JP3973145B2 - セグメントの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルの内周に構築する覆工を構成するセグメント及びセグメントの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シールドトンネルなどのトンネルを構築する場合において、掘削したトンネルの内周にセグメントを複数配置して、掘削後に地山から作用する土圧の支持又は地山の緩みを防止する覆工としている。
従来からセグメントは、分割した状態でトンネル内部に搬入し、覆工を構築する位置で分割したセグメントを一つずつエレクタで配置する。
従来のシールドセグメントは、鉄筋コンクリート製のものが大半を占め、わずかに鋳鉄セグメントや、鋼殻とコンクリートの複合構造のセグメントが使用される。
セグメントに作用する荷重は、トンネル横断面方向では土圧や水圧による荷重であり、トンネル軸方向ではシールド推進ジャッキによる荷重である。これらの荷重によりセグメントには、横断面方向の圧縮力と曲げモーメント及びトンネル軸方向の圧縮力が作用する。これらの断面力、特に圧縮力に抵抗するために、従来の鉄筋コンクリート製や鋼殻とコンクリートの複合構造からなるセグメントの断面は中実の矩形断面となっている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
前記した従来のセグメント及びセグメントの製造方法にあっては、次のような問題点がある。
<イ>セグメントが中実構造であると、シールドの直径が大きくなってセグメントが大きくなるにつれ、セグメントの自重が3乗で大きくなる。また、横断面方向でセグメントの自重による曲げモーメントが大きくなると、セグメントの曲げ剛性を高める必要があるため、セグメントの部材の厚さが大きくなり、それに伴ってセグメントの自重が更に大きくなる。
<ロ>セグメントの自重が大きいと、セグメントを組み立てる際にハンドリングが悪くなり、組み立て時間が長くなる。また、セグメントを組み立てるエレクタのジャッキ能力を大きくする必要があり、コストアップにつながる。
<ハ>セグメント部材厚が厚くなると、その分だけ掘削断面を大きくする必要があり、掘削費用が増加する。また、掘削断面が大きくなる分、シールドマシンの直径を大きくする必要があり、マシンの製作費用が大幅に上昇する。さらに、掘削土量が増大すると、これを産業廃棄物として処理するための費用が増加する。
<ニ>鋳鉄セグメントや鋼製とコンクリートとの複合構造のセグメントは、錆びて腐食することによる断面欠損があるので、地下水の漏水を防ぐことが困難である。そのため高い維持費用が必要となり、ライフサイクルコストの観点で高価な施設となる。
<ホ>鉄筋コンクリート製のセグメントに材料として用いるコンクリートは、水セメント比を小さくするために低スランプであり、コンクリートの締め固め方法として強力な型枠バイブレータを使用する。このため、型枠の剛性を高めてバイブレータの作用効率を高める必要があり、型枠の製作費用が高価になる。
【0004】
【本発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、軽量化したセグメント及びセグメントの製造方法を提供することを目的とする。特に、ほとんどメンテナンスを必要としない材料で製造できる軽量なセグメント及びセグメントの製造方法を提供することを目的とする。
また、部材の厚さを抑えることができ、掘削断面の増大を招くことがないセグメントを提供することを目的とする。
また、取り扱いや設置が容易なセグメントを提供することを目的とする。
さらに、簡単な設備で、容易に製造できるセグメント及びセグメントの製造方法を提供することを目的とする。特に、寸法精度の良いセグメントを製造できるセグメントの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明は、セメント系混合材料からなり、内面側に凹部を有し、トンネルの内周に覆工を構築するためのセグメントを製造する方法において、内面枠に形成された凹部枠のセメント系混合材料と接する側面に変形吸収材を貼り付け、前記内面枠と外面枠を組み合わせて型枠とし、前記型枠に設けた充填口からセメント系混合材料を注入し、空気孔から空気を抜きつつ前記型枠内部にセメント系混合材料を充填することを特徴とする方法である。ここで、「内面側」とはセグメントをトンネルの覆工として設置したときに、トンネルの内面を形成する面をいう。また、凹部の形状は、矩形、多角形、円筒形など任意の形状が採用できる。セメント系混合材料には、コンクリート、高強度コンクリート、繊維補強セメント系混合材料などが使用できる。
【0008】
