JP3978570B2 - 脱臭クチナシ黄色素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、臭いがしないか若しくは臭いが有意に低減された、無臭若しくは微臭のクチナシ黄色素及び該色素を含有する色素製剤に関する。また本発明は、長期保存によって生じ得る臭いの経時的な発現が有意に抑制されてなる無臭若しくは微臭のクチナシ黄色素及び該色素を含有する色素製剤に関する。さらに本発明はかかる無臭若しくは微臭のクチナシ黄色素の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カロチノイド系色素であるクチナシ黄色素は、主に麺類や飲料などの食品の着色に広く使用されている。しかしながら、当該クチナシ黄色素は、原料として用いられるクチナシ果実に起因するやや甘い匂いと酸臭の有る漢方薬的な特有の臭いを有するため、食品その他の製品に使用する際、その香気がこれら食品等の風味や味に悪影響を及ぼす場合がある。また、クチナシ黄色素をクチナシ青色素、スピルリナ青色素などの青色素と併用して緑色素製剤を製造することが従来より行われているが、かかる緑色素製剤にもクチナシ黄色素に由来する漢方薬的な臭いが残るという問題があった。
【0003】
このため、従来からクチナシ果実に由来する上記の漢方薬的な臭気のないクチナシ黄色素製剤が求められており、これまでに各種の精製方法が検討され実施されている。
【0004】
例えばカロチノイド系色素の精製方法として、クチナシ果実抽出液を限外濾過膜で処理する方法(特開昭59-144797号公報)、クチナシ果実抽出液に酸性白土および/または活性白土を接触させて精製する方法(特開平4-15266号公報)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、今までクチナシ果実特有の臭いを有効に脱臭する方法は殆どなく、従来のクチナシ黄色素製剤は、未だ特有の臭いを有しているのが実情である。
【0006】
また、従来のクチナシ黄色素製剤は、長期保存時に熱や光等による経時変化によって徐々に臭いが強くなる、所謂「匂い戻り現象」が生じるという問題を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらのことから、本発明は食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などの風味や香味に長期にわたって影響を与えることなく、着色料として安心して配合使用できるクチナシ黄色素を提供することを目的とするものである。
【0008】
具体的には、本発明は第1に、クチナシ果実に由来する香気成分が除去されて該香気成分に由来する臭いがしないか若しくはそれが有意に低減されてなるクチナシ黄色素並びに該色素を含有する色素製剤を提供することを目的とする。第2に本発明は、長期保存時の熱や光の影響によっても所謂「匂い戻り」といった経時変化のないクチナシ黄色素並びに該色素を含有する色素製剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記クチナシ黄色素製剤に関する従来の問題点を解決すべく日夜鋭意検討した結果、本発明の目的に則したクチナシ黄色素を開発するに至った。すなわち、本発明は、下記(1)〜(3)に掲げるクチナシ黄色素である:
(1)色価を
【0010】
【数2】
【0011】
とした場合に、含まれる香気成分濃度が 50ppm以下であることを特徴とするクチナシ黄色素。
(2)上記香気成分が、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノール、4−ビニル−2−メトキシフェノール、4−ビニルフェノールおよび4−ビニル−2,6−ジメトキシフェノールよりなる群から選択されるいずれか少なくとも一種である(1)記載のクチナシ黄色素。
【0012】
さらに本発明は、上記いずれかに記載のクチナシ黄色素を含有する色素製剤である。
【0013】
また、本発明は、下記(a)〜(d)に掲げる、上記クチナシ黄色素の製造方法に関する:
(a)クチナシ黄色素抽出液の吸着処理液に対して、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも一種の処理を行うことを特徴とする無臭若しくは微臭のクチナシ黄色素の製造方法。
(b)酸処理が食品添加物として使用される無機酸を用いた処理である(a)に記載のクチナシ黄色素の製造方法。
