JP3969374B2 - 自動車の後輪サスペンション装置 - Google Patents
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このような5本のIリンクからなるマルチリンク式サスペンションは、後車輪の上下ストロークを除く5つの運動の自由度に対してそれぞれの要求に合わせて最適に拘束するよう各Iリンクを配設することが可能であることから、性能的に高いポテンシャルを有しているサスペンション形式であると言える。
つまり、5本のIリンクから成るマルチリンク式サスペンションにおいては、その自由度の高さ故に、走行中の多様な挙動に対して不安定となる場合があるため、5本のIリンク全てと車体側とは弾性ブッシュを介して連結する一方で、後車輪支持部材とは、5本のIリンク全てについて、連結に際し上下方向以外の変位を生じさせないボールジョイントを介して連結させコンプライアンス量を必要最低限に限ることが操安性の観点からは望ましい。
しかしながら、後車輪支持部材に連結される5本全てのIリンクを、ボールジョイントを介して連結するよう構成すると、走行中における後車輪の車両前後方向の変位に対して、Iリンクと車体側とを連結する弾性ブッシュのみで吸収するだけになり、乗り心地の観点から見れば好ましいこととは言い難い。そこで、操安性と乗り心地の両立を図るために5本のリンクの内、路面からの距離が短くて、前後方向の変位を許容しやすいロワトレーリングリンクのみについては、弾性ブッシュを介して後車輪支持部材と連結させ、これにより乗り心地を向上させていた。
これについて、5本のIリンクから成るマルチリンク式サスペンションについて、特に2本のロワリンクを模式的に示した図18を参照して、具体的に説明する。尚、図18において、実線が制動前の状態を示しており、破線が制動中の状態を示している。後車輪T1を車軸TCjにて支持する後車輪支持部材T2には、車軸TCjよりも下部において、車両前後方向との成す角が小さく(鋭角)、主に車両前後方向の力を調整するロワトレーリングリンクT3と、車両前後方向との成す角が大きく(略90°に近い)、主に車幅方向の力を調整するロワラテラルリンクT4とが、それぞれ弾性ブッシュT5、ボールジョイントT6を介して連結されており、各リンクT4,T5の車体側は、弾性ブッシュT7,T8を介して連結されている。
車両の制動時において、後車輪T1に対して車両後方側を指向する制動力Fbが発生するが、この制動力Fbによって、後車輪支持部材T2の車軸TCjよりも下方側と連結されたロワトレーリングリンクT3と後車輪支持部材T2との連結部分には、制動力Fbが車両後方側に作用するため、ロワトレーリングリンクT3には、当該リンクの延設方向上に、車両後方で車両斜め外方側の方向を指向する力Flが作用することになる(更に図6のFb、Flも参照)。このような車両後方側で、斜め外方側に向かって引っ張れらる力Flにより、ロワトレーリングリンクT3と車両側とを連結する弾性ブッシュT7と、ロワトレーリングリンクT3と後車輪支持部材T2とを連結する弾性ブッシュT5とは、引っ張られる方向に大きく伸長し、ロワトレーリングリンクT3と後車輪支持部材T2との連結部分の位置が、車両後方側で且つ車両外方側に大きく変位することになる(図17において、弾性ブッシュT5が、白丸○から黒丸●に変位)。このような車両外方側への大きな変位によって、後車輪T1はトーアウト方向のモーメント力が働き、後車輪T2はトーアウトとなってしまうのである。
これにより、制動時において、本リンクへの大きなコンプライアンスの確保は走行安定性を悪化させることとなるため必要量のコンプライアンスを確保できず、乗り心地の確保という観点で十分とは言い難いものであった。
このような構成により、まず、自動車の後輪サスペンション装置を5本リンクのマルチリンク式とすることで、後車輪の5つの運動自由度をそれぞれ最適に拘束することが可能になるので、AアームやHアームを用いたものに比べて高いポテンシャルを有するとともに、各リンクの車体側端部における弾性ブッシュの介在によって優れた乗り心地を得ることができる。
また、こうした車体側に対して弾性ブッシュを介して連結した5本のリンクからなるマルチリンク式の後輪サスペンション装置において、制動時に、後車輪を確実にトーインにすることができ、制動時の走行安定性を確保することが可能となるとともに、後車輪の前後方向の変位を許容することで、乗り心地の向上を図ることが可能となる。
具体的には、マルチリンク式の後輪サスペンションにおいて、車体側に対して弾性ブッシュを介して連結した5本のリンクの内、更に、少なくとも2本のロワリンクの中で、車体前後方向との成す角が他のロワリンクより小さく、主に車体前後方向の力を調整可能なロワトレーリングリンクは、ボールジョイントを介して後車輪支持部材に連結している。これにより、制動時において、上述のようにロワトレーリングリンクに作用する車両後方側で、車両斜め外方側への引っ張り力により、ロワトレーリングリンクと車体側とを連結する弾性ブッシュが若干伸長するのみであり、ロワトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結部分の位置が、車両外方側に大きく変位することはない。寧ろ、ロワトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結部分が車両外方側に大きく変位することが抑制されるため、このような引っ張り力により、ロワトレーリングリンクは、ロワトレーリングリンクと車体側との連結部分、つまり車体側端部を中心として後方側に積極的に回動することになり、これによって、後車輪を確実にトーインにすることが可能となる。
