JP3978867B2 - プラズマディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ、および、その製造方法 - Google Patents

プラズマディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ、および、その製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型のテレビやコンピュータモニターに用いられるプラズマディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイ(PDP)は、液晶パネルに比べ、高速の表示が可能であり、かつ、大型化が可能であることから、OA機器および広報表示装置などの分野で広く用いられている。また、高品位テレビジョンの分野などでの利用が非常に期待されている。この様な用途の拡大にともない、PDPとしては、微細で多数の表示セルを有するカラーPDPが、特に注目されている。
【0003】
PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に形成された放電空間内に対向して位置するアノードおよびカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、この空間内に封入されているガスからの発光によって表示を行うものである。
【0004】
PDPは、それぞれに、電極、誘電体層などを設けた前面ガラス基板および背面ガラス基板を張り合わせて形成されるが、背面ガラス基板には、通常、複数個のストライプ状の隔壁が形成されており、これら隣接する隔壁間に形成されたセルに、それぞれRGBのカラー表示を行うための蛍光体層が形成されている。これらの蛍光体層は、通常、スクリーン印刷法により、それぞれのセルに、R(赤色)発光蛍光体、G(緑色)発光蛍光体、および、B(青色)発光蛍光体を塗布し、乾燥、焼成工程を経て、形成される。高輝度化のために、セルの底面のみならず側面にも蛍光体層を設けて蛍光面とすることも行われている。
【0005】
上記の通り、RGBを表示するセルは、ストライプ状の隔壁間に形成されるが、隔壁は、一定の同一ピッチで形成されている。従って、RGBの蛍光体層の各サイズは、同じとなっている。
【0006】
現在、開発されている赤色発光蛍光体としては、Y23:Eu、YVO4:Eu、(Y、Gd)BO3:Eu、Y23S:Eu、γ−Zn3(PO42:Mn、(ZnCd)S:Ag+In23などがある。
【0007】
また、緑色発光蛍光体としては、Zn2GeO2:Mn、BaAl1219:Mn、Zn2SiO4、LaPO4:Tb、ZnS:Cu、Al、ZnS:Au、Cu、Al、(ZnCd)S:Cu、Al、Zn2SiO4:Mn,As、Y3A1512:Ce、CeMgAl1119:Tb、Gd22S:Tb、Y3A1512:Tb、ZnO:Znなどがある。
【0008】
更に、また、青色発光蛍光体としては、Sr5(PO43Cl:Eu、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMg2Al1424:Eu、ZnS:Ag+赤色顔料、Y2SiO3:Ceなどがある。
【0009】
これらの発光蛍光体の発光特性として、輝度、発光色、および、残光が重要であるが、完璧なものはなかなかない。特に、青色発光蛍光体の輝度は、赤色および緑色発光蛍光体の輝度に比べて低く、カラー表示した場合、バランスのよいカラー画像が得られないという問題があり、現状では、青色発光蛍光体のレベルに合わせた設計が行われている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、バランスのよい、より明るいカラー画像を表示することのできるプラズマディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ、および、その製造方法を提供する。
【0011】
従来のプラズマディスプレイでは、一定の同一ピッチおよび幅を有する隔壁を用いているため、RGB各色のセルのサイズは同一であり、カラー表示のバランスをよくするため、輝度に関しては、最も低いレベルにある青色発光蛍光体に合わせている。そのため、赤色および緑色発光蛍光体のもつ能力が十分発揮されていない。より明るい画面を得るため、輝度の高い青色発光蛍光体の改良が検討されているが、赤色および緑色発光蛍光体の輝度と同じレベルの材料は、未だ開発されていない。
【0012】
また、全面発光した場合に、青色の輝度が低くなり、画面全体が黄味がかった色になる。このため、ブラウン管などで示される美しい白色が再現できないと言う課題がある。
【0013】
本発明は、カラー画面上での青色発光蛍光体の明るさを向上させ、赤色および緑色発光蛍光体の明るさをより多く発揮させて、全体のカラー画像をより明るくすること、および、美しい白色を画面に実現することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマディスプレイは、次の構成からなる。
【0015】
ガラス基板上に、RGB各色を発光する蛍光体層がストライプ状に形成され、かつ、該RGB蛍光体層を仕切る隔壁間に形成されてなるプラズマディスプレイ用基板において、前記R蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPr、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPb、前記G蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pg、前記R蛍光体層の厚みをTr、前記G蛍光体層の厚みをTg、前記B蛍光体層の厚みをTbとしたとき、
Pb>Pr
1<Pg/Pr≦2
10μm≦Tr<Tb≦50μm
10μm≦Tg<Tb≦50μm
なる関係を有することを特徴とするプラズマディスプレイ用基板。
【0016】
