JP3975407B2 - 防災事業計画支援システム - Google Patents
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Description
しかし、災害危険箇所は全国各地に存在し、近年の公共事業費の削減や現在の整備率の低さなど、費用面や工期面から見てもすべての災害危険箇所におけるハード対策の整備を行うことは困難であり、ハード対策による整備率は、依然として低いのが現状である。
また、既に災害危険箇所に対してなされた既存の対策工に対しても、その効果を把握し、追加の対策工の要否の判断も必要である。
このような状況下、災害の危険度を定量的、客観的かつ効率的に判断しながら、いずれの災害危険箇所に対して優先的にハード対策を施すかについて、対策工の効果を考慮しつつ、防災事業計画を立案することが重要となる。
さらに、近年の台風や地震による大規模な被害や、異常気象の影響もあって、ハザードマップの構築の徹底のみならず、その逐次更新のニーズは、コンピュータ処理に基づく自動化システムへの依存度を高め、それに伴って得られる評価の精度や鮮度の担保も無視できない重要な課題となっている。
非特許文献1では、複雑な自然現象を直線近似せず、高精度の発生限界線等を設定することを目的として、非線形判別に優れた放射状基底関数ネットワーク(RBFN)を用い、地域毎の非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定する方法を提案している。本非特許文献1に開示される技術では、RBFNを用いて、その学習機能を利用して最適な中間層と出力層の重みを決定することによって非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定している。
その結果、例えば非特許文献1では、横軸に実効雨量、縦軸に時間雨量をとった判別境界面が曲線の集合として描かれる。
この曲線は、いわば等高線を示したもので、これが非線形のがけ崩れ発生限界線を示している。判別境界面は、災害の発生、非発生の実効雨量と時間雨量をプロットしながら、その高さ方向として災害の発生の場合には教師値を−1とし、非発生の場合には教師値を+1とした放射状基底関数を考え、その重ね合わせによって演算されたものである。従って、これらの等高線は、原点に近い方が高いもので、原点の存在する左下の角から対角方向に向かってなだらかに低いものとなっている。
このような災害の発生限界線や避難基準線、警戒基準線(以下、これらを総称してCLという。)を定量的、客観的に描くことによって精度の高い防災事業の立案の判断が可能であり、また、コンピュータ処理によって膨大なデータを短時間に処理できることから、CLの陳腐化を防止して精度の高い情報を提供できるのである。
本特許文献1に開示される災害対策支援システムは、基本的にはif−then形式で、予め発生する事象とそれに対応する対策を関連付けて格納された対策リストを読みだして、対応するものである。災害時に精神的、時間的、人的に余裕のない状況で、的確な判断を可能とすべくなされたものである。また、標準的な作業時間と実働時に要した作業時間及び対策可能な残り時間を表示することで、対策進捗状況をリアルタイムに把握することが可能であると同時に、重要度の高い対策と低い対策を取捨選択するためにも用いることができる。
このようにして得られたCLを用いることで、信頼性の高い警戒避難支援システムを提供することが可能である。
倉本和正 他5名:RBFネットワークを用いた非線形がけ崩れ発生限界雨量線の設定に関する研究、土木学会論文集のNo.672/VI−50,pp.117−132,2001.3
これでは、客観的、定量的な評価であっても、地域毎あるいはグループ毎に個別具体的な評価を行うことはできるものの、特定の地域ではなく、地域全般に共通の一般的、普遍的な評価を行うことが困難であるという課題があった。すなわち、データとしては、広範な地域のデータを一緒に用いて、それらに含まれる様々な要因を把握し、それらの要因の中から変数として選択して組合わせることによって得られる総合的な潜在危険度を評価することが困難であるという課題があった。
また、本特許文献1に開示された発明では、事象が発生した後の防護策を示すものであって、事前の予防策について教示するものではないので、この発明を本願発明のような災害の防災事業の計画支援に用いたとしても、例えば斜面の潜在的な危険度と、加えて対策工を施した後の危険度から対策工の効果を定量的に把握することは困難であるという課題もある。
前記情報入力装置は、前記ある地域における災害発生の要因データと、前記判別境界面を構成する境界データとを、対策工の有無によって予め分類して前記情報格納装置に入力可能な手段であって、前記境界データを、対策工の着手地域で既に対策工の施工された箇所の対策工施工後の要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第1の境界データという。)と、対策工の着手地域で既に対策工の施工された箇所の対策工施工以前の要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第2の境界データという。)又は対策工の未着手地域の箇所の要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第3の境界データという。)又は前記第2の境界および第3の境界を求めるために用いた要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第4の境界データという。)のうち少なくとも一つの境界データとして前記情報格納装置に格納し、
前記情報演算装置は、第1の解析条件設定部と第2の解析条件設定部と潜在危険度演算部と対策工効果演算部とを備え、
前記第1の解析条件設定部は、前記境界データのうち、前記第1乃至第4の境界データの内いずれか1の境界データを前記情報格納装置から読み出して、この境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に形成され、この多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力する第1の解析条件設定部であり、
