以下、添付した図面を参照して、本発明に係る画像形成装置を実施するための実施形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一例の概略を示す全体構成図である。
図1(a)に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の液滴吐出ヘッド50(50K、50C、50M、50Y)と、各液滴吐出ヘッド50K、50C、50M、50Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14(14K、14C、14M、14Y)と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、記録紙16をカットするカッタ28と、記録紙16を排出する排紙部26と、液滴吐出ヘッド50を記録紙16に対して相対的に複数回走査させて、副走査方向の隣接ドット同士が互いに重なり合って打滴されるように、記録紙16と液滴吐出ヘッド50とを副走査方向において相対移動させる回転ドラム33(相対移動手段)と、カットシート状の記録紙16を回転ドラム33へ巻き付ける巻付及びその回転ドラム33から記録紙16の巻き解す巻解しを行う搬送路として機能する用紙巻付/巻解し部材300と、記録紙16にUV(紫外線)を照射するUV照射光源42と、記録紙16と液滴吐出ヘッド50との相対移動、及び、液滴吐出ヘッド50からの液滴吐出等の同期をとるための同期検出センサ43を備えている。
図1(a)では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1(a)のように、裁断用のカッタ28が設けられており、該カッタ28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙のみを使用する場合には、カッタ28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
また、図1(a)では、記録紙16を液滴吐出ヘッド50に対して相対移動させる相対移動手段として、記録紙16をその円周上で巻き付けて移動させる回転ドラム33を図示している。回転ドラム33は、一般に、真空吸着式や静電吸着式のものを用いる。
なお、本発明において、相対移動手段は回転ドラム33に特に限定されるものではなく、回転ドラム33の代わりに、記録紙16を液滴吐出ヘッド50に対して相対的に特定の方向(例えば水平方向)に移動させるベルトを設けてもよい。ベルトは、一般に、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。
液滴吐出ヘッド50は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるライン型の印字ヘッドとなっている。
各液滴吐出ヘッド50K、50C、50M、50Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってノズル(インク吐出口)が複数配列されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1(a)の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド50K、50C、50M、50Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド50K、50C、50M、50Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、主走査方向の紙幅の全域をカバーする液滴吐出ヘッド50がインク色毎に設けられてなるラインヘッドによれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と液滴吐出ヘッド50を相対的に複数回移動させる動作を行って(すなわち、複数回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1(b)は、本発明に係る画像形成装置としての他の例のインクジェット記録装置100の概略を示す全体構成図である。
なお、図1(a)に示すインクジェット記録装置10と同じ構成要素には、同じ符号を付してあり、既に説明したので説明を省略する。
図1(b)に示すインクジェット記録装置100は、中間転写記録媒体として機能する回転転写ドラム33bと、回転転写ドラム上に形成された画像を記録紙16に加圧して転写する加圧転写部材350を有する。
より詳細には、印字ヘッド50から回転転写ドラム33bへの印字時においては、加圧転写部材350と記録紙16は回転転写ドラム33bから離間した状態にあり、全ての画像の回転転写ドラム33bへの記録が終了した後のタイミングで、加圧転写部材350が記録紙16を回転転写ドラム33bへ押し付けて転写する。
ここで、以下の説明で用いる用語の説明をしておく。
「着段干渉」とは、記録媒体上に着弾したドットが重なって打滴される場合、着弾後のドットの定着前に記録媒体表面上のドットの液滴同士が合体又は混合して、ドット形状が変形または異なる色のインク同士の色が不均一に混ざり合って、画像劣化を引き起こすことをいう。
「ドットの重なり度」は、隣接するドット同士が重なる程度を示す物理量である。
本実施形態では、互いに重なり合うドットの数(「オーバラップ数」ともいう)を「ドットの重なり度」として用いている。
