JP3970372B2 - 金属酸化物粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属汚染が少なく純度が高く小粒径且つ粒度分布の狭い不定形金属複合酸化物及びその製造に関する。
【0002】
【従来の技術】
充填材等各種の用途に用いられる金属酸化物粉末は、従来主に、結晶性シリカ、溶融シリカ等の単一成分またはケイ砂、アルミナ、硼素、アルカリ金属等原料粉体の溶融により得られたガラス等を粗砕機で粉砕した後、微粉砕機で粉砕して得られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特に、透明または半透明の樹脂組成物を作るための充填材としては、屈折率が樹脂の屈折率と一致するか近いものが必要となる。この場合、充填材の粒子の大きさにより樹脂組成物表面の滑らかさが異なる。特に、成形後樹脂組成物を研削した場合に、研削面の光沢性に著しく影響を与える。また、研削面を研磨するときの研磨性及びその光沢性は粒径に大いに依存する。
光沢性については研磨面の正反射の割合が多いほど光沢性が高く、乱反射が増えるに従い光沢性が減少する。乱反射の割合は不定形の粒径の大きい粒子が多いほど高く、粒径が小さくなるに従い減少する傾向にある。また、球形のような表面の滑らかな粒子は正反射の割合が高くなり、光沢性は高くなる。
【0004】
この用途では一般的には溶融法で作られたガラスの粉末が使われているが、溶融法で作られるガラスには結晶化等の問題から、珪素以外の金属成分を含有させる場合にはその組成に制約が多い。また、粉砕で得られるガラス粉末は、一般に粒度分布の幅が広く、しかも透明性が高く着色のない樹脂と混合した場合にはガラス粉末に含まれる金属が樹脂組成物を着色したり、透明性を低下させたりすることがある。これはガラスの溶融塊を粉砕して微粉末にする際に粉砕機に使用されている金属が磨耗して粉砕粉末に付着し、粉砕機からの金属汚染が著しいためと考えられるが、特に歯科用材料分野に用いられる無機粉末の充填材においては着色及び透明性の低下は望ましくない。
【0005】
このような樹脂の着色や透明性の低下が、粉末が金属で汚染されていることによるのであれば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸で粉末を洗浄して混入金属を除去したり、構造が簡単なボールミルをアルミナ製又はアルミナライニングした装置で粉砕することが考えられる。しかし、酸による金属除去を行うには湿式化学処理及び乾燥工程を要し、また処理した微粉が凝集するためこれを更に解砕する工程が必要であり、精製には多大な費用がかかり実用的ではない。また、ライニングしたボールミルを使えば金属の汚染はある程度は防止できるが、微粉砕には長時間を要する。しかも、平均粒子径が小さくなっても一部粗大粒子が残り、粒度分布が著しく広いものとなるという問題がある。このため粉砕途中で粗大粒子と微粉とを分離することが必要となる。ところがこれら無機微粉は一般的に静電気を帯びやすく、目の細かいスクリーンを通過させることははなはだ困難である。特にスクリーンにステンレス等の金属材質を使用した場合はこの工程で金属汚染が起こることが考えられる。また風力分級をするとすれば、分級機の構造上接粉部をすべてセラミックライニングすることは困難なものが大部分であり、実質的に目的を達成できない。
【0006】
一方、特公平5−59043号公報にはゾル−ゲル法により1μm以下の屈折率を調整した球状粒子を作ることが記載されている。得られる粒子は凝集しているが、凝集を解すことにより、容易に微粒子となるため金属の汚染は少なく、球状に由来する表面平滑性のため光沢性及び透明性がよいと考えられる。しかし、球状粒子は他の形状の粒子に比べその比表面積が小さく表面が滑らかなため、樹脂と混練して作った樹脂組成物は、球状粒子と樹脂との界面で破断が早く起こる。このため粉砕等の手段で得られる不定形粒子を充填材にした樹脂組成物に比べ、曲げ強度、引っ張り強度、耐磨耗性が劣り、高強度の必要とする用途には問題があることがわかった。