前記潜在危険度演算部は、前記判別境界面から前記ある地域における要因データの座標点までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記判別境界面に対して前記多次元空間の原点側にある場合を正とする。以下、同様。)を前記災害発生の潜在危険度として演算する潜在危険度演算部であり、
前記第2の解析条件設定部は、前記境界データのうち、第1の境界データを前記情報格納装置から読み出して、この第1の境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に形成され、この多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力するとともに、前記第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データを前記情報格納装置から読み出して、この第2あるいは第3あるいは第4の境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に形成され、この多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力する第2の解析条件設定部であり、
前記対策工効果演算部は、前記情報格納装置から読み出された第1の境界データで構成される第1の判別境界面から、及び前記情報格納装置から読み出された第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データで構成される第2の判別境界面から前記ある地域における要因データの座標点までの距離(以下、それぞれ第1境界距離及び第2境界距離という。)を演算し、前記第1境界距離から第2境界距離を差し引いた距離を演算し、この値を災害発生の対策工効果度とする対策工効果演算部であり、
前記潜在危険度及び前記対策工効果度は前記情報格納装置に格納され、
前記情報出力装置は、前記ある地域における前記潜在危険度と前記第1境界距離と前記第2境界距離と前記対策工効果度のうち少なくとも1の情報を出力可能な手段であるものである。
なお、本願発明においては、「災害発生の危険度」及び「災害発生の潜在危険度」としているが、これは、それぞれ「災害非発生の安全度」及び「災害非発生の潜在安全度」という概念をも含むものであり、決して排除するものではない。以下のすべての請求項に記載された発明に対しても同様である。
前記第1の解析条件設定部は、前記境界データのうち、前記第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データを前記情報格納装置から読み出して、前記第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力する第1の解析条件設定部であり、
前記総合危険度演算部は、前記ある地域が対策工なしの場合に、前記ある地域における前記潜在危険度を前記情報格納装置から読み出して、総合危険度とし、前記ある地域が対策工ありの場合に、前記ある地域における前記潜在危険度と前記対策工効果度及び総合危険度関数データを前記情報格納装置から読み出して、前記潜在危険度と前記対策工効果度を併せた総合危険度を演算し、
前記情報出力装置は、前記総合危険度を出力するものである。
自己の演算した前記潜在危険度又は前記情報格納部に格納された前記潜在危険度を読み出して、前記潜在危険度に含められる前記地域データをキーとして、前記地図データに含まれる地域データとを照合し、前記地域データが一致する地域及び/又はその周辺の地域に関する地図データを読み出す機能と、
前記地図データ上に、前記ある地域における要因データと前記境界データと前記潜在危険度のうち少なくとも1の情報を、視覚的に識別可能な形態で示される情報として前記出力装置に出力させる機能を有するものである。
また、異なる地域毎に共通の災害の要因に関する潜在危険度が定量的に演算されるため、その評価を基にすれば、対策工施工の優先順位を客観的に決定することも可能である。
さらに、特に請求項5に記載された発明によれば、ハザードマップとしてより視覚的に広く利用することができる。
まず、本願でいう「防災事業」とは、直接的に防災のための施設を施工する事業に限らず、災害の発生の恐れのある箇所の危険性を調査するために行う調査事業など、その施工につき優先順位付けを必要とするあらゆる災害を対象とした全ての防災に係る事業を包含するものである。また、「対策工」とは、防災事業として、予防的にあるいは主には発生した災害の復旧のために施工される全ての工法を言う。具体的には、斜面の対策工を例に取ると、ロックネット工、植生工、モルタル吹き付け工、ストンガードなど比較的簡易なものから、法枠工、ロックボルト工、アンカー工、押さえ盛土工、擁壁工など抑止効果が高く比較的規模の大きなものまで、全てが含まれる。また河川水害の対策工を例に取ると、洪水調節ダム、水制工、護岸工、河川堤防等、こちらもあらゆる工法が対象となる。
本願でいう「地域」とは、ある一定の広さを持った地形の範囲のみならず、特定の狭い範囲の「箇所」や「地点」、さらには個別の「災害の恐れのある箇所」あるいは複数の「災害の恐れのある箇所」を包含する地形というような概念を含むものである。
さらに、本願では、災害発生要因の組合せに対する災害発生・非発生のデータを「実績データ」と呼ぶ。
本願発明に用いられる「判別境界線」としては、例えば2次元平面においては、先の非特許文献1や特許文献2において開示されているCLが代表的なものである。これらの文献に示されるとおり、RBFNなどを利用して、ある地点の降雨指標に対する発生と非発生の事象に教師値(それぞれ−1,+1)を用い、まず判別境界面を解析し、その後所望の水平平面と判別境界面の交線をCLとして抽出するものである。また、判別境界面の代表例としては、先のRBFNを用いて解析された判別境界面の他、本願の実施の形態において説明するとおり、サポートベクターマシンを用いて解析される分離超平面(以下、HPと略すことがある。)がある。もちろん、判別境界線及び判別境界面はこれらの解析に限定するものではなく、災害発生の要因から少なくとも2つの要因を選択した平面あるいは多次元の空間中に概念され、災害発生という観点から安全側と危険側へ分離するための線あるいは面のすべてを包含するものである。但し、これらの判別境界線あるいは判別境界面の解析に本願の発明の本質があるのではなく、あくまでもこれらの線や面が存在していることをベースにそれを用いるものである。