また、上記本発明に係るプラズマディスプレイは、ガラス基板上に電極、誘電体および保護膜を形成した前面基板と、ガラス基板上に電極、誘電体、隔壁、蛍光体を形成した背面基板からなるプラズマディスプレイにおいて、ガラス基板上に、RGB各色を発光する蛍光体層がストライプ状に形成され、かつ、該RGB蛍光体層を仕切る隔壁が形成されてなるプラズマディスプレイ用基板において、前記R蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPr、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPbとしたとき、
Pb>Pr
なる関係を有するプラズマディスプレイ用基板を背面基板として用いることを特徴とする。
【0017】
更に、また、上記本発明に係るプラズマディスプレイ用基板を製造するための本発明に係るプラズマディスプレイ用基板の製造方法は、ガラス基板上に、感光性ペーストを塗布する工程、パターン露光を行う工程、および、現像液に溶解する部分を現像で取り除く工程を経た後に、450℃〜620℃で焼成することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
プラズマディスプレイの隔壁の高さは、80μm〜200μmが適している。隔壁のピッチ(P)は、100μm≦P≦500μmのものがよく用いられる。また、高精細プラズマディスプレイとしては、隔壁のピッチ(P)が、100μm≦P≦250μmであり、線幅(L)は、10μm≦L≦50μmであることが好ましい。このような高精細な隔壁は、サンドブラスト法、または、感光性ペースト法によって形成可能であるが、後者の感光性ペースト法がより好ましい。
【0019】
隔壁を形成する素材としては、ケイ素および/またはホウ素の酸化物を必須成分としたガラス材料が好ましく用いられる。
【0020】
従来、隔壁は、一定の同一ピッチをもってストライプ状に形成され、カラー表示のために、隣接するストライプ状の隔壁間に形成されるセルに、RGB各色に発光する蛍光体が塗布され、カラー画素が形成されている。すなわち、RGB3色をワンセットとする画素が、一定の同一ピッチで、ストライプ状に配列されている。例えば、隔壁のピッチが150μmであれば、この値のピッチをもって、RGBそれぞれの発光領域が、全て、同一のサイズで形成されている。
【0021】
現在、実用されている代表的な蛍光体として、赤色発光には、KX−504A、緑色発光には、P1−G1S、青色発光には、KX−501A(いずれも化成オプトニクス(株)製)があるが、これらの蛍光体の中で、青色発光蛍光体KX−501A(組成:(Ba、Eu)MgAl1017)の発光輝度は、赤色発光蛍光体KX−504A(組成:(Y、Gd、Eu)BO3)や、緑色発光蛍光体P1−G1S(組成:(Zn、Mn)2SiO4)に比べて、1/4〜1/2のレベルである。
【0022】
従来、このように各色の蛍光体の輝度に差があるため、同一サイズのセルで、この輝度の差を整合させていたが、この場合、赤や緑については、それらの発光輝度が十分に活用できていないという問題が内在していた。
【0023】
本発明のプラズマディスプレイ用基板においては、特に赤色蛍光体層と青色蛍光体層の発光輝度の差が大きすぎることが問題であり、青色蛍光体層が形成されるセルの隔壁間距離Pbを、赤色蛍光体層が形成されるセルの隔壁間距離Prより、大きくすることにより、全体の輝度のレベルを高め、カラー画像をより明るくできることを見いだした。さらに、Pbを緑色蛍光体層が形成されるセルの隔壁間距離Pgよりも大きくすることにより、全体の輝度のレベルをより高めることができる。
【0024】
また、1<Pb/Pr≦2なる関係を有することにより、青色の発光輝度が低いという課題と、赤色の輝度が高く色温度が低下しやすいという課題を同時に解決できる。また、1<Pb/Pg≦2なる関係を有することにより、青色の輝度をさらに向上することができる。また、1<Pg/Pr≦2なる関係を有することにより、眼の視感度の高い緑色の輝度を高くして、眼に感じる発光輝度がさらに高いプラズマディスプレイを作製することができる。
【0025】
PbとPrの差を5μm〜200μm、より好ましくは5μm〜100μmにすることにより、発光の強い赤色蛍光体の特性と発光の弱い青色蛍光体の特性をバランスさせ、輝度と色バランスに優れたプラズマディスプレイを得ることができるので好ましい。また、PbとPgの差も同様に5μm〜200μmが好ましく、5μm〜100μmがより好ましい。
【0026】
差が小さすぎる場合には、従来に比べて十分な輝度向上効果が得られない。また、差が大きすぎる場合は、RGBそれぞれを発光が生じる放電空間の差が大きくなりすぎるため、駆動が難しくなる。
【0027】
例えば、ピッチ150μmの等間隔の隔壁を形成する場合を前提として、本発明の提案を実行するには、Pb=200μmとし、Pr=Pg=125μmとする配分が可能である。この場合の隔壁間距離の差は、75μmである。等間隔の場合の150μmピッチで形成された蛍光体層に比べ、高い輝度が得られるので、それに整合させて、他の蛍光体の輝度を高める駆動回路設計が可能になり、より明るいカラー画像のプラズマディスプレイを得ることが可能になる。
【0028】
本発明のプラズマディスプレイ用基板は、銀や銅、クロムで形成される電極、ガラス成分からなる誘電体上に隔壁、RGBの各色を発光する蛍光体層を形成して作製できる。
【0029】
このような隔壁の形成は、無機微粒子と光反応性化合物を含む有機成分を必須成分とする感光性ペーストを用いて行うのが、製作工程の簡便さ、高精度のパターン加工が実現できる点から、好ましい。
【0030】
無機微粒子としては、ガラス、セラミック(アルミナ、コーディライトなど)などが、透明性に優れるため、好ましい。特に、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、または、アルミニウム酸化物を必須成分とするガラスやセラミックスが好ましい。
【0031】
