JP3979698B2 - ポリアミド系ブロック共重合体含有薄膜形成用樹脂組成物およびそれを使用して形成された薄膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミド系ブロック共重合体の有する耐熱性および可とう性を損なうことなく、耐溶剤性および接着性を向上させたポリアミド系ブロック共重合体含有薄膜形成用樹脂組成物およびそれを用いて形成された薄膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリアミド樹脂は、耐熱性に優れているばかりでなく、製膜性に優れた樹脂であるため、種々の産業分野で広く使用されている。しかしながら、芳香族ポリアミド樹脂は、上記の様な優れた特性を有するにもかかわらず、塗膜として使用する場合、高弾性を有するために基材との接着性および可とう性に乏しく、使用範囲が制限されるという問題があり、その優れた耐熱性等の特性を十分に生かすことが困難であった。この問題を解決するものとして、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が優れた熱可塑性弾性体であることに着目して、スチレン成分をポリアミド成分に変えたポリアミド−ブタジエンブロック共重合体(特公昭62−3171号公報)が提案されている。このポリアミド−ブタジエンブロック共重合体は有機溶媒への溶解性および他のポリマーとの相溶性に問題があるため、それを改善するものとして、本発明者等はポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体(特公平6−89150号公報、特公平7−5729号公報)を提案した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来提案されているポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体は、溶剤溶解性が良好であるため、塗膜を形成した後にもその特性が発揮されるという問題があった。それゆえ、塗膜形成前は優れた溶解性を有するが、塗膜形成後は耐溶剤性を持ち、且つ接着性、可とう性、耐熱性に優れた塗膜を形成するポリアミド樹脂の出現が望まれている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、薄膜形成前は溶剤に対して優れた溶解性を有するが、薄膜形成後は耐溶剤性を持ち、且つ接着性、可とう性、耐熱性に優れた薄膜を形成することが可能な樹脂組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、耐溶剤性、接着性、可とう性および耐熱性に優れた薄膜を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来の技術における上記問題点を解決するために種々検討を行った結果、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムの組成物が、製膜後に反応させることによって、塗膜形成後の耐溶剤性と接着性の問題を、優れた耐熱性および可とう性を維持したまま解決できることを見いだし、本発明を完結するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の薄膜形成用樹脂組成物は、(a)下記一般式(1)で示される数平均分子量1000〜5000のアクリロニトリルブタジエン共重合体ブロックおよび下記一般式(2)で示される構造単位よりなる数平均分子量1000〜1万の芳香族ポリアミドブロックがカルボンアミド基によって結合した固有粘度0.05〜2.0dl/gの芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体と、(b)アクリロニトリルブタジエンゴムとよりなり、上記芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの配合割合が重量比で100:1〜100:40の範囲であることを特徴とする。
【0007】
【化2】
(式中、Ar1 およびAr2 は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ二価の芳香族基を表し、xおよびyは、ブタジエン単位とアクリロニトリル単位の組成比であって、x+y=1、y/(x+y)=0.1〜0.27を表す。)
【0008】
本発明の上記薄膜形成用樹脂組成物において、上記芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの配合割合は、重量比で100:1〜100:40の範囲にあることが好ましい。
また、本発明の薄膜は、上記薄膜形成用樹脂組成物を基材に塗布または含浸し、加熱することにより得られるものであって、耐溶剤性、接着性、可とう性および耐熱性に優れたものである。
【0009】
本発明において、上記の芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体としては、下記一般式(3)で示されるものが好ましい。
【化3】