図1は、本実施の形態に係る防災事業計画支援システムの構成図である。また、図2は本防災事業計画支援システムを用いた演算処理方法を示すフローチャートである。
図1において、防災事業計画支援システムは、入力部1と演算部2と出力部9と複数のデータベース11,13,16,23から構成される。
入力部1は、これらのデータベースに格納されるデータ10aを予め入力したり、あるいは演算部2の作動時に直接データ10aや解析条件10bを入力するために使用されるものである。具体的には、例えば、キーボード、マウス、ペンタブレット、あるいは、コンピュータ等の解析装置や計測機器等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など複数種類の装置からなり目的に応じた使い分け可能な装置が考えられる。
演算部2は、データベースから読み出されたり、入力部1から入力される判別境界線や判別境界面に関するデータ10aや災害発生に関する実績に関するデータ10a、及び解析条件10bを用いて、潜在危険度や対策工効果度の解析や、対策工の施工有無が混在した地点が混在する場合において、対策工の有無によらず統一的な総合危険度の解析を行うものである。演算部2として具体的には、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等のコンピュータが考えられる。
また、データベースとしては、磁気ディスクや光ディスク等のコンピュータ用の記憶装置にデータを格納したものが考えられ、出力部9としては、CRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどによるディスプレイ装置、あるいはプリンタ装置などの表示装置、さらには外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置などが考えられる。
図2のステップS1にも示されるとおり、入力部1による入力処理では、先ず、データを入力する処理を行うが、その入力データとしては、例えば、判別境界線データ14、あるいは判別境界面データ15などがある。また、災害発生の要因に係る定量的なデータ(以下、要因データという。)と、災害の発生の有無を対応付けた実績データがあり、この要因データと実績データを各地域において対応させたデータセットとして災害実績データ12がある。このような災害実績データ12は、実測データでもよいが、標準化処理を行い標準化データとしてもよい。
なお、要因データの定量的とは、例えば地形要因としてその地域が斜面を形成している場合に、その勾配を角度やパーミル、あるいは高さをメートルなど測定した場合のその数値を意味したり、あるいは例えば地形要因としてその地域の土質が侵食に弱い土質であるか否かを3段階のレベルで表現した場合には、そのレベル1,2,3なども定量的とするものである。すなわち、物理量として数値で表現できるものの他、非物理量であったり、定性的にしか表現できないような場合に、その状態を何らかのレベルで表現するような場合もそのレベルの数値をもって定量的とするものである。
本発明によって演算可能な災害実績データ12の実例として表1、2、3を挙げる。表1は道路沿線の斜面点検データに基づく災害実績データで、7個の地形・地質要因と対策工の有無を示す要因、災害発生の有無から構成されている。表2は土石流危険渓流の調査カルテに基づく災害実績データで、5個の地形・地質要因と2個の降雨要因、災害発生の有無から構成されている。表3は河川水害に関する調査データに基づく災害実績データで6個の地形要因、基本高水流量およびダム調節流量の水文要因と災害発生の有無から構成されている。
その際の基準となる値などの標準化解析に用いられる条件については、解析データベース16に解析条件データ17として格納されている。基準値を例えば各地域における要因データの最大値として解析条件データ17として格納しておき、標準化解析部3は、解析データベース16から解析条件データ17を読み出して、これと実績データベース11から読み出した災害実績データ12、あるいは境界データベース13から読み出した判別境界線データ14又は判別境界面データ15を用いて標準化処理を実施する。基準値は要因データの最大値に限定するものではなく、所望の基準値を解析条件データ17として予め解析データベース16に格納しておくとよい。
なお、この標準化解析部3における処理については選択的でもあるため図2においては図示していない。
ここで解析条件設定部4は、入力部1を介して、どのような条件で解析を行うかについて入力を促し、入力された条件をキーとして、実績データベース11と境界データベース13にアクセスして該当する災害実績データ12と判別境界線データ14又は判別境界面データ15を読み出す。入力を促すために表示される実績データベース11及び境界データベース13に格納されているデータ内容あるいはデータ構造を示すパラメータデータ18は、解析データベース16に格納されているため、解析条件設定部4はまず、この解析データベース16にアクセスして、パラメータデータ18を読み出して、そのパラメータデータ18を出力部9を利用して表示などさせるとよい。この表示を受けて本防災事業計画支援システムのユーザーは災害実績データ12や判別境界線データ14、判別境界面データ15のデータの選択を行うことができる。
その選択を受けて、解析条件設定部4は災害実績データ12に含まれる要因データの組合せに対応して形成される判別境界線データ14あるいは判別境界面データ15が構成される多次元空間上に、災害実績データ12に含まれる評価対象となる地域における要因データを入力する。