さらに、上記したセグメントの製造方法において、前記型枠の前記空気孔を備えた面を上面とし、該空気孔が傾斜の上方となるように上面を傾けて設置することを特徴とする方法である。即ち、空気孔42のある付近にセメント系混合材料が最後に充填されるように型枠を設置する。
【0009】
また、上記したセグメントの製造方法において、セグメントを成形する型枠を複数接合し、一度に複数個のセグメントを製造することを特徴とする方法である。繊維補強セメント系混合材料は、自己充填性に優れているので締め固めの必要がなく、従来に比べて剛性の低い型枠でセグメントを製造できる。このため、複数のセグメントを一度に製造できるような型枠も使用することができる。
【0010】
【本発明の実施の形態1】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態1について説明する。
【0011】
<イ>セグメント
セグメント1は、シールド掘削機やトンネルボーリングマシンによって掘削したトンネルの内周に、覆工又は支保工として組み立てるものをいう。
複数のセグメント1をトンネルの内周に設置して、トンネルの覆工を構築する。
セグメント1には、トンネルの内側の面を形成する内面側に凹部12を設ける。凹部12は、任意の大きさにすることができ、凹部12によって中空にした分だけセグメント1を軽量化できる。凹部12の形状は、矩形、多角形、円筒形など任意の形状が採用できる。
シールドトンネルに使用するセグメント1は、通常、推進ジャッキによりトンネル軸方向に大きな圧縮力を受けるため、推進ジャッキを当接する断面は中柱13を配置するなどして中実に形成するのが好ましい。つまり、セグメント1の端部と中央部はジャッキ支圧部となるように柱状の形状とする。
セグメント1は、繊維補強セメント系混合材料で製造する。
【0012】
<ロ>繊維補強セメント系混合材料
本発明では、セグメント1の材料として繊維補強セメント系混合材料5を使用する。
繊維補強セメント系混合材料5としては、例えば、セメント、ポゾラン質微粉末と珪石の粉末、シリカフューム、粒径3mm以下の珪砂、高性能減水剤に水を単位水量(出来上がりコンクリート容積1m3当たり)として175〜180kg程度(水/セメントの比率が20〜22%程度)を加えた高強度セメント系マトリックスに、直径が0.1〜0.3mmで、長さが8〜16mm、引張り降伏応力度が2600〜2800N/mm2の超高強度の鋼繊維を容積で2%程度混入して得られる圧縮強度200〜220MPa、曲げ強度40〜45MPa、付着強度15〜90MPa、透気係数2.5×10- 18m2、吸水率0.05kg/m3、塩分拡散係数0.02×10- 12m2/sec、弾性係数55GPaの特性を持つ繊維補強セメント系混合材料が使用できる。
【0013】
繊維補強セメント系混合材料5によりセグメント1を製造すると、従来のコンクリート材料とは異なり鉄筋による補強を必要としない。そのために、配筋の手間を省けるばかりか、鉄筋の被りを配慮することが不要なので薄肉断面の部材を容易に作ることができる。
従来の鉄筋コンクリート製のセグメントに複数の直方体の凹部12を設けることは、設計的に成立しない。しかし、仮に鉄筋コンクリート製でこのような形状のセグメントを作るとした場合には、薄肉シェルの部分に充分に締め固められたコンクリートを打設することは困難であり施工的にも不可能である。
一方、繊維補強セメント系混合材料5によりこのような薄肉シェルの形状のセグメント1を作る場合には、1)繊維補強セメント系混合材料5のフレッシュ性状が自己充填性を有している(フロー値が250〜270mm、JIS―R−5202.11による)、2)配筋が不要なので鉄筋被りを考慮したシェルを考える必要がない、などの理由により、問題なく薄肉シェル部分に充填できる。
【0014】
<ハ>型枠
セグメント1は、型枠2を使用して製造する。
型枠2は、例えば箱状の外面枠21と蓋状の内面枠22を組み合わせて形成する(図2参照)。型枠2は、外面枠21と内面枠22を組み合わせると、セグメント1の内面、外面及び側面が形成されるものであればよく、図2とは異なってセグメント1の側面を形成する枠材が内面枠22側に固定されていてもよい。
内面枠22には、内面側から外面側に窪んだ凹部枠23を形成する。凹部枠23は、例えば矩形の箱状に形成する。なお、凹部枠23の形状は矩形に限定されるものではなく、円筒形、多角形など任意の形状とすることができる。
また、型枠2には、繊維補強セメント系混合材料5を充填するための充填口41と、空気孔42を設ける。例えば、箱状の外面枠21の側面にこれらの穴を設ける。充填口41や空気孔42は、必ずしも側面に設ける必要はなく、外面枠21の底面に設けても、内面枠22に設けてもよい。
【0015】
<ニ>変形吸収材