(c)酸処理後に膜分離処理を行うことを特徴とする(a)乃至(b)のいずれかに記載のクチナシ黄色素の製造方法。
(d)膜分離処理が、逆浸透膜処理または限外濾過膜処理のいずれか少なくとも1種である(a)乃至(c)のいずれかに記載のクチナシ黄色素の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、原料として用いるクチナシ果実に由来する漢方薬的な臭いを含まないか若しくはそれが有意に低減されてなるクチナシ黄色素である。
【0015】
本発明において、クチナシ黄色素とは、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERR. Var. grandiflora HORT., Gardenia jasminoides ELLIS)の果実(山梔子)を原料として調製される、クロシンまたはクロセチンを含有する黄色素を広く意味するものである。
【0016】
本発明において色価とは、当該対象のクチナシ黄色素を含有する水溶液の可視部での極大吸収波長(425〜445nm付近)における吸光度を測定し、該吸光度を10w/v%溶液の吸光度に換算した数値である。
【0017】
また本発明において香気成分とは、異臭や悪臭の原因となるクチナシ果実に由来する揮発性香気成分を意味するものである。かかる香気成分としては、特に制限されないが、例えばベンジルアルコール、3−フェニルプロパノール、4−ビニル−2−メトキシフェノール、4−ビニルフェノールまたは4−ビニル−2,6−ジメトキシフェノールを挙げることができる。
【0018】
本発明が対象とするクチナシ黄色素は、当該色素の色価を
【0019】
【数3】
【0020】
に調整した場合に、該色素中に含まれる全ての香気成分の総濃度が50 ppm以下であることを特徴とするものである。好ましくは20 ppm以下である。香気成分の濃度は色価にほぼ比例するものである。よって、本発明が対象とするクチナシ黄色素は、色素を上記色価に調整した場合に香気成分の総量が上記濃度範囲にあるものであればよく、それ自体が上記色価を有する必要はない。
【0021】
本発明のクチナシ黄色素として好ましくは、該色素の色価を上記のように調整した場合に、該色素中に含まれる少なくともベンジルアルコール、3−フェニルプロパノール、4−ビニル−2−メトキシフェノール、4−ビニルフェノール及び/または4−ビニル−2,6−ジメトキシフェノールからなる香気成分の濃度が、総量で50 ppm程度以下、より好ましくは20 ppm程度以下のものである。
【0022】
このように上記の香気成分の含有量が極めて低減されることによって無臭化若しくは微臭化された本発明のクチナシ黄色素は、クチナシ果実の黄色素抽出液の吸着処理液に対して、吸着処理、イオン交換処理、酸処理または膜分離処理のいずれか一種またはこれらの処理を任意に2種以上組み合わせて行うことによって製造取得することができる。
【0023】
本発明において用いられるクチナシ果実の黄色素抽出液としてはクチナシ果実の溶媒抽出物が用いられる。抽出に用いられる植物部位は、好適には上記のようにクチナシの果実を挙げることができる。
【0024】
当該クチナシ果実はそのまま(生)若しくはその破砕物として抽出操作に付してもよいし、また湯通ししたものあるいはしないものを乾燥後、必要に応じて粉砕して粉体状として抽出操作に付してもよい。
【0025】
上記抽出に用いられる溶媒としては、特に制限されないが、好適にはアルコール、水またはこれらの混合液を用いることができる。なお、アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールを例示することができる。
【0026】
抽出方法としては、一般に用いられる方法を採用することができる。制限はされないが、例えば溶媒中にクチナシ果実(そのまま若しくは粗末、細切物)、又はそれらの乾燥破砕物(粉末など)を冷浸、温浸等によって浸漬する方法、加温し攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法、またはパーコレーション法等を挙げることができる。
【0027】
