JP3969538B2 - 光パラメトリック発振器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一定周期をもって繰り返す光パルス列によって励起され、該光パルスよりも波長が長く、かつ繰り返しが逓倍された光パルス列を発生する光パラメトリック発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体レーザによって、著しく正確な繰り返し周期を持ち、かつ時間幅の非常に短いパルス列の発生が、可能となっている。他方、通信・情報処理の高速大容量化に伴い、かかる極短時間幅の光パルス列の、直接システムクロックとしての、あるいは、短パルスに付随する広大な光スペクトルに着目する形で、波長多重方式における一括多波長光源としての応用が、期待されている。
【0003】
しかるに、かかる応用に対しては、2つの技術的困難が存する。一は、パルス繰り返し周波数の問題であって、情報通信分野においては、最低でも10〜20GHzの繰り返し周波数が要求されるのに対し、固体レーザによるパルス列は、現状、高々1GHz程度の繰り返しに留まっている。これは、一般にかかる固体レーザは、光パルス生成機構を、レーザ共振器内での光非線形効果に負っており、それ故、敢えてパルス繰り返し周波数を高めようとしても、パルス生成動作自体を持続しがたいからである。その二は、発振波長帯の問題である。現在、最も技術的成熟を見、普及している固体パルス光源は、0.8μm帯のチタンサファイアレーザの類であり、情報通信分野における波長帯、とりわけ1.5〜1.6μmからは大きく外れている。通信波長帯における固体レーザの開発も進められてはいるものの、未だ量産化には程遠い段階にあり、また、先行するチタンサファイア系について行われて来た開発項目の一々を、今更、波長帯を替えて繰り返すのも、社会的資源の有効な活用とは言いがたい。
【0004】
かかる状況に鑑みる時、チタンサファイアレーザに代表されるような既存の安定な固体レーザからのパルス列に対し、その波長を通信波長帯に変換すると同時に、そのパルス繰り返し周波数を、情報通信分野で要請される値にまで高める技術が要請されている。本発明による、繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器は、特に、このような技術的要請を満たすための波長変換・繰り返し逓倍手段を、提供せんとするものである。
【0005】
一定周期Tで繰り返す光パルス列を入力し、波長と繰り返し周期を変じて出力する装置を得ようとするに当たって、様々な方法が想起できる。例えば、繰り返しパルス列によって光励起される、いわゆる同期励起レーザによって同一の周期Tで繰り返す異なる波長のパルス列を得、更にその出力を繰り返し逓倍用のリング共振器に入力して、繰り返しを高める方式が考えられよう。しかしここには問題が2つ存する。その1は、一般にレーザでは、個々のレーザ媒質毎に、励起光と発振光の間に一定の波長関係(ストークスシフトまたは量子欠損の名で知られる)があり、特定の励起光波長に対し自由に発振光波長が得られる訳ではないことである。特に、現在、安定な固体レーザとしても最も普及しているチタンサファイアレーザから、1.55μm通信波長帯へ波長を変換するのに適当な固体レーザ媒質は、未だ得られていない。次に、後段の逓倍リングは、入射パルス列の縦モードを等間隔に間引くことにより、繰り返しを逓倍する。これを、レーザ共振器外部に置いて、純粋な受動的フィルターとして用いる場合、逓倍数Nに対し、不可避的に出力が1/Nに減じられることとなる。逓倍数が大きい場合、かかるロスは到底許容しがたい。
【0006】
光パラメトリック発振器は、上記第1の問題を解決する手段として知られている。光パラメトリック発振器では、2次の光非線形効果を有する結晶が利得媒質として用いられ、該結晶によって光角周波数ωpの励起光光子が、次式を満たす光周波数ωiおよびωiを持つ2つの光子に分裂する現象が利用される。
【0007】
【数1】
【0008】
式(1)を満たす無数のシグナル光とアイドラ光の光周波数の組合せから、特定の周波数(帯)を選択する機構が、位相整合条件である。すなわち、一般に、有限長の非線形結晶の各所で発生した非線形分極が、出力光電場にインフェーズに寄与するためには、該分極の位相が、出力光の伝搬位相に丁度揃っていることが必要である。ここで、例えば、各所において、シグナル光周波数を有する非線形分極の位相は、励起光とアイドラ光の伝搬位相の差によって規定されるので、結局、かかる条件を励起光、シグナル光、アイドラ光それぞれの伝搬位相の関係に引き直して書くことができる。すなわち、位相不整合
【0009】
【数2】
がゼロならば、結晶各所からの非線形分極の寄与が強め合い、波長変換が効率よく行われる。各々の波長kiは、屈折率niと真空中の光速cを用いて、ki=niωi/cと表されることを、式(1)と共に用いると、前記位相不整合がゼロとなり、位相整合がとれるためには、3つの屈折率が全て等しいか、または励起光に対する屈折率が他の2者に挟まれることが必要なことが導かれる。しかるに、結晶が透明な波長領域では、屈折率は光周波数に対して単調に増加し、それ故単一の屈折率を考える限り、位相整合は実は決して実現しない。
【0010】
非等方的な光学結晶では、屈折率が光電場の方向に依存する複屈折現象がみられ、これを利用して位相整合を成立させる手法は、角度位相整合と呼ばれている。また、最近では、非線形結晶中に、非線形定数(分極)が周期的に反転する構造を人工的に形成し、その周期性の補助により位相整合を達成する疑似位相整合も盛んに行われる。
【0011】