演算された距離は、潜在危険度データ24として潜在危険度演算部5によって評価情報データベース23に格納される。
図3は、サポートベクターマシンを用いて解析した判別境界面を2次元平面上に示した概念図である。図3では、横軸に、地形要因の1つである湧水の状況をとり、縦軸には地形要因の1つである被覆状況をとるものである。本図は概念図であるため、詳細に軸目盛を付していないが原点から遠ざかるほど、危険側になるものである。図中点線で表現される線が、判別境界面を表している。
この判別境界面を構成するのが、境界データベース13に格納されている判別境界面データ15である。(以下、この判別境界面を図2のステップS3に記載されるとおり判別境界面Iという。)
また、黒丸はある地域で災害が発生したデータであることを示しており、白丸はある地域で災害が発生しなかったデータであることを示しており、それらの地域の地形要因の定量データに対応させてこの2次元平面上に点をプロットしている。図中にも記載されているが、判別境界面(判別境界面I)から危険側へ離れるほど潜在危険度が高くなり、それに伴ってプロットされているデータも発生データが増えていることがわかる。
この発生・非発生データが災害実績データ12である。詳細には、発生として黒丸となっているのは、実績データによるもので、そのプロットされている位置は要因データによるものである。
なお、本実施の形態においては、横軸に地形要因の1つである湧水の状況をとり、縦軸に被覆状況をとっているので、原点から遠ざかるほど危険側になり、近づくほど安全側となるが、地形要因によっては、その逆も存在することは言うまでもない。また、地形要因のみならず、原点からの遠近によって安全側あるいは危険側となることは広く地域の要因データの特質に基づくものであり、本願発明の特徴に基づくものではない。さらに、要因データの特質とは無関係に、単に縦軸と横軸において、原点に近い側に安全側を取るか危険側を取るかは適宜決定されてよく、特に本実施の形態において限定するものではない。これらについては、以下の実施の形態の説明においても同様である。
図3に示される各データは、地域毎に要因データが異なるため2次元平面で様々な位置にプロットされるが、それらのデータ収集を重ねることによって地形要因などの災害発生要因と、実際の災害の発生・非発生の関係の評価の精度が向上し、より普遍的、一般的な評価を行うことが可能となる。
ある地域の道路沿線斜面を対象に、サポートベクターマシンを用いて地形・地質要因から作成した判別境界面により求めた潜在危険度の算出例を示す。分析は全716箇所の斜面データについて70%を学習データ、30%をテストデータとして用いた。表4および表5は学習データを対象とした潜在危険度の算出結果(上位20位、下位20位)を示したものである。
また、図5は従来道路沿線斜面の評価に用いられてきた道路防災総点検要領に基づく診断結果(評点)と災害発生確率との関係を示したものである(評点は偏差値化して表示)。凡例については、図4と同様である。前述の図4と比較した場合、明らかに判別境界面に基づく潜在危険度の方が高い相関を示していることがわかる。これは、本発明の実施例における評価精度が従来手法より向上していることを示す一例である。
さらに図6では、学習データで形成した判別境界面を利用してテストデータの潜在危険度を求めることを試みた結果である。ここでも潜在危険度と災害発生確率の間には明瞭な相関が認められ、本発明の汎用性が示されている。また、テストデータに関する従来手法での評価結果を図7に示すが、これとの比較でも、本発明の実施例の方が高い精度を有していることが認められる。
表6は土石流危険渓流を対象として土石流発生の潜在危険度を算出した例である。データに記載されている要因の数や内容は道路斜面と異なるものの、同様に潜在危険度を算出することが出来る。図8は、表6で示したデータに関し、サポートベクターマシンを用いて判別境界面を解析し、図3を用いて説明した判別境界面から評価の対象となる地域のデータ点までの距離をf(x,y)Aとして、その算出されたf(x,y)Aによる潜在危険度と災害発生状況の関係について図4と同じ書式で示す。ここでも、危険度と災害発生確率の間に高い相関があることが認められる。また、図9は図8と同じデータを対象として、判別境界面からデータ点までの距離を潜在危険度とすることに代えて、ラフ集合を用いて土石流発生の危険度設定を行う従来手法を試みた結果である(竹本大昭 他6名:ラフ集合を用いた土石流発生・非発生Ruleの抽出と危険度の設定手法に関する研究、砂防学会誌、Vol.57、No.2、p.4-15、2004)。両図を比較すると、本発明の手法が既往の手法に対して高い精度を有していることは明らかである。
表7は急傾斜地崩壊危険箇所を対象としてがけ崩れ発生の潜在危険度を算出した例である。図10に算出されたf(x,y)Aによる潜在危険度と災害発生状況の関係について示すが、ここでも危険度と災害発生確率の間に高い相関があることが認められる。
表8は地すべり危険箇所を対象として地すべり発生の潜在危険度を算出した例である。図11に算出されたf(x,y)Aによる潜在危険度と災害発生状況の関係について示すが、上述の例と同様に危険度と災害発生確率の間に高い相関があることが認められる。
図12において、ステップS3−1は、判別境界面I上に概念される点Ai(xi,yi)のiを最初の点とすべく1とし、判別境界面Iと点Bjとの距離を表すkの初期値を無限大とするものである。
ステップS3−2では、点Aiと点Bjの距離を演算し、ステップS3−3では演算した距離kiとそれまでのkの値と比較し、ステップS3−4ではkiがkよりも小さいならばkとして演算した距離kiを用い、大きければそのままkをkとするものである。
ステップS3−5では、iが判別境界線データ14あるいは判別境界面データ15の中で最後のデータであるか否かをチェックし、最後でなければiを1つインクリメントして、再度ステップS3−2からの演算を実施し、最後の値であれば、ステップS3−6として、判別境界面Iとデータ点Bjの距離f(xj,yj)として、kの値を得ることになる。
すなわち、判別境界面Iを構成するすべてのデータ点から評価の対象となる地域のデータ点までの距離を演算し、最小値を更新することで距離として演算するアルゴリズムである。
