JP3974416B2 - カンパチの飼育方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カンパチの飼育方法、カンパチ飼育用飼料およびカンパチの体色改善剤に関する。より詳細には、メラニン色素の沈着による体色の褐色化や黒化が抑制または防止され、天然のカンパチに近い、鮮明できれいな体色を有するカンパチを生産することのできるカンパチの飼育方法、カンパチ飼育用飼料およびカンパチの体色改善剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然のカンパチは、その背部の体色が紫色から赤みを帯びた色調であり、且つ側線部の黄色が強く、鮮明できれいな体色を有している。これに対して、養殖カンパチは、生け簀などを使用して水深の浅いところで飼育されるため、太陽光や紫外線などの影響を受けて日焼けし、メラニン色素の沈着などにより、体表が黒ずんだ色になり、背部の赤みが弱かったり、側線部の黄色が弱かったりして、鮮明できれいな体色にならず、商品価値の低下を招いている。
【0003】
養殖カンパチにおける上記したような体色の悪化を防止するために、生け簀に遮光幕を張ったり、アスタキサンチンなどの赤色系色素を給与したり、コウジ酸を給与して飼育する方法などが知られている。また、アミエビなどを給餌することにより対応している。
しかしながら、いずれも、体色改善効果は未だ十分ではなく、一層の改善が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、天然のカンパチと同じように、背部の体色が紫色から赤みを帯びた色調であり且つ側線部の黄色が強く発色していて、鮮明できれいな体色を有するカンパチを生産するためのカンパチの飼育方法を提供することである。
そして、本発明の目的は、上記のような鮮明できれいな体色を有するカンパチを生産するためのカンパチ飼育用飼料およびカンパチの体色改善剤を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記飼育方法で飼育された鮮明できれいな体色を有する養殖カンパチを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、グアバまたはグアバ抽出物を、カンパチに給与して飼育すると、太陽光や紫外線などによる日焼け、それに伴うメラニン色素の生成や沈着などが防止されて、天然のカンパチと同じように、背部の体色が紫色から赤みを帯びた色調であり、且つ側線部の黄色が強く発色し、鮮明できれいな体色を有するカンパチが生産されることを見出した。
さらに、本発明者らは、前記したグアバまたはグアバ抽出物と共に、アスタキサンチンをカンパチに給与すると、カンパチの体色がより鮮明できれいになることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) アバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを給与して、カンパチの飼育を行うことを特徴とするカンパチの飼育方法である。
【0007】
さらに、本発明は、
アバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを含有することを特徴とするカンパチ飼育用飼料である。
【0008】
そして、本発明は、
アバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを含有することを特徴とするカンパチの体色改善剤である。
【0009】
そして、前記(1)の飼育方法により、天然のカンパチに近い、鮮明できれいな体色を有するカンパチが生産される
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、カンパチの体色改善剤として、上記したように、グアバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを用いるものである。
【0011】
本発明で用いるグアバまたはグアバ抽出物は、フトモモ科に属する熱帯植物である「グアバ」またはその抽出物である。
「グアバ」は、高さ約3〜10mの常緑小高木であり、その葉(グアバ葉)は、楕円形乃至長楕円形の形状を呈し、揉むと芳香があり、噛むと苦みおよび渋みがある。グアバ葉の主要成分は糖質であり、それ以外にタンニンを多く含む。グアバ葉に含まれるタンニンは、主にイソストリクチニン(Isostrictinin)、ストリクチニン(Strictinin)、ペダンガラギン(Pedunculagin)であることが知られている。
