JP3971608B2 - 電子地図表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子地図データに記録される図形データのデータ構造および電子地図の表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、パーソナルコンピュータやカーナビゲーションシステムで利用される電子地図データは、CD−ROM等の記録媒体に記録されていた。これらの装置には、CD−ROM駆動装置等が物理的に接続されており、高速に地図データを読み込むことができる。例えば、CD−ROM駆動装置であれば、数メガバイト/秒、DVD駆動装置であれば十数メガバイト/秒もの転送速度となっている。
【0003】
また、近年、インターネットを介して電子地図データの送受信を行う技術も利用されつつある。インターネット上のサーバに電子地図データを保管しておくことにより、クライアントに対し個別に記録媒体を配布する必要がないためコストの削減を図ることができ、また、電子地図データのバージョンアップを一元的に管理することができる等の利点があるためである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、インターネットの転送速度は、例えば、一般的に携帯電話で用いられる速度は1.2キロバイト/秒程度であり、ISDNによる通信であっても8〜16キロバイト/秒程度である。したがって、従来、記録媒体に記録していた電子地図データをそのままインターネット上で利用しようとしても、その転送速度の違いから、地図の読み込みから表示までに多大な時間を費やしてしまうという課題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電子地図データの容量の削減を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するため、本発明は、第1の構成として、以下の構成を採った。すなわち、
コンピュータが利用する電子地図データに記録される図形データのデータ構造であって、
少なくとも1つの内角が180度以上の角度をもつ多角形の全ての頂点について、該各頂点の座標と一意の頂点番号とを対応付けて記録した頂点データと、
前記頂点データのうち前記180度以上の内角をもつ頂点と他の任意の頂点とを両端とする線分により、前記多角形を、すべての内角が180度未満である複数の多角形に分割する分割線分を表し、該分割線分の両端の座標を前記頂点番号によって表した分割線分データとが記録される図形データのデータ構造であり、
前記図形データは、前記コンピュータによって読み込まれ、該コンピュータが、前記頂点データによって表された多角形を、前記分割線分データに記録された頂点番号に基づき、全ての内角が180度未満の複数の多角形に分割し、該分割された多角形毎に表示部に描画する処理に供される
データ構造である。
【0007】
このデータ構造に記録される図形は、少なくとも1つの内角が180度以上の角度を持つ多角形である。分割線分データとは、この多角形を、すべての内角が180度未満の多角形に分割するための線分である。かかる分割の意義について以下、順を追って説明する。
【0008】
パーソナルコンピュータやカーナビゲーションシステム、携帯電話などの表示装置では、ハードウェア上の制約として、描画可能な多角形の頂点数に上限が存在する場合がある。地図で表示される形状のうち、例えば、川などは非常に点数が多い多角形で定義されるが、このような制約が存在する場合には、上述の上限数を超えない頂点により構成される多角形の集合で表す必要がある。従って、この場合には、多角形の数が膨大になってしまう。また、その上限数は、ハードウェアによって異なるため、地図を表示するハードウェアに応じて複数種類の地図データを用意する必要性等が生じてしまう。
【0009】
こうした弊害を回避するための一つの方法として、上限数を超える頂点で構成される多角形の表示時には、地図の表示装置側で、表示可能な多角形に、任意の対角線で分割して表示させる方法を採ることができる。
【0010】
図18は多角形の分割表示を示す説明図である。ここでは頂点p1〜p7で定義される7角形を表示する場合について説明する。なお、この図形を表示する表示装置は、ハードウェア上の制約により、5角形以下のみが表示可能であるものとする。例えば、表示装置は、図中の対角線L1、L2で多角形a1〜a3に分割した場合には、この7角形は適正に表示される。これに対し、対角線L3、L1で分割した場合には、本来、塗りつぶされるべきではない部分(図中のハッチング部分)が塗りつぶされることにより、この7角形は不適切な表示となってしまう。これは、頂点p5で内角が180度以上となっていることに起因する。すべての内角が180度未満の多角形においては、いかなる対角線で分割しても、元の多角形をはみ出して塗りつぶしが行われることはない。
【0011】
本発明では、かかる観点から、地図上の形状を、すべての内角が180度未満の多角形(以下、凸ポリゴンと称する)の集合で定義するものとした。このため、180度以上の内角を含む多角形は、凸ポリゴンに分割する必要がある。例えば、図18の例では、元の7角形の頂点p3、p5の内角が180度以上であるが、対角線L1、L2で分割することにより、3つの凸ポリゴンa1〜a3に分割することができる。
【0012】
ここで、3つの凸ポリゴンa1〜a3を個別の多角形として定義することも可能ではある。しかし、この場合には、それぞれの多角形a1〜a3に個別にヘッダ情報が必要とされるとともに、頂点p3、p5、p7を表すデータは、2以上の多角形に重複して記録されることになる。このため、3つの凸ポリゴンa1〜a3を個別に多角形として定義した場合には、データ量の増大を招いてしまう。
【0013】
これに対し、本発明では、元の7角形に対し、凸ポリゴンa1〜a3を生成するための分割線分L1、L2を定義するものとした。分割線分とは、多角形を分割するための線分であり、始点および終点となる頂点によって特定される。こうすることにより、データ量の増大を抑制しつつ、実質的に凸ポリゴンの集合体として多角形を定義することが可能となる。
【0014】