(式中、Ar1 およびAr2 は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ二価の芳香族基を表し、xおよびyは、ブタジエン単位とアクリロニトリル単位の組成比であって、x+y=1、y/(x+y)=0.1〜0.27を表し、zは5〜25の整数を表し、nおよびmは、それぞれ平均重合度であって、n=1〜50、m=1〜20の整数を表す。)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において用いる上記芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体は、芳香族ジアミン成分、芳香族ジカルボン酸成分および両末端にカルボキシル基を有するアクリロニトリルブタジエン共重合体を原料として、縮合反応によって容易に製造することができる。芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分との縮合反応は、公知の方法によって行うことができる。例えば、高分子学会編1991年発行「高分子機能材料シリーズ2 高分子の合成と反応」183頁に記載の方法により行うことができる。特に、芳香族ジカルボン酸成分として、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸を使用する場合には、脱水触媒を使用した直接重縮合反応による製造方法が好ましい。具体的には、芳香族ジカルボン酸成分に過剰量の芳香族ジアミン成分を加え、これらを、例えば亜リン酸エステルとピリジン誘導体等の存在下で、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルアセトアミドに代表される有機溶剤中で、窒素等の不活性雰囲気下において、加熱重合させることにより、両末端にアミノアリール基を有するアラミドオリゴマーの溶液を形成させ、次いでこのアラミドオリゴマーの溶液に両末端にカルボキシル基を有するアクリロニトリルブタジエン共重合体を添加して、重縮合させることにより、本発明における上記芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体を得ることができる。さらに、上記重縮合反応には、必要に応じて安定化剤として塩化リチウムまたは塩化カルシウム等を添加することができる。
【0011】
上記一般式(2)における基Ar1 およびAr2 は、二価の芳香族基を示すが、より具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、キシリレン基、2〜4個のベンゼン環が、直接結合または−O−、−S−、−CO−、−SO2 −、アルキレン基およびフッ素置換アルキレン基等を介して連結した二価の芳香族基があげられる。これらの芳香族基は、水酸基、アルキル基、フルオロアルキル基およびアルコキシ基等によって置換されていてもよい。本発明において、上記芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体の製造に使用される芳香族ジアミン成分および芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、次のものを例示することができる。
【0012】
上記芳香族ジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、3,3′−メチレン二安息香酸、4,4′−メチレン二安息香酸、4,4′−オキシ二安息香酸、4,4′−チオ二安息香酸、3,3′−カルボニル二安息香酸、4,4′−カルボニル二安息香酸、4,4′−スルホニル二安息香酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、エチレンジアミンビスフタルイミド−4,4′−ジカルボン酸、3,3′−ビス−(4−カルボキシフェニル)プロパン、3,3′−ビス−(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、および2−ヒドロキシテレフタル酸等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は単独で使用しても、また複数併用してもよい。
【0013】
上記芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(4−アミノフェニルメルカプト)ベンゾフェノン、2,2′−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(2−トリフルオロメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(2−トリフルオロメチル−5−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(3−トリフルオロメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(3−トリフルオロメチル−5−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(4−トリフルオロメチル−5−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(2−ノナフルオロブチル−5−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(4−ノナフルオロブチル−5−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ジアミノピリジン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミン−3,5−ジプロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−2,3−ジメチルフェニル)メタン、およびビス(4−アミノ−2,5−ジメチルフェニル)メタン等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物は単独で使用しても、または複数併用してもよい。
【0014】