また、「グアバ」の果実はザクロに似ていることから、バンザクロなどとも呼ばれており、果汁に多量のタンニンが含まれている。
【0012】
本発明では、「グアバ」として、グアバ葉および/またはグアバ果実のいずれもが使用できる。また、「グアバ抽出物」としては、グアバ葉および/またはグアバ果実を抽出処理して得られる抽出物のいずれもが使用できる。
グアバ葉を用いる場合は、グアバ葉の粉砕物および乾燥粉末のいずれもが使用できる。
また、グアバ葉抽出物は、グアバ葉をエタノール、水などの液体で抽出処理して得られる抽出物であり、グアバ葉抽出物は液状物、ペースト状物または乾燥粉末のいずれであってもよい。グアバ葉およびグアバ葉抽出物は、従来から食品、嗜好品[例えば「グアバフェノン」(商品名)等]などとして市販されており、市販のものをそのまま用いてもよい。
グアバ果実を用いる場合は、グアバ果実から得られた果汁、グアバ果汁を乾燥した粉末、グアバ果実の粉砕物、グアバ果実の粉砕物などをエタノール、水などの液体で抽出処理して得られる抽出物、該抽出物を乾燥した粉末のいずれも使用できる。
そのうちでも、本発明では、グアバ葉およびグアバ葉抽出物のうちの一方および両方が好ましく用いられる。
0013
発明においてアバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを給与してカンパチを飼育することによって、一層鮮明できれいな体色を呈するカンパチを生産することができ
グアバまたはグアバ抽出物と併用されるアスタキサンチンは、エビ、カニなどの甲殻類に含まれている赤い色素であり、藻類、酵母類などからも得ることのできる、カロチノイドの1種である。アスタキサンチンは遊離の状態またはエステル形態で存在するほか、タンパク質と結合して種々の色素タンパク質として存在する。アスタキサンチンは合成によっても製造でき、従来から合成アスタキサンチンが販売されている。本発明では従来既知のアスタキサンチンのいずれもが使用できる。
0014
グアバまたはグアバ抽出物とアスタキサンチンは、カンパチの飼育時にそのまま直接給与してもよいが、飼料に添加して給与することが好ましく、それによってグアバまたはグアバ抽出物とアスタキサンチンを、カンパチに確実に且つ効率良く給与することができる。したがって、本発明は、グアバまたはグアバ抽出物とアスタキサンチンを含有する飼料を本発明の範囲に包含する。
グアバまたはグアバ抽出物とアスタキサンチンの飼料への添加方法は特に制限されないが、例えば、飼料の調製時に混合する(練り込む)方法、調製済みの飼料に混合する方法、カンパチへの飼料の給与時に飼料に散布、吸着させる方法などを挙げることができる。
0015
飼料へのグアバまたはグアバ抽出物の添加量としては、添加前の飼料の質量に対して、グアバまたはグアバ抽出物中に含まれるタンニンの添加量が0.015〜0.3質量%、特に0.075〜0.15質量%となるような量で添加する(例えばタンニン含有量が15質量%のグアバ抽出物の場合は飼料の質量に対してグアバ抽出物を0.1〜2質量%、特に0.5〜1質量%の割合で添加する)ことが好ましい。
0016
また、アスタキサンチンの添加量は、グアバまたはグアバ抽出物およびアスタキサンチンを添加する前の飼料の質量に対して、10〜80ppmであることが好ましく、20〜50ppmであることがより好ましい。
0017
グアバまたはグアバ抽出物とアスタキサンチンを添加する飼料は、従来既知のカンパチ飼育用の飼料であればいずれでもよく、例えば、魚粉、オキアミミール、イカミール、小麦粉、澱粉、ミネラル、ビタミン、魚油、粘結剤などを用いて調製した固形の配合飼料、アミエビを使用したモイストペレットなどを挙げることができる。
0018
グアバまたはグアバ抽出物とアスタキサンチンのカンパチへの給与は、カンパチの飼育開始時から出荷時までの期間(通常約24カ月間〜36カ月間)に継続して行うことが体色の改善効果が高くなることから好ましい。しかしながら、カンパチの全飼育期間(全養殖期間)のうち、後半、特に最後の30〜90日間程度に給与しても体色の改善を図ることができる。
0019
カンパチの飼育方法は特に制限されず、従来から採用されているいずれの方法で飼育してもよい。特に、飼育の初期には光を当てて体表での発色を促進させ、飼育の後期に遮光してメラニンの沈着を抑制しながら飼育することが、体色のより優れたカンパチを生産できることから好ましい。
0020
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
0021
《実施例1》
