JP3967874B2 - プリズム、投写光学系及び投写型表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリズム、このプリズムを用いた投写光学系、この投写光学系を用いた投写型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大画面の画像表示装置としてプロジェクタ装置(投写型表示装置)が注目されている。小型で高精細・高輝度のCRTを用いたCRTプロジェクタ装置、液晶パネルを用いた液晶プロジェクタ装置、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたDMDプロジェクタ装置等が製品化されている。
【0003】
また、映画やTVプログラムといったAVソースに対応するだけでなく、コンピュータ画像を投写するデータプロジェクタと呼ばれるカテゴリが急速に市場を拡大しており、投写画面の明るさやコントラスト向上、高解像度化、明るさの均一性向上などの著しい性能改善が行われている。
【0004】
中でも、明るさの均一性はデータプロジェクタの市場拡大とともに、最も基本的な要求仕様のひとつとなりつつあり、例えば液晶プロジェクタ装置ではフライアイインテグレータ等の均一照明技術が導入され、明るさ向上との両立が図られている。
【0005】
さて、前述のLCDやDMDなどのようなライトバルブには大きく分けて透過型と反射型があり、前者はライトバルブを照明する照明光軸と投写レンズの光軸を共軸に配置し易い。
【0006】
よって、照明光学系の設計が比較的容易となるため、ライトバルブを均一に、かつ明るく照明するという基本性能を確保する上で有利である。
【0007】
一方、後者は照明光軸と投写レンズの光軸を共軸とすることが困難である場合が多く、複雑な光学系を構成せざるを得ないという点で本質的に不利な方式である。
【0008】
このような反射型ライトバルブの照明光学系については、A. G. Dewey, "Projection Systems for Light Valves," Proc. SID, vol. 18/2, pp.134-146, 1977.等に詳しく述べられている。
【0009】
図28から図31は、反射型ライトバルブの照明方式として前記文献に紹介されている照明光学系の概略図である。
【0010】
(第1の従来技術)
図28は軸外し照明光学系の典型例であり、ライトバルブがその法線から外れた方向から照明されるところに特徴がある。
【0011】
図28において300はライトバルブ、800は光源、801はコンデンサレンズ、802は投写レンズのライトバルブ側最終レンズ、810は光源800の像を示している。また、600はライトバルブ300の法線、601は投写レンズの光軸である。
【0012】
図28中、実線で表される照明光線束(光線束を光束とも称す。以下、この点は同じ)は、光源800を出射した後コンデンサレンズ801により収束されてライトバルブ300に入射し、投写レンズのライトバルブ側最終レンズ802に入射する直前において最も小さな光線束径となって光源800の像810を形成する。
【0013】
投写レンズはこれに合わせてライトバルブ側最終レンズ802の外側の空気中に絞りが配置される後置絞りレンズの構成を取る。投写レンズの光軸601はライトバルブの法線600と平行であるが、両者600,601これらは共軸ではないため、投写光の向かう方向は点線矢印で示されるように法線600に対して傾くことになる。
【0014】
また、後置絞りタイプによって投写レンズのライトバルブ側最終レンズ802の直径を小さくできることから、投写レンズと照明光学系との物理的な衝突を回避するにも適している。
【0015】
(第2の従来技術)
図29は、図28とは異なる軸外し照明光学系の概略図である。図29中の符号は図28中の符号と同様であるので図29中の符号の説明を省略する。
【0016】
本光学系は、投写レンズの絞りが投写レンズ系の内部に配置される点で図28に示したものより設計が容易なレンズタイプで構成できる可能性が高い。
【0017】
以上、第1および第2の従来技術に示されたような軸外し光学系は、スクリーンを仰ぎ見る姿勢で投写しても画面が台形に歪むキーストーン歪み(台形歪み)を生じにくく、画面内でのフォーカスぼけを最小限にできる点で優れている。すなわち、装置軸(通常は、鉛直方向に沿う軸)に対して投写方向に一定の仰角を設ける必然性が高いフロント投写型のプロジェクタ装置に適した照明光学系であると言える。
【0018】
反面、ライトバルブを斜めに照明するため、照明均一性を高めることは本質的に困難な光学系である。
【0019】
(第3の従来技術)
さらに、先の文献には、図30に示すようなプリズムを挿入したタイプ、図31に示すような光線束内に反射ミラーを配置するタイプが紹介されている。図30において、803はプリズム、602は照明光線、603はプリズム803の挿入により折れ曲がるライトバルブ300の法線方向の光線、604は投写光線を模式的に示している。
【0020】
この方式では、照明光と投写光のなす角度をある程度コントロールすることができ、光学系の構成の自由度が高くなる反面、投写レンズの非点収差、色収差に大きな影響を与えるため実用性が低いと述べられている。
【0021】
(第4の従来技術)
一方、図31は、投写レンズ内の絞り位置にミラーを配置し、絞り上に形成される光源像をライトバルブ300で反射させた後、再びミラー近傍で結像させる自己収束リレー光学系を示している。
【0022】
この方式は、先の第1乃至第3の従来技術に述べた3種類の照明光学系に比べて投写画像の歪みや照明性能の点に優れているものの、ミラーで反射した照明光がレンズ802に入射する際にレンズ802の表面で反射光を生じ、この反射光がゴースト光となってスクリーンに到達する不具合点が指摘されている。
【0023】
この例のように、反射型ライトバルブ300の近傍にレンズ802を配置した場合、光線がこのレンズ802を往復2回通過することによる影響を十分に考慮しなければならない。
【0024】
以上、第1乃至第4の従来技術に述べた4種類の照明光学系について簡単に述べたが、いずれの光学系も、ライトバルブへの均一照明と、照明光学系および投写レンズ系の間における衝突の回避とを両立させることが困難である。
【0025】
しかしながら、以上のような問題を解決し、特にDMDのような可変ミラー素子の照明に適した光学系が米国特許5,604,624号広報(以下、USP5,604,624と称す)に開示されている。
【0026】
(第5の従来技術)
図32は、上述のUSP5,604,624に開示された、従来の反射型ライトバルブ照明光学系を示す縦断面図である。
【0027】
図32において140はプリズム、141ならびに142はプリズム140の側面、143はプリズム140の入射面、144ならびに145はプリズム140の内部に設けられた第1の面および第2の面、30は反射型ライトバルブとしての可変ミラー素子、804は光源、210及び211はプリズム140へ入射する光線束、210A及び211Aはプリズム140から出射し可変ミラー素子30へ向かう光線束である。
【0028】
側面141および142は互いに平行であり、入射面143は側面141および142の面方向に対して傾斜している。プリズム140の内部に設けられる第1の面144および第2の面145は実質的にほぼ平行に保たれており、この両者間には間隙(空気ギャップ)が介在している。
【0029】
また、第1の面144、第2の面145、側面141、側面142および入射面143は、それぞれ対応する紙面に対して垂直な面に含まれている。また、プリズム140は言うなれば、2つのプリズム片が組み合わされた一体の構造物とされているが、機能的には2つの部分(パート)、すなわち、側面142、入射面143および第1の面144によって囲まれた第1のパートと、第2の面145及び側面141を含む第2のパートとから成り立つとみることもできる。
【0030】
なお、プリズム140は、いかなる光学的品質を持った材料から構成されていてもよいとの記述があるが、特に、PMMAを用いたものが開示されている。
【0031】
さて、第1の面144が、この第1の面144に入射する光線束210および211がともに全反射するように配置されることにより、光源804からプリズム140へ入射した光線束210,211は、図32に示すように大きく偏向した後、可変ミラー素子30へ導かれる。
【0032】
また、光源804から、主光線とほぼ平行な光がプリズム140に入射した場合、この平行な光は第1の面144における全反射作用によって光線束の平行度が保たれたまま可変ミラー素子30に入射する。
【0033】
よって、光源804の輝度分布がほぼ保たれた照明光線束によって可変ミラー素子30を照明することが可能であり、この点で図32の光学系は均一照明に非常に有利な光学系と言える。
【0034】
しかも、可変ミラー素子30から反射した光線束は、第1の面144における全反射条件を満足しないために第1の面144を透過し、空気ギャップ、第2の面145を経て、投写レンズ500へ導かれる。従って、照明光学系と投写レンズ系との物理的な衝突も避けやすい。
【0035】
このように、この従来技術は、ライトバルブ(可変ミラー素子30)の均一照明、及び照明光学系と投写レンズ系との衝突回避に優れている。しかしながら、第1の面144が、光源804からの入射光線束と可変ミラー素子30からの反射光とに対してそれぞれ異なる作用を生じさせる、すなわち、ここでは、第1面144は、光源804からの入射光線束を全反射し、可変ミラー素子30からの反射光を透過する。
【0036】
ここで、照明光線束の斜入射に対して、その素子の法線方向に光を反射する典型的な可変ミラー素子としてDMDの例について簡単に説明する。
【0037】
DMDは、半導体製造技術を用いることで、シリコン基板上に10数μm角の微小なミラーをマトリクス状に多数配列したものであり、これらの微小ミラーの全てによってひとつの平面(反射面)を形成する反射型ライトバルブである。
【0038】
そして、DMDは、電気的な制御によって各微小ミラーを傾けることで、入射光をDMDの法線方向へ反射させる第1反射状態と、入射光を法線から所定の角度だけ傾いた方向へ反射させる第2反射状態とを作り出すことができる。
【0039】
これにより、反射された側からみた場合の、例えば、白表示に対応する第1反射状態(このときの反射光をON光と称す)、および黒表示に対応する第2反射状態(このときの反射光をOFF光と称す)の組合せ(変調)によって画像表示を行う。
【0040】
このように、DMDによって変調された光は投写レンズ500を介して図示しないスクリーンに投写され映像情報を表示する。
【0041】