潜在危険度演算部5において演算された距離は、評価情報データベース23に潜在危険度データ24として格納される他にも、出力部9を介して直接出力される場合もある。また、出力部9には、ある地域の災害実績データ12に含まれる要因データや、解析に使用された判別境界面に関する判別境界面データ15や判別境界線データ14を表示あるいは信号送信等で出力する。
以上、潜在危険度を演算する場合に必要なシステム構成について説明した。
対策工の効果を評価する場合においては、先の実施の形態における災害実績データ12に、加えて要因データとして対策工に係る要因に関するデータが含まれる。また、判別境界線データ14あるいは判別境界面データ15においては、各地域の内、対策工が施された地域では、対策工の施工前と施工後のデータが含まれている。
これらのデータは、入力部1から入力され、実績データベース11あるいは境界データベース13に格納される。また、先の実施の形態と同様に、入力部1から解析条件10bが解析条件データ17やパラメータデータ18として入力され解析データベース16に格納される。
まず、先の実施の形態と同様に、図2のステップS1として行う入力処理は同様である。但し、前述のとおり、対策工に係る要因データが含まれる。評価対象となるある地域における災害実績データ12の要因データには対策工の有無が付加され、また、判別境界線データ14あるいは判別境界面データ15として入力される各地域の判別境界面の境界データは、対策工が施工されている地域の対策工施工後の境界データ(第1の境界データ)、対策工が施工されている地域の対策工施工前の境界データ(第2の境界データ)、対策工が施工されていない地域の境界データ(第3の境界データ)、対策工が施工されている地域の対策工施工前の要因データと対策工が施工されていない地域の要因データを併せたデータから設定される境界データ(第4の境界データ)に分類して入力するか、あるいは入力した後に分類するかのいずれかを行う必要がある。なお、これらの4つの境界データに分類しなければならないという意味ではなく、これらを適宜組合わせた分類としてもよい。
なお、標準化解析部3における標準化処理は先の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
対策工効果の解析が実施されることが選択され、またどのような境界データを用いるか、その災害の要因も含めて選択され、さらにいずれの地域に対する対策工効果の解析を実施するのかが選択されると、解析条件設定部4は、災害実績データ12に含まれる要因データの組合せに対応して形成される判別境界線データ14あるいは判別境界面データ15が構成される多次元空間上に、災害実績データ12に含まれる評価対象となる地域における要因データを入力する。
この2つの多次元空間上に、共通して評価対象となる地域における要因データを入力するのである。
なお、解析時に直接データが入力部1から入力され、実績データベース11や境界データベース13を介さない場合も、データ分類部6は解析条件設定部4を介してデータを分類することが可能である。また、このデータ分類部6はデータが対策工の有無によって境界データや災害実績データが予め分類されている場合には必ずしも設けなくともよい。
この演算方法については、例えば先の実施の形態において図12を参照して説明したアルゴリズムを用いて計算される。
さらに、ステップS4−2として示されるとおり、判別境界面III上の点D(xi,yi)から評価対象となる地域の要因データの座標(点Bj)までの距離(f(x、y)b2)を演算する。この演算方法についても図12を参照して説明したアルゴリズムを用いて計算される。
ステップS4−1と4−2において演算されたそれぞれの距離の差分をステップS4−3においてとる。この差分が、対策工の効果を表現する対策工効果度である。この対策工効果度は、対策工が存在した場合の距離と対策工が存在しない場合の距離の差分であり、この差が正として現れる場合にはそれが効果として表現できるものである。ステップS4−3で演算された差分が負であれば、対策工の効果がないとしている。これは、対策工を施工した結果逆に危険性が増加するような場合が考えられる場合には、負の対策工効果度として判断されるため、必ずしもステップS4−4で示すように0とする必要がない場合もある。
一方、正であればそのままステップS4−5で示すように対策工効果度として、その差分をf(x,y)Bとする。
演算された距離の差分、すなわち対策工効果度f(x,y)Bは、対策工効果度データ25として評価情報データベース23に格納される。
図13は、サポートベクターマシンを用いて解析した分離超平面に基づき設定された判別境界線を2次元平面に表した概念図である。図13(a)は、対策工が施工されている地域の第1の境界データを用いて示される判別境界面IIを示しており、図13(b)は、対策工が施工されたが、それ以前の実績データから構成される第2あるいは第3あるいは第4の境界データを用いて示される判別境界面IIIを示している。
図13の横軸及び縦軸は何も記載されていないが、これは図3と同様であるため省略するものである。また、白丸や黒丸についても同様である。
図13(a)と(b)を比較すると、対策工がある場合は、判別境界面IIが危険側まで伸びているが、対策工がない場合には、判別境界面IIIが原点側(安全側)へ寄っている。これは、対策工の施工によって、多少要因が危険側となっても災害が発生する危険度が低下して安全側の領域が増大していることを意味している。すなわち、全体的には対策工の効果が現れていることになる。図13の(c)に同じ2次元平面に判別境界面IIと判別境界面IIIを配して対策工効果との関係を示す。
また、判別境界面IIから評価対象のデータ点(図13では灰色の点)までの距離f(x,y)B1と判別境界面IIIから評価対象のデータ点までの距離f(x,y)B2を比較すると、対策工がある場合の方が、判別境界面の近傍となっている。この差分を取るのが図2のステップS4−3である。但し、計算上距離は、判別境界面から評価対象のデータ点までの距離を演算するので、図13(a),(b)に示されるように評価対象のデータ点が判別境界面から危険側に存在する場合には、それぞれの距離は負値となる。負値で差分を取るため、絶対値としての距離の短い方から長い方を引くと正値となり、これが対策工効果度f(x,y)Bとなる。