以上で説明したとおり、本発明における図形の分割は、データ量の増大を抑制しつつ、描画可能な多角形の上限頂点数に対するハードウェア上の制約を回避するという効果を奏することができる。なお、本発明で定義された凸ポリゴンを、表示装置側で上限頂点数よりも少ない頂点数の多角形に更に分割して表示可能である場合には、凸ポリゴンの頂点数は必ずしも上限頂点数未満となっている必要はない。
【0015】
上記データ構造に従い電子地図データに記録された図形の表示を行うため、本発明の第2の構成として、以下の構成を採った。すなわち、
電子地図を表示する電子地図表示装置であって、
少なくとも1つの内角が180度以上の角度をもつ多角形の全ての頂点について、該各頂点の座標と一意の頂点番号とを対応付けて記録した頂点データと、前記頂点データのうち前記180度以上の内角をもつ頂点と他の任意の頂点とを両端とする線分により、前記多角形を、すべての内角が180度未満である複数の多角形に分割する分割線分を表し、該分割線分の両端の座標を前記頂点番号によって表した分割線分データとが記録される図形データの記録された電子地図データを、ユーザから指定された地点に応じて入力する地図データ入力部と、
前記入力した電子地図データに含まれる図形データに記録された頂点データによって表される多角形を、前記分割線分データに記録された頂点番号に基づき、全ての内角が180度未満の複数の多角形に分割する分割部と、
該分割された多角形毎に表示部に描画を行う描画部と
を備える電子地図表示装置である。
【0016】
地図データ参照部は、上述した第1の構成のデータ構造を記録した電子地図データを参照し、頂点データと分割線分データを入力する。描画部は、この頂点データと分割線分データとを基に多角形の描画を行う。このような電子地図表示装置により、上記データ構造に基づく多角形を描画することが可能となる。この地図表示装置は、分割線分で分割された多角形を、上述の上限頂点数未満の多角形に更に分割して表示するものとしてもよい。
【0017】
次に、本発明の第3の構成として、以下の構成を採った。すなわち、
電子地図データに記録される図形データのデータ構造であって、
連続した線分からなる折線を構成する各点列についての座標データと、
前記線分の表示または非表示を指定する表示制御データと、
を対応付けて記録したデータ構造である。
【0018】
このようなデータ構造により、表示状態の線分と非表示状態の線分とを含む折線を表現することができる。つまり、離れた場所に表示される複数の折線図形を1つのデータで表現することが可能となる。図形データには、様々な情報を記録したヘッダ情報が付加されることが通常であるため、複数の図形を1つのデータにまとめることにより、ヘッダ情報分のデータ容量を削減することができる。
【0019】
なお、上記データ構造において、
前記表示制御データを、前記連続した線分を順に描画する際に、表示から非表示、あるいは非表示から表示に表示態様を切り替える点を特定するデータとすると、簡易な方法により表示/非表示を制御することができるため好適である。
【0020】
上記データ構造に従い電子地図データに記録された図形を表示するため、本発明の第4の構成として、以下の構成を採った。すなわち、
電子地図を表示する電子地図表示装置であって、
本発明の第3の構成のデータ構造を記録した電子地図データを参照し、前記座標データと前記表示制御データとを入力する地図データ参照部と、
前記表示制御データに基づいて表示/非表示を切り替えて、前記座標データに応じた折線を描画する描画部と、
を備える電子地図表示装置である。
【0021】
このような電子地図表示装置により、上記データ構造に従い記録された折線図形に基づき、離れた場所に表示される複数の線分を描画することが可能となる。
【0022】
次に、本発明の第5の構成として、以下の構成を採った。すなわち、
複数段階に拡大縮小表示可能な地図データを有する電子地図データに記録される記号データまたは表示用文字データのデータ構造であって、
表示されるべき記号の形状または文字列を指定する表示内容データと、
前記記号または文字列を表示すべき位置を指定する座標データと、
前記記号または文字列を表示する前記段階の上限値または下限値を指定する表示段階データと、
を対応付けて記録したデータ構造である。
【0023】
例えば、5段階に拡大縮小表示可能な地図データにおいて、地図上の文字や記号の表示/非表示をその段階に応じて制御するためには5ビットのフラグが必要であった。しかし、上記データ構造を用いれば、表示段階の上限値あるいは下限値を指定すればよい。すなわち、「5」を2進数で表すと、「101」となるため、少なくとも3ビットのデータがあれば、段階に応じた表示/非表示を制御することができる。従って、この場合、2ビット分のデータ容量の削減が可能となる。なお、記号とは、例えば、学校や郵便局、消防署等を表す地図記号等とすることができる。また、文字はその名称等とすることができる。地図にはこのような記号あるいは文字が無数に存在するため、上述のように1つの文字/記号データで2ビット分のデータ容量を削減することができれば、全体ではまとまった容量のデータの削減を図ることが可能となる。
【0024】
次に、本発明の第6の構成として、以下の構成を採った、すなわち、
電子地図を表示する電子地図表示装置であって、
本発明の第5の構成のデータ構造を記録した電子地図データを参照し、前記表示内容データと、前記座標データと、前記表示段階データとを入力する地図データ参照部と、
表示する地図の拡大縮小段階を指定する段階指定部と、
前記段階の指定が、前記表示段階データで特定される条件を満足する場合に、前記表示内容データ、座標データに基づき前記記号または文字列を描画する描画部と、
を備える電子地図表示装置である。
【0025】
このような電子地図表示装置により、地図を表示する際に、その地図の表示段階の上限値、あるいは下限値を指定して記号あるいは文字を描画することが可能となる。
【0026】
また、本発明の第7の構成として、以下の構成を採った。すなわち、
電子地図データに記録されるオブジェクト群のデータ構造であって、
連続したアドレス空間に複数のオブジェクトを保持するオブジェクト領域を備え、
該オブジェクト領域は、前記オブジェクトの区切りで、複数のオブジェクトグループに分割されており、