図33は、DMDを構成する2つの微小ミラー(2ピクセルに対応する)の一例を示す斜視図である。図33において310、311は微小ミラーとしてのマイクロミラーで、312はこれらのベースである。610はベース312の法線であり、2つマイクロミラー310および311が、法線610からそれぞれ+10度あるいは−10度に傾いているところを示している。
【0042】
611はマイクロミラー310の法線(この図33に示したものでは、ベース312の法線610に対して+10度傾いている)であり、612はマイクロミラー311の法線(この図33に示したものでは、ベース312の法線610に対して−10度傾いている)である。
【0043】
マイクロミラー310、311は、その表面にアルミニウムが蒸着され、高い反射率を有する正方形のミラーとして作用する。図33に示したような場合、マイクロミラー310、311の傾きは法線610に対してそれぞれ±10度であるから、結果として、マイクロミラー310は法線610より20度傾いた方向から入射した光を法線610の方向へ反射し(第1反射状態に対応)、一方、マイクロミラー311は法線610より20度傾いた方向から入射した光を法線610より40度傾いた方向へ反射させる(第2反射状態に対応)。
【0044】
なお、このDMDの動作及びその他の詳細については、Larry J. Hornbeck, "Digital Light Processing for High-Brightness, High-Resolution Applications.", SPIE Vol.3013, pp.27-40,等に詳しく紹介されているので、ここではこれ以上の詳しい説明を省略する。
【0045】
上述したようなDMDを用いる場合には、第2反射状態において生じる不要光が投写画面に映らないように注意する必要がある。なぜならば、法線610から40度傾いた方向へ進行するOFF光が、投写光学系における光路中で散乱することにより迷光成分を生じたり、投写レンズ内部に進行(進入)することによりゴースト光を生じたりすれば、投写される映像のコントラストを低減させる原因となるからである。
【0046】
この場合、投写画面のコントラストの向上を図る上で、OFF光を何らかの手段を用いて光路外へ導くか、あるいは遮光部材によってOFF光を吸収することが必要となってくる。
【0047】
例えば、図28を参照して説明した(第1の従来技術)、後置絞りレンズに特徴を持つ光学系においては、投写レンズの像側開口を小さくできるため、OFF光の侵入を防ぐことができる点で同光学系は本質的に有利である。
【0048】
ここで、図32を参照して説明した(第5の従来技術)、従来の照明光学系におけるOFF光の振舞いを図34を用いて説明する。なお、可変ミラー素子30としては、DMDを用いた例について述べる(以下、DMD30と記述する)。
【0049】
図34において、146はプリズム140の側面、40はDMD30の上部に配置されるカバーガラス、613はDMDの法線、その他の符号は図32と同様であるので説明を省略する。
【0050】
前述した第2反射状態におけるOFF光は、DMD30から図34中の矢印のように出射し、その一部は実線楕円(図34中のA)で囲んだ光線のようにプリズム140の側面146に到達する。
【0051】
残りの光線の多くは、側面141からプリズム140の外へ出射したのち、点線楕円(図34中のB)で囲んだように進行する。この場合、側面146に到達したOFF光の処理は、例えば、側面146上に光吸収剤を塗布することによって、比較的簡単に行うことができる。
【0052】
一方、図34のような配置によれば側面141から出射する光線のうち、相当の割合の光線が投写レンズ500に侵入すると考えられる。OFF光全体のうちの点線楕円Bで囲んだ光線束成分の割合は、プリズム140の法線613の方向への厚み、すなわち側面141と142との間の距離及びDMD30の寸法によって左右されるため定量的な考察を行うことは容易ではない。
【0053】
しかしながら、OFF光の強度(光強度)はON光の強度とほぼ同じであり、投写レンズ500を画面の周辺光量比を高めるのに有利なテレセントリックレンズとした場合には、DMD側最終レンズがかなり大きくなることにより、OFF光のうちの当該レンズに進入する成分が多くなり易い(進入する可能性が高くなる)ことなどを考慮すると、迷光やゴースト光の原因となるOFF光の進入を未然に防ぐ必要性がより高くなる。
【0054】
前述のUSP5,604,624には、OFF光の投写レンズへの進入の回避を目的とした光学系についても開示されており、これを図35に示す。
【0055】
図35において、1400は3つのプリズム片からなるプリズム、1401、1402は図32を参照して説明した面145および144の対と同等の作用を呈する空気ギャップを介した一対の面、1403はOFF光が出射する面である。その他の符号は図32と共通であるので説明を省略する。
【0056】
図35に示したようなプリズム1400によれば、第1の一対の面144および145により、DMD30への照明光とDMD30からの反射光との選択的透過および/または反射作用を実現することができる。
【0057】
さらに、第2の一対の面1401および1402によってON光とOFF光の選択的透過および/または反射作用を実現することができる。従って、プリズム1400においては、図32に示す光学系において問題となった、OFF光の投写レンズ500への進入に起因するコントラストの低減をほぼ解消することができる。
【0058】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような各光線の振舞いを実現しようとする場合、プリズム片を一体的に組み合わせて構成されるプリズム1400は、図32のプリズム140と比べても相当大きな形状を取らざるを得ないことは図35から明らかである。
【0059】
投写レンズ500にとってのプリズム1400は、側面141および142によって定められる平行平面板とみなすことができる。その場合の設計において、側面141と142との間の距離は、光学設計の難易度と直接関係するパラメータであり、この距離が大きくなれば投写レンズ500のバックフォーカル長を大きくすることが必要となるため設計の難易度が著しく高くなってしまう。
【0060】
そればかりでなく、プリズム1400が増大化すると、プロジェクタ装置の重量及び体積の増加、又は光学材料の大量使用によるコストアップ等の実用上の不具合が引き起こされる。
【0061】
ところで、USP5,604,624には、このような実用上の不具合に対しては特に触れられておらず、反射型ライトバルブ、特にDMDのような可変ミラー素子に適するコンパクトなプリズム、及び照明光学系を提供することが望まれていた。
【0062】
本発明は、コンパクトな、プリズム、投写光学系及び投写型表示装置を得ることを主目的とする。
【0063】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、外部の可変ミラー素子と、前記可変ミラー素子の法線方向に平行な投写光軸を有する外部の投写レンズとの間に配置されるプリズムであって、前記可変ミラー素子から第1距離だけ離れた第1端部と第2端部とを備え且つ前記第1端部から前記第2端部に向かって前記可変ミラー素子に対して遠ざかる方向に傾斜しており、外部から入射する光線束を全反射して反射後の外部入射光線束を前記可変ミラー素子側へ向けて伝搬させ得る第1内面と、前記可変ミラー素子からそれぞれ第2距離及び第3距離だけ離れた第1端部及び第2端部を備える第2内面とを備え、前記第2内面は、前記第1内面で全反射された前記外部入射光線束が入射するときには前記外部入射光線束を透過させ、前記可変ミラー素子に照射して前記可変ミラー素子によって反射される光線束の内で且つ第1反射状態にある光線束の内で前記第2内面に向かって伝播する第1束が入射するときには入射した第1反射状態光線の第1束を透過させる一方で、前記可変ミラー素子によって反射される前記光線束の内で且つ前記第1反射状態とは異なる第2反射状態にある光線束の内で前記第2内面に向かって伝播する第1束が入射するときには入射した第2反射状態光線の第1束を全反射させ得ると共に、前記第1距離は前記第3距離よりも大きく、前記第3距離は前記第2距離よりも大きく、前記第1内面は、前記第2内面を透過した前記第1反射状態光線の第1束が入射するときには当該第1反射状態光線の第1束を透過させて前記投写レンズ側へ伝搬させ得るものであり、前記プリズムは、前記第1内面と同一平面内に有り、且つ、前記可変ミラー素子からそれぞれ第4距離及び前記第3距離だけ離れた第1端部及び第2端部を備える第3内面を更に備え、前記第3内面は、前記第2内面に入射すること無く前記第3内面に向かって伝播して入射した第1反射状態光線の第2束を透過させて前記投写レンズ側へ伝搬させ得ると共に、前記第2内面に入射すること無く前記第3内面に向かって伝播して入射した第2反射状態光線の第2束を透過させ得る一方、前記第2内面の前記第2端部は前記第3内面の前記第2端部に該当することを特徴とする。
【0065】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のプリズムであって、前記第1内面に対向する位置に配設され、入射する前記外部入射光線束を透過させて前記第1内面側へ向けて前記プリズム内を伝搬させ得る入射面である第1外面と、前記可変ミラー素子、前記第2内面及び第3内面に対向する位置に配設され、前記第2内面の前記第1端部に該当する第1端部と前記第3内面の前記第1端部に該当する第2端部とを備え、前記第2内面を透過して入射する前記外部入射光線束を透過させて前記可変ミラー素子側へ出射すると共に、前記可変ミラー素子によって反射される前記光線束を前記プリズム内に入射し得る光作用面である第2外面と、前記第2外面と略平行な面であって、前記投写レンズに対向する位置に配設されており、前記第3内面の前記第1端部の上方に位置する第1端部と前記第1内面の前記第2端部に隣接する第2端部とを備え、前記第1内面を透過して入射する前記第1反射状態光線の第1束と前記第3内面を透過して入射する前記第1反射状態光線の第2束とを透過させ得る出射面である第3外面とを備え、前記第2外面と前記第3外面との間に、前記第2内面と前記第3内面と前記第1内面とが配設されていることを特徴とする。
【0066】
請求項3に係る発明は、請求項2記載のプリズムであって、前記第1外面、前記第1内面及び前記第3内面に対向する位置に配設され、前記第3外面の前記第1端部と繋がった第1端部と前記第2外面の前記第2端部の隣接上方に位置する第2端部とを備える第4外面と、前記第4外面上に配設され、前記第3内面を透過して入射する前記第2反射状態光線の第2束を吸収する遮光部材とを備えることを特徴とする。
【0067】
請求項4に係る発明は、請求項3記載のプリズムであって、前記第2外面と同一平面内に有り、前記第2外面の前記第1端部に隣接する第1端部と前記第1外面と繋がった第2端部とを備える第5外面を更に備えることを特徴とする。
