JP3978355B2 - 溶銑の脱硫剤および脱硫方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶銑の脱硫剤および脱硫方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉から出銑された溶銑には、通常、鋼の品質に悪影響を及ぼす硫黄(S)が高濃度で含まれており、要求される品質に応じて、種々の溶銑予備処理および溶鋼脱硫が行われている。溶銑の炉外脱硫には、安価な石灰を主成分とする脱硫剤が多く用いられており、この場合の脱硫反応は以下に示される反応式に従って進行する。
CaO+S→CaS+O …(1)
【0003】
こうした脱硫反応は塩基度が高いほど有利であるため、螢石やアルミナ系造滓剤等が石灰の滓化促進用に用いられており、例えば、95mass%CaO−5mass%CaF2の組成を有する脱硫剤が広く使用されている。しかしながら、CaF2等の造滓剤は一般に高価であり、こうした造滓剤の配合率を増やすことは脱硫剤コストの増大につながる。さらに造滓剤の配合率を高めた場合には、脱硫剤中の石灰濃度が低下して反応効果が低減することが懸念される。また、近年フッ素の環境への影響が懸念されており、フッ素を含有する蛍石を添加しないフラックスの使用が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、蛍石等の造滓剤を使用することなく安価に溶銑を脱硫することができる脱硫剤およびそれを用いた脱硫方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の(1)から(16)を提供する。
(1)CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトからなるか、または、前記ドロマイトおよび他のCaO源からなることを特徴とする溶銑の脱硫剤。
ことを特徴とする溶銑の脱硫剤。
【0006】
(2)上記(1)において、CaO/MgOが1以上5以下であることを特徴とする溶銑の脱硫剤。
【0007】
(3)CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトおよび脱酸剤からなるか、または、前記ドロマイトおよび他のCaO源および脱酸剤からなることを特徴とする溶銑の脱硫剤。
【0008】
(4)上記(3)において、前記脱酸成分はAl源であることを特徴とする溶銑の脱硫剤。
【0009】
(5)上記(3)または(4)において、CaO/MgOが1以上5以下であることを特徴とする溶銑の脱硫剤。
【0010】
(6)上記(1)または(2)の脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0011】
(7)上記(6)において、溶銑を予め脱酸することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0012】
(8)上記(3)〜(5)のいずれかの脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0013】
(9)CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトと、他のCaO源および脱酸成分のうち少なくとも1種とからなる脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫するに際し、脱硫剤を構成する原料を混合または混合粉砕して溶銑に添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0014】
(10)CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトと、他のCaO源および脱酸成分のうち少なくとも1種とからなる脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫するに際し、脱硫剤を構成する原料を同時に添加するか、またはこれら原料を順に添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0015】
(11)上記(9)または(10)において、前記脱硫剤の成分として脱酸成分を含む場合に、当該脱酸成分を他の成分を投入後に追加投入することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0016】
(12)CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトと、他のCaO源および脱酸成分の少なくとも1種とを含む脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫するに際し、脱硫剤を構成する原料のうち、他のCaO源、および脱酸成分のうち1種類以上の一部または全部を予め溶銑に添加しておき、その後脱硫剤の残部を溶銑に添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0017】
(13)上記(9)から(12)のいずれかにおいて、前記脱酸成分はAl源であることを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0018】
