JP3981894B2 - 4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩の製造方法 - Google Patents
4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩の製造に関する。更に詳しくいえば、下記反応式で示される4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの還元により4,6−ジアミノレゾルシノールを製造する際の精製及び副生成する(置換)アニリンの分離、リサイクルに関する:
【化2】
(式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ヒドロキシカルボニル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表し、nは0又は1〜5のいずれかの整数を表し、2個以上のRは互いに同一又は異なっていてもよい。)。
【0002】
4,6−ジアミノレゾルシノールは、ポリベンゾオキサゾールのモノマーであり、このポリベンゾオキサゾールは高強度、高弾性率を有し、また耐熱性、耐薬品性に優れた特性を有するポリマーである(特表昭61−501452号公報、特開平2−229143号公報)。
【0003】
【従来の技術】
特表平2−500743によれば、4,6−ジニトロー2ークロルレゾルシノールを貴金属触媒下、水素により還元した反応液より4,6−ジアミノレゾルシノールを取り出す方法は下記の通りである。反応液より触媒を濾過により分離した後、多量の塩酸を加えて4,6−ジアミノレゾルシノールを塩酸塩として塩析し、ロ集している(この操作を1次晶析とする)。
【0004】
その後、1次晶を水に溶解し活性炭処理をした後、活性炭をロ別し、ロ液に多量の塩酸を加え塩析により、4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩を析出させロ集、乾燥し4,6−ジアミノレゾルシノールを得る。
【0005】
このようにして得られた物は、なんら問題なくテレフタール酸と重合する。
一方、特開平7−242604号公報には、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを還元し4,6−ジアミノレゾルシノールを得る方法が知られている。この方法は、還元後の反応液から、上記の晶析法と同様の方法にて取り出した4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩は、しばしば重合がうまくいかず再度、再結晶が必要な事が多い。これは工業的にきわめて大きな問題である。重合不調の原因は、4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩中に少量存在するアニリンによる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、この還元後の反応液の精製法を検討した。その結果、一次晶析後の4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩には、少なからぬ量のアニリン塩酸塩が存在していた。その量は、晶析条件にもよるが、還元工程において生成するアニリンの10〜50%に相当する。また、4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩の回収率も、アニリンのない場合に比較し5〜10%低下する。
【0007】
一次晶にアニリンが存在する為、二次晶析でも少ない量であるが4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩に混入し、重合に悪影響を与える。
アニリン存在下の4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩の取り出しは、下記3点の問題点がある。
1 重合に対する品質問題
2 回収率の低下
3 アニリンが分散し回収の作業が煩雑になる。
本発明の目的は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを溶媒中、貴金属触媒の存在下に水素還元し4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩を得る方法において、テレフタール酸との重合に対する品質問題がなく、副生する(置換)アニリンを効率的に回収できる、4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩の製造方法の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討の結果、前記3つの問題を解決す方法を見出し本発明を完成させた。即ち、本発明は、式〔1〕
【化3】
(式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表し、nは0又は1〜5のいずれかの整数を表し、2個以上のRは互いに同一又は異なっていてもよい。)で表される4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを溶媒中、金属触媒の存在下に水素還元し4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩(その塩とは、4,6−ジアミノレゾルシノールの酸塩を意味する。以下、同じ)を得る方法において;