【0068】
請求項5に係る発明は、請求項4記載のプリズムであって、前記第1外面と前記第5外面と前記第1内面とを備える第1プリズム片と、前記第2外面と前記第2内面と前記第3内面とを備える第2プリズム片と、前記第3外面と前記第4外面とを備える第3プリズム片とを備え、前記第1プリズム片と前記第2プリズム片と前記第3プリズム片との内の任意のプリズム片は他の2つのプリズム片と空気間隙を介して対向配設されており、前記第3プリズム片の外面の内で前記第3外面と前記第4外面とで挟まれた面は前記第1プリズム片の前記第1内面と前記第2プリズム片の前記第3内面とに対向しており、前記第1プリズム片の外面の内で前記第1内面と前記第5外面とで挟まれた面は前記第2プリズム片の前記第2内面に対向していることを特徴とする。
【0069】
請求項6に係る発明は、請求項5記載のプリズムであって、前記第1プリズム片と前記第2プリズム片と前記第3プリズム片との内で、互いに対向し合う2つのプリズム片同士は、当該2つのプリズム片の熱膨張率に略等しい熱膨張率を有する、スペーサ及び接着剤によって固定されていることを特徴とする。
【0070】
請求項7に係る発明は、請求項5記載のプリズムであって、前記第1プリズム片と前記第2プリズム片と前記第3プリズム片との内で、互いに対向し合う2つのプリズム片同士は、互いの対向面の一方の面上に光線束の通過部分を避けて設けられた薄膜コーティングを介して、対向配置されていることを特徴とする。
【0071】
請求項8に係る発明は、外部の可変ミラー素子と、前記可変ミラー素子の法線方向に平行な投写光軸を有する外部の投写レンズとの間に配置されるプリズムであって、前記可変ミラー素子によって生成される相違なる第1反射状態と第2反射状態とにそれぞれ対応する第1反射状態光線束と第2反射状態光線束とを選択的に偏向し得る、第1プリズム片と第2プリズム片と第3プリズム片とを備え、(a)前記第1プリズム片は、外部から入射する光線束を透過可能な第1面と、前記第1面を透過する前記外部入射光線束を全反射すると共に、前記第1プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束を透過させる第2面と、全反射後に前記第1プリズム片内を伝搬して入射する前記外部入射光線束を透過させると共に、入射する前記第1反射状態光線束を前記第1プリズム片内に透過させる第3面とを備え、(b)前記第2プリズム片は、前記第3面に対向しており、前記第3面を透過して入射する前記外部入射光線束を透過させて前記第2プリズム片内を伝搬させ、前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束を前記第3面側へ向けて透過させると共に、前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を全反射する第4面と、前記可変ミラー素子に対向しており、前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記外部入射光線束を透過させて前記可変ミラー素子へ向けて伝搬させ、前記外部入射光線束が前記可変ミラー素子に照射することによって生成された入射する前記第1反射状態光線束及び前記第2反射状態光線束を共に透過させて前記第2プリズム片内を伝搬させると共に、前記第4面によって全反射された後に前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を少なくとも反射し得る第5面と、前記第5面を透過後に前記第4面に到達すること無く前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束及び前記第2反射状態光線束を共に透過させ、前記第5面で少なくとも反射された後に前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を透過させると共に、前記第4面に於いて全反射された後に前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を再度全反射し得る第6面とを備え、(c)前記第3プリズム片は、前記第2面と前記第6面とに対向しており、前記第1プリズム片を出射して入射する前記第1反射状態光線束と、前記第2プリズム片を出射して入射する前記第1反射状態光線束及び前記第2反射状態光線束との何れをも透過させる第7面と、前記投写レンズに対向しており、前記第7面の透過後に前記第3プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束を透過させて前記投写レンズ側へ伝搬させ得る第8面とを備えることを特徴とする。
【0072】
請求項9に係る発明は、請求項8記載のプリズムであって、前記第2面と前記第7面とは平行であり、前記第3面と前記第4面とは平行であり、前記第6面と前記第7面とは平行であり、それぞれの平行面同士の間が空気間隙であることを特徴とする。
【0073】
請求項10に係る発明は、請求項8記載のプリズムであって、前記第2面と前記第6面とは同一平面内にあることを特徴とする。
【0074】
請求項11に係る発明は、請求項8記載のプリズムであって、前記第1面と前記第2面とのなす角度をαと定義し、前記第5面と前記第6面とのなす角度をβと定義し、前記第4面と前記第5面とのなす角度をκと定義する場合に、前記角度αは、38.0°よりも大きく且つ50.4°よりも小さい範囲内にあり、前記角度βは、25.0°よりも大きく且つ37.4°よりも小さい範囲内にあり、前記角度κは16.2°よりも大きい角度であることを特徴とする。
【0075】
請求項12に係る発明は、請求項8記載のプリズムであって、(c)前記第3プリズム片は、前記第7面と前記第8面とで挟まれた側面と、前記側面上に配設されており、前記第7面の透過後に前記第3プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を遮光し得る遮光部材とを更に備えることを特徴とする。
【0076】
請求項13に係る発明は、光源と、前記光源からの光線束を集光する集光光学系と、前記集光光学系によって集光される集光光を入射する入射面と、ほぼ均一な光強度分布の光線束を出射する出射面とを備える光強度均一化素子と、前記光強度均一化素子の前記出射面から出射される光線束を伝達する伝達光学系と、前記伝達光学系によって伝達される光線束が外部から入射する光線束として入射される請求項8記載の前記プリズムと、前記プリズムの外部に於ける、その反射面と前記光強度均一化素子の前記出射面とが前記伝達光学系及び前記プリズムを介して共役な関係となる位置に配設されており、前記プリズムから入射する光線束をその反射面で反射する際に互いに相違した反射状態に相当する第1反射状態光線束と第2反射状態光線束とを生成する可変ミラー素子と、前記可変ミラー素子から前記プリズムへ入射し、その後、前記プリズムを出射する前記第1反射状態光線束が入射する投写レンズとを備えることを特徴とする。
【0077】
請求項14に係る発明は、請求項13記載の投写光学系であって、前記伝達光学系からの前記光線束及び前記第1反射状態光線束が通過する前記プリズムの部分を避けて前記プリズムの外形の一部に接することにより、前記プリズムを保持するプリズム保持部材を更に備えることを特徴とする。
【0078】
請求項15に係る発明は、請求項14記載の投写光学系であって、前記プリズム保持部材は、前記プリズムを出射する前記第2反射状態光線束を遮光する部分を備えることを特徴とする。
【0079】
請求項16に係る発明は、請求項14記載の投写光学系であって、前記プリズム保持部材は前記投写レンズに対向する面を備え、前記プリズム保持部材の前記対向面は、前記第1反射状態光線束が通過し得る寸法を有する光出射開口を備えることを特徴とする。
【0080】
請求項17に係る発明は、請求項13記載の前記投写光学系と、前記可変ミラー素子を駆動するための電気信号を生成して前記電気信号を前記可変ミラー素子に出力するために配設された信号生成部と、前記投写光学系から投写される光線束を受けるスクリーンとを備えることを特徴とする。
【0081】
請求項18に係る発明は、光源と、前記光源からの光線束を集光する集光光学系と、前記集光光学系によって集光される集光光を入射する入射面と、ほぼ均一な光強度分布の光線束を出射する出射面とを備える光強度均一化素子と、前記光強度均一化素子の前記出射面から出射される光線束を伝達する伝達光学系と、前記伝達光学系によって伝達される光線束が外部から入射する光線束として入射される請求項2記載の前記プリズムと、前記プリズムの外部に於ける、その反射面と前記光強度均一化素子の前記出射面とが前記伝達光学系及び前記プリズムを介して共役な関係となる位置に配設されており、前記プリズムから入射する光線束をその反射面で反射する際に互いに相違した反射状態に相当する第1反射状態光線束と第2反射状態光線束とを生成する可変ミラー素子と、前記可変ミラー素子から前記プリズムへ入射し、その後、前記プリズムを出射する前記第1反射状態光線束が入射する投写レンズとを備えることを特徴とする。
【0082】
請求項19に係る発明は、請求項18記載の前記投写光学系と、前記可変ミラー素子を駆動するための電気信号を生成して前記電気信号を前記可変ミラー素子に出力するために配設された信号生成部と、前記投写光学系から投写される光線束を受けるスクリーンとを備えることを特徴とする。
【0083】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0084】
(投写型表示装置)
投写型表示装置は、既述した第1および第2の反射状態を作り出すことができる可変ミラー素子(図1の素子3)と、外部より入力される映像信号の情報を反映した電気信号に対応するように可変ミラー素子を駆動するための電気信号を発生する信号生成部(図1の部分2)と、後に詳述する特徴的な構成を有するプリズム(図1の部分1)を含む投写光学系と、この投写光学系から投写される光線束を受けて、その面上に映像を映し出すためのスクリーン(図27の部分90)とを備えている。
【0085】
なお、以下の説明において、Fナンバーとは、光線束の入射面(入射面とは、光線が入射する物体の表面に相当。以下、同様。:entrance surface)に対して当該光線束が入射する場合に、この光線束を等価的に1枚のレンズ(等価的なレンズ)から出射する光線束として考え、その様な等価的なレンズの焦点距離をf0とし、且つ、等価的なレンズの開口の直径をD0として表すことで表現される式、即ち、F=f0/D0によって定義される値である。以下の実施の形態の説明においては、照明光線束のFナンバー、テレセントリックレンズのFナンバー、投射レンズのFナンバー、反射光線束のFナンバー等の表現を用いるが、特に断りの無い限り、基本的な定義はここにおける説明によるものとする。
【0086】
実施の形態1.
