JP3979900B2 - 目地付き板材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁材や床材として用いられるべく表面に目地が形成された目地付き板材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
家屋の浴室などの水廻りや玄関などにおける壁や床にタイルを貼り、見栄えの向上とともに防水性を図ったものが多く見かけられる。かかるタイル貼りが施された壁や床には、隣接するタイル間に目地が形成され、この目地が縦横に延設されて見栄えをより一層向上させている。一般にタイル貼りとは、隣接するタイル間にこのような目地が形成されたものを指している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のタイル貼りにおいては、その施工作業に作業者の高い熟練が要求されるとともに、工期が比較的長期化して敷設コストが嵩んでしまうという問題があった。更に、近年の熟練職人の減少傾向により、タイル貼り作業を行うことが益々困難となりつつあり、それに伴って敷設コストも上昇しつつあるのが現状である。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、タイル貼り等の如く目地を有して見栄え及び防水性を維持するとともに、製造コストが安価で、且つ、壁や床に簡単に敷設できて敷設コストを低減させることができる目地付き板材及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、壁材や床材として用いられるべく表面の縦横方向に対し、断面輪郭がR形状となるよう切削具で複数の溝を形成して縦横に延びる目地が形成された目地付き板材であって、前記目地は、その断面輪郭がR形状の溝の上面に、表面が高付着性のアクリル樹脂からなるとともに、非浸透で、且つ、当該溝以外の表面とは異なる色の熱転写シートを貼着して成り、更に表面全域に亘って耐候性を有したトップコートが塗布されて成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、略短形状板材の表面における縦横方向に対し、断面輪郭がR形状となるよう切削具で複数の溝を形成した後、該溝の上面に、表面が高付着性のアクリル樹脂からなるとともに、非浸透で、且つ、当該溝以外の表面とは異なる色の熱転写シートを貼着し、これを目地とした後、更に表面全域に亘って耐候性を有したトップコートを塗布して目地付き板材としたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記熱転写シートは、その裏面にホットメルト層が形成された長尺シートから成るとともに、当該熱転写シートを介して前記溝の上面を加熱ローラで押圧しつつ転動させることにより前記熱転写シートを貼着して目地としたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る目地付き板材は、表面にタイル貼りの如き意匠が施された板材から成り、家屋の浴室などの水廻りや玄関などにおける壁や床に敷設されるものであり、図1に示すように、ケイカル板やコンクリート板等の無機質板1の表面に縦横に複数延びる目地1aを有して成る。
【0010】
目地1aは、図2に示すように、無機質板1の表面における縦横等間隔に切削加工にて形成された断面輪郭がR形状の溝2と、該溝2の上面に貼着された熱転写シート3とから成るものである。ここでR形状とは、所定曲率で湾曲して、角部を持たない形状のものをいい、本実施形態の如く、表面と略平行の底面2aを有した溝2(図3参照)であっても、或いは図4で示すように、底面を持たない溝2’で構成されてもよい。
【0011】
熱転写シート3は、塗料等に対して非浸透で、且つ、少なくとも表面側が高付着性なる性質を有したシートから成るもので、図5に示すように、裏面にホットメルト層3aが形成されるとともに、表面側がアクリル樹脂から成る層3bで構成されている。かかる熱転写シートとしては、例えばクルツジャパン株式会社製の転写箔(品名:Folkstone Grey グレー箔品番:Y86944SR)を用いるのが好ましい。
【0012】
また、熱転写シート3は、同図に示すように、幅tの長尺シートで構成されており、当該寸法tは溝2に貼着したときに、当該溝2の上面を覆い得るよう予め設定されているとともに、その長さ寸法は貼着対象の溝2の長さに合致させて切除される。尚、本実施形態においては、熱転写シート3の幅tが溝2の上面を覆い得るよう予め設定されているが、それよりも広い幅のものの幅方向を切除して溝2に貼着するようにしてもよい。