【0007】
また、溶融ガラスに伴う組成上の制限を解決し、ガラス組成を自由に選択しうる方法として、シリコンアルコキシドと他の金属アルコキシド等から複合アルコキシドを作り、加水分解、縮合してゲルを作りこれを用いる方法が検討されている。この方法では得られたゲルを焼成し、粉砕して珪素以外の金属を含有する金属複合酸化物ガラス粉末を製造する。しかしこの場合も粉砕機は鉄またはステンレススチールで作られているため、粒子を粉砕する段階で粉砕機からの金属汚染が生じ、純度の高い粉末が得られないことになる。このためこれらの金属汚染された粉末を樹脂組成物にしたときにも、着色や不透明性等の問題が発生し、透明、あるいは色調のきれいな樹脂組成物が得られなかった。
上述のように、特に美観に優れた樹脂組成物を得ることのできる充填材として有用な、不定形金属複合酸化物粉末が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決し、樹脂組成物の充填材とした際に研磨面の光沢がよく、着色や透明性の低下のない不定形金属複合酸化物粉末を得るべく鋭意検討を重ねた。その結果、光沢性は粒子の平均粒径が2μm未満で最大粒子径は10μm以下のものがよいことを見出した。また、ゾルゲル法で得られる金属酸化物の乾燥ゲルは硬く、金属に対して研磨材と同じ効果を発揮していることが分かった。これでは小さい粒子を得るためには粉砕工程で金属汚染を生じ、配合する樹脂の透明性に影響すると考えられた。そこで粉砕工程での金属汚染を実質的に除去し、微粒子を得る手段について更に検討を重ねた。
【0009】
その結果、珪素アルコキシド等を原料としてゾルゲル反応により得られたゲルを粉砕、焼成して不定形金属複合酸化物微粒子を得る際、装置の特定部位を特定純度のセラミックスあるいは樹脂とすることにより製造工程での金属汚染を防止できることを見い出した。
すなわち、本発明は、珪素と珪素以外の周期律表第IV族の金属とを含有する複合酸化物からなる平均粒径が2μm未満、最大粒径が10μm以下の不定形金属酸化物微粒子に存する。本発明で得られる金属複合酸化物粉末は、焼成後も非晶質を保ち、粉砕工程からの金属の汚染のない不定形金属複合酸化物粉末とすることができるのである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(原料)
まず、本発明で用いられる珪素アルコキシドは一般式R′nSi(OR)4-nで表される化合物のうち1種以上である。さらに、これらの化合物を加水分解してなる加水分解物、加水分解及び縮合してなる低縮合物が、いずれも特に限定されず使用できる。一般式中のR及びR′はアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好適に使用される。R及びR′は同一でも相異なってもよい。また、n=0,1,2いずれも使用可能である。特にn=0の場合、ゲル中に有機基が残存せず、好適である。
【0011】
珪素以外の第IV族の金属のアルコキシドとしてはTi(OC3H7)4、Ti(OC4H9)4、Ti(OC8H17)4、Ti(OCH3)4、(OC3H7)2Ti(C5H7O2)2、Ti(C5H7O)4等のチタニウムアルコキシド、これらのアルコキシドのTiをZrで代替したジルコニウムアルコキシドのうちの1種以上が挙げられる。
【0012】
また第I族の金属のアルコキシドとしては、NaOCH3、NaOC2H5、NaOC3H7等のナトリウムアルコキシド及びこれらのアルコキシドのNaをLi、K等で代替した第1族アルコキシド等を用いることができる。
【0013】
(珪素アルコキシドの部分加水分解)
本発明の不定形金属複合酸化物微粒子を得る方法の一例を、以下に説明する。まず、これらの原料アルコキシドのうち、まず珪素アルコキシドを部分加水分解する。