上記の芳香族ジアミン成分および芳香族ジカルボン酸成分の重縮合により形成される両末端にアミノアリール基を有するアラミドオリゴマーは、数平均分子量が1000〜1万の範囲にあるものが使用され、固有粘度は0.01dl/g〜0.5dl/gの範囲のものが好ましい。
【0015】
また、両末端にカルボキシル基を有するアクリロニトリルブタジエンブロック共重合体は、数平均分子量1000〜5000の範囲のものであって、公知のものが使用でき、例えば、Goodrich社製のHycarCTBNが適用できる。具体的には、HycarCTBN1300×8、HycarCTBN1300×13、HycarCTBN1300×31、HycarCTBN1008SP、HycarCTBNX1300×9等があげられる。
【0016】
本発明における上記芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体の粘度は、下記式で示されるη値が0.05dl/g≦η≦2.0dl/gであり、好ましくは0.1dl/g≦η≦0.8dl/gの範囲にある。η値が0.05dl/gに満たないと、得られた薄膜の可とう性が十分満足されるものではなく、またη値が2.0dl/gを超えると、塗膜形成前の溶剤溶解性が低下する。なお、粘度η値の測定は、30℃恒温、ジメチルアセトアミド中濃度0.5g/dlで行った。
η=ln(t1 /t0 )/C
(式中、t1 はオストワルド型No.1粘度計における共重合体溶液の落下時間を示し、t0 は共重合体を溶解させる有機溶剤の落下時間を示し、Cは共重合体溶液の濃度であって、0.1≦C≦0.5(g/dl)の範囲の値である。)
【0017】
また、アクリロニトリルブタジエンゴムは、代表的には下記一般式(4)で示されるものであって、従来公知のアクリロニトリルブタジエンゴムものならば如何なるものでも使用することができ、好ましい数平均分子量は1000〜50万の範囲のものである。
【化4】
(式中、a、bおよびcは、ブタジエン単位とアクリロニトリル単位の組成比を示すのもであって、aおよびbのいずれか一方は0でもよく、c/(a+b+c)=0.01〜0.99の範囲の数を表し、dは1〜50の整数を表す。)
【0018】
具体例としては、例えばGoodrich社のHycarCTBN1300×8、HycarCTBN1300×13、HycarCTBN1300×31、HycarCTBN1008SP、HycarCTBNX1300×9、HycarATBN1300×16、HycarVTBN1300×23、JSR社のN280、PN30A、PN20HA、N211SL、N210S、N201S、N201、N202S、N640、N640H、N541、N531、N530、N520、N260S、N250S、N251H、N240S、N241H、N241、N236H、N233、N234L、N239SV、N237H、N237、N231H、N231L、N238H、N232SH、N232S、N230SH、N230S、N230SL、N230SV、N235S、N244SH、N221H、N220SH、N220S、N223L、N222L、N222SH、N215SL、N215SH等をあげることができるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の薄膜形成用樹脂組成物において、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの配合割合は、アクリロニトリルブタジエンゴムの配合量が芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体の配合量よりも多くなると、形成される薄膜の耐熱性が低下傾向にある。したがって、耐熱性を考慮すると、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの配合割合は、重量比で100:1〜100:40の範囲である。芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体100重量部に対するアクリロニトリルブタジエンゴムの配合割合が40重量部より多くなると、得られる組成物の耐熱性が低くなるばかりでなく、形成される薄膜に未反応のアクリロニトリルブタジエンゴムが発生する可能性も高くなり、また、1重量部より少なくなると、薄膜の硬化が不十分になり、本発明の目的が十分に達成できなくなる。
【0020】
本発明における上記薄膜形成用樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を加えることができる。例えば、パラフィン類およびシリコーン類等の離型剤、塩化パラフィン、ブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼンおよび三酸化アンチモン等の難燃剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、タルク、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マグネシア、窒化ケイ素、窒化ホウ素およびフェライト等の充填剤、金、銀、ニッケル、銅、鉄、亜鉛、鉄粉、酸化鉄および砂鉄等の無機導電材料、導電性高分子、カーボンブラック、染料および顔料等の着色剤、酸化安定剤、光安定剤、耐湿向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、および液状または固体状樹脂等を適宜の量で配合することができる。
【0021】