例えば、図2(a)に示すように、副走査方向おいて、2個のドット同士が重なる一方で、一つおきのドット同士は重ならない場合、すなわち、隣接するドット同士の中心間の距離Ptと、ドットの直径Dとの関係が、D/2≦Pt<Dである場合には、重なり度Vn=2である。
また、例えば、図2(b)に示すように、副走査方向において、3個のドット同士が重なる一方で、一つおきのドット同士は重ならない場合、すなわちD/3≦Pt<D/2である場合には、重なり度Vn=3である。
なお、複数種類のドット径を使用する場合には、最も大きいドット径を使用したときのドット重なり度を用いることにする。
「ドットの定着」とは、第1に、記録媒体表面上のインク液滴が固化(又は硬化)すること(表面固化型)、第2に、記録媒体表面上のインク液滴が記録媒体内に浸透することをいい、いずれの場合にも記録媒体の表面に液滴が存在しなくなることを意味する。
「浸透型」の場合、インクの記録媒体への浸透特性で定着時間が決まる。具体的には、主として、インクの種類と記録媒体の種類の組み合わせに応じて、定着時間が決まる。
記録媒体表面上のインク液滴が浸透により存在しなくなれば、たとえ記録媒体内に浸透したインク溶媒が完全に乾燥していなくても、インク溶質(色材)は記録媒体内の受像層に定着しているので、着弾干渉は殆ど発生しない事が実験により判明している。従って、本発明において、浸透型の場合の定着時間の定義は、表面インク液滴が浸透を終了するまでの時間とする。記録媒体内の溶媒が乾燥していなくても着弾干渉とは関係がない。
「表面固化型」の場合、インクの乾燥特性、エネルギー硬化特性等の固化(硬化)特性で定着時間が決まる。主として、インクの種類、UV(紫外線)照射エネルギー、熱エネルギー、温度や湿度等の環境条件等によって、定着時間が決まる。
記録媒体表面上のインク液滴が存在しなくなれば、着弾干渉は殆ど発生しないので、インク液滴が完全に固化しなくても半固溶状態であってもよい。従って、本発明において、表面固化型の場合の定着時間の定義は、表面液滴が存在しなくなるまでの固化(硬化)時間とする。
図3は、発明に係る画像形成装置の一実施形態の機能的な構成を示すブロック図である。
図3において、画像形成装置10は、主として、相対移動手段33と、液滴吐出ヘッド50と、記憶手段81と、記録媒体識別情報読取手段82と、インク識別情報読取手段83と、画像信号入力手段84と、画像処理手段85と、定着時間特定手段91と、打滴順序設定手段92と、打滴時間差設定手段93と、相対移動制御手段94と、打滴制御手段95とによって構成されている。
液滴吐出ヘッド50は、少なくとも主走査方向に並んだ複数のノズルを有し、複数のドットからなり画像信号に応じた画像が記録紙上に形成されるように、複数のノズルのうち画像信号に応じて選択したノズルから記録紙に対して液滴を吐出する。
相対移動手段33は、液滴吐出ヘッド50を記録紙に対して複数回走査させるように、液滴吐出ヘッド50と記録紙とを副走査方向において相対移動させる。
相対移動手段33としては、例えば、巻き付けた記録媒体を所定の円周上において移動させることにより液滴吐出ヘッド50に対して相対移動させる回転ドラム(回転体)や、ベルト等がある。
記憶手段81は、画像形成に関する情報を記憶する。例えば、ドット毎の定着時間を特定するために必要な、後に詳述するテーブル情報を記憶する。
記録媒体識別情報読取手段82は、記録媒体の種類を識別可能な識別情報(ID)を、記録媒体を収納する媒体収納マガジンから読み取るものである。
インク識別情報読取手段83は、インクの種類を識別可能な識別情報(ID)を、インクを貯えるインクカートリッジから読み取るものである。
記録媒体識別情報読取手段82及びインク識別情報読取手段83による各識別情報の読取は、無線タグ(RFIDともいう)等からの無線読取、バーコード等からの光学的読取、磁気的読取等、各種の読取態様がある。
画像信号入力手段84は、ホストコンピュータ(図示を省略)等から画像信号が入力されるものである。画像信号には、画像形成の対象である画像データや、出力解像度を示す情報が含まれる。
画像処理手段85は、画像信号入力手段84に入力された画像データに対して各種の画像処理を施す。なお、画像処理手段85による画像処理の結果、出力解像度が変更になる場合もある。また、画像処理手段85は、出力解像度(又はドットピッチ)と所望の濃度階調表現等に基づいてドットの重なり度を算出する。
ここで、重なり度には、副走査方向におけるドット間の重なりの程度を示す重なり度Vs(副走査方向のドットの重なり度)、主走査方向におけるドット間の重なりの程度を示す重なり度Vm(主走査方向のドットの重なり度)、副走査方向に対して斜めの方向におけるドット間の重なりの程度を示す重なり度Vα(斜め方向のドットの重なり度)がある。
定着時間特定手段91は、記憶手段81に記憶されたテーブル情報に基づいて、記録媒体におけるドット毎(ドット単位)の定着時間を特定する。
具体的には、記録媒体識別情報読取手段82により読み取られた記録媒体識別情報、インク識別情報読取手段83により読み取られたインク識別情報、ドット径等をパラメータとして、これらのパラメータに対応するドットの定着時間を特定する。
前述したように、ドットの定着態様(浸透型か、表面固化型か)等によりパラメータは異なる。したがって、ドットの定着態様ごとに異なるテーブル情報を用意しておき、インクの識別情報等に基づいてドットの定着態様を特定した上で、パラメータの種類及び参照するテーブル情報を切り替える。