(14)上記(6)から(13)のいずれかにおいて、容器内の溶銑を機械攪拌法により攪拌しながら溶銑中に脱硫剤を添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0019】
(15)上記(6)から(13)のいずれかにおいて、インジェクションにより容器内の溶銑中に脱硫剤を添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0020】
(16)上記(6)から(13)のいずれかにおいて、容器内の溶銑中に脱硫剤を置き入れ添加または上置き添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
【0021】
本発明によれば、脱硫剤を、CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトを主成分とすることにより、蛍石等の造滓剤を使用することなく安価に溶銑を脱硫することができる。
【0022】
すなわち、CaOが極めて微細に存在しているため、蛍石等の造滓剤を使用することなく高い脱硫率を得ることができ、かつドロマイト自体が安価であるため、安価に溶銑を脱硫することができる。
【0023】
また、本発明の脱硫剤は、上述したように本質的に蛍石のようなF含有物質を用いずに溶銑を脱硫することができるので、脱硫処理後のスラグ中のF含有量を少なくすることができ、Fによる環境への悪影響を低減することができる。
【0024】
さらに、Al源等の脱酸成分を含むことにより、還元反応である脱硫反応を促進することができる。なお、ここで脱酸成分とは、溶銑の脱酸に寄与する成分をいう。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の溶銑の脱硫剤は、CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトを主成分とする。
【0026】
図1はドロマイトと、CaO源(石灰)とMgO源(ブルーサイト)とを混合した場合とでの、CaOとMgOの存在イメージを比較したものである。この図に示すように、ドロマイトはCaOとMgOの固溶体であるため、MgOとCaOとが極めて微細な状態で共存しており、脱硫機能を有するCaOが極めて微細に存在しているため、その反応性が高く極めて高い脱硫効果を示す。これに対してドロマイトと同様の比率でCaO源である石灰とMgO源であるブルーサイトとを共存させても、CaOの粒子径がドロマイト中のCaOよりも極めて大きいものにならざるを得ず、ドロマイトにおける高い脱硫機能は得ることができない。このように、ドロマイトは極めて高い脱硫効果を示すことから、ドロマイトを主成分とする脱硫剤で溶銑を脱硫することにより、蛍石等の造滓剤を使用することなく高い脱硫率を得ることができる。また、ドロマイト自体が安価であるため、安価に溶銑を脱硫することができる。
【0027】
本発明においてドロマイトは、生ドロマイト(鉱物としてのドロマイト)、生ドロマイトを焼成して得られる焼成ドロマイト、およびこれらの混合物のいずれも含む概念である。ドロマイトとしては、特に反応性に優れた軽焼ドロマイト(生ドロマイトを1000〜1300℃で加熱焼成したもの)が好ましい。鉱物としてのドロマイトは、理論組成はCaMg(CO3)2 であるが、産出地によってCaOおよびMgO含有量が大きく異なり、CaO/MgO組成比として、1.0〜2.1の範囲を示す。ドロマイトは空気中またはCO2中では下記の通り2段階でCO2を分解放出し、それ以上の加熱によって、CaO結晶とMgO結晶の混合物となる。
CaMg(CO3)2 → CaCO3 + MgO + CO2(730〜810℃)
CaCO3 → CaO + CO2 (890〜930℃)
例えば栃木県産のドロマイトは、CaO:63〜66mass%およびMgO:30〜35mass%程度含有している。
【0028】
本発明の脱硫剤は全部がドロマイトであってもよいし、ドロマイトの他に、他のCaO源を含んでもよい。他のCaO源としては、石灰、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムが例示される。
【0029】
本発明の脱硫剤のCaO/MgO比は、1以上5以下であることが好ましい。CaO/MgO比が1未満では脱硫には実質的に寄与しないMgOが過剰となってしまい、CaO/MgO比が5を超えるとドロマイトの効果が低減する。
【0030】
また、本発明の脱硫剤は、さらに、脱酸成分を含むことが好ましい。脱酸成分を含むことにより、還元反応である脱硫反応を促進することができる。したがって、溶銑の酸化度が高い場合に極めて有効である。脱酸成分の量は、脱硫処理の前段階の処理の種類、脱硫処理の方法等によってその適正な量が変化するので、これらに応じて適宜設定すればよい。
【0031】
脱酸成分としては、Al源が好ましい。Al源は特に限定されないが、金属Al量が25mass%以上のものが好ましい。Al源としては、安価に入手できることからアルミニウムドロス粉末が好ましい。もちろん、金属アルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム融液をガスでアトマイズして得られるアトマイズ粉末や、アルミニウム合金を研磨、切削する際に発生する切削粉等、他のAl源であってもよい。
【0032】
