JP3981229B2 - 車両の左右駆動力配分装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両の駆動輪となる左,右の車輪軸に対しエンジンからの駆動力を配分するのに好適に用いられる車両の左右駆動力配分装置に関し、特に、油圧モータを用いて駆動力を積極的に配分する構成とした車両の左右駆動力配分装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、4輪車等の車両は、例えばコーナリング性能等を向上させるために、駆動輪となる左,右の車輪軸間にデファレンシャルギヤ等の差動機構からなる差動歯車装置を備え、エンジンからの駆動力を該差動歯車装置によって左,右の車輪軸に配分する構成としている。
【0003】
しかし、このような差動歯車装置による駆動力の配分制御は、左,右の車輪が路面から受ける反力等を利用してエンジンからの駆動力を左,右に配分しているに過ぎないため、例えば凍結等により摩擦係数が小さくなった低μ路面で車輪がスリップした場合に、安定した駆動力の配分制御が困難になることがある。
【0004】
そこで、車両の駆動力を左,右の車輪軸に対し安定して配分するため、差動歯車装置に油圧モータ等の補助モータを組込み、運転者のステアリング操作等に見合った駆動力を左,右の車輪軸に積極的に配分する制御が提案されている(例えば、特開平3−50028号公報、特開平10−329572号公報等)。
【0005】
この種の従来技術による車両の左右駆動力配分装置は、ハウジングと、該ハウジングの入力側に設けられ車両のエンジンによって回転駆動される入力軸と、前記ハウジングの出力側に設けられ該入力軸からの駆動力を左,右の車輪軸に分配して伝達するデファレンシャルギヤ等からなる差動機構と、該差動機構と共に前記ハウジングの出力側に設けられ外部から圧油が給排されることにより左,右の車輪軸間に相対的な回転力を付与する可逆式の油圧モータ等とによって構成されている。
【0006】
そして、この油圧モータは車両の運転状態等に応じて外部の油圧源から圧油が給排されると、このときの油圧力により左,右の車輪軸間に相対的な回転力を付与する駆動力の配分制御を行い、例えば車両にヨーモーメントを積極的に発生させることによって、車両の走行安定性を確保できるようにするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、例えば路面が凍結した低μ路等を走行している途中で片方の車輪が空転(スリップ)した場合、または車両の急旋回時に旋回内側となる車輪が路面から浮上がって空転した場合等に、空転側の車輪軸により油圧モータが慣性回転され、ポンプ作用を起こすことがある。
【0008】
そして、このような場合には、例えば油圧モータの油圧室となるシリンダ内等で圧油の供給油量が不足し、油圧モータの圧油の給排通路内で負圧が生じ易くなり、キャビテーションの発生原因となるばかりでなく、エアの混入等により異音の発生原因になるという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、油圧モータの慣性回転時に油液を効率的に補給でき、油圧モータ内を正圧状態に保つことにより、キャビテーションや異音等の発生を防止できると共に、油圧モータの寿命、装置の信頼性を向上できるようにした車両の左右駆動力配分装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明は、ハウジングと、該ハウジングの入力側に設けられ車両のエンジンによって回転駆動される入力軸と、前記ハウジングの出力側に設けられ該入力軸からの駆動力を左,右の車輪軸に分配して伝達する差動機構と、該差動機構と共に前記ハウジングの出力側に設けられ外部から圧油が給排されることにより前記左,右の車輪軸間に相対的な回転力を付与する可逆式の油圧モータとからなる車両の左右駆動力配分装置に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記油圧モータに補給すべき油液を収容する油溜め室と、前記圧油が給排される前記油圧モータの油圧室に対し該油溜め室を連通させる連通路と、該連通路に設けられ前記油溜め室から油圧室に向けて油液が流通するのを許し逆向きの流れを阻止するチェック弁とを備え、前記油圧モータは、前記ハウジングの出力側に回転可能に設けられ前記左,右の車輪軸のうち一方の車輪軸の一部を兼用する外側回転体と、該外側回転体内に回転可能に設けられ前記油圧室に圧油が給排されることにより該外側回転体に対して相対回転する内側回転体とから構成し、前記油溜め室は、前記油圧モータの回転中心側に位置して前記外側回転体と内側回転体との間に形成する構成としたことにある。
【0012】
このように構成することにより、油圧モータが外力で慣性回転され油圧室側が負圧傾向になると、チェック弁が開弁し、油溜め室内の油液を油圧室内に向けて補給でき、油圧モータ内を常に正圧状態に保つことができる。また、油圧モータの通常回転時には、外部の油圧源から給排される圧油により油圧モータを回転駆動できると共に、圧油の圧力でチェック弁を閉弁状態に保持でき、圧油が油溜め室側に逆流するのを阻止できる。
【0013】
しかも、前記油圧モータは、ハウジングの出力側に回転可能に設けられた外側回転体と、該外側回転体内に回転可能に設けられ油圧室に圧油が給排されることにより該外側回転体に対して相対回転する内側回転体とからなり、前記外側回転体は左,右の車輪軸のうち一方の車輪軸の一部を兼用する構成としている。そして、前記油溜め室は、油圧モータの回転中心側に位置して前記外側回転体と内側回転体との間に形成する構成としている。
【0014】
これにより、油圧モータの中心側に車輪軸を貫通して設ける必要がなくなり、一方の車輪軸を兼用する油圧モータの外側回転体内に油溜め室を形成するための空間部を確保できると共に、油溜め室を含めて油圧モータ全体をハウジング内にコンパクトに収容することができる。そして、前記油圧モータの外側回転体と内側回転体との間には、その回転中心側に位置して前記油溜め室をコンパクトに形成でき、装置のハウジングが油溜め室により大きくなるのを防ぐことができる。