得られた抽出液は、必要に応じてろ過、共沈または遠心分離によって固形物を除去した後、そのまま若しくは濃縮して、吸着処理に供される。吸着処理は、常法に従って行うことができ、例えば活性炭、シリカゲルまたは多孔質セラミックなどによる吸着処理;スチレン系のデュオライトS-861(商標Duolite, U.S.A.ダイヤモンド・シャムロック社製、以下同じ)、デュオライトS-862、デュオライトS-863又はデュオライトS-866;芳香族系のセパビーズ SP70(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、セパビーズ SP700、セパビーズ SP825;ダイヤイオン HP10(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオン HP20、ダイヤイオン HP21、ダイヤイオン HP40、及びダイヤイオン HP50;あるいはアンバーライトXAD-4(商標、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトXAD-7、アンバーライトXAD-2000などの合成吸着樹脂を用いた吸着処理を挙げることができる。本発明で用いられる吸着処理液は、クチナシ黄色素抽出液を吸着した樹脂担体を例えば含水アルコールなどの適当な溶媒で洗浄することによって、回収することができる。含水アルコールとしては、通常1〜20容量%程度のエタノールを含有するものを好適に例示することができる。
【0028】
かくして得られるクチナシ黄色素抽出液の吸着処理液は、次いで吸着処理、イオン交換処理、酸処理、抽出処理または膜分離処理に供される。好ましくは吸着処理、イオン交換処理、酸処理または膜分離処理である。
【0029】
吸着処理としては、前述する処理を挙げることができる。
【0030】
またイオン交換処理も、特に制限されず慣用の樹脂を用いて常法に従って陽イオン交換処理または陰イオン交換処理を行うことができる。例えば陽イオン交換樹脂としては、制限されないがダイヤイオン SK 1B(商標、三菱化学(株)製、以下同じ) 、ダイヤイオン SK 102 、ダイヤイオン SK 116 、ダイヤイオン PK 208 、ダイヤイオン WK10 、ダイヤイオン WK20などが、また陰イオン交換樹脂としては、制限されないがダイヤイオン SA 10A(商標、三菱化学(株)製、以下同じ) 、ダイヤイオン SA 12A 、ダイヤイオン SA 20A 、ダイヤイオン PA 306 、ダイヤイオン WA 10 、ダイヤイオン WA 20などが例示される。
【0031】
本発明でいう膜分離法とは、膜による濾過方法を広く意味するものであり、例えばメンブレンフィルター(MF)膜、限外濾過(UF)膜、逆浸透膜および電気透析膜などの機能性高分子膜を用いた濾過処理を挙げることができる。また膜分離法としてはこれらの膜を利用した限外濾過法や逆浸透膜法などのほか、イオン選別膜による濃度勾配を利用した透析法、隔膜としてイオン交換膜を使用し電圧を印加する電気透析法などが知られている。工業的には逆浸透膜法による膜分離法が好ましい。かかる膜分離法に用いられる膜材料としては、天然、合成、半合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジアセテート、セルロース・トリアセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0032】
本発明の膜分離法には、分画分子量が例えば104〜106の範囲にある膜を用いて高分子化合物を分離除去する処理方法と分画分子量が約2000〜4000程度、好ましくは3000程度の膜を用いて低分子化合物を分離除去する処理方法が含まれる。前者の方法として具体的にはNTU-3150膜, NTU-3250膜, NTU-3550膜, NTU-3800 UF膜(以上、日東電工製);Cefilt-UF(日本ガイシ製);AHP-2013膜, AHP-3013膜, AHP-1010膜(以上、旭化成製);等を利用した限外濾過(UF)膜処理を挙げることができ、また後者の方法として具体的にはNTR-7250膜, NTR-7410膜, NTR-7430膜, NTR-7450膜(以上、日東電工製)、AIP-3013膜, ACP-3013膜, ACP-2013膜, AIP-2013膜, AIO-1010膜(以上、旭化成製)などの膜を利用した逆浸透膜(ナノフィルトレーション膜、分画分子量3000程度)処理を挙げることができる。
【0033】
本発明において抽出処理とは、特に制限はされないが、炭酸ガス、エチレン、プロパン等の液体をクチナシ黄色素抽出液に臨界点以上の温度、圧力下の密閉系装置内で接触させる方法を挙げることができる。