変形吸収材3は、セグメント1にひび割れが発生するのを防ぐために型枠2の内側に貼り付ける板材又はシート材である。例えば圧縮変形する変形係数が3〜6N/mm2程度、厚さ5〜8mm程度のポリスチレンパネルやゴムパネル等が使用できる。
繊維補強セメント系混合材料5は、多量のセメントと高性能減水剤を含んでいるために、凝結終了以降にかけて発生する剛性の増加に伴う自己収縮の発生が問題となる。
図3に示すように、繊維補強セメント系混合材料5は混練りした状態では粘性流体であり、凝結開始するまでに約2100マイクロの自己収縮が発生する。しかし、粘性流体で自己収縮しても、固体ではなく剛性がないので材料自体に引張りの残留応力が発生しない。
凝結開始は、混練りから約13時間が経過してから発生し、凝結終了は約19時間後である。この間に約760マイクロの自己収縮が発生する。
凝結終了後は、材料が弾性体(固体)となり剛性が時間とともに増大して、この間に自己収縮は650マイクロ程度発生する。凹部12のような形状の断面が内部にある型枠でセグメント1を作るような場合に、この部分が三次元的に収縮しようとすると、収縮を拘束するために次のような問題が生じる。すなわち、凝結終了前後(打設後19時間前後)から脱型するとき(打設後48時間後)までの時間において発生する自己収縮ひずみが、そのまま部材の残留引張りひずみとして残るために、凹部12のコーナー付近にひび割れが発生することがある。単純に考えると、この残留ひずみが発生する時期に型枠を脱型して、ひび割れの発生を防止できると考えるが、実際には脱型の時期を管理するのは困難である。つまり、脱型が早すぎると強度が充分でなく自重でひび割れが入る可能性がある。また、遅すぎると凹部12の型枠の拘束によりひび割れが発生する。
このような問題に対処する方法として、セグメント1の内部に複数の直方体の凹部12を設けてセグメントを製作する場合は、凹部12の型枠としては従来の鋼製、あるいは木製の板材を使用して凹部枠23を設け、凹部枠23の側面に5〜8mm程度の厚さの変形吸収材3を貼り付けることで自己収縮変形量を吸収して残留引張ひずみの発生を防止することができる(図2参照)。この変形吸収材3を使用する方法は、型枠2を養生の途中で解体するなどの方法と比較して、施工管理が簡単である。
なお、変形吸収材3は、必要に応じて凹部枠23の底面や外面枠21の内側にも貼り付けることができる。
【0016】
以下、図4を参照しながら本発明のセグメントの製造方法について説明する。
【0017】
<イ>型枠の設置
空気孔42が上面に配置されるように型枠2を設置する。
例えば、型枠2の上面に3〜7%の勾配が形成されるように型枠2の片方を持ち上げて設置台6などに固定する。ここで、持ち上げられて高くなる方に空気孔42が配置されるようにする。
なお、セグメント1の平面形が台形などであり、上面となる側面が最初から傾斜している場合は、型枠2を持ち上げて傾きを作る作業をおこなう必要はない。この場合は、傾斜した側面を上面としたときに上方になる位置に予め空気孔42を設けておけばよい。
【0018】
<ロ>繊維補強セメント系混合材料の充填
繊維補強セメント系混合材料5の充填は、自然流下の方法でおこなうのが好ましい。打設バケット7の位置を型枠2よりも高くして、ヘッド差を利用して充填をおこなう(図4参照)。充填した繊維補強セメント系混合材料5の表面が1/200〜1/50程度の勾配をもつような速度で充填すると、材料の表面から空気を巻き込むことがなく、片側から確実に充填される。また、打設時の最上端に空気抜きの空気孔42が配置されるため、ここから空気を抜くと同時に、満杯になったらここに栓をして打設を完了すればよい。このような充填の方法をとれば、型枠上面に空気が閉じ込められることがなく、寸法精度の良いセグメント1を製造できる。
繊維補強セメント系混合材料5を用いると材料自身が自己充填する特性を保有するために、薄い部材、複雑な形状をした部材でも、従来のコンクリート材料で実施するような締め固めをする必要なく充填することが可能である。このため、締め固め用のバイブレータの作用効率を高めるために型枠2の剛性を高める必要がなく、剛性の低い簡易な構造の型枠2を使用することができる。
【0019】
<ハ>複数セグメントの同時製造
本発明のセグメント1を製作するための型枠2は、繊維補強セメント系混合材料5が自己充填性に優れているため、前述したように型枠2の剛性を低くすることができる。
従って、図5に示すように密閉型枠で、複数の型枠を一つのユニットとして作ることができる。図5に示した両面枠24は、1体のセグメント1の内面枠と、そのセグメント1に隣接して製造するセグメント1の外面枠を兼用した型枠である。複数の両面枠24を接合して、前方から外面枠21を嵌合すると、複数のセグメント1を製造する型枠が製作できる。