本発明の脱硫剤は、上述したように本質的に蛍石のようなF含有物質を用いずに溶銑を脱硫することができるので、脱硫処理後のスラグ中のF含有量を少なくすることができ、Fによる環境への悪影響を低減することができる。また、主成分であるドロマイト、および選択的に用いられる他のCaO源、脱酸成分として実質的にFを含有しないものを選択すれば、脱硫剤自体を実質的にFフリーとすることができ、Fによる環境への悪影響を防止することができる。また、Al源としては不可避的にFが含有されるものもあるが、そのようなAl源を用いる場合にも、脱硫処理後のスラグ中のF含有量が0.1mass%以下になるように、その量を規定することが可能であり、環境への悪影響を回避することができる。脱硫処理後のスラグ中のF含有量を0.1mass%以下にするためのAl源中のF含有量は、Al源添加量、脱硫剤投入量、他スラグの混入等の条件により異なるが、0.15mass%以下であることが好ましい。
【0033】
次に、このような脱硫剤を用いた溶銑の脱硫方法について説明する。
上記脱硫剤による溶銑の脱硫処理は、取鍋、トピードカーおよび鋳床等の容器内に保持された溶銑に上記脱硫剤を添加することにより行う。このような脱硫処理が適用される溶銑の成分等は特に限定されず、どのような溶銑にも適用することが可能である。また、上記脱硫剤がドロマイトのみで構成されている場合には、ドロマイトをそのまま添加すればよい。ドロマイトと、他のCaO源を含む場合には、これらを混合または混合粉砕して溶銑に添加することが好ましい。また、ドロマイトと他のCaO源を混合せずに同時に添加してもよいし、これらを順に添加してもよい。
【0034】
溶銑の酸化度が高い場合には、脱硫剤を添加する前に予め脱酸しておくことが好ましい。また、上述したように脱硫剤に脱酸成分を含有させることにより、脱硫と同時に脱酸を進行させることができる。
【0035】
ドロマイトまたはドロマイト+他のCaO源に、Al源等の脱酸成分を添加する場合にも、これらを混合または混合粉砕して溶銑に添加することができるし、また、これらを混合せずに同時に添加してもよいし、これらを順に添加してもよい。さらに、脱硫剤を構成する原料のうち、他のCaO源および脱酸成分のうち1種類以上の一部または全部を予め溶銑に添加しておき、その後脱硫剤の残部を溶銑に添加することもできる。さらにまた、脱酸成分を添加する場合には、他の成分を投入後に追加投入するようにしてもよい。
【0036】
さらに、脱硫剤を添加して脱硫反応を生じさせる手法も特に限定されず、脱硫剤を溶銑直上から投入してインペラー等で機械攪拌する方法、溶銑中に脱硫剤をインジェクションする方法、溶銑上に脱硫剤を上置きする方法、予め容器内に精錬剤を入れておきその後容器内に溶銑を装入する入れ置き法、鋳床において溶銑に精錬剤を添加する方法等、種々の方法を採用することができる。これらの中では機械攪拌法およびインジェクション法が好ましい。
【0037】
また、脱硫剤は、塊状、粒状、粉末状いずれの形態、粒度でも適用可能であるが、その使用容器やプロセス、脱硫方法などに応じて最適な形状、粒度を選択することができる。例えば、機械攪拌法での溶銑直上からの大量添加の場合においては、飛散等による歩留まりロスを低減するためにも、操業的や経済的に最適な程度の粒度以上のものを用いることが好ましい。一方、インジェクション法での使用の際には、ノズル詰まりの問題が生じない程度の粉状化を行うことが必要となる。ただし、これら原料の粒径はこれらの反応性を支配する重要な因子でありるから、各原料の1次粒子が1mm以下であることが好ましい。また、溶銑の酸素濃度や処理前の溶銑上のスラグの有無などにより、脱酸成分となるアルミニウムドロスや金属アルミニウム等のAl源、および石灰等を上記脱硫剤と別個に添加することが有効な場合もある。
【0038】
次に、本発明の脱硫剤を用いた溶銑の脱硫方法の好ましい例について具体的に説明する。
まず、機械攪拌式脱硫設備を用いて本発明の脱硫剤により溶銑脱硫を行う場合について説明する。図2はこのような機械攪拌式脱硫装置により溶銑を脱硫している状態を示す模式図である。
【0039】
台車11に搭載された溶銑鍋12に溶銑13が収納されている。この溶銑鍋12を、インペラー撹拌式脱硫装置14の耐火物製の羽根(インペラー)16が所定の位置になるように配置する。インペラー撹拌式脱硫装置14は、インペラー16の他に、インペラーを回転するための油圧モーター15、秤量ホッパー17、これに収納された脱硫剤18を切り出すロータリーフィーダー19を備えている。また、集塵を行うための集塵フード21を備えており、処理時にこの集塵フード21を下降させて使用する。また、図示しないが精錬剤用とは別に副原料等の秤量ホッパーや投入口も設けられている。
【0040】
このようなインペラー撹拌式脱硫装置14においては、まず、インペラー16を下降させて溶銑13に浸漬し、浸漬と同時に油圧モーター15を駆動させてインペラー16を回転させ、徐々に回転数を上げる。これと並行して排気装置を運転して発生ダストを吸引する。インペラー16の回転数が上がり定常回転数に達したらロータリーフィーダー19を駆動させて所定量の脱硫剤を溶銑に供給する。
【0041】
この際の脱硫剤の形状は、塊状、粒状、粉末状いずれの形態、粒度においても使用可能であるが、粉末状の脱硫剤を使用する場合には、添加の際の飛散ロスを防ぐためには微粒にしすぎないことが好ましい。一方、塊状、粒状の脱硫剤を使用する際には、輸送・投入の際には崩壊せず溶銑中にて崩壊する強度のものが好ましい。溶銑中で崩壊しないものは反応面積が小さく反応性が悪いので好ましくない。さらに、Al源等の脱酸成分を添加する場合には、脱硫処理前の取鍋内溶銑上のスラグの有無や量、溶銑中酸素濃度等に応じて、脱硫剤添加の前に副原料投入口から、脱酸成分、例えばアルミニウムドロスや金属アルミニウム等のAl源を別途添加することが有効な場合もある。