一方、2本のアッパリンクの内、車両前後方向との成す角が小さく、主に車体前後方向の力を調整可能なアッパトレーリングリンクは、弾性ブッシュを介して後車輪支持部材に連結している。
アッパトレーリングリンクは、後車輪支持部材の車軸よりも上方側に連結されているため、後車輪に作用する制動力により、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結部分には、車両前方側に指向する力が作用し、これにより、アッパトレーリングリンクには、当該リンクの長手方向に沿うように、車両前方側で、車両斜め内方側の方向を指向する力が作用することになる。こうした車両前方側で、斜め内方側に向かって押すような力により、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材とを連結する弾性ブッシュと、アッパトレーリングリンクと車体側とを連結する弾性ブッシュとの双方が圧縮されるため、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結部分と、アッパトレーリングリンクと車体側との連結部分との間の距離が短くなる。これにより、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結部分の位置は、車両内方側に位置することになり、よって、後車輪をトーインにすることが可能となる。
このように、本発明においては、アッパトレーリングリンク及びロワトレーリングリンクの双方によって、後車輪を確実にトーインにすることが可能となり、走行安定性を向上することができる。
尚、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結、及びロワトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結の双方を、弾性ブッシュを介しておこなうことで、これら2本のリンクによって、後車輪へのトーアウト方向へのモーメント力を相殺可能であるが、この場合、トー剛性が比較的弱くなる。これに対し、本発明のように、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結は弾性ブッシュにより行い、ロワトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結はボールジョインとにより行うことで、トー剛性を向上できる。
また、本発明においては、後車輪支持部材に対して、5本のリンク全てをボールジョイントを介して連結する場合に比べ、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材との連結のみを、弾性ブッシュを介して連結することで、後車輪から車体側に伝達される振動を低減しつつ、5本のリンクによる自由度の高さ故の不安定な挙動を抑制することが可能となる。
また、アッパトレーリングリンクを、弾性ブッシュを介して後車輪支持部材に連結することによっても、走行中における後車輪の前後の変位を許容することが可能であり、これにより乗り心地を向上することも可能となる。
しかも、前記後車輪にはその支持部材を介して緩衝装置反力によりトーインの向きのモーメント力が作用していて、予め各リンクの弾性ブッシュが車輪のトーインの向きに付勢(予圧縮)されているので、自動車の旋回時に弾性ブッシュの撓みによる遅れを排除して旋回外方の後車輪に対し直ちにトーインを付与することが可能になる。これにより、マルチリンク式サスペンションとしては、位相遅れの少ない、即ち極めて剛性感や応答性の高いシャープな運転感覚とすることができる。すなわち、一般的には運転者により操舵が行われると自動車に横加速度が発生し、これに伴い旋回外方への荷重移動が生じて各車輪にコーナリングフォースが発生するのだが、本発明のようにコーナリングフォースが発生する段階よりも早い荷重移動の段階、即ち上下力が発生した段階で、この力によって後車輪にトーインを付与するようにすれば、コーナリングフォースの発生を早めることができ、これにより位相遅れが少なくなるのである。
さらに、前記緩衝装置の上下反力により、後車輪にはその支持部材を介して負キャンバの向きのモーメント力が作用していて、このモーメント力が自動車の旋回外方の後車輪においても横力の限界領域まで常にその横力による正キャンバのモーメント力よりも大きくなるから、後車輪の各リンクの弾性ブッシュにはキャンバ変化について常に一定の向きの付勢力が作用することになり、このことで、微視的な車輪のふらつきが発生しなくなって運転感覚の悪化や不自然な挙動が解消され、極めて高い操縦安定性を備えた後輪サスペンション装置を実現できる。
また、このように、各リンクの車体側の弾性ブッシュを予圧縮することで、自動車の旋回時に、車体側の弾性部材の撓みによる遅れを排除して、極めて剛性感や応答性の高いシャープな運転感覚とすることができるが、このような構成においては、各リンクと車体側とを連結する弾性ブッシュが予圧縮されているために、後車輪から車体側に伝達される振動を、この車体側のブッシュにより大きく低減できない。
しかしながら、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材とを、弾性ブッシュを介して連結することにより、この弾性ブッシュによって、後車輪から車体側へ伝達される振動の低減が可能となる。
更に、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材とを、弾性ブッシュを介して連結するだけでなく、ロワトレーリングリンクと後車輪支持部材とを、ボールジョイントを介して連結することによって、上述の請求項1記載の発明と同様に、制動時において、後車輪をトーインにすることが可能となり、制動時の走行安定性を確保することが可能となる。
