方の結合変異型はhGHbpとの1:1複合体に対応する2つの対象的なピークを示した。
さらに化学量論と反応熱を評価するために、走査熱量計を用いた。何故ならば結合は、複合体を分離するために抗体またはクロマトグラフィーを用いる必要なしに溶液中で容易に研究可能だからである(図5)。この実験は反応熱と、hGHbpに結合したhGHの当量の測定を可能とした。
野生型hGH並びにhGH及びhPRLの変異型の滴定終末点を表IIに示す。全てのhGHbpと結合するに必要なhGHの比率は約0.5〜1である。これらのデータ全体は、hPRLとhPLはhGHbpの二量化のための重要な決定因子を欠いていることを示す。これらの決定因子はhGHの単一アラニン変異体中に大量に保存されているが、hPRLやhPL変異型中にはそうではない。このことは、hGH上にはhGHbpに対する2つの結合部位があることを示唆する。これら部位の1つは、各々Mab5またはMab263免疫沈澱アッセイを用いてhGH(Cunningham et al., Science 244:1081(1989))またはhGHbpのアラニン走査変異により詳しく機能的に特徴づけられている。hGH及びhGHbp上の2つめの部位は未解決のままである。
hGHのhGHbpとの結合は、成分において僅かのスペクトル変化をもたらす。本発明者は複合物形成における円二色性(CD)及び蛍光スペクトルの変化を調べた。hGHとhGHbpを混ぜると、遠紫外線CDスペクトルがhGHとhGHbpのスペクトルの和と事実上おなじになる(図6A)。この結果は、複合体の形成における規則的な第二の構造の大きな変化の欠如を示す。近紫外線CDスペクトル(図6B)は、芳香族アミノ酸側鎖の非対象的環境を反映している(Bewley, Recent Progress in Hormone Research 35:1555(1979);Bewley et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 233:219(1984))。hGHとhGHbpのUV吸収スペクトル間には大きな差があり、これは主にhGHに比べてのhGHbpの大きなトリプトファン含量の結果である(1対9)。しかしスペクトルの強度の増大を除き、個々のスペクトルの和は混合後に得られるものと本質的に同一である。
蛍光スペクトルにおいては、hGHのhGHbpとの結合により340nmから334nmへの青色のシフトと、蛍光強度の僅かの減少がある(図7)。ヨードの消光とスターン−ヴォルマー分析は、ホルモンレセプター複合体においてトリプトファンの露出の減少がある。これはhGHの結合でhGHbpの中に1つまたはそれ以上のTrp残基が埋め込まれた結果であろう。何故ならば蛍光クエンチング研究は、hGHの中のトリプトファンは溶媒に露出されないことを示しているからである(Bewley, Recent Progress in Hormone Researh 35:1555(1979);Bewley et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 233:219(1984))。それと対照的に、hGHbpの変異分析はTrp104がhGHとの結合において特に重要であることを示している。
上述のように、hGHの結果は、例えばホルモン−レセプターやサイトカイン−レセプター系のようなポリペプチドリガンドに合致している。成長ホルモンとプロラクチンレセプターは、インターロイキン2、3、4、5、6、7、エリスロマイシン、マクロファージコロニー刺激因子及びその他のものに対するサイトカインレセプターの大きな一群に関連している。これらのレセプターの細胞内領域が、もし配列が類似ならば僅かしか共有せず、そしてどれも公知のチロシンキナーゼと相同でないのは驚くべきことである。にもかかわらず、GH(Carter-Su et al., J. Biol. Chem. 264:18654(1989))、IL−2(Asao et al., J. Exp. Med. k171:637(1990))及びIL−3(Itoh et al., Science247:324(1990))レセプターがホルモンとの結合のすぐあとでホスホリル化される。IL−2(Sharon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 87:4869(1990))及びIL−6(Taga et al., Cell 58:573(1989))レセプターの場合は、補助的な蛋白及び/またはレセプターはシグナルの形質導入に関与していないことを示す証拠がある。hGHとその結合蛋白についてのこの結果は、hGH結合が細胞質の(または膜に結合した)成分と相互作用し得る活性領域をつくるべく細胞内領域と共にくるレセプターの細胞外部分の二量化を誘発するようなhGHレセプターの活性化のモデルを支持する。これは複雑な成分のコンホメーションの実質的変化なしに生起しまたはしない。
他の2つのグループが最近に細胞外結合領域で結合したポリペプチドホルモンを結晶化させた(Lambet et al., J. Biol. Chem. 264:12730(1989);Gunther et al., J. Bio. Chem. 265:22082(1990))。しかし何れもレセプターの二量化の結論的な証拠を報告していない。ヒトIL−2は、IL−2レセプターのヒトp55成分の可溶性組換え体との1:1複合体で優先的に結晶化される。ただし少量のジスルフィド結合p55二量体が観察される。橋かけ研究は、機能的なIL−2レセプター複合体はIL−2、p55及び別のレセプター成分(p50と呼ばれる)の間に形成されるヘテロダイマーであることを示唆する(Saragori et al., J. Immunol. 139:1918(1987);Ogura et al., Mol. Biol. Med. 5:123(1988))。EGFレセプター(EGFbp)の細胞外領域は、1分子のEGFと共になって結晶化された(Gunther et al., J. Biol. Chem. 265:22082(1990))。結合の研究と沈降の分析は、溶液中での1:1のEGF・EGFbp複合体の形成を示す。これらのデータは、細胞外領域はホルモン誘発二量化を行うには不十分であることを示唆する。しかし結合研究が、複合体の沈澱のために抗EGFレセプターポリクローナル抗体を用いたことは注意すべきことである。更に結晶化及び沈降実験はレセプターに比し大過剰のホルモンを用いている。本発明の場合、Mabsは天然のGHレセプターブロック二量化(図3)に対して多く、そして大過剰のhGHがモノマー複合体(図2)の中へhGH・(hGHbp)2複合体を解離する。
この後者の効果は重要な薬理学的意味をもつであろう。hGHは天然には血清中5nMを越える濃度で脈拍中で生産され、その濃度は1nMの極めて下方まで急速に下がる(Tayler et al., J. Clin. Invest. 48:2349(1969);Thompson et al., J. Clin. Invest. 51:3193(1972);Ho et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 64:51(1987))。しかしhGHbpは天然に血清中に約0.5〜1nMという一定の濃度で存在する(Baumann et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 62:134(1986);Herington et al., J. Clin. Invest. 77:1817(1986))。すなわちhGHがhGHbpに比べて過剰に送られるので、細胞レセプターと相互作用できる遊離のhGHと同様にhGHbpと1:1の複合体を生成することが予期される(hGH・hGHbp・hGH膜−レセプターの形のヘテロダイマー的複合体さえも生成しよう)。
本発明者はhGHはhGHbpと相互作用を行ってhGH(hGHbp)2の形の複合体を作ることを確認し、そして得られた細胞外レセプター領域の二量化はこのホルモンに体因性のシグナルトランスダクションを開始することを提案した。回収したhPLとhPRL同族体(実施例4)はhGHbpの二量化を促進しないので、hPLとhPRL骨格は、レセプター認識と結合に必要なものから明白な必須の二量化決定因子を欠いていると結論することができる。関係する領域を局所化するため、hPLまたはhPRL類似体置換した一連のhGH変異体および2つの削除類似体を、ホルモン誘発レセプター二量化の減少のためにスクリーニングした。次に重要な側鎖を、更に詳細なアラニン走査戦略で同定した。
hGHbp変異型(S237C)を構築し蛍光でラベルした。蛍光クエンチングを、図8に示すようにホルモン誘発二量化をモニターして測定した。このクエンチングはhGHとhGHbpの1:2モル比を示した(図4)。hLPとhPRLセグメント置換のある一連の同族体走査hGH変異型を、蛍光アッセイで試験した(表III)。これらのうち4つは、ホルモン誘発hGHbp二量化の著しい減少を示した(実施例4)。他の2つのhGH削除類似体においては、hGHbpの二量化の損失は、第二部位のhGHbp結合の分裂に起因するもののようである(表III)。
hGHbp変異体(S237C−AF)を蛍光的にラベルする。この蛍光シグナルは、図8に示すようにホルモン誘発二量化のモニターに用いる。hGHは10nMの定濃度のS237−AFで系列的に希釈し、そして平衡で蛍光クエンチングを測定する。フルオレセインラベルのホモクエンチングはhGHの添加と共に増大し、0.5モル当量のhGHにおいて最大となる。しかし極めて顕著なことにはこのクエンチングは高い濃度のhGHでは逆転し、これは過剰のhGHの存在下ではhGH・(hGHbp)2はhGH・hGHbpのモノマー複合体に解離することを示している。