【0042】
脱硫剤の供給終了後、所定時間の攪拌が終了した時点でインペラー16の回転数減少させながらインペラー16を上昇させる。スラグが浮上して溶銑表面を覆い、静止した状態で溶銑の脱硫処理は終了となる。
【0043】
次に、インジェクション方式を用いて本発明の脱硫剤により溶銑脱硫を行う場合について説明する。図3はこのようなインジェクション方式により溶銑を脱硫している状態を示す模式図である。
【0044】
容器31内には溶銑32が収容されており、この溶銑32にインジェクション用のランス34が垂直に挿入されている。そして、図示しないディスペンサーによってこのランス34を介して本発明の脱硫剤33をアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスとともに溶銑32の深部にインジェクションする。これにより脱硫剤33が湯面まで上昇する間および湯面上にて脱硫反応が生じ、溶銑32の脱硫反応が進行する。容器31としては取鍋でもトピードカーでも構わない。
【0045】
インジェクションを行う場合には、脱硫剤の形状は粒状または粉状が望ましく、粒度としてはノズル詰まりの問題が生じない程度に粉状化を行っておく必要がある。また、Al源を含有する場合には、脱硫処理前の取鍋内溶銑上のスラグの有無や量、溶銑中酸素濃度等に応じて、容器31内の溶銑32に予め脱酸成分、例えばAlドロスや金属Al等のAl源を別途添加することが有効な場合もある。脱酸成分を添加した後、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスで短時間バブリングを行い、添加したAl源等の脱酸成分を溶銑に溶解した状態にしておいてもよい。また、脱酸成分は溶銑が入る前の容器に予め入れ置きしておいてもよい。
【0046】
所定量の脱硫剤のインジェクションが終了したら脱硫剤の吹き込みを停止し、ランスを上昇させる。スラグが浮上して溶銑表面を覆い、静止した状態で溶銑の脱硫処理は終了となる。
【0047】
本発明の脱硫剤を用いた溶銑の脱硫処理は、ドロマイト中にCaOが極めて微細に存在しているため、その微細CaO自体が脱硫反応を生じさせるものであり、反応を効率良く行わせるためには、容器や脱硫方法、溶銑状態に応じ、脱硫剤の組成ばかりでなく、脱硫剤の形状・粒度や添加方法、添加速度を制御し、場合に応じて最適な条件を選択することが求められる。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
本発明例および比較例の脱硫剤を用いて鍋内の150トンの溶銑を機械攪拌設備を用いて脱硫した。処理溶銑は、高炉から出銑した後、高炉鋳床及び受銑容器である溶銑鍋の2段階で脱珪処理を行ったものを用いた。溶銑組成は、事前脱珪により[Si]=0.05〜0.10mass%であり、[C]=4.3〜4.6mass%、[Mn]=0.22〜0.41mass%、[P]=0.10〜0.13mass%であり、処理前[S]=0.040〜0.042mass%であった。溶銑温度は、1330〜1430℃であった。本発明例の脱硫剤としては、平均粒径0.6mmの軽焼ドロマイト(63.9mass%CaO、32.6mass%MgO)、石灰粉末を適当なCaO/MgO比になるように配合し、粉末粒子の最大径が1mmになるように調製した。また、一部については、脱酸成分として平均粒径0.3mmのアルミニウムドロス(70.1mass%Al−3.0mass%Mg)粉末をAl濃度として2.5mass%相当になるように配合した。比較例の脱硫剤としては、石灰のみを配合したもの、およびドロマイト組成で石灰およびブルーサイトを配合したものを用いた。なお、アルミニウムドロスとしては、F含有量は0.15mass%程度のものを使用した。脱硫剤の原単位は、比較例のNo.2を除いて、アルミニウムドロス相当分を差し引いて4.5Kg/T一定とした。脱硫剤の組成(CaO/MgOおよびAl濃度)、脱硫剤原単位、および脱硫率の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、本発明例は、石灰単体でかつ原単位が2倍以上の比較例No.2よりも高い脱硫率が得られることが確認された。また、比較例No.3と本発明例No.4とを比較すると、CaO/MgO比率が同じにもかかわらず、CaO源およびMgO源として石灰およびブルーサイトを用いた比較例No.3の脱硫率が45%であったのに対し、軽焼ドロマイトを用いた本発明例No.4の脱硫率が78%と高い値となった。
【0051】
また、本発明例のうちアルミニウムドロスを配合しないものの中では軽焼ドロマイト単独のNo.4が最も脱硫率が高かった。軽焼ドロマイトに石灰を加えていくほどドロマイトの脱硫効果が小さくなるため、脱硫率が低下していき、No.6のCaO/MgO=5.0では脱硫率が70%以下であった。このことからCaO/MgOが5.0以下が好ましいことが確認された。また、軽焼ドロマイトにアルミニウムドロスを加えたNo.7は、さらなる脱硫率の向上が認められた。これら脱硫処理後のスラグ中のFは、すべての場合において、0.1mass%以下であり、Al源中から持ち込まれるF含有量を考慮しても、スラグ中のF濃度を十分に低減できることが確認された。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、脱硫剤を、CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトを主成分とすることにより、ドロマイト中にCaOが極めて微細に存在しているため、蛍石等の造滓剤を使用することなく安価に溶銑を脱硫することができる。
