JP3968753B2 - 自動車用ウィンドウレギュレータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モジュール化された自動車用ウィンドウレギュレータに関し、さらに詳細には、ウィンドウパネルの駆動力伝達手段としてケーブル部材を用いた自動車用ウィンドウレギュレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のウィンドウレギュレータはドアのインナーパネルに取り付けられ、上下方向に延在するように備えたガイドレールによって、ウィンドウパネルを支持する移動部材が移動自在にガイドされる。その移動部材の上側と下側には上下のケーブルが連結されており、それらのケーブルは、駆動部に備わるドラム部材に巻回されている。そのドラム部材の回転方向に応じて、上下のケーブルのいずれか一方が引っ張られつつ、他方が繰り出されて緩められることにより、移動部材がウィンドウパネルと共に上方または下方に移動する。例えば、移動部材を上方に移動させるときには、上側のケーブルがドラム部材の巻取り力とウィンドウパネルの重量によって引っ張られて緊張し、かつ下側のケーブルが緩められる。逆に、移動部材を下方に移動させるときには、下側のケーブルが引っ張られて緊張し、かつ上側のケーブルが緩められることになる。
【0003】
従来のウィンドウレギュレータには、緩められたケーブルに弛みが生じないように、ケーブルに緊張力を付与する緊張力付与手段が組み込まれている。ケーブルに弛みが生じた場合には、ウィンドウパネルの円滑な上下動が阻害されるおそれがある。
【0004】
特許文献1には、緊張力付与手段として、ケーブルに緊張力を付与するためのコイルスプリングを駆動部(同公報では、駆動手段)側に備える構成が記載されている。そのコイルスプリングは、駆動部側に取り付けられるアジャストボルトと、ケーブルのアウターケーシングの端部に取り付けられるケーシング端取付具との間に備えられ、ケーシング端取付具を介してアウターケーシングを付勢することにより、ケーブルに緊張力を付与する構成となっている。また特許文献2には、緊張力付与手段として、ケーブルに緊張力を付与するためのコイルスプリングを移動部材(同公報では、キャリア)側に備える構成が記載されている。そのコイルスプリングは、移動部材の接続室内に収容されて、ケーブルの端部に取り付けられる係合駒を付勢することにより、ケーブルに緊張力を付与する構成となっている。
【0005】
【特許文献1】
実開平2−27488号公報
【特許文献2】
特開2002−4710号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の緊張力付与手段は、いずれも移動部材の移動時に作動音を発生するおそれがある。すなわち、特許文献1の構成においては、移動部材が移動するときに、コイルスプリングの伸縮を伴ってアジャストボルトとケーシング端取付具とが摺接して異音を発するおそれがある。同様に、特許文献2の構成においては、移動部材が移動するときに、コイルスプリングの伸縮を伴って接続室と係合駒とが摺接して異音を発するおそれがある。このような異音の発生を防止するためには、緊張力付与手段の加工精度を高めなければならず、自動車用ウィンドウレギュレータの高価格化を招くおそれがある。また、上下のケーブルのそれぞれに対してコイルスプリングを組み付けるため、緊張力付与手段自体、ひいては自動車用ウィンドウレギュレータ全体の構成の複雑化、および組み付け作業性の悪化を招くおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、構成がきわめて簡単であり、しかも異音を発することなくケーブル部材に緊張力を付与することができる自動車用ウィンドウレギュレータを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明の自動車用ウィンドウレギュレータは、ドアのインナーパネルに取り付けられる樹脂製のモジュールベースと、前記モジュールベースに取り付けられて、端部にケーブルガイドを有するガイドレールと、前記ガイドレールに移動自在にガイドされてウィンドウパネルを支持する移動部材と、前記モジュールベースに取り付けられて、回転駆動されるドラム部材を有する駆動部と、前記ドラム部材に巻回されて、端部が前記ケーブルガイドを通して前記移動部材に連結されるケーブル部材と、前記モジュールベースに一体的に形成されて、前記ケーブルガイドと前記駆動部との間