(プリズムの構成について)
図1は、本発明の実施の形態1に関わるプリズムの縦断面構造を信号生成部2のブロック図と共に模式的に示す図である。図1において、1はプリズム、3は可変ミラー素子、5は投写レンズ、8は照明光源であり、照明光学系はこれら4つの基本的な光学要素8,1,3,5から構成される。また、4は可変ミラー素子3の上部に設けられたカバーガラスである。
【0087】
20はプリズム1に入射して可変ミラー素子3を照明する照明光線、21は可変ミラー素子3から反射されるON光ないしは第1反射状態光線束、22および23は可変ミラー素子3から反射されるOFF光(第2反射状態光線束)の軌跡を示す光線であり、6は可変ミラー素子3の法線方向に平行な投写光軸を、60は照明光軸を示している。
【0088】
可変ミラー素子3は、DMD(Digital Micromirror Device)に代表される反射型ライトバルブであり、入射光の反射方向を微小ミラー(マイクロミラー)の傾きを変えることによって選択し、入射光線束に画像情報に基づく変調を与えるものである(画像情報に基づいて、その反射光がON光、OFF光に分けられる)。
【0089】
ON光21は、投写レンズ5に向かって反射される光線であり、図1には投写レンズ5に進入する最外光線が示されている。また、50は投写レンズ5のレンズ部を模式的に示すものである。
【0090】
投写レンズ5に取り込まれる(入射した)光線(ここではON光21)は、画像の白表示の状態(スクリーン上の明点に対応)を提供する。
【0091】
一方、OFF光22および23は、ある広がりを有して投写光軸6から所定の角度だけ傾いた方向に反射される光線であり、その殆どは第3プリズム片13の側面132の上に設けられた遮光部材7に到達し同部材7に吸収される。
【0092】
従って、OFF光22,23は、投写レンズ5に取り込まれない(入射しないため)ため、画像の黒表示の状態(スクリーン上の暗点に対応)を提供する。
【0093】
図1に示すように、第1のプリズム片11、第2のプリズム片12および第3のプリズム片13は、それぞれが他の2つのプリズム片に対して後に説明する所定の微小な間隔を隔てて配置されつつ、全体としてひとつの構造体であるプリズム1を構成している。
【0094】
第1外面111、第5外面112、第4内面113および第1内面114Aを含む外面114は第1のプリズム片11の外形面を特徴付ける平面であり、第2外面121、第2内面122および第3内面123は第2のプリズム片12の外形面を特徴付ける平面であり、第5内面131、第4外面132および第3外面133は第3のプリズム片13の外形面を特徴付ける平面である。
【0095】
なお、図1に示された、断面形状が四角形の第1プリズム片11、三角形の断面形状を有する第2プリズム片12および直角三角形の断面形状を有する第3プリズム片13のそれぞれは、図1に表現された各プリズム片に対応する各辺が紙面に垂直な方向に延伸された面によって構成される立体である。
【0096】
図1に示すプリズム1の構成の特徴点は、次の通りである。
【0097】
先ず、プリズム1は、その内部に、第1内面114A、第2内面122、第3内面123、第4内面113及び第5内面131を有している。
【0098】
ここで、第1内面114Aは面114の一部であり、可変ミラー素子3から第1距離だけ離れた第1端部1E1を備え、且つ、第1端部1E1から第2端部1E2に向かって可変ミラー素子3に対して遠ざかる様に投写光軸6に対して傾斜している。そして、第1内面114Aは、外部から入射する光線束20を全反射して反射後の外部入射光線束20を可変ミラー素子3側へ向けてプリズム1内を伝搬させ得ると共に、第2内面122及び第4内面113を透過した第1反射状態光線(の第1)束21が入射するときには当該第1反射状態光線束21を透過させて投写レンズ5側へ向けてプリズム1内を伝搬させ得る光学特性を有する。この様な光学特性を満足させるべく、第1内面114A上には誘電体多層膜(図示せず)がコーティングされており、この誘電体多層膜は、入射する第1反射状態光線束21の光量の殆どを透過し得る様に設定されている(例えば、透過率を99%に成る様に設計可能)。
【0099】
又、第2内面122は、可変ミラー素子3からそれぞれ第2距離及び第2距離よりも大きく第1距離よりも小さい第3距離だけ離れた第1端部2E1及び第2端部2E2を備えており、しかも、次の光学特性を有する。即ち、第2内面122は、第1内面114Aで全反射された外部入射光線束20が入射するときには外部入射光線束20を透過させ、可変ミラー素子3に照射して可変ミラー素子3によって反射される光線束の内で第1反射状態にある光線の第1束が入射するときには入射した第1反射状態光線の第1束21を透過させる一方で、可変ミラー素子3によって反射される光線束の内で第1反射状態とは異なる第2反射状態にある光線の第1束が入射するときには入射した第2反射状態光線の第1束22を全反射させ得る。ここでも、第2内面122が入射した第1反射状態光線束21の光量の殆どを透過し得る様にするために(例えば、透過率を99%)、第2内面122上には誘電体多層膜(図示せず)がコーティングされている。
【0100】
ここで、上記第1距離、第2距離、第3距離及び後述の第4距離は、投写光軸6と交差する可変ミラー素子3の反射面の中心部から対象物までの距離として定義される。この定義では、(第1距離)>(第3距離)>(第2距離)であり、(第2距離)<(第4距離)となる。あるいは、上記第1距離、第2距離、第3距離及び第4距離は、可変ミラー素子3の反射面を含む平面から対象物を眺めたときの最短距離として定義される。この定義では、(第2距離)=(第4距離)とみなせる。
【0101】
更に、第3内面123は、第1内面114Aと同一平面内に有り、且つ、可変ミラー素子3からそれぞれ上記第4距離及び前記第3距離だけ離れた第1端部3E1及び第2端部3E2を備えている。そして、第2内面122の第2端部2E2は、第3内面123の第2端部3E2に該当する。換言すれば、両面122、123は端部2E2(3E2)に於いて交差している、ないしは繋がっている。加えて、第3内面123は、第2内面122に入射すること無く入射した第1反射状態光線の第2束21を透過させて投写レンズ6側へ伝搬させ得ると共に、第2内面122に入射すること無く入射した第2反射状態光線の第2束23を透過させ得る光学特性を有する。更に、第3内面123は、第2内面122で全反射されて入射する第2反射状態光線の第1束22を全反射させ得ると共に、第2内面122で全反射された後に第2外面121で再度全反射されて入射する第2反射状態光線の第1束22を透過させ得る。ここでも、同様の目的から、第3内面123上には誘電体多層膜(図示せず)がコーティングされている。
【0102】
又、第4内面113は、第2内面122に対して平行対面配置されており、第1内面114Aで全反射されて入射する外部入射光線束20の殆どと、入射する第1反射状態光線の第1束21の殆どとを透過させ得る光学特性を有する。ここでも、同様の目的から、第4内面113上には誘電体多層膜(図示せず)がコーティングされている。
【0103】
又、第5内面131は、第1内面114Aと第3内面123とに対して平行対面配置されており、両プリズム片11、12を出射した後に入射する光線束の殆どを透過させ得る光学特性を有する。ここでも、同様の目的から、第5内面131上には誘電体多層膜(図示せず)がコーティングされている。
【0104】
他方、プリズム1は、以下の外形面を有している。即ち、プリズム1は、第1外面111と、第2外面121と、第3外面133と、第4外面132と、第5外面112と、面114の露出部分114Bとを有する。
【0105】
ここで、第1外面111は、第1内面114Aに対向する位置に配設されており、入射する外部入射光線束20を透過させて第1内面114A側へ向けてプリズム1内を伝搬させ得る入射面である。
【0106】
又、第2外面121は、可変ミラー素子3、第2内面122及び第3内面123に対向する位置に配設されており、第2内面122の第1端部2E1に該当する第1端部と第3内面123の第1端部3E1に該当する第2端部とを備えている。そして、第2外面121は、第2内面122を透過して入射する外部入射光線束20を透過させて可変ミラー素子3側へ出射すると共に、可変ミラー素子3によって反射される光線束21、22、23をプリズム1内に入射し得る光作用面である。
【0107】
第3外面133は、第2外面121と略平行な面であって、投写レンズ5に対向する位置に配設されており、第3内面123の第1端部3E1の上方に位置する第1端部3OE1と、第1内面114Aの第2端部1E2に隣接する第2端部3OE2とを備える。しかも、第3外面133は、第1内面114Aを透過して入射する第1反射状態光線の第1束21と第3内面123を透過して入射する第1反射状態光線の第2束21とを透過させ得る出射面である。
【0108】
第4外面132は、第1外面111、第1内面114A、第3内面123及び第5内面131に対向する位置に配設され、第3外面133の第1端部3OE1と繋がった第1端部と、第2外面121の第2端部3E1の隣接上方に位置する第2端部とを備える。
【0109】
第5外面112は、第2外面121と同一平面内に有り、第2外面121の第1端部2E1に隣接する第1端部と第1外面111と繋がった第2端部とを備える。
【0110】
尚、第4外面132を除いて(但し、後述する様に、遮光部材7を第4外面132の上方に設けるときには第4外面132をも含める)、他の外面111、121、133、112、114B上には、同様の目的から、誘電体多層膜(図示せず)がコーティングされている。
【0111】
以上の様に、第2外面121と第3外面133との間のプリズム1内部には、可変ミラー素子3から投写レンズ5に向かう方向に沿って、第2内面122と第4内面113と第1内面114Aと第5内面131とが順次に配設されており、又、第3内面123と第5内面131とが順次に配設されている。
【0112】
また、図1中、矢印で示される光線は、図面に平行な面(メリジオナル面)に含まれる光線の軌跡を表しているものとする。
【0113】
以下、図1及び後述する図面を参照しながら本照明光学系の光学的作用を説明する。
【0114】
(偏向作用について)
まず、図1を参照してプリズム1への入射光に対する偏向作用について説明する。
【0115】
可変ミラー素子3を照明する照明光線20は、照明光軸60に垂直な面111(第1の面。外部から入射する光線束が入射可能な入射面)から第1のプリズム片11へ入射する。
【0116】
第1のプリズム片11の面114(第2の面。第1の反射面として可変ミラー素子3から遠い側に設けられている)と第3プリズム片13の面131(第7の面)とは、後述するような微小な空気間隙を介して互いに平行に配置されており、照明光線20は第1プリズム片11の内部を進行して面114に到達し、空気間隙と面114との界面において全反射される。
【0117】
すなわち、面114は入射する照明光線20が全反射を起こすように照明光軸60に対して傾いて配置されている。
【0118】
面114における全反射により偏向された照明光線20の一部は、隣接する第2プリズム片12を透過した後、プリズム1から出射して可変ミラー素子3へ到達する。
【0119】
カバーガラス4は、光学的な平行平面板とみなせるため、ここでは単に光路長を変えるだけの要素であるとして詳しい説明を省略する。
【0120】
さて、第1のプリズム片11の面113(第3の面)および第2のプリズム片12の面122(第4の面。第2の反射面として可変ミラー素子3から近い側に設けられている)も、後述するような微小な空気間隙を介して対向し合うと共に互いに平行な位置関係に配置されているため、面114において全反射した照明光線20の一部は、第1のプリズム片11の面113と第2のプリズム片12の面122との間の空気層を通過することになる。