珪素アルコキシドは、他の金属アルコキシドに比べ安定性が高い。そのため他の金属アルコキシドと一緒に加水分解をすると、珪素アルコキシド以外のアルコキシドが先に反応が進行し、沈殿物を析出する等により、均質な複合酸化物が得られない。これを防ぐために先ず、珪素アルコキシドのみを加水分解するのである。部分加水分解は公知の手段で行うことができる。例えば、先ず珪素アルコキシドをアルコールで希釈し、塩酸等の無機酸またはマレイン酸等の有機酸を触媒として、アルコキシド1モルに対して水0.1〜2.0モル、通常1モルを添加し、部分加水分解縮合して珪素アルコキシド低縮合物とする。
水が残存すると、後述するアルコキシド複合体を得る際、シリコン以外の金属酸化物成分が析出することがあるので、アルコキシド1モルに対し水0.1〜2.0モルの範囲とし、酸触媒下で行うのが好適である。
【0014】
(複合金属アルコキシドの作製)
こうして得られた珪素アルコキシド低縮合物に、珪素以外の第IV族金属のアルコキシドのうち1種以上、又は第IV族の金属のアルコキシド及び第I族の金属のアルコキシドのうち1種以上を添加すると、珪素アルコキシド低縮合物と反応して、複合金属アルコキシドが得られる。得られた複合金属アルコキシドは、主に珪素アルコキシド低縮合物の末端にあるOH基に反応速度の速いIV族アルコキシド及びI族アルコキシドが反応して生成したものであるため、第IV族金属アルコキシド及び/またはI族金属アルコキシドが均一に分散されており均質性の高いものである。このため後述するように、これを加水分解して得られるゲルは均質であり、またこのゲルを高温で長時間焼成しても結晶化は起りにくい。この複合金属アルコキシドを、以下に説明する様に加水分解する。
【0015】
加水分解は−10℃〜80℃の温度範囲で上記複合アルコキシドを攪拌下に水をアルコキシド1モルに対し2モル〜100モルの範囲、好ましくは2.5〜50モル、最も好ましく3〜10モルは添加する。また加水分解及び縮合の触媒は使わなくてもかまわないが、反応時間を短縮するためには使用した方が好ましい。触媒としては、加水分解に使用する水に塩酸、硫酸、燐酸、硝酸等の無機酸または蟻酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸等の有機酸をアルコキシド1モルに対し0.001〜1モル比添加する。
加水分解液はその後徐々に縮合し、ゲル化し始める。ゲル化の時間は1時間〜24時間の範囲が好ましい。
【0016】
珪素アルコキシドと他の金属のアルコキシドとの配合割合は、モル比で99:1から50:50、好ましくは99:1から60:40である。その理由はシリカは結晶化しにくいがシリカ以外の第IV族金属酸化物は結晶化しやすく、非晶質複合酸化物を容易に得るには上記範囲の配合割合とするのが望ましいためである。また、珪素以外の他の金属の中の、第IV族アルコキシドと第I族アルコキシドとの配合割合は100:0から40:60モル比、好ましくは100:0から60:40モル比である。その理由は第I族を加えることにより、第4族金属の結晶化を抑制する効果はあるが、その添加量が多くなると得られる酸化物粉末が水に接触したとき、これら第I族金属成分が溶け出し、樹脂組成物の強度を低下させる等の弊害が起こり易く、また酸化物粒子の軟化点が下がり焼成中に粒子内部の有機物除去される前に細孔がつぶれ、有機物が内部に閉じこめられ易くなるためである。
【0017】
得られたゲルは、乾燥を行う。ゲルを取り扱うとき、ゲルの一部が壊れるが、積極的に砕いても良い。乾燥方法は一般に行われている乾燥方法が制限なく使うことができる。アルコール等の有機溶媒を含むことから、引火の安全性を考慮して減圧加熱乾燥、または窒素気流乾燥機が一般的には使用される。数mmの塊として乾燥ゲルは得られる。
【0018】
(粉砕)
粉砕機は接粉部をセラミックス及び/又は樹脂とすることができるものが好ましい。粉砕効果が良いものであれば形式は問わないが、粉砕速度が速く、粒度分布の狭い粉砕物を得易いジェットミルはこの要件を満たした粉砕機である。