における前記ケーブル部材の部位を保持し、かつ弾性復元力によって前記ケーブル部材を緊張させる方向に付勢する弾性突出部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明の自動車用ウィンドウレギュレータは、請求項1において、前記ケーブル部材は、前記ケーブルガイドと前記駆動部との間に架け渡されるアウターケーシングを有し、前記弾性突出部は前記アウターケーシングの外周部を保持することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明の自動車用ウィンドウレギュレータは、請求項1または2において、前記弾性突出部に、前記ケーブル部材を弾性的に保持する保持部を一体的に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明の自動車用ウィンドウレギュレータは、請求項1から3のいずれかにおいて、前記ケーブルガイドと前記駆動部との間における前記ケーブル部材の部位は、その両端部が前記ケーブルガイドに対する入出方向、および前記駆動部に対する入出方向に沿って延在するように、滑らかな曲線を描いて湾曲し、前記弾性突出部は、前記湾曲の度合いを大きくする方向に前記ケーブル部材の部位を付勢することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明のモジュール化された自動車用ウィンドウレギュレータの正面図であり、樹脂材料によって成型されたモジュールベース1には、前後一対のガイドレール2,3が平行に取り付けられている。ガイドレール2,3には、不図示のウィンドウガラス(ウィンドウパネル)を支持するキャリア(移動部材)4,5が移動自在にガイドされている。ガイドレール2,3の上端および下端に取り付けられたケーブルガイド6,7,8,9の間には、ガイドレール2,3の間にてクロスするようにケーブル(ケーブル部材)10が配索されている。本例の場合、ケーブルガイド6,8,9はガイドローラを用いてケーブル10の配索方向を変更する構成とされ、ケーブルガイド7はガイド面に沿わせるようにしてケーブル10の配索方向を変更する構成とされている。
【0014】
ケーブル10において、ガイドレール2に沿って延在する部分はキャリア4に連結され、同様に、ガイドレール3に沿って延在する部分はキャリア5に連結されている。モジュールベース1には、モータによって回転駆動されるドラム(ドラム部材)11Aを有する駆動機構(駆動部)11が取り付けられている。駆動機構11はガイドレール2,3の間に位置し、ドラム11Aにはケーブル10の下側部分10−1と上側部分10−2が巻回される。ケーブル10の下側部分(以下、「下側ケーブル」ともいう)10−1は駆動機構11からケーブルガイド7に導かれ、一方、ケーブル10の上側部分(以下、「上側ケーブル」ともいう)10−2は駆動機構11からケーブルガイド8に導かれる。上側ケーブル10−2は、ケーブルガイド8と駆動機構11との間に掛け渡されるアウターケーシング10A(図3参照)内に軸線方向移動自在に挿入され、さらに、そのアウターケーシング10Aは、駆動機構11に対しては軸線方向移動自在に連結されている。同様に、下側ケーブル10−1は、ケーブルガイド7と駆動機構11との間に掛け渡されるアウターケーシング10A内に軸線方向移動自在に位置し、さらに、そのアウターケーシング10Aは、駆動機構11に対しては軸線方向移動自在に連結されている。また、ケーブルガイド6,9の間に位置するケーブル10の部分10−3も同様に、それらのケーブルガイド6,9の間に掛け渡されるアウターケーシング10A内に軸線方向移動自在に位置する。
【0015】
樹脂製のモジュールベース1には、弾性突出部12,13が一体的に形成されている。弾性突出部12は、その弾性復元力によって、下側ケーブル10−1をそのアウターケーシング10Aと共に矢印F1方向に付勢する。弾性突出部13は、その弾性復元力によって、上側ケーブル10−2をそのアウターケーシング10Aと共に矢印F2方向に付勢する。弾性突出部13の先端には、図2および図3のように、矢印F2方向に湾曲するフック部(保持部)13Aが形成されており、このフック部13Aによって、上側ケーブル10−2がそのアウターケーシング10Aと共に弾性的に保持されて抜け止めされる。同様に、弾性突出部12の先端には、矢印F1方向に湾曲するフック部(保持部)12Aが形成されており、このフック部12Aによって、下側ケーブル10−1がそのアウターケーシング10Aと共に弾性的に保持されて抜け止めされる。