【0121】
厳密には、この空気層(空気間隙内にある空気層)の存在により照明光線20は屈折し、ごく僅かに照明光線20の進行方向は直進方向からずれるが、この場合の空気層の厚さは、後述するように数μm程度であって、しかも、両面113,122の延在方向に沿ってほぼ一定となるように設定されているため、この屈折の影響をほぼ無視することができる。
【0122】
また、第1のプリズム片11の面112と第2のプリズム片12の面121(第5の面。外部から入射する光線束が入射可能な面111から入射される光線束を可変ミラー素子3に照射される光線束として出射すると共に、可変ミラー素子3からの反射光を入射し得る光作用面でもある)とは同一平面又は略同一平面となるように配置されているため、プリズム1から出射して可変ミラー素子3へ向かう光線20の振舞いも出射する位置によらずに同じであるとみなすことができる。
【0123】
すなわち、プリズム1の偏向作用に関してプリズム1を見るときには、第1プリズム片11と第2プリズム片12とが一体となった三角形の断面形状を有する1つのプリズム片を想定することができる。
【0124】
(光線選択作用について)
次にプリズム1の光線選択作用について説明する。
【0125】
可変ミラー素子3は、上述した第1反射状態および第2反射状態のように、異なる2つの反射状態を作出し得る。
【0126】
まず、第1反射状態においては、可変ミラー素子3は、入射する照明光線20を投写レンズ5の方へ反射する。
【0127】
図1中の、ON光(第1反射状態光線束)21は、プリズム1をほぼ直線的に透過して投写レンズ5に到達する。
【0128】
図1に示すように、ON光21は、プリズム1を構成する3つのプリズム片、すなわち第1乃至第3のプリズム片11乃至13の、互いに対向する面間に介在する空気層(空気間隙)の全てを透過する可能性が高い。
【0129】
しかしながら、これらの空気層(空気間隙)は、後述するように、それぞれ数μm程度の厚さ(面間隔)を有しており、しかも、ほぼ一定の厚みを有し、かつ空気層を作出する対向面の各々が互いに平行となるように設定されているため、空気層を通過することによるON光21が受ける屈折の影響を最小限にすることができる。
【0130】
勿論、第1のプリズム片11の面114と第2のプリズム片12の面123(第6の面)とは同一平面となるように配置されており、また、第1のプリズム片11の面112と第2のプリズム片12の面121とは同一平面であるとともに、これら両面112,121と第3のプリズム片13の面133(第8の面。投写レンズ5へ向かう光線束として可変ミラー素子3からの光線束を出射可能な面121と略平行である出射面でもある)とは互いに平行となるように配置される。
【0131】
上述したように、プリズム1を構成する3つのプリズム片11,12,13の内の第1プリズム片11及び第2プリズム片12に関しては、1つのプリズム片(例えば、第1のプリズム片11)は、他の2つのプリズム片(例えば、第2、第3のプリズム片12、13)と、空気間隙を介して対向する2つの対向面を有しており、上述した第1および第2の反射面114,122はこの2つの対向面のいずれか一方に一致する。
【0132】
従って、ON光21は、巨視的に見るときには、可変ミラー素子3と投写レンズ5との間に配置された光学的な平行平面板を透過しているとみなすことができる。
【0133】
一方、第2反射状態においては、照明光線20は投写光軸6を挟んで照明光線20の入射方向とは反対側に出射し(反射偏向され)、図1に示したOFF光(第2反射状態光線束)22(第1束)および23(第2束)として進行する。
【0134】
これらのOFF光22および23は、投写レンズ5の受光角度から外れた光線であるため、この第2反射状態は、スクリーンに投写される映像光がOFFの状態、すなわち黒表示に対応する。
【0135】
この状態において、OFF光(第2反射状態光線の第1束)22は第2のプリズム片12の面122において全反射され、その進行方向を図1中の右方向へと大きく偏向される。
【0136】
つまり、第2のプリズム片12の面122は、投写光軸6に対して所定の角度だけ傾いて配置され、ある大きさ以上の入射角度(全反射条件を満足する角度)を有する光線を全反射させることになる。
【0137】
面122で全反射されたOFF光線22は第2のプリズム片12の内部を図1中の右方向へ伝播し、OFF光22の一部は面121に到達し、このときの入射角は非常に大きいため、面121で再び全反射されて第2プリズム片12内を図1の右方向へと進行する。又、面122で全反射された後に面123に直接到達したOFF光22も、このときの入射角が非常に大きいため、面123で全反射され、その後、面121に到達し、このときの入射角は大きくないため、その一部は面121で反射されて面123へ再び到達する。このように、面122で全反射されたOFF光22の殆どは、両面123,131を透過して第3のプリズム片13の面132に到達する。又、OFF光(第2反射状態光線の第2束)23も、2つの面123,131を透過して面132に到達する。そこで、これらのOFF光22,23を吸収するために、面132上には遮光部材7が配置されている。
【0138】
このように構成することによって、OFF光22,23の大部分が投写レンズ5の内部に進入することがない(取り込まれない)ため、投写レンズ5の鏡筒内面やレンズ面(レンズ表面、境界面)における散乱等を原因とするゴースト光の発生を低減させることが可能となり、主にスクリーン上における黒表示状態における光出力を抑えることによるコントラスト向上を実現することができる。
【0139】
また、第1プリズム片11の面114に到達する前の第1プリズム片11内を伝播する照明光線20は、第1のプリズム片11の面113と衝突することがない。そのため、第2のプリズム片12の面122を、可変ミラー素子3によって反射されたOFF光22を全反射作用し得る位置に配置することができる。又、第1のプリズム片11の面113と第2のプリズム片12の面122との間に介在する空気層(空気間隙)は、照明光線20およびON光21に対してはほぼ影響を与えることがない。本プリズム1では、OFF光22および23を効果的に遮光部材7へ導くことができる。
【0140】
(プリズムの設計例)
さて、プリズム1のコントラスト向上効果をより具体的に説明するため、プリズム1の設計例を示し定性的な考察を行う。ここで、可変ミラー素子3の具体例としてDMDを想定し、先に説明したDMDの特性に従ったプリズム1の具体例を示すものとする(以下、可変ミラー素子3の一例としてDMDを用いたものを示し、DMD3と称す)。
【0141】
プリズム1の設計は、第1のプリズム片11と第2のプリズム片12とからなるDMD3側プリズム片、すなわち照明光側プリズム片の設計と、第3のプリズム片13より成る映像光側プリズム片の設計とに大きく分けることができる。
【0142】
図2は、プリズム1の設計における設計パラメータを説明する概略図であり、図2において、61はDMD3に関する照明光軸、62は第1のプリズム片11の面114において全反射した後の第1プリズム片11内部における照明光軸、αとβはプリズム1の形状を特徴付ける頂角である。
【0143】
その他の符号は図1と共通であるので説明を省略する。なお、投写光軸6と照明光軸61とのなす角度は20°として説明する。
【0144】
まず、DMD3側の第1のプリズム片11と第2のプリズム片12とは一体化されているとし、メリジオナル面内(紙面内)における頂角αと頂角βを求めて、DMD3の照明条件を満たすプリズムを設計することから始める。
【0145】
頂角αとβの設計条件として、
▲1▼プリズム1に入射する全ての照明光線束が第1のプリズム片11の面114における全反射条件を満足することによりDMD3側へ偏向されて、プリズム1を出射した照明光線束が20°の進入角度をもってDMD3を照明すること。
【0146】
▲2▼DMD3から、図示しない投写レンズへ向かう反射光(ON光)が全反射面を全て透過すること
の2つの条件を満足する必要がある。条件▲1▼は図3に示す楔形状のプリズムを想定すれば簡単にその解を得ることができる。
【0147】
図3は、仮想的な立体を想定し光線の振舞いを説明する概略図である。図3では、図2における第1のプリズム片11と第2のプリズム片12とを一体化したプリズム片10を示すと共に、同片10を全反射面115に関して面対称に鏡像反転した立体の輪郭を点線で示す。
【0148】
頂角αとβの設定を考える場合はプリズム片10と点線とによって形成される楔形状の仮想プリズムを考えれば良い。図3中、実線矢印で示される200はプリズム片10の入射面116に対して垂直に入射する光線の振舞いを示している。
【0149】
プリズム10の実体上の出射面は面118であり、119は、実体上の出射面118に対応する仮想的に考えたプリズム(仮想プリズム)の仮想出射面である。
【0150】
上述した、投写光軸6と照明光軸61とのなす角度を20°とすることから、仮想出射面119から出射した光線は仮想出射面119の法線63に対して20°だけ傾く状態を想定する。このとき、仮想出射面119への入射角度をθとすると、α、βおよびθの間には次のような関係式(1)が成り立つ。
【0151】
【数1】
【0152】
ここで、nはプリズム片10を形成する材料の屈折率である。
【0153】
(プリズム片における全反射条件)
次に、プリズム片10に入射する全ての光線が全反射を呈する条件を求める。
【0154】
図4は光線の全反射条件を説明する概略図である。図4中、201によって示される実線矢印はプリズム片10に入射する光線のうち、全反射面115に対して最も小さな角度で入射する最外角光線を示しており、この光線が全反射条件を満たせば全ての入射光線が全反射を呈することになる。
【0155】
図4中、γは光線201と全反射面115に対する法線64とのなす角であり、全反射面115に対する入射角である。このとき、照明光線束のFナンバーは図4中の角度δによって次式(2)のように定義される。
【0156】
【数2】
【0157】
さて、光線201の全反射面115への入射角γと入射面116における光線の屈折とにより次式(3)が成り立つ。
【0158】
【数3】
【0159】
入射光線201が全反射面115において全反射条件を満たすことから、
【0160】
【数4】
【0161】
が成り立つ。また、式(3)および式(4)から、次式(5)が成り立つ。
【0162】
【数5】
【0163】
なお、式(5)の両辺が等しくなるときのαを、特にα1とする。
【0164】
DMD3への照明光線束は、全反射面115において全反射するだけでなく、図3の仮想出射面119を全ての光線が透過すること(このことは、照明光線束がDMD3へ確実に照明されるための条件)も必要である。
【0165】
図5は入射面116に入射する光線のうち、照明光軸60に対して、図4に示したとは反対側に角度δで入射する光線202の振舞いを示している。
【0166】
図5において、ωは光線202と仮想出射面119の法線63とのなす角で、仮想出射面119に対する入射角を示している。
【0167】
この光線202は、仮想出射面119に対して最も大きな角度ωで進入するため、ここで全反射を生じてプリズム片10内に光線が閉じ込められないことを確認しなければならない。この場合、まず、角度ωについて次式(6)が成り立つ。
【0168】
【数6】
【0169】
また、仮想出射面119において、全反射が起きない条件は次式(7)で表すことができる。
【0170】
【数7】
【0171】
よって、式(6)、式(7)より次式(8)が成り立つ。
【0172】
【数8】
【0173】
この式(8)に基づき、両辺をそれぞれ屈折率nの関数としてプロットしたグラフを図6に示す。ただし、式(2)において定義される照明光線束のFナンバーを3とした。図6中、破線によって示されるのが式(8)の左辺に相当する屈折率nの関数であり、実線が同様に右辺の関数を示している。