このように対策工効果度を演算することで、評価対象の地域における対策工を客観的かつ定量的に評価することが可能となり、対策工の施工の是非やその効果について定量的に評価することが可能となる。また、地域毎に対策工の効果と地形要因などを比較すれば、対策工の効果を発揮し易い地形要因など、対策工と地形要因などの災害要因との関連も評価することが可能である。
さらに、対策工の効果が評価されることから、対策工が施工されていることによって、災害の対策必要地域から除外されがちな地域において、さらに追加の対策工の要否についても定量的な判断が可能であるため、他地域との優先順位の決定にも寄与することが可能である。また、施されている対策工の種類と対策工効果および発生している災害の種別の関係を分析すれば、対象となる災害毎に最も効果的な対策工法の選定を支援することも可能となる。
以上、対策工の効果を評価するための防災事業計画支援システムについて説明した。
本実施の形態における構成は、図1に記載されるそのものである。それぞれの構成要素については、先の潜在危険度を演算する実施の形態に係る防災事業計画支援システム及び対策工効果度を演算する実施の形態に係る防災事業計画支援システムにおいて説明したので省略し、今回新たに追加される構成要素である総合危険度演算部8について説明する。
図2では、ステップS5として潜在危険度が負の場合において総合評価を実施するようになっているが、これはステップS5で潜在危険度が正であれば、既に、その地域が安全側へ含まれていることを意味しており、対策工の施工が不要であることを示しているからである。そのような場合には、図2のステップS6−2で示されるように対策が不要という判断がなされる。なお、本実施の形態においては潜在危険度と対策工効果度を加える演算を実施しているが、これらは必ずしも加える演算である必要はなく、潜在危険度と対策工効果度を併せた効果を定量的に表現可能であれば、所望の演算式で代替してもよい。
ステップS6−1で得られる総合的危険度(F(x、y))は、対策工が施工されていない場合には対策工効果度(f(x、y)B)が存在しないため、潜在危険度のみとなり、対策工が施されている場合には対策工効果度(f(x、y)B)も含めた危険度となり、対策工の有無に係わらず定量的で総合的な評価を実施することが可能である。
対策工の着手地域と未着手地域が混在する地域において、それらを別々に評価するのではなく、一律に潜在危険度という尺度を用いて統一的に評価することが可能であるため、既に対策工を施工済であっても、追加で対策工が必要である地域の優先順位を未着手の地域よりも高く評価しなければならない場合において、同一の基準で客観的に評価することが可能となる。対策工の効果の評価尺度と潜在危険度の評価の尺度が、判別境界面からの距離という統一された危険度あるいは安全度として定義されているためである。
本実施の形態に係る防災事業計画支援システムを用いることによれば、公平性と透明性が要求される公共事業の優先順位を容易に定量的に迅速に判断することができる。
これまで、潜在危険度、対策工効果度及び総合危険度を演算・評価する防災事業計画支援システムについて説明したが、本実施の形態に係る防災事業計画支援システムは、演算された潜在危険度、対策工効果度及び総合危険度を評価すべき地域を含む地図上に情報として表示し得る防災事業計画支援システムである。
図17に示されるように、得られた潜在危険度、対策工効果度、総合危険度を地点番号、安全であるかあるいは災害発生の危険があるかなどの判定とともに表示するものである。この判定は、総合危険度が正であれば安全、負であれば危険性があるというものである。
図中、星印で示される地点における情報を表の形態で表示している。
このような表示は、例えば図1に示される解析データベース16に予め入力部1を介して地図データ22を格納しておき、この地図データ22にある地域の演算・評価情報をリンクさせて出力部9を介して表示させることによって実現される。
具体的には、要因データと災害の実績データのセットである災害実績データ12は地域毎に、入力部1から解析時に入力されたり、予め入力部1を介して実績データベース11に格納されるが、その際に各地域を識別可能な地域データも含めて格納される。一方、地図データ22中にも同様にその地域データを含めておく。そして、例えば潜在危険度演算部5が出力部9を介して所望の地域の情報を出力する場合には、まず、潜在危険度演算部5が、自己の演算した潜在危険度データ24あるいは評価情報データベース23に格納された潜在危険度データ24を読み出して、その潜在危険度データ24に含まれる当該地域の地域データをキーとして、解析データベース16から地図データ22を照合しながら、潜在危険度データ24に含まれる地域データと一致する地域と必要に応じてその周辺の地域も含めて読み出して、潜在危険度データ23をその地域データが示す地域に符号あるいは記号、番号などと符合させて出力部9を介して表示させるものである。又、対策工効果演算部7あるいは総合危険度演算部8においても対策工効果度データ25、総合危険度データ26を視覚的に表示するものとして同様の機能を備えるものである。従って、上述したとおり、演算された潜在危険度、対策工効果度、総合危険度についてもそのまま当該地域の地域データを符合させて格納しておくことが望ましい。
地域データをキーとして、地図データ22を解析データベース16から読み出して照合する機能、及び情報と該当する地域を含む一定範囲の地図データ22を併せて出力部9に出力させる機能は、潜在危険度演算部5、対策工効果演算部7、総合危険度演算部8のいずれにも備えさせるとよいが、例えばハザードマップ作成部なる構成要素を演算部2に追加するものであってもよい。すなわち、ハザードマップ作成部は、潜在危険度演算部5からあるいは評価情報データベース23から潜在危険度データ24を読み出してこの潜在危険度データ24に含まれる地域データをキーとして、解析データベース16から地図データ22を照合しながら、潜在危険度データ24に含まれる地域データと一致する地域と必要に応じてその周辺の地域も含めて読み出して、潜在危険度データ23をその地域データが示す地域に符号あるいは記号、番号などと符合させて出力部9を介して表示させるものである。以上、潜在危険度演算部5を例にして説明したが、対策工効果演算部7や総合危険度演算部8において演算される対策工効果度や総合危険度についても同様である。