還元反応時の溶媒が、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノール1重量部に対して、0.5〜10重量部の芳香族炭化水素、2〜20重量部の水及び1〜5重量部の水溶性有機溶媒よりなる混合溶媒であり、
還元反応前に、原料溶液中の4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの(2/N)×(0.25〜5)倍モルのN塩基酸を、原料溶液中に添加し;還元反応終了後、触媒のろ過による除去の後に、上記の加えた酸の量を、該アゾレゾルシノールの(2/N)×(0.55〜1.0)倍モルに上記とは同種又は異種のN塩基酸またはアルカリの添加又は不添加により調整し、上記還元反応により同時に生成した(置換)アニリンのみを分液により除去することを特徴とする4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩の製造方法に関する。
【0009】
4,6−ジアミノレゾルシノールの塩の結晶化による精製の前に、(置換)アニリンの大部分が除かれるため、結晶化と再結晶の際の回収率が良く、その上、結晶化と再結晶の結果得られる4,6−ジアミノレゾルシノールの塩の純度が高い。この精製により得られた4,6−ジアミノレゾルシノールの塩は、高分子原料のとしての品質問題がない。
又、 還元反応の際に副生したアニリンの大部分は、上記結晶化の前に、分液により容易に回収される利点がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の出発原料である4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールは、式〔2〕
【化4】
(式中、Rとnは式〔1〕中と同じに定義される。)で表される(置換)アニリンをジアゾ化し(置換)ベンゼンジアゾニウム塩を得、該ジアゾニウム塩を、レゾルシノールとカップリング反応させて得ることができる。具体的には、式と5〜10重量倍の水との混合物中に、冷却下、アニリンに対して2.5〜4当量の無機酸を滴下し、この混合液中へ、(置換)アニリンに対し2〜3重量倍の水に溶解した1〜1.5倍モルの亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムを10℃以下で滴下することにより(置換)ベンゼンジアゾニウム塩を得る。無機酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸及び燐酸の中から選ばれた少なくとも1種の無機酸が用いられる。これらの無機酸の中で塩酸が工業経済的に好ましい。
【0012】
具体的には、例えばアニリン、2−クロルアニリン、4−クロルアニリン、2,6−ジクロルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、アントラニル酸、o−アニシジン、m−アニシジン及びp−アニシジン等を挙げることができ、これらのアニリンのいずれかを使用することが好ましい。経済性、化合物の安定性などでアニリンが最も好ましい。
【0013】
式(置換)ベンゼンジアゾニウム塩とレゾルシノールのカップリング反応は、公知の方法が用いられるが、本出願人等が特願平7−309803号として出願した式〔3〕
【化5】
(式中、Rとnは式〔1〕中と同じに定義され、XはCl、Br、OSO3 H又はOPO3 H2 を表す。)で表される(置換)ベンゼンジアゾニウム塩をアルカリ性にした溶媒中で反応させることによる方法、或いは特願平7−346483号として出願した、式〔3〕で表される(置換)ベンゼンジアゾニウム塩の溶液とアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の溶液又は懸濁液とを混合し、アルカリ性とした混合液を得、この混合液とレゾルシノール及び/又はそのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を混合し反応させる方法が、好ましい。
【0014】
4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの還元は通常、貴金属触媒を用い水素で還元する。貴金属触媒としては白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びイリジウムなどが用いられる。貴金属触媒の形態は活性炭、けいそう土、アルミナなどに担持した担持触媒が用いられる。好ましい貴金属触媒は、パラジウム及び/又は白金である。貴金属触媒の量は4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して金属分として0.001〜0.5重量%である。好ましくは0.002〜0.3重量%である。
【0015】
水素圧は常圧〜100kg/cm2であるが、好ましくは常圧〜10kg/cm2である。
特開平7−242604号公報によれば、還元は中性条件で実施されてる。しかし、生成する4,6−ジアミノレゾルシノールは、中性またはアルカリ性では安定性が悪く、反応に長時間かかると収率が低くなる。特に、大スケールでは反応時間が長くなり、重大な収率低下を起こす。
【0016】