【0174】
図6に示したグラフより、式(8)の不等式が一般的な光学材料の屈折率の範囲である1.45から1.85の間で成立することがわかる。
【0175】
(プリズム頂角の条件)
次に、DMD3から投写レンズへ向かうON光の振舞いによるプリズム頂角α及びβの条件を求める。
【0176】
図7は、2つのプリズム片10および13から構成されるプリズム100を示しており、DMD3からのON光のうち、全反射面115に対して最も大きな入射角νで進入する光線203を示している。また、64は全反射面115の法線であり、その他の符号は前述の通りである。
【0177】
さて、光線203が全反射面115において全反射せずにプリズム片13の方へ透過するならば、DMD3からの映像光は全てプリズム片13側へ透過することになる。まず、入射角νについて次式(9)が成り立つ。
【0178】
【数9】
【0179】
また、全反射が起きない条件は式(7)と同様、次式(10)で表すことができる。
【0180】
【数10】
【0181】
式(9)、式(10)から次の不等式(11)が得られる。
【0182】
【数11】
【0183】
なお、式(11)の両辺が等しくなると仮定したときのαを、特にα2とする。
【0184】
以上より、プリズム10の基本形状を規定する頂角α及びβに関する条件式を導出した。この場合、プリズム10の形状を決定するには式(5)及び式(11)の両方の条件を満足する頂角αを求め、式(1)よりβを求めれば良い。
【0185】
図8は、式(5)による角度α1及び式(11)による角度α2をプリズム材料の屈折率nの関数としてプロットしたものである。横軸をプリズム材料の屈折率とし、縦軸を角度としている。
【0186】
式(5)及び式(11)の両不等式の表す範囲の関係より、角度α1を示す点線と角度α2を示す実線に挟まれた範囲(後述する角度選定範囲)から頂角αの値を選ぶことができる。
【0187】
図8を参照すると容易に理解できるように、実用的な光学材料の屈折率の範囲である屈折率1.45から1.85の範囲において、角度αとして約38.0°から約50.4°の間で最適値を選ぶことができる。
【0188】
この場合、角度βは式(1)から簡単に対応付けることができ、約25.0°から約38.0°の間で最適値を選定することができる。
【0189】
実際的な具定例として、プリズム10の材料をBK7(nd=1.5168)とし、DMD3の照明光線束のFナンバーを3、DMD3の照明光軸とDMD3の法線とのなす角度を前述の通り20°(すなわち、照明光線束が20°の進入角度をもってDMD3を照明することと等価)とすると、頂角αは47.55°から47.97°の間で最適値を選べば良い。なお、このとき、式(1)より求められる角度βは34.52°から34.94°の間の値を採り得る。
【0190】
図9はプリズム10の材料(この場合はBK7)における波長分散を考慮して、C線(656.27nm。この波長における屈折率をnCと表記)、d線(587.56nm。この波長における屈折率をndと表記)、及びF’線(479.99nm。この波長における屈折率をnF’と表記)の場合の各頂角αの値をプロットしたものであり、横軸と縦軸は図8と同様である。
【0191】
このように、プリズム10の材料の波長分散を考慮すると、α≒47.7°が好適であり、この場合β≒34.7°となることが理解できる。この値に限らず、材料の波長分散による屈折率の採り得る範囲が図8に示される角度選定範囲に含まれていれば、可視光の領域であって屈折率1.45から1.85程度の範囲において好適なプリズム材料を選択することができる。
【0192】
一方、図1又は図7に示すプリズム片13の設計は、DMD3側のプリズムが単一のプリズム片であっても、複数のプリズム片の複合体であっても同じであり、図1に示すように第3のプリズム片13の面133は、第2のプリズム片12の面121に平行となる。従って、DMD3と投写レンズ5との間に、比較的厚みのある一枚のガラス板が配置されているとみなし得る。このように、投写光軸6に垂直な面で構成される平行平面板で以てプリズム1を構成しているので、投写レンズ5の設計を非常に簡単なものとすることができる。
【0193】
以上のような設計に基づく2つのプリズム片から構成されるプリズム10にDMD3からの反射光を入射させた場合の光線軌跡を図10に示す。図10には、DMD3の法線の方向に所定のひろがりをもって進行するON光と、このDMD3の法線から所定の角度だけ傾いた方向に進行するOFF光の両方を描いている。
【0194】
プリズム13の側面上には遮光部材7が設けられているが、図10中の点線楕円で囲んだ辺りに到達するOFF光は投写レンズにそのまま進入する可能性が高い。
【0195】
その理由は、プロジェクタの投写レンズには画面の周辺光量を高めることを目的としてテレセントリックレンズが用いられることが多く、このようなテレセントリックレンズは、図10に示すON光を全て受け取る(入射させる)ために、レンズ開口の大きいものを用いる場合が多く、従ってOFF光も投写レンズ内に進入し易いという状況が生じてしまうからである。
【0196】
テレセントリックレンズの一例を用いた計算機シミュレーションによる光線追跡を行い、投写レンズへOFF光が進入する様子を調べた例について以下に述べる。
【0197】
図11は、Fナンバーが3のテレセントリックレンズ51をプリズム100の直後に配置した光学系による計算機シミュレーションの出力であり、説明に必要な部分を拡大して示した図である。
【0198】
図11を参照すると、DMD3から出射したOFF光の一部が投写レンズ51に進入し、投写レンズ51を構成する内部のレンズ面において反射を繰り返しながら、さらに投写レンズ51の内部へ進んで行く様子がわかる。
【0199】
この図11に示した場合においては、理解しやすいようにOFF光の光線の本数を少なくして示しており、影響が少ないように見えるが、現実にはさらに多くのOFF光が投写レンズ内に不必要に進入してしまう。
【0200】
原理的には、投写レンズ51の有するFナンバーよりも大きな角度で進入した光線は、レンズ内の絞り面や投写レンズ51の鏡筒内面等によって吸収され、投写画面(スクリーン)に到達することはないはずである。
【0201】
しかしながら、絞り面や鏡筒内面の光吸収が現実的には完全ではない(完全吸収体ではない)こと及び、各レンズの表面に施される減反射コーティングの不完全さ(反射を完全に抑えることができない)に起因して、現実的には様々な位置において迷光が生じることとなり、この迷光がスクリーンに到達することによって投写される画像のコントラストを低減させてしまう。
【0202】
従って、OFF光を投写レンズ51に進入しないようにすることができれば、投写される画像のコントラストを直接的に、大きく改善することができる。
【0203】
(プリズム片の設計について)
そこで、以下では、主に投写レンズに進入する可能性が高いOFF光線に効果的に作用するプリズム片12(図1)の設計方法について説明する。
【0204】
このようなプリズム片12の設計のためには、DMD3から反射したOFF光の振舞いと、プリズム片12に入射し、このプリズム片12の有する全反射面に到達する光線の振舞いを調べる必要がある。
【0205】
図12は、DMD3から反射したOFF光の振舞いを示す概略図である。
【0206】
光線204はDMD3の、図12中で最も左端部分から反射される光線であり、DMD3の法線6(ここでは投写光軸6とDMD3の法線とが一致する例について述べるので、便宜的にDMD3の法線を法線6として説明する)から40°傾いた方向へ出射するOFF光の光軸65から角度δだけ、さらに外側(法線6に寄る方向)に傾いた光線を示している。
【0207】
また、66は光線204の方向軸、205は反射面122上にあって、且つ当該反射面122の位置を規定する点Pを通る光線である。
【0208】
DMD3の図12中の左端部で反射されてプリズム片12に入射するOFF光線束は、光軸65から図12中の左右へ角度δだけ広がった分布を有している。そこで、OFF光204をプリズム片12の反射面122において全反射させることができれば、それ以外の角度を有する反射光は全て反射面122で全反射されて図12中の右方向へ進行することになる。従って、この全反射の条件を基に、必要なプリズム片12の頂角κの値を求めることができる。
【0209】
図13は、プリズム片12を拡大して示した拡大図であり、図13を参照しながら頂角κの導出について説明する。なお、図13において、67は反射面122の法線である。
【0210】
光線204がプリズム片12の内部に進入したときの、光線204とDMD3の法線6とのなす角度εは次式(12)で表すことができる。
【0211】
【数12】
【0212】
また、角度ε、κおよびμの間には次の式(13)に示すような関係がある。
【0213】
【数13】
【0214】
ここで、角度μに関しては光線204の全反射条件より、次式(14)を満たす必要がある。
【0215】
【数14】
【0216】
以上、式(12)、式(13)および式(14)より、次の不等式が成り立つ。
【0217】
【数15】
【0218】
図14は、プリズム12の材料の屈折率nをパラメータとして、照明光線束のFナンバーに対する頂角κの値を式(15)に基づいて計算し、その計算結果をプロットしたものである。
【0219】
図14によれば、プリズム12の材料として実用的な屈折率の範囲である屈折率1.45から1.85の間においては、頂角κの最小値として約16.2°から24.5°の間にある値を取ることが理解できる。
【0220】
実際的な例として、プリズム12の材料をBK7(nd=1.5168)とし、DMD3からの反射光線のFナンバーを3とする場合、式(15)に基づいて求められる角度κの最小値は、約21.753°となる。
【0221】
さて、図12の反射面122にはDMD3からのOFF光が全て入射する必要はなく、図12に示した光線204のように、プリズム片13の側面132に到達せずに投写レンズに進入する可能性が高い光線だけが反射すればよい。
【0222】
しかしながら、図1のプリズム片11に関して言えば、図1に示す光線20が全反射面114に到達する前に面113に到達してしまうと、照明光線束の一部がけられて欠落するため、プリズム片11とプリズム片12との間に設ける空気ギャップ(空気間隙)の位置には注意しなければならない。
【0223】
一方、図12に示した点Pを通る光線205は、プリズム片13の側面132(望ましくは、遮光部材が側面132上部に設けられる)に到達することが望ましいが、これは、DMD3の図12中の最も左端部分から出射される光線204が、反射面122において反射される条件下で実現することが可能である。
【0224】
(点Pを求める方法について)
ここで、点Pの位置を求める方法について図15に示す一例を参照しながら説明する。
【0225】
図15において、Rはプリズム1の入射面111に入射する光線束の半径であり、点Qは入射光線束の内で最も外側の光線206が反射面114に到達する点を示している。
【0226】
プリズム1内での屈折角δ’が既知であるので、頂角αをなす頂点Sから照明光軸60までの距離が決まれば、点Qの位置は、図15中のパラメータを用いた簡単な幾何計算から求めることができる。
【0227】
点Pは、点Qより頂点T側に取ればよく、このときDMD3から出射する最外光線207が反射面122に到達することを確認すれば良い。
【0228】
さて、図16は、上述の設計手順により設計された2つのプリズム片から構成されるプリズムを用いて行った計算機シミュレーション(光線追跡シミュレーション)の出力例である。角度κを求めることによって、このような光線軌跡からでも簡単に点Pの位置、あるいは反射面122の位置を定めることができる。
【0229】