【0034】
また酸処理はクチナシ黄色素抽出液の吸着処理液若しくは上記の各種の処理が施された処理液をpH1〜4、好ましくはpH1〜3の酸性条件下に曝されることによって実施できる。酸処理は、具体的には上記抽出液に酸を添加配合することによって簡便に行うことができる。かかる酸としては、食品添加物として通常使用される酸であれば特に制限されず、かかる中から任意に選択使用することができる。例えばクエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸または硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸等を例示することができる。好ましくは食品添加物として通常使用される無機酸を用いた酸処理である。
【0035】
酸処理温度は特に制限されず、通常5〜100℃の範囲から適宜選択使用することができる。例えば20〜100℃や40〜100℃の範囲を例示することができる。酸処理時間も特に制限されず、通常1〜300分の範囲から適宜選択することができる。一般に高温下での酸処理であればより短い処理時間で十分であり、よって例えば40〜100℃での酸処理の場合は5〜60分の範囲から処理時間を採択することができる。なおこの時、処理液は撹拌してもしなくても特に制限されない。
【0036】
上記の各種処理は、1種単独で行っても、また2種以上を任意に組み合わせて行ってもよく、また同一処理を、同一もしくは異なる条件で、繰り返し実施してもよい。
【0037】
また好ましい処理方法として、酸処理した処理色素液に対して膜分離処理を行う方法を挙げることができる。なお、ここで膜分離処理は、好ましくは逆浸透膜処理または限外濾過膜処理であり、より好ましくは逆浸透膜処理である。また、当該膜分離処理は、分画分子量が2000〜4000、好ましくは3000程度である膜を用いて行うことが好ましい。
【0038】
かくして得られる本発明のクチナシ黄色素は、異臭あるいは悪臭の原因となる、前述のクチナシ果実に由来する香気成分が効果的に除去されてなるものであって、これによって無臭か若しくは極めて臭いの少ない微臭のクチナシ黄色素を提供することができる。また、上記方法によって得られる本発明のクチナシ黄色素は、加熱したり長期保存によっても所謂「匂い戻り」といった経時変化を生じないものである。
かくして得られる本発明のクチナシ黄色素は、水、アルコール(例えば、エタノール)、その他の溶媒に溶解若しくは分散した溶液状態、若しくは乾燥状態(粉状、顆粒状、錠剤状、丸剤状など)の色素製剤として調製することができる。
【0039】
また、本発明のクチナシ黄色素は、クチナシ青色素、スピルリナ青色素などの青色素と併用して緑色製剤を製造することが出来る。その緑色製剤もクチナシ果実に由来する漢方薬的な臭いを持っていない。
【0040】
よって本発明は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などの着色料として有用な、上記クチナシ黄色素を含有する色素製剤を提供するものである。当該色素製剤は、上記本発明のクチナシ黄色素に加えて、食品衛生上許容される担体や添加剤が配合されていてもよく、かかる担体及び添加剤として具体的には、例えばデキストリン、乳糖、粉末水飴の他、色素・色素製剤に通常用いられる安定剤(例えばアラビアガム、ジェランガム、トレハロース、水溶性ヘミセルロース等)、または酸化防止剤(例えばチャ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ヤマモモ抽出物、ルチン抽出物、ローズマリー抽出物、酵素処理ルチン、ルチン分解物(ケルセチン)、酵素処理イソクエルシトリン、トコフェロール類、アスコルビン酸類等)といった食品添加物を挙げることができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明のクチナシ黄色素は、高度に精製されることによって、原料として用いるクチナシ果実に由来する臭いがしないか、または臭いがしても有意に低減されてなる、無臭若しくは微臭の色素である。さらに、本発明のクチナシ黄色素は、加熱や長期保存などによって匂い戻り現象等の経時変化を起こさない。このため、本発明の色素または当該色素を含有する色素製剤によれば、飲料その他の食品類、医薬品、化粧品などの着色に用いても、クチナシ果実に由来する特有の臭いに影響されることなく、風味の良い製品を製造することができる。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明の構成ならびに効果をより明確にするために、実施例および比較例を記載する。但し本発明は、これらの実施例等に何ら影響されるものではない。