また、上述の請求項1記載の発明と同様に、アッパトレーリングリンクを、弾性ブッシュを介して後車輪支持部材に連結しており、これにより、走行中における後車輪の前後の変位を許容し、乗り心地を向上することも可能となる。
上述のように、請求項2記載の発明においては、各リンクの車体側の弾性ブッシュを予圧縮することで、自動車の旋回時に、車体側の弾性部材の撓みによる遅れを排除して、極めて剛性感や応答性の高いシャープな運転感覚を実現できる。一方、このように車体側の弾性ブッシュを予圧縮すると、路面から後車輪に入力された振動を、車体側の弾性ブッシュで低減することが多少阻害されるが、アッパトレーリングリンクと後車輪支持部材とを、弾性ブッシュを介して連結することにより、後車輪から車体側へ伝達される振動を積極的に低減する構成が実現されることになる。
このように、請求項2記載の発明に係る構成では、後車輪から車体側へ伝達される振動の抑制がなされているため、請求項3記載の発明において、各リンクの車体側端部と連結されるサブフレームを車体に固定することで、車体側への振動伝達を抑制しつつ、サブフレームによる車体剛性の強化を図ることが可能となる。
そこで、請求項4記載の発明においては、後車輪の仮想キングピン軸を上端側ほど車体後方に位置するように傾斜させ、緩衝装置を、その軸心が前記仮想キングピン軸よりも車体内方に位置して当該仮想キングピン軸と非平行であり且つ交わらないとともに、車体側方から見て軸心の方向が仮想キングピン軸と比べて鉛直に近くなるように配置する。
そこで、自動車の旋回外方の後車輪への分担荷重や該後車輪の最大グリップ力、緩衝装置のコイルバネの硬さ(バネ定数)、或いは、緩衝装置反力によって後車輪に生じるモーメント力の腕の長さ等を相互の関係において適切に設定すれば、該緩衝装置の上下反力により後車輪に対して十分に大きな負キャンバのモーメント力を作用させることができ、このモーメント力を横力の限界領域まで横力による正キャンバのモーメント力よりも大きくすることができる。
より具体的には、前記緩衝装置の上下反力によって後車輪に作用する負キャンバの向きのモーメント力は、当該緩衝装置の軸心から後車輪中心までの距離(モーメントの腕の長さ)と緩衝装置反力との積として表される。ここで、緩衝装置の上下反力そのものは後車輪への分担荷重やコイルバネの硬さ、即ち自動車のロール特性に基づいて決定されるものなので、前記負キャンバの向きのモーメント力を十分に大きくしようとすると、実質的にその腕の長さを長くする必要がある。従って、例えば、自動車の旋回時に後車輪に最大の横加速度が発生している限界領域を想定し、そのときに限界の横力によって後車輪に作用する正キャンバのモーメント力よりも緩衝装置反力による負キャンバのモーメント力が大きくなるように、前記モーメントの腕の長さを設定すればよいのである。
また、請求項6の発明では、前記請求項5の発明における連結部を、車体前後方向に見て、後車輪の支持部材本体の上下両端側から車体内方に向かって延びて先端部で一体となった上腕部及び下腕部と、該上腕部及び下腕部をそれぞれの車幅方向中間部にて連結するように上下方向に延びる中間腕部とを有し、この中間腕部から連結部の先端に亘って架設した支軸の端部を車体内方に突出させて、ここに緩衝装置の下端部を取り付ける構成とする。
この構成では、まず、連結部を上腕部、下腕部及び中間腕部からなる横向きの略A字形状としたことで、上下方向の荷重に対して十分な剛性を確保しながら軽量化することができる。そして、そのA字の横棒(中間腕部)から先端部に亘って十分に大きな間隔を空けて2点で取り付けた支軸に対して緩衝装置を取り付けることで、該緩衝装置の上下反力を後車輪に対して確実に伝えることができる。
こうすれば、後車輪への横力の作用点が仮想キングピン軸よりも車体前方に位置することになり、その横力によって直接的にトーインの向きのモーメント力が発生する。すなわち、自動車の旋回外方の後車輪に対して横力によるトーインを付与して、その挙動を安定化させることができる。しかも、後車輪には予め緩衝装置反力によってトーインの向きの付勢力が付与されているので、結局、旋回外方の後車輪は一貫してトーインの向きに付勢されることになり、このことによって自然な運転感覚と高い安定感が得られる。
請求項8の発明では、緩衝装置を、その上下反力によって後車輪に作用する車体前後方向の付勢力が微小ないし零となるように配置する。
このことで、緩衝装置から後車輪の支持部材に作用する上下反力が非常に大きくても、この力によって後車輪に作用する車体前後方向の力は微小なものとすることができ、この力によって自動車の走行中に後車輪の前後方向の変位が過度に規制されることがなくなって、路面不整等に対しても良好な乗り心地が得られるようになる。換言すれば、緩衝装置軸心の傾斜角度や後車輪中心との間の車体前後方向の距離を、該緩衝装置の上下反力によって生じる後車輪への前後力が十分に小さくなるように、乗り心地等の要求に応じて実験的に設定すればよい。
請求項11の発明では、緩衝装置を、その上下反力によって後車輪を車体前方に付勢するように配置する。すなわち、本発明において最も重要な点は、マルチリンク式の後輪サスペンション装置において緩衝装置の上下反力を後車輪に対して負キャンバの向きで且つトーインの向きに作用させることであるが、こうしたときには、前記請求項8の発明のように緩衝装置反力によって後車輪に作用する車体前後方向の力を小さくすることはできても、それを零にすることはできない場合がある。