無機微粒子の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、体積平均粒子径(D50)が、1.5μm以上であることが、パターン形成上、好ましく、2μm以上であることがより好ましい。ただし、D50が10μm以上になると、パターン形成時に、表面凸凹が生じるため、D50が、1.5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは、2〜8μmである。また、比表面積0.2〜3m2/gのガラス微粒子を用いることが、パターン形成において、特に好ましい。
【0032】
また、無機微粒子として、形状が球状である無機微粒子を用いることによって、高アスペクト比のパターニングが可能となる。具体的には、球形率80個数%以上であることが好ましい。より好ましくは、平均粒子径1.5μm〜4μm、比表面積0.5〜1.5m2/g、球形率90個数%以上である。ここで、球形率とは、顕微鏡観察において、球形もしくは楕円形の形状を有する粒子の割合であり、光学顕微鏡において、円形,楕円形として観察される。
【0033】
隔壁は、熱軟化点の低いガラス基板上にパターン形成されるため、無機微粒子として、熱軟化温度が350℃〜600℃のガラス微粒子を60重量%以上含む無機微粒子を用いることが好ましい。熱軟化温度が600℃以上のガラス微粒子やセラミック微粒子を添加することによって、焼成時の収縮率を抑制することができるが、その量は、40重量%以下が好ましい。
【0034】
光線透過率が高いガラス微粒子を用いることによって、より正確な形状のパターンを得ることができる。この場合に使用する光線透過率の高いガラス微粒子としては、ガラス微粒子を溶融して厚み40μmのガラス板を作製した後、露光する光の波長、特に、365nm、405nm、429nm、436nm、488nmのいずれかの波長での光線透過率を測定し、全光線透過率が、70%以上のものが好ましく、80%以上のものがより好ましい。
【0035】
また、焼成時に、ガラス基板にそりを生じさせないためには、線膨脹係数が50〜90×10-7、更には、60〜90×10-7のガラス微粒子を用いることが好ましい。
【0036】
ガラス微粒子中の組成としては、酸化ケイ素は、3〜60重量%の範囲で配合されていることが好ましく、3重量%未満の場合は、ガラス層の緻密性、強度や安定性が低下し、また、熱膨脹係数が所望の値から外れ、ガラス基板とのミスマッチが起こりやすい。また、60重量%以下にすることによって、熱軟化点が低くなり、ガラス基板への焼き付けが可能になるなどの利点がある。
【0037】
酸化ホウ素は、5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨脹係数、絶縁層の緻密性などの電気、機械および熱的特性を向上することができる。50重量%を越えるとガラスの安定性が低下する。
【0038】
このようなガラス微粒子としては、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化亜鉛のうちの少なくとも1種類を5〜50重量%含むガラス微粒子を用いることによって、ガラス基板上にパターン加工できる温度特性を有するガラスペーストを得ることができる。特に、酸化ビスマスを5〜50重量%含有するガラス微粒子を用いると、ペーストのポットライフが長いなどの利点が得られる。
【0039】
ビスマス系ガラス微粒子としては、次の組成を含むガラス粉末を用いることが好ましい。
【0040】
酸化ビスマス :10〜40重量部
酸化ケイ素 : 3〜50重量部
酸化ホウ素 :10〜40重量部
酸化バリウム : 8〜20重量部
酸化アルミニウム :10〜30重量部
また、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムのうち、少なくとも1種類を3〜20重量%含むガラス微粒子を用いてもよいが、この場合、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の酸化物の添加量を20重量%以下、好ましくは、15重量%以下にすることによって、ペーストの安定性を向上することができる。
【0041】
この場合の具体的なガラス微粒子としては、次に示す組成を含むガラス粉末を用いることが好ましい。
【0042】
酸化リチウム : 2〜15重量部
酸化ケイ素 :15〜50重量部
酸化ホウ素 :15〜40重量部
酸化バリウム : 2〜15重量部
酸化アルミニウム : 6〜25重量部
また、上記組成で、酸化リチウムの代わりに、酸化ナトリウム、酸化カリウムを用いてもよいが、ペーストの安定性の点で、酸化リチウムが好ましい。
【0043】
また、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛のような金属酸化物と酸化リチウム,酸化ナトリウム、酸化カリウムのようなアルカリ金属酸化物の両方を含有するガラス微粒子を用いれば、より低いアルカリ含有量で、熱軟化温度や線膨脹係数を容易にコントロールすることができる。
【0044】
また、ガラス微粒子中に、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど、特に、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化亜鉛を添加することにより、加工性を改良することができるが、熱軟化点、熱膨脹係数、屈折率の制御の点からは、その含有量は、40重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以下である。
【0045】
一般に、絶縁体として用いられるガラスは、1.5〜1.9程度の屈折率を有している。有機成分の平均屈折率が、無機微粒子の平均屈折率と大きく異なる場合は、無機粒子と感光性有機成分の界面での反射、散乱が大きくなり、全光線透過率、直進透過率を向上することが困難であり、高アスペクト比、高精度のパターンが得られない。
【0046】
一般的な有機成分の屈折率は、1.45〜1.7であるため、無機微粒子と有機成分の屈折率を整合させるためには、無機粒子の平均屈折率を1.5〜1.75にすることが好ましい。さらに好ましくは、屈折率1.5〜1.65にすることによって、有機成分の選択の幅が広がる利点がある。
【0047】
