JP3973553B2 - 2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置 - Google Patents

2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、遅延線、フィルター、パルスプロセッサ、および他の超短波装置・回路に使用される表面弾性波(SAW)装置に関し、より詳細には、圧電層の表面上あるいは裏面上のいずれか一方の面にパターン化された電極層を設け、他方の面にはパターン化されていない電極層設けて2次元のSAWを同時に生成し伝播する装置に関する
【0002】
【従来の技術】
SAW装置および、これに関連する主題は、下記の公報で記述されている。
【0003】
米国特許第3955160号;
米国特許第4437031号;
米国特許第4456847号;
米国特許第4491811号;
米国特許第4507581号;
米国特許第4531107号;
ドランスフィールド(Dransfield)他著,「高周波数弾性表面波の励起,検出,減衰」,物理の音響,原理,方法,W.P.マソン(W.P.Mason)とR.N.サーストン(R.N.Thurston)編集,アカデミック・プレス(Academic Press)、1970年,Vol.VII,219頁〜272頁;
デイ(Day)他著,「環状の圧電気表面波」,音波と超音波に関するIEEE会報,1972年10月,Vol.SU−19,No.4,461頁〜466頁;
シー(Shih)他著,「強誘電体フィルム複合構造のSAW特性の理論研究」,超音波,強誘電体,そして周波数制御に関するIEEE会報,1998年3月,Vol.45,No.2,305頁〜316頁;
SAW装置は、圧電基板上に形成される変換器によって電気信号を、弾性表面波に変換し、弾性表面波が、基板の表面上を伝搬するように構成されている。この装置は、圧電結晶、リチウムナイオベート(LiNbO)、石英などの圧電物質か、圧電セラミック物質、エピタキシャル(Pb(ZrTi)O)(以下「PZT」という)、酸化亜鉛(ZnO)などか、もしくはシリコン上の酸化亜鉛(ZnO)のような非圧電基板上に積み重ねられる圧電薄膜によって構成される。このSAW装置は、一対の電気SAW変換器と、それらの間に設けられたSAW伝搬路とを含む。通常、SAW伝搬路は、両方の変換器に普通に使用され、研磨された圧電基板の一部で構成される。
【0004】
数ギガヘルツの高周波数をもつ弾性波は、電磁波の約10−5倍の速さで、基板表面上を移動する。表面弾性波は、このように電源の超短波周波数を保持している間は、緩慢な音の特性を持つ。これらの特性を利用するSAW装置は、遅延線、フィルター、パルスプロセッサ、および他の超短波装置・回路を使用することができる。
【0005】
SAW遅延線では、遅延時間は、表面弾性波の速度と、圧電表面上を表面弾性波が移動する距離とによって決定される。
【0006】
SAWフィルターでは、フィルターの周波数特性は、主としてSAWの音速と、入出力変換器の電極パターンとによって決定される。
【0007】
一般に、変換器の電極パターンは、複数の平行な電極片を備える。その電極片の方向は、波先の方向を決定する。
【0008】
単フェーズ変換器では、すべての電極片は、1つの電極片と、電極片の間の隙間領域が、1波長領域を定義するように、単フェーズを維持している。
【0009】
インターディジタル変換器では、電極片は半波長の間隔で設計されており、2つのフェーズ制御が実行される。とりわけ、複数の電極フィンガー(電極片)を持つ、2つの櫛形状電極は、互いに、対向し、噛み合い、そして相反するフェーズで維持される。2つの電極片と電極片間の2つの隙間領域は、1波長領域を定義する。一般に、電極片と電極片間の隙間領域はすべて、λ/4と同じ幅lを有する。ここで、λはSAWの波長を表す。
【0010】
従来の変換器は、表面弾性波を1次元で生成する。すなわち、表面弾性波は一般に1方向にのみ移動する。本発明の目的は、2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播することができる、すなわち同時に生成された複数の表面弾性波が2方向(あるいは複数方向)に同時に移動することができる新型のSAW装置を開発することにある。
【0011】
本発明の上記目的は、少なくとも頂部電極層と、圧電層と、下部電極層と、弾性基板層と、後部電極層とを備え、前記頂部電極層は、前記圧電層の表面上に配置され、前記下部電極層は、前記圧電層の裏面上に配置され、前記頂部電極層又は前記下部電極層のいずれか一方が、少なくとも2方向で、導電領域及び非導電領域の隙間領域を交互に配した電極パターンにパターン化されており、残りの一方は、パターン化されていないことを特徴とする2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置を提供することによって達成される。
