JP3973574B2 - ヒューム状有害成分を含む排ガスの処理方法及び装置 - Google Patents

ヒューム状有害成分を含む排ガスの処理方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガラス製造工程又はセラミックス製造工程等から排出される排ガス中の微粒子及び有害ガス成分を湿式的に同時除去する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ファイバー、機能性ガラス、機能性セラミックスなどの製造技術の開発が進められており、微量ながら機能性に欠かせない添加物質の種類が増えつつある。このような添加物質としては、例えば、従来の塩化水素、塩化フッ素、塩化アンモニウム及びシアンガス以外に、微量のフッ素化合物、ホウ素化合物、砒素化合物及びゲルマニウム化合物等が利用されている。
【0003】
しかし、光ファイバー、ガラスやセラミックスなどの製造工程から排出される排ガス中には主に二酸化ケイ素(SiO2 )、塩化水素、酸化ホウ素、酸化砒素、シアン化水素、塩化アンモニウム、フッ化水素等の有害成分を含む化合物が含まれ、これらは設備の腐食防止と公害防止のため、除去しなければならない成分である。従来は、これらのガスの処理に関する特許文献1で提案した(i)当該排ガス中に微粒状水滴を同伴せしめる手段、(ii)この微粒状水滴を同伴した排ガス中の固体微粒子を荷電捕集する導電性の樹脂製集塵極とその集塵極を適時水洗するスプレーとを有する構造の電気集塵機と、(iii)排ガス中のガス成分を除去する吸収塔から成る排ガス処理装置が用いられている。しかし、この従来型の装置は、電気集塵機にてガス中の粒子を完全に除去してから、ガス吸収塔にてガス成分(HCl,Cl2 )を吸収するものである。
【0004】
【特許文献1】
特公平6−85889号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来の装置は、粒子の種類や濃度によらず、幅広く対応でき、安定した処理性能を有するが、装置コストや設備建設コストなどの面には、依然問題を残している。さらに、上記従来のガス処理法では、排ガスに含まれる他の有害物、例えば酸化ホウ素、酸化砒素、塩化アンモニウムのような処理過程中に化学反応によって形態が変わりやすい化学物質については特に考慮されておらず、その改善が望まれている。
【0006】
従って、本発明は、水溶性固形物質及びヒューム状有害成分を含む排ガスから水溶性固形微粒子とヒューム状有害成分を処理するに際し、前述の従来技術の欠点を克服し、効果的且つ経済的にかかる排ガスを処理する方法と装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、ガラス又はセラミックス製造工程から排出される水溶性固形物質及びヒューム状有害成分を含む排ガスを排ガス処理装置を用いて処理する方法において、装置前段の開口比Fcが0.25〜0.5の漏れ棚を配した前段多孔板塔部にて固形粒子を濡らして捕捉し、次に充填材を充填した後段充填塔部において前段多孔板塔部で調湿された未捕捉微細粒子及び化学反応により生成した水溶性物質を、吸収液を充填材の手前で霧状散水スプレーすることによって、霧状散水スプレー及び充填材で捕捉すると同時に、後段充填塔部でヒューム状有害成分を吸収除去する排ガスの処理方法が提供される。
【0008】