無機微粒子として、酸化ホウ素や酸化ケイ素を多く含有するガラスやセラミックを用いた場合は、屈折率が比較的小さいため、有機成分として、1.5〜1.6のものを用いることによって、より簡便に、屈折率を整合させることができる。
【0048】
しかし、プラズマディスプレイの隔壁のパターン形成に用いるガラス微粒子としては、ガラス基板上での焼成を行う必要があるため、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛を含有するガラス微粒子を用いる場合が多いが、これらの金属を含有するガラスは、屈折率が1.65以上になる場合が多い。
【0049】
そのため、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛の含有量を5〜16重量%に調整する方法があるが、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属の酸化物を合計で5〜20重量%含有するガラス微粒子を用いることによって、平均屈折率をコントロールしやすくなり、ガラス基板上に焼き付け可能な熱軟化温度を有し、平均屈折率を1.5〜1.65にすることができ、有機成分との屈折率差を小さくすることが容易になる。
【0050】
感光性ペースト中において使用される有機成分とは、感光性の有機物を含むペースト中の有機成分(ペーストから無機成分を除いた部分)のことである。
【0051】
有機成分についても、光線透過率が高いことが好ましい。露光する光の波長、特に、365nm、405nm、420nm、436nm、488nmのいずれかの波長で測定した厚み40μmの全光線透過率が、70%以上であることが好ましい。
【0052】
有機成分は、感光性モノマ、感光性オリゴマ、感光性ポリマのうちの少なくとも1種類から選ばれた感光性成分を含有し、更に、必要に応じて、バインダ、光重合開始剤、光吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、有機溶媒、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤などの添加剤を加えることも行われる。
【0053】
感光性成分としては、光不溶化型のものと光可溶化型のものがあり、代表的なものとして、次の(A)〜(E)があげられる。
【0054】
光不溶化型のものとしては、
(A)分子内に不飽和基などを1つ以上有する官能性のモノマ、オリゴマ、ポリマを含有するもの、
(B)芳香族ジアゾ化合物、芳香族アジド化合物、有機ハロゲン化合物などの感光性化合物を含有するもの、あるいは、
(C)ジアゾ系アミンとホルムアルデヒドとの縮合物など、いわゆるジアゾ樹脂がある。
【0055】
光可溶化型のものとしては、
(D)ジアゾ化合物の無機塩や有機酸とのコンプレックス、キノンジアゾ類を含有するもの、あるいは、
(E)キノンジアゾ類を適当なポリマバインダと結合させた、例えば、フェノールノボラック樹脂のナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルフォン酸エステルがある。
【0056】
本発明において用いる感光性成分は、上記のすべてのものを用いることができる。感光性ペーストとして、無機微粒子と混合して簡便に用いることができる感光性成分としては、上記(A)のものが好ましい。
【0057】
感光性モノマとしては、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物で、その具体的な例として、単官能および多官能性の(メタ)アクリレート類、ビニル系化合物類、アリル系化合物類などを用いることができる。これらは1種または2種以上使用することができる。
【0058】
これら以外に、不飽和カルボン酸などの不飽和酸を加えることによって、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、または、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0059】
また、炭素−炭素2重結合を有する化合物のうちの少なくとも1種類を重合して得られるオリゴマやポリマを用いることができる。重合する際に、これらのモノマの含有率が、10重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上になるように、他の感光性のモノマと共重合することができる。
【0060】
不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、または、これらの酸無水物などが挙げられる。こうして得られた側鎖にカルボキシル基などの酸性基を有するポリマ、もしくは、オリゴマの酸価(AV)は、50〜180の範囲が好ましく、70〜140の範囲がより好ましい。
【0061】
以上に示したポリマもしくはオリゴマに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性をもつ感光性ポリマや感光性オリゴマとして用いることができる。好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0062】
このような側鎖のオリゴマやポリマへの付加は、ポリマ中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを反応させて行うことができる。
【0063】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0064】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマ中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、0.05〜1モル等量付加させることが好ましい。
【0065】
バインダとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、α−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。