本発明の薄膜形成用樹脂組成物は、微粉化して使用してもよいが、溶液の状態で使用するのが好ましい。溶液の状態で使用する場合には、粘度を調整することができるため、取り扱い性や適用性の上で有利である。溶液の状態で使用する場合、使用する溶剤としては、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジンブロック共重合体およびアクリロニトリルブタジエンゴムを溶解させるものであれば、如何なるものでもよい。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドで代表されるアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、ピリジン、m−クレゾール、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、複数混合して使用してもよい。本発明の薄膜形成用樹脂組成物を上記溶剤に溶解して使用する場合、樹脂組成物の濃度は何ら制限はなく、目的に応じた溶液粘度になるように濃度を調整すればよい。
【0022】
本発明の薄膜形成用樹脂組成物を用いて薄膜を形成するためには、例えば、上記のようにして得られたポリアミド系ブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとを所望により添加する添加剤と共に溶剤に加えて混合し、樹脂組成物の塗布液を調製した後、基材に塗布または含浸させ、加熱処理すればよい。加熱処理は、溶剤の除去と同時に実施してもよく、或いは乾燥による溶剤の除去後に実施してもよい。本発明において、加熱処理は、130〜170℃で数分〜2時間の範囲で行うのが好ましい。この加熱処理によって芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとが反応して薄膜が硬化する。加熱によって進行する反応は明確ではないが、ニトリル基の環化反応、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体の末端アミノ基とニトリル基によるイミノ化架橋反応等が推測される。樹脂組成物を塗布する基材としては、ガラス等のセラミック材、アルミニウム等の金属、樹脂よりなる基板等があげられ、また、含浸させる基材としては、ポリエチレンテレフタレート繊維等の織布、および不織布等があげられる。
【0023】
なお、本発明の薄膜形成用樹脂組成物は、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとを分離して保存しておき、使用時に両者を混合するようにしてもよい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明について実施例により詳細を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例1:芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体の合成
3,4′−ジアミノジフェニルエーテル6.9220g(34.5686mmol)、5−ヒドロキシイソフタル酸0.8197g(4.5012mmol)、イソフタル酸4.4859g(27.0072mmol)、塩化リチウム0.88g、塩化カルシウム2.64g、ジメチルアセトアミド67g、ピリジン9.8g、および亜リン酸トリフェニル21.5gを500mlのセパラブルフラスコ中に入れ、乾燥窒素下、95℃で2時間反応させ、アラミドオリゴマー(固有粘度0.15dl/g)の溶液を調製した。次に得られたアラミドオリゴマーの溶液に、両末端にカルボキシル基を有するアクリロニトリルブタジエン共重合体(HycarCTBN1300×8:平均分子量3600、Goodrich社製)11.0g(3.0602mmol)を44gのジメチルアセトアミドに溶解して溶液にしたものを添加し、反応器中で更に2時間反応させた後、室温に冷却し、この反応溶液を3リットルのメタノール中に投入しポリマーを析出させ、さらにメタノール洗浄およびメタノール還流して精製し、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体を99.5%の収率で得た。このブロック共重合体の固有粘度は0.63dl/gであった。このブロック共重合体の微粉について、拡散反射法により赤外スペクトルを測定したところ、1674cm-1にアミドカルボニル基、2850〜2975cm-1にブタジエン部分のC−H伸縮による吸収、2245cm-1にニトリル基に基づく吸収が確認された。
【0025】
合成例2:芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体の合成
ビス(4−アミノ−3−エチル−5−メチルフェニル)メタン5.0047g(17.72mmol)、2,2−ビス〔4−(アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン2.5076g(6.11mmol)、5−ヒドロキシイソフタル酸0.5463g(3.0mmol)、イソフタル酸2.9898g(18.0mmol)、塩化リチウム0.9g、塩化カルシウム2.7g、ジメチルアセトアミド68g、ピリジン6.8gおよび亜リン酸トリフェニル14.8gを500mlのセパラブルフラスコ中に入れ、乾燥窒素下、95℃で2時間反応させ、アラミドオリゴマー(固有粘度0.15dl/g)の溶液を調製した。次に得られたアラミドオリゴマーの溶液に、両末端にカルボキシル基を有するアクリロニトリルブタジエン共重合体(HycarCTBN1300×8:平均分子量3600、Goodrich社製)10.2g(2.83mmol)を40gのジメチルアセトアミドに溶解して溶液にしたものを添加し、反応器中で更に2時間反応させた後、室温に冷却し、この反応溶液を3リットルのメタノール中に投入してポリマーを析出させ、さらにメタノール洗浄およびメタノール還流して精製し、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体を99.7%の収率で得た。このブロック共重合体の固有粘度は0.65dl/gであった。このブロック共重合体の微粉について、拡散反射法により赤外スペクトルを測定したところ、1675cm-1にアミドカルボニル基、2850〜2975cm-1にブタジエン部分のC−H伸縮による吸収、2245cm-1にニトリル基に基づく吸収が確認された。