本発明に従えば、ガラス又はセラミックス製造工程より排出される水溶性固形物質及びヒューム状有害成分を含む排ガスを処理する装置において、装置前段に固形粒子を捕捉する開口比Fcが0.25〜0.5の漏れ棚を配した前段多孔板塔部並びに後段にヒューム状有害成分の吸収及び前記固形粒子の未捕捉分を除去するための充填材を充填した後段充填塔部を有し、後段の充填塔部の充填材の手前に霧状散水スプレーを設けて装置前段の多孔板塔部で調湿された未捕捉微細粒子及び化学反応により生成した水溶性物質を霧状散水スプレー及び充填材で捕捉し、更に後段充填塔部でヒューム状有害成分を吸収除去するようにした排ガスの処理装置が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は従来型の排ガス処理方法及び装置の利点と欠点を鋭意検討したうえで、開発された新しい排ガス処理方法及び装置に関する。即ち、本発明に従えば、前記目的を達成するため、ガラス又はセラミックス製造装置から排出される水溶性固形物質及び有害ガス成分を除去するにあたり、前記排ガスを予冷し、前段の多孔板部にて固形粒子を、例えば水で濡らして捕捉し、後段のガス吸収部において前段部で捕捉されなかった微量成分及び処理途中で水と化学反応して生成した水溶性化学物質(例えば、酸化ホウ素と水が反応して生成するホウ酸、酸化砒素と水と反応して生成する亜ヒ酸、四塩化珪素の加水分解によって生成する塩化水素など)等のガス状有害成分を吸収液(例えば水、又はアルカリ金属の水酸化物の水溶液)と気液接触させて吸収除去する。
【0010】
本発明に従えば、またガラスもしくはセラミック製造工程又は薬品工場から排出される排ガスを処理するにあたり、以下の実施例1(図1)、実施例2(図2)及び実施例3(図3)で具体的に説明するように、当該排ガスを前段の多孔板部2に導入し、気液接触させ、ガス中の固体微粒子及び一部分のガス成分を捕集し、一方、前段部で捕集しきれないヒュームや微量な有害成分などは、水又はアルカリ金属の水酸化物の水溶液などの吸収液を例えばスプレー噴霧して捕捉し、更に後段吸収部5では緊密充填した充填材の表面と接触せしめ、微細粒子と有害ガス成分とを湿式法で同時に吸収除去する方法と装置が提供される。
【0011】
本発明において前段の多孔板洗浄塔又は洗浄部には、任意の多孔板を少なくとも一段配置した洗浄塔又は洗浄部を用いることができるが、例えば堰及び溢流部などを有していない、開口比Fcが0.25〜0.5、好ましくは0.3〜0.4の多孔板や目皿板などからなる「モレタナ」を少なくとも一段、好ましくは複数段含んで成る塔で既に排ガス処理技術に多用されているモレタナ(漏れ棚)塔(又はモレタナ洗浄部)を用いるのが好ましい。このモレタナ塔は排ガス処理技術については、特公昭51−31036号公報及び特公昭62−47052号公報に記載されており、具体的な運転条件は、塔に供給されるガス流量G(2〜4m3 /m2 sec)と吸収液流量L(8〜40L/m2 sec)との比L/G(L/m2 )が4以上、好ましくは2〜20で、吸収液は循環して利用し、必要に応じて、アルカリ性物質を添加することもできる。
【0012】
本発明においては、多孔板洗浄塔(又は洗浄部)においてはポンプなどで洗浄液(例えば水、又はアルカリ金属の水酸化物の水溶液)を上部から供給して下方向へ流し、洗浄塔(又は洗浄部)を上昇する排ガスと多孔板気液接触させて排ガス中の固形粒子を捕捉する。
【0013】
本発明の後段部において、前段部からの調湿未捕捉粒子及び水溶性物質は、水を主成分にした循環水及び/又は充填材を充填した充填塔で吸収捕捉して排ガスを処理する。
【0014】
本発明において、後段部に用いる充填塔(又は充填層)には、例えば充填高さ20mm以上の、好ましくは20〜500mmの充填材(例えば繊維質充填層、ガラス繊維、プラスチック系多層構造のマット状ものなど)を含む充填塔(又は充填部)を用いる。
【0015】
本発明の排ガス処理装置によれば、前段部で、排ガス中の固形粒子などを吸収した洗浄液及び吸収液は、循環ポンプを通して、繰り返して使用するが、一定の抜出量で廃液を排出し、固液分離して廃棄することができ、また後段部で、固形粒子などを一時捕集した充填材部は同伴される微細水滴で自己洗浄され、固形粒子を充填部から洗い出すことによって再生することができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明のいくつかの実施例を図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0017】