しかし、ジェットミルは「粉体工学研究会誌,6 438 (1969)」に記載されているように約3μmで粉砕が進まなくなってしまい、2μm未満にすることは困難である。
ボールミルも微粉にするときに使用される粉砕機であるが、一般的に無機粉体をボールミルに入れ粉砕すると、静電気が発生し器壁、ボール等に付着して、粉砕が進む粒子と付着した粉末中に埋もれ粗粒子として残るものがある。そのため平均粒子としては2μm未満にすることは可能であるが、最大粒子が10μm以下にすることは困難である。
【0019】
これ等を解決するには乾式粉砕したゲル粉末を、溶媒に懸濁して湿式粉砕で更に微粉砕することが有効であることを本発明者らは見出した。湿式粉砕機は円筒形容器に数センチメートルから0.1ミリメートルの粉砕メディアを充填し、攪拌装置でメディアを攪拌しながら粉砕する型式のもので、円筒容器を縦または横にして使用し、懸濁液を連続式に供給してもよいし、バッチ式いずれも使用可能である。
メディアの接触する円筒容器の内面及び攪拌装置の攪拌翼、シャフトは耐磨耗性のあるセラミックスや樹脂でライニングし、金属面がメディアと接触しないようになっていることが必要である。
【0020】
粉末を懸濁する溶媒は水またはアルコール等の毒性が少なく、粉末と反応しない沸点が50℃〜150℃有機溶媒が特に制限なく使用できる。また懸濁液の粉末の割合は、粉末の物性により異なるが、粉末の割合が高くなる方が生産性はよいが、懸濁液の粘度が高くなり過ぎると操作性が悪くなるため1〜70wt%、好ましくは5〜60wt%が効率的な割合である。
乾式粉砕機及び湿式粉砕機は一般的にステンレススチール製である。金属製の粉砕部や攪拌機は高速で硬い粉末やメディアが高速で衝突する接粉部やメディア接触部は金属材料を磨耗し、汚染の主原因になることが、本発明者により見いだされた。このため耐磨耗性のあるセラミックス製または金属部分をセラミックスであって特定磨耗率のものでライニングしたものを用いると汚染を著しく防ぐ効果を出すことが本発明者らにより判明した。すなわち磨耗率が、空ずり磨耗率で100ppm/h以下のものである。好ましくは50ppm/h以下である。
【0021】
ここで空ずり磨耗率とは以下の測定方法により求められる値である。
ボールミル
ミル材質:ウレタンライニング
ミル内容積:2000cc
ボールサイズ:φ10mm
ボール充填量:1000cc
水充填量:800cc
ミル回転数:90rpm
テスト時間:48時間
【0022】
空ずり磨耗率が100ppm/hを超えるセラミックスの場合、上述の方法により得られた複合酸化物の乾燥ゲルによる磨耗が実質的に無視できず、金属不純物混入のおそれが大きいことが本発明者らにより見いだされたものである。一方、空ずり磨耗率が上記の範囲にあるセラミックスを用いれば、複合酸化物の乾燥ゲルによっても実質的に不純物混入が無視できることが判明したものである。なお、樹脂を用いた場合には元々樹脂中の鉄、クロム、ニッケルの含有量は無視できる(特に鉄の場合は上述の一般的な樹脂のうち接着強度が高く好適なウレタン樹脂やエポキシ樹脂であっても検出限界の1ppm以下である。)一方、強度的に問題を生ぜぬよう、セラミックスの隙間部分等、強度上の問題がない部分に用いるのが好ましい。
【0023】
使用するセラミックスの種類は特に制限はなく、例えば炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア等であって上記の空ずり磨耗率のものが挙げられる。
使用される樹脂の種類はは特に限定されるものではなく、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の各種の有機樹脂が挙げられる。
これらセラミックス及び樹脂は高純度であることが好ましい。特に好ましくは鉄、クロム、ニッケルの合計が5000ppm以下、更に好ましくは2000ppm以下とする。
【0024】