hPLとhPRLセグメント置換の一連の同族体走査hGH変異体を、S237C−AFに基づくアッセイで試験した(表II)。これらのうち3つ、すなわちhPRL(12−19)、hPRL(54−74)及びhPRL(111−109)は著しい減少を示した(18倍、6倍及び100倍以上)。これらの変異体に結合する一次部位(部位1)の損失は、観察されたhGHbpの二量化の減少に大いに関係するようである。更に、結合親和性を減少させる一次部位決定因子(例えばR64A及びK172A/F176A)の変異体もまたhGHbp親和性を高めることが示され、そして一次部位のhGHbp親和性を高めることが示されたhGH変異体(E174A)もまた本発明者のアッセイの測定では二量化を高める。同族体走査変異体に加えて、hGH削除類似体(1−8削除)は、hGHbp二量化誘発能力において、劇的な減少(100倍を越える)を示した(実施例4)。hGHbpの二量化におけるこの損失はまた、二次部位hGHbp結合における分裂に基づくもののようである。
第2の部位hGHbp結合に関係する特定アミノ酸の特定側鎖は、アラニン走査でプローブされる(実施例6)。26のアラニン変異体の分析(表IV)は、hGHbp二量化で10倍より大きい分裂をおこす2つの変異体(F1AとI4A)及び2倍より大きい分裂をもつもう4つ(L6A、R8A、D116AとE119A)を見いだしたのみであった。これらの決定因子は、1次部位結合に決定的なものとは異なるものである。逐次的なhGH添加を行った実験で一定濃度のS237C−AF(100nM)とし、そして蛍光ホモクエンチングはhGH誘発二量化には迅速な平衡時間(3分より短い)を、過剰のhGHによる次の二量化の反転には遅い平衡時間(30分より長い)を示した。これは、二量化の反転は速度以外の限定があることを示唆する(メカニズムについては実施例6)。
hGH(hGHbp)2結晶の生成は、Blundell and Johnson, Academic Press, London, 1976に記載の方法によるX線結晶写真技術を用いるhGH(hGHbp)2の3次元構造の決定を可能とする。この構造は図11に示され、そして以下の実施例7で説明する。図11の構造は、各々のhGHは2つのhGHレセプターまたはhGHbpに結合していることを示す。各々のhGHbpはhGHの異なる位置に接触している;最初のhGHbpは表IVのアミノ酸と接触し、そして2つめのhGHbpと接触するhGHアミノ酸は表VIに示してある。2つのhGHbpの間の接触アミノ酸は図6に示される。
hGHの変異体はこれらのアミノ酸接触点で作られ、本発明のアッセイ方法で検出される。同様にhGHbp変異体は、hGHと結合するところで、または2つのhGHbpそれ自体の間で作られる。そのようなhGHbp変異体は、野生型hGH及びhGHBpを用いて本発明のアッセイ方法で検出できる。
治療組成物と投与
ここにいう「成長ホルモン類似体」とは、成長ホルモン並びにその他のラクトゲンホルモン類、例えば胎盤ラクトゲン、プロラクチン及び他の成長ホルモンの遺伝子的や種の変異体、それにアミン酸置換、挿入または削除で作成したこれらの蛋白の変異体を包含するものである。成長ホルモン類似体は、レセプターに対する類似体の結合をも含めて成長ホルモン類似体の活性のアンタゴニストまたはアゴニストをも含むことができる。
リガンド類似体またはGHbp抗体の治療処方は、所望の生成度のリガンド類似体蛋白を任意的な生理的に許容される担体、希釈剤または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, supra)を混合し凍結乾燥ケーキまたは水性溶液の形態で貯蔵用に製造される。許容し得る担体、希釈剤または安定剤は使用用量や濃度で被投与者に毒性がないものであって例えば次のようである。すなわち緩衝剤たとえば燐酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸;抗酸化剤たとえばアスコルビン酸;低い分子量(約10残基より少ない)のポリペプチド(メトキシドの形成を避けるため);蛋白たとえばアルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマーたとえばポリビニルピロリドン;アミノ酸たとえばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン;単糖類、二糖類および他の炭水化物たとえばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート剤たとえばEDTA;糖アルコールたとえばマンニトールやソルビトール;塩形成性の対イオン例えばナトリウム;及び/または非イオン性の界面活性剤たとえばツーン、プルロニックまたはポリエチレングリコール(PEG)。
インビボ投与に用いるリガンド類似体やGHbp抗体は無菌でなければならぬ。これは凍結乾燥や再構築の前または後に無菌濾過膜で濾過することで容易に達成できる。リガンド類似体またはリガンド類似体に対する抗体は通常は凍結乾燥形態または溶液で貯蔵される。
治療用のリガンド類似体またはリガンド類似体特異性抗体は一般に、無菌アクセスポート例えば皮下注射針貫通可能な栓をもつ静脈注射溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
リガンド類似体またはGHbp抗体の投与ルートは、例えば静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内または傷害部内への注射や注入、さらには後記のような持続投与系のような公知の方法による。リガンド類似体は注入や丸薬注射により連続投与される。GHbp抗体も同様なやりかたで、または血流やリンパ液の中へ投与される。
持続放出型製剤の適当な例は、フィルムやマイクロカプセルのような有形物品の形態のマトリックスの蛋白を含有する固形疎水性ポリマーの半浸透性マトリックスを含む。持続放出マトリックスの例は次のようである。すなわちポリエステル、ヒドロゲル(例えばLanger et al., J. Biomec. Mater. Res. 15:167(1981);Langer, Chem. Tech. 1298(1982)に記載のポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(U. S. Pat No. 3,773,919;EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメート(Sidman et al., Biopolymers 22:547(1983))、非分解性エチレン−ビニルアセテート(Langer et al., supra)、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー例えばLupron Depot(乳酸−グリコール酸コポリマーとリュープロライドアセテートから成る注射可能のマイクロスフェア)及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)。エチレン−ビニルアセテートや乳酸−グリコール酸のようなポリマーは100日にわたって分子を放出できる一方、ある種のヒドロゲルは短期間のあいだ蛋白を放出する。カプセル化した蛋白が長時間体内に残るときは、37℃で水分に露出される結果として変性または凝縮し、生物学的活性損失や免疫遺伝的変化をおこす。合理的な戦略は、関係するメカニズムによる蛋白の安定化によって工夫される。例えばもし凝縮メカニズムがチオジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であるときは、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分を調節し、適切な添加物を用いそして特定のポリマーマトリックス組成物を発達させることで得られる。
持続放出リガンド類似体または抗体組成物はまた、リポソーム的に包まれたリガンド類似体や抗体を含む。リガンド類似体や抗体を含むリポソームは、それ自体公知の方法で作成される。例えばDE 3,218,121;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 82:3688(1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 77:4030(1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;Japanese Patent Application 83-118008;U. S. Pat. No. 4,485,045;U. S. Pat. No. 4,544,545;EP 102,324。通常はリポソームは、脂質含量が約30モル%より大きいコレステロール(選択された比率は最適のリガンド類似体治療によて調節される)である小型(約200−800オングストローム)の単ラメラ型のものである。高められた循環時間のリポソームは、アメリカ特許第5013556号に開示されている。
変異型の用途
本発明のアッセイで選択されるアンタゴニストリガンド変異体は治療処方に用いられるか、天然存在のリガンドの作用をブロックするアンタゴニストとして作用する形質転換動物を発現する。例えばアンタゴニストは、成長ホルモン類似体のレセプターの発現で特徴づけられるガンや他の病気の治療に有用である。形質転換動物は新規なものとして、または実験モデルとして有用である。他の選択されたリガンド変異型は、アゴニストとして作用すべく治療的処方で用いられ、天然存在サイトカインによるものと類似の応答を増大または促進すべく投与される。例えばhGH変異体は医薬的に効果のある用量処方で用いられる(例えばアメリカ特許第5096885号;1988年4月15日出願)。リガンド変異体は、天然のサイトカインと類似の活性をもち、但し好ましくない副作用は少ないかまたは無いという利点があり、その一例は糖尿病を誘発する活性の無いhGH変異型である。アゴニストとしてもアンタゴニストとしても生物学的活性のないリガンド変異型は、少なくとも1つのリガンド免疫エピトープを保持しているために野生型リガンドまたはその抗体のインムノアッセイに有用である。