位相整合条件の成り立つ周波数帯を適宜選ぶことによって、パラメトリック発振器では、励起光よりも長い波長である限りにおいて、発振出力の光周波数(波長)を自由に定めることができる。さらに、角度位相整合による場合には、結晶を回転して結晶中での伝搬方向を変えるか、または温度を変じることで、動作中のパラメトリック発振器の発振波長を、広く調整可能である。疑似位相整合では、分極反転構造の固定的な周期のために、通常、温度による発振波長調整が行われる。さらに進んで、角度位相整合同様の結晶の回転による波長可変性を実現する結晶素子の作製法についても、例えば、特開平11−288011号公報(「波長可変疑似位相整合素子」発明者:長沼和則、石橋茂雄、岩村英俊、および神原浩久)に開示されている。
【0012】
次に上記第2の問題を解決するために、逓倍リングを、パラメトリック発振器と合体させる、すなわちパラメトリック発振器の共振器自体を、逓倍リングとして用いることを考えよう。この場合、逓倍リングのフィルタ機能は、能動的な発振器の内部で作用し、その結果フィルタで阻止されたエネルギが、虚しく捨てられることがない。換言すれば、フィルタを透過する縦モードのみに対し、選択的に励起光エネルギが変換され、ロスの無い繰り返し逓倍が行えるのである。
【0013】
かかる繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器として、最も単純な形式は、一般に、繰り返し周波数をN倍に逓倍しようとするとき、パラメトリック発振器の共振器周回時間tを、励起光パルス周期Tの1/Nに設定する方式である。通常、励起光パルス周期は、励起光源の共振器周回時間tに等しいことを考慮し、上を共振器長の間の関係に引き直すと、励起光源共振器の1/Nの長さのパラメトリック発振器を構成することになる。図5(a)は、これに拠った従来例の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器を、逓倍数Nが5の場合について示す図である。
【0014】
図5(a)に示した構成において、励起光源共振器501を出射した励起光パルス列は、反射鏡502および反射鏡503を経て、レンズ504により非線形結晶506中に結焦され、該結晶506でシグナル光とアイドラ光を生成する。このうちアイドラ光は、集光鏡507を透過して共振器外に出される一方、シグナル光は、該集光鏡507で反射されて近似的平行光とされ、端面鏡508を経て、出力結合鏡509に達する。該出力結合鏡509にて、一部が出力として取り出された残余のシグナル光は、集光鏡505に達し、上記非線形結晶506中に結焦される。
【0015】
以上のように、シグナル光は、集光鏡507、端面鏡508、出力結合鏡509および集光鏡505によって構成される共振器に閉じ込められ、該共振器内を周回し続ける。この周回中、上のように、シグナル光が出力結合鏡509に達した際に、その一部が出力として取り出される。本例の場合、この共振器内の周回に要する時間tは、励起光パルス周期Tの1/5となるように、該共振器の長さが設定され、その結果、シグナル光が上で非線形結晶506中に結焦されたとき、次の励起光パルスは未だ該結晶506に到達しておらず、シグナル光は、該結晶を単に通過するだけとなる。爾後、3回、つごう4回の周回において、シグナル光は励起光を伴わずに非線形結晶506を通過し、5回目に、該結晶506に戻った時初めて、次の励起光パルスと共に該結晶を通過する。この際、シグナル光は、励起光パルスによる利得を受け、5回の周回中に出力として取り出されて失われたエネルギを回復する。かくして、隣り合う励起光パルスの時間間隔の間に、5回、シグナル光が出力結合鏡509に達して、シグナル光パルスを出力する結果、本従来例により、繰り返し逓倍(N=5)を伴う波長変換が実現されるのである。
【0016】
上述したように、本従来例では、励起光源共振器の1/Nの長さのパラメトリック発振器、換言すれば、逓倍後の繰り返しに対応する共振器長を持つパラメトリック発振器を構成する。この結果、逓倍後の繰り返しを高くとろうとすると、必要なパラメトリック発振器の長さが短くなり、その実現が困難となる。逓倍後の繰り返し1GHzですら、必要なパラメトリック発振器長は30cmとなり、このような短さのリング共振器を実際に構成するのは、既に相当の難事である。
【0017】
最近、かかる困難の回避のために、励起光源共振器の(N−1)/N、または(N+1)/Nの長さのパラメトリック発振器、換言すれば、逓倍後の繰り返しに対応する共振器長分だけ、励起光源共振器との間に、長さの差を設けたパラメトリック発振器を構成する方法が、例えば、会議録FST2002(2002年、つくば市)177頁において、広刊されている。図5(b)は、この従来例に則った繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器を、逓倍数Nが5、共振器長比が(N−1)/N=4/5の場合について示す図である。
【0018】
図5(b)に示した構成においても、励起光源共振器501を出射した励起光パルス列は、反射鏡502および反射鏡503を経て、レンズ504により非線形結晶506中に結焦され、該非線形結晶506でシグナル光とアイドラ光を生成する。このうちアイドラ光は、集光鏡507を透過して共振器外に取り出される一方、シグナル光は、該集光鏡507で反射されて近似的平行光とされ、端面鏡508を経て、出力結合鏡509に達し、該出力結合鏡509にて、一部が出力として取り出された残余のシグナル光は、集光鏡505に達し、上記非線形結晶506中に結焦される。
【0019】