【0015】
また、請求項2の発明は、左,右の車輪軸のうち他方の車輪軸を油圧モータの内側回転体と一体回転可能に連結する構成としている。これにより、油圧モータの外側回転体からなる一方の車輪軸と、内側回転体に連結された他方の車輪軸との間には、油圧モータの回転駆動時に互いに逆向きの回転力を付与でき、左,右の車輪軸に対して適正な駆動力を配分することができる。
【0017】
一方、請求項3の発明によると、油圧モータの外側回転体は、一方の車輪に連結される継手部側が蓋部となって閉塞され有蓋の段付筒状体として形成されたモータケースからなり、内側回転体は、油圧室となる複数のシリンダを有し該各シリンダ内に設けたピストンによって前記モータケース内で回転駆動されるシリンダブロックにより構成している。
【0018】
これにより、シリンダブロックの各シリンダ内に圧油を給排すると、これらのシリンダ内でそれぞれのピストンを往復動させ、該各ピストンの往復動によってモータケースとシリンダブロックとの間に相対的な回転力を発生することができる。
【0019】
また、請求項4の発明は、油溜め室をモータケースの蓋部とシリンダブロックとの間に形成し、連通路は、シリンダブロックにそれぞれ形成され一端側が前記油溜め室に連通し他端側が各シリンダと個別に連通する複数の油路により構成している。
【0020】
これにより、モータケースの蓋部とシリンダブロックとの間に油溜め室をコンパクトに形成でき、該油溜め室と複数のシリンダとの間をそれぞれの油路により互いに独立して連通可能とすることができる。
【0021】
また、請求項5の発明は、チェック弁を、連通路の途中に設けられ内部に弁座を有する段付筒状の弁筒と、該弁筒との間に弁室を形成し油液が流通する油穴が穿設された弁蓋と、該弁蓋と弁筒との間の前記弁室内に移動可能に設けられ前記弁座に離着座する弁体とから構成している。
【0022】
この場合には、油圧モータの慣性回転により油圧室側が負圧傾向になると、弁体が弁筒の弁座から離座するので、油溜め室内の油液を油圧室側に流通させることができ、油圧モータ内を正圧状態に保持できる。また、油圧モータの通常回転時には、外部の油圧源から給排される圧油により弁体が押動され、該弁体が弁座に着座することによって油液の流通を阻止でき、油圧モータの油圧室内を高圧状態に保つことができる。
【0023】
さらに、請求項6の発明によると、弁体は球形のボール弁体からなり、弁蓋は該ボール弁体を弁座に対し離着座可能にガイドするため弁室内を弁座側に向けて突出したガイド突起を有する構成としている。これにより、弁蓋のガイド突起を用いてボール弁体を弁室内でガイドでき、該ボール弁体を弁座に対して円滑に離着座させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による車両の左右駆動力配分装置を添付図面の図1ないし図9に従って詳細に説明する。
【0025】
図中、1は当該駆動力配分装置のハウジングを示し、該ハウジング1は、入力側に位置する段付筒状の入力ハウジング部2と、出力側に位置して該入力ハウジング部2と一体に設けられ、左,右方向に延びた段付筒状の出力ハウジング部3とからなり、該出力ハウジング部3は、図2に示す如く中央に位置した筒状の胴部3Aと、該胴部3Aの左,右両側に設けられた段付筒状のカバー部3B,3Cとから大略構成されている。
【0026】
また、出力ハウジング部3には胴部3Aの内側に位置してカバー部3Cとの間に段付筒部3Dが設けられ、カバー部3Cと段付筒部3Dとの間には後述の油圧モータ18が回転可能に配設されている。そして、段付筒部3Dはカバー部3C側からカバー部3B側に向けて軸方向に延び、段付筒部3Dの先端側は後述の入力歯車4Aとの干渉を避けるように縮径して形成されている。
【0027】
4はハウジング1の入力ハウジング部2内に回転可能に設けられた入力軸としての推進軸を示し、該推進軸4は車両に搭載されたエンジンのクランク軸(図示せず)に連結され、エンジンによって回転駆動されるものである。また、推進軸4には出力ハウジング部3の胴部3A内へと延びる先端側に入力歯車4Aが設けられ、該入力歯車4Aは後述のリング歯車7に噛合している。
【0028】
5はカバー部3B側に位置して出力ハウジング部3内に回転可能に設けられた差動機構で、該差動機構5は例えば遊星歯車装置等により構成され、その外殻をなすデファレンシャルケース6(以下、デフケース6という)の外周側には入力歯車4Aに噛合するリング歯車7がボルト等により固定して設けられている。そして、デフケース6は推進軸4により入力歯車4A、リング歯車7を介して回転駆動され、このときの駆動力は後述の太陽歯車13とキャリア8とにより左,右の車輪軸16,17に分配して伝達されるものである。
【0029】
ここで、差動機構5は、図3、図4に示す如くデフケース6の内周側に全周に亘って形成された内歯車6Aと、デフケース6内に相対回転可能に設けられたキャリア8と、該キャリア8により支軸9を介して回転可能に支持され内歯車6Aに噛合した複数の遊星歯車10,10,…と、該各遊星歯車10と噛合するようにキャリア8に支軸11を介して回転可能に支持された他の遊星歯車12,12,…と、該各遊星歯車12に噛合しキャリア8に対して相対回転可能となった太陽歯車13とにより大略構成されている。
【0030】
そして、太陽歯車13は後述の車輪軸16と一体回転するようにスプライン結合され、デフケース6の回転(例えば図4中の矢示A方向の回転)は2個の遊星歯車10,12を介して太陽歯車13に同方向の回転として伝えられる。また、キャリア8には各遊星歯車10,12の公転が支軸9,11を介して伝えられ、これによりキャリア8もデフケース6と同方向に回転するものである。
【0031】
そして、車両の直進走行時にはデフケース6側の回転力が各遊星歯車10,12を介して太陽歯車13とキャリア8とに均等に分配され、太陽歯車13とキャリア8とは同一の回転数をもって左,右の車輪軸16,17を回転駆動するものである。
【0032】