そこで、この発明では、そのように後車輪に作用する車体前後方向の力の向きを車体前方へ向かうものとしている。こうすることで、後車輪の各リンクの弾性ブッシュにはそれぞれ車体前方への付勢力が作用することになり、この状態で後車輪に路面不整等によるショックが入力すると、弾性ブッシュに作用する力の向きが反転して該弾性ブッシュが逆向きに撓むことにより、後車輪が車体後方に変位してショックを逃がすことができるようになる。従って、緩衝装置の上下反力によって後車輪に車体前後方向の力が作用しても、良好な乗り心地を得ることが可能になる。
こうすると、緩衝装置の上下反力によって支持部材には後車輪の軸心周りのモーメント力が発生し、このモーメント力が後車輪を支持するアッパリンク及びロワリンクに対してそれぞれ車体前後方向の付勢力を付与することになる。すなわち、例えば後車輪を車体の左側から見たとき、緩衝装置の上下反力は後車輪中心よりも向かって右側(車体後方)で支持部材に対し略鉛直上方から作用するようになり、この結果として時計回りのモーメント力が発生する。このモーメント力により、アッパリンクが向かって右側(車体後方)に付勢されてその弾性ブッシュに車体後方への付勢力が作用する一方、ロワリンクは向かって左側(車体前方)に付勢されてその弾性ブッシュには車体前方への付勢力が作用することになる。
そして、前記ロワリンクの弾性ブッシュを比較的柔らかなものとしたことで、後車輪に路面不整等によるショックが入力したときには、ロワリンクの弾性ブッシュが力の反転によって逆向きに撓み、これにより後車輪の車体後方への変位が許容されることになり、このことで、請求項9の発明と同様に良好な乗り心地を得ることが可能になる。
しかも、自動車の加速時には車体のスクォットによって後輪サスペンションのバンプ量が増大し、これにより緩衝装置のコイルバネが圧縮されるから、バンプ量の増大に応じて、即ち駆動力の増大に応じて緩衝装置の上下反力が増大することになる。従って、急加速時ほど弾性ブッシュへの付勢力が増大することになり、大きな駆動力に対しても遅れなく高い加速応答性が得られる。
一方、そのように弾性ブッシュを予め車体前方へ付勢していると、自動車の制動時に後車輪に対し路面から制動力(後ろ向きの力)が作用したときには、この制動力が前記の付勢力に打ち勝って弾性ブッシュの撓みの向きが逆向きになった後に初めて、車体に制動力が伝達されることになるから、車体の制動が遅れてブレーキフィーリングが悪化する虞れがある。
しかし、自動車の制動時には車体のノーズダイブによって後輪サスペンション装置のリバウンド量が増大し、これに応じて、即ち制動力の増大に応じて緩衝装置の上下反力が低下することになるから、この反力による弾性ブッシュへの付勢力も減少して、その分、早く弾性ブッシュの撓みの向きが逆転することになり、結局、ブレーキフィーリングの悪化はあまり問題にはならないと考えられる。
尚、前記各リンク及び緩衝装置の配置により、サスペンションのバンプ時に緩衝装置の軸心が車体側方視で後車輪の中心から離れるように構成してもよく、こうすれば、自動車の加速時に後輪サスペンションのバンプ量が増大するときに、このバンプ量の増大に対して比例関係よりも急な割合で弾性ブッシュへの付勢力を増大させることができる。同様に、リバウンド時に緩衝装置軸心が後車輪中心に近づくように構成すれば、そのリバウンド量の増大に対して反比例関係よりも急な割合で弾性ブッシュへの付勢力を減少させることができる。従って、そのようにすれば、前記発明の作用効果を高めることが可能になる。
これに対し、この発明では、2本のロワリンクの配置により、制動時に後車輪の車体後方への変位によって幾何学的にトーインが付与されるようにしており、このことで、後車輪と路面との間での制動力の発生が早まるので、上述した弾性ブッシュの撓みによる制動力の伝達遅れを補完して、ブレーキフィーリングの悪化を防止することができる。
請求項16の発明では、車体に対する後車輪の近接変位を規制するバンプストッパが緩衝装置と同軸上に配設されており、緩衝装置の上下反力によって後車輪に作用するトーインの向きのモーメント力を、バンプストッパの作用によって前記緩衝装置反力が増大することにより増大するように構成した。
すなわち、一般的に、自動車の旋回時の挙動を安定化させるためには、横加速度の増加に略比例するように後車輪のトーイン量を増大させることが好ましく、このトーインの変化の度合いが途中で変化すると、そのときに自動車の挙動に大きな変化が生じる虞れがある。しかし、バンプストッパを設けた場合には、これによりサスペンションのストロークが規制されることによって、例えばロールステアによるトーイン量の増大の度合いが急低下することが避けられない。このことは従来、多くの自動車において旋回時に横力の限界付近で後車輪がグリップを失い、大きな挙動変化を招くという好ましくない性質を持つことの原因となっていた。
これに対し、この発明では、サスペンションのバンプ時に緩衝装置のコイルバネが圧縮されて、その反力が横力に対し略比例して増大するとともに、これと同軸に設けられたバンプストッパが作用することによって緩衝装置全体としてのバネ定数が一段、高くなり、該緩衝装置の上下反力が急増して、この反力によるトーインのモーメント力が相乗的に増大することになる。このことで、上述したロールステア等によるトーイン量の急変化を相殺して、自動車の限界領域での挙動変化を抑制し、その走行安定性を向上することができる。
前記の構成により、請求項2及び4の発明と同様の作用効果が得られる。