打滴順序設定手段92は、副走査方向及び主走査方向におけるドットの打滴順序を設定する。
この打滴順序設定手段92は、特に、副走査方向及び主走査方向の両方向において互いに重なり合う隣接ドットを打滴する場合、副走査方向、主走査方向及び斜め方向の全ての方向において隣接ドットと重なり合うドットの形状が変形しないように、ドットの打滴順序を設定する。
このような打滴順序の設定態様には各種ある。
第1の打滴順序の設定態様としては、斜め方向のドットの重なり度Vαに注目し、このVαに基づいて副走査方向及び主走査方向におけるドットの打滴順序を設定する態様がある。
本実施形態において、斜め方向のドットの重なり度Vαとして、副走査方向に対して斜めの方向において、特定のドット(注目ドット)と重なり合って打滴されるドットの数(斜め方向のドットのオーバラップ数)を用いる。
本実施形態における斜め方向のドットの重なり度Vαについて、さらに詳細に説明する。副走査方向に並んだ複数のドットを行、主走査方向に並んだ複数のドットを列として、第i行(副走査行)の第j列(主走査列)のドットに注目する。第(i+1)行、すなわち注目ドットが属する副走査行の隣にある副走査行において、注目ドット(i行、j列)に重なるドットの主走査列を調査する。ここで、第(i+1)行において、第j列のドットから調査して第(j+Vα−1)列のドットまでが注目ドットと重なる一方で、第(j+Vα)列のドットが注目ドットと重ならないとき、このVαを斜め方向のドットの重なり度とする。言い換えると、注目ドット(i行、j列)に対して主走査方向に隣接する第(i+1)行のドットにおいて、j列自身を1個目として含めて副走査方向にVα個目のドットまでが重なるような状態を、斜め方向のドット重なり度Vαと定義する。なお、本段落では、斜め方向のドットの重なり度Vαを説明するために、便宜上「行」と「列」を定義したが、本段落以外では、副走査方向に並んだ複数のドットをドット列と呼んでいる。
斜めの方向におけるドットの重なり度をVαとし、主走査方向におけるドットの重なり度をVmとするとき、記録紙上にベタ画像が形成される場合に、副走査方向において(Vα×Vm−1)ドットおきに打滴されるようにVα×Vmを基本単位Mとして副走査方向においてドット列を分割するとともに、主走査方向において(Vm−1)ドットおきに打滴されるように主走査方向において隣接するドット間にVαドット分の位相差を設定する。
このようにして、副走査方向及び主走査方向に複数のドットが2次元配列されてなるドット配列は、Vα×Vmを基本単位Mとして、N個のグループに分割される。このようなグループ化をN×Mのグループ化と称する。例えば、後に説明する図7において、副走査方向に連続する(1)〜(9)までのドットの塊をグループと定義する。このように、副走査方向において連続して並ぶM(=Vα×Vm)ドットをひとつのグループに配属させる。
また、副走査方向において、第1グループから第Nグループまで、各グループ内のドットを、順次、第1群から第M(=Vα×Vm)群まで振り分ける。実際に打滴する際には、まず、第1グループから第Nグループまでの第1群のドットのみを連続的に打滴し、次に、第1グループから第Nグループまでの第2群のドットのみを連続的に打滴し、最後に、第1グループから第Nグループまでの第M群のドットのみを連続的に打滴する。このとき、副走査方向において、(Vα×Vm−1)ドットおきにドットが打滴される。このように、ドラムの1回転内にノズルから連続して打滴されるドット同士が同じ群に属する。例えば、後に説明する図7において、同じ番号で描かれたドット同士を同じ群のドットと定義する。
第2の打滴順序の設定態様としては、斜め方向におけるドットの重なり度Vαには注目しないで、主として副走査方向のドットの重なり度Vs及び主走査方向のドットの重なり度Vmに基づいて副走査方向及び主走査方向におけるドットの打滴順序を設定する態様がある。
具体的には、記録紙上にベタ画像が形成される場合に、副走査方向において(Vs−1)個おきに打滴されるとともに主走査方向において(Vm−1)個おきに打滴されるように、記録媒体上で主走査方向及び副走査方向に2次元配列されてなるドット配列を、副走査方向のドット数がVsで主走査方向のドット数がVmであるVs×Vmの2次元ブロックを基本単位としてグループ化することにより、打滴順序を設定する。
また、重なり度Vs、Vm、Vα以外のパラメータも参照して打滴順序を設定してもよい。
例えば、ドット毎の定着時間と、主走査方向におけるドットの重なり度と、斜め方向におけるドットの重なり度とに基づいて、副走査方向及び主走査方向のドットの打滴順序を設定する。
打滴時間差設定手段93は、互いに重なり合う隣接ドット間の打滴時間差が、定着時間特定手段91によって特定されたドット毎の定着時間以上となるように隣接ドット間の打滴時間差を設定する。
本実施形態の打滴時間差設定手段93は、打滴順序設定手段92により設定された打滴順序に応じてノズルの吐出周期を設定する。
相対移動制御手段94は、相対移動手段33により記録媒体を液滴吐出ヘッド50に対して相対移動させる手段である。
また、相対移動制御手段94は、相対移動手段33の相対移動速度の設定変更を行う。例えば、相対移動手段33が回転ドラムである場合、相対移動制御手段94は、出力解像度やノズルのドット毎の定着時間等に基づいて、回転ドラム33の回転速度(回転数ともいう)の設定変更を行う。このとき、打滴時間差設定手段93がノズルの吐出周期を設定すると共に、設定されたノズルの吐出周期と出力解像度と定着時間に応じて相対移動制御手段94が回転ドラム33の回転速度を設定する。