ここで治療目的に使用される成長ホルモン類似体、変異型およびアンタゴニストは、個々の患者の臨床的状態、組成物の到達部位、投与の方法、投与のスケジュール及びそのほか実務者に公知の因子を考慮に入れ、善良な医学的実務に則ったやりかたで処方され投与される。ここで、目的のための化合物の「効果的な量」はそのようなことを考慮して決定され、それは細胞成長を阻害または防御する最低量である。そのような量は好ましくは哺乳動物に毒性を示す量より低いものである。
モノクローナル抗体とレセプターの刺激
幾つかの抗体はhGHレセプターを刺激する能力があることがわかった。すなわちそれらはレセプターを、3元複合体を形成しレセプターを活性化する能力を模倣するようなやりかたでレセプターを架橋結合する能力がある。そのようなアゴニスト抗体の例は本発明の時点で既に公知であったが、それらがhGHのアゴニストとして作用する能力は認められていなかった。適当な抗体はMAb263である(Barnard et al., Endocrinology 115:1805(1984);Barnard et al., Biochem. J. 231:459(1985))。他の例はMAbs13E1及び3D9であり、下記の方法で製造される。必要に応じこれらの抗体は、意図した宿主内の親の抗体より免疫性の低いCDRグラフト型またはキメラを生成するのに用いる。抗体は好ましくはヒトのレセプターに指向される。hGHのアゴニストは少なくとも2価でなければならぬ。しかしFAbフラグメントのような1コのレセプター分子としか結合しない1価の抗体はアンタゴニストとして有用である。
2価の抗体は若干の実施態様では2特異的である。すなわち抗体の1つのアームはひとつのレセプターエピトームに向けられ、もう1つのアームはレセプター上の他のエピトームに向けられている。アンタゴニスト抗体の実施態様は、ひとつのアームがレセプターに向かい(好ましくはそのレセプター−レセプター接触領域)他のアームがGHレセプター以外の抗原に向かうことを含む。抗体は通常のハイブリドーマ方法または組換え方法で作られ、ここで組換え細胞は各々のアームをコード化する重いそして軽い鎖で転換される。2特異的抗体は組換え方法で作られ、細胞培養からアフィニティー精製で回収されるか、または抗体は別個に作られそして通常の方法でインビトロで組換えされる。
これらの結果は獣医学の分野で特に興味がある。何故ならば、活性免疫によりGHアゴニストを生成するように成長ホルモンレセプターまたはそのフラグメントに対してヒトを免疫することによりインビボでそのような抗体を培養することが今や可能だからである。すなわち抗体は(外因性抗体の投与により)受動的か、またはレセプターでの免疫により活発的に投与される。
アゴニスト抗体は、成長ホルモンに対する親和性に基づく用量で投与される。哺乳動物についてのこれ以上の用量は、上述のラットの成長研究から容易に外挿法できめられる。アンタゴニスト抗体は、もしも小動物が対象のときは正常量またはそれより低い範囲に効果的活性を減少させるように十分な成長ホルモンで計算した用量で投与する。
抗体は、上述のリガンド類似体と実質的に同様なやりかたで処方され投与される。アゴニスト抗体は、成長ホルモンが用いれた上記と同じ目的のために用いられる。
次の実施例は本発明を行うために現在最良のやりかたを説明するためのものであり、本発明はこれらの実施例に限定されると理解してはならない。
実施例1。hGH−レセプター複合体の構造
本発明のアッセイ方法は、hGH−レセプター複合体構造(すなわち1つのhGHと2つのhGHレセプターまたは結合蛋白が、検出されるべき安定な複合体を形成しているもの)に基づくものである。これらのアッセイ方法はhGH(hGHbp)2複合体のアッセイ方法で例示される。
hGH・(hGHbp)2複合体の結晶化
hGH(2kD)とhGHbp(28kD)(図1a)の間の複合体の結晶は、蒸気相拡散で成長する(A. McPherson, in Preparation and Analysis of Protein Crystals, John Wiley & Sons, New York(1982))。結晶は少なくとも2.7Åで回折され、そしてa=145.8Å、b=68.6Å、c=76.0Åの単位細胞パラメータの空間群(P2112)に属する。これらの結晶の非対称単位の量は、複合体がhGH・hGHbpまたは(hGH・hGHbp)2の何れかの形を持たないようなものである。特に溶媒含量は1:1複合体にはあまりにも高く(68%)また単位細胞の2:2複合体にはあまりにも低い(32%)。結晶の典型的な溶媒量は約50%(Matthews, J. Mol. Biol. 33:491(1968))なので、これらの結晶は成分の非対称的混合物を含有するようである。
結晶の精密な組成を調べるために、それを0.1%のトリフルオロ酢酸に溶かし、変性条件下でクロマト処理する(図1b)。hGHとhGHbpの量を、214nmでモニターしつつ対応するピークの積分で定量する。それはペプチド結合の不存在に対応する。4つの独立した測定から、hGHbpピークに対するhGHピークのA214の比率は0.42±0.02であった。hGH・(hGHbp)2の形を持つ複合体について、積分ピーク面積の予測比率は、各々の成分中の残基数(hGHでは191残基;hGHbpでは238残基)に基づいて0.40である。対照実験においてhGHとhGHbpの1:2混合物は本質的に図1Bと同一のクロマトグラムを示し、なお生成した2:1と1:1の混合物は予期された異なるクロマトグラムを示した。従って図1の結晶はhGHとhGHbpの1:2のモル比を含有している。溶液中で安定な複合体を形成するhGHとhGHbpの能力は、複合体形成は信頼できるアッセイパラメータであることを確認する。
溶液中でのhGH(hGHbp)2複合体の形成
hGH(hGHbp)2複合体の存在は、サイズ排除クロマトグラフィーによって溶液中で確認された。hGHとhGHbpを1:4、1:3、1:2、1:1及び1:0.5の比で混合し、成分をSuperose 12 FPLCカラム(図2)上でゲル濾過によって分離する。hGHとhGHbpの1:4の比のところで(図2)、各々hGH・(hBHbp)2複合体と遊離のhGHbpに対応する分子量が約70kD及び30kDの2つのピークが存在する。ピークの面積は、その
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がhGH12より2.9倍高いのでhGHbpの不存在で支配される。純粋なサンプルの吸収と組成分析に基づくhGHの
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は0.82cm-1であり、hGHbpは2.35cm-1である。hGHとhGHbpの1:3及び1:2の比率において(図2B及び2C)、複合体ピークの形や位置には変化がない。しかし遊離のhGHbpに対応するピークは顕著に減少してゼロとなる。すなわち1:2比においては、実質上すべてのhGHとhGHbpは複合体に結合する。hGHとhGHbpの比を1:1に調節し最終的に1:0.5とすると(図2D、2E)、複合体ピークの位置は小さいサイズへと変化し(約55kD)、非対称的となり、そして遊離のhGHが蓄積するので、hGH・(hGHbp)2、hGH・hGHbp及びモノマーのhGHに対応する種の混合物が示唆される。これらのピークを越えて採取された蛋白サンプルのSDS−PAGEは、与えられた組成を確認する。追加的の対照実験は、遊離の成分はモノマー蛋白として挙動することを示し、これは二量化はこれらの条件下でhGHとhGHbpの両方の存在を必要とすることを示している。従って複合体の形成は複数のアッセイ方法で検出可能であり、hGH・(hGHbp)2複合体形成は細胞レセプターへのhGHの結合を示すものとして役立つ。同様にして、hGH−hGHレセプター複合体に類似のサイトカイン−サイトカインレセプター複合体を形成するサイトカインレセプターを通じて作用するいかなるサイトカインも、そのようなアッセイ方法で評価することができる。
実施例2 hGHレセプターの結合部位
hGH結合蛋白またはhGHレセプターへのhGH結合部位の性質は、結合蛋白またはレセプターへのhGH結合部位をブロックした抗体を用いて特性化された。hGHbp上の2つの結合部位の証拠は次のようである。
hGHbpへのhGHの親和性は、hGHbpからの[125I]hGHの置換およびグルコシル化したウサギGHレセプターから生産した抗レセプターモノクローナル抗体(Mab5)との複合体の沈澱によって典型的に測定される(Barnard et al., Endocrinology 115:1805(1984);Barnard et al., Biochem. J. 231:459(1985))。このアッセイを用いたスキャッチャード分析は、hGHとhGHbpは1:1の複合体が形成可能であることを示した(Leung et al., Nature 330:537(1987);Fuh et al., J. Biol. Chem. 265:3111(1990);Barnard, R. et al., Endocrinology 115:1805(1984);Barnard et al., Biochem. J. 231:459(1985);Spencer et al., J. Biol. Chem. 263:7862(1988);Spencer et al., J. Biol. Chem. 263:7862(1988))。