請求項2の発明に係る自動車の後輪サスペンション装置によると、車体側の端部に弾性ブッシュを備えた5本のリンクからなるマルチリンク式の後輪サスペンション装置において、緩衝装置の上下反力を積極的に利用して後車輪に予め負キャンバで且つトーインの向きのモーメント力を作用させるとともに、その負キャンバの向きのモーメント力が横力による正キャンバの向きのモーメント力と比較して、横力の限界領域まで常に大きくなるようにしたことで、弾性ブッシュの介在による良好な乗り心地を確保しながら、その撓みに起因する剛性感の低下等を解消し、且つ車輪の微視的なふらつきをなくして、スポーツカーにも適用し得る極めてシャープな運転感覚と高い操縦安定性とを実現できる。
更に、制動時に、後車輪を確実にトーインにして、制動時の走行安定性を確保することが可能となるとともに、後車輪の前後方向の変位を許容することで、乗り心地の向上を図ることが可能となる。
請求項3の発明によると、後車輪から車体側へ伝達される振動を抑制した状態で、サブフレームによる車体剛性の強化を図ることが可能となる。
請求項5の発明によると、緩衝装置の下端部を後車輪の支持部材に一体に形成した連結部に枢着することで、その連結部の強度を確保しながら軽量化して、バネ下重量の増大を抑制できる。
請求項6の発明によると、後車輪の支持部材の連結部を車体前後方向に見て横向きの略A字状をなすものとしたことで、十分な剛性の確保と軽量化とを併せて実現できる。
請求項7の発明によると、後車輪の仮想キングピン軸をキャスタトレールが負値となるように設定したことで、旋回外方の後車輪に対して横力により直接的にトーインの向きのモーメント力を作用させることができ、これにより自動車の挙動を安定化できる。
請求項8の発明によると、緩衝装置からの上下反力が後車輪に対して車体前後方向についてあまり大きく作用しないようにして、路面不整等による乗り心地の悪化を防止することができる。
請求項9の発明によると、緩衝装置の軸心を車体側方から見て略鉛直とすることで、前記請求項8の発明の効果を十分に得ることができる。
請求項11の発明によると、弾性ブッシュが緩衝装置反力によって車体後方へ付勢されることがないので、路面不整等による乗り心地の悪化を防止することができる。
請求項12の発明によると、緩衝装置の軸心を後車輪中心よりも車体後方に位置付けて、その上下反力によりロワリンクに車体前方への付勢力を付与するとともに、そのロワリンクの弾性ブッシュを柔らかなものとしたことで、前記請求項11の発明と同様に路面不整等によるショックを吸収、緩和して良好な乗り心地を得ることができる。
請求項13の発明によると、後車輪が自動車の駆動輪である場合には、緩衝装置の上下反力によって弾性ブッシュを予め車体前方へ付勢するようにしたことで、その弾性ブッシュの撓みによる駆動力の伝達遅れを軽減して、加速応答性を向上することができる。
請求項14の発明によると、2本のロワリンクの配置構成により、自動車の制動時に制動力によって後車輪にトーインを付与して路面との間での制動力の発生を早めることができるので、弾性ブッシュの撓みによって車体への制動力の伝達が遅れても、自動車全体としてブレーキフィーリングの悪化を防止できる。
請求項15の発明によると、自動車の旋回時に横加速度の増大に応じて後車輪のトーイン量を大きくすることができ、挙動の安定化が図られる。
請求項16の発明によると、緩衝装置と同軸に設けたバンプストッパが作用することによって当該緩衝装置の上下反力が一段、大きくなるようにしたことで、バンプストッパの作用に伴うロールステアトーインの減少を相殺して、限界領域における後車輪のトーイン量の変化を緩やかなものとすることができ、これにより自動車の走行安定性を向上できる。
尚、アッパリンク6,7の内、前側アッパリンク6は、平面視における車体前後方向との成す角が鋭角で小さく、主に車両前後方向の力を調整可能なアッパトレーリングリンクであり、後側アッパリンク7は、車体前後方向との成す角が略直角に近く、主に車幅方向の力を調整可能なアッパラテラルリンクである。また、ロワリンク8,9の内、前側ロワリンク6は、平面視における車体前後方向との成す角が鋭角で小さく、主に車両前後方向の力を調整可能なロワトレーリングリンクであり、後側リンク7は、車体前後方向との成す角が略直角に近く、主に車幅方向の力を調整可能なロワラテラルリンクである。
但し、前側アッパリンク6や、前側ロワリンク8は、それぞれホイールサポート11との連結部分から車両後方で車両内方側に斜めに傾斜して車体側に連結されるコンプレッションリンクであっても構わない。
前記サブフレーム3は、大別して4つの鋼板製部材を平面視で概ね矩形枠状に組み合わせてなるもので、各々車幅方向に延びるフロント及びリヤクロスメンバ17,18と、それらの左右両側の端部同士を連結するように車体の左右両側において前後方向に延びる一対のサイドクロスメンバ19,20とからなる。前記フロントクロスメンバ17は、車体上方から見ると略真っ直ぐに車幅方向に延びていて、車幅方向の両端部がそれぞれ左右のサイドクロスメンバ19,20の各前端側に接合されているとともに、車体前後方向に見ると、長手方向の中央部分が左右両端部よりも上方に位置するように全体に亘って大きく湾曲するアーチ形状とされている。また、フロントクロスメンバ17の左右両端側には、各々サイドクロスメンバ19,20との接合部に近接して下方に突出する取付座(図示せず)が配設されていて、この各取付座にそれぞれトーコントロールリンク10の車体側の端部が取り付けられるようになっている。
尚、マウント23,23,…は、弾性力が極めて低く固めの弾性材料を用いたものであっても構わない。
