JP3970984B2 - コンクリート構造物の補強用成形板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物の補強用成形板に関するものであり、詳しくは、取り扱い性が容易で且つ補強用成形板同士の接合用部分の接着性が高く維持された補強用成形板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート構造物の補強方法として、特開昭52−123524号公報および特公昭53−43259号公報には、柱が被われる様に横断面がコの字型や半円型の鋼板製補強用板を配置し、溶接またはボルト・ナットにて補強用板の端縁部を接合して筒状にし、形成された補強用成形板の内側の空間部へモルタル又はコンクリートを充填する方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記の補強方法では、補強用成形板の配置の際に数多くの固定部材などが必要があり、また、多くの工数や手間が掛かるだけでなく、鋼板製補強用板の運搬・設置に重機が必要であるという欠点がある。さらに、溶接による場合は、火花対策が必要である。
【0004】
本出願人らは、上記の種々の欠点を解消するため、例えば、特願平9−116124号により、既設のコンクリート構造物の新規な補強方法を提案した。この方法は、基本的には繊維強化樹脂複合材から成り、既設のコンクリート構造物の補強すべき部分を被うことが可能な形状を備えた補強用成形板を使用する方法である。
【0005】
ところで、上記の補強方法では、輸送中または工事現場での取り扱い中に補強用成形板同士の接合用部分に油脂やゴミや充填用モルタル等が付着して接合用部分の接着性が損なわれるため、接合に際しては、接合用部分の清浄化処理が必要である。そして、表面が平滑な場合には、接着剤に対するアンカー効果を発揮させ、接合強度の向上を図るため、通常、サンドペーパーによる研磨が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、取り扱い性が容易で且つ補強用成形板同士の接合用部分の接着性が高く維持された補強用成形板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、既設のコンクリート構造物の補強すべき部分を被うための補強用成形板であって、当該補強用成形板は、繊維強化樹脂複合材から成り、2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより前記補強すべき部分を被うことが可能な形状を予め備えており、少なくとも、補強用成形板同士の接合用部分に離型性保護シートが積層され、以下の( i )〜( iv )の操作を含むコンクリート構造物の補強方法に使用されることを特徴とするコンクリート構造物の補強用成形板に存する。
( i )既設のコンクリート構造物の補強すべき部分の少なくとも1箇所の表面から所定の間隔となる位置に、補強すべき部分の長さに実質的に等しい長さの接合板を補強すべき部分の長手方向に沿って配設する操作。
( ii )接合板に補強用成形板の内側表面端部を接着剤により接合することにより、補強すべき部分を2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより補強すべき部分の表面から所定の間隔となる位置で被う操作。
( iii )離型性保護シートを剥離し、補強用成形板同士の接合用部分に接合部補強用樹脂強化繊維シートを接合する操作。
( iv )補強用成形板で被って形成された内側空間部にモルタル又はコンクリートを充填する操作。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の補強用成形板は、特願平9−116124号により提案された既設のコンクリート構造物の新規な補強方法において好適に使用される。したがって、先ず、本発明の補強用成形板を使用するコンクリート構造物の補強方法の概要について説明する。本発明における補強方法は、具体的には次の2つの態様が挙げられる。
【0009】
(1)既設のコンクリート構造物の補強すべき部分を2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより密着状態で被い、補強用成形板同士の接合用部分に接合部補強用樹脂強化繊維シートを接合する操作を含む補強方法。
【0010】