以上のように、シグナル光は、集光鏡507、端面鏡508、出力結合鏡509および集光鏡505によって構成される共振器に閉じ込められ、出力結合鏡509に達した際に、その一部が出力として取り出されつつ、該共振器内を周回し続ける。本例の場合、この共振器内の周回に要する時間tは、励起光パルス周期Tの4/5となるように、該共振器の長さが設定され、その結果、シグナル光が上記非線形結晶506中に結焦されたとき、次の励起光パルスは未だ該結晶506に到達しておらず、シグナル光は、該結晶を単に通過するだけとなる。ところが、このシグナル光が該共振器を、さらに1/4周回した時点で、次の励起光パルスが該非線形結晶506に入射し、その結果、該共振器内に別のシグナル光が生成する。このように、本例では、パラメトリック共振器内に、複数のシグナル光パルスが共存することとなる。
【0020】
爾後、3回、つごう4回の周回において、当初のシグナル光は励起光は伴わずに非線形結晶506を通過し、5回目に、該非線形結晶506に戻った時、初めて励起光パルスと共に該結晶を通過する。この際、該シグナル光は、励起光パルスによる利得を受け、5回の周回中に出力として取り出されて失われたエネルギを回復する。この時点で、該共振器中には、他に3つ、つごう4つのシグナル光パルスが存在する。かくして、励起光パルスが4つだけ隔たった時間間隔の間に、1つのシグナル光について5回、4つのシグナル光につき合計すれば20回、シグナル光が出力結合鏡に達して、シグナル光パルスを出力する結果、本従来例によっても、繰り返し逓倍(N=20/4=5)を伴う波長変換が実現されているのである。
【0021】
【特許文献1】
特開平11−288011号公報
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器には、以下のような問題がある。
【0023】
その第1のものは、上述した2つの従来例のいずれにおいても、パラメトリック発振器に入力された励起光パルスの繰り返し周期(基本周期)Tの成分が、出力される繰り返し逓倍パルス列に、大きく残っている問題である。元より、この種の繰り返し逓倍法においては、出力結合鏡509の反射率が100%でない限り、励起光源の繰り返し周期Tを、完全に取り除いた逓倍パルス列を得ることは、不可能である。該出力結合鏡509における透過をゼロとすると、発振出力が取り出せないので、発振器として実用に耐えず、従って畢竟得られるのは、擬逓倍パルス列に過ぎないのである。しかしながらここにおいて、かかる擬逓倍パルス列に含まれる基本周期T成分を抑え、その替りに、高調波の成分(例えば周期T/2の成分)に、残留繰り返し成分を配分する方が、該擬逓倍パルス列を応用する上で、より望ましい。
【0024】
例えば、擬逓倍光パルス列を、直接システムクロックとして用いる場合、光電変換して得た電気パルス列から、フィルタによって逓倍された繰り返し周波数成分、またはその整数倍の周波数成分を、取り出すことが考えられる。かかる場合、残留繰り返し成分が高調波成分に集中している方が、フィルタによる選択に有利であるのは、言うまでもない。また、同じく電気パルス列に対して、別のクロック発生器を、位相ロックループ(PLL)によって同期させる場合、用いられるローパスフィルタが、PLLの引き込み範囲を規定する。ここでも、残留繰り返し成分が高く緩いフィルタで足りる方が、より広い引き込み周波数範囲が得られ、それ故、望ましい。
【0025】
あるいは、波長多重方式における一括多波長光源としての、擬逓倍光パルス列の応用においては、1つの波長(チャンネル)を光学フィルタにより抽出する際、残留繰り返し成分が高い方が、より純粋な単色光を得られる。かかる場合、光学フィルタ自体の変動への耐性も考慮し、透過帯域において平坦なフィルタ特性を有する、いわゆるフラットトップなフィルタが用いられる事情があり、そのために、この効果はより一層顕著に発現する。さらに、一括多波長光源の1つの波長に、別の光源の波長を光学的位相ロックループによって、一致・安定化する場合、すなわち、一括多波長光周波数標準としての応用の場合にも、上述の電気のPLLと同様の状況が存する。
【0026】
このように、発生された擬逓倍パルス列を応用する際に随伴する各種フィルタを含めた考察から、基本周期T成分をできる限り少なく含む、擬逓倍パルス列を得ることが肝要である。ところが従来例では、図5(a)、図5(b)のいずれにおいても、この点が考慮されておらず、結果として、基本周期T成分を最も多く残す構成となっているのである。この事実は、発生されるパルス列の容態を見れば、明らかである。すなわち、図5(a)の構成で得られる擬逓倍光パルス列では、基本周期Tの間が、波高が単調に減少するパルスをもって補間されている。一方、図5(b)の場合は、逆に波高が単調に増加するパルスで補間され、いずれにしても、基本周期成分が、支配的に残っているのである。
【0027】
第2の問題は、元々高い繰り返しを持つ励起光パルス列を入力する場合、図5(a)の構成は言うに及ばず、図5(b)の構成であっても、必要なパラメトリック発振器の長さが短くなり、実現が困難となる点にある。図5(b)の構成によれば、パラメトリック発振器の共振器長は、励起光源共振器501の(N±1)/N倍に設定されねばならない。すなわち、2つの共振器の長さは、近似している。ここで、元の励起光源共振器501で実現されているからと言って、同程度の共振器長を持つパラメトリック発振器を容易に構成できるとは、限らないことに留意しなければならない。
【0028】
何となれば、励起光源では直線型の共振器を採用し得るのに対し、パラメトリック発振器では、図5に示したようなリング型の共振器を構成する必要がある。パラメトリック発振器で、非線型結晶における利得が発現するのは、励起光とシグナル光の伝搬方向が一致した場合のみである。それ故、シグナル光が往復で非線型結晶を通過し、無駄に結晶を通過する回数、ひいてはロスの倍加を招く直線型の共振器は、パラメトリック共振器には適さない。