最近、追加的なMabがE. coliから精製した非グリコシル化hGHbpで免疫して製造された(Fuh et al., J. Biol. Chem. 265:3111(1990))。複合体を沈澱させるためこれらの抗hGHbpMab(3B7及び3D9)の2つを用いての置換曲線のスキャッチャード分析は、より高い結合親和性(Mab5の0.4nMに対してKD0.1nM)と化学量論(1hGHbpに対し0.5hGH)を与える。これらの結果はもしMab5が、hGHの第2の部位に結合するhGHbpの決定因子をブロックするとすれば説明可能である。Mab3B7と3D9を用いてのアッセイにおける協力性の欠如は、1:1複合体におけるhGHの親和性(Mab5を用いての測定)が1:2複合体のもの(Mab3B7及び3D9を用いての測定)よりも僅かに約4倍弱いのみであるという事実を反映しているようである。さらに大きい示差親和性が、スキャッチャードプロットで上部への反映による積極的な協力性を得るために必要であろう。さらにMab3B7と3D9は、いかなる協力性をも弱めるであろう1:1及び1:2の複合体の両方を沈澱させる。従ってhGHの第2の結合部位のブロッキングは1:1hGH−hGHbpモル比をもたらす;一方では第2の結合部位をブロックしない抗体は1:2モル比をもたらす。
hGHの2つの結合部位の証拠は次のようである。Mab5を、hGHとhGHbp間の結合決定因子の走査−変異分析に用いた。従ってこれらの研究で同定した決定因子は、1:1複合体の形成を調節するにはこれらが重要であることを示す。このデータに基づいて本発明者はこれら決定因子を、非結合性のhGH同族体およびhGHbpと強固に結合する作成された類似体の中へ取り込んだ(Cunningham et al., Science 247:1461(1990))。例えば野生型のヒトプロラクチン(hPRL)またはヒト胎盤ラクトゲン(hPL)は、hGHよりもhGHbpに対して各々105倍または103倍以上弱く結合する。8つの置換分をhPRLに入れたり(E62S/D63N/Q66E/H171D/E174A/N175T/Y176F/K178R;Cunningham et al., Science 247:1461(1990))または5つをhPLに入れたり(V4I/D56E/M64K/E174A/M179I)して、本発明者はhGHよりも僅かに6.2倍または1.4倍弱くhGHbpと結合する変異型を製造した。
本発明者は、これら変異型がhGHbpの1または2分子と結合できるか否かを決定すべくゲル濾過を行った(図4)。hGHbp:ホルモンが2:1の比のとき、hPRL(図4A)及びhPL(図4B)の両方の結合変異体は、hGHbpとの1:1複合体に対応する2つのピーク(分子量は約55kD)並びに化学量論的過剰のhGHbpを表す低い分子量のピーク(30kD)を示した。同じ条件下で野生型hGHは、hGH・(hHbp)2複合体に対応する単一のピーク(分子量は約77kD)を生じた(図4C)。図4Cにおける小さい衛星的ピークは、小過剰のhGHbpからのものである。ピーク組成はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で確認した。
更に化学量論と反応熱を評価するために走査熱量計を用いた。何故ならば結合は、複合体を分離するために抗体またはクロマトグラフィーを用いる必要なしに溶液中で自由に研究できるからである。一定のhGHbp濃度(15μM)を含む溶液へhGHを加え、それ以上のエンタルピー変化がなくなるまで反応熱を測定した(図5)。この実験で、反応熱とhGHbpに結合するhGHの当量を測定することができた。
野生型hGHとhGH及びhPRL変異体の滴定終末点と反応熱を表IIに要約する。すべてのhGHbpを結合するに必要なhGH比率は約0.5から1である。更に、結合を減少させる(20倍まで)かまたは結合を高める(4.5倍まで)一連の単一アラニン変異体は、反応のエンタルピーの変化にもかかわらず野生型hGHのhGHbpへの結合と同じ化学量論を与える。これと対象的に、hPRL変異型のhGHbpに対する結合の化学量論は0.85から1である。
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a:Mab5免疫沈澱アッセイを用いての1:1hGHhGHbp複合体の形成についての値(Cunningham et al., Science 244:1081(1989))。ナノメータ範囲での2量体複合体の結合定数測定のためには熱量測定は適当でない。何故ならば熱量計は、濃度が結合定数より低く設定される必要のある成分の反応熱の変化を正確に測定するに十分には正確でないからである。
b:2回の平均値(±SE);その他は1回の測定である。
これらのデータ全体はhPRLとhPL変異型は、hGHbpの2量化のための隠れた重要な決定因子であることを強く示す。これらの決定因子はhGHの単一アラニン変異体内に多く保存されているが、hPRLまたはhPL変異型内にはない。このことは、hGHbpに対しhGH上には2つの結合部位のあることを示唆する。これらの部位の1つは各々Mab5免疫沈澱アッセイを用いるhGHbpまたはhGH(Cuningham et al., Science 244:1081(1989))のアラニン走査変異で詳しく機能的に特徴づけられる。hGHとhGHbpの上の2番めの部位は未解決であり下記される。
実施例3 hGH−レセプター複合体とスペクトルの変化
hGHとそのレセプターの結合は成分に少しのスペクトル変化をおこす。hGHのhGHbpへの結合が成分の2次的または3次的構造に変化をおこすか否かを決めるために、複合体形成における円2色性(CD)及び蛍光スペクトルの変化を調べた。0.01MトリスpH8.0と200mMのNaCl中の約1.0mg/mlの蛋白を透析して、分光分析のための蛋白を作成した。透析のあと、溶液を濾過(0.22μ、ミリポア)しそして吸収スペクトルを得た。スペクトルを光の散乱に対して補正し(Shauenstein et al, J. Polymer Sci. 16:45(1955))そして蛋白濃度w280nmの吸収で測定した。精製サンプルの吸収および組成分析に基づくhGHの
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は0./82cm-1であり、hGHbpのそれは2.35cm-1である。hGHは、その4つの束ねられた構造(Abdel-Meguid et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 84:6434(1987))に特徴的な強いa−ヘリックスCDスペクトル(Bewley et al., Arch. Biochem. Biophys. 138:338(1970))を持つ。対照的にhGHbpのCDスペクトルは、ジスルフィド結合で接続するターンやループ(Cleary et al., Biochemistry 31:45(1989);Hilder et al., Biophysical Chemistry 31:45(1988))から主に成る蛋白に特徴的である。hGHbpは3つの隣接的に結合したジスルフィド結合を含む(Fuh et al., J. Biol. Chem. 265:3111(1990))。冷凍細胞ペーストを低等張の緩衝液(10mM Tris pH8.0, 1mM PMSF(Sigma),2mM EDTA)で解凍する。懸濁液をホモジナイズし、4℃で1時間攪拌し、ついで10,000xgで20分間遠心分離する。上澄み液に260g/Lの硫酸アンモニウムを加え、溶解するまで攪拌する。蛋白の沈澱を10,000xgで30分間遠心して採取する。ペレットを10mMトリス(pH:8.0)と1mMのPMSFに再懸濁し、同じ緩衝液に透析する。透析液を10mMトリス(pH8.0)中のQセファローズカラム(Pharmacia)にかけ、0.0から0.5Mの線形勾配のNaClで溶離する。hGHbp含有のピーク分画をhGH親和性カラムの上に直接おく。洗浄後、カラムを4MのMgCl2と10mMのトリス(pH7.5)で溶離する。ピーク分画を合併し、10mMトリス(pH7.5)で透析し、モノQカラムにかけ、洗浄し、そして10mMトリス(pH7.5)と0.0〜0.2Mの線形勾配のNaClで溶離する。
hGHとhGHbpを混ぜると、遠紫外CDスペクトルはhGHとhGHbpのスペクトルの和と実質的に同じとなる(図6A)。この結果は、複合に際して通常の2次的構造に大きな変化がないことを示す。近紫外CDスペクトル(図6B)は、芳香族アミノ酸側鎖の非対象的環境を反映している(Bewley, Recent Progress in Hormone Research 35:1555(1979);Bewley et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 233:219(1984))。hGHに比べてhGHbpのもつ大きなトリプトファンの量(1対9)が大きく影響し、hGHとhGHbpの紫外吸収スペクトルの間には大きな相違がある。しかしスペクトルの強度の増大を除き、個々のスペクトルの和は混合後に得たものと本質的に同一である。