打滴制御手段95は、画像信号に基づいて、液滴吐出ヘッド50のノズルからの打滴を制御する。このような打滴の際に、打滴制御手段95は、打滴順序設定手段92により設定された打滴順序と、打滴時間差設定手段93により設定された隣接ドット間の打滴時間差とに基づいて、液滴吐出ヘッド50のノズルからの打滴を制御する。
また、打滴時間差設定手段93は、打滴順序設定手段92により設定された打滴順序に応じてノズルのドット毎の定着時間Tfixと、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpassと、グループ数Nとに基づいて、液滴吐出ヘッド50のノズルの吐出周期を設定する。
以上、ドットが完全に定着を完了する定着時間Tfixを基にノズルの吐出周期を設定する態様を記載したが、ドットが完全に定着完了していなくても、着弾干渉によるドット形状の劣化が画質上許容範囲以内である準定着時間Tsemi(Tsemi<Tfix)を基にノズルの吐出周期を設定してもよい。
次に、記憶手段81に予め記憶させておくテーブル情報について説明する。
ドットの定着が「浸透型」の場合には、主として、インクの種類、記録媒体の種類、及び、ドット径等をパラメータとして、これらのパラメータに対応する浸透に要する時間を、定着時間として、テーブル情報を予め作成し、記憶手段81に予め記憶させておく。温度や湿度等の環境条件を更にパラメータとして加えたテーブル情報を作成して記憶させておいてもよい。
インクの種類と記録媒体の種類との組合せで決まる浸透時間(すなわち定着時間)としては、具体的には、インクの表面張力、インクの粘度、記録媒体の毛細管半径、インクと記録媒体との接触角度等の条件(インク条件及び記録媒体条件)の影響を受ける。したがって、画像形成に用いられる各種のインク及び記録媒体について、これらの条件と浸透時間との関係を調査又は実験し、このような調査又は実験の結果に基づいてテーブル情報が作成される。
図4は、ドットの定着が浸透型である場合について、インク及び記録媒体の組み合わせと、浸透時間との計測結果を示す。
図4において、横軸はインクの種類を示し、縦軸はインク及び記録媒体の組合せごとに複数回計測した浸透時間の平均値を示す。7種類のインクと、3種類の記録媒体の組合せについて計測を行った。なお、液滴のサイズは、インクにより120〜190plの範囲内で差が存在する。
インクジェット用紙や写真用紙では、染料系のインク(例えばインクC)と分散系のインク(例えばインクF)とで、浸透時間に数倍(2〜9倍程度)の差を生じた。なお、インクE(顔料系)やインクG(分散系中粘度)で写真用紙への浸透時間がインクジェット用紙や再生紙の場合よりも早いという計測結果になっているが、これは、浸透が完全には起こらずに用紙の表面に留まった状態を計測したと考えられる。
再生紙は、用紙の空隙径が最も大きいため、分散系インクの粒径の大きさの影響が少なかったものと考えられる。
ドットの定着が「表面固化型」の場合には、インクの種類、記録媒体の種類、ドット径、UV(紫外線)照射エネルギーや熱エネルギー等の固化に要するエネルギー、温度や湿度等の環境条件等をパラメータとして、これらパラメータに対応する固化に要する時間を、定着時間として、テーブル情報を予め作成し、記憶手段81に予め記憶させておく。
次に、本発明に係わる一実施形態の画像形成装置の動作について、図5のフローチャートに従って説明する。
以下、着弾干渉について最も厳しい条件であるベタ画像を打滴する場合に関して説明する。なお、ベタ画像は、本発明の理解を容易にするために例として説明するのであって、実際のプリント画像では、画像信号に応じてノズルから選択的にインクを吐出することでベタ画像以外の画像も形成できることは言うまでもない。また、インクが単色である場合について説明するが、複数色のインクを用いる場合であっても、同様の打滴制御を各色のインク毎に行うことができる。
まず、画像信号がホストコンピュータ等から画像信号入力手段84に入力される(S2)。
画像信号には、一般に、記録媒体上に形成する画像を示すデータ(画像データ)と出力解像度Rsが含まれる。画像処理手段85が画像データを編集して出力解像度を決定する場合もある。
なお、副走査方向のドットの重なり度がVsであり、主走査方向のドットの重なり度がVmであり、斜め方向のドットの重なり度がVαであるものとする。
次に、定着時間特定手段91により、ドット毎(ドット単位)の定着時間Tfixを特定する(S4)。
具体的には、記憶手段81に予め記憶されたテーブル情報を用いて、インクの種類、記録媒体の種類、ドット径等の画像形成に係るパラメータに基づいて、ドットの定着時間Tfixを特定する。
インクの種類は、例えば、画像形成装置10に取り付け及び取り外しが可能なインクカートリッジ(図示を省略)からインクの種類を示す識別情報を読み取って取得する。記録媒体の種類は、例えば、記録媒体から記録媒体の種類を示す識別情報を読み取って取得する。これらのインクの種類を示す識別情報や記録媒体の種類を示す識別情報の読取態様には各種あり、例えば、無線、磁気的あるいは光学的に読み取る。ドット径は、画像データから画像処理を経て生成されたノズル駆動信号によって特定され、一方、ノズルからの吐出量(吐出体積)は、インク及び記録媒体によって決定される。インク及び記録媒体が同一であっても、ノズルからの吐出量を切り替えることにより、ドット径を切り替えることが可能である。