次に、図3〜5を参照しながら、車体右側のサスペンション装置Aについてそのリンク6〜10の配置構成等を詳細に説明する。まず、図3に示すように車体上方から見て、前側アッパリンク6は、その車体側の端部がゴムブッシュ26(弾性ブッシュ)を介してサイドクロスメンバ19の第2取付座19bに連結され、そこから車体外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延びていて、車輪側の端部が弾性ブッシュ27aによりホイールサポート11に連結されている。また、後側アッパリンク7は、前記前側アッパリンク6と略同じ長さであり、その車体側の端部がゴムブッシュ26を介してサイドクロスメンバ19の第3取付座19cに連結され、そこから車体外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延び、車輪側の端部がボールジョイント27bによりホイールサポート11に連結されている。
これに対して、前側ロワリンク8は、ボールジョイント27bによりホイールサポート11に連結されているため、このような、前側ロワリンク8に作用する車両後方側で車両斜め外方側への引っ張り力Flに対し、前側ロワリンク8とサブフレーム6とを連結するゴムブッシュ26が若干伸長するのみであり、前側ロワリンク8とホイールサポート11との連結部分8aの位置、つまり前側ロワリンク8の車輪側端部が、車両外方側に大きく変位することはない。寧ろ、前側ロワリンク8とホイールサポート11との連結部分が車両外方側に大きく変位することが抑制されるため、このような引っ張り力Flにより、前側ロワリンク8は、前側ロワリンク8とサブフレーム3との連結部分、つまり車体側端部を中心として後方側に積極的に回動し、後傾の度合を強めることになる。(図7の破線参照)
こうして、2本のロワリンク8,9がそれぞれゴムブッシュ26の伸縮によって車体側の端部の周りに僅かに回動変位し、これにより車輪側の端部が車両外方側を除く車体後方に変位することで、後車輪2のアライメントをトーイン方向に変化させることができる。
特に、このとき、前側ロワリンク8が車体外方に向かって後傾し、且つ後側ロワリンク9が車体外方に向かって前傾していると、それらの各リンクの回動変位に伴い、前側ロワリンク8の車輪側端部が車体内方に変位するとともに、後側ロワリンク9の車輪側端部は車体外方に変位することになるから、後車輪2のトーイン傾向を強めることが可能となる。
つまり、図6、図8に模式的に示すように、前側アッパリンク6は、ホイールサポート11の車軸Cjよりも上方側に連結されているため、後車輪2に作用する制動力Fbは、前側アッパリンク6に対しては、該リンクの長手方向に沿うように、車両前方側で、車両斜め内方側の方向を指向する力Fuが作用することになる。このような、車両前方側で、斜め内方側に向かって押すような力Fuにより、前側アッパリンク6とホイールサポート11とを連結する弾性ブッシュ27aと、前側アッパリンク6とサブフレーム3とを連結する弾性ブッシュ26との双方が圧縮されるため、前側アッパリンク6とホイールサポート11との連結部分と、前側アッパリンク6とサブフレーム3との連結部分との間の距離が短くなる(図8の破線参照)。これにより、前側アッパリンク6とホイールサポート11との連結部分の位置は、車両内方側に位置することになり後車輪2をトーインにすることが可能となるとともに、この後車輪2のトーインにより、前側アッパリンク6とホイールサポート11との連結部分の位置を、更に後方側に変位させることになり、よりトーイン傾向を強めることができる。
こうして、2本のアッパリンク6,7がそれぞれゴムブッシュ26の撓みによって車体側の端部の周りに僅かに回動変位し、車輪側の端部が車体後方に変位することで、2本のアッパリンク6,7によっても、後車輪2のアライメントをトーイン方向に変化させることができる。
特に、ロアリンク8,9と同様に、前側アッパリンク6が車体外方に向かって後傾し、且つ後側アッパリンク7が車体外方に向かって前傾していると、それらの各リンクの回動変位に伴い、前側アッパリンク6の車輪側端部が車体内方に変位するとともに、後側アッパリンク7の車輪側端部は車体外方に変位することになるから、後車輪2のトーイン傾向を強めることが可能となる。
次に、上述の如く構成されたこの実施形態のリヤサスペンションAによる作用及び効果を説明する。
まず、自動車の後輪サスペンション装置Aを5本リンクのマルチリンク式とすることで、後車輪2の5つの運動自由度をそれぞれ最適に拘束することが可能になるので、AアームやHアームを用いたものに比べて高いポテンシャルを有するとともに、ゴムブッシュ26,26,…,27aの介在によって優れた乗り心地を得ることができる。
更に、前側ロワリンク8とホイールサポート11とを、ボールジョイント27bにより連結することにより、制動時に前側ロワリンク8に作用する車両後方で車両斜め外方を指向する力に対し、前側ロワリンク8とホイールサポート11との連結位置を車両外方側を除く車両後方に変位させることができる。これにより、後車輪2のアライメントをトーイン方向に変化させることができる。
このように、前側アッパリンク6と前側ロワリンク8とのよって、後車輪2のトーイン傾向を強化できるため、後車輪2を確実にトーインにすることが可能となり、制動時における走行安定性を向上できる。
これにより、前側ロワリンク8においては、上述するように予圧縮が、前側ロワリンク8のゴムブッシュ26に作用しているため、予圧縮によりゴムブッシュ26の伸縮の余裕代が少なく、前側ロワリンク8の動きが規制されるが、前側ロワリンク8の車体外方への後傾を強めることで、予圧縮の度合を小さくしてゴムブッシュ26の伸縮の余裕代を大きくすることができる。従って、前側ロワリンクの自由度を高めることができ、トーイン傾向を強めることが可能となる。
前側アッパリンク6においては、同様に予圧縮によるゴムブッシュ26の伸縮の余裕代が大きくできるだけでなく、ゴムブッシュ27aの伸縮の余裕代も増大でき、前側アッパリンクの自由度を高めて、トーイン傾向を強めることが可能となる。
