JP3980932B2 - 汚染土壌の洗浄方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重金属、有機化合物、油類等により汚染された土壌の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
汚染土壌を洗浄する方法として、例えば、汚染土壌を水に溶解させることにより、汚染土壌の自発的な溶け出しを期待して、溶出量を低減させ汚染土壌を洗浄する方法がある。
【0003】
また、特開平2000−325936に示されるように超音波発生装置を用いる方法もある。この方法は、汚染土壌粒子と塩基性化合物を混合してpHを調整し、汚染土壌粒子の電気的な荷電による付着を弱め、振動装置である超音波発生装置に通過させて、汚染土壌粒子が超音波発生装置内で自己振動を起こすことにより、土壌粒子と汚染物質が分離することを特徴とする方法であり、主として重金属に汚染された土壌の洗浄に用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の汚染土壌を水に溶解させることによる洗浄方法では、汚染物質の粒子が弱い力で付着している汚染物質を洗浄できるのみで、洗浄土の収率が小さく、効率が余り良くなかった。
【0005】
また、前記超音波発生装置を用いる方法では、汚染物質の粒子と土壌粒子の電気的な荷電による付着を弱めて、土壌と汚染物質を分離させるので、粒子間が電気的な吸引力によって付着している汚染土壌の洗浄には適しているが、汚染物質の粒子と土壌粒子が電気的な吸引力によって付着していない汚染土壌の洗浄には適していない。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてされたものであり、効率的に洗浄が可能で、かつ、多様な汚染物質に対応できる汚染土壌の洗浄方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するために、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、汚染物質に汚染された土壌を、水と共に遠心分離機にかけ、汚染物質を含む土壌と汚染物質を含まない土壌に分離する工程を、少なくとも2回以上行うことを特徴としている。更に、汚染物質に汚染された土壌の土塊を砕く工程と、汚染物質に汚染された土壌に水を加える工程と、遠心分離機で分離された、汚染物質を含む汚染土壌の水分を除去する工程と、除去された水分に含まれる微細な粒子を沈降させる工程をも有していても良い。
【0008】
ここで、遠心分離機とは、遠心力を利用して比重が異なる物質を分離する装置である。一般的に、上部の径が下部の径より大きい円錐形であり、円錐形の上に円筒部を付している。この構造の遠心分離機では、遠心分離機が高速で回転し、遠心分離機内に生じる遠心力により、細かい粒の土壌と液体は遠心分離機の上部に分離され、粗い粒の土壌は遠心分離機の下部に分離される。
【0009】
遠心分離機の一例として液体サイクロンが挙げられる。一般的な液体サイクロンの構造の一例を挙げれば次のようなものである。円筒部と円錐部より構成され、円筒部に流入口があり、円筒部上方には、細かい粒の出口がある。一方、円錐部先端に粗い粒の土壌の出口がある。汚染土壌を流入口に高速で流入し、液体サイクロン内で汚染土壌が渦流となり、液体サイクロン内に遠心力が生じる。粗い粒の土壌は、遠心力により壁面へ押しつけられ、細かい粒と液体は液体サイクロン中央部に溜まり、円錐下部から排出される。
【0010】
しかし、本発明では、第1の液体サイクロンの遠心力により汚染土壌を壁面へ擦りつけ、汚染土壌から汚染物質を削り取り、第2の液体サイクロンの遠心力により粗い粒と細かい粒に分離することができる液体サイクロンとしての機能を有すれば良く、これに限定されない。
【0011】
更に、この発明の各工程について説明をする。
汚染物質に汚染された土壌を、水と共に遠心分離機にかけ、汚染物質を含む土壌と汚染物質を含まない土壌に分離する工程(分離工程)では、まず、水と共に汚染土壌を遠心分離機に入れる。そして、遠心分離機が回転することにより、汚染土壌が、遠心分離機の壁面に擦りつけられ、遠心分離機の壁面と土壌、及び、土壌同士の摩擦により、汚染土壌に付着している汚染物質が削り取られる。また、汚染物質を削り取ると同時に、遠心分離機内で生じる遠心力により、細かい粒の土壌と液体と、砂などの粗い粒の土壌が分離される。
【0012】
本分離工程を繰り返すことで、汚染土壌が何度も遠心分離機の壁面に擦りつけられるため、汚染土壌から汚染物質が削り取られる効果が顕著に表れる。