なお、地域データは、図17に示すような地点番号、あるいはこの後説明する表9に示されるようなIDであってもよいし、緯度と経度の組合せデータや地域を特定するためにオリジナルに作成した番地や記号、符号等であってもよく、地域を認識して特定可能であればどのようなデータ構造、データ形態をとっても差し支えない。また、地図上に示す地域データと符合する地点は図17では、星印で示しているが、特に限定するものではなく、地点が明示されれば他の符号、記号、番号などでもよく、また、例えば地域データを示すIDと同じものを地図上に付して、そのまま地域データを地点として表示するようにしてもよい。さらに、地図データ22とある地域における潜在危険度や対策工効果度などの情報を組合わせたデータをハザードマップデータとして潜在危険度演算部5、対策工効果演算部7あるいは総合危険度演算部8が評価情報データベース23に格納するようにしてもよいし、ハザードマップ作成部を備える場合にはこのハザードマップ作成部が評価情報データベース23に格納するようにしてもよい。
また、地図データ22は、地域データを含みながら例えば、その地域データの各々に対して、避難場所に関するデータや過去の災害履歴を説明するテキストデータ、安全度あるいは危険度に応じて色分けされる場合のその色に関するデータなどハザードマップに必要なデータが適宜対応付けながら含まれてもよいことは言うまでもない。なお、当該地域の潜在危険度、対策工効果度、総合危険度などを表示する場合は、必ずしも図17に示されるように一覧表とする必要はなく、情報が単独あるいは複数で羅列されたり、例えばカーソルを移動させることで当該地域が特定されるような場合に安全度や危険度によって色を表示するようなものであってもよい。
解析には、実際に山口県内のある地方自治体において収集したデータを用いた。解析結果を表9に示す。表9において、分類とは、評価対象の地域がのり面であるか自然斜面であるかと示しており、IDは対象地域を認識するものである。また、f(x、y)b1は、対策工が施工済である場合の図13(a)に示される場合の判別境界面IIから評価対象の要因データ点までの距離を示し、f(x、y)b2は図13(b)に示される場合の判別境界面IIIから評価対象の要因データ点までの距離を示している。そして次の欄の差分は、対策工効果度を示すものであり、最後のグループ分けは、先に図14乃至図16を参照しながら説明したグループに分類した結果である。
これらは、いずれの地域も対策工の効果が判明した例を示すものである。
表13は、潜在危険度が負値から対策工効果の評価によって、総合的な潜在危険度として正値となった22箇所の解析結果を示すものである。この解析の基となったデータは平成8年に採取されたが、それ以降、これらの地域においては災害の発生が確認されておらず、対策工効果を加味した危険度の総合的な評価が妥当であることが理解される。
また、図18は潜在危険度f(x,y)Aと災害発生率の相関を示すグラフであり、図19は、対策工効果f(x,y)Bを考慮して算出した斜面危険度F(x,y)と災害発生率の相関を示すグラフである。ここでは、潜在危険度f(x,y)Aに比べて、斜面危険度F(x,y)の方が危険度と災害発生確率の相関が高く、また高危険度側と低危険度側での災害発生・非発生箇所数の分離性も高くなっていることが認められる。このことも、潜在危険度f(x,y)Aに対策工効果を加味して斜面の危険度を検討した結果が妥当であることを示すものといえる。
表14では、潜在危険度、対策工効果、総合危険度に加えて、総合危険度による判定結果と技術者が専用のカルテを用いて判断した結果を示している。
表14によれば、本実施の形態に係る防災事業計画支援システムを用いて解析した総合危険度による判定では、14箇所中13箇所で総合危険度が負値となっているため、対策が必要と判定されているが、技術者の判断でははっきり、対策が必要と判断されたのは8箇所に留まっている。
この表14の結果から本実施の形態に係る防災事業計画支援システムは、たとえ熟練した技術者の判断であったとしてもそれを上回る効果を奏することができることが理解される。
それぞれの斜面危険度F(x、y)と災害発生状況の関係を確認すると図20、図21、図22のようになった。いずれの結果においても、設定された斜面危険度と災害発生状況はよく相関しており、本手法の妥当性が示されたものと考えられる。
Claims (5)
- 情報入力装置と、情報格納装置と、情報演算装置と、情報出力装置を有し、各地域における災害発生に関係する複数の要因を、2次元以上の空間(以下、多次元空間という。)を構成する座標軸上に対応させ、前記複数の要因に係る要因データと災害発生・非発生の実績データを教師値として用い、前記複数の要因に係る要因データに対応した災害発生・非発生を定量的数値で表現しながら、放射状基底関数ネットワーク又はサポートベクターマシンを用いて解析することで、前記多次元空間内で前記災害発生と災害非発生の境界を形成させ、この境界を前記災害の発生と非発生を分離することが可能な判別境界線又は判別境界面(以下、判別境界線を含めて判別境界面という。)なる基準として、ある地域における災害発生の危険度を演算する防災事業計画支援システムであって、