(2)既設のコンクリート構造物の補強すべき部分を2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより補強すべき部分の表面から所定の間隔となる位置で被い、補強用成形板同士の接合用部分に接合部補強用樹脂強化繊維シートを接合し、形成された内側空間部にモルタル又はコンクリートを充填する操作を含む補強方法。なお、以下、接合部補強用樹脂強化繊維シートは、樹脂強化繊維シートと略記する。
【0011】
上記(1)及び(2)の方法において、補強すべき部分は、通常、コンクリート構造物の補強すべき部分が全周面露出している柱、桁または梁である。そして、例えば、上記の柱は、通常、鉄筋コンクリート造であり、柱の下端と一体である下部躯体と、柱の上端と一体である梁と、梁と一体である上階の床とを備えている。
【0012】
上記の(1)及び(2)の方法で使用する樹脂強化繊維シートは、繊維シートに上記のマトリックス樹脂を含浸させて得られ、硬化後の強度が強化された一種の複合材であり、補強用成形板同士の接続に使用される。マトリックス樹脂の含浸量は、繊維シートの目付け及びその空隙含有率を考慮して適宜決定されるが、通常、補強用成形板の強化繊維含有率が10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%になる量とされる。
【0013】
上記の繊維としては、通常、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが使用されるが、引張強度や弾性係数および実用性の観点から炭素繊維が好ましい。そして、これらの繊維は、強度の観点から、通常、引き揃えられた長繊維から成る一方向材の繊維シートが使用される。そして、上記の繊維シートは、通常、複数枚重ねて使用され、その合計の目付は、通常100〜2000g/m2とされるが、実用的には200〜1200g/m2が好ましい。
【0014】
上記のマトリックス樹脂としては、通常、常温硬化型エポキシ樹脂、加熱硬化エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、中でも、常温硬化型エポキシ樹脂およびアクリル樹脂が好適に使用される。なお、後述の様に、樹脂強化繊維シートを硬化する前の状態で使用する場合は、上記の樹脂としては接着性を有する樹脂が好ましい。また、上記のマトリックス樹脂には、通常、遮蔽用充填材や顔料などが添加される。
【0015】
以下、コンクリート構造物の補強すべき部分を横断面が四角形の柱とし、断面がコの字型の樋状の補強用成形板を2つ組み合わせて上記の柱を被うことによりコンクリート構造物を補強する場合を代表として説明する。
【0016】
上記(1)の補強方法においては、通常、次の様な前処理が行われる。すなわち、補強用成形板で柱を被うに先立って、柱表面のレイタンス等の除去や柱の角部の面取りが行なわれる。また、レイタンス等の除去や面取り後には、パテによる不陸の補正やプライマーによる下地処理が行われる。
【0017】
そして、2つのコの字型の補強用成形板の開口部が相互に向き合い、かつ、補強用成形板の裏側面が柱の表面に密着する状態で上記の柱を被った状態で、補強用成形板同士の接合用部分に樹脂強化繊維シートを架け渡す様に配置して接合する。その際、補強用成形板と柱との間は、通常、接着剤を介して接合される。
【0018】
上記の樹脂強化繊維シートは、樹脂が硬化する前の状態および硬化した後の状態の何れの状態にても使用することが出来る。しかしながら、硬化する前の状態で使用する場合は、変形が容易なため補強用成形板の接合用表面への密着性が良いばかりでなく、含浸樹脂(マトリックス樹脂)による接着性があるため、接合に際しては別に接着剤が不要であるため好ましい。
【0019】
また、上記(2)の方法は、上記(1)の方法における前処理の際の粉塵や騒音の発生やシンナー等の臭気の問題がなく、従って、オフィスビルや住宅において居住者が居住している状態で行なう補強方法として優れており、本発明において推奨される方法である。上記(2)の方法は、具体的には、次の様に行われる。なお、以下の説明においては、モルタルの用語を以てモルタル又はコンクリートを代表する。
【0020】
上記(2)の方法においては、既設のコンクリート構造物の補強すべき部分の少なくとも1箇所、通常、柱の中心に対して略対向する2箇所の表面から所定の間隔となる位置に接合板を配設して使用するのが好ましい。この場合、補強すべき部分の表面から所定の間隔となる位置に、それぞれ補強すべき部分の長さに実質的に等しい長さの接合板を補強すべき部分の長手方向に沿って配設し、次いで、当該接合板に補強用成形板の裏面端部を接着剤により接合して補強用成形板で補強すべき部分を被い、形成された内側空間部にモルタル又はコンクリートを充填する。
【0021】