【0013】
汚染物質に汚染された土壌の土塊を砕く工程(破砕工程)とは、汚染土壌の洗浄、及び、分離を容易に行うことができるように、汚染土壌中の土塊をときほぐし、細かくする工程である。本破砕工程で用いる装置としては、例えばドラムウォッシャが挙げられる。ドラムウォッシャは、機械と土壌、及び、土壌相互間のこすり合う作用によって土塊をときほぐすと同時に、土壌表面の付着物を水洗いする機能を有しているので、本発明に適している。
【0014】
汚染物質に汚染された土壌に水を加える工程(加水工程)とは、土壌に一定以上の水を加える工程である。分離工程において、土壌のみでは、遠心分離機にかけられないため、本加水工程は、汚染土壌を遠心分離機にかける前までに行えば良く、破砕工程の前、破砕工程と同時、分離工程の前、何れに行っても良い。
【0015】
遠心分離機で分離された、汚染物質を含む汚染土壌の水分を除去する工程(脱水工程)とは、水と共に遠心分離機にかけた汚染土壌は、水と混ざり合い泥(スラリー)状になっているため、遠心分離機で分離された、汚染物質を含む泥状の汚染土壌の水分を除去し、汚染土壌の処分量を軽減する工程である。本脱水工程で用いる装置としては、例えば、汚染土壌を圧搾脱水するフィルタープレスがあげられるが、脱水できればよく、本発明ではこれに限られない。
【0016】
除去された水分に含まれる微細な粒子を沈降させる工程と(沈降工程)とは、脱水工程で除去された水分は、微細な粒子を含んでいるため、除去された水分を一定時間放置し、重力により水に含まれる微細な粒子を沈降させる工程である。本工程で用いる装置としては、例えば、シックナーが挙げられるが、水を一定時間貯められる装置であれば良く、本発明ではこれに限られない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、まず、本発明の一実施例に用いる装置を説明する。バックホウは、アームの先端に付いたショベルにより土壌を掘削する装置であり、土壌をドラムウォッシャに入れる際に用いる。ドラムウォッシャは、円筒形の回転ドラム内での攪拌により土壌の土塊を砕く装置であり、破砕工程で用いる。振動ふるいは、振動を利用して粒の大きさで土壌を分離する装置であり、洗浄の過程において、汚染土壌から礫、砂等の再利用可能なものを分離するために用いる。液体サイクロンは、上部の径が下部の径より大きい円錐形で上部に円筒を付した構造をしており、分離工程で用いる。フィルタープレスは、板状に枠組したろ板を数枚有しており、そこに泥(スラリー)状の汚染土壌を入れ、圧力をかけて汚染土壌中の水分を脱水する装置であり、脱水工程で用いる。シックナーは、脱水工程で脱水された水中に含まれている微細な粒子を重力により沈降させて分離する装置であり、沈降工程で用いる。
【0018】
以下、本発明の一実施例を詳細に説明する。
まず、汚染物質に汚染されている土壌をバックホウ1を用いて、ドラムウォッシャ2に入れる。ドラムウォッシャ2に汚染土壌を入れる際に、汚染土壌1kgに対して、1kg以上の水を加える。前述のように、加水工程は分離工程の前までに行っていれば良く、本実施例では、破砕工程と同時に加水工程を行っている。
【0019】
ここで、図2は、ドラムウォッシャに入れる土壌の液体/固体比と汚染物質の残留率をあらわしている。縦軸が汚染物質の残留率で、横軸が土壌の液体/固体の比率である。汚染物質によって多少異なるが、水と汚染土壌の混合比率を、n:1(n≧1)とすることにより、汚染土壌の洗浄効果が顕著に表れる。従って、ドラムウォッシャ2で、汚染土壌1kgに対して、1kg以上の水を混ぜ合わせ、水洗いしながら、汚染土壌の土塊をときほぐす。
【0020】
次いで、ドラムウォッシャ2により土塊をときほぐした汚染土壌を、振動ふるい3にかけ、粒の粗い礫を分離し、シャワーで洗浄し、礫を取り出す。ここで礫とは、粒子が2.0mm以上のものをいう。ここで得た礫は、薬品等加えることなく分級したものなので再利用ができ、元の土壌への埋め戻しが容易にできる。
【0021】
を取り出した汚染土壌を液体サイクロン4に入れる。液体サイクロン内に高速で土壌を流入し、液体サイクロン内で汚染土壌が渦流となり、液体サイクロン内に遠心力が生じる。遠心力によって、汚染土壌が液体サイクロン壁面に擦りつけられ、汚染土壌と液体サイクロン壁面、及び、汚染土壌粒子相互間の摩擦により、汚染土壌から汚染物質が擦りとられる。そして、砂などの粗い粒の土壌は下方に分離され、粒の細かい土壌は上方に分離される。
【0022】