この型枠への繊維補強セメント系混合材料5の打設においても、それぞれのセグメントを形成する両面枠24の下端部に設けた複数の充填口41から、ヘッド差を利用して繊維補強セメント系混合材料5を同時に充填して、一度に複数のセグメント1を製造する。これにより型枠の製作費用が従来よりも大幅に低減でき、また繊維補強セメント系混合材料5の打設効率も向上する。
【0020】
【本発明の実施の形態2】
以下、図6を参照しながら本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、凹部12に代えて軽量材8をセグメント11の内部に装填した実施例について説明する。なお、軽量材8に関する記述以外は、実施の形態1と同様である。
軽量材8は、セグメント11の自重を軽量化するために配置する内部型枠である。軽量材8の形状は、長方体、立方体、多角柱、円柱等が使用できる。
軽量材8には、発泡スチロール、気体を充填した袋体などのように鋼製など従来の材料に比較して変形しやすい材料を使用する。発泡スチロールは、繊維補強セメント系混合材料5の打設時には変形をせず、自己収縮時おける比較的大きな変形しようする力に対しては僅かに変形して、残留引張りひずみの発生を防止することができる。
軽量材8は、スペーサなどを使用して、型枠のすべての内面から隔離して配置することができる。また、型枠の一面に軽量材8を接触させることで、実施の形態1の凹部12に軽量材8を装填した構成とすることもできる。
【0021】
【本発明の効果】
本発明のセグメント及びセグメントの製造方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>セグメントに凹部を設ける。このため、セグメントを軽量化することができる。繊維補強セメント系混合材料製のセグメントは、メンテナンスをほとんど必要とせず、耐久性にも優れている。
<ロ>セグメントの部材厚を抑えることができる。このため、掘削断面を増大させることがない。この結果、掘削機の製作費用、掘削土の処理費用等を低減することができる。
<ハ>セグメントの軽量化により、セグメントの取り扱いや設置が容易になる。また、組み立てに使用するエレクタ等の各設備を縮小できる。
<ニ>セグメントを軽量化できるため、セグメントの大きさを従来に比べて大きくすることもできる。この結果、接続箇所が減り、セグメントの組み立て時間を短縮できる。
<ホ>変形吸収材を使用することで、複雑な形状のセグメントであってもひび割れの発生を抑えることができる。この変形吸収材を使用する方法は、型枠を養生の途中で解体するなどの方法と比較して、施工管理が簡単である。
<ヘ>型枠をまとめて安価に製作できるので、型枠製作費用を低減できる。また、繊維補強セメント系混合材料の打設を複数体まとめてできるので、施工効率が高い。
<ト>空気孔から確実に空気を抜くことで、寸法精度の良いセグメントを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセグメントの実施例の斜視図。
【図2】本発明のセグメントの製造方法の実施例の説明図。
【図3】繊維補強セメント系混合材料の自己収縮のプロセスを示した時系列図。
【図4】本発明のセグメントの製造方法の実施例の説明図。
【図5】複数のセグメントを一度に製造する実施例の説明図。
【図6】実施の形態2のセグメントの実施例の斜視図及びA−A’断面図。
【符号の説明】
1・・・セグメント
12・・凹部
13・・中柱
2・・・型枠
21・・外面枠
22・・内面枠
23・・凹部枠
24・・上面
3・・・変形吸収材
41・・充填口
42・・空気孔
5・・・繊維補強セメント系混合材料
Claims (3)
- セメント系混合材料からなり、内面側に凹部を有し、前記セメント系混合材料が繊維補強セメント系混合材料であるセグメントであって、トンネルの内周に覆工を構築するためのセグメントを製造する方法において、
内面枠に形成された凹部枠のセメント系混合材料と接する側面に変形吸収材を貼り付け、
前記内面枠と外面枠を組み合わせて型枠とし、
前記型枠に設けた充填口からセメント系混合材料を注入し、空気孔から空気を抜きつつ前記型枠内部にセメント系混合材料を充填することを特徴とする、
セグメントの製造方法。 - 請求項1に記載のセグメントの製造方法において、
前記型枠の前記空気孔を備えた面を上面とし、該空気孔が傾斜の上方となるように上面を傾けて設置することを特徴とする、セグメントの製造方法。 - 請求項1又は2記載のセグメントの製造方法において、
セグメントを成形する型枠を複数接合し、
一度に複数個のセグメントを製造することを特徴とする、セグメントの製造方法。
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