蛍光スペクトルにおいて、340nmから334nmへの青色のシフトがあり、hGHのhGHbpへの結合に際し蛍光強度の僅かな減少がある(図7)。ヨード消光とシュテルン−ボルマー分析は、ホルモンとレセプターの複合体ではトリプトファンの露出の減少のあることを示す。これは、hGHとの結合においてhGHbp中の1つまたそれ以上のTrp残基が埋め込まれた結果のようである。何故ならば蛍光消光研究は、hGHの中のトリプトファンは溶媒によく露出しないことを示しているからである(Bewley, Recent Progres in Hormone Research 35:1555(1979);Bewley et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 233:219(1984))。対照的に、hGHbpの変異分析はTrp104がhGHとの結合に特に重要であることを示す。これらのスペクトル研究はhGHとhGHbpの結合に僅かのコンホメーション変化しか示さないけれども、これらの方法は芳香族の基の位置変化(近紫外CD及び蛍光消光)と通常の2次構造の構造的変化(遠紫外CD)に偏っている。従って複合および遊離の成分の高分解能構造はなおコンホメーションの変化をあらわす。
実施例4 アッセイ方法と修飾hGH
修飾ポリペプチドホルモンをアッセイ方法で評価した。1セットのhGH残基(F10, F54, E56, I58, R64, Q68, D171, K172, E174, F176, R178,V185を含む)はhGHbpとの高度親和性の化学量論結合に重要なことが知られている(WO 90/04788)。これらの決定因子はhGHbpを強固に結合するhPL及びhPRL類似体を同定するため(Kdは各々1nM及び6nM)hGHbp結合不能のhGH同族体、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)及びヒトプロラクチン(hPRL)に取り入れられた。既述のように、hGHはhGHbpと相互作用しhGH(hGHbp)2の形の複合体をつくる。補充したhPL及びhPRL類似体はhGHbpの2量化を促進しないのでhPL及びhPRL材料は、最初のレセプター認識および結合に必要なものとは別の必要な2量化決定因子を欠如していると結論する。hGH(hGHbp)2の形成に関係する領域を局在化するために、hPLまたはhPRL同族体置換した一連のhGH変異体並びに2つの削除類似体を、ホルモン誘発レセプター2量化の減少のためにスクリーニングした。次に重要な側鎖は、さらに詳細なアラニン走査戦略で同定した。
ホルモン誘発hGHbpの2量化の定量のために、蛍光でラベルしたhGHbpのホモクエンチングを測定する感度アッセイを用いた。変異体のhGHbp(S237C)を構築し、精製し、そして5−ヨードアセタミドフルオレセイン(5−IAF)と反応して蛍光的にラベルしたhGHbp(S237C−AF)を得た。得られたS237C−AF試薬はpGHbpあたり1コのラベルをもち、競合的結合アッセイでは十分な結合活性を保持する。フルオレセインは、重なりあう励起および発光スペクトルをもっているのでこの蛍光プローブは分子が互いに接近するときにホモクエンチングを受ける。このシグナルは、図8に示すようにS237C−AFのホルモン誘発2量化をモニターするのに用いる。
図8には、hGHの順次添加による10nMのS237C−AFのホモクエンチングを示す。S237C−AFを結合緩衝液(20mM Tris.HCl, pH7.5;0.1% BSA;0.02% NaN3)の中で10nM濃度に希釈し、そして1.0mlのアリコートを12x75mmのポリプロピレンアッセイ管に入れる。120mMから0.002mMの範囲でhGHの別々の希釈を行う。次に緩衝液またはhGH希釈液のアリコート(10ml)のみをS237C−AF管に加え、混合物を暗所で25℃に5時間培養して平衡化させる。培養後、島津のRF5000U分光蛍光計で490nmの励起1と512nmの発光1(バンド幅は各々3nmと10nm)を用いて蛍光を測定する。F/Fo比を3回の測定から計算し、hGH濃度に対してプロットする。S237C−AFの製造は次のようである。変異体S237C−hGHbpを構築し前述のようにして精製する。1mg/mlのS237C溶液を25mMシステイン塩酸塩と25mMのNaHCO3に加え、4℃で2時間培養して237の位置でシステインを脱ブロックする。50mMトリス塩酸塩(pH8)で平衡化したPD10(Pharmacia)ミニカラムで脱塩し、直ちに暗所で500mMの5−IAF(Molcular Probes)と4℃で16時間反応させる。5−IAF添加前の脱ブロックS237CのDTNB分析は、S237C分子あたり平均1つの遊離チオール基を示す(22mMの遊離SHに対して17mMのS237C)。5−IAFの反応したS237Cは、20mMトリス塩酸塩(pH7.5)で平衡化した別のPD10ミニカラムを用い遊離のフルオルフォア(Fluorfore)から精製する。精製したS237C−AFのアリコートを−80℃で貯蔵し、使用直前に解凍する。S237C−AFの吸収スペクトル分析は、71300(494nmで)と64800(280nmで)のモル吸光係数を用い280nMでの5−IAF吸収干渉を補正することで、1.0mMのS237Cあたり0.84mMのフルオレセイン結合を示す。
ここに、hGHは一定の10nM濃度のS237C−AFに対し系列的に希釈され、そして蛍光クエンチングを平衡点で測定する。ホモクエンチングはhGHの添加と共に増加し、hGHの0.5モル当量(5nM)で最大(DF/Fo=11%)となる。しかし極めて顕著なことには、このホモクエンチングはhGHの高濃度では逆転し、これはhGH・(hGHbp)2は過剰のhGHの存在下で(すなわちhGH/hGHbpが0.5よりも大きいとき)hGH・hGHbpモノマー複合体に解離することを示す。測定された蛍光ホモクエンチングは、供与体(S237C−AEDANS)蛍光クエンチングと受容体(S237C−AF)蛍光励起の両方を測定するため非同一の供与体/受容体のペアを用いた実験から示されるような正当のフォルスターエネルギー転移を反映している。大過剰のhGH(70nMより大きい)の存在下でおこるところのF/Foが1より大きい値の測定蛍光値の上昇は、結合したhGH・S237C−AF複合体に対する遊離のS237C−AFの高い非特異性結合によるもののようである。この現象はアッセイで得た(図9)IC50値を僅かに歪めるようであるが、我々の分析の基礎である相対的IC50値は影響を受けないで保持されるべきである。
図9において、S237C−AFのhGH誘発2量化のIC50測定が行われた。結合緩衝液(20mM Tris.HCl, pH7.5;0.1% BSA;0.02% NaN3)中のS237C−AFの系列的希釈(3倍)(図8に示すようにして作成)は60nMから0.08nMの範囲にわたって作られ、そして1.0mlのアリコートをアッセイ管に入れる。同様に、hGHを系列的に希釈したが、ただしその範囲は3mMから0.004mMとする。hGH希釈(hGH:S237C−AFのモル比は1:2)のアリコート(10ml)と緩衝液のみを、S237C−AF含有のアッセイ管に添加し(3回)、混合し、そして暗所で平衡に達するまで25℃で5時間培養する。平衡のあと、既述のようにして(図8)蛍光を測定する。但し励起バンド幅は10nMとする。IC50値を、最大の半分のDF/Fo値を与えるhGH濃度として計算する。
表IIIには、hGHの削除変異体および同族体置換で誘導されたS237C−AFの2量化のIC50値が示されている。hGH変異体の同等性を次のように示す。削除はD;ヒト胎盤ラクトゲン置換はhPL;そしてヒトプロラクチン置換はhPRL。削除または置換した領域はカッコで示す。IC50値は図2で説明したようにして測定する。標準偏差はふつうは文献値の+/−50%よりも少ない。
Figure 0003983280
まずhPL及びhPRLセグメント置の一連の同族体走査hGH変異体をS237C−AFに基づくアッセイで試験した(表III)。そのうち3つ、すなわちhPRL(12−19)、hPRL(75−74)及びhPRL(111−129)は、ホルモン誘発hGHbp2量化において著しい減少(各々18、6及び100倍より大きい)を示した。しかしhPRL12−19及びhPRL54−74は、1次部位結合に決定的な残基を分裂させ、この部位のhGHbp親和性を実質的に減少させた。これらの変異体に対する1次部位結合の損失は、hGHbpの2量化について観察された減少に大いに関係しているようである。実際、野生型のhGHによるS237C−AFホモクエンチングで観察された500pMIC50は、1次部位hGHbp親和性に関して報告されたもの(Kd=400pM)と殆ど同等である。更には、結合親和性を減少する1次部位決定因子の変異体(たとえばR64A及びK172A/F176A)もまた2量化を減少し、そして1次部位のhGHbp親和性を高めるhGH変異体(E174A)も我々のアッセイでは2量化を高める。他の同族変異体すなわちhPRL(111−129)は、1次部位結合には影響しないけれども、サイズ排除クロマトグラフィーで分析したとき不均一性の証拠を示し、90%はhGH・hGHbp複合体のみを形成するが残りの10%はhGH・(hGHbp)2を形成する。比較的完全な2次部位結合のこの変異体の副分画の存在は、この変異体の効果は蛋白の保持不全または翻訳後修飾に帰せれれることを示唆する。
同族体走査変異体に加えて2つのhGH削除類似体、すなわち1つはN−末端から8つの残基を除いたもの[D(1−9)]もう1つは32−46残基を削除した天然の変異型(20KhGH、アメリカ特許第4446235号)を試験した(表III)。Δ(1−8)変異体はhGHbp2量化誘発能力において劇的な減少を示した(100倍より大きい)。この変異体は1次部位結合に僅かの効果しかないので(Kdmut/Kdwt=4)、hGHbp2量化での損失は2次部位hGHbp結合の分裂によるものであろう。
実施例5 hGH変異体のアラニン走査