【0012】
また、本発明の上記目的は、前記下部電極層と前記弾性基板層との間に、緩衝層が配置されることを特徴とする2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置を提供することによって、効果的に達成される。
【0013】
また、本発明の上記目的は、前記電極パターンは、2つの直線の電極片を格子に設けたパターンであることを特徴とする2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置を提供することによって、より効果的に達成される。
【0014】
また、本発明の上記目的は、前記電極パターンは、電極片を同心で環状に設けたパターンであることを特徴とする2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置を提供することによって、より効果的に達成される。
【0015】
さらにまた、本発明の上記目的は、前記電極片の幅は、該電極片間の間隔とほぼ等しいことを特徴とする2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置を提供することによって、より効果的に達成される。
【0019】
本発明に係る表面弾性波装置、非圧電基板上に積み重ねられる圧電層に基づいて設計される、すなわち圧電層の表面上あるいは裏面上のいずれか一方の面にパターン化された電極層を設け、他方の面にはパターン化されていない電極層を設ける。これにより、表面弾性波装置は、単相の1次元変換器を用いても、2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1に示されるように、従来のインターディジタル変換器は、2つの電極1,2から成り、各電極は、複数の導電フィンガー3,4を有するアームを備えている。そのフィンガーはアームから伸びる電極片であり、フィンガー間の非導電隙間領域で、非導電表面に沿って、交互に間隔を設けて配置されている。図1で示されるように、各導電フィンガーの幅と、それらの間の非導電の隙間は、λ/4に等しい。ここでλはSAWの波長である。SAW装置の作動周波数の上限は、変換器を決めるために使用されるフォトリソグラフィック技術の能力によって決定される。
【0021】
単フェーズ変換器の構造は、図2Aに示されるように、所定のフォトリソグラフィック能力のための可能な作動周波数を2倍にする。図2Aでは、単フェーズ変換器は、フィンガー間の非導電の隙間領域8を伴って、アームから伸びる複数の導電フィンガー7を有する導電アーム6を備える。図示されるように、フィンガー間の間隔、並びに、各フィンガーの幅はλ/2である。ここで、λはSAWの波長である。
【0022】
層構造での単フェーズの1次元変換器の側面図を、図2Bに示す。この変換器は、フィンガー7を備え、図2Aで図示されるようなパターン化された頂部電極層を備える。この下に、変換器は、酸化亜鉛(ZnO)層9と、アルミニウム(Al)下部電極層10と、二酸化ケイ素(SiO)緩衝層11と、シリコン層12と、アルミニウム(Al)電極層13とを備える。一般に、酸化亜鉛(ZnO)層9の厚さは、電極フィンガー7間の間隔よりも、一般には3〜10倍小さいので、その電界線は平行である。
【0023】
対照的に、単結晶構造で単フェーズの1次元変換器が、図2Cに示される。この場合、電極フィンガー7間の間隔は、結晶の厚さよりもずっと小さい。従って、電界の周縁は、図示されるようになる。図2Cでは、導電フィンガー7を備え、単フェーズにパターン化された電極層は、リチウムナイオベート(LiNbO)基板14上に配置され、後部電極15は、リチウムナイオベート(LiNbO)基板の後側に積み重ねられる。層状の結晶構造と単結晶構造との間の電界パターンに存在する、固有な差異が、層状構造の単フェーズ変換器を、単結晶構造の対応物よりも効果的にする。
【0024】
図3A、図3B、および図3Cは、2次元のSAW装置の構成の実施態様に適した基板の側面概略図を示す。図3Aでは、基板は、頂部電極層16(アルミニウム(Al)、金(Au)等)と、圧電層17(酸化亜鉛(ZnO)、PZT、リチウムナイオベート(LiNbO)、リチウムタンタレート(LiTaO)等)と、下部電極層18(アルミニウム(Al)、金(Au)等)と、緩衝層19(二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、ダイアモンド等)と、弾性基板層20(サファイア、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、リン化インジウム(InP)、融解石英、ガラス等)と、後部電極層21(アルミニウム(Al)、金(Au)等)とを備える。図3Bでは、緩衝層19はなく、一方、図3Cでは、下部電極層18と緩衝層19の両方がない。
【0025】
