JP3981344B2 - 静止したハウジングと回転する軸の間を密閉するための装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静止したハウジングと回転する軸の間の空隙を密閉する装置に関する。より詳細には、本発明は、静止したハウジングと回転する軸の間の空隙を密閉する装置であって、弾性予圧下に軸に当接して接触するポリマー材料製のシールリップを備えるとともにハウジング内に静止して支持されている軸シールリングと、パルス発生器を備えて軸とともに回転するパルスホイールであって、外気側で軸シールリングに対して前置され、半径方向で間隔をもって軸を取り囲むパルスホイールと、パルスホイールの回転運動を検出するための、静止して支持されているセンサとを含む密閉装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
パルス発生器が軸と共に回転し、かつパルス信号用の付加的な検出器を備えている装置が公知である（例えば特許文献１参照）。しかし、この公知の装置は比較的大きな組付け空間を必要とし、この大きな組付け空間が提供されない場合には、この装置を使用することができない。このような状況は、例えばフライホイールを使用することによって、空間が非常に制限されるため、クランク軸の後端部で発生する。
【０００３】
【特許文献１】
ヨーロッパ特許第0 726 468号公報
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、静止したハウジングと回転する軸の間の空隙を密閉する装置であって、半径方向及び／又は軸方向での組付け空間が小さくとも、最小であっても使用可能である装置の提供を課題としている。このとき、センサへの良好な近接性がもたらされるべきであり、これは修理する場合に非常に重要である。装置は、低コストで製造可能であり、簡単に組み付けることができ、かつ長い期間使用できなければならない。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、冒頭に述べた形式の、静止したハウジングと回転する軸の間の空隙を密閉する装置であって、弾性予圧下に軸に当接して接触するポリマー材料製のシールリップを備え、かつハウジング内に静止して支持されている軸シールリングと、パルス発生器（ロータリーエンコーダ）を備えて軸とともに回転するパルスホイールであって、外気の方向で軸シールリングに前置され、半径方向で間隔をもって軸を取り囲むパルスホイールと、パルスホイールの回転運動を検出するための、静止して支持されているセンサとを含む密閉装置において、パルス発生器が、半径方向外側を向く磁極を有する円筒形状のスリーブによって形成されているかあるいは外周に設けられている歯及び歯と歯の間隙を有する発生器ホイールからなり、製造した状態でシールリップが円形盤状の形状を有し、組み付けられた状態でこの円形盤の内周の領域がパルスホイールの方へ延伸し、またこの円形盤の内周の領域がスリーブ及び軸の間の間隔によって形成される空隙の中に入り込んでいる密封装置によって解決される。このように形成されている装置は、例えば往復機関のクランク軸の後端部に取り付けることができる。このクランク軸の後端部という箇所は、クランク軸の回転を決定し、停止を識別するのに特に有利である。
【０００６】
円形盤又はシールリップは、少なくとも軸に当接する部分で流体力学的に作用する漏出液に対しての還流要素を備えている。軸に円形盤を取り付けた際には、円形盤は軸を同心に取り囲む一種のスリーブシール、パッキングリングとして機能する。還流要素は、スリーブシールの自由端から、最大でスリーブシールの連結領域まで螺旋状に延伸する。さらに、スリーブシールは、軸上の取り付け領域で、螺旋状の還流要素を遮断することによって機能を停止、又は流れを止めることができる。還流要素として作用する凹所は、断面において、Ｕ字形状、Ｖ字形状又は類似の形状に形成することができる。このとき、還流要素として作用する凹所は、一段又は多段に配置することができる。
【０００７】
好ましくは、円形盤又はシールリップはポリテトラフルオロエチレン（PTFE）又はゴムから製造され、このとき、ポリテトラフルオロエチレン（PTFE）コンパウンド、エラストマ、架橋結合可能な熱可塑性樹脂も使用することができる。
【０００８】
装置全体を、軸シールリング、パルスホイール、センサからなる組立セットとして製造することができる。
【０００９】
特に省スペースをもたらす装置の構成は、パルスホイールが半径方向に延伸する組立フランジを有し、規定どおりに使用される場合に、組立フランジがクランク軸の前面と往復動力機関のフライホイールの間に挟み込まれている場合に達成される。組立フランジを介してパルスホイールをクランク軸の端面にねじ止めすることができる。
【００１０】
センサは、密閉箇所の周囲側、大気側に配置されることが好ましい。この構成はコストの面で有利であり、空間を節約する。
【００１１】