【0043】
比較例1
水70Lとエタノール30Lとの混合液にクチナシ果実(乾燥物)の磨砕品 10kgを投入し、室温下に一夜放置して、色素を抽出した。得られた色素抽出液に、濾過助剤として珪藻土を配合して吸引濾過し、濾液として抽出液約100Lを得た。この抽出液を合成吸着樹脂アンバーライトXAD-7(樹脂量 5L、SV=5) を用いて吸着処理し、水20Lで樹脂をよく洗浄した後、 30%エチルアルコール水でクチナシ黄色素を溶出し、溶出液15Lを得た(以下、これを溶出液という)。次いでこの溶出液を減圧濃縮して色価E10% 1cm=300 の色素液2.4kgを得た。この濃縮液に水 7.5kgとデキストリン1.8kgを加えてスプレードライによる乾燥を行い、色価E10% 1cm = 200のクチナシ黄色素粉末製剤3.5kgを調製した。この色素製剤は、クチナシ果実に由来するやや甘い匂いと酸臭の有る漢方薬的な特有の臭いを持っていた。
【0044】
実施例1
比較例 1と同様の方法により吸着処理の溶出液15Lを調製した。この溶出液を、限外濾過膜(AHP-2013膜:旭化成製、分画分子量50,000)を用いて3.5 kg/cm2, 20゜Cで処理した。つづいて、当該処理液に、水60Lを加えて逆浸透膜処理(NTR-7250膜:日東電工製、分画分子量 約3000程度)を行い、膜処理液5Lを得た。この際、香気成分および夾雑物は濾液として透過除去され、精製脱臭された色素成分が残液として濃縮された。次いでこの膜処理液を、減圧下で濃縮して、色価E10% 1cm = 300の有意に脱臭精製された濃縮液 2.3kgを得た。この濃縮液に水 7.0kgとデキストリン1.7kgを加えてスプレードライによる乾燥を行い、色価E10% 1cm = 200のクチナシ黄色素粉末製剤3.2kgを調製した。この製剤は全く無臭であった。
【0045】
実施例2
比較例 1と同様の方法により調製した吸着処理の溶出液を限外濾過膜(AHP-2013膜:旭化成製、分画分子量50,000)を用いて3.5 kg/cm2, 20゜Cで処理した。次いで得られた処理液を硫酸を用いてpH2に調整し、これを40〜80℃の温度条件下で30分間撹拌した。つづいて、当該酸処理液に、水60Lを加えて実施例1と同様にして逆浸透膜処理(NTR-7250膜:日東電工製、分画分子量 約3000程度)を行い、得られた膜処理液を減圧下で濃縮して、色価E10% 1cm = 300の有意に脱臭精製された濃縮液 2.0kgを得た。この濃縮液に水 7.0kgとデキストリン1.7kgを加えてスプレードライによる乾燥を行い、色価E10% 1cm = 200のクチナシ黄色素粉末製剤3.4kgを調製した。この製剤は実施例1と同様に全く無臭であった。
【0046】
実験例3 GC-MS測定
比較例1で製造したクチナシ黄色素粉末製剤(比較品)および実施例1で製造したクチナシ黄色素粉末製剤(本発明品)に含まれる香気成分量を、ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)を用いて比較した。具体的には、それぞれの色素製剤(E10% 1cm = 200)9gを採取し水200mlで希釈し、内部標準物質としてメチルオクタノエート0.1 ppmを含むジエチルエーテル200 mlで抽出した。次いでジエチルエーテル溶液を乾燥後減圧濃縮し、得られた濃縮液を下記の条件のガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)に供して、香気成分量を測定した。
【0047】
<GC-MS測定条件>
GC/MS : Hewlett-Packard 5973, Mass Selective Detector,
カラム : J&W製 DB-WAX (0.25mm x 60m)、
温度条件 : 注入口250℃、インターフェース230℃、カラム温度50℃(2分)− 220℃、昇温3℃/分、
スプリット比 : 70 : 1、
イオン化電圧 : 70eV。
【0048】