また、車両のステアリング操作(旋回)時には、左,右の車輪(図示せず)が路面から受ける反力等により車輪軸16,17の一方が他方よりも速く回転するように、太陽歯車13とキャリア8にはデフケース6側の回転力が互いに異なる回転比をもって伝達される。これにより、旋回内側となる車輪は相対的に低い回転数となり、旋回外側の車輪はより高い回転数となって車両のコーナリング性能等を高める差動機能を発揮するものである。
【0033】
14は差動機構5の一部を構成する段付スリーブで、該段付スリーブ14は図3に示すようにキャリア8の端面側に各ボルト15(図4参照)等を用いて固着され、キャリア8の回転を後述のモータケース19(車輪軸17)側に導出するものである。
【0034】
そして、段付スリーブ14の先端側外周にはスプライン14Aが形成され、該スプライン14Aは後述する他側ケース22の筒状連結部22Bに結合されることにより回転伝達を行うものである。また、段付スリーブ14には軸方向に延びる小径の油道14Bが形成され、該油道14Bは油圧モータ18のドレン油等により後述する車輪軸16の段付軸部16Dと段付スリーブ14の内周面との間を潤滑するものである。
【0035】
16,17は左,右の駆動輪(図示せず)に回転駆動力を伝える左,右の車輪軸で、左側の車輪軸16は単一のシャフト部材を用いて形成され、右側の車輪軸17は後述のモータケース19および継手フランジ24により構成されている。また、車輪軸16は出力ハウジング部3内に挿入された一端側端部が小径のスプライン軸部16Aとなり、該スプライン軸部16Aは後述するシリンダブロック25の段付穴25A内に廻止め状態で連結されている。
【0036】
また、車輪軸16は出力ハウジング部3外に突出する他端側が大径の継手フランジ部16Bとなり、該継手フランジ部16Bとスプライン軸部16Aとの中間部位には、他のスプライン軸部16Cと円形の段付軸部16Dとが形成されている。そして、スプライン軸部16Cは太陽歯車13と一体回転するように該太陽歯車13の内周側に挿嵌され、太陽歯車13の回転を車輪軸16の継手フランジ部16B側に伝達する。この継手フランジ部16Bは左側の車輪(図示せず)側に連結されるものである。
【0037】
このため、車輪軸16は継手フランジ部16Bからスプライン軸部16Cに亘る部位が比較的大径に形成され、大きな駆動力を外部の車輪(駆動輪)に伝えるのに十分な剛性を有している。一方、段付軸部16Dの位置から先端側のスプライン軸部16Aに亘る部位は、後述する油圧モータ18のシリンダブロック25に発生する比較的小さい駆動力を伝達だけでよいので、比較的小径に形成されるものである。また、段付軸部16Dの外周側には後述のシール部材48が摺接している。
【0038】
18はカバー部3C側に位置して出力ハウジング部3内に回転可能に設けられた可逆式の油圧モータを示し、該油圧モータ18は、例えばラジアルピストン式の油圧モータからなり、後述のモータケース19、シリンダブロック25、ピストン27および通路ブロック40等により構成されている。
【0039】
また、油圧モータ18は差動機構5に対し出力ハウジング部3内で左,右方向に横並び状態で配設され、通路ブロック40をシリンダブロック25と差動機構5との間に収める構成となっている。そして、油圧モータ18は圧油が給排されることによりモータケース19とシリンダブロック25とを相対回転させ、左,右の車輪軸16,17間に相対的な回転力を付与するものである。
【0040】
19は出力ハウジング部3内に回転可能に設けられ、油圧モータ18の外側回転体を構成するモータケースで、該モータケース19は、図2、図3に示すように、有蓋筒状体として形成され、蓋部20Aの中心側に出力軸部20Bが一体形成された一側ケース20と、カムリング21および他側ケース22とからなり、カムリング21は一側ケース20と他側ケース22との間に複数のボルト23,23,…(図5参照)を用いて挟持され一体化されている。
【0041】
そして、一側ケース20、カムリング21および他側ケース22からなるモータケース19全体は、後述する筒状連結部22Bの位置から出力軸部20Bの位置に亘って軸方向に延びる有蓋の段付筒状体として形成され、外側の継手フランジ24と共に右側の車輪軸17を構成しているものである。この場合、一側ケース20の出力軸部20Bは出力ハウジング部3のカバー部3Cから外側に向けて突出し、その突出端側に継手フランジ24がスプライン結合されている。そして、この継手フランジ24は継手部となって右側の車輪(図示せず)側に連結されるものである。
【0042】
ここで、モータケース19のカムリング21は、図5に示すように内周側にカム面21Aが形成され、該カム面21Aは後述の各ローラ30を介してピストン27からの駆動力を受承することにより、モータケース19とシリンダブロック25との間に図5中の矢示A方向または矢示B方向の相対的な回転力を発生させるものである。
【0043】
また、他側ケース22は図3に示す如くほぼ2段階に縮径した段付筒状体として形成され、一側ケース20との間でシリンダブロック25を挟み差動機構5側に向け軸方向に延設された筒状延設部22Aと、該筒状延設部22Aの先端側から段付スリーブ14の外周側に向けて延びた筒状連結部22Bとを有している。そして、筒状連結部22Bは内周側が段付スリーブ14のスプライン14Aに係合し、モータケース19(車輪軸17)を差動機構5の段付スリーブ14と一体回転させる構成となっている。
【0044】
25は油圧モータ18の内側回転体を構成するシリンダブロックで、該シリンダブロック25は扁平な段付円柱体からなるロータとして形成され、モータケース19内に複数の軸受等を介して回転可能に設けられている。また、シリンダブロック25の中心側には段付穴25Aが軸方向に貫通して設けられ、該段付穴25Aの小径部側には車輪軸16のスプライン軸部16Aが結合されている。
【0045】