また、前側アッパリンク6を、ゴムブッシュ27aを介してホイールサポート11に連結しても、前側ロワリンク8をゴムブッシュを介してホイールサポート11に連結する場合と同様に、走行中における後車輪2の車両前後方向の変位を許容することが可能であり、これにより乗り心地を向上することも可能となる。
上述のように各リンク6,7,8,9,10の車体側のゴムブッシュ26,26,…を、予圧縮させた場合には、ゴムブッシュ26,26,…は予め圧縮され、弾性力が低減されているため、路面から後車輪2に入力され、ホイールサポート11と各リンク6,7,8,9,10を介して車体側に伝達される振動を、大幅に低減することはできない。そこで、サブフレーム3を柔らかい弾性マウントを介して車体に接続させる等して、振動を低減する必要がある。
しかしながら、上述のように、前側アッパリンク6を、ゴムブッシュ27aを介してホイールサポート11と連結させることで、このゴムブッシュ27aにより振動を吸収させることができ、車体側に伝達される振動の積極的な低減が可能となる。
特に、前側アッパリンク6は、前側ロワリンク8に比べて上方の位置で、ホイールサポート11と連結しており、ゴムブッシュ27aに働く上述の負キャンバのモーメント力Mnも比較的小さいため、ゴムブッシュ27aが予圧縮される程度も小さく、より確実に振動吸収が可能となる。
このように、ゴムブッシュ27aにより振動を低減できるため、サブフレーム3を車体に固定することが可能となり、これによって車体剛性の向上が図れる。
尚、本願発明の構成は前記実施形態のものに限定されず、その他の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記の実施形態では左右のリヤサスペンションA,Aをサブフレーム3により車体に取り付けるようにしているが、これに限らず、リヤサスペンションA,Aを直接、車体に取り付けるようにしてもよい。
K:仮想キングピン軸
X:緩衝装置の軸心
2:後車輪
3:サブフレーム
6:前側アッパリンク(アッパトレーリングリンク)
7:後側アッパリンク
8:前側ロワリンク(ロワトレーリングリンク)
9:後側ロワリンク
10:トーコントロールリンク
11:ホイールサポート(支持部材)
12:コイルバネ
13:ダンパ
14:緩衝装置
23:マウント
26:ゴムブッシュ(弾性ブッシュ)
27a:ゴムブッシュ(弾性ブッシュ)
27b:ボールジョイント
28:バンプストッパ
30:ホイールサポートの連結部
31:上腕部
32:下腕部
33:中間腕部
34:支軸
Claims (17)
- 自動車の後車輪の支持部材を5本のリンクにより車体に連結して、該各リンクの少なくとも車体側の端部にそれぞれ弾性ブッシュを配設するとともに、コイルバネ及びダンパからなる緩衝装置の下端部を前記後車輪支持部材の車体内方側に枢着してなるマルチリンク式の後輪サスペンション装置において、
前記リンクは、少なくとも2本のロワリンクと、少なくとも2本のアッパリンクとから成るとともに、該ロワリンクの内、車体前後方向との成す角が他の該ロワリンクよりも小さいロワトレーリングリンクと、該アッパリンクの内、車体前後方向との成す角が他の該アッパリンクよりも小さいアッパトレーリングリンクを含み、
前記アッパトレーリングリンクは、弾性ブッシュにより該後車輪支持部材に連結するとともに、該アッパトレーリングリンク以外の他の4本のリンクは、ボールジョイントにより前記後車輪支持部材に連結することを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 自動車の後車輪の支持部材を5本のリンクにより車体に連結して、該各リンクの少なくとも車体側の端部にそれぞれ弾性ブッシュを配設するとともに、コイルバネ及びダンパからなる緩衝装置の下端部を前記後車輪支持部材の車体内方側に枢着してなるマルチリンク式の後輪サスペンション装置において、
前記緩衝装置を、その上下反力が後車輪の仮想キングピン軸の周りにトーインの向きのモーメント力を発生させるように当該仮想キングピン軸に対して配置して、その上下反力が後車輪に対して負キャンバの向きのモーメント力を発生させるように後車輪の車体内方に離間させ、
前記緩衝装置の上下反力による負キャンバの向きのモーメント力を、自動車の旋回時に旋回外方に位置する後車輪において横力により発生する正キャンバの向きのモーメント力と比較して、その横力の限界領域まで大きくなるように設定するとともに、
前記リンクは、少なくとも2本のロワリンクと、少なくとも2本のアッパリンクとから成るとともに、該ロワリンクの内、車体前後方向との成す角が他の該ロワリンクよりも小さいロワトレーリングリンクと、該アッパリンクの内、車体前後方向との成す角が他の該アッパリンクよりも小さいアッパトレーリングリンクを含み、
前記アッパトレーリングリンクは、弾性ブッシュにより該後車輪支持部材に連結するとともに、該アッパトレーリングリンク以外の他の4本のリンクは、ボールジョイントにより前記後車輪支持部材に連結することを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項2において、
前記5本のリンクの車体側の端部は、それぞれサブフレームに取付けられており、前記サブフレームは、車体の左右両側において、車体に固定されることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項2において、
後車輪の仮想キングピン軸が上端側ほど車体後方に位置するように後傾して設定され、