2次部位hGHbp結合に関与する特定の側鎖を解明するために、アラニン走査によってD(1−8)、hPRL(11−19)及びhPRL(111−129)変異体で同定された領域を調査した。同族性置換で同定した2つの領域はブタ成長ホルモンのX線結晶構造によればヘリックス形で高度に両親媒性なので、我々は変異体について残基が溶媒に露出されているこれらのヘリックスの親水性面に位置するもののスクリーニングに焦点をあてた。これらの領域に加えて、我々は更にC−末端に近い3つの変異体(E186A、S188A及びF191A)をスクリーニングした。何故ならば我々はこの領域における適当な同族的置換類似体を欠いているからである。
26のアラニン変異体のセット(表IV)から我々は、hGHbp2量化で大きい分裂(33及び56倍)を惹き起す2つの変異体すなわちF1A及びI4A並びに2倍以上の減少を惹き起すもう4つのもの(L6A、R8A、D116A及びE119A)を発見した。アラニン走査は、N末端におけるF1A及びI4Aの近傍の残基はヘリックスAとCのC末端領域の残基と同様に、2次部位hGHbp結合に顕著に貢献しないことを示す。N末端領域からF1とP2を削除したhGH類似体[D(1,2)]からの付加的データはD(1,2)を示しF1A単独が起こすようなものより大きく2量化を分裂しない。このことはN末端アミンまたはカルボニル基ではなくてフェニルアラニン側鎖が重要であることを示す。アラニン走査分析は2次部位hGHbp結合とレセプター2量化に最も関係するhGH決定因子はF1とI4の疎水性の側鎖であることを示す。これらの決定因子は、支配的な親水特性の多くの残基から成る(Matthews, J. Mol. Biol. 33:491(1968))1次部位結合に必須なものとは全く異なっている(Boutin et al., Cell 53:69(1988))。
アラニン置換hGH変異体で誘発されたS237C−AF2量化のIC50値を表IVに示す。変異体は、野生型残基とアミノ酸配列内の位置、そして変異体残基(この場合はアラニン)から命名される。アミノ酸は1次コードで次のように表す。A, Ala;C, Cys;D, Asp;E, Glu;F, Phe;G, Gly;H, His;I, Ile;K, Lys;L, Leu;M, Met;N, Asn;P, Pro;Q, Gln;R, Arg;S, Ser;T, Thr;V, Val;W, Trp;Y, Tyr。発現されなかった変異体はNEと表示する。IC50値は図2に示すようにして計算する。標準偏差はふつう文献値または既述の値の+/−50%より少ない。
Figure 0003983280
Figure 0003983280
実施例6 蛍光のホモクエンチング
一定濃度のS237C−AF(100nM)にhGHを逐次的に加え蛍光ホモクエンチングをリアルタイムでモニター(実施例4)したところ、hGH誘発2量化では迅速な平衡時間(3分より短い)を、そして過剰のhGHの2量化(hGH/hGHbp比は0.5より大)では緩徐な平衡時間(30分より長い)を示した。これは2量化の反転が、次のメカニズムによるオフ速度限定(off-rate limited)であることを示唆する。
HR12 fi HRx+R fi+excessHfi 2HR
ここに化学量論結合は過剰のhGH(H=hGH、R=遊離hGHbp、R1=1次部位hGHbp、R2=2次部位hGHbp)条件下で2量化と競合する。1次部位化学量論的結合がおこり、従ってhGH(hGHbp)2複合体生成と競合することはわかっている。化学量論的2次部位結合が起こるかどうかの決定のために、2量化に競合する能力について1次部位を除去した類似体を試験した。hGHbp親和性を500倍減少する1次部位の中央にある変異による二重変異体であるK172A/F176Aは、2次部位を保持している。図10は、hGHbpはたとえ160倍過剰(800nM)で存在していても過剰のK172A/F176Aによって反転されないことを示す。対照してみると、作りだした1次部位をもつが2次部位決定因子を欠如する公知のhPL変異型は、2量化を20nM(4倍過剰)のIC50で効果的にブロックする。このデータは、化学量論的2次部位結合はおこらないこと、そして2量化は連続的な結合メカニズム、すなわち
H+R fi HR1 fi+R fi HR12
によって進行することを示す。
2次部位hGHbp結合は化学量論的な1次部位複合体形成を必要とするので、この結合はhGH単独ではなくて、hGH・(hGHbp)の中に存在する決定因子に依存せねばならぬ。そのようにこれらの決定因子は、最初のhGHbp結合によって引き出されるコンホメーション的変化及び/または1次部位hGHbpから誘導されねばならぬ。
実施例7 X線結晶学に基づくhGH−hGHbpアミノ酸相互作用
hGH(hGHbp)2結晶の生成は、Blundell and Johnson, Academic Press, London, 1976に記載の方法に従うX線結晶学技術を用いてhGH(hGHbp)2複合体の3次元構造の決定を可能とする。複合体の結晶は、結晶種添加の反復と共に存在する液滴の蒸気拡散を組み合わせて成長させる。結晶の貯蔵液は、hGHbpにmet-hGHを僅かに2:1モル過剰で添加し4℃で24時間培養して製造される。次に複合体を濃縮し、120mMのNaCl、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)及び1mMのPMSFで平衡化したサイズ排除カラム(G75-120 Sephade(Sigma))上におく。複合体を含む分画をプールし、濃縮し、そして50mM酢酸ナトリウム(pH5.5)と1mMのPMSFで脱塩する。得られたストック液中の複合体濃度は4mg/mlであった。E280(0.1%)=1.67cm-1。複合体のストック溶液は、飽和硫酸アンモニウム(超精製したもの;Schwarz-Mann)を添加して10%飽和溶液とした0.1Mビストリス液(pH6.5)を用いて1.7mg/mlに希釈した。MPD(Aldrich)を、最終濃度が1%になるように添加した。次に混合物50μlをパイレックスガラスの滴板にピペットで加え、結晶種添加の前に150mmx25mmのプラスチックの培養皿の中で室温で2日間40%硫酸アンモニウムで平衡化する。2週間のうちに、45kV、110mAで作動する回転陽極ゼネレータ上で2.7オングストロームで回折する1x0.5x0.1mmの大きさの結晶を得る。
hGH(hGHbp)2結晶構造の3次元ポリペプチド構造を図11に示す。中央上の領域の太線はhGH分子を表し、αヘリックスは明瞭に見える。このhGH分子は2つのhGHbp分子と結合し、その1つは左側、もう1つは右側である。これらのhGHbp分子の各々は一本鎖で結合する2つの領域をもち、上の領域はhGH分子と同じ高さで、他の領域は垂直に位置し図の下のほうへ出ている。hGHbpのこれら最後の2つの領域は、図11の下端で互いに接触している。この底部での接触は、2つのhGHbp分子間の唯一の接触領域であり、その接触点は以下に記載する。この構造に基づいて、3つのポリペプチドの相互作用アミノ酸の分析が行われた。それらは次の3つのカテゴリーに分けられる:1)表Vに示すhGHとhGHbp1(結合すべき最初のhGHbp)の間の相互作用;2)表VIに示すhGHとhGHbp2(結合すべき2番目のhGHbp)の間の相互作用;3)表VIIに示す複合体の2つのhGHbpの間の相互作用。表VとVIは、そこに示す特異なhGHbpアミノ酸へ結合する特異な個々のhGHアミノ酸を開示する。特定の基の結合と化学的相互作用の性質もまた記載してある。命名は標準的なアミノ酸1文字命名法に従い、天然のhGHまたはhGHbpのアミノ末端から数えるときのアミノ酸の数に従う。表V、VI及びVIIにおけるその他の記号の意味は次のようである。MC=主鎖、SC=側鎖、SS:ジスルフィド、HB=水素結合、SB=塩橋、VW=ファンデルワールス。これらの表は全ての部位1−及び2−影響残基を包含するものではない。
Figure 0003983280
Figure 0003983280
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Figure 0003983280
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実施例8 モノクローナル抗体のhGHレセプター刺激のための使用
本発明のアッセイは、成長ホルモンレセプターに向けられたモノクローナル抗体のスクリーニングに用いられる。得られたモノクローナル抗体は、成長促進の相対的能力をインビボで評価できる。モノクローナル抗体MAb263(Agen Biochemical Ltd., Queensland, Australia)を、グリコシル化ラットとウサギレセプターを免疫源として作成する。MAb263を、ラットで155mg/kgのhGH用量とモル比で当量の用量で下垂体切除ラットの皮下注射で毎日投与すると、図12に示すように著しい体重増加が認められる。
1群8匹のラットから成る2群に対して、MAb263(1.05mg/kg)と共にまたは無しで希釈緩衝液(10mMトリス、pH8、0.1%ウシ血清アルブミン)を投与する。ラットには食餌と水を要求に応じて与える。毎日の体重を図12に示す。第6日目の終わりにラットの体重を測定し、結果を下の表VIIIに示す。
Figure 0003983280
従って成長ホルモンレセプターに対するモノクローナル抗体は、体重増加をおこさせるために投与することができる。
実施例9 アゴニストまたはアンタゴニスト活性のための細胞アッセイ