前記オブジェクト領域とは別に、前記オブジェクトグループの先頭アドレスを指定するインデックスデータを保持するインデックス領域を有するデータ構造である。
【0027】
かかるデータ構造に従えば、オブジェクトグループに対してインデックスデータを一つ割り当てることとなる。従って、すべてのオブジェクトに対してインデックスデータを付加する必要がないため、インデックス領域のデータ容量を削減することが可能となる。
【0028】
次に、本発明の第8の構成として、以下の構成を採った。すなわち、
電子地図データに記録された任意のオブジェクトを検索するオブジェクト検索装置であって、
本発明の第7の構成のデータ構造を記録した電子地図データを参照する参照部と、
検索対象となるオブジェクトを特定するための指標を入力する検索対象入力部と、
前記インデックス領域から、前記検索対象の属するオブジェクトグループの先頭アドレスを示すインデックスデータを検索するインデックスデータ検索部と、前記オブジェクト領域内において、前記インデックスデータに記録されたアドレスから順次検索を行い、検索対象を検索する順次検索部と、
を備えるオブジェクト検索装置である。
【0029】
このようなオブジェクト検索装置によって、上記データ構造に従い記録されたオブジェクトの中から所望のオブジェクトを検索することができる。検索対象となるオブジェクトが属するオブジェクトグループの先頭アドレスは、インデックスデータにより検索可能であり、その先頭アドレスから目的のオブジェクトが記録されたアドレスまでは、順次アドレスをインクリメントすることにより検索可能である。なお、オブジェクトとは、道路や建物などを表示するための図形データであってもよいし、道路のつながり状態を記録した経路データであってもよい。
【0030】
また、本発明の第9の構成として、以下の構成を採った、すなわち、
電子地図データに記録され、連続した複数の点列で定義される図形データのデータ構造であって、
前記点列の一部について座標を絶対座標により保持する絶対座標データと、
前記点列の残余について座標を所定の基準点からの相対座標により保持する相対座標データと、
前記絶対座標データを記録した領域と、前記相対座標データを記録した領域との境界に記録され、次に記録された領域の座標データの種別を指定する種別指定データと、を備え、
前記相対座標データの取り得る範囲は前記絶対座標データが取り得る範囲よりも狭いデータ構造である。
【0031】
従来、連続した折線からなる図形データのデータ構造として、絶対座標のみからなるデータ構造と、最初の1点のみを絶対座標で表し、残りの点を直前の点からの相対座標で表すデータ構造があった。しかし、前者のデータ構造では、座標値の大小にかかわらず、どのような値でも記録可能なように、十分なデータ幅を確保しなければならなかった。そのため、全体としてデータ容量が増大してしまうという問題があった。一方、後者のデータ構造では、座標間の移動量を記録すればよいため、データ幅を比較的小さく抑えることができるが、移動量が大きい場合には、限られたデータ幅でその移動量を表現するために、本来必要のない座標点を中継点として設定しなければならない場合があった。また、絶対座標値や相対座標に2分の1や3分の1など一定の係数を乗じて記録することによりデータ容量を抑え、図形の描画時にその座標値を2倍あるいは3倍にする方法もあった。しかしこのような方法では、表示装置本来の解像度を生かせないため、地図の精度が落ちてしまうといった問題があった。
【0032】
本発明の上記データ構造によれば、絶対座標データと相対座標データとを混載して記録した図形データを定義することができる。すなわち、絶対座標データを記録した領域と相対座標データを記録した領域とを、ひとつの図形データの中にそれぞれ複数存在させることができる。このような図形データであれば、座標間の移動量が小さい場合は相対座標により座標を記録し、移動量が大きい場合は絶対座標により座標を記録することができる。従って、データ領域を効率的に用いることができ、全体として精度を維持したままデータ容量の増大を抑えることが可能となる。絶対座標データを記録した領域と相対座標データを記録した領域との間には、次に記録される領域の座標データが絶対座標データであるか相対座標データであるかを指定する種別指定データが記録されるため、表示装置側はこの種別指定データを参照することにより両者の座標系を切り替えて図形を描画することが可能となる。
【0033】
相対座標の基準点は、種々の設定が可能である。例えば、図形データにおいて絶対座標データで表されるいずれかの点を基準点としてもよい。また、点列における直前の点を基準点としてもよい。さらに、図形データに含まれない仮想的な基準点を設けるものとしてもよい。この場合には、種別指定データに、仮想的な基準点の絶対座標を指定するパラメータを含めることが好ましい。
【0034】
なお、上記データ構造において、
前記種別指定データは、前記相対座標データの取り得る範囲を指定するパラメータを含むこととしてもよい。例えば、その範囲をビット数やバイト数で指定することとしてもよい。つまり、絶対座標データが16ビットで表される場合、相対座標データを、−127〜127としたい場合は、8ビットと指定することができ、−7〜7としたい場合は、4ビットと指定すればよい。
【0035】
こうすることにより、座標間の移動量に応じて、相対座標データを記録するデータ容量を柔軟に指定することができる。従って、より効率的にデータ領域を用いることができる。なお、X座標の範囲とY座標の範囲とを別々に指定することができるものとしてもよい。
【0036】
次に、本発明の第10の構成として、以下の構成を採った、すなわち、
電子地図を表示する電子地図表示装置であって、
本発明の第9の構成のデータ構造を記録した電子地図データを参照し、前記絶対座標データと、前記相対座標データと、前記種別指定データとを入力する地図データ参照部と、
前記絶対座標データに基づき描画すべき点の位置を特定する絶対座標特定部と、
前記相対座標データおよび前記基準点の絶対座標に基づき描画すべき点の位置を特定する相対座標特定部と、
前記種別指定データに基づき、前記絶対座標特定部と前記相対座標特定部とを切り替えて前記図形を描画する描画部と、
を備える電子地図表示装置である。
