JP3974753B2 - 擁壁構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、擁壁を構築するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、盛土を行った壁面を補強するための擁壁構築方法は、以下のようにして行われていた。
(1)図9および図10に示したように、鋼材からなる棒を縦横略等間隔となるよう格子状に溶接した後、側面視L字形状となるように折り曲げ加工した壁面材100を用意し、この壁面材100を、図8に示したように、基礎地盤Bの上に設置する。
【0003】
(2)図8に示したように、壁面材100の水平部材102の端部に、チェーンシートなどからなる補強材200を連結するとともに、この補強材200を伸直状態となるように基礎地盤Bの上に敷設する。
(3)次に、壁面材100の水平部材102上を覆うように土を被せていき、盛土を行う。このとき、まず、壁面材100における立設部材101の約半分の高さまで盛土を行い、この壁面材100が倒れこむのを防ぐようにする。(図8b1参照)
【0004】
(4)さらに、壁面材100の立設部材101と略同じ高さとなるように再度盛土を行い、その後、転圧機(ローラー)を数回走行させることにより、この盛土部分を締め固める。(図8b2参照)
(5)次に、(4)の工程により、締め固めた盛土b2の上に、壁面材100を設置して、上述した(2)から(4)の工程を繰り返し、多段に渡って盛土を積み上げていく。(図8参照)
(6)なお、場合によっては、緑化を推進するために、壁面材100と盛土部分との間に植栽マットを設けることもある。
【0005】
上記施工方法で使用する壁面材100は、その立設部材101が、盛土を行った土がこぼれ出すのを防止するようになっているとともに、盛土中に埋められた状態にある補強材200が盛土部分との摩擦抵抗によりアンカーの役割をするようになっていることにより安定した状態で設置されるようになっている。したがって、上記施工方法を行うと、コンクリート擁壁などをわざわざ構築しなくても済むため、手間がかからず、安いコストで盛土を積み上げていくことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記施工工法は、図8および図10に示したように、壁面材100の立設部材101の下から2/3の位置と、水平部材102との間を、45度の角度となるように斜めに連結させた補強補助部材300を取り付ける必要がある。すなわち、上述したような施工方法では、補強補助部材300を取り付けなければ、盛土を転圧ローラーなどにより締め固めるときの圧力に壁面材100の立設部材101が対抗できず、特に圧力の強い下方部分が崩れてしまうおそれがある。
したがって、補強補助部材300は、壁面材100の強度を確保するためにも、一つの壁面材100の幅方向に対して複数個所設ける必要が生じる。
【0007】
このように補強補助部材300が設けられていると、盛土を締め固める作業を行う際、図8に示した転圧機ローラーRのような重機を用いた締め固め作業が、壁面材100が設置されている位置から1.5m程度離れた位置までしかできない。
したがって、壁面材100が設置されている位置から1.5mよりも近い位置では、図8および図11に示した小型転圧ローラーrなどを用いて人力で盛土の締め固め作業を行わなければならない。
【0008】
また、壁面材100は、図12に示したように盛土を行う段数が多くなり、その土圧が大きくなってしまった場合や、図11に示したように盛土の締め固め作業にかかる圧力が必要以上に大きくなってしまった場合など立設部材101が湾曲してしまうという現象が発生してしまう。
【0009】
上述した現象は、圧密沈下と呼ばれるもので、立設部材101が湾曲した分だけ盛土部分が沈下してしまうため、盛土の積み重ね段数が多ければ多いほど沈下現象も大きくなってしまう。
このような現象は、立設部材101が形成する盛土壁面の背面部分まで転圧ローラーで十分土を締め固める作業ができないことが原因となり発生するもので、従来の補強土壁工法の最大の欠点といわれている。
【0010】
本発明の目的は、側面視L字形状をした壁面材の立設部材と水平部材とを連結させる補強補助部材を取り付ける必要がなく、大型の転圧機ローラーを用いた盛土の締め固め作業を壁面材が設置されている近くまで行うことができ、盛土の積み重ね段数が多くても、壁面材の立設部材が湾曲することなく圧密沈下が起こらない擁壁構築するための方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は、盛土壁の表層部に設置して土止めを行う立設部材と、盛土中に埋設する水平部材とを備えているとともに、前記立設部材および水平部材は、複数の鋼製縦桟部材と鋼製横桟部材とを格子状に連結固定させることにより構成された側面視略L字形状をした壁面材を用いた擁壁構築方法において、