【0016】
下側ケーブル10−1は、弾性突出部12を矢印F1方向と逆のF1′方向に撓ませるように配索され、また上側ケーブル10−2は、弾性突出部13を矢印F2方向と逆のF2′方向に撓ませるように配索される。つまり、下側ケーブル10−1と上側ケーブル10−2は、それらが配索された初期状態(図中実線の状態)から、常に弾性突出部12,13の弾性復元力によって矢印F1,F2方向に付勢されて緊張力が付与される。下側ケーブル10−1は、その両端部がケーブルガイド7に対する入出方向(矢印A1方向)およびドラム11Aに対する入出方向(B1)に沿って延在するように、滑らかな曲線(図1中の右方に膨出する曲線)を描いて湾曲し、その湾曲の度合いを大きくするように弾性突出部12が下側ケーブル10−1を矢印F1方向に付勢する。同様に、上側ケーブル10−2は、その両端部がケーブルガイド8に対する入出方向(矢印A2方向)およびドラム11Aに対する入出方向(B2)に沿って延在するように、滑らかな曲線(図1中の左方に膨出する曲線)を描いて湾曲し、その湾曲の度合いを大きくするように弾性突出部13が上側ケーブル10−2を矢印F2方向に付勢する。
【0017】
このように構成されたウィンドウレギュレータはドアのインナーパネルに取り付けられ、駆動機構11のドラム11Aの回転方向に応じて、キャリア4,5と共にウィンドウパネルが上下動する。すなわち、ドラム11Aが一方向(図3における時計方向)に回転したときに、上側ケーブル10−2がドラム11Aに巻き取られ、かつ下側ケーブル10−1がドラム11Aから繰り出されることにより、キャリア4,5と共にウィンドウパネルが上方に移動する。逆に、ドラム11Aが他方向(図3における反時計方向)に回転したときには、下側ケーブル10−1がドラム11Aに巻き取られ、かつ上側ケーブル10−2がドラム11Aから繰り出されることにより、キャリア4,5と共にウィンドウパネルが下方に移動する。
【0018】
したがって、ウィンドウパネルが上方に移動する際には、上側ケーブル10−2が引っ張られて緊張し、かつ下側ケーブル10−1が緩められることになる。逆に、ウィンドウパネルが下方に移動する際には、下側ケーブル10−1が引っ張られて緊張し、かつ上側ケーブル10−2が緩められることになる。弾性突出部12は、下側ケーブル10−1が緩められたときにF1方向の緊張力を付与して弛みの発生を防止し、下側ケーブル10−1が引っ張られたときには、それが矢印F1と逆のF1′方向に大きく変位しないように、その位置を規制する。同様に、弾性突出部13は、上側ケーブル10−2が緩められたときにF2方向の緊張力を付与して弛みの発生を防止し(図3中の2点鎖線の状態)、上側ケーブル10−2が引っ張られたときには、それが矢印F2と逆のF2′方向に大きく変位しないように、その位置を規制する(図3中の破線の状態)。
【0019】
このように弾性突出部12,13は、それ自体の弾性復元力によってケーブル10−1,10−2に緊張力を付与するため、スプリングなどを用いた場合のような作動音の発生がない。また、弾性突出部12,13をモジュールベース1に一体成形するため、きわめて簡易な構成によって緊張力を付与することができる。また、本例における弾性突出部12,13は、弾性変形しているときの形状が図3中の実線のように斜め傾斜する形状であるため、フック部12A,13Aにケーブル10−1,10−2を止める際には、弾性突出部12,13がケーブル10−1,10−2によって基準位置(図3に示す2点鎖線の位置あるいは、そのF2方向側の近傍位置)からF1′,F2′方向に撓まされることによって、それらのケーブル10−1,10−2を弾性突出部12,13の傾斜部分に沿って移動させてスムーズに止めることができる。
【0020】
また、下側ケーブル10−1は、その両端部分が矢印A1,B1方向に沿って延在するように滑らかな曲線を描いて湾曲するため、ケーブルガイド7部およびケーブルガイド7と駆動機構11との間において無理な変形力が加わらない配索形態となる。このような下側ケーブル10−1の配索形態に合わせて、弾性突出部12の付勢方向が下側ケーブル10−1の湾曲の度合いを大きくする矢印F1方向に設定されているため、下側ケーブル10−1を複雑に変形させることがない。同様に、上側ケーブル10−2も無理な変形力が加わらない配索形態となり、弾性突出部13によって付勢されても複雑に変形されることがない。これらの結果、ケーブル10−1,10−2は、無理な変形力が作用しない自然な形態に近い配索形態となって、ウィンドウパネルをよりスムーズに移動させることができる。