次に、打滴順序設定手段92により、記録媒体上で主走査方向及び副走査方向に形成されるドットパターンの打滴順序を、ドットの重なり度に基づいてグループ化する(S6)。
ここでは、少なくとも斜め方向のドットの重なり度Vαに基づいて打滴順序を設定する態様について、グループ化のステップ(S6)を詳細に説明する。
まず、ドットの打滴順序を示す打滴順序パターンを仮設定する(S61)。
具体的には、副走査方向については、斜め方向のドットの重なり度Vα及び主走査方向のドットの重なり度Vmに基づいて、(Vα×Vm−1)ドットおきに打滴されるように、Vα×Vmをグループの基本単位Mとして、連続して並ぶVα×Vmドットごとに、グループを形成する。詳細には、第1番目のドットから第(Vα×Vm)番目のドットまでを第1グループに配属させて、以降、(Vα×Vm)ドット毎にひとつずつグループを形成していく。
また、主走査方向においては、主走査方向のドットの重なり度Vmに基づいて、(Vm−1)ドットおきに打滴されるように、且つ主走査方向において隣接するドット間にVαドット分の位相差を設定する。このように主走査方向に隣接して重ねて打滴されるドット同士を配列させることで、主走査方向及び斜め方向の隣接ドット間の打滴時間差をドットの定着時間より大きくすることができ、着弾干渉を防止することが可能となる。
なお、副走査方向のドットの重なり度Vsと、Vα×Vmとを比較する(S62)。
Vs>Vα×Vmである場合には、仮設定した打滴順序パターンを変更する(S63)。具体的には、副走査方向については、副走査方向のドットの重なり度Vsに基づいて、(Vs−1)個おきに打滴されるように、Vsをグループの基本単位Mとして、連続して並ぶVsドットごとに、グループを形成する。詳細には、第1番目のドットから第Vs番目のドットまでを第1グループに配属させて、以降、Vsドット毎にひとつのグループを形成していく。主走査方向については、主走査方向において隣接するドット間に位相差を設定する。
このようにしてグループを形成した後(S61、S62)、打滴順序パターンを最終設定する(S64)。ここでは、打滴時間差設定手段93及び打滴制御手段95に対して打滴順序パターンを設定する。
次に、隣接ドット間の打滴時間差を設定するため、打滴順序設定手段92により設定された打滴順序に応じてノズルの吐出周期Tjetを設定する(S8)。
具体的には、Tjet≧(Tfix−Tpass)/Nとなるようにノズルの吐出周期Tjetを設定する。ここで、Tfixは、ステップS4において特定された定着時間である。Tpassは、記録紙が回転ドラム33に巻きつけられていない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間である。Nは、グループ数である。このようにしてノズルの吐出周期Tjetが設定されることにより、互いに重なり合う全ての隣接ドット間の打滴時間差がドット毎の定着時間以上となるように設定される。
そして、ステップS6において設定された打滴順序に基づいて、ステップS8において設定された吐出周期Tjetで、ノズルから記録紙に対して打滴がされることにより、画像が記録紙上に形成される(S10)。具体的には、回転ドラム33が1回転目のときに、第1群に属するドットを連続的に吐出周期Tjetで打滴し、回転ドラム33が2回転目のときに、第2群に属するドットを連続的に吐出周期Tjetで打滴し、以降同様に、回転ドラム33がM回転目のときに、第M群に属するドットを連続的に吐出周期Tjetで打滴する。
以上説明した画像形成処理の各ステップは、実際には、記憶手段81に予め記憶されたプログラムにしたがって、マイクロコンピュータにより実行される。
ここで、ドットの重なり度(Vs、Vm、Vα)が異なる各種のドットパターンのグループ化について例を示す。
なお、以下に説明する各種の例において、いずれも下記の前提条件を満たすものとする。
[前提条件]
記録媒体(A4)の副走査方向の長さLp=300mm
出力解像度Rs=2400dpi(ドットピッチPt=10.6μm)
記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dot
図6は、ドットの重なり状態の第1の例を示す。
図6において、副走査方向のドットの重なり度Vsは「3」であり、主走査方向のドットの重なり度Vmは「3」である。
注目ドット111が存在する位置(i行,j列)を、第1副走査行かつ第1主走査列(1行,1列)とすると、(2行,3列)にあるドット112とは重なる一方で、(2行,4列)にあるドット113とは重ならない。すなわち、斜め方向のドットの重なり度Vαは「3」である。なお、本段落では、斜め方向のドットの重なり度Vαを説明するために、便宜上、副走査方向に並んだ複数のドットを「行」と定義し、主走査方向に並んだ複数のドットを「列」と定義したが、本段落以外では、副走査方向に並んだ複数のドットをドット列と呼んでいる。
グループ化の基本単位M=Vα×Vm=9である。このような基本単位M=9でグループ化した場合の打滴順序パターンの一部を図7に示す。
前述の前提条件により、記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dotなので、グループ数N=K/M=28301dot/9=3145である。