切り欠き部と透孔とが形成される金属製の板体から成る連結部材と、前記壁面材の幅と同じ長さの第1の丸鋼棒と、前記壁面材の幅と同じ長さの第2の丸鋼棒とを準備し、
前記第1の丸鋼棒を、壁面材の1/2高さ位置に、前記鋼製縦桟部材に盛土壁の表面側で架け渡し、
前記鋼製縦桟部材に盛土壁の表面側で架け渡された第1の丸鋼棒に、該第1の丸鋼棒が前記切り欠き部内に係止されるように前記連結部材を掛け止めるとともに、前記透孔に前記第2の丸鋼棒を挿通し、
前記第2の丸鋼棒に前記補強材の一端部を取り付け、かつ前記補強材の他端部に止め筋 を前記補強材と略垂直となるように取り付けて、前記補強材を略水平方向に伸直状態で敷設し、盛土して、その盛土を転圧して締め固めることを特徴とする擁壁構築方法である。
【0012】
上記構成において、壁面材は、安定した状態で設置できるようにするため、立設部材の高さよりも水平部材の長さが長くなるように形成されていることが好ましい。
このとき立設部材の高さと水平部材の長さとの比率としては、特に限定されないが、立設部材:水平部材=1:1.2〜1:2程度であることが好ましく、立設部材:水平部材=1:1.5が特に好ましい。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。図1は、本発明にかかる擁壁構築方法により構築された擁壁部分の一実施の形態を示した断面図である。
【0018】
図1に示した擁壁構造Yは、図4に示した擁壁構成ユニット10を用いて構築される。
擁壁構成ユニット10は、側面視L字形状をした壁面材1と、補強材2と、連結部材3とを備えている。
壁面材1は、図2に示したように、立設部材11と水平部材12とを備え、それぞれの部材が、複数の鋼製縦桟部材111と鋼製横桟部材112(φ6mm)とを格子状に連結固定させることにより構成されている。
【0019】
図1および図2に示したように、壁面材1は、幅Wが2m、立設部材11の高さH1が60cm、水平部材12の長さLが90cmとなるように形成されており、図1に示したように、高さHが50cmとなるように盛土されるようになっている。
【0020】
また、図1および図2に示したように、立設部材11の高さ方向略中央位置(盛土高さHの1/2の高さ位置:H1/2=約25cm)には、後述する補強材2を連結するための連結部材3の被取り付け部13が設けられている。
被取り付け部13は、図1、図2および図6に示したように、鋼製縦桟部材111よりも盛土壁の表面側に掛け渡された鋼製の横架杆として、第1の丸鋼棒であるφ10mmで、長さが壁面材の幅Wと同じ長さである2mの丸鋼棒により形成されている。
【0021】
補強材2は、チェーンマットが鎖状の補強材として用いられ、その一端が、図1、図4および図5に示したように、連結部材3を介して壁面材1の被取り付け部13に取り付けられているとともに、盛土内の略水平方向に伸直状態で埋設され、その他端が、図4に示したように止め筋20に取り付けられている。
【0022】
連結部材3は、図3に示したように、切り欠き部30と透孔31とを備えた金属製の板体により形成されており、図6および図7に示したように、被取り付け部13と鋼製横桟部材112とが切り欠き部30内に係止されるように引っ掛けるとともに、透孔31内に、第2の丸鋼棒であるφ13mmで、長さが壁面材の幅Wと同じ長さである2mの丸鋼棒32を通し、この丸鋼棒32に補強材2の一端部を取り付けることにより、壁面材1と補強材2とを連結する。
【0023】
次に、本発明にかかる擁壁構築方法について説明する。
(1):まず、図1に示した擁壁の1段目を形成するときには、図2に示した壁面材1を基礎地盤B上に設置して、一段目を形成する盛土を約30cm程度行った後、この盛土部分を転圧ローラーなどで約25cmの高さをした略水平状態となるまで締め固める。(第一盛土工程)
【0024】
(2):(1)の工程により締め固めた盛土上に補強材2を伸直状態で敷設するとともに、この補強材2の一端部を、連結部材3を介して壁面材1の被取り付け部13に取り付け、補強材2の他端部を、補強材2と略垂直となるように設けられた止め筋20に取り付ける。(補強材取り付け工程)
(3):(2)の工程により敷設した補強材2を覆うように、壁面材1の立設部材11の高さと略同じ高さとなるまで再度盛土を行った後、この盛土部分を転圧ローラーなどで約50cmの高さで略水平状態となるまで締め固める。(第二盛土工程)
【0025】
(4):また、図1に示した擁壁の2段目を形成するときには、図2に示した壁面材1を、(3)の工程により締め固めた盛土部分B1の上に設置して、上述したような(1)〜(3)の工程を行う。
(5):以上のような工程を任意の段数まで繰り返すと、図1に示したような擁壁構造Yが構成される。