【0037】
このような電子地図表示装置によれば、描画部により絶対座標特定部と相対座標特定部とを切り替えて図形の描画を行う。こうすることにより、上記データ構造に従い記録された図形を描画することが可能となる。
【0038】
また、本発明は、電子地図表示装置に各種図形や文字、記号を表示する機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。また、オブジェクト検索装置にオブジェクトを検索させるための機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。コンピュータプログラムや、上記種々のデータ構造を記録した電子地図データは、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD、ICカード、ハードディスク等の各種記録媒体に記録していてもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき次の順序で説明する。
A.地図表示システム:
B.携帯電話機能ブロック概要:
C.電子地図データ概要:
D.ポリゴンデータ:
(D1)ポリゴンデータ構造:
(D2)ポリゴン描画処理:
(D3)凸分割処理:
E.折線データ:
(E1)折線データ構造:
(E2)折線描画処理:
F.文字付記号データ:
(F1)文字付記号データ構造:
(F2)文字付記号描画処理:
G.マップマッチングデータ:
(G1)マップマッチングデータ構造:
(G2)リンク列データ検索処理:
H.複数座標系図形データ:
(H1)複数座標系図形データ構造:
(H2)図形描画処理:
【0040】
A.地図表示システム:
図1は、本実施例における地図表示システムMSの概略構成図である。地図表示システムMSは、電子地図データベースDBを有するサーバSVと、該サーバSVとインターネットINTにより接続される基地局BS、および基地局BSと無線通信WLによりデータの送受信を行う携帯電話CPにより構成される。携帯電話CPは、CPU、RAM、EEPROMを内蔵している。EEPROMには、電子地図データベースDBから地図データを取得し、表示部DP上に地図を表示するためのプログラムが記憶されている。
【0041】
B.携帯電話機能ブロック概要:
図2は、携帯電話CPの機能ブロック図である。携帯電話CPは、操作入力部10、地図データ取得部11、主制御部12、地図データ記憶部13、描画部14、表示制御部15等を備えている。操作入力部10は、操作ボタンSBからのユーザ操作を入力する。地図データ取得部11は、主制御部12からの指示により、サーバSVから地図データ等を入力する。地図データ記憶部13は、入力した地図データを記憶する。描画部14は、主制御部12を介し地図データ記憶部13から地図データを入力し、地図をRAM上に描画する。RAM上に描画された地図は、表示制御部15を介し、表示部DPへ出力される。
【0042】
C.地図データ概要:
図3は、電子地図データベースDBのデータ構成図である。電子地図データベースDBには地図データMDと、マップマッチングデータMMが記録されている。地図データMDには、ポリゴンデータや折線データ、文字付記号データMK等が記録されており、これらのデータにより地図が表現されている。図中の4本の道路A〜Dは、各々4つの頂点をもつポリゴンであり、建物STは7つの頂点を持つポリゴンである。また、盛土記号PEは折線で表現されている。一方、マップマッチングデータMMとは、ルート検索等を行う際に用いられるデータであり、道路のつながり状態をリンク列と呼ばれるデータにより管理している。リンク列は、道路上の交差点や分岐点等を表すノードデータにより構成されている。図示する「●」マークがノードである。例えば、上記道路Aを構成するリンク列AAは、ノードN1〜N4によって構成される。
【0043】
D.ポリゴンデータ:
(D1)ポリゴンデータ構造:
図4は、地図データMDに記録されるポリゴンデータのデータ構造図である。図3で示した道路A〜Dや建物ST等の図形データが記録される形式である。図の上部から順に説明する。座標点数とは、ポリゴンを構成する頂点の数である。次に、ポリゴン形状種別とは、そのポリゴンの特徴を示すパラメータである。180度を超える内角を1つでも持つポリゴンは、凹型ポリゴンと定義し、それ以外、すなわち、すべての内角が180度未満のポリゴンを凸型ポリゴンと定義している。その後、ポリゴンの頂点のX、Y座標が、前記座標点数分だけ記録される。以上のパラメータは、凹型ポリゴンと凸型ポリゴン共通に記録されるパラメータである。記録されるポリゴンが、凹型ポリゴンの場合は、分割線分の数および分割線分の始点・終点についても記録される。分割線分とは、凹型ポリゴンを凸型ポリゴンの集合に分割するための「切れ目」となる線分である。分割線分の始点・終点は、前記頂点の中から選択されるものであり、何番目に記録した頂点であるかを示す値によって指定する。むろん、頂点に番号が付されている場合にはその番号によって指定してもよい。
【0044】
(D2)ポリゴン描画処理:
次に、携帯電話CPが、上述のデータ構造に従うポリゴンデータを読み込み、表示部DPに描画する処理について説明する。これは、携帯電話CPのCPUが、EEPROMに記録されたプログラムに従い行う処理である。図5は、ポリゴン描画処理のフローチャートである。
【0045】
まず、携帯電話CPのCPUは、ユーザが表示部DPに表示させたい地点の指定を操作ボタンSB等によって入力する(ステップS100)。そして、CPUは、指定された地点周囲の地図データを、無線通信WLおよびインターネットINTを介してサーバSVの電子地図データベースDBから取得し、記憶する(ステップS101)。次に、CPUは、記憶した地図データにポリゴンデータが記録されているかの解析を行う(ステップS102)。記録されていない場合は処理を終了し、記録されている場合は、ポリゴンを1つ読み込む(ステップS103)。そして、ポリゴン形状種別パラメータから、そのポリゴンが凸型ポリゴンであるか凹型ポリゴンであるかを判別する(ステップS104)。ポリゴンが凸型ポリゴンであれば、記録された座標に基づきポリゴンを描画する(ステップS106)。ポリゴンが凹型ポリゴンであれば、後述する凸分割処理を行い(ステップS105)、分割したポリゴン毎に描画する(ステップS106)。次に、CPUは、処理をステップS102に戻し、他のポリゴンデータがあるかどうかを判別する。他のポリゴンデータがあれば、ステップS103〜S106の処理を繰り返し行い、なければ処理を終了する。このような処理により、携帯電話CPの表示部DP上にポリゴンが表示される。