このために通常は、N塩基酸〔N塩基酸とは、供与しうるプロトンをN個だけ持つ酸をいう。即ち、塩基度Nの酸をいう。一塩基酸の例は塩酸、酢酸;二塩基酸の例は、硫酸(H2 SO4 )、シュウ酸(H2 C2 O4 );三塩基酸の例はリン酸(H3 PO4 )である。〕を加えて酸性下で還元する。酸としては、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸;酢酸、シュウ酸等の有機酸が用いられる。その量は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して(2/N)×(0.25〜5)倍モル、好ましくは(2/N)×(0.55〜1.0)倍モルのN塩基酸を用いる。酸としては塩酸が好ましい。
【0017】
通常、還元は溶媒中で行われる。溶媒としては、水、低級アルコール類、芳香族炭化水素、ハロ置換ベンゼン類、エーテル類が用いられる。低級アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどがあり、芳香族炭化水素としてはベンゼン、キシレン、トルエンなどがあり、ハロ置換ベンゼン類としては、クロルベンゼン、ジクロロベンゼンなどがあり、エーテル類としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グライムなどがある。これら溶媒は単独、または二種類以上混合して使用しても良い。
【0018】
通常は、低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合溶媒が使用されるが、本発明の場合、反応後生成するアニリンを分液操作で除く目的で、還元反応時の溶媒としては、水と芳香族炭化水素またはハロ置換ベンゼン類の混合が好ましい。水だけでも、芳香族炭化水素またはハロ置換ベンゼン類だけでは反応は好ましくないが、混合の場合は反応収率の点でも、反応時間の点でも問題ない。更に、水と芳香族炭化水素またはハロ置換ベンゼン類の混合液に、水溶性有機溶媒を加えた3種類の混合溶媒系が、反応収率、反応時間の点でより効果があり、特に好ましい。
【0019】
溶媒量としては、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを基準とし1〜50重量倍、好ましくは2〜20重量倍である。
3種類の混合溶媒の場合、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して、0.5〜10重量部の芳香族炭化水素またはハロ置換ベンゼン類、2〜20重量部の水及び1〜5重量部の水溶性有機溶媒0.1〜50重量部の範囲が好ましい。
【0020】
次に、還元後の処理について説明する。触媒を分離後の4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの還元反応液を、4,6−ジアミノレゾルシノールの1.1〜2.0の酸塩になるように調整し、遊離(置換)アニリンを先に分離し、4,6−ジアミノレゾルシノールの酸塩を単離する方法について述べる。
還元反応溶媒として低級アルコールを用いた場合、酸を加えて低級アルコールを留去した後、上記調整を行う。
【0021】
還元反応で多量の酸を用いた場合、アルカリを加えて4,6−ジアミノレゾルシノールのアミノ基に対して0.55〜1.0倍当量の酸が存在するように調整する。残存酸量が0.55倍当量未満であると、4,6−ジアミノレゾルシノールのフリーの物が固体となり分液が困難になる。残存酸量が1.0倍当量を越えると上層(有機溶媒層)に移行するアニリンの量が少なくなる。好ましくは、残存酸量は、4,6−ジアミノレゾルシノールのアミノ基の0.55〜0.75倍当量である。
【0022】
反応溶媒として、水と混合しない有機溶媒(換言すれば、水に難溶性ないし不溶性である溶媒)、例えば、芳香族炭化水素、ハロ置換ベンゼン類などを用いた場合、残存する酸量を調整し、分液するだけで、(置換)アニリンの回収およびその後の4,6−ジアミノレゾルシノール酸塩の分離精製が容易に行なわれる。上記の水と混合しない有機溶媒は、4,6−ジアミノレゾルシノール及びその塩を溶解し難いことが望ましい。
【0023】
上述の還元反応の際に使用される有機溶媒が水溶性の場合は、この有機溶媒が留去された後、必要に応じたアルカリ又は酸の添加の後、水層からの(置換)アニリンの分離が起こる。この場合はアニリンそのままの形での分液により分離しても良いが、水に混合しないで(即ち、水に難溶性ないし不溶性であって)、4,6−ジアミノレゾルシノールを溶解し難い溶媒、例えば上述の還元反応で使用された水に混合しない(還元すれば水に難溶性ないし不溶性の)有機溶媒又はハロゲン化脂肪族炭化水素例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エタンを添加してその有機溶媒層に(置換)アニリンを移行させるのが好ましい。この有機溶媒層中へのアニリンの移行によりアニリンの回収率は高まる。
【0024】
水層を下層にすることを所望する場合は、水層より低い比重の有機溶媒を使用する。 水層を上層にすることを所望する場合は、水層より高い比重の有機溶媒を使用する。
又、所望により上記の有機溶媒による(置換)アニリンの抽出を2回以上してもよい。
【0025】