ドット毎の定着時間Tfix=30ms、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.030/3145=9.5μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=477rpmである。
ドット毎の定着時間Tfix=200ms、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.200/3145=63.6μsecである。回転ドラム33の回転数は、ノズルの吐出周期Tjetを63.6μsecとすると、1/(Tjet×N)×60=300rpmである。
図8は、ドットの重なり状態の第2の例を示す。
図8において、副走査方向のドットの重なり度Vsは「3」であり、主走査方向のドットの重なり度Vmは「3」である。
注目ドット121が存在する位置(i行,j列)を、第1副走査行かつ第1主走査列(1行,1列)とすると、(2行,2列)にあるドット122とは重なる一方で、(2行,3列)にあるドット123とは重ならない。すなわち、斜め方向のドットの重なり度Vαは「2」である。なお、本段落では、斜め方向のドットの重なり度Vαを説明するために、便宜上、副走査方向に並んだ複数のドットを「行」と定義し、主走査方向に並んだ複数のドットを「列」と定義したが、本段落以外では、副走査方向に並んだ複数のドットをドット列と呼んでいる。
グループ化の基本単位M=Vα×Vm=6である。このような基本単位M=6でグループ化した場合の打滴順序パターンの一部を図9に示す。
前述の前提条件により、記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dotなので、グループ数N=K/M=28301dot/6=4717である。
ドット毎の定着時間Tfix=30msecである場合、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.030/4717=6.3μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=318rpmである。
ドット毎の定着時間Tfix=200msである場合、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.200/4717=42.3μsecである。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=301rpmである。
図10は、ドットの重なり状態の第3の例を示す。
図10において、副走査方向のドットの重なり度Vsは「3」であり、主走査方向のドットの重なり度Vmは「2」である。
注目ドット131が存在する位置(i行,j列)を、第1副走査行かつ第1主走査列(1行,1列)とすると、(2行,3列)にあるドット132とは重なる一方で、(2行,4列)にあるドット(図示を省略)とは重ならない。すなわち、斜め方向のドットの重なり度Vαは「3」である。なお、本段落では、斜め方向のドットの重なり度Vαを説明するために、便宜上、副走査方向に並んだ複数のドットを「行」と定義し、主走査方向に並んだ複数のドットを「列」と定義したが、本段落以外では、副走査方向に並んだ複数のドットをドット列と呼んでいる。
グループ化の基本単位M=Vα×Vm=6である。このような基本単位M=6でグループ化した場合の打滴順序パターンの一部を図11に示す。
前述の前提条件により、記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dotなので、グループ数N=K/M=28301dot/6=4717である。
ドット毎の定着時間Tfix=30msである場合、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.030/4717=6.3μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=318rpmである。
ドット毎の定着時間Tfix=200msである場合、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.200/4717=42.3μsecである。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=301rpmである。
図12は、ドットの重なり状態の第4の例を示す。
図12において、副走査方向のドットの重なり度Vsは「3」であり、主走査方向のドットの重なり度Vmは「2」である。
注目ドット141が存在する位置(i行,j列)を、第1副走査行かつ第1主走査列(1行,1列)とすると、(2行,2列)にあるドット142とは重なる一方で、(2行,3列)にあるドット143とは重ならない。すなわち、斜め方向のドットの重なり度Vαは「2」である。なお、本段落では、斜め方向のドットの重なり度Vαを説明するために、便宜上、副走査方向に並んだ複数のドットを「行」と定義し、主走査方向に並んだ複数のドットを「列」と定義したが、本段落以外では、副走査方向に並んだ複数のドットをドット列と呼んでいる。
グループ化の基本単位M=Vα×Vm=4である。このような基本単位M=4でグループ化した場合の打滴順序パターンの一部を図13に示す。