以上のように設計された、3つのプリズム片から構成されるプリズム1にOFF光が進入した状態を光線追跡して求めた出力図を図17に示す。図17から分かるように、全反射面122によって、投写レンズに侵入する不要な光線の大部分をプリズムの側面132に向かわせることができる。
【0230】
図17に示した光線では僅かにプリズム1の最終出射面133に直接的に到達する光線が描かれているが、点Pの位置を調節することによってこうした光線をなくすことも可能である。
【0231】
このようにして、2つのプリズム片により構成されるプリズムの外形形状を保ったまま、特に、投射レンズから見た場合のプリズム1を平行平面板としてみなした場合の板厚を変えることなく、コントラスト低減の主要因であるOFF光の処理を確実に行うことができる。
【0232】
コントラスト比の改善効果は、投写光学系全体の仕様によって異なるので具体的な数値を示すのは困難であるが、OFF光処理の役割を面132、ならびにこの面132上に設けられる遮光部材7に集約することができ、OFF光を投射レンズに取り込む(入射させる)ことがなくなるため、先に紹介した第5の従来技術に示したような2つのプリズム片からなるプリズムを用いた光学系に比べて数倍以上のコントラストの改善が期待できる。
【0233】
図18は図11に示したものと同様の投写レンズと、3つのプリズム片から構成されるプリズム1とを組合せた光学系について行った計算機シミュレーションの出力の一部である。
【0234】
このシミュレーションの出力結果によれば、DMD3により反射され、一度、全反射面122に到達した光線は、プリズム1から外に出ることなく、側面132に到達することがわかる。従って、側面132の上部に設けられる遮光部材に捕らえられないOFF光の内、直接投写レンズに進入する光線はほぼ無くすことができる。
【0235】
(プリズム1の作製について)
さて、プリズム1を作製するにあたっては各プリズム片の形状及び平面度における精度、材料特性の安定性及び各プリズム片間に設けられる空気ギャップ(空気間隙)の形成精度(すなわち、各プリズム片の配置精度)が、プリズム1の性能を左右する要因となる。
【0236】
各プリズム片の形状及び平坦度の精度は、本プリズムの基本的な仕様であり、投写レンズ51とDMD3との間に配置される平行平面板としての精度は投写画像の解像度に関わる重要な要素である。
【0237】
プリズム1を構成する各プリズム片、DMDの表面、投写レンズを構成するレンズ面等の各光学面は、減反射コーティングによって透過率を向上させることが好ましく、光学面以外の面はハンドリング向上や迷光の処理に影響が大きいため、例えば砂擦り面処理を行うことも好適である。
【0238】
また、プリズム材料の屈折率の公差や分散の値は、全反射条件を満足する上で重要である。後述のように熱膨張係数もプリズム製作には重要なパラメータとなる。
【0239】
なお、空気ギャップ(空気間隙)は、全反射作用を起こす為に設けているのであるが、次の点をも考慮する必要がある、即ち、全反射作用を生じずに透過する光線が空気ギャップで屈折作用を受けるため、空気ギャップの大きさ及び精度が光学系の性能、特に投写画像の解像度を大きく左右する点を考慮する必要がある。
【0240】
(空気ギャップの形成について)
空気ギャップ(空気間隙)の形成には、一般的に、プリズム片とは別部材のスペーサを挟む方法が最も多く採用される。この場合、プリズム材料の熱膨張による空気ギャップの長さの変化が場所によらず一定であることが必要であるため、スペーサの材料にはプリズムの材料と熱膨張係数の等しいものを用いることが望ましい(例えば、プリズムの材料にBK7を用いている場合、スペーサの材料にBK7を用いる)。
【0241】
空気ギャップによる解像度の劣化は、まず空気ギャップの大きさそのものに依存する。
【0242】
図19は、図7に示した2つのプリズム片10,13からなるプリズム100にFナンバーが3である光線が入射する場合を想定し、図7に示したDMD3の光軸6に対して所定の角度だけ傾いている空気ギャップと解像度の評価に用いられるMTFとの関係を計算したものである。
【0243】
許容されるMTFの劣化はシステムの要求性能によって異なるが、それが例えば数%であるとした場合、図19に示した空間周波数の範囲(72lp/mmまでの空間周波数の範囲。ここで、lp/mm=line pair/mm)における空気ギャップは数ミクロン以下でなければならないという設計条件を得ることができる。
【0244】
また、空気ギャップは、これを形成する平面が互いに平行であることが理想であるが、これが偏った場合(光学的に平行であるとみなせる限界を超えて相対的に傾斜している場合)には、投写レンズの非点収差が生じてしまい、著しい画像品質の劣化を引き起こす。
【0245】
図20は、空気ギャップに偏りが生じ、互いに平行であるはずの2つの面が傾いて空気ギャップが楔形状となった場合に、MTFに及ぼす影響を計算した一例である。
【0246】
この計算も、図19の計算に用いた光学システムを想定しているが、DMD3の光軸6に対する空気ギャップの傾きの設定によっては、DMD3の光軸6上におけるMTFが最良となるとは限らないため、空気ギャップの傾き角度の許容値を導出することは容易ではない。
【0247】
しかしながら、所望の解像度と空間周波数との間の関係から、許容される傾き角度の大きさを概算的に捉えるというような目的に対して以上のような計算は有用である。
【0248】
以上の計算結果から考察すると、空気ギャップを2ミクロン又は3ミクロン程度とすることによって、優れた解像度特性を有するプリズムを作製することができる可能性が高い。
【0249】
このような微小の空気ギャップを実現するためには、例えば、所定の微小範囲にのみ誘電体多層膜や金属膜等のコーティングを行う方法が好適である。
【0250】
図21は、このような例を示す斜視図であり、図21において、9は、各プリズム片11、12及び13の、それぞれのプリズム片が他のプリズム片と対向する面上に設けられたスペーサを示しており、図21に示すように、光線が通る有効領域を避けて(さえぎらないように)、例えば各面のコーナー部分にスペーサ9が配置されている。
【0251】
これらのスペーサ9を形成するには、蒸着、あるいはスパッタリングによる多層膜や金属膜等のコーティングを採用することができ、先に述べたスペーサ(多層膜のコーティングによらないスペーサ)の場合に比べて、その対向面の間隔およびスペーサ自身の占有面積がはるかに小さな空気ギャップを安定して形成することができる。
【0252】
また、各プリズム片の面上に、直接、コーティングの積層構造による微小突起を形成することができるため、先に述べたスペーサ(多層膜のコーティングによらないスペーサ)を用いる場合に比べて、隣接するプリズム片の相対位置を決定する作業(工程)が簡単になる。
【0253】
さらに、このように多層膜のコーティングを用いてスペーサとする場合には、当該スペーサの固定のために必要な接着剤の使用を避けることができ、また、隣接するプリズム片の固定機能をスペーサに担わせないようにすることができる点で優れている。
【0254】
なお、上述したスペーサや多層膜のコーティングによって各プリズム片間の空気ギャップを確保するのであるが、その状態における各プリズム片の相対位置を固定するためには、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂(シリコンゴム系を含む)、シアン系樹脂等の内の少なくとも1つを含有する接着剤を採用することができる。
【0255】
また、接着剤を塗布する部分も、光線が通る有効領域を避ける条件を満足する部分であれば、例えばスペーサとプリズム片の面との当接する部分に、このスペーサまたはプリズム片の面上のいずれかに塗付したり、プリズム片の対向面を構成する稜線近傍の部分に塗布することができる。
【0256】
あるいは、特別にスペーサを設けなくとも、接着剤によって実質的にスペーサの効果を持たせるようにしてもよい。
【0257】
これらにより、互いのプリズム片が、各プリズム片の熱膨張率に略等しい熱膨張率を有するスペーサ(実質的にスペーサの効果を有する接着剤も含む)および接着剤によって各々固定される。
【0258】
(プリズム片の固定について)
プリズム片の固定に関しては、照明光線束が投写レンズに入射するまでの間、投写に関与する光が通過する面としての、プリズムの光学作用面以外の面を利用する方法が、実用上効果的である。
【0259】
図22は、3つのプリズム片から構成されるプリズム1を、プリズム材料と同じ部材からなる板材で固定する方法を示した概略図である。
【0260】
図22において、14は板状の固定部材であり、プリズム片11、12及び13の相互の固定に用いる。
【0261】
この場合、固定部材14は、3つのプリズム片11、12及び13のすべてに接することが可能な大きさと形状とを有する領域(図中、斜線部で示される領域)内における、各プリズム片の一部に該当する部分に接着剤を塗布してこれを固定することができる。
【0262】
この場合の固定には、様々な種類の接着剤の中から、特性の適したものを選ぶことができるが、光吸収又は温度変化による接着力の低下又は材料の変形が顕著なものは避けなければならない。
【0263】
また、接着面を固定部材14とプリズム側面との接触面全体とせず、複数の微小領域に分ける場合は、光吸収や温度変化、経時的変化等に起因する接着剤の変形等によって、空気ギャップを変えるような(空気ギャップの変形が起こるような)大きな応力が各プリズム片に働かないように、その接着剤の塗布する位置を選ぶ必要がある。
【0264】
図23は、固定部材14とそれぞれのプリズム片11、12および13とを固定する接着剤の位置を示す一例である。
【0265】
図23中、斜線部15が接着剤の塗布位置を示しており、図23に示すようにプリズム片11,12,13の各々毎に複数の位置に分けて接着剤が塗布されている。
【0266】
このように接着剤の塗布する箇所を、1つのプリズム片について複数の場所に分けることによって、接着剤の変形により生じる応力を分散させる効果を得ることができる。
【0267】
勿論、接着剤の熱膨張係数は、プリズムの材料、及び固定部材14の材料の熱膨張係数に近い値を持つことが望ましい。
【0268】
(遮光部材について)
次に、コントラストの改善に関係がある重要な要因としてプリズム片13の側面132の上部に設けられる遮光部材7について説明する(図1及び図17に例示してある)。
【0269】
遮光部材7は、単に側面132上に塗布された黒色塗装からなる光吸収材であっても良いが、光を吸収することによる発熱を原因とするプリズム1への悪影響(例えば、温度上昇による形状の歪み等)が考えられる場合は、黒色塗料とは別の部材を用いた遮光部材を用いても良い。
【0270】
また、側面132上に、当該側面132と密着するように直接に黒色塗装を施す場合には、側面132を粗面(例えば、砂擦り面処理がこれに含まれる)に加工することにより、側面132における光反射作用を抑えて光吸収作用を促進させても良い。
【0271】
また、別部材により光吸収を行わせる場合には、側面132へ到達した光線が反射を起こさずにそのままプリズム1の外部へ出射するように、側面132を平面ではなく多面形状に加工するのが好ましい場合もある。この場合、プリズム1と離間する外部(ここに説明されているものについては、プリズム片13の側面132と離間する外部)に光吸収層を配置することができ、このようにすると、光の吸収による発熱がプリズム1に伝導することを極力抑えることができるので、プリズム1の温度上昇を招きにくくなる。
【0272】
図24は、側面132に到達した光線を効率よくプリズム1の外部に出射するための側面132の形状の一例を示すシミュレーション結果である。
【0273】
プリズム片130に入射するOFF光は、図24中の「OFF light 2」と、全反射面122には入射せず、面123を透過する「OFF light 1」として示される光線とに分けることができる。