【0029】
一方、直線型の共振器では、利得媒質を端面に配置する片腕型の構成により、共振器長の短縮を図れるのに対し、リング型ではこれが許されない。すなわち、直線型とリング型では、達成可能な短共振器長に、大略2倍の開きが存するのである。以上から、元々高い繰り返しを持つ励起光パルス列に対応するためには、元の励起光源共振器よりも際だって(少なくとも2倍)長い共振器長を持つパラメトリック発振器による繰り返し逓倍法を、準備する必要がある。
【0030】
さらに、本逓倍技術の歩を進めれば、複数の繰り返し逓倍を伴うパラメトリック発振器を多段に接続して、累積的に非常に大きな逓倍数を得ることも考えられる。ここで、後段に位置するパラメトリックに励起光として入力される光パルス列は、前段で既に逓倍された繰り返しを有し、かかる繰り返し周期に相当する周回時間を持つ共振器は、そもそも構成不能であろう。このような場合を想定すると、対応する励起光源共振器よりも格段に長い共振器長を持つパラメトリック発振器による繰り返し逓倍法が、供給されねばならない。しかして、従来例方法は、かかる要請には全く答えていないのである。
【0031】
以上述べたように、従来の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器には、(1)励起光パルスの繰り返し周期(基本周期)Tの成分が、十分阻止されずに、出力パルス列中に残留し、また、(2)励起光源共振器よりも格段に長い共振器長を有するパラメトリック発振器による繰り返し逓倍が行えない、という解決すべき問題があった。
【0032】
そこで、本発明は、従来技術におけるこれらの問題を解決し、基本周期阻止能が高く、かつ、励起光源共振器よりも任意に長い共振器が適用可能な、繰り返し逓倍を伴うパラメトリック発振器を供給することを目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器は、一定周期で繰り返すパルス列によって励起される光パラメトリック発振器において、励起パルス列の周期Tと、光パラメトリック発振器の共振器内を発振光パルスが周回する時間tとが、互いに素な2つの自然数N、M(ただし、Mは、1、N±1のいずれでもない)について、関係t/T=M/Nを充たすよう構成することを特徴とする。
【0034】
励起パルス列の繰り返し周期(基本周期)Tの成分を抑圧するためには、上記2つの自然数M、Nについて、MをNで除すときの剰余が、N/2に最も近くかつNと素なる数となるように、Mを選択すればよい。
【0035】
本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器では、光パラメトリック発振器中を、発振光パルスが周回する光路のうち、一部または全部が、光導波路であるように構成することができる。
【0036】
(作用)
従来の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器に関る問題の2、すなわち、励起光源共振器長よりも格段に長いパラメトリック共振器を適用できない所以は、従来法においては、2つの共振器の長さ比が、逓倍数Nに対して、1/N、または(N±1)/Nに制限されている点にある。これに対し、繰り返し逓倍を達成するための、より自由度の高い条件を見出すことができれば、励起光源共振器長よりも格段に長い共振器の適用の可能性が拓かれるのは明らかである。本発明者は、この点について考究を進め、一般に、逓倍数Nとは素な自然数Mを用い、2つの共振器の長さ比、換言すれば、励起パルス列の周期Tと、光パラメトリック発振器の共振器内を発振光パルスが周回する時間tの比が、下式を充たす全ての場合に、繰り返し逓倍が生じることを見出すに至った。
【0037】
【数3】
【0038】
式(3)において、自然数Mは、該パラメトリック共振器内に共存する発振光パルス列の個数に相当している。上の式(3)は、繰り返し逓倍に関る一般的条件を与えるものであり、それ故、当然ながら、従来例の場合も該式に包含されている。すなわち、図5(a)に示した従来例構成は、M=1の場合に相当する。また、図5(b)の従来例構成では、M=N±1であり、このうち図5(b)には、M=N−1の場合が示されている。
【0039】
上式(3)において、2つの自然数、MとNが互いに素であるという付帯条件は、極めて重要である。両者が通分できる場合、通分後の分母の与える逓倍数しか得られない。また、MがNで割り切れる場合には、そもそも繰り返しの逓倍が生ぜず、励起光の繰り返しに一致した発振を見るに過ぎないからである。
【0040】
かかる条件を充たす限りにおいて、共振器内パルス数Mは、任意に大きく設定できる。これは、パラメトリック共振器の共振器長をいくらでも長くとって、繰り返し逓倍が行えることに他ならず、上述した従来例に関る第2の問題に、解決を与えていることは明らかである。
【0041】
さらに、特定の共振器内パルス数Mを選ぶことで、従来例に関る第1の問題をも解決することができる。以下では、この点につき、図面(図1:本発明の構成、図2:本発明の動作、および、図3:従来例との比較)を参照しつつ詳述する。
【0042】
図1は、本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器の構成を示している。図1に示した構成において、励起光源共振器101を出射した励起光パルス列は、反射鏡102および反射鏡103を経て、レンズ104により非線形結晶106中に結焦され、該非線形結晶106でシグナル光とアイドラ光を生成する。うちアイドラ光は、集光鏡107を透過して共振器外に取り出される一方、シグナル光は、該集光鏡107で反射されて近似的平行光とされ、端面鏡108を経て、出力結合鏡109に達する。該出力結合鏡109にて、一部が出力として取り出された残余のシグナル光は、集光鏡105に達し、上記非線形結晶106中に結焦される。