【0013】
更に、熱転写シート3の少なくとも表面(アクリル樹脂から成る層3bの上面)は、不透明な白色とされており、本物のタイル貼りにおける目地に模してある。即ち、無機質板1の目地2が表面より凹状に削られつつ白色に着色されているため、本物のタイル貼りの目地に模せられており、その一方で、それら目地2が形成されていない無機質板1の表面1bが本物のタイル貼りにおけるタイルに模されているのである。
【0014】
また更に、無機質板1の表面における目地1a以外の部分1bには、タイル模様が転写されるとともに、その上面に艶出し塗料が塗布されており、本物のタイルに似た質感を持たせている。ここで、本実施形態においては基材として無機質板1を使用しているが、木板など他の材質のものを基材とし、着色塗料や艶出し塗料等を表面に塗布することによりタイルに模すようにしてもよい。
【0015】
次に、上記構成の目地付き板材の製造方法について説明する。
まず、ケイカル又はコンクリート等の無機質材料から成る矩形状板材を載置しておき、かかる無機質板材の表面をルータで削って縦横に延びる複数の溝2を形成する。このとき、ルータを弧状に動作させて溝2の断面輪郭がR形状となるようにする。かかるルータの動作は、NC切削加工機等により数値制御にて行われるのが好ましい。
【0016】
尚、ルータの先端部(切削加工する刃部)の側面がR形状のものを用いて切削加工し、ルータの弧状動作なしに断面輪郭がR形状の溝2を形成するようにしてもよい。この場合、図4に示したような溝2’とする方が作業が簡単であり、作業工数を大幅に削減することができる。勿論、溝2又は2’の形成は、ルータに限らず、他の汎用工具で形成するようにしてもよい。
【0017】
その後、下塗り材として例えばTDIなどの耐水塗料を溝2上面を含む無機質板1の表面全域に亘って塗布する。かかる下塗り材が乾燥した後、溝2上面のみに白色の熱転写シート3を貼着する。貼着作業は、図6に示すような貼着装置によって以下の如きに行われる。即ち、同図における貼着装置は、無機質板1の表面に形成された溝2の上面に熱転写シート3を貼着するためのもので、加熱ローラ5及び巻き取り部4を有している。尚、巻き取り部4から加熱ローラ5に至る熱転写シート3に対しテンションを付与するテンションローラ(不図示)等を具備するのが好ましい。
【0018】
加熱ローラ5は、少なくとも外周面(転動面)を高温にすることができる円筒状金属製部材から成り、図7に示すように、その転動面の形状が溝2のR形状と略合致するよう構成されている。これにより、溝2上面に対して押圧しつつ当該溝2に沿って加熱ローラ5を転動させれば、熱転写シート3の裏面に形成されたホットメルト層3a(図5参照)が溶融して貼着する。
【0019】
従って、加熱ローラ5を溝2に沿って転動させるのみで、当該溝2の上面に熱転写シート3を正確に貼着させることができるので、作業性を向上させることができ、目地付き板材の製造コストを低減させることができる。また、溝2の断面輪郭がR形状とされて角部が形成されていないので、熱転写シート3を確実に貼着させることができる。
【0020】
即ち、角部を有した溝に熱転写シート3を貼着させると、当該角部の形状に熱転写シート3を倣わせるのが困難であるのに対し、本実施形態においては、角部がなく、確実に溝の断面輪郭に熱転写シートを倣わせることができるのである。尚、溝を図4で示した形状(底面2aを有さない形状)としても、貼着を確実に行い得るという効果は同等である。
【0021】
然るに、熱転写シート3を全ての溝2に亘って貼着し終えた後、巻き取り部4から連なる部分を切断するのであるが、このように、長尺シートから成る熱転写シート3を巻き取り部4にて巻き取っておき、加熱ローラ5による加熱時において所望寸法だけ引き出すようにしたので、当該熱転写シート3が貼着作業中に絡まることがなく、作業効率をより向上させることができる。
【0022】
上記の如き熱転写シート3を溝2に貼着させた部位が目地1aとなる。かかる目地1aの形成が終了した後、無機質板1の上面における部位1b(目地1aが形成されていない部位)全体に亘りサンダー等にて研磨加工し、表面を平滑処理しておく。そして、研磨後における部位1bの表面に対し、熱転写平面貼り機等にてタイル模様を転写する。
【0023】