「弾性基板層」という用語には、応力とひずみの間に線形的な関係を持つ、いかなる基板をも意味する。従って、弾性SAWは、その上を移動することができる。
【0026】
図4A,図4Bは、典型的な電界パターンを有する2次元のSAW装置の実施例を示す側面概略図である。
【0027】
図5,図6は、2次元のSAW装置用のパターン化された電極層の平面図を示す。
【0028】
第1実施例では、図4Aに示されるように、図3Aの基板の頂部電極層16は、パターン化された電極層22として使用し、圧電層17の表面上に配置され、また、下部電極層18はパターン化しない電極層で、圧電層17の裏面上に配置されているなお、この頂部電極層16をパターン化た電極層22は、図5,図6に示されるように、導電領域と非導電領域とが交互に配される電極パターンにパターン化される。図4Aは、単モードで作動する第1実施例用の電界パターンを示す。すなわち、図示するように、パターン化された電極層22は全て位相に維持されるため、電極層22は同位相の電極であることが分かります
【0029】
第2実施例では、図4Bに示されるように、図3Aの基板の頂部電極層16は、パターン化されない電極層で、圧電層17の表面上に配置され、また、下部電極層18は、パターン化された電極層22として使用し、圧電層17の裏面上に配置されているなお、この下部電極層18をパターン化した電極層22、図5,図6に示されるように、導電領域と非導電領域とが交互に配される電極パターンにパターン化される。図4Bは、単モードで作動する第2実施例用の電界パターンを示す。すなわち、図示するように、パターン化された電極層22は全て位相に維持されるため、電極層22は同位相の電極であることが分かります
【0030】
図5で示されるようなパターン化された電極層は、2つの直線の電極片23,24を有しており、これらの電極片23,24は、電極隙間領域25が形成されるように配置されている電極片23,24は、互いに電気的に接触しており、その結果、パターン化された電極層は、例えば標準的なフォトリソグラフィと、メタリゼーション(metallization)プロセスを使用して製造することができる。実施例では、この電極片23,24は、互いに90度に方向付されている、すなわち電極パターンが格子状となるように電極片23,24が配置されている本発明に係る装置は、電極片23,24をこのように配置することにより、x,y方向に同時に2つの異なる超音波の波長λ,λ生成し伝播する、すなわち2次元の表面弾性波を同時に生成し伝播することができる
【0031】
この電極片23,24は、同じ電位であり、1つの高周波電源の異なる周波数で反応(共振)する。従って、本発明に係る装置は、2つの弾性表面波が、2つの周波数成分を含む1つの高周波電源を設けることによって生成される。もし高周波電源が1つの周波数成分しか含まないのならば、電極片が同じ超音波の波長を定義しない限り、1つの表面弾性波しか生成されない。
【0032】
なお、図5で示される電極層の電極パターンを、他の電極パターンに変更してもよい。すなわち、電極層は、2以上の直線の電極有しており、これらの電極片を、電極片間に隙間領域が形成されるように、図5に示す角度とは異なる角度(すなわち90°以外の角度)で配置してパターン化する、すなわち網状にパターン化してもよい。なお、これら2以上の直線の電極片は、それぞれ異なる幅を有していてもよい。このように電極片を配置することにより、図5に示す電極層とは異なる方向および、異なる波長で複数の超音波の波長同時に生成し、伝播することができる
【0033】
図6で示されるパターン化された電極層は、電極片26を有しており、この電極片26は、電極片間に隙間領域27が形成されるように、同心で環状の形状を有している。また、この電極片26は、放射状片28によって、それぞれ電気的に接続されている。このようにパターン化された電極層を用いると、ラジアル方向に複数の超音波の波長λ を同時に生成し、伝播することができる。
【0034】
一般に、2次元の単フェーズSAW装置は、図3A〜図3Cに図示される、どの基板を使って製造してもよい。例えば、図5,図6で図示される方法で、頂部電極層16がパターン化され、または下部電極層18がパターン化される。
【0035】
圧電層17は、多結晶物質でも、単結晶物質でもよい。圧電層17は、例えば酸化亜鉛(ZnO)、PZT、リチウムナイオベート(LiNbO)、リチウムタンタレート(LiTaO)等によって形成してもよい。
【0036】
緩衝層19は、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、ダイアモンドフィルム等のような、誘電体薄膜である。この層は、一般に結晶度や、圧電層の組織を改良したものが備えられる。それはSAWの速度を上昇させるのにも使用することができる。
【0037】