ここで、液体サイクロンでの洗浄方法は2通りある。汚染土壌を液体サイクロンにm回通過させる時に、1回から(m−1)回までは、液体サイクロンを通過させた全ての汚染土壌を、そのまま再度液体サイクロンにいれ、最後のm回目の液体サイクロンで、粗い粒と細かい粒に分離する方法である。土壌の全体に渡って、汚染物質と土壌との付着が強い汚染土壌のときに行うと良い。
【0023】
2つ目の方法は、1回目の通過で、液体サイクロンの下部に分離された粗い粒のみを、再度、液体サイクロンに通過させる方法である。粗い粒に含まれている砂等を、きれいな状態で取り出したい時に行うと良い。しかし、液体サイクロンでは、水は上部に分離するため、分離された粗い粒の土壌は水が少ない。液体サイクロンで分離するには、ある程度の流動性が必要であり、再度液体サイクロンに通過させる際には、加水する必要がある。
【0024】
また、液体サイクロンは、1台の液体サイクロンで繰り返し分離工程を行っても良いし、何台もの液体サイクロンを多段に渡って設置し、何台かの液体サイクロンを用いて分離工程を行っても良い。土壌の汚染物質の付着状態、現場の状況により適した方法を選べば良い。
【0025】
また、図3は、液体サイクロンの通過回数と鉛の含有量をあらわしている。縦軸が鉛の含有量で、横軸が液体サイクロンの通過回数である。この図3から、洗浄効果を上げるためには、液体サイクロンの通過回数を増やせば良いといえる。何回も液体サイクロンを通過させることにより、汚染土壌が何回も遠心分離機の壁面に擦りつけられ、汚染物質が削られるためである。よって本分離工程を少なくとも2回以上行う。
【0026】
次いで、液体サイクロン4で分離された粗い粒の土壌を、振動ふるい3にかけ、シャワーで洗浄し、砂を取り出す。ここで砂とは、礫より細かい粒の75μm以上2.0mm以下のものをいう。前述の礫と同様に、ここで得た砂も、薬品等加えることなく分級したものなので再利用ができ、元の土壌への埋め戻しが容易にできる。
【0027】
一方、液体サイクロン4で分離された細かい粒の汚染土壌をフィルタープレス6にかける。フィルタープレスにより、汚染土壌中の余分な水分を除去し、処分する汚染土壌を減少させる。
【0028】
次いで、フィルタープレスで除去された水分は、微細な粒子を含んでいるため、除去された水分をシックナーに入れて、一定時間放置し、重力により水に含まれる微細な粒子を沈降させ、水と微細な粒子を分離する。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、多様な汚染物質に対応でき、かつ、効率的な汚染土壌の洗浄ができる。また、洗浄過程において得られた礫、砂等は再利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である汚染土壌の洗浄方法の概要図。
【図2】ドラムウォッシャへ入れる土壌の固液比と汚染物質の残留率
【図3】液体サイクロンの通過回数と鉛の含有量
【符号の説明】
1 バックホウ
2 ドラムウォッシャ
3 振動ふるい
4 液体サイクロン
5 スラリー槽
6 フィルタープレス
7 シックナー
8 礫
9 砂
10 汚染物質

Claims (4)

  1. 汚染物質に汚染された土壌を洗浄し、汚染物質を含む土壌と汚染物質を含まない土壌に分離する汚染土壌の洗浄方法において、
    前記汚染物質に汚染された土壌を、水と共に第1の液体サイクロンにかけ、前記第1の液体サイクロンの壁面に擦りつけて前記土壌から前記汚染物質を削り取る擦洗工程と、
    前記第1の液体サイクロンにかけた土壌を、水と共に第2の液体サイクロンにかけ、粗い粒と細かい粒に分離する工程を含むことを特徴とする汚染土壌の洗浄方法。
  2. 前記擦洗工程では、前記第1の液体サイクロンに複数回通過させ、前記汚染物質を削り取る処理を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の洗浄方法。
  3. 前記第2の液体サイクロンによる粗い粒と細かい粒に分離する工程の後、前記粗い粒のみを、篩にかけ、シャワーで洗浄し、洗浄物に付着した前記細かい粒を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の汚染土壌の洗浄方法。
  4. 前記擦洗工程を行う前に前記汚染物質に汚染された土壌中の土塊を細かくし、前記土壌に加水する工程を有し、
    前記加水する工程において前記土壌と前記水との比は、前記土壌を1とするとき、水nが1〜1.5(1.5≧n≧1)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の汚染土壌の洗浄方法。
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