接粉部やメディア接触部がセラミックス及び/又は樹脂であるとは、接粉部及びメディア接触部の実質的に全ての部分をこれらの材質とするのが好ましい。具体的にはこれらの材質でコーティング、ライニング等を施してもよいし、これらの材質で部材を製造してもよいが、強度の点からコーティング、ライニングするのが好ましい。コーティング、ライニングの厚さは0.01mm以上を要する。好ましくは0.05mm以上である。
接粉部とは、粉砕に供する乾燥ゲルが接触する部分をいい、具体的には粉砕機本体の内部及び内部に取り付けられている部品及び粉砕機の入り口、出口ノズル部等、更に粉体供給装置内部、粉砕品捕集機内部及びこれらの接続配管が相当する。メディア接触部は、ベッセル内面、攪拌機表面及びメディア分離部がこれに当たる。
【0025】
メディアとは湿式粉砕機で実質的に粉砕に寄与するもので、ガラス、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア等のビーズが一般的に使用される。場合によっては天然の砂例えばオッタワサンドまたはセラミックス製のリング等が該当する。
特に高速で粉体が移動し衝突する粉砕ゾーン等の部分ではセラミックとセラミックの接合部に小さな隙間があってもそこから粉砕装置の金属を磨耗させ金属汚染の原因になる。したがって、例えばセラミックス材料でのライニングを行っても作製上または形状からセラミックス同士の接合部に隙間ができる場合には、この様な極狭い隙間にも微粉末が入り込み金属を磨耗し粉末の金属汚染を起こさせるため、隙間に樹脂を充填したり樹脂コーティングすることにより金属面が露出しないようにすれば、実質的に製造工程からの汚染を防止することができ、好ましい。これら合成樹脂は、粉砕中に磨耗して粉砕微粒子中に混入しても、乾燥ゲルを焼成するときに、混入した樹脂は燃焼除去され、できあがった粉末中には痕跡を残さないためである。
【0026】
また、ジェトミルは粉砕時に空気、窒素ガス等の圧縮気体をノズルから高速で噴射して、粒子同士の衝突により粉砕するが、この圧縮気体に錆や油等の不純物が入っていると粉砕粒子を汚染する原因となる。特に空気を圧縮すると空気中の水蒸気が凝縮し、水滴となり配管内に溜まったりする。これらの水が配管の腐食を進め、錆を発生させる原因になる。この様な湿った気体を圧縮する場合は、圧縮気体を冷却し、生成した微小水滴を除去した後使用することが好ましい。錆や圧縮機からの油分に対しては配管途中に気体濾過器を設置して、錆や油分を除去することは粉末の汚染防止に効果がある。また、気体濾過器と粉砕機の間は錆の発生を防止すると言う観点からステンレススチール製配管を使用することが好ましい。
【0027】
原料の粉末は一般的にホッパー部と定量供給部を通り粉砕部に導入される。ホッパー部をセラミックでライニングしても良いが、粉末との衝突速度が速くないことから、樹脂でのライニングでも効果がある。また、定量供給機の粉体を強い力で押しつける部分はセラミックスが磨耗防止の観点から好ましい。粉砕した粒子が金属により汚染されないものなら形式は問わない。これらの要求に応えられものとしては特に限定されるものではないが、一般的にはバッグフィルターが使われる。
【0028】
(焼成)
上記粉砕乾燥ゲルは微細な細孔を有しており、粒子の強度や物性安定化のため焼成する。焼成により細孔がつぶれるため粒径は小さくなるが、細孔がなくなるため比表面積は小さくなる。焼成方法は特に限定されず、公知の方法で400〜1400℃で焼成すればよい。
乾燥ゲルは有機物を含むため焼成時に酸素が十分に存在する条件で行うとよい。乾燥ゲルは有機物を含有している。この有機物が粒子内部に閉じ込められると炭化し灰白色〜黒色の粉末となるので、これを避けるために有機成分が燃焼しかつ細孔が存在する400℃から800℃の範囲では、酸素の存在下で焼成を行い有機成分を分解及び燃焼により除去するのが望ましい。粉砕機から混入してきた磨耗樹脂はこの温度域で燃焼除去されてしまい、実質的に粉砕機からの汚染を除いてしまう。この温度範囲超える領域では酸素が存在しても、しなくてもかまわない。
【0029】