上記の接合板としては、通常、金属板が使用され、特に鋼板が好適に使用される。接合板の長手方向に延びる中心線上には、後述の植設ボルトの間隔に合わせて、植設ボルトと同数のボルト孔が穿設されている。接合板には、柱に取付けた際に下方に位置する部分にモルタル圧入用貫通孔や、かつ、接合板の下端部分および上端部分に後述の補強用成形板の取付用ねじ孔を設置することも出来る。上記の様に、接合板を使用することにより、補強用成形板を補強すべき部分の表面から所定の間隔となる位置で被うことが容易となる。
【0022】
上記の接合板を使用した場合、補強用成形板と柱との間に形成される空間部の厚さは、柱の全周に亙って実質的に一定に調整するのが容易である。その際、柱と補強用成形板との間隔は、通常0.5〜10cm、好ましくは1〜5cmとされる。上記の接合板の配設方法としては、以下の二つの方法を例示することが出来る。
【0023】
(i)植設ボルト及びナットで接合板を固定する方法、すなわち、先ず、接合板の配設位置に対応する補強すべき面上に複数の植設ボルトの基部を機械加工により埋め込んで植設する。具体的には、ボルト植設用の穴を穿設し、ボルトの基部を上記の穴に挿入し、ボルトの基部と穴との隙間にモルタルや樹脂などから成るアンカーを入れて柱にボルトの基部を固定し、植設ボルトとする。次いで、植設ボルトに、受けナット、ボルト孔が穿孔された接合板および締めナットを順次に嵌め、締めナットを緊結して接合板を固定する。その際、受けナットの位置の調節により、補強すべき部分の表面と接合板との間隔を調節することが出来る。
【0024】
(ii)上記のボルトの植設の際、予めボルトが溶接された金属製基板を補強すべき部分の表面に接着剤にて接合する方法。斯かる方法は、上記のボルトの植設の際、発生する騒音を抑えたい場合に有効である。
【0025】
上記の接合板表面に接着剤で補強用成形板を接合した際、補強用成形板同士の接合用部分の外側面上に押え板を載置し、ボルト及びナットで押え板を緊結するのが好ましい。具体的には次の様に行なう。先ず、両補強用成形板の端部裏側面に接着剤を塗布した後、接合板の固定に使用していた締めナットを外し、ボルト孔が穿孔された金属製の押え板および締めナットを順次に嵌め、補強用成形板同士の接合用部分を接合板と押え板とで挟んだ後、締めナットにより押え板を緊結して挟圧する。斯かる操作により、柱と補強用成形板との間の空間部にモルタルを充填する際に補強用成形板と接合板との接合部の強度を一層高めることが出来る。
【0026】
また、柱と補強用成形板との間の空間部にモルタルを充填する際、補強用成形板の変形(膨らむこと)を防止するため、補強用成形板の外側には、木製の角材が井桁状に結合されたバタ材や平板などを配設するのが好ましい。
【0027】
モルタルの充填は、接合板の下方のモルタル圧入用貫通孔にモルタル圧入用管を接続して行ってもよいし、また、モルタル圧入用管から上部の空隙部分を経由して直接充填してもよい。なお、モルタル圧入用管はモルタル圧送装置を介してモルタル供給源に接続されている。
【0028】
そして、モルタルが硬化した後、バタ材、締めナット及び押え板を外し、必要に応じて接合板から突出した植設ボルトを切断する。その後、先ず、接合板上の2つの補強用成形板の両端間に形成されている窪み部をパテにて埋めてパテの外側面を補強用成形板の外側面と面一にする。次いで、補強用成形板同士の接合用部分を覆う程度の比較的短い樹脂強化繊維シート(A)を当該接合用部分に架け渡す様に配置して接合する。この際、樹脂強化繊維シートが硬化する前の状態で使用される場合は、密着性がよく、含浸樹脂による接着性があるため、別に接着剤は不要である。
【0029】
さらに、必要に応じ、上記の比較的短い樹脂強化繊維シート(A)の接合部分の上から更に覆う様に、より広い面積の樹脂強化繊維シート(B)を接合することが出来る。この際、上記の接合の範囲を柱表面の内の補強用成形板の接合部が形成された平面全体を被うことが出来る範囲とする場合は、柱表面の継ぎ目が目立ち難くすることが出来る。斯かる場合にも使用される樹脂強化繊維シートは上記の様に硬化する前の状態で使用するのが好ましい。
【0030】
前述した補強用成形板と接合板との接合、および、補強用成形板と補強すべき部分の表面との接合に使用する接着剤としては、通常、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂系の接着剤が使用される。
【0031】
次に、本発明の補強用成形板について説明する。本発明の補強用成形板は、繊維強化樹脂複合材から成り、2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより上記の様な(1)及び(2)の補強方法で補強すべき部分を被うことが可能な形状を予め備えており、少なくとも、補強用成形板同士の接合用部分に離型性保護シートが積層されていることを特徴とする。