【0046】
(D3)凸分割処理:
上記ステップS105における凸分割処理について説明する。図6は、図3で示した建物STを詳細に表した図である。建物STは、頂点P1〜P7からなる多角形により表されている。図示するように、2つの内角αおよびβが180度以上であるため、ポリゴン形状種別パラメータは凹型ポリゴンとなっている。また、そのデータには始点をP2、終点をP6とする分割線分1と、始点をP4、終点をP6とする分割線分2が含まれている。携帯電話CPのCPUは、これらの分割線分に基づき、図の下部に示すように、凹型ポリゴンを複数の凸型ポリゴン、すなわち、座標P1、P2、P6、P7で構成される図形aa、座標P2、P3、P4、P6で構成される図形bb、および、座標P4、P5、P6で構成される図形ccに分割する。その後、携帯電話のCPUは、上記ステップS106において、このように分割した図形毎に画面に描画を行う。
【0047】
なお、携帯電話CPで描画可能な多角形の頂点数に上限値が存在する場合には、ポリゴン描画(ステップS106)において、凸型ポリゴンを更に分割する処理を含めるものとしてもよい。例えば、上限値を超える頂点数を有する凸型ポリゴンを抽出し、頂点数が上限値以下になるまで、任意の対角線で分割する処理を行えばよい。一例として、図6において、上限値が3である場合を考える。この場合には、ステップS106において、4角形aaおよびbbを更に対角線La、Lbで2つの三角形に分割した上で描画することとなる。
【0048】
E.折線データ:
(E1)折線データ構造:
次に、図3で示した盛土記号PE等を表す折線データについて説明する。図7は、折線データのデータ構造を示す図である。図の上部から順に説明する。座標点数とは、折線を構成する座標の数である。次に、ペンアップ情報フラグが記録される。ペンアップとは、折線を構成する線分を順次描画する際に、指定された座標において描画状態から非描画状態に切り替えることをいい、ペンアップ情報フラグとは、このように描画するための情報が含まれるかどうかを示すパラメータである。その後、折線を構成する座標が、前記座標点数分記録される。最後に、ペンアップ情報フラグが1の時は、ペンアップ数すなわちペンアップを行う回数と、上記座標の何点目でペンアップするかを示すパラメータが記録される。
【0049】
図8は、上記データ構造に従い記録される折線の一例を示す図である。図示する折線は、座標P1〜P9により構成されており、ペンアップする場所を、3点目のP3および6点目のP6とした。本実施例では、ある座標でペンアップした場合、その次の座標では、必ずペンダウンすることとした。ペンダウンとは、非描画状態から描画状態に切り替えることをいう。
【0050】
(E2)折線描画処理:
次に、携帯電話CPが、上記データ構造に従い記録された折線データを読み込み、表示部DPに描画する処理について説明する。これも、携帯電話CPのCPUがEEPROMに記録されたプログラムに従い行う処理である。
【0051】
図9は、折線描画処理のフローチャートである。まず、携帯電話CPのCPUは、ユーザが表示部DPに表示させたい地点の指定を、操作ボタンSB等によって入力する(ステップS200)。そして、CPUは、指定された地点周囲の地図データを、無線通信WLおよびインターネットINTを介してサーバSVの電子地図データベースDBから取得し、記憶する(ステップS201)。次に、CPUは、記憶した地図データに折線データが含まれるかどうかの解析を行い(ステップS202)、含まれていない場合は処理を終了し、含まれる場合は、折線データを1つ読み込む(ステップS203)。そして、その折線データのペンアップ情報フラグの状態を調べる(ステップS204)。ペンアップ情報フラグが0、すなわち、ペンアップ情報がない場合は、格納された座標データに基づき折線を描画する(ステップS205)。ペンアップ情報フラグが1、すなわち、ペンアップ情報がある場合は、順次線分を描画していき、ペンアップ地点になったら次の座標にジャンプし、引き続き線分を描画していく。これらの処理を繰り返しすべての線分を描画する(ステップS206)。このように、ステップS205あるいはステップS206の描画処理を終了すると、CPUは、処理をステップS202に戻し、他の折線データが含まれるかどうかを判別する。他の折線データがあれば、ステップS203〜S206の処理を繰り返し行い、なければ処理を終了する。このような処理により、携帯電話CPの表示部DP上に折線が表示される。
【0052】
本実施例では、折線をデータに記録した頂点順に描画することを前提として、ペンアップ/ペンダウンにより、線分の表示/非表示を切り替える場合を例示した。表示/非表示の切り替えは、各線分に対応付けたフラグで制御してもよい。例えば、図7のペンアップ情報に代えて、線分P3−P4、P6−P7は非表示であることを意味するフラグを設けるものとしてもよい。この態様では、描画順序に関係なく、線分の表示/非表示を制御できる利点がある。
【0053】
F.文字付記号データ:
(F1)文字付記号データ構造:
次に、文字付記号データについて説明する。文字付記号データとは、図3で示したように、地図上に学校や消防署、郵便局等の記号やその名称を表示するためのデータである。
【0054】
図10は、この文字付記号データのデータ構造を示す図である。図上部から順に説明する。基準点座標Xおよび基準点座標Yとは、描画する記号の中心座標である。縦・横フラグとは、文字を縦書きにするか、あるいは横書きにするかを指定するパラメータである。文字配列とは、記号に対して文字をどの位置に描画するかを指定するパラメータである。記号表示レベルおよび文字表示レベルとは、どの表示レベルの地図上に、記号や文字を描画するかを指定するパラメータである。地図の表示レベルとは、その地図の詳細度のことをいい、本実施例では、表示レベル1の地図が最も詳細度が高く、表示レベル5の地図が最も詳細度の低い地図であることとした。図に示すように、記号表示レベルおよび文字表示レベルの値は、文字・記号を描画する地図の表示レベルの上限値を指定する値となっている。次に、記号番号とは、描画する記号を指定するパラメータである。電子地図データベースDBには、地図データのほかに、記号データベースを含んでおり、このデータベースから描画したい記号を予め割り振られた番号により指定する。次に、文字列サイズとは、描画する文字の長さである。文字列には、実際に描画する文字を格納する。