前述の前提条件により、記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dotなので、グループ数N=K/M=28301dot/4=7076である。
ドット毎の定着時間Tfix=30msである場合、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.030/7076=4.2μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=212rpmである。
ドット毎の定着時間Tfix=200msである場合、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.200/7076=28.2μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期
よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐
出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=212rpmである。
図14は、ドットの重なり状態の第5の例を示す。
図14において、副走査方向のドットの重なり度Vsは「2」であり、主走査方向のドットの重なり度Vmは「2」である。
注目ドット151が存在する位置(i行,j列)を、第1副走査行かつ第1主走査列(1行,1列)とすると、(2行,2列)にあるドット152とは重なる一方で、(2行,3列)にあるドット(図示を省略)とは重ならない。すなわち、斜め方向のドットの重なり度Vαは「2」である。なお、本段落では、斜め方向のドットの重なり度Vαを説明するために、便宜上、副走査方向に並んだ複数のドットを「行」と定義し、主走査方向に並んだ複数のドットを「列」と定義したが、本段落以外では、副走査方向に並んだ複数のドットをドット列と呼んでいる。
グループ化の基本単位M=Vα×Vm=4である。このような基本単位M=4でグループ化した場合の打滴順序パターンの一部を図15に示す。
前述の前提条件により、記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dotなので、グループ数N=K/M=28301dot/4=7076である。
ドット毎の定着時間Tfix=30msである場合、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘ
ッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.030/7076=4.2μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出
周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=212rpmである。
ドット毎の定着時間Tfix=200ms、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.200/7076=28.2μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さ
くすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=212rpmである。
図16は、ドットの重なり状態の第6の例を示す。
図16において、副走査方向のドットの重なり度Vsは「2」であり、主走査方向のドットの重なり度Vmは「2」である。
注目ドット161が存在する位置(i行,j列)を、第1副走査行かつ第1主走査列(1行,1列)とすると、(2行,2列)にあるドット163とは重ならない。すなわち、斜め方向のドットの重なり度Vαは「1」である。なお、本段落では、斜め方向のドットの重なり度Vαを説明するために、便宜上、副走査方向に並んだ複数のドットを「行」と定義し、主走査方向に並んだ複数のドットを「列」と定義したが、本段落以外では、副走査方向に並んだ複数のドットをドット列と呼んでいる。
グループ化の基本単位M=Vα×Vm=2である。このような基本単位M=2でグループ化した場合の打滴順序パターンの一部を図17に示す。
前述の前提条件により、記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dotなので、グループ数N=K/M=28301dot/2=14151である。
ドット毎の定着時間Tfix=30ms、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.030/14151=2.1μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=106rpmである。
ドット毎の定着時間Tfix=200ms、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.200/14151=14.1μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=106rpmである。
次に、斜め方向の重なり度Vαを用いないでグループ化を行う場合の例について説明する。
図18は、副走査方向のドットの重なり度Vs=3、主走査方向のドットの重なり度Vm=3である場合のドット同士の重なり状態を示す。