焼成温度は粒子の組成によって異なるが、必要温度は焼成によって比表面積が一定値になる温度以上でまた焼成により結晶化しない温度以下で行えば、非晶質とすることができる。
この様に焼成して、本発明の金属複合酸化物粉末を得ることができる。すなわち珪素と珪素以外の周期律表第IV族の金属とを含有する複合酸化物からなる平均粒径が2μm未満、最大粒径10μm以下の不定形金属酸化物粉末である。更には、鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が200ppm以下の不定形金属酸化物粉末とすることもできるのである。これは珪素及び珪素以外の周期律表第IV族の金属のうち一種以上とを含み、更に周期律表第I族の金属のうち一種以上をも含んでいてもよい酸化物から成るものである。
【0030】
鉄、クロム、ニッケルといった金属不純物を多く含む粉末をシランカップリング剤で処理し、樹脂組成物にするとシランカップリング剤が変質し黄色〜茶色に着色することがあり、特に透明性または半透明性の樹脂組成物にしたとき、この着色が視覚的に拡大される。また、これら不純物が金属粉の状態で粉末を汚染していると樹脂組成物が淡灰色〜黒色となり著しく透明性の劣化を起こし、不透明となる場合もあることが判明した。これに対し、本発明の金属複合酸化物粉末は、このような問題を生ずることはなく、透明性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
以下の実施例から明らかなように、本発明の金属複合酸化物粉末を樹脂組成物とし、研削及び研磨した表面の光沢度を後述の方法で測定し、目視による光沢性と比較すると、光沢度が50以上、更には60以上とすることもでき、優れた光沢性を有することが認められる。
【0031】
光沢度と粒子の大きさの関係は、平均粒径が2μm未満、最大粒径が10μm以下で光沢度が50以上とすることができ、光沢性に優れていることがわかる。好ましくは平均粒径1.5μm以下、より好ましくは平均粒径1〜0.1μmとすることもできる。最大粒径は10μmであるが、好ましくは8μm以下、6μmとすることもでき、好ましい。不純物含有量は鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が200ppm以下とするのが好ましく、更に好ましくは100ppm以下とすることもできる。このような本発明の金属複合酸化物粉末は、非晶質でかつ粒径分布の幅が小さい、製造工程からの金属汚染のほとんどない不定形のすぐれた物性を有するものとすることができ、歯科用充填材、半導体封止材等のフィラーとしても最適なものである。
【0032】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳細に示す。粒子の性状は次の方法により測定した。
(1)粒子径及び粒子径分布の標準偏差値
粒径分布は「Microtrac」(FRA)(日機装(株)製)レーザ回折法で測定した。
(2)比表面積
BET法
「湯浅モノソーブ」(湯浅アイオニックス製)を使用し、窒素ガス吸着量を測定し算出する。
【0033】
(3)金属不純物
複合酸化物を白金皿に3g採り、高純度硫酸1mlを添加し、高純度フッ酸を加えながら加熱して、シリカ分を分解除去した後、25mlに定容とする。これをICP-AESで測定する。
なお、今回の測定での検出下限界はFe 0.1ppm、Cr 0.2ppm、
Ni 0.5ppmであった。
(4)青色反射率による白度
粉末13gを採り、ジメタクロキシエチルトリメトキシヘキサメチレンジウレタン(UDMA)8gと混練してペーストとする。ペーストを10mmの厚さにして、「SMカラーコンピューター」(スガ試験機製)で青色反射率を測定する。
【0034】
(5)樹脂組成物