実施例1
まず、本例の排ガス処理装置の構成を示す図1を参照して、本発明をセラミックス製造工程の排ガス処理に適用した実施例を説明する。
図1に示すセラミック製造ラインの還元工程の排ガスGは、塩化水素、アンモニア及び塩化アンモニウムとシアン化水素を含む排ガスが発生する。この排ガスGは、間欠的に排出され、通常塩化水素0〜50ppm と、アンモニア0〜40ppm 、塩化アンモニウム0〜40ppm とシアン化水素0〜100ppm とを含有する。
【0018】
この排ガスGは、図1に示すように、処理装置前段部の開口比0.35の多孔板(モレタナ)2段を備えた多孔板洗浄塔2(塔下部)に、上向流方向に直接導入して、ここで、塩化水素、アンモニア及びシアンの大部分が循環ポンプ3で循環される水中に吸収除去でき、その過程で水との反応により生成した塩化アンモニウムの大部分も除去できるが、一部分の残存ガス成分(HCl,NH3 ,NH4 ClとHCN)は充填材(ガラス繊維50mm充填)を充填した吸収塔5の下部より、上向流方向に、直接導入して、ここで、循環ポンプにて供給される水により吸収され、同時に処理される。
【0019】
各成分の測定結果は表Iに示した通りであった。
結果より明らかなように、排ガス中の塩化水素、塩化アンモニウムとシアン共に99%以上除去された。
【0020】
【表1】
Figure 0003973574
【0021】
実施例2
排ガス処理装置の構成を示す図2に基づいて、ガラス溶解炉の排ガス処理に適用した例を説明する。
図2に示したガラス溶解炉の排ガス源では、不溶性固形物質以外に、微量の二酸化硫黄ガス、ガス状酸化ホウ素、酸化砒素を含む排ガスGが発生する。この排ガスGは、図2に示すように、まず乾式バグフィルター除塵装置1に導入して、粉塵を分離する構成となっている。
【0022】
本例において、微量の二酸化硫黄とは、二酸化硫黄含有量が20mg/Nm3 以下を意味し、微量のホウ素とは、ホウ素含有量が100mg/Nm3 以下を意味し、微量の砒素とは、砒素含有量が20mg/Nm3 以下を意味する。二酸化硫黄含有量、ホウ素含有及び砒素含有量をそれぞれ20、100及び20mg/Nm3 以下としたのは、ガラス溶解炉からのガスの発生源を考慮すると、通常排ガス中ホウ素及び砒素の含有量がそれらの濃度以上になることは極めて希であるからである。
【0023】
排ガスGは、図2に示すように、処理装置前段部の実施例1で用いた多孔板洗浄塔2に導入する。ここでは、ガス状の酸化ホウ素は水と反応してホウ酸となり、ガス状の二酸化砒素は水と反応して亜ヒ酸となると同時に、それらの大部分が気液接触によって除去される。しかし水との反応の遅れによって、残存した一部のガス状の酸化ホウ素と二酸化ヒ素は多孔板洗浄塔2から実施例1で用いた充填吸収塔5へのガス中に含まれる。本装置においては、充填吸収塔5において、循環ポンプ6からの霧状スプレーによって、残存ガス状成分が霧状の水と効率良く反応し、ホウ酸及び亜ヒ酸を生成し、前段部で捕捉しきれないホウ酸と亜ヒ酸と一緒に高密度充填層吸収塔5にて吸収処理される。
【0024】
処理結果は表IIに示した通りであった。表IIの結果より明らかなように、排ガス中のガス状酸化ホウ素、酸化ヒ素が共に99%以上除去された。
【0025】
【表2】
Figure 0003973574
【0026】
実施例3
この例では、排ガス処理装置の構成を示す図3を参照して、本発明を薬品工場のフッ化ホウ素含有排ガス処理に適用した例を説明する。
図3に示すように、この装置は、図1と図2と機能的に基本構造は同様であるが、処理装置前段部の多孔板洗浄部2と後段の高密度充填吸収部5を一体化した構造からなる。図3に示したフッ化ホウ素含有排ガスGは、装置下部の開口比0.32の多孔板(モレタナ)2段を備えた多孔板洗浄部2に上向流方向で直接導入し、ここでは、ガス状のフッ化ホウ素が循環ポンプ3で循環される水と反応してフルオロホウ酸となり、それらの大部分が気液接触によって水中に除去される。しかし、生成した一部のヒューム状のフルオロホウ酸は吸収されにくく、ヒューム状の白煙が残っている。本例の装置においては、後段充填吸収部5の霧状スプレー(循環液を利用する)により、残存ヒュームが霧状の水に効率よく吸収され、高密度充填層吸収部5(高密度ガラス繊維層を、充填高さ50mmで充填)にて吸収処理され、白煙が完全に見えなくなった処理ガス7として系外に排出される。