ここで、シリンダブロック25には、図5に示すように放射状に延びた複数のシリンダ26,26,…が形成され、該各シリンダ26にはピストン27,27,…がそれぞれ摺動可能に挿嵌されている。また、各シリンダ26内にはピストン27により油圧室28が画成され、各油圧室28内には後述の各油通路29を介して圧油が給排される。そして、各ピストン27は油圧室28内に給排される圧油によってシリンダ26内を往復動し、油圧モータ18の回転力を発生するものである。
【0046】
29,29,…はシリンダブロック25に互いに独立して形成された複数の油通路で、該各油通路29は各油圧室28(シリンダ26)と個別に連通するようにシリンダブロック25内に一定間隔をもって配設され、後述する通路ブロック40の給排通路42A,42Bと順次連通することにより、外部からの圧油を各油圧室28内に給排させるものである。
【0047】
30,30,…は各ピストン27の突出側端部に支軸31を介して回転可能に設けられたローラ、32,32,…は各ローラ30をカムリング21のカム面21Aに向けて付勢したスプリングで、該各スプリング32はシリンダ26とピストン27との間に配設され、ピストン27をシリンダ26から突出する方向に常時付勢している。そして、ローラ30はカムリング21のカム面21Aに沿って滑動し、シリンダブロック25とカムリング21(モータケース19)との円滑な相対回転を補償するものである。
【0048】
33は油圧モータ18の中心側に位置してモータケース19とシリンダブロック25との間に設けられた油溜め室で、該油溜め室33は図3、図7に示すようにモータケース19(一側ケース20)の蓋部20Aとシリンダブロック25の段付穴25Aとの間に形成され、内部に油圧モータ18用の作動油等を実質的に満杯状態で収容している。
【0049】
この場合、シリンダブロック25の各油圧室28内に供給された圧油は、その一部がシリンダ26とピストン27との間からドレン油となって通常は僅かに漏出し、このドレン油によって油圧モータ18の摺動面等を潤滑するものである。そして、油溜め室33内はこれらのドレン油等によって油液が満杯状態に保持される。また、油圧モータ18には後述のリザーバ49に接続されるドレン管路(図示せず)が設けられ、前記ドレン油をリザーバ49側に流通させることにより、油溜め室33(ドレン油)の圧力はリザーバ49内とほぼ等しい圧力に保たれるものである。
【0050】
34,34,…は油圧モータ18の各油圧室28を油溜め室33に対して個別に連通させる連通路としての油路で、該各油路34はシリンダブロック25の軸方向に伸長した段付穴として形成され、シリンダブロック25の周方向に各シリンダ26と対応する間隔をもって配設されている。
【0051】
そして、油路34は図7に示す如く一端側が弁取付穴34Aとなってシリンダブロック25の端面に開口し、油溜め室33と連通する。また、油路34の他端側は油圧室28の近傍で油通路29と連通し、後述するチェック弁35の開弁時に油溜め室33内の油液を油圧室28内に補給するものである。
【0052】
35,35,…は各油路34の弁取付穴34A内に設けられたチェック弁で、該各チェック弁35は、図7ないし図9に示す如く、段付筒状に形成された弁筒36と、後述の弁蓋37およびボール弁体39等とにより構成されている。そして、弁筒36の内周側には、軸方向一側に位置する六角形の角穴36Aと、後述の弁室38と角穴36Aとの間に位置する小径の油穴36Bとが形成され、油穴36Bの端部はボール弁体39に対する弁座36Cとなっている。
【0053】
また、弁筒36は外周側におねじ部36Dを有し、該おねじ部36Dを油路34の弁取付穴34Aに螺着することにより、弁筒36はシリンダブロック25に図6に示す如く取付けられている。この場合、弁筒36の角穴36Aにはレンチ等の工具(図示せず)が係合され、この工具を用いて弁筒36は弁取付穴34Aに着脱可能に装着されるものである。
【0054】
37は弁筒36と共に弁取付穴34A内に取付けられる弁蓋を示し、該弁蓋37は、例えば銅等の軟質金属材料等により弁筒36にほぼ対応する外径寸法の円板として形成されている。そして、弁蓋37は弁取付穴34Aの奥所側端部と弁筒36との間に締代をもって挟持され、両者の間を液密にシールする機能を有している。また、弁蓋37は弁筒36の他側端面を閉塞することにより弁筒36との間に弁室38を形成している。
【0055】
ここで、弁蓋37の中心側にはガイド突起37Aが一体に設けられ、該ガイド突起37Aは弁室38内へと軸方向に突出しボール弁体39を弁座36Cに対して離着座可能にガイドするものである。また、弁蓋37にはガイド突起37Aの径方向外側に位置して一対の油穴37B,37Bが穿設され、該各油穴37Bは弁筒36の油穴36Bと同様にボール弁体39よりも小径に形成されている。そして、油穴37Bは弁室38内を油圧室28側の油路34と連通させ、ボール弁体39の開,閉弁動作を後述の如く補償するものである。
【0056】
39は弁筒36と弁蓋37との間に位置して弁室38内に移動可能に設けられた弁体としてのボール弁体で、該ボール弁体39は鋼球等からなり、弁筒36の弁座36Cに離着座するように弁室38内に収容されている。そして、ボール弁体39は、油圧室28内が高圧に保たれている間は、この圧力を弁室38内で受圧することにより弁座36Cに着座し、油圧室28側の圧油が油溜め室33側に逆流するのを阻止する。
【0057】
一方、油圧室28側が後述の如く油圧モータ18の慣性回転等により負圧傾向になると、ボール弁体39は弁座36Cから離座して弁筒36の油穴36Bを開き、油溜め室33内の油液が油路34を介して油圧室28側に流通するのを許すものである。これにより、油圧室28内には油通路29に加えて油路34側からを油液が補給され、油圧室28内を正圧状態に保つことが可能となる。
【0058】
40はシリンダブロック25の各油圧室28内に圧油を給排するための弁部材としての通路ブロックで、該通路ブロック40は図2、図3に示すように段付の筒体として形成され、車輪軸16の外周側に位置してモータケース19の筒状延設部22A内に、例えばノックピン41(図7参照)等を用いて廻止め状態で設けられている。そして、通路ブロック40はモータケース19と一体に回転し、一側ケース20の蓋部20A等との間でシリンダブロック25を相対回転可能に保持している。