新規な細胞に基づいた生物活性アッセイ系をここに提供する。それは、ホルモンまたはサイトカインレセプターへC末端で自由にしたGHレセプターの細胞外GH結合領域、例えばEPO、α−インターフェロン、β−インターフェロン、GM−CSF,C−CSF、プロラクチン、胎盤ラクトゲンまたはインターロイキン2、3、4、6もしくは7のそれ、ホルモンまたはサイトカインに通常応答する細胞系およびホルモンまたはサイトカインのレセプターを通常含有する細胞系から成るところのハイブリッドレセプター(アメリカ特許第4859609号)形質転換細胞系に基づくものである。通常は、N末端とGHレセプターフラグメントが融合したホルモンまたはサイトカインレセプターの貫膜および内質部分のみが用いられる。細胞の応答性は、測定可能な特性たとえば膜特性の変化、増殖、有糸分裂性、被検体の放出(たとえば脱顆粒)などである。
hGHレセプターは、インターロイキン3(IL−3)や顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターを含む造血起源のレセプターの一大グループに属する(Bazan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6934(1990);Cosman et al., Trends Biochem. Sci. 15:265(1990);Patthy, Cell 61:13(1990))。ナガタとその共同研究者(Fukunaga et al., EMBO J. 10:2855(1991))は、全長のネズミG−CSFレセプターでトランスフェクトしたIL−3依存性骨髄白血病細胞系(FDC−P1)ばIL−3無しのG−CSFの添加によって増殖することを示した。ハイブリッドレセプター(アメリカ特許第4859809及び5030576号)が大阪生科学研究所のイシザカ−イケダエツコ及びナガタシゲカズ博士によって構築された。このものはG−CSF結合領域を欠如し但し3つの細胞外フィブロネクチン反復、貫膜および細胞内領域を含むmG−CSFレセプターの形に結合したhGHbpを含有している。フィブロネクチン領域はG−CSFの結合に関与せず、mG−CSFレセプターの良好な発現に必要である(Fukunaga et al., EMBO J. 10:2855(1991))。
ハイブリッドレセプターは、mG−CSFレセプター(3つのフィブロネクチン領域ならびに全貫膜および細胞内領域をコードしているもの)のエキソン7から15までに結合しているhGHレセプター(分泌シグナルと細胞そとhGH結合領域をコードしているもの)のエキソン1から5までを含有するcDNAから構築された。hGHレセプターから誘導される配列(Leung et al., Nature 330:537(1987))は、FDC−P1細胞のハイブリッドレセプターの発現を許すベクター、すなわちpBOS−I61(Fukunaga et al., EMBO J. 10:2855(1991))の中へPCRでクローンされた。単一のシステインは、2つのレセプターフラグメントの接続部で生産された。安定なFDC−P1細胞のトランスフェクションと培養は(上に)述べたとおりであった。
全細胞でのハイブリッドレセプターからの[125I]hGHの競合的置換は、細胞あたりのレセプターの概数と親和性を調べるために用いた。IL−3で成長させた細胞は、アッセイの前に燐酸塩で緩衝した食塩水(PBS)と10%FBSで洗浄する。細胞を4℃で18時間、10pMの[125I]hGH(Y103)の存在下にhGHの系列的希釈で培養(1.2x106/ml)する。次に細胞をPSCで2回洗浄して過剰のラベルを除去する。Y103Aは、第2のhGHbpの結合を部分的にブロックするであろうY103のヨード化を防ぐのに用いる(Bass et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 88:4498(1991))。
幾つかの独立した結合実験において、hGHのKd値は0.1±0.03nMであり、細胞あたり1000±300のレセプターがあった。この親和性は、可溶性のhGHbpへのhGH結合より約3倍強力で、細胞のレセプターへのhGHの結合の結合活性効果を反映している。非トランスフェクト細胞は、hGHの特異的結合部位を欠いている(Bass et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 88:4498(1991)。図13は、細胞増殖を誘発するhGHの能力におけるhGH濃度の増大効果を示す。低濃度ではhGHはこのアッセイでは、細胞全体におけるKd(約100pM)より若干低い約20pMのEC50で潜在的アゴニストとして作用する。これは、100%のレセプター占拠率より低いところで最大の細胞い増殖がおこっているであろうことを反映する。
突然変異分析(Cunningham et al., Science 254:821(1992);Cunnngham et al., Science 244:1081(1989))及び構造研究(De Vos et al., Science 255:306(1992))は、各々のhGH分子は2価でhGHbpを結合するのに2つの別々の部位を含有していることを示す。対照的に、hGHbpは効果的に1価である。何故ならばその各々は、hGHの部位1または2と結合するのに実質的に同じ決定因子を用いるからである。過剰のhGHはhGH・(hGHbp)2複合体を分解してhGH・hGHbp複合体とし、ここでhGHはhGHbpの部位1にのみ結合する。すなわち本発明者は過剰のhGHはシグナル化をアンタゴナイズすると考える(図1)。事実、きわめて高いhGH濃度では増殖活性は失われる(IC50@2μM)。IL−3誘発の細胞増殖は、高い濃度のhGH(8μM)の存在下では変化せず、hGHは細胞増殖に毒性的でないことを示す。アゴニストもアンタゴニストもその変曲点は細胞密度に依存せず(図13)、これはこの効果が細胞間の橋かけ結合レセプターまたは他の細胞−細胞相互作用を含まないことを示す。更に、全長mG−CSFを含有するFDC−P1細胞はhGHに応答せず、ハイブリッドレセプターを含有する細胞はG−CSFに応答しない。
実施例10
ハイブリッドレセプター細胞増殖アッセイをシグナルするhGHbpの2量化に必要なものを更に調べるため本発明者は、hGHbpに対して指向されるそれら(FACs)から誘導される1価のフラグメントと2価のモノクローナル抗体(MAbs)を用いた。低濃度の4つの異なる抗レセプターMAbsのうちの3つを高濃度で添加したところ、細胞増殖を誘発するためにはhGHと同程度に活性であった(表IX)。Noneは効果のないことを表し、NDは測定してないことを表す。
Figure 0003983280
Figure 0003983280
MAb5と263はArgen, Inc.(New Jersey)から入手し、Waters及び共同研究者(Barnhard et al., Endocrinology 115:1805(1984);Barnard et al., Biochem. J. 231:459(1985)に記載されている。MAbs13E1と3D9はジェネンチックハイブリドーマグループから入手し、その性質はいろんなところに記載がある(Cunningaham et al., Science 254:821(1992))。簡単にいえば、MAbsはマウスの腹水症液をプロテインAセファローズと結合させ、0.1Mの酢酸塩(pH3.0)で溶離して精製する。FAbフラグメントは、10mMシステインを添加したPBSの中で、ジチオスレイトールで活性化したパパインでMAbsを1時間処理(MAbとパパインは50:1の重量比)して製造する。0.1Mのヨードアセタミドを添加して消化を停止させる。Fcと残りのMAbは、プロテインAセファローズに2回吸着させSuperose12(Pharmacia)上でゲル濾過して除去する。
各々のMAb(0.3〜1nM)のEC50値は通常は、ELISAで測定したKdよりも若干低い(表IX)。hGHについてはこれは、細胞全体への結合活性効果を反映しているか及び/またはその最大シグナル化は100%より少ないレセプター占拠率で得られる。さらに高い濃度(20nM〜10μM以上)では、これらのMAbsのうち2つは活性を失う。これは多分過剰のMAbが、hGHbpとの1価結合によってレセプターの橋かけ結合をブロックするからである。対応する1価のFAbフラグメントは実質的に不活性であり(図IX)これは更に2価がシグナル活性に必要であることを示す。
これらのMAbsの用量依存性曲線における相違は、それらのhGHbpへの結合において異なったやりかたがあることで説明できる。MAb5は、たぶん両方のレセプターが互いに接触している領域への結合により(図11)、hGH・hGHbpへの第2のhGHbpの結合を防ぐ(Cunnningham et al., Science 254:821(1992))。MAb5が最も効果が低いという事実は、レセプターは最大シグナル化のために互いに近接する必要があることを示す。MAb13E1はhGH結合をブロックし(Cunningham et al., Science 247:1461(1990))hGHの効果を模倣する。このMAbは広いプラトーを示し、アンタゴニストの相を示さない。これは多分我々がそれを観察するほど十分に高い濃度に達していないからであろう。我々はこの中和MAbはhGHのように結合し極めて安定なレセプター2量体を形成することを示唆する。対照的にMAbs263と3D9は、ホルモンとレセプターの界面から離れたところを結合して類似のアゴニスト及びアンタゴニスト相を示す。これら2つの相は、hGHほど広くは隔たっていない。これは多分2量体は最良のレセプター−レセプター接触をもっていないからであろう。MAbs3263と3D9がアゴニストであるという事実は、活性2量体を形成する構造上の必要はかなり緩やかであることを示唆する。