【0043】
以上のように、シグナル光は、集光鏡107、端面鏡108、出力結合鏡109および集光鏡105によって構成される共振器に閉じ込められ、該共振器内を周回し続ける。この周回中、上のように、シグナル光が出力結合鏡109に達した際に、その一部が出力として取り出される。本図の場合、この共振器内の周回に要する時間tは、励起光パルス周期Tの2/5となるように、該共振器の長さが設定され、その結果、シグナル光が上で非線形結晶106中に結焦されたとき、次の励起光パルスは未だ該結晶106に到達しておらず、シグナル光は、該結晶を単に通過するだけとなる。ところが、このシグナル光が該共振器を、さらに3/2周回した時点で、次の励起光パルスが該結晶106に入射し、その結果、該共振器内に別のシグナル光が生成する。このように、本構成では、パラメトリック共振器内に、複数のシグナル光パルスが共存することとなる。
【0044】
爾後、2回、つごう4回の周回において、当初のシグナル光は励起光を伴わずに非線形結晶106を通過し、5回目に、該結晶106に戻った時初めて、励起光パルスと共に該結晶を通過する。この際、該シグナル光は、励起光パルスによる利得を受け、5回の周回中に出力として取り出されて失われたエネルギを回復する。この時点で、該共振器中には、他に1つ、つごう2つのシグナル光パルスが存在する。かくして、励起光パルスが2つだけ隔たった時間間隔の間に、1つのシグナル光について5回、2つのシグナル光につき合計すれば10回、シグナル光が出力結合鏡109に達して、シグナル光パルスを出力する結果、本構成によって、繰り返し逓倍(N=10/2=5)を伴う波長変換が実現されるのである。
【0045】
本構成により発生される擬逓倍光パルス列で、基本周期Tの間を補間するパルスに、順に1から4の番号を振ると、それらの波高は、2−4−1−3の順で減少する。ちなみにこれが、従来例では、1−2−3−4(図5(a)の場合)、または、4−3−2−1(図5(b)の場合)と、単調な減少もしくは増加を示していた。本発明の場合、波高の変化が、そのような単調な傾向を示さない。これは、正に、本発明による擬逓倍光パルス列では、基本周期成分が良く抑圧されていることを示している。
【0046】
以下では、かかる本発明の性質について、さらに、周波数領域での定量的な説明を加える。
【0047】
一般に、良く知られているように、一定周期Tで繰り返すパルス列は、周波数領域では、相等しい間隔Δvp=1/Tをもって繰り返す線スペクトル(いわゆる縦モード)として表すことができる。図2(a)には、励起光パルス列に伴われる、かかる櫛状のスペクトルを示した。このような励起光パルス列によって励起される非線形結晶106から発生するシグナル光のスペクトルは、もし、該結晶が共振器を伴わなければ、図2(a)に同様となる。
【0048】
ここで、非線形結晶106は、パラメトリック共振器の内部におかれている故、該パラメトリック共振器の縦モードの選択性の影響を受け、該縦モードに一致するシグナル光スペクトルが、優先的に成長する。これは、上述した逓倍リングによる縦モードの間引きと等価な作用であり、それ故、繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器を、逓倍リングと合体したパラメトリック発振器と見做すことができるのである。
【0049】
かかる逓倍リングの持つフィルタ機能は、ファブリ・ペロ干渉計の特性に一致し、その透過率Tc(v)は、下式で与えられる。
【0050】
【数4】
【0051】
ここで、Rは、出力結合鏡109の反射率である。ここでは、パラメトリック共振器内には他のロスは無いとしたが、一般に該共振器内に他のロスがあったとしても、全てのロスをRに含ませて考えることができる。また、上式(4)において、tは、パラメトリック発振器の共振器内周回時間であって、これに対応する縦モード間隔は、Δvc=1/tとなる。励起光パルス列の縦モードの内、共振器の縦モードにも共通に含まれるものが、優先的に成長する。
【0052】
今、逓倍数N=5の場合に、共振器のフィルタ関数Tc(v) による縦モード選択の様子を、共振器内パルス数Mを変えて、図示すると図2(b)を得る。ここで、出力結合鏡109の反射率Rは99%とし、Mを変えることに伴う共振器長変化には依らないと仮定した。これは、共振器の回折損失を無視することに相当しており、通常のレーザ共振器(導波型を含む)では、十分正当化される仮定である。かかる場合、Mの範囲は、1から4を見れば十分網羅的である。何となれば、縦モード選択の結果は、MをNで除すときの剰余、すなわち、M mod Nにのみ依存し、M>Nでは、図2(b)の結果が繰り返されるに過ぎないからである。また、既に述べたように、MがNの整数倍(M mod N=0)の場合は、繰り返し逓倍が生じない故に、棄却できる。
【0053】
図2(b)中、フィルタ関数(細線)は最大透過を0dBに規格化し、これによる選択を受けた励起光パルス列に関る縦モードを、縦の太線で示してある。逓倍後の繰り返し周波数NΔvpの間隔を持つ大きな縦モード(主モード)の間に、4本の抑圧された元の励起光パルスの縦モードが見られる。これらを残留モードと呼び、左から順に残留モード番号k=1…4を付与しよう。ここで、大きなモードに隣接する残留モード、この場合k=1と4、の大きさが、残留している基本周期T成分の大きさを表わしている。また、残余の残留モードは、より高調波の成分に相当する。