前記情報入力装置は、前記ある地域における災害発生の要因データと、前記判別境界面を構成する境界データとを、対策工の有無によって予め分類して前記情報格納装置に入力可能な手段であって、前記境界データを、対策工の着手地域で既に対策工の施工された箇所の対策工施工後の要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第1の境界データという。)と、対策工の着手地域で既に対策工の施工された箇所の対策工施工以前の要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第2の境界データという。)又は対策工の未着手地域の箇所の要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第3の境界データという。)又は前記第2の境界および第3の境界を求めるために用いた要因データと災害発生・非発生の実績データから得られた境界データ(以下、特に、第4の境界データという。)のうち少なくとも一つの境界データとして前記情報格納装置に格納し、
前記情報演算装置は、第1の解析条件設定部と第2の解析条件設定部と潜在危険度演算部と対策工効果演算部とを備え、
前記第1の解析条件設定部は、前記境界データのうち、前記第1乃至第4の境界データの内いずれか1の境界データを前記情報格納装置から読み出して、この境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に形成され、この多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力する第1の解析条件設定部であり、
前記潜在危険度演算部は、前記判別境界面から前記ある地域における要因データの座標点までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記判別境界面に対して前記多次元空間の原点側にある場合を正とする。以下、同様。)を前記災害発生の潜在危険度として演算する潜在危険度演算部であり、
前記第2の解析条件設定部は、前記境界データのうち、第1の境界データを前記情報格納装置から読み出して、この第1の境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に形成され、この多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力するとともに、前記第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データを前記情報格納装置から読み出して、この第2あるいは第3あるいは第4の境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に形成され、この多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力する第2の解析条件設定部であり、
前記対策工効果演算部は、前記情報格納装置から読み出された第1の境界データで構成される第1の判別境界面から、及び前記情報格納装置から読み出された第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データで構成される第2の判別境界面から前記ある地域における要因データの座標点までの距離(以下、それぞれ第1境界距離及び第2境界距離という。)を演算し、前記第1境界距離から第2境界距離を差し引いた距離を演算し、この値を災害発生の対策工効果度とする対策工効果演算部であり、
前記潜在危険度及び前記対策工効果度は前記情報格納装置に格納され、
前記情報出力装置は、前記地域における前記潜在危険度と前記第1境界距離と前記第2境界距離と前記対策工効果度のうち少なくとも1の情報を出力可能な手段であることを特徴とする防災事業計画支援システム。 - 前記情報演算装置は、総合危険度演算部を備え、
前記第1の解析条件設定部は、前記境界データのうち、前記第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データを前記情報格納装置から読み出して、前記第2の境界データあるいは第3の境界データあるいは第4の境界データから構成される判別境界面が、前記要因を次元として構成される多次元空間の座標中に、前記情報格納装置から読み出した前記ある地域における要因データ又は前記情報入力装置から入力された前記ある地域における要因データを座標点として入力する第1の解析条件設定部であり、
前記総合危険度演算部は、前記ある地域が対策工なしの場合に、前記ある地域における前記潜在危険度を前記情報格納装置から読み出して、総合危険度とし、前記ある地域が対策工ありの場合に、前記ある地域における前記潜在危険度と前記対策工効果度及び総合危険度関数データを前記情報格納装置から読み出して、前記潜在危険度と前記対策工効果度を併せた総合危険度を演算し、
前記情報出力装置は、前記総合危険度を出力することを特徴とする請求項1記載の防災事業計画支援システム。 - 前記ある地域は、個別の災害発生の恐れのある箇所、あるいは複数の災害発生のおそれのある箇所を包含する地域であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防災事業計画支援システム。
- 前記情報演算装置は、前記災害発生・非発生の実績データを標準化して標準化データを生成する標準化解析部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防災事業計画支援システム。
- 前記情報演算装置は、前記ある地域における災害発生の恐れのある個別の箇所、あるいは災害発生のおそれのある複数の箇所を包含し、前記ある地域を識別可能な地域データを含む地図データを前記情報格納装置から読み出す機能と、
自己の演算した前記潜在危険度又は前記情報格納部に格納された前記潜在危険度を読み出して、前記潜在危険度に含められる前記地域データをキーとして、前記地図データに含まれる地域データとを照合し、前記地域データが一致する地域及び/又はその周辺の地域に関する地図データを読み出す機能と、
前記地図データ上に、前記ある地域における要因データと前記境界データと前記潜在危険度のうち少なくとも1の情報を、視覚的に識別可能な形態で示される情報として前記出力装置に出力させる機能を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の防災事業計画支援システム。
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