【0026】
実施例1
合成例1で得られた芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体2gとアクリロニトリルブタジエンゴム(HycarCTBN1300×8:平均分子量3600、Goodrich社製)0.4gとを、N−メチル−2−ピロリドン8gに室温で溶解させて樹脂組成物の溶液を得た。この場合、樹脂組成物は、上記溶剤に良好に溶解していた。次いで、得られた樹脂組成物の溶液をアルミニウム板上にキャスティング法により塗布し、150℃で2時間加熱して溶剤を除去し、膜厚10μmの薄膜を得た。形成された薄膜を200℃で4時間加熱したところ、薄膜とアルミニウム板との間には剥離は観測されず、接着性が優れていることが確認された。また、この加熱処理された薄膜をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に含浸させ、100℃で2時間の条件で加熱したところ、溶け出すことはなく、耐溶剤性にも優れていることが確認された。更に、この加熱処理された薄膜は180°折り曲げても割れることがなく、また、動的粘弾測定機(レオバイブロンDDV−IIEP、オリエンテック社製)により昇温速度3℃/分、周波数11Hzの条件下でTg(ガラス転移温度)を測定したところ、使用した芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体のTg:200℃と同等の値であるTg:197℃を示し、可とう性と耐熱性にも優れていることが確認された。
【0027】
実施例2
合成例2で得られた芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体2gとアクリロニトリルブタジエンゴム(HycarCTBN1300×13:平均分子量3600、Goodrich社製)0.5gとを、N−メチル−2−ピロリドン8gに室温で溶解させて樹脂組成物の溶液を得た。この場合、樹脂組成物は、上記溶剤に良好に溶解していた。次いで、得られた樹脂組成物の溶液をアルミニウム板上にキャスティング法により塗布し、150℃で2時間加熱して溶剤を除去し、膜厚10μmの薄膜を得た。形成された薄膜を200℃で4時間加熱したところ、薄膜とアルミニウム板との間には剥離は観測されず、接着性が優れていることが確認された。また、この加熱処理された薄膜をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に含浸させ、100℃で2時間の条件で加熱したところ、溶け出すことはなく、耐溶剤性にも優れていることが確認された。更に、この加熱処理された薄膜は180°折り曲げても割れることがなく、また、実施例1におけると同様にしてTgを測定したところ、使用した芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体のTg:195℃と同等の値であるTg:192℃を示し、可とう性と耐熱性にも優れていることが確認された。
【0028】
実施例3
合成例2で得られた芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体2gとアクリロニトリルブタジエンゴム(HycarCTBN1300×8:平均分子量3600、Goodrich社製)0.4gとを、N−メチル−2−ピロリドン8gに室温で溶解させて樹脂組成物の溶液を得た。この場合、樹脂組成物は、上記溶剤に良好に溶解していた。次いで、得られた樹脂組成物の溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)不織布に含浸させ、150℃で2時間加熱して溶剤を除去し、PET織布上に膜厚10μmの薄膜を形成した。この薄膜をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に含浸させ100℃で2時間の条件で加熱したところ、溶け出すことはなく、耐溶剤性にも優れていることが確認された。更に、この薄膜は180°折り曲げても割れることがなく、可とう性に優れていることが確認された。
【0029】
実施例4
合成例2で得られた芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体2gとアクリロニトリルブタジエンゴム(HycarATBN1300×16:平均分子量3600、Goodrich社製)0.4gとを、N−メチル−2−ピロリドン8gに室温で溶解させて樹脂組成物の溶液を得た。この場合、樹脂組成物は、上記溶剤に良好に溶解していた。次いで、得られた樹脂組成物の溶液をガラス板上にキャスティング法により塗布し、130℃で2時間加熱して溶剤を除去し、膜厚10μmの薄膜を得た。形成された薄膜を200℃で4時間加熱したところ、薄膜とガラス板との間に剥離は観測されず、接着性が優れていることが確認された。また、この加熱処理された薄膜をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に含浸させ100℃で2時間の条件で加熱したところ、溶け出すことはなく、耐溶剤性にも優れていることが確認された。更に、この加熱処理された薄膜は180°折り曲げても割れることがなく、また、実施例1におけると同様にしてTgを測定したところ、使用した芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体のTg:195℃と同等の値であるTg:193℃を示し、可とう性と耐熱性にも優れていることが確認された。