【0059】
また、通路ブロック40内には周方向に一定間隔をもって複数の給排通路42A,42Bが形成され、該各給排通路42A,42Bは車輪軸16と同心円をなす仮想円上に互い違いとなるように交互に配設されている。そして、シリンダブロック25の端面に摺接する通路ブロック40の端面側は、各給排通路42A,42Bをシリンダブロック25の各油通路29に交互に連通させる切換弁部を構成するものである。
【0060】
また、通路ブロック40の外周側には、各給排通路42A,42Bと個別に連通する環状油溝43A,43Bが形成され、該環状油溝43A,43Bは通路ブロック40の軸方向で互いに離間して配設されている。そして、環状油溝43A,43Bは、他側ケース22の筒状延設部22Aに形成した油穴44A,44Bと、出力ハウジング部3の段付筒部3Dに形成した給排ポート45A,45Bとに連通し、該給排ポート45A,45Bからの圧油を各給排通路42A,42Bにそれぞれ導くものである。
【0061】
46,47は出力ハウジング部3の段付筒部3Dと油圧モータ18のモータケース19との間に設けられたシール部材で、該シール部材46,47は互いに逆向きに取付けられたリップシール等からなり、図3に示すように他側ケース22の筒状連結部22Bと段付筒部3Dとの間に締代をもって装着されている。そして、シール部材46,47は出力ハウジング部3とモータケース19との間で、例えば差動機構5側の潤滑油と油圧モータ18側の圧油(作動油)とを互いに分離し、これらの油液の漏洩、混合を防止するものである。
【0062】
48は車輪軸16の段付軸部16Dと段付スリーブ14との間に設けられたシール部材で、該シール部材48はダブルリップシール等により構成され、段付スリーブ14の内周側と車輪軸16の段付軸部16Dとの間に締代をもって装着されている。そして、シール部材48は車輪軸16とモータケース19との間で、例えば差動機構5側の潤滑油と油圧モータ18側の作動油とを互いに分離し、これらの油液の漏洩、混合を防止するものである。
【0063】
次に、49は作動油が貯留されたリザーバ、50は該リザーバ49と共に油圧源を構成する油圧ポンプで、該油圧ポンプ50は、図1に示す推進軸4等により回転駆動され、リザーバ49内の作動油を高圧の圧油として管路51A,51Bに給排するものである。そして、管路51A,51Bの先端側は図2、図3に示すように出力ハウジング部3の段付筒部3Dに形成した給排ポート45A,45Bに接続されている。
【0064】
52は管路51A,51Bの途中に設けられた方向制御弁で、該方向制御弁52は例えば4ポート3位置の電磁式方向制御弁からなり、油圧モータ18に給排する圧油の方向を切換える切換手段を構成している。そして、方向制御弁52は左,右両側にソレノイド部52A,52Bを有し、該ソレノイド部52A,52Bには外部のコントロールユニット(図示せず)から制御信号が出力される。
【0065】
これにより、方向制御弁52は中立位置(イ)から左,右の切換位置(ロ),(ハ)に切換えられ、この切換位置(ロ),(ハ)で油圧ポンプ50から油圧モータ18に給排する圧油の方向を切換えるものである。また、方向制御弁52は中立位置(イ)に保持される間、圧油の給排を停止することにより、油圧モータ18を実質的に停止させ、その回転出力を無効とするものである。
【0066】
53は圧力可変式のリリーフ弁で、該リリーフ弁53は、油圧ポンプ50の吐出圧(圧油の圧力)を可変に制御する油圧制御手段を構成するものである。そして、リリーフ弁53は圧力調整用のソレノイド部53Aを有し、前記コントロールユニットからソレノイド部53Aに出力される制御信号の電流値またはパルスデューティ等に応じてリリーフ設定圧を可変に制御するものである。
【0067】
本実施の形態による車両の左右駆動力配分装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0068】
まず、車両のエンジンを回転駆動すると、この回転出力は推進軸4を介して差動機構5のデフケース6へと伝わり、デフケース6の回転(例えば図4中の矢示A方向の回転)は2個の遊星歯車10,12を介して太陽歯車13に同方向の回転として伝えられる。また、差動機構5のキャリア8には各遊星歯車10,12の公転が支軸9,11を介して伝えられ、これによりキャリア8もデフケース6と同方向に回転する。
【0069】
そして、車両の直進走行時には、デフケース6側の回転力が各遊星歯車10,12を介して太陽歯車13とキャリア8とに均等に分配され、太陽歯車13とキャリア8とは同一の回転数をもって左,右の車輪軸16,17を回転駆動するため、車両は左,右の車輪を通じて走行駆動されるものである。
【0070】
また、車両のステアリング操作(旋回)時には、左,右の車輪が路面から受ける反力等により車輪軸16,17の一方が他方よりも速く回転するように、太陽歯車13とキャリア8にはデフケース6側の回転力が互いに異なる回転比をもって伝達され、これにより、旋回内側となる車輪は相対的に低い回転数となり、旋回外側の車輪はより高い回転数となって車両のコーナリング性能等を高めることができる。
【0071】
ところで、このような差動機構5による左,右の車輪軸16,17に対する駆動力配分は、左,右の車輪が路面から受ける反力等に依存した制御であるため、例えばスリップの発生時等には駆動力の分配機能を失い、車両の走行安定性を必ずしも向上できない場合がある。
【0072】
そこで、このような場合には、車両の運転状態を検出する各種センサ(図示せず)からの検出信号に従ってコントロールユニットから方向制御弁52およびリリーフ弁53に制御信号を出力し、例えば方向制御弁52を中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切換えることにより、油圧ポンプ50からの圧油を管路51A,51Bを介して出力ハウジング部3内の油圧モータ18に圧油を給排する。
【0073】