【0054】
図2(b)を見ると、残留基本周期にかかる残留モードの大きさは、M=1と4、また、M=2と3とで、各々等しく、さらに、前者よりも後者の方が小さいことが一目瞭然である。ここで、前者はそれぞれ従来例の図5(a)と図5(b)の構成に対応し、一方、後者のうち、M=2は、図1に示した本発明の構成に相当している。かくして本発明の構成は、従来例に比して高い基本周期阻止能を有し、その阻止能の改善量を、k=1残留モードの大きさ差として図2(b)から読み取ると、今の場合、4.2dBである。さらに残留モードの大きさが、M=2と3とで等しいことから、本発明では、図1に示したM=2以外に、M=3、さらにNを法とする剰余系でこれらに等しいM=7,8,12,13…を選んで構成しても、同様の効果が得られることが分かる。
【0055】
任意の逓倍数Nに対して、このように基本周期阻止能を最大とするMを求めるために、式(4)に戻って考察しよう。1つの主モードを起点とすると、番号kの残留モードの周波数は、v=kΔvpと書くことができる。これを式(4)の中の余弦関数の引数に代入し、変形すると、
【0056】
【数5】
が得られる。ここで、最後の変形には式(3)を使った。透過率Tc(v) を決めるのは、余弦関数の周期性から、数tvの小数部分(ただし小数部分が0.5を越える場合は、1から差し引いた値とする)である。かかる小数部分は、
【0057】
【数6】
と書かれ、これが大きい方が、高い阻止能を表している。
【0058】
1つの逓倍数Nについて、Mを変えた時の阻止能を比較するには、上述の数fの分子だけを考えれば十分であり、N=5の時に、この値Nfを、共振器内パルス数M、および残留モード番号kに対して表にまとめると、図3(a)を得る。
【0059】
本図3(a)において、基本周期阻止能を表すのは、行1(k=1)と行4(k=4)であり、確かに、本発明(M=2,3)は従来例(M=1,4,6)に優越している。ここで、より高次の残留モード、すなわちk=2または3の阻止能は、本発明が寧ろ従来例よりも劣っていることに、注目されたい。これは、正に、これら高次モードの処置は、擬逓倍光パルス列の応用時における付加的フィルタに委ねるという、本発明における最適化指針に起因する性質である。
【0060】
上記Nfの値を、N=7について同様にまとめたのが、図3(b)である。前同様、基本周期阻止能を表す行、今の場合行1と行6、に注目すれば、逓倍数N=7に対しては、M=3または4(+7の整数倍)が適していることが分かる。以上の2つの逓倍数Nについての最適なMの結果から、その傾向を読み取れば、以下のような一般のNに対する最適なMの選定指針に、容易に到達できる。
【0061】
すなわち、M mod Nが、N/2に最も近くかつNと素なる数となるMが最適である。かかる指針によるMの値を例示すると、N=8のときM=3または5(+8の整数倍)、N=9にはM=4または5(+9の整数倍)、N=10にはM=3または7(+10の整数倍)、さらにN=11のときはM=5または6(+11の整数倍)となる。なお、このようなMを選ぶ時の、基本周期阻止能の従来例からの改善量は、概ね逓倍数とともに増大する。前同様、出力結合鏡109の反射率Rを99%とすると、改善量は、7.0dB(M=5)、9.3dB(M=9)、M=11では実に10.9dBに達する。
【0062】
なお、図3(a)から図3(b)に移る際に、逓倍数N=6を飛ばしているが、これには理由がある。逓倍数が6のときには、本発明のNとMが素の条件から、Mには1または5(+6の整数倍)しか選びようがなく、基本周期阻止能においては、従来例と同一に帰するからである。かかる逓倍数Nには、他に2,3,4があり、以上4つの逓倍数は、本発明の基本周期阻止能の最適化にとって例外的な逓倍数である。
【0063】
【発明の実施の形態】
ここまでで、本発明の基本構成とその動作を詳らかにしたので、以下では、本発明の各種実施例構成について述べよう。
(第1の実施の形態)
図1の本発明の構成により、安定な固体短光パルス光源として普及しているチタンサファイアレーザを励起光パルス光源として用い、1.55μm通信波長帯の擬逓倍光パルス列を得る。本実施の形態において用いた励起光源共振器101は、繰り返し81.332MHzの市販のチタンサファイアレーザであり、パルス幅200fsの光パルス列を発生する。
【0064】
本実施の形態では、非線形結晶106に、周期分極反転ニオブ酸リチウム結晶(PPLN)を採用した。かかる結晶では、シグナル光が励起光に共軸に発生されるので、共振器の調整が容易であり、また、大きな利得が得られる。該結晶の長さは、励起光パルスの時間幅に対応して、2mmとした。この長さは、波長変換に関る励起光に対する帯域幅が、概ね励起光パルスのスペクトル幅に一致するように選ばれる。より短い結晶では利得が減少し、一方、より長い結晶を用いても利得が増す訳ではない。反射ロスを避けるために、該結晶の両端には、減反射光学コーティングが施され、残留反射率が各面0.1%程度に抑えられた。
【0065】
集光鏡105,107の曲率半径は、100mmとし、焦点距離80mmのレンズ104を用いて、励起光パルス列を、上記非線形結晶106中に結焦した。この時、2つの集光鏡の間隔は、約10cmとなり、無理なく構築できるリング共振器の周回長の下限は、大略この4倍の40cmとなる。より曲率半径の小さい集光鏡を用いれば、より小さいリング共振器も構成し得るが、該集光鏡への斜入射に伴う非点収差が悪影響するので、容易ではない。
【0066】