軸と当接するシールリップの線状に延伸する部分又は密閉箇所と、パルス発生器の磁極又は発生器ホイールと、センサとが、軸方向のある領域において又は半径方向で重なるように配置されていることが好ましい。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下において、図面に示した複数の実施例を利用して本発明をより詳しく説明する。
【００１３】
図１に示した装置20は、本質的に軸シールリング21、多極ホイール又はパルス発生器７、センサ５から構成されている。軸シールリング21は、ポリマー材料からなるスリーブシール又はシールリップ９を有し、このスリーブシール９の半径方向外側の縁部23は支持部22に固定されている。
【００１４】
支持部22は、ポリマー材料からなる被覆部11によって取り囲まれている金属製の補強リング10からなる。スリーブシール又はシールリップ９はPTFEから形成されている。またスリーブシール９は、軸又はクランク軸３に取り付けられた場合に、略Ｌ字形形状の断面を有するように、又はロート形状、概略トランペット形状に形成されている。スリーブシール又はシールリップ９の線状に延伸する部分26において、スリーブシール９は軸３と当接する。支持部22は、ハウジング４の穿孔６の中に圧入されて固定されている。パルス発生器又は多極ホイール７は、半径方向外側に向くように磁極８が配置されている円筒形状のスリーブ24からなる。さらにスリーブ24は、半径方向に延伸する組立フランジ25を有し、この組立フランジ25を介して、パルスホイール又は多極ホイール７がクランク軸３の端面にねじ止めされている。このとき、詳しく図示しないフライホイールを同時にねじ止めすることもできる。公知の方法で種々の測定データの取り出しに利用されるセンサ５が、ハウジング４に取り付けられている。センサ５は、多極ホイール７の外周で、磁化されたポリマー層に対向して配置され、ハウジング４の穿孔６の中に突出している。センサ５、多極ホイール７及びスリーブシール９は、センサ５が、多極ホイール７の磁化されたポリマー層又は磁極８に、及び軸３上に配置されているスリーブシール９の線状に延伸する部分26に、軸方向のある領域において重なり合うように、軸を含む断面においてセンサ５、磁極８、スリーブシール又はシールリップの線状に延伸する部分26が互いに上下に位置するように配置されている。この構成により、装置全体の軸方向の広がりが最小限に抑えられる。被密閉媒体は、空間１の中にあり、他方空間２は周囲空気、外気にさらされている。
【００１５】
図２は、支持部22を図１で示す実施例とは逆向きに挿入し、かつスリーブシール又はシールリップ９の固定部23が支持部22の周囲空気２側に配置されている点で図１の構成とは異なる実施形態を示している。図２の実施形態は、装置20の本質的な部分において、縦断面図によって示す図１の装置20と同様の構成を示す。
【００１６】
図３は、その外周に、歯14及び歯と歯の間隙が互いに交互に配置されている発生器ホイール13が利用される実施形態を示す。さらに図３の実施形態では、スリーブシール９が、スリーブシールの固定部23により合成樹脂からなる支持部15に保持されている。この支持部15は、図１に示すものと同様に、ハウジング４の穿孔６の中に圧入されている。
【００１７】
図４は、シールリングの構造のもう一つの可能性のある形態を示し、装置へのスリーブシール９の取り付け状態を示す。シールリング21は、補強リング10からなるが、この実施形態では、補強リング10の、ハウジング４に対向する半径方向外側部分及びスリーブシール９の固定部分23に対向する部分にのみポリマー材11からなる被覆部が設けられている。この実施形態の場合にも、図３の実施形態と同様に、発生器ホイール13がその外周に歯14及び歯と歯の間隙を有する。
【００１８】
図５は、スリーブシール９が合成樹脂からなる支持部15によってハウジング４の中に保持されている代替的な実施形態を示す。しかし図５の実施形態では、発生器ホイール13が固定スリーブ27を備え、この固定スリーブ27は、軸３上に発生器ホイール13を固定するとともに、同時に軸３と接する面とは反対の側の面28がスリーブシール又はシールリップ９の摺動面として機能するように構成されている。
【００１９】
本発明による装置は、非常に小さな構造により仕上げることができる。スリーブシール又はシールリップ９は、例えば厚みがわずかに１mmの円形盤として仕上げることができ、またこの円形盤は、軸３の面取部29を有する外端部に向かって、軸３上を延伸することによって、略Ｌ字形形状の断面を有するように、又はロート形状、概略トランペット形状に形成される。
【００２０】
【発明の効果】