(置換)アニリンと4,6−ジアミノレゾルシノールは、例えば塩酸を加えた場合、塩の生成は平衡関係にあり、4,6−ジアミノレゾルシノールのアミノ基の0.55倍未満当量の塩酸では、フリーの4,6−ジアミノレゾルシノールが残り、それが不溶物となって、分液が困難となる。塩酸が4,6−ジアミノレゾルシノールのアミノ基の1.0倍当量より多くなると、(置換)アニリンの塩酸塩が多くなり分液で水層から分離される(置換)アニリンの量は少なくなる。このように添加される酸の当量を、4,6−ジアミノレゾルシノールのアミノ基の0.55〜1.0倍当量、好ましくは0.55〜0.75倍当量に調整することにより、副生成する(置換)アニリンの50〜80%を除去(換言すれば、回収)できることが判明した。更に、この50〜80%の(置換)アニリンの除去により、塩酸(塩析効率を高めることのできる濃度の塩酸、例えば濃塩酸)を加えて得た4,6−ジアミノレゾルシノールの一次晶には(置換)アニリンがほとんど存在しないこと、そして一次晶を精製した二次晶は極めて純度が高いものであることそして回収率が高いものであることを見出した。
【0026】
更に、還元反応時加えるN塩基酸の量を4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して(2/N)×(0.55〜1.0)倍モル好ましくは(2/N)×(0.55〜0.75)倍モルとすると、酸量の調製も必要なくより簡便になる。
【0027】
触媒分離後、有機溶媒を分液により分離した後、水層に4,6−ジアミノレゾルシノールのアミノ基に対し2.5〜15倍当量の酸を加え、0〜10℃に冷却し、析出した固体をろ集し、更に、得られた固体を水に溶解し、4,6−ジアミノレゾルシノールに対して0.01〜0.5部の活性炭を加え、60〜100℃で処理した後、活性炭をろ別し、更に4,6−ジアミノレゾルシノールのアミノ基に対し2.5〜15倍当量の酸を加え、0〜10℃に冷却し、析出した固体をろ集する事が好ましい。このようにして得た4,6−ジアミノレゾルシノール及びその酸塩は、ポリベンゾオキサゾールの原料として問題無く使用できるものである。
【0028】
以下に本願発明の好ましい実施態様例を記載する。
4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩の製造方法の好ましい実施態様:
(1)原料溶液中の4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの(2/N)×(0.55〜1.0)倍モル、好ましくは(2/N)×(0.55〜0.75)倍モルのN塩基酸を、原料溶液中に添加する製造方法。
また、還元反応終了後、触媒のろ過による除去の後に、上記の加えた酸の量を、該アゾレゾルシノールの(2/N)×(0.55〜0.75)倍モルに上記とは同種又は異種のN塩基酸またはアルカリの添加又は不添加により調整することを特徴とする製造方法。
(2)4,6−ジアミノレゾルシノールの塩が塩酸塩である本願発明又は実施態様(1)の製造方法。
(3)N塩基酸が塩酸である本願発明又は実施態様(1)と(2)の製造方法。
(4)生成した(置換)アニリンを水に難溶性の有機溶媒で抽出、分液する本願発明又は実施態様(1)ないし(3)の製造方法。
【0029】
(5)還元反応時の溶媒が、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノール1重量部に対して、0.5〜10重量部の芳香族炭化水素、2〜20重量部の水及び1〜5重量部の水溶性有機溶媒よりなる混合溶媒である本願発明又は実施態様(1)ないし(4)の製造方法。
(6)貴金属触媒が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びイリジウムの中から選ばれた少なくとも1種の貴金属である本願発明又は実施態様(1)ないし(5)の製造方法。
(7) 貴金属触媒が活性炭、珪藻土及びアルミナの中から選ばれる少なくとも1種を担体とした担持触媒である本願発明又は実施態様(1)ないし(6)の製造方法。
(8) 貴金属の使用される量が4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して金属分として0.001〜0.5重量%である本願発明又は実施態様(1)ないし(7)の製造方法。
(9) 貴金属触媒が、白金及び/又はパラジウムである本願発明又は実施態様(1)ないし(7)の製造方法。
(10) 水素圧が1〜10kg/cm2である本願発明又は実施態様(1)ないし(9)の製造方法。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本願発明を更に詳細に説明する。
製造例1
(4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールの製造)
アニリン41g、35%塩酸98g、水100gの混合溶液中に、0〜5℃で亜硝酸ナトリウム30gを水55gに溶解させた溶液を滴下し、塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液を合成した。この塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液を水酸化ナトリウム55g、水110gよりなる混合液に10℃以下で滴下した。
この混合液をレゾルシノール22g、水酸化ナトリウム24g、水22gよりなる混合液に10℃で40分かけ滴下した。滴下終了後10℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に塩酸を加え酸性とし、析出した固体を濾集、水洗、乾燥して62gの暗赤色固体を得た。
純度は4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールが90%であり、約5%の2,4,6−トリフェニルアゾレゾルシノールを含む。
【0033】
参考例1