更に、タイル模様が転写された部位1bの表面に対して艶出し塗料を塗布し、本物のタイルの如き艶を付与させる。これにより、本物のタイル貼りの如き意匠が表面に形成された板材を得ることができる。尚、艶出し塗料は、目地1aを含む無機質板1表面全域に亘って塗布するようにしてもよく、その場合、目地1aを構成する熱転写シート3の上面側が高付着性のアクリル樹脂から成るので、当該艶出し塗料を良好に塗布することができる。
【0024】
以上により、本実施形態に係る目地付き板材の製造工程が終了するのであるが、かかる板材の耐水性を更に向上させ、耐候性をも向上させるべく、表面全域に亘って所望のトップコートを塗布するようにしてもよい。例えば、表面全域に紫外線硬化塗料を塗布し、UVカット機能を付加するようにしてもよい。勿論、この場合であっても、上述したように、目地1aを構成する熱転写シート3の上面側が高付着性のアクリル樹脂から成るので、当該トップコートを良好に塗布することができる。
【0025】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばタイル貼りに模したものに代え、レンガ貼り又は石材貼り等目地を有したものに模したものとしてもよい。この場合、目地以外の表面に転写すべき模様や目地の形成間隔を変えるのみで対応することができる。また、熱転写シートの色は、目地以外の表面とは異なる色であれば如何なる色であってもよい。
【0026】
【発明の効果】
請求項1及び請求項2の発明によれば、切削具で形成された表面の縦横に延びる溝に熱転写シートを貼着して成る目地を有した板材を壁材や床材として用いるので、タイル貼り等の如く目地を有して見栄え及び防水性を維持するとともに、壁や床に簡単に敷設できて敷設コストを低減させることができる。更に、目地を構成する溝の断面輪郭がR形状とされているので、当該溝の上面に角部が形成されず、熱転写シートの貼着作業を容易とすることができ、製造コストを安価なものとすることができる。
【0027】
また、請求項1の発明によれば、熱転写シートの表面が高付着性のアクリル樹脂から成るので、目地上にトップコートを良好に塗布することができる。
【0028】
請求項3の発明によれば、熱転写シートは、その裏面にホットメルト層が形成された長尺シートから成るとともに、当該熱転写シートを介して溝の上面を加熱ローラで押圧しつつ転動させることにより熱転写シートを貼着して目地とするので、目地付き板材の製造時の作業性を更に向上させ、製造コストを更に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る目地付き板材を示す斜視図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】本発明の実施形態に係る目地付き板材における目地を構成する溝の断面図
【図4】本発明の他の実施形態に係る目地付き板材における目地を構成する溝の断面図
【図5】本発明の実施形態に係る目地付き板材における熱転写シートを示す模式図
【図6】本発明の実施形態に係る目地付き板材における熱転写シートの貼着作業を示すための模式図
【図7】本発明の実施形態に係る目地付き板材における熱転写シートの貼着作業を示すべく加熱ローラと溝の形状を示すための模式図
【符号の説明】
1…無機質板(板材)
1a…目地
2、2’…溝
3…熱転写シート
3a…ホットメルト層
3b…アクリル樹脂から成る層
4…巻き取り部
5…加熱ローラ
Claims (3)
- 壁材や床材として用いられるべく表面の縦横方向に対し、断面輪郭がR形状となるよう切削具で複数の溝を形成して縦横に延びる目地が形成された目地付き板材であって、
前記目地は、その断面輪郭がR形状の溝の上面に、表面が高付着性のアクリル樹脂からなるとともに、非浸透で、且つ、当該溝以外の表面とは異なる色の熱転写シートを貼着して成り、更に表面全域に亘って耐候性を有したトップコートが塗布されて成ることを特徴とする目地付き板材。 - 略短形状板材の表面における縦横方向に対し、断面輪郭がR形状となるよう切削具で複数の溝を形成した後、該溝の上面に、表面が高付着性のアクリル樹脂からなるとともに、非浸透で、且つ、当該溝以外の表面とは異なる色の熱転写シートを貼着し、これを目地とした後、更に表面全域に亘って耐候性を有したトップコートを塗布して目地付き板材としたことを特徴とする目地付き板材の製造方法。
- 前記熱転写シートは、その裏面にホットメルト層が形成された長尺シートから成るとともに、当該熱転写シートを介して前記溝の上面を加熱ローラで押圧しつつ転動させることにより前記熱転写シートを貼着して目地としたことを特徴とする請求項2記載の目地付き板材の製造方法。
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