【0055】
ここで、上述した地図の表示レベルと記号表示レベルおよび文字表示レベルの関係を図11に示す。ここでは、表示する記号を学校マーク、表示する文字を「北東小」とし、記号表示レベルを4、文字表示レベルを2、文字配列のパラメータを1、縦・横フラグを1、とした。図中の「表示態様」には、このように文字付記号データを設定した時の表示結果を示している。図示するように、詳細度の高い表示レベル1や2の地図上には、記号と文字とが表示され、表示レベルが3および4の場合には記号のみが表示されている。そして、最も詳細度の低い表示レベル5においては何も表示されないこととなる。従って、このような文字付記号データを用いることにより、例えば、行政区分上の「市」全体の地図を表示する際には記号も文字も表示させず、「区」全体の表示を行う際には記号のみを表示させ、最も詳細度の高い「町」レベルの地図を表示する際には記号も文字も表示させるといった制御が可能になる。
【0056】
(F2)文字付記号描画処理:
図12は、上記文字付記号を表示する処理のフローチャートである。まず、携帯電話CPのCPUは、ユーザが表示部DPに表示させたい地点と表示レベルの指定を操作ボタンSB等によって入力する(ステップS300)。そして、CPUは、指定された地点周囲の地図データを、無線通信WLおよびインターネットを介してサーバSVの電子地図データから取得し、記憶する(ステップS301)。そして、CPUは、記憶した地図データを用いて、ステップS300において指定された表示レベルで地図を描画する(ステップS302)。これは、上述のポリゴン描画処理や折線描画処理等によって行う。指定された表示レベルで地図を描画するには、ポリゴンや折線をその表示レベルに応じて拡大縮小することにより描画すればよい。
【0057】
次に、CPUは、地図データに文字付記号データが含まれているかを判断する(ステップS303)。含まれていない場合は、処理を終了する。含まれている場合は、文字付記号データを1つ読み込み(ステップS304)、ステップS300で指定された表示レベルと、その文字付記号データに記録された記号表示レベルおよび文字表示レベルとを各々比較し、それぞれ描画するかどうかを判断する(ステップS305)。その結果、条件が満足せず描画しない場合には処理をステップS303に戻し、条件が満足する場合には、文字付記号データにより指定された座標および配置により記号および文字を描画する(ステップS306)。
【0058】
先に説明したとおり、文字の配置は、記号の右、左などの相対的な位置関係で指定されている。そのため、CPUは、文字列の縦書き・横書きの指定、文字列のサイズおよび、記号の中心座標から所定の演算により文字を描画する座標を求める。
【0059】
そして処理をステップS303に戻し、他に文字付記号データが記録されているかどうかを判別する。他の文字付記号データがあれば、ステップS304〜S306の処理を繰り返し行い、なければ処理を終了する。このような処理により、携帯電話CPの表示部DP上に地図と文字付記号を表示することができる。
【0060】
G.マップマッチングデータ:
(G1)マップマッチングデータ構造:
次に、図3で示したマップマッチングデータMMについて説明する。図13は、マップマッチングデータMMを格納するデータ構造を示す図である。図示するように、マップマッチングデータMMは、インデックス領域と、実データ領域とを備えている。実データ領域には、リンク列データの実体が格納されており、インデックス領域には、32個ごとにグループ化したリンク列データの先頭アドレスを指定するための情報、すなわち、インデックスデータが格納されている。なお、リンク列データは、データ長が不定のデータである。本来、すべてのリンク列データに対し、1対1でインデックスデータを持つこととすれば、即座にどのリンク列がどのアドレスにあるかを知ることができる。しかし、そのためにはインデックス領域の記憶領域が増大してしまう。そのため、本実施例では、リンク列データを32個ごとにグループ化して、そのグループ毎にインデックスデータを持つこととした。なお、インデックスデータとリンク列データには、それぞれ一連の番号が割り当てられている。また、実データ領域の先頭アドレスは既知であるものとし、インデックスデータは、この実データ領域の先頭アドレスからのオフセット値とした。例えば、リンク列データ0の先頭アドレスがad0、リンク列データ32の先頭アドレスがad1である場合には、オフセット値として、「ad1−ad0」の値が格納される。
【0061】
次に、このようなマップマッチングデータMMから、任意のリンク列データのアドレスを検索する処理について説明する。例えば、ルート検索等において、あるリンク列と他のリンク列が交差する場合に、交差している先のリンク列データのアドレスを求める際などに用いられる処理である。
【0062】
図14は、リンク列データ検索処理のフローチャートである。この処理も、携帯電話CPのCPUがEEPROMに記録されたプログラムに従い行う処理である。まず、携帯電話CPのCPUは、検索対象となるリンク列データの番号を入力する(ステップS400)。次に、入力されたリンク列データ番号が、32以上であるかを判断する(ステップS401)。その結果、リンク列データ番号が32以上の場合、以下の演算を行う(ステップS402)。
【0063】
インデックスデータ番号n=リンク列データ番号¥32−1;
(「¥」は商を求める演算子とする)
【0064】