(1) 平均体重約85gのカンパチ稚魚を、各区500匹ずつ2区準備し、各区のカンパチ稚魚を5m×5m×5mの海面生け簀に分養し、平均水温約25℃で、74日間にわたって流水飼育した。
(2)(i) 第1区(対照区)のカンパチに対しては、上記(1)の74日間の飼育期間中、体色改善剤として合成アスタキサンチン(ロッシュ社製「カロフィルピンク」)のみを含む下記の表2に示す飼料を給与して飼育を行った。
(ii) また、第2区(発明区)のカンパチに対しては、上記74日間の飼育期間中、体色改善剤として前記した合成アスタキサンチンおよびグアバ葉抽出物(タンニン含有量15質量%;備前化成株式会社製)を含む下記の表2に示す飼料を給与して飼育を行った。
(iii) 上記(i)および(ii)における飼育期間中、第1区および第2区のいずれにおいても、寄生虫や病気の発生はなく、カンパチの斃死もなかった。
0022
(3) 飼育終了時(飼育74日目)に、各区のカンパチの体重を測定してその平均体重を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) 各区のカンパチについて、飼育期間中に摂取した飼料の量と増体重から飼料効率を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(5) 飼育終了時に、各区のカンパチの体色を目視により観察し、下記の表1に示す評価基準で評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(6) 飼育終了時に、各区のカンパチについて、図1に示す背部位置Aおよび側線部位置BにおけるL値(明度)、a値およびb値を、ミノルタカメラ社製の分光測色計CM2002を用いて測定し、各区ごとの平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
なお、L値の数値が大きいほど明度が高く、a値の数値が大きいほど赤色が強い色調であり、b値の数値が大きいほど黄色が強い色調である。
0023
【表1】
Figure 0003974416
0024
【表2】
Figure 0003974416
0025
上記の表2の結果にみるように、第2区のカンパチは、グアバ抽出物(グアバ葉抽出物)とアスタキサンチンを含有する飼料(特にグアバ葉抽出物とアスタキサンチンを含有する飼料)を給与して飼育したことによって、アスタキサンチンのみを含有する飼料を給与して飼育した第1区のカンパチに比べて、メラニンの沈着による黒色化が生じておらず、背部の体色が紫色から赤みを帯びた色調であり、且つ側線部の黄色くが強く発色していて、鮮明で良好な体色を有している。
しかも、グアバ抽出物(グアバ葉抽出物)をカンパチに給与しても、成長の抑制、病気の発生、斃死などを生ずることなく、カンパチを安全に且つ健全に生育させ得ることがわかる。
0026
【発明の効果】
本発明では、アバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを給与してカンパチを飼育することによって、太陽光や紫外線などによる日焼け、それに伴うメラニン色素の生成や沈着などを防止して、天然のカンパチと同じように、背部の体色が紫色から赤みを帯びた色調であり、且つ側線部の黄色が強く発色し、より鮮明できれいな体色を有する、商品価値の高いカンパチを生産することができる。
本発明で用いるグアバまたはグアバ抽出物は、カンパチの成長抑制、疾病、斃死などのトラブルを生ずることなく、カンパチを健全に生育させることができる。
本発明で用いるグアバまたはグアバ抽出物は、天然物に由来し従来からも食品や嗜好品などとして用いられてきたものであるため、カンパチにとって、さらにカンパチを食する人間や動物にとっても安全性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例におけるカンパチの体色(L値、a値およびb値)の測定箇所を示す図である。

Claims (3)

  1. グアバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを給与して、カンパチの飼育を行うことを特徴とするカンパチの飼育方法。
  2. グアバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを含有することを特徴とするカンパチ飼育用飼料。
  3. グアバまたはグアバ抽出物と、アスタキサンチンを含有することを特徴とするカンパチの体色改善剤。
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