本発明は、静止したハウジングと回転する軸の間の空隙を密閉する装置に関する。この装置は、弾性予圧下に軸に当接して接触するポリマー材料製のシールリップを備えるとともにハウジング内に静止して支持されている軸シールリングと、パルス発生器を備えて軸とともに回転するパルスホイールであって、外気の方向で軸シールリングに前置され、半径方向で間隔をもって軸を取り囲むパルスホイールと、このパルスホイールの回転運動を検出するための、静止して支持されているセンサとからなり、パルス発生器（７）が、半径方向外側を向いて配置されている磁極（８）を有する円筒形状のスリーブ（24）によって形成されているかあるいは外周に設けられている歯（14）及び歯と歯の間隙を有する発生器ホイール（13）からなり、製造した状態でシールリップ（９）が円形盤状の形状を有し、組み付けた状態でこの円形盤の内周の領域がパルスホイールの方へ延伸し、またこの円形盤の内周の領域がスリーブ（24）及び軸（３）の間の間隔によって形成される空隙の中に入り込んでいる。この構成により、半径方向及び／又は軸方向でわずかな組付け空間しか必要とせず、しかもセンサへの良好な近接性がもたらされ、かつ低コストで製造可能であり、簡単に組み付けることができ、長い期間使用することができる密封装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】パルスホイール、センサ、シールリングを備えている装置の縦断面図である。
【図２】同様に、構造的に別法で配置したシールリップを備えている装置の縦断面図である。
【図３】発生器ホイールと、付着部に取り付けられているシールリップとを備えている装置の縦断面図である。
【図４】発生器ホイールと、媒体側に固定されているシールリップとを備えている図２と類似の装置を示す縦断面である。
【図５】軸上に押圧され、かつシールリップ用の走行面として利用される発生器ホイールを備えている装置を示す縦断面である。
【符号の説明】
１ 被密封媒体の空間
２ 外気
３ 軸
４ ハウジング
５ センサ
６ 穿孔
７ パルス発生器
８ 磁極
９ シールリップ
１０ 補強リング
１１ 被覆部
１３ 発生器ホイール
１４ 歯
１５ 支持部
２１ 軸シールリング
２２ 支持部
２４ スリーブ
２５ 組立フランジ
２７ 固定スリーブ

Claims (6)

1. 静止したハウジングと回転する軸の間の空隙を密閉する装置であって、弾性予圧下に前記軸に当接して接触するポリマー材料製のシールリップを備えるとともに前記ハウジング内に静止して支持されている軸シールリングと、パルス発生器を備えて前記軸とともに回転するパルスホイールであって、外気の側で前記軸シールリングに対して前置され、半径方向で間隔をもって前記軸を取り囲むパルスホイールと、このパルスホイールの回転運動を検出するための、静止して支持されているセンサとからなり、
   前記パルス発生器（７）が、半径方向外側を向いて配置されている磁極（８）を有する円筒形状のスリーブ（24）によって形成されているかあるいは外周に設けられている歯（14）及び歯と歯の間隙を有する発生器ホイール（13）からなり、製造した状態で前記シールリップ（９）が円形盤状の形状を有し、組み付けられた状態でこの円形盤の内周の領域が前記パルスホイールの方へ延伸し、またこの円形盤の内周の領域が前記スリーブ（24）及び前記軸（３）の間の間隔によって形成される空隙の中に入り込み、
   前記軸（３）と当接する前記シールリップ（９）の部分（ 26 ）と、前記パルス発生器（７）の前記磁極（８）又は発生器ホイール（ 13 ）と、前記センサ（５）とが、軸方向のある領域において重なるように配置されているものにおいて、
   前記軸シールリング（ 21 ）が、ポリマー材料よりなる被覆部（ 11 ）よって取り囲まれている金属製の補強リング（ 10 ）からなるとともに前記ハウジング（４）の穿孔（６）に圧入されている支持部（ 22 ）から、又は合成樹脂からなるとともに前記ハウジング（４）の穿孔（６）に圧入されている支持部（ 15 ）からなり、
   前記センサ（５）が密閉箇所（ 26 ）の周囲側に配置され、
   前記パルス発生器（７）が、半径方向に延伸する組立フランジ（ 25 ）を介して、前記軸（３）の端面に取り付けられている装置。
2. 前記シールリップ（９）が、少なくとも前記軸（３）に当接する部分（26）に、流体力学的に作用する漏出液に対する還流要素を備えている請求項１記載の装置。
3. 前記シールリップ（９）が、ポリテトラフルオロエチレン（PTFE）、ポリテトラフルオロエチレンコンパウンド又はゴムからなる請求項１又は２記載の装置。
4. 前記軸シールリング（21）、前記パルスホイール及び前記センサ（５）を含む組立セットからなる請求項１〜３のいずれか１項記載の装置。
5. 前記パルス発生器（７）が半径方向に延伸する組立フランジ（25）を有し、この組立フランジ（25）が、規定どおりの使用において、前記軸（３）の端面と往復動力機関のフライホイールとの間に挟み込まれている請求項１〜４のいずれか１項記載の装置。
6. 前記パルス発生器（７）が、外周に設けられている歯（ 14 ）及び歯と歯の間隙を有する発生器ホイール（ 13 ）からなる請求項１〜５のいずれか１項記載の装置。

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