【0053】
また、本発明の脱硫剤は、上述したように本質的に蛍石のようなF含有物質を用いずに溶銑を脱硫することができるので、脱硫処理後のスラグ中のF含有量を少なくすることができ、Fによる環境への悪影響を低減することができる。
【0054】
さらに、脱酸成分を含むことにより、還元反応である脱硫反応を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドロマイトと石灰+ブルーサイト混合の場合とでCaO、MgO存在イメージを比較して示す図。
【図2】本発明の脱硫剤を用いて機械攪拌式脱硫装置により溶銑を脱硫している状態を示す模式図。
【図3】本発明の脱硫剤を用いてインジェクション方式により溶銑を脱硫している状態を示す模式図。
【符号の説明】
12;溶銑鍋
13,32;溶銑
14;インペラー撹拌式脱硫装置
16;羽根(インペラー)
17;秤量ホッパー
18,33;脱硫剤
19;ロータリーフィーダー
31;容器
34;インジェクション用ランス
Claims (16)
- CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトからなるか、または、前記ドロマイトおよび他のCaO源からなることを特徴とする溶銑の脱硫剤。
- CaO/MgOが1以上5以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶銑の脱硫剤。
- CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトおよび脱酸剤からなるか、または、前記ドロマイトおよび他のCaO源および脱酸剤からなることを特徴とする溶銑の脱硫剤。
- 前記脱酸成分はAl源であることを特徴とする請求項3に記載の溶銑の脱硫剤。
- CaO/MgOが1以上5以下であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の溶銑の脱硫剤。
- 請求項1または請求項2の脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
- 溶銑を予め脱酸することを特徴とする請求項6に記載の溶銑の脱硫方法。
- 請求項3から請求項5のいずれかの脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
- CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトと、他のCaO源および脱酸成分のうち少なくとも1種とからなる脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫するに際し、脱硫剤を構成する原料を混合または混合粉砕して溶銑に添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
- CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトと、他のCaO源および脱酸成分のうち少なくとも1種とからなる脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫するに際し、脱硫剤を構成する原料を同時に添加するか、またはこれら原料を順に添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
- 前記脱硫剤の成分として脱酸成分を含む場合に、当該脱酸成分を他の成分を投入後に追加投入することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の溶銑の脱硫方法。
- CaO/MgOが1.0〜2.1の比率でCaO、MgOを含むドロマイトと、他のCaO源および脱酸成分の少なくとも1種とを含む脱硫剤を溶銑に添加して溶銑を脱硫するに際し、脱硫剤を構成する原料のうち、他のCaO源、および脱酸成分のうち1種類以上の一部または全部を予め溶銑に添加しておき、その後脱硫剤の残部を溶銑に添加することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
- 前記脱酸成分はAl源であることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の溶銑の脱硫方法。
- 容器内の溶銑を機械攪拌法により攪拌しながら溶銑中に脱硫剤を添加することを特徴とする請求項6から請求項13のいずれか1項に記載の溶銑の脱硫方法。
- インジェクションにより容器内の溶銑中に脱硫剤を添加することを特徴とする請求項6から請求項13のいずれか1項に記載の溶銑の脱硫方法。
- 容器内の溶銑中に脱硫剤を置き入れ添加または上置き添加することを特徴とする請求項6から請求項13のいずれか1項に記載の溶銑の脱硫方法。
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