【0066】
光重合開始剤の具体的な例として、ベンゾフェノン、O-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイル、および、エオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられる。
【0067】
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性成分に対し、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜5重量%の範囲で添加される。重合開始剤の量が少な過ぎると、光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなり過ぎる恐れがある。
【0068】
光吸収剤を添加することも有効である。紫外光や可視光の吸収効果が高い化合物を添加することによって、高アスペクト比、高精細、高解像度が得られる。
【0069】
光吸収剤としては、有機系染料からなるものが好ましく用いられる、具体的には、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系染料、ベンゾフェノン系染料、ジフェニルシアノアクリレート系染料、トリアジン系染料、p−アミノ安息香酸系染料などが使用できる。有機系染料は、光吸収剤として添加した場合にも、焼成後の絶縁膜中に残存しないので、光吸収剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。これらの中でも、アゾ系およびベンゾフェノン系染料が好ましい。
【0070】
有機染料の添加量は、0.05〜5重量%が好ましい。0.05重量%以下では、光吸収剤の添加効果が減少し、5重量%を越えると、焼成後の絶縁膜特性が低下するので好ましくない。より好ましくは、0.05〜1重量%である。
【0071】
有機系染料からなる光吸収剤の添加方法の一例を挙げると、有機系染料を予め有機溶媒に溶解した溶液を作製し、それをペースト作製時に混練する方法や、該有機溶媒中に無機微粒子を混合後、乾燥する方法がある。この方法によって無機微粒子の個々の粉末表面に有機の膜をコートした、いわゆるカプセル状の粉末が作製できる。
【0072】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。これらを1種または2種以上使用することができる。
【0073】
なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を感光性ペーストに添加する場合、その添加量は、感光性成分に対して通常0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。増感剤の量が少な過ぎれば、光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多過ぎれば、露光部の残存率が小さくなり過ぎる恐れがある。
【0074】
感光性ペーストには、その溶液の粘度を調整したい場合、有機溶媒を加えてもよい。このとき使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチルラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0075】
有機成分の屈折率とは、露光により感光性成分を感光させる時点におけるペースト中の有機成分の屈折率のことである。つまり、ペーストを塗布し、乾燥工程後に露光を行う場合は、乾燥工程後のペースト中の有機成分の屈折率のことである。例えば、ペーストをガラス基板上に塗布した後、50〜100℃で1〜30分乾燥して屈折率を測定する方法などがある。
【0076】
有機成分の屈折率としては、1.5〜1.65の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.5〜1.6である。特に、ガラス微粒子の平均屈折率が1.55〜1.65の範囲、有機成分の平均屈折率が1.5〜1.6の場合が、ガラス微粒子および有機成分の選択の幅が広がると共に、直進透過率の向上を行い易いという利点がある。
【0077】
ただし、ガラス基板上に焼き付けを行うことができる酸化ビスマスや酸化鉛を10重量%以上含有するガラス粉末は、屈折率が1.6以上になる場合があり、この場合は、有機成分の屈折率を高くする必要がある。この場合、有機成分中に高屈折率成分を導入する必要があり、有機成分中に硫黄原子、臭素原子、ヨウ素原子、ナフタレン環、ビフェニル環、アントラセン環、カルバゾール環を有する化合物を10重量%以上用いることが高屈折率化に有効である。ただし、これら化合物の種類によっては、光吸収による透過率低下を招く場合があるので、20重量%以下にすることが好ましい。また、ベンゼン環を20重量%以上含有することによって、高屈折率化ができる。特に、硫黄原子もしくはナフタレン環を10重量%以上含有することによって、より簡便に有機成分を高屈折率化することができる。ただし、含有量が60重量%以上になると光感度が低下するという問題が発生するので、硫黄原子とナフタレン環の合計含有量が10〜60重量%の範囲であることが好ましい。
【0078】
有機成分の屈折率を高くする方法としては、感光性モノマやバインダ中に硫黄原子、ナフタレン環を持つ化合物を用いることが有効である。
【0079】
感光性ペーストは、通常、無機微粒子、光吸収剤、感光性ポリマ、感光性モノマ、光重合開始剤、ガラスフリットおよび溶媒などの各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合、分散し作製する。
【0080】
ペーストの粘度は、無機微粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は、2000〜20万cps(センチ・ポイズ)である。例えば、ガラス基板への塗布をスクリーン印刷法以外にスピンコート法で行う場合は、200〜5000cpsが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、5万〜20万cpsが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、2000〜20000cpsが好ましい。