そして、出力ハウジング部3内の油圧モータ18は、通路ブロック40の給排通路42A,42Bおよび各油通路29等を介してシリンダブロック25内の各油圧室28内に圧油が給排されると、各シリンダ26内でピストン27が往復動され、これによって油圧モータ18のモータケース19とシリンダブロック25とは相対回転することになる。
【0074】
この結果、左,右の車輪軸16,17間には、モータケース19とシリンダブロック25との相対回転による回転力が互いに逆向きに付与され、前記推進軸4から差動機構5に加えられた駆動力は、油圧モータ18による回転力に従って左,右の車輪軸16,17へと積極的に配分される。そして、このときの駆動力配分により、例えば車両にヨーモーメントを積極的に発生でき、車両の走行安定性を確保することができる。
【0075】
一方、例えば路面が凍結した低μ路等を走行している途中で片方の車輪が空転(スリップ)した場合、または車両の急旋回時に旋回内側となる車輪が路面から浮上がって空転した場合等には、空転側の車輪軸16または17により油圧モータ18が慣性回転され、ポンプ作用を起こすことがある。
【0076】
そして、このような場合には、例えば油圧モータ18の油圧室28内等で圧油の供給油量が不足し、油圧モータ18の油圧室28、油通路29内等は負圧傾向となるため、油圧モータ18内ではキャビテーションが発生し易くなるばかりでなく、エアの混入等により異音の発生原因になる虞れがある。
【0077】
そこで、本実施の形態にあっては、油圧モータ18の中心側に位置してモータケース19とシリンダブロック25との間に油溜め室33を形成し、シリンダブロック25には油溜め室33を各油圧室28に個別に連通させる複数の油路34,34,…を設けると共に、該各油路34の途中にはそれぞれチェック弁35,35,…を設け、該各チェック弁35により油圧室28に対する油液の補給を制御する構成としている。
【0078】
これにより、油圧モータ18が外力で慣性回転され複数の油圧室28,28,…のうちいずれかの油圧室28側が負圧傾向になると、この油圧室28に連通する油路34の途中ではチェック弁35が自動的に開弁し、油溜め室33内の油液を油圧室28内に向けて補給でき、油圧モータ18内を常に正圧状態に保つことができる。
【0079】
また、油圧モータ18の通常回転時にあっては、外部の油圧ポンプ50から給排される圧油により油圧モータ18を安定して回転駆動できると共に、圧油の圧力でチェック弁35を閉弁状態に保持でき、圧油が油溜め室33側に逆流するのを阻止できる。
【0080】
この場合、チェック弁35を段付筒状の弁筒36、弁蓋37、弁室38およびボール弁体39により構成しているので、チェック弁35の構成を簡素化でき、小型、軽量化を図ることができる。そして、弁蓋37は銅等の軟質金属材料等により形成しているので、油路34の弁取付穴34Aと弁筒36との間に弁蓋37を締代をもって挟持することにより、弁蓋37にシール機能を与えることができ、油圧室28側の圧油が弁取付穴34Aと弁筒36との間から漏洩するのを防止できる。
【0081】
また、弁蓋37と弁筒36との間に形成した弁室38内にはボール弁体39を移動可能に収容でき、弁筒36の弁座36Cに対しボール弁体39を離着座させてチェック弁35を開,閉弁できる。そして、弁蓋37の中心側には弁室38内へと軸方向に突出するガイド突起37Aを設けているので、該ガイド突起37Aによりボール弁体39を弁座36Cに対して円滑に離着座するようにガイドでき、ボール弁体39の開,閉弁動作を安定させることができる。
【0082】
そして、油圧モータ18の慣性回転により油圧室28側が負圧傾向になると、ボール弁体39を弁座36Cから自動的に離座させることができ、油溜め室33内の油液を油圧室28側に油路34を介して流通でき、これによって油圧モータ18内を正圧状態に保持できる。
【0083】
また、油圧モータ18の通常回転時には、外部の油圧ポンプ50から給排される圧油により、弁室38内のボール弁体39を弁座36C側に押動し、ボール弁体39を弁座36Cに着座させることによって油液の流通を阻止でき、油圧モータ18の油圧室28内を高圧状態に保つことができる。
【0084】
また、本実施の形態では、左,右の車輪軸16,17のうち一方の車輪軸17を、油圧モータ18のモータケース19と継手フランジ24とにより構成し、差動機構5のスリーブ14に対してモータケース19の他側ケース22を筒状連結部22Bの位置でスプライン結合すると共に、一側ケース20の蓋部20Aに一体形成した出力軸部20Bを出力ハウジング部3の外側位置で継手フランジ24にスプライン結合する構成としている。
【0085】
これにより、油圧モータ18の外側回転体となるモータケース19を車輪軸17の一部として兼用でき、従来技術のように油圧モータとは別に長尺の車輪軸を用意する必要がなくなる。このため、当該駆動力配分装置の部品点数を削減することができ、組立時の作業性を向上できる。
【0086】
そして、油圧モータ18のモータケース19によって車輪軸17を兼用できるため、油圧モータ18のモータケース19およびシリンダブロック25を軸方向に貫通する車輪軸は不要となり、モータケース19を有蓋筒状体として形成できると共に、シリンダブロック25の段付穴25A内には、例えば車輪軸16の小径に形成した先端部(スプライン軸部16A)を廻止め状態で嵌合するだけでよくなる。
【0087】
これにより、油圧モータ18のシリンダブロック25を比較的小さい外径寸法に形成でき、モータケース19の外径寸法も小さくすることが可能となる。このため、出力ハウジング部3内には油圧モータ18をコンパクトに収納でき、装置全体の小型、軽量化を図ることができる。
【0088】
一方、車輪軸16については、継手フランジ部16Bからスプライン軸部16Cに亘る部位を比較的大径に形成することにより、大きな駆動力を外部の車輪に伝えるのに十分な剛性を与えることができる。そして、スプライン軸部16Cの位置から先端側のスプライン軸部16Aに亘る部位は、油圧モータ18のシリンダブロック25に発生する比較的小さい駆動力を伝達するだけでよいため、比較的小径に形成することができ、車輪軸16を全体的に大径で頑丈な長尺シャフトとして形成する必要がなくなる。