【0026】
以上のような擁壁構築方法によれば、図8および図10に示したように、従来工法では必要であった補強補助部材300を必要としないため、盛土した部分を締め固める作業を行うとき、図8に示したような、大型の転圧機ローラーRなどの重機を壁面材1の立設部材11に近づけることができ、その分、小型転圧ローラーrなどを用いて人力により転圧する面積を減らすことができる。したがって、本擁壁構築方法は、擁壁を構成するときの手間を減少させることができるとともに、作業に費やす時間の短縮化を図ることができる。
【0027】
また、本発明にかかる擁壁構築方法では、転圧して略水平状態となった盛土部分上に敷設した補強材2が、壁面材1の立設部材11の略中央位置に取り付けられ、その後、補強材2を覆うように、再び盛土を行うようにしているため、壁面材1の立設部材11の略中央位置が補強材2により略水平方向に引っ張られることにより保持することができる。
したがって、従来の擁壁構築方法により構成された擁壁よりも、壁面材1の強度が高まり、多段にわたって盛土を行った場合でも、壁面材1の立設部材11が湾曲することがない。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、壁面材の立設部材の1/2高さ位置に、盛土内の略水平方向に伸直状態で埋設した鎖状の補強材を取り付けて、この壁面材を保持するようにしているため、いわゆる圧密沈下と呼ばれる現象が起こり、壁面材の立設部材の湾曲を防止することができる擁壁を効率良く構築することができる。
【0029】
また、壁面材は、立設部材の高さ方向略中央位置に、鎖状の補強材を取り付けるための第1の丸鋼棒、連結部材および第2の丸鋼棒が設けられているため、壁面材を最も効率良く補強でき、立設部材の湾曲を防止するように鎖状の補強材を取り付けることができる。
【0030】
さらに、補強材の一端部が第1の丸鋼棒、連結部材および第2の丸鋼棒によって壁面材に連結され、補強材の他端部には止め筋が垂直に設けられるので、補強材を弛緩させずに伸直状態で敷設し、多段の盛土を行った場合であっても、大型の転圧ローラーなどの重機による盛土の締め固めを壁面近くまで行うことができるようになり、圧密沈下を生じることなしに立設部材の湾曲を防ぎ、壁面材を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる擁壁構築方法により構成された擁壁部分の一実施の形態を示した断面図である。
【図2】 図1に示した擁壁を構成する壁面材を示した斜視図である。
【図3】 図1に示した擁壁を構成する連結部材を示した側面図である。
【図4】 図1に示した擁壁構成ユニットを示した断面図である。
【図5】 2段目までの盛土を行った状態を示した断面図である。
【図6】 連結部材を被取り付け部に取り付けた状態を示した断面図である。
【図7】 連結部材を被取り付け部に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図8】 従来工法で行われた擁壁構造を示した断面図である。
【図9】 従来の壁面材を示した正面図である。
【図10】 従来の壁面材に補強補助部材を取り付けた状態を示した斜視図である。
【図11】 壁面材の立設部材が湾曲した状態を示した斜視図である。
【図12】 壁面材の立設部材が湾曲した状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
1 壁面材
2 補強材
3 連結部材
10 擁壁構成ユニット
13 被取り付け部
Claims (1)
- 盛土壁の表層部に設置して土止めを行う立設部材と、盛土中に埋設する水平部材とを備えているとともに、前記立設部材および水平部材は、複数の鋼製縦桟部材と鋼製横桟部材とを格子状に連結固定させることにより構成された側面視略L字形状をした壁面材を用いた擁壁構築方法において、
切り欠き部と透孔とが形成される金属製の板体から成る連結部材と、前記壁面材の幅と同じ長さの第1の丸鋼棒と、前記壁面材の幅と同じ長さの第2の丸鋼棒とを準備し、
前記第1の丸鋼棒を、壁面材の1/2高さ位置に、前記鋼製縦桟部材に盛土壁の表面側で架け渡し、
前記鋼製縦桟部材に盛土壁の表面側で架け渡された第1の丸鋼棒に、該第1の丸鋼棒が前記切り欠き部内に係止されるように前記連結部材を掛け止めるとともに、前記透孔に前記第2の丸鋼棒を挿通し、
前記第2の丸鋼棒に前記補強材の一端部を取り付け、かつ前記補強材の他端部に止め筋を前記補強材と略垂直となるように取り付けて、前記補強材を略水平方向に伸直状態で敷設し、盛土して、その盛土を転圧して締め固めることを特徴とする擁壁構築方法。
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