【0021】
(他の実施形態)
ガイドレールの形状および配備数は任意であり、本発明は、例えば1本のガイドレールを備えたウィンドウレギュレータにも適用することができる。また、ケーブル部材は、必ずしもアウターケーシングを備えていなくてもよく、その場合には、軸線方向に移動されるケーブル部材の外周部に対して、弾性突出部によって直接緊張力を付与すればよい。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、ケーブル部材を緊張させる方向に付勢する弾性突出部を樹脂製のモジュールベースに一体的に形成することにより、きわめて簡単な構成によってケーブル部材に緊張力を付与することができ、しかもスプリングを用いた場合のような異音の発生もなく、ウィンドウレギュレータの動作時における静音化を実現することができる。
【0023】
また、弾性突出部は、ケーブル部材のアウターケーシングの外周部を保持するものであってもよい。
【0024】
また、弾性突出部に、ケーブル部材を弾性的に保持する保持部を一体的に形成することにより、構成の複雑化を招くことなくケーブル部材を抜け止めすることができる。
【0025】
また、ケーブルガイドと駆動部との間におけるケーブル部材の部位を、その両端部がケーブルガイドに対する入出方向、および駆動部に対する入出方向に沿って延在するように、滑らかな曲線を描いて湾曲させ、その湾曲の度合いを大きくする方向に弾性突出部によってケーブル部材を付勢させることにより、ケーブル部材の大きな曲げ変形を回避して、ウィンドウパネルをよりスムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のウィンドウレギュレータの正面図である。
【図2】図1における弾性突出部の周辺部分の拡大斜視図である。
【図3】図1における弾性突出部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 モジュールベース
2,3 ガイドレール
4,5 キャリア(移動部材)
6,7,8,9 ケーブルガイド
10 ケーブル(ケーブル部材)
10A アウターケーシング
10−1 下側ケーブル(下側部分)
10−2 上側ケーブル(上側部分)
11 駆動機構(駆動部)
11A ドラム(ドラム部材)
12,13 弾性突出部
12A,13A フック部(保持部)

Claims (4)

  1. ドアのインナーパネルに取り付けられる樹脂製のモジュールベースと、
    前記モジュールベースに取り付けられて、端部にケーブルガイドを有するガイドレールと、
    前記ガイドレールに移動自在にガイドされてウィンドウパネルを支持する移動部材と、
    前記モジュールベースに取り付けられて、回転駆動されるドラム部材を有する駆動部と、
    前記ドラム部材に巻回されて、端部が前記ケーブルガイドを通して前記移動部材に連結されるケーブル部材と、
    前記モジュールベースに一体的に形成されて、前記ケーブルガイドと前記駆動部との間における前記ケーブル部材の部位を保持し、かつ弾性復元力によって前記ケーブル部材を緊張させる方向に付勢する弾性突出部と、
    を備えることを特徴とする自動車用ウィンドウレギュレータ。
  2. 前記ケーブル部材は、前記ケーブルガイドと前記駆動部との間に架け渡されるアウターケーシングを有し、
    前記弾性突出部は前記アウターケーシングの外周部を保持する
    ことを特徴とする請求項1に記載の自動車用ウィンドウレギュレータ。
  3. 前記弾性突出部に、前記ケーブル部材を弾性的に保持する保持部を一体的に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用ウィンドウレギュレータ。
  4. 前記ケーブルガイドと前記駆動部との間における前記ケーブル部材の部位は、その両端部が前記ケーブルガイドに対する入出方向、および前記駆動部に対する入出方向に沿って延在するように、滑らかな曲線を描いて湾曲し、
    前記弾性突出部は、前記湾曲の度合いを大きくする方向に前記ケーブル部材の部位を付勢する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動車用ウィンドウレギュレータ。
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