【0089】
また、車輪軸17の一部を兼用するためにモータケース19を有蓋の段付筒状体として形成し、モータケース19の他側ケース22内には、シリンダブロック25と差動機構5側との間に位置して通路ブロック40を収容する構成としている。そして、油圧モータ18の中心側には車輪軸を貫通して設ける必要がなくなっているので、モータケース19(一側ケース20)の蓋部20Aとシリンダブロック25の段付穴25Aとの間には、容量の大きい油溜め室33を形成するための空間を確保できる。
【0090】
そして、油圧モータ18のモータケース19とシリンダブロック25との間には油溜め室33をコンパクトに形成でき、該油溜め室33と複数の油圧室28,28,…との間をそれぞれの油路34,34,…により互いに独立して連通可能にできると共に、チェック弁35によって各油圧室28に対する油液の補給を円滑に制御することができる。
【0091】
さらに、油圧モータ18のモータケース19で車輪軸17を兼用させ、モータケース19を有蓋の筒状体として形成しているので、例えば3個のシール部材46,47,48を用いるだけで、差動機構5側の潤滑油と油圧モータ18側の作動油とを簡単に分離することができ、これらの油液が漏洩、混合するのを良好に防止できる。
【0092】
これにより、油圧モータ18に給排する圧油(作動油)の一部を差動機構5側の潤滑油として兼用させる必要がなくなり、差動機構5側には専用のギヤオイル等を潤滑油として供給し、潤滑性能を高めることができる。また、油圧モータ18に給排する作動油についても、専用の油液を使用して寿命を延ばしメンテナンス性を向上させることができる。
【0093】
従って、本実施の形態によれば、油圧モータ18の慣性回転時に油溜め室33内の油液を油圧室28側へと効率的に補給でき、油圧モータ18内を常に正圧状態に保つことができる。そして、油圧モータ18内でキャビテーションや異音等が発生するのを防止でき、油圧モータ18の耐久性、寿命を向上できると共に、駆動力配分装置としての信頼性を高めることができる。
【0094】
また、車輪軸17を油圧モータ18のモータケース19で兼用することによって、長尺で頑丈な大径のシャフト部材を用いる必要がなくなり、部品点数を減らして組立時の作業性を向上することができる。さらに、差動機構5等に用いる潤滑油を油圧モータ18側の作動油から良好に分離でき、潤滑性能を高めることができる。
【0095】
なお、前記実施の形態では、チェック弁35の弁体として鋼球等からなるボール弁体39を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば小径のポペット弁体を用いたチェック弁を採用してもよく、板状のリード弁体を用いたチェック弁等、種々の形式のチェック弁を採用してもよいものである。
【0096】
また、前記実施の形態では、ラジアルピストン式の油圧モータ18を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば斜板式の油圧モータ、トロコイド式の油圧モータ等、種々の型式の油圧モータを採用してもよいものである。
【0097】
さらに、前記実施の形態にあっては、差動機構5を遊星歯車10,12等によって構成した場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、例えば特開平3−50028号公報、特開平10−329572号公報等に記載の従来技術と同様に傘歯車等を用いて差動機構を構成してもよい。
【0098】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1に記載の発明によれば、左,右の車輪軸間に相対的な回転力を付与する油圧モータを、ハウジングの出力側に回転可能に設けられ前記左,右の車輪軸のうち一方の車輪軸の一部を兼用する外側回転体と、該外側回転体内に回転可能に設けられ油圧室に圧油が給排されることにより該外側回転体に対して相対回転する内側回転体とから構成し、前記油圧モータの外側回転体と内側回転体との間には、その回転中心側に位置して前記油圧モータに補給すべき油液を収容する油溜め室を設けると共に、該油溜め室を油圧モータの油圧室に連通させる連通路を設け、該連通路にはチェック弁を設ける構成としたので、油圧モータの慣性回転により油圧室側が負圧傾向になったときには、チェック弁を開弁させて油溜め室内の油液を油圧室側に補給でき、油圧モータ内を常に正圧状態に保つことができる。従って、油圧モータ内でキャビテーションや異音等が発生するのを防止でき、油圧モータの耐久性、寿命を向上できると共に、駆動力配分装置としての信頼性を高めることができる。
【0099】
また、前記油圧モータの外側回転体により左,右の車輪軸のうち一方の車輪軸を兼用させる構成としているため、油圧モータの中心側に車輪軸を貫通して設ける必要がなくなり、車輪軸を兼用する油圧モータの外側回転体内に油溜め室を形成するための空間部を確保することができる。これにより、油溜め室を含めて油圧モータ全体をハウジング内にコンパクトに収容でき、装置の小型化を図ることができる。しかも、前記油圧モータの外側回転体と内側回転体との間には、その回転中心側に位置して前記油溜め室をコンパクトに形成でき、油圧モータを含めて装置のハウジングが油溜め室により大きくなるのを防ぎ、装置全体の小型化を図ることができる。
【0100】
また、請求項2に記載の発明は、左,右の車輪軸のうち他方の車輪軸を油圧モータの内側回転体と一体回転可能に連結する構成としているので、油圧モータの油圧室に外部から圧油を給排してモータを回転駆動するときに、外側回転体からなる一方の車輪軸と、内側回転体に連結された他方の車輪軸との間に互いに逆向きの回転力を付与でき、左,右の車輪軸に対して適正な駆動力配分を行うことができる。
【0102】