ジメタクリロキシエチル トリメチルヘキサメチレン ジーウレタン(UDMA:新中村化学社製)とトリエチレングリコール ジメタクリレート(TEGDMA:新中村化学社製)を70:30(wt%)の比で配合したモノマーに光増刊剤としてカンファキノン(Aldrich社製)0.5wt%、還元剤としてN,Nージメチルアミノエチルメタクリレート(東京化成社製)0.5wt%を添加して調整しレジンモノマーを調整した。γーメタクリロキシプロピル トリメトキシシラン(日本ユニカー社製)で充填材処理した後、レジンモノマーと混練して樹脂組成物とする。樹脂組成物を成形した後、可視光照射器エコライト(ヨシダ社製)にて60秒照射して硬化する。
(6)光沢度
日本電色工業社製VGー2000を使用し、JIS規格Z8741 方法3に準じて測定する。
【0035】
(実施例1)
ガラス製反応器にエタノール100gと0.002Nの塩酸18g(内水1mol)を加え60℃に加熱した状態でシリコンテトラエトキシド208g(1mol)を加え、30分間攪拌しシリコンテトラエトキシドを部分加水分解して低縮合物とした。次にn−ブタノール20wt%を含むジルコニウムテトラn−ブトキシド(松本製薬工業(株)製)を純量で52.1g(0.136mol)を加え、更に10分間攪拌した。
【0036】
この様にして得た複合金属アルコキシドに25℃で0.002Nの塩酸を90g(5モル)加え1時間攪拌して加水分解した。加水分解液をほうろう製バットに移し、3時間熟成した。バット内はゲル化していた。これを150℃の真空乾燥機で乾燥した。乾燥ゲルはケイシングを炭化珪素でライニングし、隙間をウレタン樹脂で埋め、空気ノズルはアルミナ製のジェットミル「STJ-200」(セイシン製)を使い、空気圧7kg/cm2で粉砕した。粉砕粒子は平均粒径3.2μm最大粒子10.5μmの白色微粉末であった。
【0037】
この粉末をイソプロピールアルコール(IPA)に固形分が30wt%になるように懸濁液を調整し、ジルコニアライニングしたベッセルで攪拌機はジルコニアとウレタン樹脂でライニングした単頭式サンドクラインダー1/4G(アイメックス社製)を使い、メディアは0.2mmのジルコニアを使い30分粉砕した。平均粒径0.98μm、最大粒子は5.9μmであった。
この懸濁液を真空乾燥機に入れ、アルコールを蒸発させ白色の粉末を得た。
この粉末を石英皿に入れ、空気を通しながら、電気炉で1000℃まで加熱し、1時間ごとにサンプルを採取し、3時間焼成した。焼成した粉末は白色の微粉末で、これをBET法で比表面積を測定したところ35m2/gで一定であった。
【0038】
また蛍光X線分析によるとZrO2含有比率は12mol%で仕込量から計算したものと一致した。
また、金属不純物分析をでは、Fe 33ppm、Cr 検出限界以下、 Ni 1.2ppm 計34.2ppmであった。
なお、原料に使ったシリコンテトラエトキシドに含まれているFe、Cr、Niは検出下限界以下であった。また、ジルコニウムブトキシドはFe 100ppm、
Cr、Niは検出下限界以下であった。これらの数値から計算すると実質的に製造工程からの汚染は認められなかった。
この粉末の青色反射率による白度は43であり、着色は認められなかった。
樹脂組成物のを研削、研磨した光沢度は79と十分に高い価を示し、光沢性の高いことを示した。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同じ条件で乾燥ゲルを作り、ジェットミルはケーシングの炭化珪素、アルミナノズルをステンレススチール製に戻した。以下実施例1と同一条件で処理した。焼成品の平均粒径は3.5μm、最大粒子10.5μmと同じであったが、粉砕された粉末は灰色をし、明らかに粉砕機のステンレスを削っていることがわかった。焼成した後、金属分析をすると Fe 241ppm、Cr 63ppm、Ni 29ppm 計330ppmであった。
この粉末を樹脂組成物とし、濃い灰色となった。青色反射率による白度は21であり、着色が認められた。また光沢度は39と低かった。
【0040】
(比較例2)