該非線形結晶106の分極反転周期Λは、16.9μmとし、これに波長737nmの励起光パルスを入射するとき、波長1.5〜1.7μmのシグナル光に対して利得が得られる。該非線形結晶中での集光ビーム径は、100μmと見積もられ、平均パワー50mWの励起光パルス列に伴う利得として、80%程度が期待される。
【0067】
出力結合鏡109には、反射率Rが99%のものを用い、逓倍数Nは11に設定した。元より、N(1−R)が想定される利得よりも大きいと、パラメトリック発振器の発振条件が充たされず、発振動作は実現しない。本逓倍数は、上記の想定利得に対して、優に発振条件が充たされる範囲に設定してある。なお、上の発振条件が、共振器内パルス数Mに依存しないことに注意されたい。これ故に、本発明で、Mを自由に選ぶことが許されているのである。
【0068】
本実施の形態の場合、逓倍数N=11について、基本周期阻止能を最大とする共振器内パルス数Mとして6を選び、励起光パルス周期の6/11の周回時間を有するパラメトリック共振器を構築した。かかる共振器の長さは、201cmとなり、リング共振器として容易に作製できる。
【0069】
平均パワー50mWの励起光パルス列を、本パラメトリック共振器に入射したところ、平均パワー10mWの擬逓倍光パルス列出力(繰り返し895MHz)が得られた。擬逓倍光パルス列出力の波長は、パラメトリック共振器の長さをμmオーダで変えることにより、1.53μmから1.68μmの範囲で可変できた。また、そのスペクトル全半値幅は15nmであり、励起光パルスと同様の約200fsの時間幅を持つ擬逓倍光パルス列が得られている。
【0070】
(第2の実施の形態)
前述した如く、本発明では、共振器内パルス数Mを逓倍数Nに対して、任意に大きく設定でき、無理なく構築できる寸法のパラメトリック共振器をもって、高い繰り返しのポンプ光パルス列を受け入れることができる。これを行った例を、図4(a)に示す。
【0071】
図4(a)の、本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器の第2の実施の形態において、励起光源共振器401を出射した励起光パルス列は、反射鏡402および反射鏡403を経て、レンズ404により非線形結晶406中に結焦され、該結晶406でシグナル光とアイドラ光を生成する。うちアイドラ光は、集光鏡407を透過して共振器外に取り出される一方、シグナル光は、該集光鏡407で反射されて近似的平行光とされ、端面鏡408を経て、出力結合鏡409に達する。該出力結合鏡409にて、一部が出力として取り出された残余のシグナル光は、集光鏡405に達し、上記非線形結晶406中に結焦される。
【0072】
本実施例の場合、励起光源共振器401として、繰り返し909.091MHzのチタンサファイアレーザを用い、この繰り返しを11逓倍(N=11)して、10GHzの擬逓倍繰り返し光パルス列を得る。このために、基本周期阻止能を最大とする共振器内パルス数Mとして60(=5+5×11)を選び、励起光パルス周期の60/11の周回時間を有するパラメトリック共振器を、構築した。かかる共振器の長さは、元の励起光源共振器の長さ33cmよりも遙かに長い180cmとなり、容易にこれを作製できる。
【0073】
上記集光鏡405,407、レンズ404、ならびに非線形結晶406、さらに出力結合鏡409としては、実施例1同様のものを用い、平均パワー500mWの励起光パルス列(パルス幅200fs、波長737nm)を、本パラメトリック共振器に入射したところ、平均パワー50mWの擬逓倍パルス列出力が得られた。ここで、前記第1の実施の形態に比して大きな励起光パワーを動作に要する所以は、パラメトリック発振器における利得が、励起光の尖頭パワーに比例するためであり、同じ利得を得るには、励起光源繰り返しに比例した励起光パワーが必要となる。
【0074】
擬逓倍パルス列のスペクトル幅は、−10dB地点で測って30nmであり、この範囲で、波長多重方式のための390チャネルの一括光源が得られた。さらに、非線形結晶406の波長分散を補償するために、厚さ6mmの石英ガラス板を、パラメトリック共振器内に挿入すると、擬逓倍パルス列のスペクトル幅は、−10dB地点で80nmに拡大され、波長多重方式のための1000チャネルの一括光源が得られた。これら一括多波長光源から、必要な波長(チャンネル)を光学フィルタ(例えば、アレイ導波路回折格子)により抽出し、光増幅器により適宜パワーを増して光通信・情報処理に供する。
【0075】
(第3の実施の形態)
近年では、周期分極反転ニオブ酸リチウム結晶上に光導波路を作り込み、さらに、入出射用に光ファイバを装着した波長変換モジュールが、市販品として入手可能になっている。かかるモジュールを用いて、本発明を行った例を、図4(b)に示す。
【0076】
図4(b)の、本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器の第3の実施の形態において、励起光源共振器401を出射した励起光パルス列は、励起光導波路410と波長多重結合器411を経て、導波路型非線形結晶413に入射され、該非線形結晶413でシグナル光とアイドル光を生成する。うちシグナル光は、出力結合器414に達し、一部が出力として取り出された後、導波路型共振器412を辿り、前記波長多重結合器411を通過して、上記導波路型非線形結晶413中に戻る。
【0077】