【0027】
実施例3のガス成分の処理結果は表III に示すように、排ガスG中のフッ化ホウ素が99%以上に除去された。
【0028】
【表3】
Figure 0003973574
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に従えば、排ガス中に含まれている微粒子又は水溶性有害ガス成分を前段の多孔板洗浄塔で合理的な割合で除去され、後段の高密度充填洗浄塔に対する処理対象の負荷は低く、同部における詰まりの心配はない。又前段洗浄部と後段洗浄部の間を十分接近できる一体的構造を採用できるので、装置上もコンパクトとなり、経済的かつ効率的に処理される方法と装置を実現させた。機能性セラミックスや、機能性ガラス製造工程などから排出されるガスは、生産性の向上に伴い年々高濃度化してきたし、また、微量の有害添加成分の種類も増えつつあり、このような傾向にも対応できる高性能装置としての位置づけもできるものと思われる。本発明は従来型に比べて装置上構造がかなりコンパクトとなり、安定した処理性を持ちながら、経済性の高い処理方法と装置が完成された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のセラミックス装置工程からの排ガス処理例において使用した装置の構成を示す図面である。
【図2】実施例2のガラス溶解炉からの排ガス処理例において使用した装置の構成を示す図面である。
【図3】実施例3の薬品工場のフッ化ホウ素含有排ガスの排ガス処理例において使用した装置の構成を示す図面である。
【符号の説明】
G…排ガス
1…サイクロン又はバグフィルター除塵装置
2…多孔板洗浄塔又は多孔板洗浄部
3…循環ポンプA
4…廃液
5…ガス吸収塔又はガス吸収部
6…循環ポンプB
7…処理ガス
8…補給水

Claims (4)

  1. ガラス又はセラミックス製造工程から排出される水溶性固形物質及びヒューム状有害成分を含む排ガスを排ガス処理装置を用いて処理する方法において、装置前段の開口比Fcが0.25〜0.5の漏れ棚を配した前段多孔板塔部にて固形粒子を濡らして捕捉し、次に充填材を充填した後段充填塔部において前段多孔板塔部で調湿された未捕捉微細粒子及び化学反応により生成した水溶性物質を、吸収液を充填材の手前で霧状散水スプレーすることによって、霧状散水スプレー及び充填材で捕捉すると同時に、後段充填塔部でヒューム状有害成分を吸収除去する排ガスの処理方法。
  2. ガラス又はセラミックス製造工程より排出される水溶性固形物質及びヒューム状有害成分を含む排ガスを処理する装置において、装置前段に固形粒子を捕捉する開口比Fcが0.25〜0.5の漏れ棚を配した前段多孔板塔部並びに後段にヒューム状有害成分の吸収及び前記固形粒子の未捕捉分を除去するための充填材を充填した後段充填塔部を有し、後段の充填塔部の充填材の手前に霧状散水スプレーを設けて装置前段の多孔板塔部で調湿された未捕捉微細粒子及び化学反応により生成した水溶性物質を霧状散水スプレー及び充填材で捕捉し、更に後段充填塔部でヒューム状有害成分を吸収除去するようにした排ガスの処理装置。
  3. 前段の多孔板塔部の多孔板に、ガスを調湿又は冷却すると同時に、固形物のダストを除去する水を供給する手段を設けた請求項2に記載の排ガスの処理装置。
  4. 後段のガス吸収充填塔部の液が処理対象成分の溶解度以下になるように水量を調整する機構を備えた請求項2又は3に記載の排ガスの処理装置。
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