サンドグラインダーのジルコニアライニング製のベッセルをステンレススチール製ベッセルに代えた以外実施例1と同じ条件で湿式粉砕した。粉砕した懸濁液は灰白色をものになり、明らかにステンレススチールの混入が観察された。
Fe、Cr、Ni合計量は280ppmでステンレススチール粉の混入で汚染されていることが分かった。粉末の白度は25、平均粒径は1.3、最大粒径は6.2であり、樹脂組成物の研削研磨面の光沢度は65であった。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様シリコンテトラエトキシド208g(1mol)、エタノール1000g及び0.002Nの塩酸水18gを用いてシリコンテトラエトキシドを部分加水分解した。次にチタンテトライソプロピオネート(松本製薬工業(株)製)28.4g(0.1mol)を添加し、10分攪拌した後、シリコン・チタン複合アルコキシドを得た。
この複合アルコキシドを実施例1と同様に処理をし、セラミックライニングしたジェットミルで粉砕し平均粒径2.7μm、最大粒子10.3μmの白色粉砕ゲル粉末を得た。これをIPAに固形分30wt%に調整してサンドグラインダーで粉砕し、この粉末は、X線分析で非晶質であることが確認された。
また、1000℃で焼成したものも乾燥ゲルと同様非晶質であり、蛍光X線分析でTiO2含有量は9mol%と計算値と一致した。白度44、平均粒径0.97μm、最大粒径5.9μmで比表面積38m2/g、屈折率1.50のシリコン・チタン複合酸化物であった。
Fe、Cr、Ni合計含有量は1.8ppmであった。原料のチタンテトライソプロピオキシドの不純物分析を行うとFe、Cr、Niいずれも検出下限界以下であった。樹脂組成物の研削、研磨面の光沢度は77であった。
【0042】
(実施例3)
実施例1と同様シリコンテトラエトキシド1molを使用し低縮合物をつくった。次にジルコニウムテトラn−ブトキシド52.1g(0.136mol)及びナトリウムメトキシド3.8g(0.1mol)/(メチルアルコール溶液として)を加え金属アルコキシド複合体をつくり、以下実施例1と同様に処理、乾式、湿式粉砕した。1000℃で焼成した粒子は非晶質で平均粒径が0.76μm、最大粒径5.6μm、白度43の白色の粉末で、Fe、Cr、Ni合計含有量は33ppmであった。樹脂組成物の研削、研磨面の光沢度は78であった。
(実施例4〜6)
実施例1と同様にして表1に示す条件で金属複合酸化物粉末を得た。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明により、美観の優れた樹脂複合材の充填材として有用な不定形金属酸化物粉末を得ることができる。
Claims (1)
- 珪素アルコキシドを部分加水分解した珪素アルコキシド低縮合物と、ジルコニウムアルコキシド及びチタニウムアルコキシドのうち1種以上との混合物、又は珪素アルコキシドを部分加水分解した珪素アルコキシド低縮合物と、ジルコニウムアルコキシド及びチタニウムアルコキシドのうち1種以上と周期律表第I族の金属のアルコキシドのうち1種以上との混合物から加水分解反応及び縮合によりゲルを生成し、
接粉部を空ずり摩耗率100(ppm/h)以下のセラミックス製とし、又は、前記のセラミックスでライニングし、ライニングした隙間に樹脂を埋めたジェットミルにより乾式粉砕し、
メディア接触部を空ずり摩耗率100(ppm/h)以下のセラミックスでライニングし、高速で粉体が移動し衝突する粉砕ゾーンの部分では前記セラミックス同士の接合部にある隙間に樹脂を充填、又は樹脂コーティングした湿式粉砕機で湿式粉砕し、焼成する、
珪素とジルコニウム、チタン又はその両方とを含有する複合酸化物からなり、平均粒径が2μm未満、最大粒径10μm以下で、鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が200ppm以下である不定形金属複合酸化物粉末の製造方法。
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