両方の電極層は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)のような金属薄膜か、酸化亜鉛:アルミニウムドープ(Al:ZnO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)のような導電性の酸化薄膜か、もしくはp−タイプシリコンのような半導体フィルムで構成される。
【0038】
弾性基板層20は、サファイア、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等のような結晶体物質か、融解石英、ガラス等のような弾性的なアイソトロピック物質の非結晶体か、酸化亜鉛(ZnO)、PZT、リチウムナイオベート(LiNbO)、リチウムタンタレート(LiTaO)等のような導電物質か、またはケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウムヒ素(GaAs)、リン化インジウム(InP)、窒化アルミニウム(AIN)、ガリウムナイトライド(GaN)等のような半導体物質でもよい。
【0039】
2次元のSAW装置が、図3Cの基板を使って製造される場合、基板層は、導電物質でも、半導体物質でもよく、また頂部電極層はパターン化される。
【0040】
これらの2次元のSAW装置は、従来のSAW装置よりも、より効率よく基板を使用することができ、またより多用性を有する。すなわち、本発明に係るSAW装置は、圧電層の表面または裏面のいずれか一方の面上にパターン化された電極層を設け、さらに他方の面上にはパターン化されていない電極層を設けている。これにより、単純な単相の電極パターンであっても、異なる周波数を有する2つの表面弾性波を生成し伝播することができる。従って、簡単な製作であっても、従来のSAW装置に較べ、2倍あるいは3倍の動作周波数を得ることができる。またSAWの遅延線と、共振器と、フィルターに使用することができる。基板として半導体を使用することによって、同じチップ上のSAW装置と電気回路を一体化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、周知のインターディジタル変換器構造の上面図である。
【図2A】 図2Aは、幅λ/2の導電片と非導電片を伴う、周知の単フェーズ変換器構造を示す上面図である。
【図2B】 図2Bは、酸化亜鉛(ZnO)/ケイ素(Si)の単フェーズ変換器用の典型的な電界パターンを図示する側面概略図である。
【図2C】 図2Cは、単フェーズのリチウムナイオベート(LiNbO)変換器用の典型的な電界パターンを図示する側面概略図である。
【図3A】 図3Aは、2次元のSAW装置の製作に適する基板の側面概略図である。
【図3B】 図3Bは、2次元のSAW装置の製作に適する他の基板の側面概略図である。
【図3C】 図3Cは、2次元のSAW装置の製作に適する他の基板の側面概略図である。
【図4A】 図4Aは、2次元のSAW装置の第1実施例用の典型的な電界パターンを示す側面概略図である。
【図4B】 図4Bは、2次元のSAW装置の第2実施例用の典型的な電界パターンを示す側面概略図である。
【図5】 図5は、2次元のSAW装置用のパターン化された電極層の上面図である。
【図6】 図6は、2次元のSAW装置用の環状のパターン化された電極層の上面図である。

Claims (5)

  1. 少なくとも頂部電極層と、圧電層と、下部電極層と、弾性基板層と、後部電極層とを備え、前記頂部電極層は、前記圧電層の表面上に配置され、前記下部電極層は、前記圧電層の裏面上に配置され、前記頂部電極層又は前記下部電極層のいずれか一方が、少なくとも2方向で、導電領域と非導電領域とを交互に配した電極パターンにパターン化されており、残りの一方は、パターン化されていないことを特徴とする2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置。
  2. 前記下部電極層と前記弾性基板層との間に、緩衝層が配置されることを特徴とする請求項1に記載の2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置。
  3. 前記電極パターンは、2つの直線の電極片を格子に設けた格子状のパターンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置。
  4. 前記電極パターンは、同心で環状の電極片を設けた円状のパターンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置。
  5. 前記電極片の幅は、該電極片間の間隔とほぼ等しいことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の2次元の表面弾性波を同時に生成して伝播する装置。
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