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(純度90%)3.54g(0.01mol)、トルエン17.5g、水14.8g、35%塩酸4.2g(0.04mol)、5%Pd−C 0.16gをハステロイB製のオートクレーブに仕込み、水素を4kg/cm2 の一定圧力で水素蓄圧器より供給しながら50℃で水素吸収(蓄圧器の圧力低下)がなくなるまで約3.5時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを冷却後、水素圧を常圧に戻し、窒素置換した。濾過により反応液中の触媒を分離後、分液できるガラス容器で、窒素雰囲気下ゆっくり10%水酸化ナトリウム水溶液11.2g( 0.028モル)を滴下した。
【0034】
混合液の静置後、水酸化ナトリウムの添加によりアニリンは、上層であるトルエン層中に含有される。4,6−ジアミノレゾルシノールを含有する水層(下層)を分液しながら、直接に窒素雰囲気下35%塩酸10.4g(0.1モル)を入れた容器に注入する。水層と塩酸の混合物を0〜5℃で1時間撹拌した後、析出した固体をろ集した。得られた固体を水17gで溶解し、0.2gの活性炭を加え60℃で1時間撹拌した。活性炭を濾過分離した後、ロ液に35%塩酸10.4gを加え、0〜5℃で1時間撹拌した後濾過した。これを減圧乾燥して1.8gの白色固体を得た。この白色固体はMASS及び 1H−NMR分析により4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩である事を確認した。
また、トルエン層を液クロ分析した結果、1.5gのアニリンが検出された。
このようにして得られた4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩中には、液体クロマトグラフィーによる分析ではアニリンは検出されなかった。
【0035】
参考例2
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(純度90%)3.54g(0.01mol)、エタノール30g、水10g、35%塩酸4.2g(0.04mol) 、5%Pd−C 0.16gをハステロイB製のオートクレーブに仕込み、実施例1と同様に水素を4kg/cm2 で供給しながら50℃で水素吸収がなくなるまで約4時間反応させた。反応終了後、水素圧を常圧に戻し、窒素置換した。濾過により反応液中の触媒を分離後、ろ液から、50℃以下で、エタノール約30gを減圧留去し、残留分に水10gを加え、分液できるガラス容器に移し、窒素雰囲気下ゆっくり10%水酸化ナトリウム水溶液11.2g( 0.028モル)を滴下した。
【0036】
混合液の静置後、水酸化ナトリウムを加えるとアニリンは、上層として分離する。4,6−ジアミノレゾルシノールを含有する水層(下層)を分液しながら、直接に窒素雰囲気下35%塩酸10.4g(0.1モル)を入れた容器に注入する。水層と塩酸の混合物を0〜5℃で1時間撹拌した後、析出した固体をろ集した。得られた固体を水17gで溶解し、0.2gの活性炭を加え60℃で1時間撹拌した。活性炭を濾過分離した後、ロ液に35%塩酸10.4gを加え、0〜5℃で1時間撹拌した後濾過した。これを減圧乾燥して1.8gの白色固体を得た。
このようにして得られた4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩中には、液体クロマトグラフィーによる分析ではアニリンは検出されなかった。
【0037】
実施例1
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(純度90%)3.54g(0.01mol)、トルエン17.5g、水14.8g、35%塩酸1.2g(0.012mol)、2ープロパノール3g、5%Pd−C 0.16gをハステロイB製のオートクレーブに仕込み、水素を4kg/cm2 で供給しながら50℃で水素吸収がなくなるまで反応した。約2時間。反応終了後、水素を常圧に戻し、窒素置換した。反応液から濾過により触媒を分離後、分液できるガラス容器に移した。
【0038】
反応ろ液を静置後、4,6−ジアミノレゾルシノールの塩酸塩を含む水層を分液しながら、35%塩酸10.4gを入れた容器に窒素雰囲気下で注入した。水層と塩酸の混合物を0〜5℃で1時間撹拌した後、析出した固体をろ集した。得られた固体を水17gで溶解し、0.2gの活性炭を加え60℃で1時間撹拌した。活性炭を濾過分離した後、ロ液に35%塩酸10.4gを加え、0〜5℃で1時間撹拌した後濾過した。これを減圧乾燥して1.8gの白色固体を得た。
このようにして得られた4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩中には、液体クロマトグラフィーによる分析ではアニリンは検出されなかった。
【0039】
実施例2
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(純度98%)3.24g(0.01mol)、トルエン 8.0g、水15.9g、35%塩酸1.6g(0.015mol)、2ープロパノール1.6g、5%Pd−C 4.7mgをハステロイB製のオートクレーブに仕込み、水素を4kg/cm2 で供給しながら50℃で水素吸収がなくなるまで反応した。約2時間。反応終了後、水素を常圧に戻し、窒素置換した。反応液から濾過により触媒を分離後、分液できるガラス容器に移した。
【0040】