【0030】
実施例5
合成例2で得られた芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体2gとアクリロニトリルブタジエンゴム(HycarCTBN1300×8:平均分子量3600、Goodrich社製)1.2gとを、N−メチル−2−ピロリドン10gに室温で溶解させて樹脂組成物の溶液を得た。この場合、樹脂組成物の溶液は、上記溶剤に良好に溶解していた。次いで、得られた樹脂組成物の溶液をアルミニウム板上にキャスティング法により塗布し、150℃で2時間加熱して溶剤を除去し、膜厚10μmの薄膜を得た。形成された薄膜を200℃で4時間加熱したところ、薄膜とアルミニウム板との間に剥離は観測されず、接着性が優れていることが確認された。また、この加熱処理された薄膜を180°折り曲げても割れることがなく、N−メチル−2−ピロリドン溶媒に含浸させ100℃で2時間の条件で加熱したところ、溶け出すこともなく、可とう性と耐溶剤性にも優れていることが確認された。また、実施例1におけると同様にしてTgを測定したところ、使用した芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体のTg:195℃より低下した値であるTg:170℃を示した。
【0031】
実施例6
アクリロニトリルブタジエンゴムとして、HycarCTBN1300×8の代わりにN280(日本合成ゴム社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、同様にして塗布および加熱処理を施して薄膜を形成た。得られた薄膜は耐溶剤性に優れており、Tgは192℃であった。
【0032】
比較例1
合成例1で得られた芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体2gをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて樹脂溶液を調製し、この樹脂溶液をアルミニウム板上にキャスティング法により塗布した。次いで、150℃で2時間加熱して溶剤を除去し、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブロック共重合体からなる薄膜を得た。この薄膜を200℃で4時間加熱したところ、アルミニウム板より剥離し、十分な接着性を有していないことが確認された。また、この薄膜をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に含浸させたところ、室温で溶解するのが観測され、耐溶剤性が不十分であった。
【0033】
比較例2
合成例2で得られた芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体2gをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて樹脂溶液を調製し、この樹脂溶液をアルミニウム板上にキャスティング法により塗布した。次いで、150℃で2時間加熱して溶剤を除去し、芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブロック共重合体からなる薄膜を得た。この薄膜を200℃で4時間加熱したところ、アルミニウム板より剥離し、十分な接着性を有していないことが確認された。また、この薄膜をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に含浸させたところ、室温で溶解するのが観測され、耐溶剤性が不十分であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の薄膜形成用樹脂組成物は、上記一般式(1)で示される芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムから構成されるので、薄膜形成前は溶剤に対して優れた溶解性を有し、基材上に塗布または含浸させ、加熱処理することにより、優れた特性の薄膜を形成することができる。加熱処理することにより形成された本発明の薄膜は、基材に対して優れた接着性と可とう性を有すると同時に優れた耐溶剤性および耐熱性を有している。
Claims (2)
- (a)下記一般式(1)で示される数平均分子量1000〜5000のアクリロニトリルブタジエン共重合体ブロックおよび下記一般式(2)で示される構造単位よりなる数平均分子量1000〜1万の芳香族ポリアミドブロックがカルボンアミド基によって結合した固有粘度0.05〜2.0dl/gの芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体と、(b)アクリロニトリルブタジエンゴムとよりなり、上記芳香族ポリアミド−アクリロニトリルブタジエンブロック共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの配合割合が重量比で100:1〜100:40の範囲であることを特徴とする薄膜形成用樹脂組成物。
- 請求項1に記載の薄膜形成用樹脂組成物を基材に塗布または含浸し、加熱することにより形成された薄膜。
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