ここでは、斜め方向の重なり度Vαには着目しないで、副走査方向におけるドットの重なり度Vs及び主走査方向におけるドットの重なり度に着目して、グループ化を行う。
図19にグループ化した打滴順序パターンの一部を示す。
具体的には、記録紙上にベタ画像が形成される場合に、副走査方向において(Vs−1)ドットおきに打滴されるとともに主走査方向において(Vm−1)ドットおきに打滴されるように、主走査方向及び副走査方向に2次元配列されてなるドット配列を、副走査方向のドット数がVsで主走査方向のドット数がVmであるブロックを基本単位としてグループ化することにより、打滴順序を設定する。
別の観点からグループ化を説明すると、基本単位MをM≧Vsを満たす整数として、副走査方向において(M−1)ドットおきに打滴されるとともに、iを0以上の整数として、主走査方向において第(i×Vm+1)番目の主走査線から第(i+1)×Vm番目の主走査線までが順次打滴されるように、打滴順序を設定する。
前述の前提条件により、記録媒体(A4)の副走査方向のドット総数K=Lp/Pt=28301dotなので、グループ数N=K/M=28301dot/3=9434である。
ドット毎の定着時間Tfix=30ms、記録媒体が存在しない部分の液滴吐出ヘッド50の通過時間Tpass=0とすると、ノズルの吐出周期Tjet≧Tfix/N=0.030/9433=3.1μsecである。しかし、実際にはノズルの吐出周期Tjetをノズルの最小吐出周期よりも小さくすることができないので、最小吐出周期が40μsecの場合には、ノズルの吐出周期Tjetも最小吐出周期である40μsecに設定する。回転ドラム33の回転数は、1/(Tjet×N)×60=159rpmである。
図6乃至図17用いて説明した斜め方向のドットの重なり度Vαを用いて打滴順序を設定する第1の設定態様と、図18及び図19を用いて説明した斜め方向のドットの重なり度Vαを用いないで打滴順序を設定する第2の設定態様とを比較する。
そうすると、第1の設定態様は、第2の設定態様と比較して、下記の利点1、2を有する。
(利点1) 斜め方向のドットの重なり度Vαに基づいて打滴順序を設定するので、ドットの重なり状態によっては、第1の設定態様は第2の設定態様よりも副走査方向の走査回数が少なくなるので、より高速に画像形成できる。例えば、図8に示すような重なり状態の場合には、第1の設定態様による印字時間は、第2の設定態様による印字時間の2/3に短縮される。
(利点2) 第1の設定態様では、回転ドラム33の1周中に全主走査線が打滴されるので、休止ノズルが殆どないことになる。一方で、第2の設定状態では、回転ドラム33の1周中に1/Vmのノズル(例えば1/3のノズル)しか打適されないので、(1−1/Vm)のノズル(例えば2/3のノズル)は休止することになるので、揮発性の高いインクでは、増粘によりノズルの目詰まりが発生し易くなる。
なお、ドットの重なり度Vs、Vm、Vαは、インクや記録媒体が同一であっても、出力する画像によっては、画像内で複数の数値が混在する場合がある。すなわち、ドット径が、大、中、小と3種類混在すると、ドット重なり度Vs、Vm、Vαはそれぞれ複数の数値を有することになる。この場合、最も大きいドット径で画像を形成した時のドットの重なり度を代表値として、打滴順序設定手段92で打滴順序を設定することで、演算負荷を低減しつつ、着弾干渉を防止して、高速且つ高画質の画像を得ることが可能となる。
以下、本実施形態の画像形成時間について考察する。
もしも、本発明を適用しない場合、ドット毎の定着時間Tfix=30ms、副走査方向の総ドット数K-=28301ドットとすると、単色のインクのみによる画像形成における総時間T1は、
T1=30msec×28301=849sec
である。
C、M、Y、Kの4色のインクを用いた画像形成における総時間T4は、
T4=849sec×4=3396sec
である。
一方で、本発明を適用した場合、ほぼ吐出周期Tjet=40μsecで全ドットを打滴可能なので、単色のインクのみによる画像形成における総時間T1は、
T1=40μsec×28301=1.13sec
となり、着弾干渉を防止しつつ、高速で画像を形成することができる。
C、M、Y、Kの4色のインクを用いた画像形成における総時間T4は、
T4=1.13sec×4=4.52sec
となる。
なお、記録媒体を回転ドラムに巻きつけて記録媒体上に直接打滴して記録媒体上にドットを形成する態様ばかりでなく、中間転写媒体として回転ドラムにドットを形成し、その後、記録媒体に転写する態様においても、本発明を適用することができる。
また、本発明は、実施形態において説明した例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってもよいのはもちろんである。
10、100…インクジェット記録装置(画像形成装置)、50、50Y、50M、50C、50K…液滴吐出ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、33…回転ドラム、33b…回転転写ドラム、42…UV照射光源、43…同期検出センサ、81…記憶手段、82…記録媒体識別情報読取手段、83…インク識別情報読取手段、84…画像信号入力手段、91…定着時間特定手段、92…打滴順序設定手段、93…打滴時間差設定手段、94…相対移動制御手段、95…打滴制御手段、300…用紙巻付/巻解し部材、350…加圧転写部材