一方、請求項3に記載の発明は、油圧モータの外側回転体を有蓋の段付筒状体として形成されたモータケースとし、内側回転体は圧油が給排される油圧室として複数のシリンダを有し該各シリンダ内に設けたピストンによって前記モータケース内で回転駆動されるシリンダブロックにより構成しているため、シリンダブロックの各シリンダからなる油圧室内に圧油を給排したときに各シリンダ内でピストンをそれぞれ往復動させ、モータケースとシリンダブロックとの間に相対的な回転力を発生でき、左,右の車輪に対して駆動力を積極的に配分することができる。
【0103】
また、請求項4に記載の発明は、油溜め室をモータケースの蓋部とシリンダブロックとの間に形成し、連通路は、シリンダブロックにそれぞれ形成され一端側が前記油溜め室に連通し他端側が各シリンダと個別に連通する複数の油路により構成しているため、モータケースの蓋部とシリンダブロックとの間に油溜め室をコンパクトに形成でき、該油溜め室と複数のシリンダとの間をそれぞれの油路により互いに独立して連通可能とし、各シリンダ毎に独立させて負圧の発生を防止することができる。
【0104】
また、請求項5に記載の発明は、チェック弁を段付筒状の弁筒、弁蓋および弁体とにより構成しているので、チェック弁全体を簡単な構造として小型、軽量化を図り、例えばシリンダブロック内にもチェック弁をコンパクトに組込むことができる。
【0105】
さらに、請求項6に記載の発明によると、弁体は球形のボール弁体からなり、弁蓋には弁室内を弁座側に向けて突出するガイド突起を設ける構成としているため、弁蓋のガイド突起を用いてボール弁体を弁室内でガイドでき、該ボール弁体を弁座に対して円滑に離着座させ、チェック弁としての開,閉弁動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による車両の左右駆動力配分装置を示す縦断面図である。
【図2】図1中の出力ハウジング部側を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図2中の差動機構および油圧モータ等を拡大して示す縦断面図である。
【図4】差動機構を図3中の矢示IV−IVから拡大して示す断面図である。
【図5】油圧モータを図3中の矢示V−V方向から拡大して示す断面図である。
【図6】シリンダブロックを複数のチェック弁と共に図3中の矢示VI−VIから拡大して示す側面図である。
【図7】油圧モータの要部を拡大して示す半断面図である。
【図8】チェック弁の弁筒と弁蓋とを分解した状態で示す拡大断面図である。
【図9】弁蓋を図8中の矢示IX−IX方向から示す断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 入力ハウジング部
3 出力ハウジング部
4 推進軸(入力軸)
5 差動機構
6 デフケース
7 リング歯車
16,17 車輪軸
18 油圧モータ
19 モータケース(外側回転体)
20 一側ケース
20A 蓋部
21 カムリング
22 他側ケース
22A 筒状延設部
24 継手フランジ(継手部)
25 シリンダブロック(内側回転体)
26 シリンダ
27 ピストン
28 油圧室
33 油溜め室
34 油路(連通路)
35 チェック弁
36 弁筒
36C 弁座
37 弁蓋
37A ガイド突起
37B 油穴
38 弁室
39 ボール弁体(弁体)
40 通路ブロック
42A,42B 給排通路
46,47,48 シール部材
49 リザーバ
50 油圧ポンプ(油圧源)
52 方向制御弁
53 リリーフ弁
Claims (6)
- ハウジングと、該ハウジングの入力側に設けられ車両のエンジンによって回転駆動される入力軸と、前記ハウジングの出力側に設けられ該入力軸からの駆動力を左,右の車輪軸に分配して伝達する差動機構と、該差動機構と共に前記ハウジングの出力側に設けられ外部から圧油が給排されることにより前記左,右の車輪軸間に相対的な回転力を付与する可逆式の油圧モータとからなる車両の左右駆動力配分装置において、
前記油圧モータに補給すべき油液を収容する油溜め室と、前記圧油が給排される前記油圧モータの油圧室に対し該油溜め室を連通させる連通路と、該連通路に設けられ前記油溜め室から油圧室に向けて油液が流通するのを許し逆向きの流れを阻止するチェック弁とを備え、
前記油圧モータは、前記ハウジングの出力側に回転可能に設けられ前記左,右の車輪軸のうち一方の車輪軸の一部を兼用する外側回転体と、該外側回転体内に回転可能に設けられ前記油圧室に圧油が給排されることにより該外側回転体に対して相対回転する内側回転体とから構成し、
前記油溜め室は、前記油圧モータの回転中心側に位置して前記外側回転体と内側回転体との間に形成する構成としたことを特徴とする車両の左右駆動力配分装置。 - 前記左,右の車輪軸のうち他方の車輪軸は前記油圧モータの内側回転体と一体回転可能に連結する構成としてなる請求項1に記載の車両の左右駆動力配分装置。
- 前記油圧モータの外側回転体は、一方の車輪に連結される継手部側が蓋部となって閉塞され有蓋の段付筒状体として形成されたモータケースからなり、前記内側回転体は、前記油圧室となる複数のシリンダを有し該各シリンダ内に設けたピストンによって前記モータケース内で回転駆動されるシリンダブロックにより構成してなる請求項1または2に記載の車両の左右駆動力配分装置。
- 前記油溜め室は前記モータケースの蓋部とシリンダブロックとの間に形成し、前記連通路は、シリンダブロックにそれぞれ形成され一端側が前記油溜め室に連通し他端側が前記各シリンダと個別に連通する複数の油路により構成してなる請求項3に記載の車両の左右駆動力配分装置。
- 前記チェック弁は、前記連通路の途中に設けられ内部に弁座を有する弁筒と、該弁筒との間に弁室を形成し前記油液が流通する油穴が穿設された弁蓋と、該弁蓋と弁筒との間の前記弁室内に移動可能に設けられ前記弁座に離着座する弁体とから構成してなる請求項1,2,3または4に記載の車両の左右駆動力配分装置。
- 前記弁体は球形のボール弁体からなり、前記弁蓋は該ボール弁体を前記弁座に対し離着座可能にガイドするため前記弁室内を弁座側に向けて突出したガイド突起を有する構成としてなる請求項5に記載の車両の左右駆動力配分装置。
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