【0081】
感光性ペーストを用いた隔壁形成は、次のように行われる。
ガラス基板に、感光性ペーストを塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなど一般的な方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。
【0082】
ここで、ペーストをガラス基板上に塗布する場合、ガラス基板と塗布膜との密着性を高めるために、予め、ガラス基板の表面処理を行うことができる。表面処理液としては、シランカップリング剤、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなど、あるいは有機金属例えば、有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウムなどである。シランカップリング剤あるいは有機金属を有機溶媒、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどがあり、0.1〜5%の濃度に希釈したものを使用するのが好ましい。次に、この表面処理液をスピナーなどでガラス基板上に均一に塗布した後に、80〜140℃で10〜60分間乾燥することによって表面処理が完了する。
【0083】
感光性ペースト塗布した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は、通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する方法が一般的である。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらかを選定する。また、フォトマスクを用いずに、レーザ光などで直接描画する方法を用いても良い。
【0084】
フォトマスクを用いて露光する際に、隔壁ピッチに対応した開口を有するフォトマスクを用いるが、この場合に、RGB各色の蛍光体を塗布する隔壁間隔に所定の値の差がつくように露光することにより、本発明の用件を満たす隔壁を形成することができる。
【0085】
露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、ガラス基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。
【0086】
この際使用される活性光源は、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザ光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は、塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.5〜30分間露光を行う。
【0087】
塗布した感光性ペースト表面に、酸素遮断膜を設けることによって、パターン形状を向上することができる。酸素遮断膜の一例としては、ポリビニルアルコールやセルロースなどの膜、あるいは、ポリエステルなどのフィルムが挙げられる。
【0088】
ポリビニルアルコール膜の形成方法は、濃度が0.5〜5重量%の水溶液をスピナーなどの方法で、基板上に均一に塗布した後に、70〜90℃で10〜60分間乾燥することによって水分を蒸発させて行う。また、この際、水溶液中にアルコールを少量添加すると濡れ性が良くなり蒸発が容易になるので好ましい。さらに好ましいポリビニルアルコールの溶液濃度は、1〜3重量%である。この範囲にあると、感度が一層向上する。ポリビニルアルコール塗布によって感度が向上するのは、次の理由が推定される。すなわち、感光性成分が光反応する際に、空気中の酸素が反応を妨害すると推定され、この理由によれば、ポリビニルアルコール膜があると余分な酸素を遮断できるので露光時に感度が向上するものと考えられ、ポリビニルアルコール膜の存在は、好ましいと云える。
【0089】
ポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレンなどの透明なフィルムを用いる場合は、塗布後の感光性ペーストの上に、これらのフィルムを張り付けて用いる方法がある。
【0090】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法やスプレー法、ブラシ法で行う。
【0091】
現像液は、感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いる。また、該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0092】
有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、通常、0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。アルカリ濃度が低過ぎれば可溶部が除去されず、アルカリ濃度が高過ぎれば、パターン部を剥離させ、また、非可溶部を腐食させる恐れがあり良くない。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0093】
次に、焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、400〜1000℃で行う。ガラス基板上にパターン加工する場合は、450〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。
【0094】