【0032】
上記の繊維強化樹脂複合材とは、マトリックス樹脂中に繊維を配合して硬化後の強度が強化された複合材である。上記の繊維としては、通常、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが使用されるが、引張強度や弾性係数および実用性の観点から炭素繊維が好ましい。
【0033】
上記の繊維は、通常、引き揃えられた繊維から成る繊維シートの形状で使用される。斯かる繊維シートは、一方向材、織布、不織布などであってもよい。また、上記の繊維シートは、通常、複数枚重ねて使用され、その合計の目付は、通常100〜2000g/m2とされるが、実用的には200〜1200g/m2以上が好ましい。
【0034】
上記の繊維強化樹脂複合材に使用されるマトリックス樹脂としては、通常、常温硬化型エポキシ樹脂、加熱硬化エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂などの硬化性樹脂が挙げられるが、常温硬化型エポキシ樹脂またはアクリル樹脂が好適に使用される。斯かるマトリックス樹脂には、通常、遮蔽用充填材や顔料などが添加される。
【0035】
繊維強化樹脂複合材は、通常、上記の繊維シートにマトリックス樹脂を含浸させて製造される。その含浸量は、繊維シートの目付け及びその空隙含有率を考慮して適宜決定されるが、通常、補強用成形板の強化繊維含有率が10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%になる量とされる。
【0036】
上記の補強用成形板の具体的な形状は、例えば、コンクリート構造物の補強すべき部分が角形の柱、桁または梁の場合は、コの字型、L字型などの樋状とされ、円形の柱、桁または梁の場合は、円弧型、U字型などの樋状とされる。
【0037】
補強用成形板は、その断面形状に応じた成形型を使用した公知のハンドレイアップ法により繊維強化樹脂複合材を製造することが出来る。すなわち、成形型上に上記の繊維シートを配置し、この繊維シートにマトリックス樹脂を含浸させて硬化させる方法、または、予め熱硬化性の樹脂を繊維シートに含浸させて半硬化状態のシート状とした材料(プリプレグ)を成形型上に配置し加熱硬化させる方法により製造される。
【0038】
上記のハンドレイアップ法による成型の際に、少なくとも、補強用成形板同士の接合用部分に離型性保護シートが積層され、補強用成形板と一体化される。補強用成形板同士の接合用部分とは、補強用成形板に樹脂強化繊維シートが接合される部分であり、補強用成形板の端部の外側表面である。そして、2つの補強用成形板は、その接合用部分に樹脂強化繊維シートを架け渡す様に接合することにより接続される。上記の接合用部分の長さは、成形板の厚さにもよるが、通常5〜40cm、実用的には5〜30cm程度である。
【0039】
なお、離型性保護シートは、補強用成形板同士の接合用部分(各補強用成形板の端部の外側表面)の他に次の様な接合用部分にも積層するのが好ましい。すなわち、前記(1)の補強方法において補強用成形板を補強すべき部分の表面と接合する場合は補強用成形板の裏面全面、前記(2)の補強方法においては、上記の接合板に対する補強用成形板の接合用部分(各補強用成形板の端部の内側表面)、および、補強用成形板同士を樹脂強化繊維シート(A)で接合したその上に更に樹脂強化繊維シート(B)を接合する場合は樹脂強化繊維シート(B)に対する補強用成形板の表面にも離型性保護シートを積層するのが好ましい。
【0040】
上記の離型性保護シートとしては、補強用成形板に積層された後、通常の取扱中に剥がれない程度の適度な接着性を有し、しかも、剥離する際に一体的な剥離が容易なシート状材料が使用される。そして、具体的には、表面に離型処理を施したいわゆる離型紙の他、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフイルム、これらの繊維を使用した織物や編物などが挙げられる。
【0041】
特に、離型性保護シートとして織物や編物を使用した場合は、剥離後の表面にシボ面や梨子地面が形成され、その結果、その表面形状により接着剤に対するアンカー効果が生じるので好ましい。また、フイルムを使用する場合は、離型性のコントロールのため、コロナ放電処理やエンボス加工などの表面処理を施してもよい。上記の離型性保護シートは、剥離の際、切断しない程度の強度を有することが必要であり、その厚さとしては、通常50〜500μm、好ましくは100〜300μmである。