MAb13E1またはMAb5から誘導されたFAbフラグメントはhGH−誘発の細胞増殖に拮抗し、いっぽうMAb263及び3D9から誘導されたものはそうではない(表X)。これらの実験において細胞は、1nMのhGHに高濃度のFAbまたはhGH類似体を加えたもので培養する。半分最大阻止濃度は、hGHの細胞増殖活性の50%をブロックするに必要な濃度である。Noneは、10μMまでにFAbまたはhGH類似体では阻止が認められなかったことを表す。これらの研究は、MAb13E1及びMAb5のエピトープはホルモン−レセプターまたはレセプター−レセプター界面をブロックするという事実と一致する。
Figure 0003983280
実施例11
2量化のためのhGHの構造必要性を更に決定するために(図11)、我々は部位1または2へのレセプターの結合を減少させるように設計したhGHの変異体を調べた。部位2決定因子は保存するが部位1の重要な側鎖を変化させる二重変異体(Elberg et al., J. Biol. Chem. 265:14770(1990))は細胞増殖を促進する。しかしEC50は野生型のhGHよりも約103倍も高い濃度にシフトされる(表IX)。これは、インビボで測定した部位1のKdにおける560倍の減少と一致する(Elberg et al., J. Biol. Chem. 265:14770(1990))。我々はK172A/F176Aの滴定において不活性な相を観察するのに十分高い濃度に到達できなかった。単一のhGH変異体(G120R)は機能的な部位1を保持しているが、部位2を立体的にブロックしている。この変異体はいかなる濃度においても実質的に不活性である。すなわち部位1または2への結合は必要であるが、細胞増殖の促進には十分ではない。
変異体が部位2に結合をブロックする(但し部位1の結合はブロックしない)という逐次的シグナル化のメカニズムはhGH−誘発細胞増殖と拮抗すべきことが予想される。これを調べるために、90%最大細胞増殖を支持するに十分な濃度(1nM)のhGHに高い濃度の野生型hGHまたは部位1の変異体(K172A/F176A)もしくは部位2の変異体(G120R)を加えたもので細胞を培養した。予期したように部位2変異体はhGHを拮抗し、いっぽう部位1変異体はまったく効果がなかった。実際、部位2変異体は野生型hGHよりもアンタゴニストとして殆ど100倍も強力であった(IC50はG120Rでは10nM、hGHでは20μM;表X)。これは我々が予測してなかったものである。何故ならば、いったんG120Rが結合するとそれは2量化されずレセプターを拮抗できないからである。すなわちG120RとhGHの間の競合は、部位1による遊離ホルモン分子結合になお一層限定される。これと対照的にアンタゴニスト的となるべきhGHについては遊離ホルモンは、結合hGH中間体が反応する前に占有されてないレセプターと反応する必要がある。これは高濃度のhGHを要する。
G120RはhGHよりも極めて良好なアンタゴニストであるが、50%の拮抗性に必要な変異体の濃度は、このアッセイでのhGHのそれよりも約20倍高い(表X)。これは、単量体であるG120R・レセプター複合体におけるG120Rよりも2量体であるhGH・(レセプター)2においてhGHはより強力に結合するという事実を反映している。または、最大シグナル化は100%のレセプター占有を必要としないであろう。いずれの場合でもG120R変異体における部位1の親和性の改善は、それをさらに強力なアンタゴニストとするであろう。
hGH変異体は、部位1によってhGHbpに更に強固に結合する突然変異誘発により生産される(Cunningham et al., Science 24:1081(1989);Itoh et al., Science 247:324(1990))。これらの変異型の結合(H21A/R64K/E174A)は、hGHbpへ30倍も強固に結合する(表X)。この変異型はhGHと比較し得るEC50をもっているが、自己拮抗作用のIC50はhGHの約30倍低い。これは自己拮抗作用は、結合したホルモン−レセプター中間体の部位2と可溶性ホルモンの遊離部位1の間の競合から生じるという考えと一致する。部位1の結合の改善はアゴニストとしてのこのホルモンを改善しないという事実は、レセプターの2量化は速度限定的であり従って部位1と2の両方へアゴニスト変異体を導入するのが望ましいことを反映する。我々は更にこの変異型を、G120Rを含有するように変異した。テトラ変異体の変異型は、hGHアンタゴニストとしてG120Rよりも10倍強力であった(図14、表X)。これは拮抗作用に対する部位1の結合親和性の重要性の更なる証拠である。
我々の研究は、hGH、MAbs及びそれらの誘導体によっておこされる拮抗作用または自己拮抗作用はレセプター2量化のブロッキングでありレセプターの下方調節でないことを示す。まず、hGHでなくIL−3で増殖された細胞は、より大きなhGH応答またはhGHレセプター数を示さない。レセプターの下方調節はふつうレセプター活性化と密接に関連している。この場合、hGHの用量依存性曲線の拮抗作用的部分は、hGHの生理学的に適切な濃度(1μMではなく)から開始されると期待される。更にMAbsとhGHの各々のEC50対IC50の比は広範に変化し、これはレセプター活性化は単に結合性質を変えることで阻害とは容易に無関係にすることができることを示す。最後に、G120R変異体は不活性であるが、それでもhGHよりも更に強力なアンタゴニストであり、そしてG120Rによる細胞の前処理はその拮抗作用の効果を高めない。すなわちG120Rの拮抗作用の効果は単純なレセプターの下方調節と一致しない。高い濃度で自己拮抗作用をもつ他のリガンドがレセプターの2量化のブロッキングに関与することは可能であり、そしてこれは本発明の実施に有用なリガンドの同定の追加的な基礎として役立つ。
実施例12
この研究においては、乳ガン細胞系に影響する泌乳刺激ホルモンの能力を調べた。細胞系MCF−7とT47DはATCC(American Type Culture Collection)から入手した。MCD−7は、10%ウシ胎児血清(FBS、Hyclone)を添加したF−12:DMEM(50:50)培地中に保持した。T47Dは10%FBS添加のRPMIで保持した。
トリプシン化した細胞を96ウエルの培養皿に3回入れ、最終細胞密度を104/ウエル/0.1ml培地とした。アッセイ用培地は、1%のダイフィルトレートしたウシ胎児血清と抗生物質を添加したF12:DMEM(50:50)である。3〜4日後、細胞を5〜6時間1μCi/ウエルのH3−チミジンでパルス標識した。細胞を5mMのEDTAで処理して採取を容易にした。
hGHおよびプロラクチンは共に、図16に示すようにT47D細胞の増殖を誘発し得た。しかしhGH類似体のG120Rは単に不活性な成長刺激体であるのみならず、成長刺激濃度のhGHと共培養したときのアンタゴニストでもある(図16)。亜鉛の添加は何らの明白な相違を示さなかった。G120Rそれ自体が対照よりも少ないチミジン補集をするという事実は、アッセイ培地に存在するラクトゲンに対する拮抗作用効果からくるものであろう。
T47D細胞成長におけるhGHまたはG120Rの用量依存的効果を図17に示す。ベルの形をした曲線は、上記のプロラクチンレセプター及びhGHレセプターと結合するhGHの逐次的2量化モデルに対応する。手短にいって、hGH濃度の低いときは、hGHの第一レセプターへの結合に次いで、1対2の複合体を生成する第二のレセプターへの結合がおこり、それはシグナルのトランスダクションと生物学的機能を活性化する。hGH濃度が増大するときhGHモノマーは、部位1のレセプター結合と競合し、そして生物学的応答を不活性にする1対2複合体を生成する。
プロラクチンレセプターへのhGHの結合には亜鉛が必要である(Cunningham et al., Science 250:1709(1990))。すなわち亜鉛の添加がhGHの成長刺激活性を増大させるという観察は、プロラクチンレセプターは観察された成長刺激効果に主として関係することを示す。
上記のアンタゴニストG120Rは成長刺激剤としては不活性であった。1nMのhGHと拮抗するG120Rの用量依存的効果を図17Bに示す。
MCF−7細胞については図18に示すように、アッセイ培地での50μMの亜鉛の添加は、単にhGH活性のみならずバックグラウンド成長においてもまた顕著な差異をもたらす。プロラクチンでなくてhGHは、対照のアッセイ培地と比較してMCF−7細胞の成長を増大した。亜鉛の現実の役割は将来の研究を必要とする。Calvalloほかは、乳ガン患者は著しく高い血清亜鉛レベルをもつと報告している(Cancer 67:738(1991))。アッセイに必要な亜鉛の量を滴定したとき、MCF−7細胞は、試験したすべての他の胸部肉腫細胞系よりも約2〜3倍も高いレベルの亜鉛を必要とした(データは示さず)。しかし亜鉛が存在すると、hGH及びhGH類似体のG120RはMCF−7細胞中ではT47D細胞中でと同じようには機能しなかった。
すなわちこれらの実験結果は成長ホルモン類似体のG120Rは、2つの乳ガン細胞系の増殖における成長ホルモンの成長刺激活性と拮抗するのに効果的であった。

Claims (4)

  1. プロラクチンレセプターを発現する乳癌細胞の増殖を防止するための医薬組成物であって、プロラクチンレセプターに結合し、120位のアミノ酸のグリシンがアルギニンで置換された(G120R)ヒト成長ホルモン変異体であるアンタゴニストである成長ホルモン類似体の有効量を含む医薬組成物。
  2. 成長ホルモン類似体がプロラクチンレセプターポリペプチドリガンドのアミノ酸配列変異型である請求項1記載の医薬組成物。
  3. 類似体がレセプターと1:1の複合体を形成する請求項1記載の医薬組成物。
  4. 類似体が、成長ホルモンとレセプターの1:2複合体を解離する請求項1記載の医薬組成物。
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