隔壁を形成した後に、RGB各色に発光する蛍光体層を形成する。蛍光体粉末、有機バインダーおよび有機溶媒を主成分とする蛍光体ペーストを所定の隔壁間に形成することにより、蛍光体層を形成することができる。蛍光体ペーストを所定の隔壁間に形成する方法としては、スクリーン印刷法によりパターン印刷する方法や所定のピッチの吐出孔を有する口金から蛍光体ペーストを所定の隔壁間に吐出して形成する方法を用いることができる。また、有機バインダーとして、前述の感光性を有する有機成分を用いることにより、感光性蛍光体ペーストを作製して、フォトリソグラフィー法により各色蛍光体層を所定の場所に形成することができる。
【0095】
R蛍光体層の厚みをTr、G蛍光体層の厚みをTg、および、B蛍光体層の厚みをTbとしたとき、
10μm≦Tr<Tb≦50μm
10μm≦Tg<Tb≦50μm
なる関係を有することにより、より本発明の効果を発揮できる。つまり、発光輝度の低い青色について、塗布面積を広げるだけでなく、厚みを緑色、赤色よりも厚くすることにより、より色バランスに優れた(色温度の高い)プラズマディスプレイを作製できる。この場合の蛍光体層の厚みとしては、10μmよりも薄くなると十分な輝度を得ることができなにくい。また、厚みが50μmよりも厚くなると放電空間が狭くなり輝度が低下しやすいという問題が生じる。この場合の蛍光体層の厚みは、隣り合う隔壁の中間点での形成厚みとして測定する。つまり、放電空間(セル内)の底部に形成された蛍光体層の厚みとして測定する。
【0096】
蛍光体層を形成した該基板を必要に応じて、400〜550℃で焼成する事により、本発明のプラズマディスプレイ用基板を作製することができる。
【0097】
該プラズマディスプレイ用基板と前面基板、すなわち、所定のパターンで透明電極、バス電極、誘電体、保護膜(MgO)を形成したガラス基板を封着後、基板の間隔に形成された空間に、ヘリウム、ネオン、キセノンなどから構成される放電ガスを封入後、駆動回路を装着してプラズマディスプレイを作製できる。
【0098】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、該実施例に限定されるものではない。
【0099】
実施例1
溶媒(γ−ブチルラクトン)と感光性ポリマとを、感光性ポリマ40%溶液になるように混合し、攪拌しながら60℃まで加熱して、すべてのポリマを均質に溶解させた。感光性ポリマは、40%のメタクリル酸、30%のメチルメタクリレートおよび30%のスチレンからなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させた重量平均分子量43,000、酸価95のポリマである。次いで、溶液を室温まで冷却し、感光性モノマ、光重合開始剤、増感剤などを加えて溶解させた。その後、この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、感光性有機成分を作製した。本実施例に用いた感光性モノマ、光開始剤、増感剤は、次の化合物である。
【0100】
感光性モノマ:キシリレンジアミン1モルに4モルのグリシジルメタクリレートを付加した化合物
光開始剤 :2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
増感剤 :2,4−ジエチルチオキサントン
次に、アゾ系有機染料のスダンを、ガラス粉末に対して0.10%の割合で秤量した。スダンをアセトンに溶解させ、分散剤を加えてホモジナイザで均質に攪拌し、この溶液中にガラス粉末を添加して均質に分散、混合後、ロータリーエバポレータを用いて、150〜200℃の温度で乾燥し、アセトンを蒸発させた。このようにして、有機染料からなる紫外線吸収剤の膜でガラス粉末の表面を均質にコーティングした(いわゆるカプセル処理した)粉末を作製した。
【0101】
ここに用いたガラス粉末は、Li2O:9%、SiO2:22%、B23:33%、BaO:4%、Al23:23%、ZnO:2%、MgO:7%の組成を有するものである。また、ガラス粉末は、予めアトラクターで微粉末にし、平均粒径2.6μm、屈折率1.58のものである。
【0102】
上記の有機成分と上記紫外線吸収剤添加のガラス粉末を、ガラス粉末60重量部、感光性有機成分(溶媒を除く)25重量部、溶媒(γ−ブチルラクトン)15重量部の割合になるように添加し、3本ローラで混合、分散して、感光性ペーストを調製した。
【0103】
蛍光体層を形成する隔壁間距離の相違に対応する間隔で形成されたストライプ状のデータ電極と誘電体層を有するガラス基板上に、スリットダイコーターにより、180μmの乾燥後厚みになるように感光性ペーストの塗布を行った後、80℃で1時間乾燥した。
【0104】
次に、フォトマスクを介して露光を行った。マスクは、B蛍光体層の形成される隔壁間ピッチを260μmとし、R蛍光体層およびG蛍光体層の形成される隔壁間ピッチを200μmとし、隔壁の線幅を30μmとしたプラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターンが形成可能になるように設計したクロムマスクである。露光は、50mW/cm2の出力の超高圧水銀灯で15J/cm2の紫外線露光を行った。その後、モノエタノールアミンの1%水溶液に浸漬して現像した。
【0105】
感光性ペーストをパターン化して得られたガラス基板を120℃で1時間乾燥した後、560℃で1時間焼成を行った。焼成により約20%程度の収縮が生じた。
【0106】
電極、誘電体、隔壁が形成されている基板上に、スクリーン印刷法により、RGB蛍光体を塗布し、乾燥、焼成工程を経て蛍光体層を形成した。蛍光体は、隔壁の底面のみならず側面にも塗布して、底面および側面に蛍光面を形成した。
【0107】
このようにして形成した背面ガラス基板を、別途用意した前面ガラス基板と合わせた後、封着、ガス封入を行い、駆動回路を接合してプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行った。
【0108】
得られた青色発光輝度を測定したところ、比較例1のプラズマディスプレイの発光輝度よりも、約10%高いこと、および、全面発光した場合、パネルディスプレイ全体が、青色で美しい白色を表示していることを、それぞれ確認した。
【0109】
また、駆動回路による色補正をしない状態での色温度が、10000度であり、表示品に優れていることがわかった。