【0042】
しかしながら、上記の補強用成形板には、前述した各種の接合用部分以外の範囲に離型性保護シートを積層してもよい。例えば、外側の全表面に樹脂強化繊維シートを接合しない場合でも離型性保護シートを積層することが出来る。この場合、離型性保護シートとして織物や編物を使用することにより、剥離後の表面にシボ面や梨子地面が形成され、塗料の塗装の際にアンカー効果が発揮される。
【0043】
以上の様に、本発明の補強用成形板は、既設のコンクリート構造物の補強の際の少なくとも補強用成形板同士の接合用部分に離型性保護シートが積層されて成り、接合の直前に離型性保護シートを剥離して清浄な面が接合に供される。したがって、上記の補強用成形板は、輸送中または工事現場での取り扱い中に補強用成形板同士の接合用部分に油脂、ゴミ、充填用モルタル等が付着しないため、使用に際して接合用部分の清浄化処理が全く不要である。また、離型性保護シートとして織物や編物を使用した場合は、剥離後の表面にシボ面や梨子地面が形成され、接着剤に対するアンカー効果が発揮されるため、サンドペーパーによる研磨も不要となる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、補強用成形板同士の接合用部分に離型性保護シートを積層しておくことにより、輸送時および取り扱い時における接合用部分の汚損が防止される。したがって、本発明によれば、取り扱い性が容易で且つ接合用部分の接着性が高く維持された補強用成形板が提供され、本発明の工業的価値は大きい。
Claims (4)
- 既設のコンクリート構造物の補強すべき部分を被うための補強用成形板であって、当該補強用成形板は、繊維強化樹脂複合材から成り、2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより前記補強すべき部分を被うことが可能な形状を予め備えており、少なくとも、補強用成形板同士の接合用部分に離型性保護シートが積層され、以下の( i )〜( iv )の操作を含むコンクリート構造物の補強方法に使用されることを特徴とするコンクリート構造物の補強用成形板。
( i )既設のコンクリート構造物の補強すべき部分の少なくとも1箇所の表面から所定の間隔となる位置に、補強すべき部分の長さに実質的に等しい長さの接合板を補強すべき部分の長手方向に沿って配設する操作。
( ii )接合板に補強用成形板の内側表面端部を接着剤により接合することにより、補強すべき部分を2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより補強すべき部分の表面から所定の間隔となる位置で被う操作。
( iii )離型性保護シートを剥離し、補強用成形板同士の接合用部分に接合部補強用樹脂強化繊維シートを接合する操作。
( iv )補強用成形板で被って形成された内側空間部にモルタル又はコンクリートを充填する操作。 - 接合板との接合用部分に離型性保護シートを積層して成る請求項1に記載の補強用成形板。
- 離型性保護シートが、繊維を使用した織物シートである請求項1又は2に記載の補強用成形板。
- 既設のコンクリート構造物の補強すべき部分を補強用成形板で被う補強方法であって、前記補強用成形板として、繊維強化樹脂複合材から成り、2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより前記補強すべき部分を被うことが可能な形状を予め備えており、少なくとも、補強用成形板同士の接合用部分に離型性保護シートが積層された成形板を使用し、以下の( i )〜( iv )の操作を行うことを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
( i )既設のコンクリート構造物の補強すべき部分の少なくとも1箇所の表面から所定の間隔となる位置に、補強すべき部分の長さに実質的に等しい長さの接合板を補強すべき部分の長手方向に沿って配設する操作。
( ii )接合板に補強用成形板の内側表面端部を接着剤により接合することにより、補強すべき部分を2つ以上の補強用成形板の組み合わせにより補強すべき部分の表面から所定の間隔となる位置で被う操作。
( iii )離型性保護シートを剥離し、補強用成形板同士の接合用部分に接合部補強用樹脂強化繊維シートを接合する操作。
( iv )補強用成形板で被って形成された内側空間部にモルタル又はコンクリートを充填する操作。
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