次に、上記演算により求めたインデックスデータ番号nに格納されたインデックス値を取得する(ステップS403)。これが検索対象の属するグループの先頭アドレスである。リンク列データ番号が0〜31の場合は、実データ領域の先頭アドレスを取得し(ステップS404)、検索対象の属するグループの先頭アドレスとする。そして、求めた先頭アドレスから、順次アドレス値をインクリメントしていくことにより、目的のリンク列データが格納されたアドレスを検索し(ステップS405)、処理を終了する。以上の処理により、比較的低容量のインデックスデータを用いながら、長時間を要さずに目的のリンク列データを検索することができる。
【0065】
H.複数座標系図形データ:
(H1)複数座標系図形データ構造:
次に、複数座標系図形データの構造について説明する。複数座標系図形データは、連続した複数の点列で定義される図形を、絶対座標と相対座標とにより表したデータである。
【0066】
図15は、絶対座標と相対座標の関係を示す説明図である。図示する折線図形は点列P1〜P5からなり、その絶対座標はそれぞれ、P1[X1,Y1]、P2[X2,Y2]、P3[X3,Y3]、P4[X4,Y4]、P5[X5,Y5]である。この図形を、相対座標で表す場合、P1の絶対座標[X1,Y1]を基準点とし、P2以降をそれぞれ、P2[ΔX21,ΔY21]、P3[ΔX32,ΔY32]、P4[ΔX43,ΔY43]、P5[ΔX54,ΔY54]と表すことができる。すなわち、その点の直前の点からの差分座標値が相対座標となる。なお、相対座標は正負いずれの値も取り得る。ここでは相対座標の基準点を直前の点としたが、座標上の任意の点とすることもできる。例えば、図中の点Kを基準点としてもよい。この場合は、P1からP5までのすべての点を、図示する点線のように、座標上の任意の点Kからの差分座標値によって表すこともできる。図中では、基準点Kが単一の場合を例示したが、複数の基準点を使い分けてもよい。各点までの距離が比較的短い基準点を適宜選択することにより、相対座標のデータ量を抑制することもできる。以下の説明では、これらのうち、どのような相対座標を用いてもよい。
【0067】
図16は、複数座標系の図形データの概略構造の一例を示す図である。図では、各種パラメータをアドレス順に記載しており、横幅は記録されるデータのデータ幅を相対的に表している。
【0068】
図の上部から説明する。「総座標点数」は、図形を構成する点列の総座標点数である。「座標X1」および「座標Y1」は、図形の第1点目の座標である。この座標は、常に絶対座標で記録する。次に、領域aについて説明する。「座標データ種別」には、第2点目以降に記録される座標の記録形式を記録する。これは、絶対座標か、相対座標か、相対座標の場合は、データ幅は何ビットであるかという形式を表すデータである。そして、その座標データ種別により記録される座標の点数を「座標点数」に記録し(図の場合ではm個)、上記座標データ種別で指定した座標形式により座標データを記録する。図の場合は、相対座標データを、絶対座標データの半分のデータ幅により記録している。なお、本実施例では、相対座標のデータ幅を可変としたが、固定としてもよい。
【0069】
次の領域bでも、上述の領域aと同様に相対座標データが記録されている。ただし、相対座標のデータ幅を、領域aのデータ幅よりも大きく設定している。これは、図形を構成する点列の座標間の距離が、領域aに記録したデータに比べて大きいためである。
【0070】
次に、領域cでは、絶対座標によりデータを記録している。座標間の距離が大きい場合は、データ幅も大きくなり、相対座標で記録しても、要するデータ量は絶対座標の場合と変わらなくなるためである。また、相対座標の場合、描画時に順次座標を加算していく演算が必要となるが、絶対座標であればそのような演算が不要なため、表示装置の処理の負担を軽減することができる。
【0071】
上述の説明や、図に示すように、相対座標データのデータ幅は柔軟に設定することができる。こうすることにより、座標間の距離が小さい場合はデータ幅を小さくし、大きい場合はデータ幅を大きくすることができる。従って、データ領域を効率的に利用することが可能となり、全体としてデータ容量を削減することも可能となる。
【0072】
(H2)図形描画処理:
次に、上述のデータ構造に従い記録された複数座標系図形データを読み込み、表示部DPに描画する処理について説明する。これも、携帯電話CPのCPUがEEPROMに記録されたプログラムに従い行う処理である。このプログラムは、絶対座標と相対座標とを切り替えて折線またはポリゴンを描画する機能を備えている。
【0073】
図17は、複数座標系図形データを描画する処理のフローチャートである。まず、携帯電話CPのCPUは、ユーザが表示部DPに表示させたい地点の指定を、操作ボタンSB等によって入力する(ステップS400)。そして、CPUは、指定された地点周囲の地図データを、無線通信WLおよびインターネットINTを介してサーバSVの電子地図データベースDBから取得し、記憶する(ステップS401)。次に、CPUは、記憶した地図データに複数座標系図形データが含まれるかどうかの解析を行い(ステップS402)、含まれていない場合は処理を終了し、含まれる場合は、データを読み込む(ステップS403)。そしてCPUは、座標データ種別パラメータを参照し、絶対座標と相対座標とを切り替えながら図形を描画する。相対座標に基づいて描画する際には、データで与えられる相対座標と基準点の絶対座標とから描画すべき点の位置を特定する(ステップS404)。そして、処理をステップS402に戻し、地図データに他の複数座標系図形データがあるかを検出する。ある場合は、他のデータを読み込み、ステップS403〜S404を繰り返し行い図形を描画する。ない場合は処理を終了する。このような処理により、絶対座標データと相対座標データとが混載した図形データに基づき図形を描画することが可能となる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について実施例に基づき説明した。このような実施例に従うポリゴン、折線、文字付記号、複数座標系図形データ等のデータ構造およびその描画処理により、地図データの容量を低減しつつ、適正な地図表示を実現することができる。また、マップマッチングデータの構造により、比較的低容量のデータを用いつつ、経路探索を円滑に行うことができる。
【0075】