【0110】
実施例2
フォトマスクとして、B蛍光体層の形成される隔壁間ピッチを260μm、G蛍光体層の形成される隔壁間ピッチを240μmとし、R蛍光体層の形成される隔壁間ピッチを160μmとし、隔壁の線幅を30μmとしたプラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターンが形成可能になるように設計したクロムマスクを用いた以外は、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行った。
【0111】
得られた青色発光輝度を測定したところ、比較例1のプラズマディスプレイの発光輝度よりも、約15%高いこと、および、全面発光した場合、パネルディスプレイ全体が、青色で美しい白色を表示していることを、それぞれ確認した。
【0112】
また、駆動回路による色補正をしない状態での色温度が、12000度であり、表示品に優れていることがわかった。
【0113】
比較例1
フォトマスクとして、R蛍光体層、G蛍光体層およびB蛍光体層の形成される隔壁間ピッチを全て220μmとし、隔壁の線幅を30μmとしたプラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターンが形成可能になるように設計したクロムマスクを用いた以外は、実施例1と同様にして、プラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行った。駆動回路による色補正をしない状態での色温度は4000度であった。
【0114】
【発明の効果】
本発明に係るプラズマディスプレイによれば、従来のプラズマディスプレイが有していた、青色発光蛍光体に比べ、赤色および緑色発光蛍光体のもつ能力が十分発揮されないという問題点が解消され、各発光蛍光体の輝度能力をほぼ均等に利用でき、バランスの良いより明るいカラー画像の表示が可能で、また、従来のプラズマディスプレイが有していた、全面発光した場合に美しい白色画像の表示が困難であるという問題点が解消され、美しい白色画像の表示が可能である。

Claims (8)

  1. ガラス基板上に、RGB各色を発光する蛍光体層がストライプ状に形成され、かつ、該RGB蛍光体層を仕切る隔壁間に形成されてなるプラズマディスプレイ用基板において、前記R蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPr、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPb、前記G蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pg、前記R蛍光体層の厚みをTr、前記G蛍光体層の厚みをTg、前記B蛍光体層の厚みをTbとしたとき、
    Pb>Pr
    1<Pg/Pr≦2
    10μm≦Tr<Tb≦50μm
    10μm≦Tg<Tb≦50μm
    なる関係を有することを特徴とするプラズマディスプレイ用基板。
  2. 前記R蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pr、および、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pbが、
    1<Pb/Pr≦2
    なる関係を有する請求項1記載のプラズマディスプレイ用基板。
  3. 前記R蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pr、および、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pbが、
    5μm≦Pb−Pr≦200μm
    なる関係を有する請求項1または請求項2記載のプラズマディスプレイ用基板。
  4. 前記G蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPg、および、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離をPbとしたとき、
    Pb>Pg
    なる関係を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用基板。
  5. 前記G蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pg、および、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pbが、
    1<Pb/Pg≦2
    なる関係を有する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用基板。
  6. 前記G蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pg、および、前記B蛍光体層が形成されている隔壁間距離Pbが、
    5μm≦Pb−Pg≦200μm
    なる関係を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用基板。
  7. ガラス基板上に電極、誘電体および保護膜を形成した前面基板と、ガラス基板上に電極、誘電体、隔壁、蛍光体を形成した背面基板からなるプラズマディスプレイにおいて、請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用基板を背面基板として用いることを特徴とするプラズマディスプレイ。
  8. ガラス基板上に、感光性ペーストを塗布する工程、パターン露光を行う工程、および、現像液に溶解する部分を現像で取り除く工程を経た後に、450℃〜620℃で焼成することにより、隔壁を形成してなる請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用基板の製造方法。
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