反応ろ液を静置後、4,6−ジアミノレゾルシノールの塩酸塩を含む水層を分液しながら、35%塩酸10.4gを入れた容器に窒素雰囲気下で注入した。水層と塩酸の混合物を0〜5℃で1時間撹拌した後、析出した固体をろ集した。得られた固体を水17gで溶解し、0.2gの活性炭を加え60℃で1時間撹拌した。活性炭を濾過分離した後、ロ液に35%塩酸10.4gを加え、0〜5℃で1時間撹拌した後濾過した。これを減圧乾燥して1.8gの白色固体を得た。
このようにして得られた4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩中には、液体クロマトグラフィーによる分析ではアニリンは検出されなかった。
【0041】
参考例3
参考例1に於いて、触媒を2%Pt−C 0.071gに変えた以外は、全く同様に還元反応及び後処理操作を行ない、4,6−ジミノレゾルシノール二塩酸塩の白色固体1.7gを得た。また、この得られた4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩中には、アニリンが含まれないことを液体クロマトグラフィーで確認した。
【0042】
【発明の効果】
4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを溶媒中、貴金属触媒の存在下に水素還元し4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩を得る方法において、原料溶液中にN塩基酸を4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対し(2/N)×(0.25〜5)倍モル加え、還元反応終了後の反応液中の酸の量を、該アゾレゾルシノールのアミノ基に対して0.55ないし1.0倍当量に調整し、副生する(置換)アニリンを、水に溶けない有機溶媒を使用して、分液により分離することにより、(置換)アニリン及び/又はその塩の混入を大幅に減少することができた。
【0043】
このように(置換)アニリンの大部分を除去して得た4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩は、結晶化とそれに続く再結晶化による精製が容易であり、高純度の4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩を、高い回収(結晶化)収率で得ることができる。この方法により得られた4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩は、テレフタール酸との重合に対する品質問題がない。また、この方法により、副生(置換)アニリンも効率的に回収できる。
Claims (10)
- 式〔1〕
還元反応時の溶媒が、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノール1重量部に対して、0.5〜10重量部の芳香族炭化水素、2〜20重量部の水及び1〜5重量部の水溶性有機溶媒よりなる混合溶媒であり、
還元反応前に、原料溶液中の4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの(2/N)×(0.25〜5)倍モルのN塩基酸を、原料溶液中に添加し;還元反応終了後、触媒のろ過による除去の後に、上記の加えた酸の量を、該アゾレゾルシノールの(2/N)×(0.55〜1.0)倍モルに上記とは同種又は異種のN塩基酸またはアルカリの添加又は不添加により調整し、上記還元反応により同時に生成した(置換)アニリンのみを分液により除去することを特徴とする4,6−ジアミノレゾルシノール及び/又はその塩の製造方法。 - 原料溶液中の4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの(2/N)×(0.55〜1.0)倍モルのN塩基酸を、原料溶液中に添加する請求項1記載の製造方法。
- 4,6−ジアミノレゾルシノールの塩が塩酸塩である請求項1又は2に記載の製造方法。
- N塩基酸が塩酸である請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
- 生成した(置換)アニリンを水に難溶性の有機溶媒で抽出、分液する請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
- 貴金属触媒が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムの中から選ばれた少なくとも1種の貴金属である請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
- 貴金属触媒が活性炭、珪藻土及びアルミナの中から選ばれる少なくとも1種を担体とした担持触媒である請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
- 貴金属の使用される量が4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して金属分として0.001〜0.5重量%である請求項1乃至7のいずれかに記載の製造方法。
- 貴金属触媒が、白金及び/又はパラジウムである請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法。
- 水素圧が1〜10kg/cm2 である請求項1乃至9のいずれかに記載の製造方法。
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