しかし、本発明はこれらの実施例に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとることができる。実施例おいて、ハードウェアを用いた処理はソフトウェアで行ってもよいし、ソフトウェアを用いた処理はハードウェアで行ってもよい。
【0076】
また、実施例で例示した各データ構造に含まれる種々のパラメータは、必ずしもすべてを備えている必要はなく、適宜一部を組み合わせて適用可能としてもよい。
【0077】
また、実施例では、携帯電話への地図配信を例示したが、地図を表示する装置は、パーソナルコンピュータ、PDAなど種々のハードウェアを用いることができる。また、地図データは必ずしもネットワークで配信する必要はなく、CD−ROMやDVDなどの記録媒体で供給するものとしてもよい。本実施例で示したデータ構造によるデータ容量の低減効果は、記録媒体への地図データ格納においても有効であるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】地図表示システムMSの概略構成図である。
【図2】携帯電話CPの機能ブロック図である。
【図3】電子地図データベースDBのデータ構成図である。
【図4】ポリゴンデータのデータ構造図である。
【図5】ポリゴン描画処理のフローチャートである。
【図6】建物STを詳細に表した図である。
【図7】折線データのデータ構造を示す図である。
【図8】折線の一例を示す図である。
【図9】折線描画処理のフローチャートである。
【図10】文字付記号データのデータ構造を示す図である。
【図11】地図の表示レベルと記号表示レベルおよび文字表示レベルの関係を示す図である。
【図12】文字付記号を表示する処理のフローチャートである。
【図13】マップマッチングデータMMを格納するデータ構造を示す図である。
【図14】リンク列データ検索処理のフローチャートである。
【図15】絶対座標と相対座標の関係を示す説明図である。
【図16】複数座標系の図形データの概略構造の一例を示す図である。
【図17】複数座標系図形データを描画する処理のフローチャートである。
【図18】多角形の分割表示を示す説明図である。
【符号の説明】
10…操作入力部
11…地図データ取得部
12…主制御部
13…地図データ記憶部
14…描画部
15…表示制御部
BS…基地局
CP…携帯電話
DB…電子地図データベース
DP…表示部
INT…インターネット
MD…地図データ
MK…文字付記号データ
MM…マップマッチングデータ
MS…地図表示システム
SB…操作ボタン
SV…サーバ
Claims (7)
- 電子地図を表示する電子地図表示装置であって、
少なくとも1つの内角が180度以上の角度をもつ多角形の全ての頂点について、該各頂点の座標と一意の頂点番号とを対応付けて記録した頂点データと、前記頂点データのうち前記180度以上の内角をもつ頂点と他の任意の頂点とを両端とする線分により、前記多角形を、すべての内角が180度未満である複数の多角形に分割する分割線分を表し、該分割線分の両端の座標を前記頂点番号によって表した分割線分データとが記録される図形データの記録された電子地図データを、ユーザから指定された地点に応じて入力する地図データ入力部と、
前記入力した電子地図データに含まれる図形データに記録された頂点データによって表される多角形を、前記分割線分データに記録された頂点番号に基づき、全ての内角が180度未満の複数の多角形に分割する分割部と、
該分割された多角形毎に表示部に描画を行う描画部と
を備える電子地図表示装置。 - 請求項1に記載の電子地図表示装置であって、
更に、前記分割部によって分割された多角形の頂点数が、当該電子地図表示装置が描画可能な多角形の頂点数の上限値を超える場合に、前記分割後の多角形を、該多角形の頂点数が前記上限値以下になるまで更に分割する再分割部
を備える電子地図表示装置。 - 請求項1または請求項2に記載の電子地図表示装置であって、
前記図形データには、更に、前記頂点データによって表される多角形が、少なくとも1つの内角が180度以上の角度をもつ多角形か否かを示す種別データが記録されており、
前記分割部は、前記種別データに基づき、前記頂点データによって表される多角形を前記複数の多角形に分割するか否かの判断を行う
電子地図表示装置。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子地図表示装置であって、
前記図形データには、更に、前記頂点データによって表される多角形の頂点数を示す頂点数データが記録されている
電子地図表示装置。 - コンピュータが表示装置に電子地図を表示するためのコンピュータプログラムであって、
少なくとも1つの内角が180度以上の角度をもつ多角形の全ての頂点について、該各頂点の座標と一意の頂点番号とを対応付けて記録した頂点データと、前記頂点データのうち前記180度以上の内角をもつ頂点と他の任意の頂点とを両端とする線分により、前記多角形を、すべての内角が180度未満である複数の多角形に分割する分割線分を表し、該分割線分の両端の座標を前記頂点番号によって表した分割線分データとが記録される図形データの記録された電子地図データを、ユーザから指定された地点に応じて前記コンピュータが所定の記憶部に入力する地図データ入力機能と、
前記コンピュータが、前記入力した電子地図データに含まれる図形データに記録された頂点データによって表される多角形を、前記分割線分データに記録された頂点番号に基づき、全ての内角が180度未満の複数の多角形に分割する分割機能と、
前記コンピュータが、前記分割された多角形毎に前記表示装置に描画を行う描画機能と
を前記コンピュータに実現させるコンピュータプログラム。 - 請求項5に記載のコンピュータプログラムであって、
更に、前記分割機能によって分割された多角形の頂点数が、当該コンピュータが描画可能な多角形の頂点数の上限値を超える場合に、前記分割後の多角形を、該多角形の頂点数が前記上限値以下になるまで更に分割する再分割機能を
前記コンピュータに実現させるコンピュータプログラム。 - 請求項5または6に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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