一方、アイドラ光も、出力結合器414を通過した導波路型共振器412を経、波長多重結合器411を通過して、上記導波路型非線形結晶413中に戻る。ここで、一般にパラメトリック発振器において、シグナル光とアイドラ光の両方が非線型結晶に戻ると、いわゆる、二重共鳴の(doubly resonant) 共振器となり、動作が不安定となることが知られている。しかしながら、今の場合、この懸念には及ばない。何となれば、導波路型非線型結晶413に戻ったシグナル光とアイドラ光は、導波型共振器の波長分散特性によって、時間的に解離しており、同時には励起光と相互作用することがないからである。勿論、さらに安全に期すために、アイドラ光だけを共振器の外に逃すための出力結合器を、導波路型共振器412に付加しても良い。
【0078】
本実施の形態の場合も、励起光源共振器401として、繰り返し909.091MHzのチタンサファイアレーザを用い、この繰り返しを11逓倍(N=11)して、10GHzの擬逓倍繰り返し光パルス列を得る。このために、基本周期阻止能を最大とする共振器内パルス数Mとして50(=6+4×11)を選び、励起光パルス周期Tの50/11の周回時間を有するパラメトリック共振器を、構築した。かかる共振器は、導波路の周回寸法として約1mであり、光ファイバ部品を用いて構成するのに、手頃な寸法となる。
【0079】
導波路型非線形結晶413は、上の実施例1同様の結晶を元に作製し、さらに出力結合器414のシグナル光結合は1%(R=99%に相当)とした。導波路型共振器は、分散シフト型偏波保持ファイバにより構成され、シグナル光がその偏光を保って導波路型非線型結晶413に戻り、また、ガラス中の長行程の伝搬によるシグナル光波形変形を抑える配慮がなされている。
【0080】
本形態における励起光パルス列のパワー、時間幅、波長、および、得られた擬逓倍パルス列出力のパワーならびにスペクトル幅は、前記第2の実施の形態と同様であった。
【0081】
なお、本実施の形態の光ファイバに替えて、導波路型共振器412を平面光回路(PLC)にて構成しても良い。この方向にさらに歩を進めれば、波長多重結合器411、導波路型非線形結晶413、ならびに、出力結合器414を、全て1つのガラス基板上に配した。集積型のパラメトリック共振器を構成することもできる。その場合は、長い共振器長は寧ろ作製しにくい故、基本周期阻止能を最大とする共振器内パルス数Mとしては5を選び、励起光パルス周期Tの5/11の周回時間を有する集積型パラメトリック共振器とするのが良い。
【0082】
【発明の効果】
本発明の繰り返し逓倍を伴うパラメトリック発振器は、基本周期抑止能が高いので、応用上便利な品質の高い逓倍光パルス列を発生することができる。また、本発明の繰り返し逓倍を伴うパラメトリック発振器は、共振器長の自由度が広く、特に、励起光源共振器よりも任意に長い共振器によっても実施可能なので、高い繰り返しの励起光パルス列に対応でき、工業的に大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器の構成を示す構造図である。
【図2】本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器の動作を説明するものであり、(a)は励起光パルス列のスペクトルを示す特性図、(b)は逓倍数Nが5の場合における発振パルス列の共振器内のパルス数Mへの存在性を示す特性図である。
【図3】本発明と従来例における基本周期阻止能を比較を示す図表であり、(a)は逓倍数Nが5の場合、(b)は逓倍数Nが7の場合を示す図表である。
【図4】本発明の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器の実施の形態を示す図であり、(a)は励起光源よりも長いパラメトリック発振器による逓倍の例(第2の実施の形態)を示す構造図、(b)は更にパラメトリック発振器を導波路型とした例(第3の実施の形態)を示す構造図である。
【図5】従来例の繰り返し逓倍を伴う光パラメトリック発振器の構成を示す図であり、(a)は逓倍数Nに対し励起光源の1/Nの長さのパラメトリック発振器を示す構造図、(b)は同じく励起光源の(N−1)/Nの長さのパラメトリック発振器を示す構造図である。
【符号の説明】
101,401,501 励起光源共振器
102,103,402,403,502,503 反射鏡
104,404,504 レンズ
105,405,505 集光鏡
106,406,506 非線形結晶
107,407,507 集光鏡
108,408,508 端面鏡
109,409,509 出力結合鏡
410 励起光導波路
411 波長多重結合器
412 導波路型共振器
413 導波路型非線形結晶
414 出力結合器
Claims (5)
- 一定周期で繰り返すパルス列によって励起される光パラメトリック発振器において、
上記励起パルス列の周期Tと、上記光パラメトリック発振器の共振器内を発振光パルスが周回する時間tとが、互いに素な2つの自然数N、M(ただし、Mは、1、N±1のいずれでもない)について、関係t/T=M/Nを充たすよう構成する
ことを特徴とする光パラメトリック発振器。 - 上記Mと上記Nについて、MをNで除すときの剰余が、N/2に最も近くかつNと素なる数となるように、Mを選択する
ことを特徴とする、請求項1記載の光パラメトリック発振器。 - 上記発振光パルスが、上記光パラメトリック発振中を周回する光路のうち、一部または全部が、光導波路であるように構成された、
請求項1乃至2記載の光パラメトリック発振器。 - 非線形結晶に周期分極反転ニオブ酸リチウム結晶を使用するとともに、その長さを波長変換に関する励起光に対する帯域幅が、励起光パルスのスペクトル幅に一致するように選択した
請求項1乃至3記載の何れか一つの光パラメトリック発振器。 - 非線形結晶に光導波路を作り込んだ周期分極ニオブ酸リチウム結晶を使用する請求項4記載の光パラメトリック発振器。
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