結果を図1に示す。図1のAで示すように、本発明のクチナシ黄色素製剤(実施例1)のトータルイオンクロマトグラムによると、内部標準物質以外の香気成分は総量で極微量(10ppm以下)であった。それに対して、図1のBで示すように、比較品のクチナシ黄色素製剤(比較例1)には数多くの揮発性成分が含まれていること(総量100ppm以上)が観察された。この結果は、比較例1の製剤はクチナシ果実に由来するやや甘い匂いと酸臭の有る特有の漢方薬的な臭いを持っていたという事実、並びに実施例1のクチナシ黄色素製剤は無臭であったという事実に一致するものであった。
【0049】
なお、図1Bの中、▲1▼のピークはベンジルアルコール、▲2▼のピークは3−フェニルプロパノール、▲3▼のピークは4−ビニル−2−メトキシフェノール、▲4▼のピークは4−ビニルフェノール、▲5▼のピークは4−ビニル−2,6−ジメトキシフェノールをそれぞれ示す。また図1のA及びBで示すISは内部標準物質であるメチルオクタノエートのピーク、BHTは香気成分の抽出に使用したジエチルエーテルに含まれるBHTのピークを示す。
【0050】
実験例4 香味評価および保存テスト
比較例1で製造したクチナシ黄色素製剤(比較品)および実施例1で製造したクチナシ黄色素粉末製剤(本発明品)について、それぞれ製造直後の香味、並びに5℃、25℃または38℃で3ヶ月乃至は6ヶ月保存した後の香味を、良く訓練されたフレーバーリスト8名のパネラーで評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
また、それぞれの色素製剤0.1%を添加した中華麺を調製し、良く訓練されたフレーバーリスト15名のパネラーで試食して香味を比較評価した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表1および表2に示す結果から分かるように、本発明品は比較品に比べて有意に臭いが低減されており、無臭の色素であると判断された。さらに表1から比較品は3〜6ヶ月間と保存時間が長くなるにしたがって香気がしだいに強くなるのに対し、本発明品は、経時変化を生じることなく、調製直後の無臭状態を維持していた。このことは実施例1の方法で製造された本発明のクチナシ黄色素には、それ自体に臭気を発生する香気成分が全く若しくはほとんど含まれていないだけでなく、当該香気成分の前駆体となる夾雑物も含まれていないことを示唆するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のクチナシ黄色素製剤(図A)と比較例1のクチナシ黄色素製剤(図B)に含まれる香気成分量を、ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)で測定した結果を示す図である。 なお、図1A及びB中、ISは内部標準物質であるメチルオクタノエートのピーク、BHTは香気成分の抽出に使用したジエチルエーテルに含まれるBHTのピークを示す。また図1B中、▲1▼のピークはベンジルアルコール、▲2▼のピークは3−フェニルプロパノール、▲3▼のピークは4−ビニル−2−メトキシフェノール、▲4▼のピークは4−ビニルフェノール、▲5▼のピークは4−ビニル−2,6−ジメトキシフェノールをそれぞれ示す。
Claims (7)
- 上記香気成分が、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノール、4−ビニル−2−メトキシフェノール、4−ビニルフェノールおよび4−ビニル−2,6−ジメトキシフェノールよりなる群から選択されるいずれか少なくとも一種である請求項1記載のクチナシ黄色素。
- 請求項1又は2に記載のクチナシ黄色素を含有する色素製剤。
- クチナシ黄色素抽出液の吸着処理液に対して、分画分子量 10 4 〜 10 6 の膜を用いて高分子化合物を除去し、且つ分画分子量 2000 〜 4000 の膜を用いて低分子化合物を除去する膜分離処理を行うことを特徴とする無臭若しくは微臭のクチナシ黄色素の製造方法。
- さらに、吸着処理、イオン交換処理、および酸処理よりなる群から選択される少なくとも一種の処理を行うことを特徴とする、請求項4に記載のクチナシ黄色素の製造方法。
- 酸処理後に膜分離処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のクチナシ黄色素の製造方法。
- 膜分離処理が、逆浸透膜処理または限外濾過膜処理のいずれか少なくとも1種である請求項4乃至6のいずれかに記載のクチナシ黄色素の製造方法。
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