緩衝装置は、その軸心が前記仮想キングピン軸よりも車体内方に位置して当該仮想キングピン軸と非平行であり且つ交わらないとともに、車体側方から見て、軸心の方向が仮想キングピン軸と比べて鉛直に近くなるように配置されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項2又は4のいずれかにおいて、
緩衝装置の下端部は、後車輪の支持部材から車体内方に延びるように一体に形成された連結部の先端に枢着されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項5において、
後車輪の支持部材の連結部は、車体前後方向に見て、該後車輪支持部材本体の上下両端側から車体内方に向かって延びて先端部で一体となった上腕部及び下腕部と、該上腕部及び下腕部をそれぞれの車幅方向中間部にて連結するように上下方向に延びる中間腕部とを有し、
前記連結部の中間腕部から先端部に亘って架設された支軸の端部が該連結部の端部よりも車体内方に突出していて、この支軸の端部に緩衝装置の下端部が取り付けられていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項2又は4のいずれかにおいて、
後車輪の仮想キングピン軸は、キャスタトレールが負値となるように設定されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項2又は4のいずれかにおいて、
緩衝装置は、その上下反力によって後車輪に作用する車体前後方向の付勢力が微小ないし零となるように配置されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項8において、
緩衝装置は、その軸心が車体側方から見て略鉛直方向に延びるように配置されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項9において、
緩衝装置は、その軸心を車体前後方向に見て上端側ほど車体内方に位置するように傾斜させ、且つ後車輪支持部材の車体内方側へ所定距離隔てて配置されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項8において、
緩衝装置は、その上下反力によって後車輪を車体前方に若干量付勢するように配置されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項6において、
緩衝装置の軸心が車体側方から見て後車輪中心よりも車体後方に位置し、
5本のリンクのうち、ロワリンクの車体側端部の弾性ブッシュが、アッパリンクの車体側端部の弾性ブッシュに比べて柔らかいものであることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項11又は12のいずれかにおいて、
後車輪が駆動輪であることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項11又は12のいずれかにおいて、
5本のリンクのうちの少なくとも2本がロワリンクであり、この2本のロワリンクが車体上方から見て車体外方側に向かって互いに接近するように配置されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項2において、
旋回外方に位置する後車輪のトーイン量がバンプ時のロールステアによって増大するとともに、横力によるコンプライアンスステアによっても増大するように構成されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 請求項15において、
車体に対する後車輪の近接変位を規制するバンプストッパが緩衝装置と同軸上に配設されており、
緩衝装置の上下反力によって後車輪に作用するトーインの向きのモーメント力が、バンプストッパの作用によって前記緩衝装置反力が増大することにより増大するように構成されていることを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。 - 自動車の後車輪の支持部材を5本のリンクにより車体に連結して、該各リンクの少なくとも車体側の端部にそれぞれ弾性ブッシュを配設するとともに、コイルバネ及びダンパからなる緩衝装置の下端部を前記後車輪支持部材の車体内方側に枢着してなるマルチリンク式の後輪サスペンション装置において、
前記後車輪の仮想キングピン軸は、上端側ほど車体後方に位置するように傾斜し且つキャスタトレールが負値となるように設定され、
前記緩衝装置は、その軸心が前記仮想キングピン軸よりも車体内方に位置して当該仮想キングピン軸と非平行であり且つ交わらず、且つ、車体側方から見ると後車輪の中心よりも車体後方で略鉛直方向に延びるように配置されるとともに、当該緩衝装置の上下反力によって後車輪に作用する負キャンバの向きのモーメント力が、自動車の旋回時に旋回外方に位置する後車輪において横力により発生する正キャンバの向きのモーメント力と比べてその横力の限界領域まで常に大きくなるように、後車輪の車体内方側へ所定距離隔てて配置されており、
前記リンクは、少なくとも2本のロワリンクと、少なくとも2本のアッパリンクとから成るとともに、該ロワリンクの内、車体前後方向との成す角が他の該ロワリンクよりも小さいロワトレーリングリンクと、該アッパリンクの内、車体前後方向との成す角が他の該アッパリンクよりも小さいアッパトレーリングリンクを含み、
前記アッパトレーリングリンクは、弾性ブッシュにより該後車輪支持部材に連結するとともに、該アッパトレーリングリンク以外の他の4本のリンクは、ボールジョイントにより前記後車輪支持部材に連結することを特徴とする自動車の後輪サスペンション装置。
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