【0274】
図24にも示すように、プリズム片130の側面132は「OFF light 1」と「OFF light 2」とに対応した形状になっており、確実にOFF光をプリズム1の外部へ導くことに成功していることがわかる。
【0275】
また、遮光部材(光吸収材料)7Aを、例えば、図24中の点線によって示す位置に配置すれば、プリズム片130自体(プリズム1自体)の温度上昇をもたらすことなく、OFF光の処理(吸収)を行うことができる。
【0276】
(プリズムの保持について)
プリズム1(これまで説明されているものについては、プリズム片13)とは別体に遮光部材(光吸収材料)を配置する場合は、図25に示すようなプリズム1を保持するための保持部材70の内面(特に、この場合にはプリズム片130の側面に対向する内側面)に光吸収材料を付加すれば、プリズム1の保持と共にOFF光の吸収を行うことができるといった、2つの機能を同時に達成することが可能となるため、構成部品の数を減らすことができる。
【0277】
図25において、70はプリズム1のベース部71に取り付けられてプリズム1を保持するための保持部材であり、プリズム1より透過するOFF光が入射する保持部材70の面に光吸収材料(黒色塗料等)が付加されている。
【0278】
なお、保持部材70は、ON光が、この保持部材70によって遮られないことを目的として、図25に示すようにプリズム1の角部(コーナー部)においてプリズム1を保持し、その位置を固定可能な形状とするのが好ましい。
【0279】
このように保持することにより、プリズム1のベース部71との接触方向の動きを抑制することが可能であると共に、投写光軸6に沿う方向への動きを抑制することができる。
【0280】
さらに別の形状例として、図26には、光が出射可能な開口74(光出射開口74)を設けたプリズムの保持部材72を示す。
【0281】
保持部材72は、プリズム1の上面(投射レンズへの出射光が通過する領域を含む面)を、光出射開口74を除いて覆うのに加えて、(プリズム1の外形の一部である)プリズム片11の斜面形状部114Pに適合するように、同部114Pを覆う形状部73(ただし、保持部材72は、プリズム片11と保持部材72との間に空気間隙が介在するよう、すなわち、保持部材72の対向面(斜面形状部73の裏面に相当)とプリズム片11の面とが接触しないように配置される)を有している。
【0282】
このようにすることによって、プリズム片11の面の遮光及び防塵を行うことができ、OFF光又は、OFF光の進入を原因とする迷光が投写レンズに伝達されるのを極力防ぐだけでなく、プリズム片11の面114(プリズム1として露出する部分114P)の汚れによる同面114の全反射作用の効率の低下を防ぐ利点もある。
【0283】
また、外部の環境変化に対して、光学的な性能の変化を生じにくい、いわゆる環境変化に強いプリズムを構成するという点では、空気ギャップにより生じる空間をシーリング剤等によって密閉することも望ましい。このようにすると、例えば、結露による光学面の曇りや、ガラス研磨面の化学変化による劣化を極力抑えることができる。
【0284】
尚、第1,第2及び第3プリズム片11,12,13の各々を、複数のプリズム片の組み合わせより成るプリズム片として構成しても良い。又、第1プリズム片11の面114Bを面112に平行な外面としても良い。
【0285】
以上、3つのプリズム片からなるプリズムについて、図1に示したような基本的な構成から、様々な変形例まで説明したが、ここに述べた実施例だけでなく本発明の目的、用途から逸脱せず、かつその要旨を変更しない範囲において様々な変形例が可能であることも勿論であることは言うまでもない。
【0286】
実施の形態2.
(プロジェクタ装置の光学系)
図27は、本発明に係る実施の形態2であるプロジェクタ装置の光学系を示す図である。図27において、1は実施の形態1において説明したプリズム、同じく5は投写レンズ、80はプリズム1の入射面に照明光線束を提供する照明光学系である。
【0287】
ライトバルブとしての可変ミラー素子の一例には実施の形態1において説明したDMD3を想定し、以下、これを1つだけ用いて拡大表示を行う単板式プロジェクタ装置について説明を行うこととする。
【0288】
プロジェクタ装置の光学系は主にこれら4つの要素、すなわちプリズム1、投写レンズ5、DMD3及び照明光学系80の各要素から構成され、投写レンズ5から出射した光がスクリーン90に拡大投射されて、大画面の映像を観視者に提供する。
【0289】
また、図27中、81は光源ランプ、82は光源ランプ81から出射された光線束を集光する集光レンズ、83は集光レンズ82の収束光線束の強度分布を一様化するロッド素子、84はロッド素子83からの出射光線束を所定の倍率でDMD3上に結像する結像レンズ系であり、通常、複数のレンズを含んで構成され68は光源ランプ81の光軸、85は光軸68を曲げてDMD3の照明光軸60を提供する反射ミラーであり、必要に応じて任意の位置に配置することが可能である。
【0290】
また、86は照明光学系80の最終出力面を想定した仮想的な開口(光出射開口と称す)である。87は例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色を少なくとも含む光学的カラーフィルタの領域を有する回転型のカラーフィルタであり、単板ライトバルブ方式に対応して、例えば映像信号の同期信号に同期して回転することによってフィールドシーケンシャルでカラー化を行うための光学素子である。
【0291】
以上のように、照明光学系80は幾つかの光学要素から構成されており、DMD3を効率よく照明するための光学系となっている。なお、プリズム1からこの照明光学系80を見た場合、その直前の光出射開口86が図1に示した照明光源8に相当するものである。
【0292】
さて、実施の形態1の説明において先に述べたように、プリズム1を介してDMD3を照明するにはテレセントリック照明が好適である。
【0293】
この装置に用いられる結像レンズ系84は、ロッド素子83の出射端面Pに形成されたほぼ一様な光の強度分布を有する発光面を、DMD3と共役な関係とするように構成されたレンズ系であり、これをテレセントリックレンズ系として構成(設計)することによって、DMD3への光の入射及び出射の前後における光の伝達効率を向上させることができる。
【0294】
このようなレンズ系の設計の際には、プリズム1を、図3を参照しながら説明した楔形状からなる光学素子とすることもできるが、より簡単に平行平面板として設計することも可能である。
【0295】
プリズム1を楔形状であるとして設計を行う場合、プリズム1を出射した後、楔形状の開き角が、DMD3に向かう光線の角度の偏差として発現するため、照明光線束のFナンバーの変化には注意を払う必要がある。
【0296】
実際には、DMD3へ入射する周辺光線の入射角度が大きくなるため、プリズム1の設計に応じて、DMD3の仕様によって求められるFナンバー(これまで説明してきた例ではFナンバー3)よりも大きなFナンバーを有する結像レンズ系が好適となる場合もある。
【0297】
ロッド素子83の出射端面Pに形成される、強度分布が一様な発光面は、光源ランプ81、集光レンズ82及びロッド素子83の組み合わせによって提供される。
【0298】
この組み合わせの例としては、光源ランプ81を放物面鏡と放電ランプとの組合せからなるランプシステムにより構成し、この光源ランプ81より出射された略平行な光線束を、集光レンズ82を用いて収束してロッド素子83の入射面Sに効率よく導くようにした系が挙げられる。
【0299】
このような、ロッド素子83を用いて照明光線束の均一性向上を行うようなプロジェクタ装置の光学系(プロジェクタ光学系)については、例えばUSP5,634,704に詳細が記述されている。
【0300】
勿論、この場合の照明光学系80の構成としては、図27に例示したものに限られることはなく、プリズム1と整合性が高く、かつDMD3を効率よく照明し、照明光学系80を投写レンズ5によって拡大投写した際に、所定の明るさやコントラストを得ることができる照明光線束を提供できるものであれば、この様な照明光学系を本プロジェクタ装置に適用することが可能である。
【0301】
例えば、一般には照明光線束分布の均一性向上のためにフライアイインテグレータシステムが採用される場合があるが、これについても本実施の形態へ適用することは全く問題がなく可能である。
【0302】
また、プロジェクタ装置のカラー化についても、回転カラーフィルタ87を用いなければならないということはなく、照明光学系80との整合が高く、高効率のプロジェクタ装置を提供できるカラー化部であれば、回転カラーフィルタ87に代えて、このカラー化部を照明光学系の一部に配置することは全く問題がなく可能である。
【0303】
以上、本発明に関して上記2つの実施の形態を説明した。本発明はこれら2つの実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱せず、その要旨を変更しない範囲において様々な変形例が可能であることも勿論である。
【0304】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0305】
本発明の請求項1によるプリズムは、従来のもの(例えば図35のもの)に比べて小型のプリズムを得ることができる。
【0306】
また、本発明の請求項2によるプリズムは、外部に配置される投写レンズのバックフォーカル長を短くすることが可能なプリズムを得ることができる。
【0307】
また、本発明の請求項3及び4によるプリズムは、可変ミラー素子の第2反射状態における反射光を確実に遮光することができる。
【0308】
また、本発明の請求項5によるプリズムは、隣接するプリズム片の対向面相互の関係に基づく解像度の劣化を抑え、全反射作用を用いた反射面を実現することができる。
【0309】
また、この発明の請求項6によるプリズムは、温度環境の変化による隣接プリズム片の相対位置の変動を抑え、その変動に起因する性能劣化を抑えることができる。
【0310】
また、本発明の請求項7によるプリズムは、プリズム片の間の空気間隙を安定して形成することができ、精度のよい空気間隙を実現することができる。
【0311】
本発明の請求項8によるプリズムは、従来に比べて小型のプリズムを得ることができる。
【0312】
また、本発明の請求項9によるプリズムは、隣接するプリズム片の対向面相互の関係に基づく解像度の劣化を抑え、全反射作用を用いた反射面を実現することができる。
【0313】
また、本発明の請求項10によるプリズムは、プリズム片の組み合わせを行いやすいプリズムを得ることができる。
【0314】
また、本発明の請求項11によるプリズムは、実用的なプリズムの材料における屈折率の範囲において、所定の面における全反射を確実に実現することができる。
【0315】
また、本発明の請求項12によるプリズムは、可変ミラー素子の第2反射状態における反射光を確実に遮光することができる。
【0316】
本発明の請求項13及び18による投写光学系は、明るくコントラストの高い投写光学系を実現することができる。
【0317】
また、本発明の請求項14による投写光学系は、各光線束を遮ることなくプリズムを確実に保持することができる。
【0318】
また、本発明の請求項15による投写光学系は、プリズムを保持すると共に遮光機能を持たせることができ、コントラストの高い投写光学系を実現することができる。
【0319】
また、本発明の請求項16による投写光学系は、プリズムの汚れによる性能の劣化を抑えることができる。
【0320】
本発明の請求項17及び19による投写型表示装置は、明るくコントラストの高い投写型表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1に係るプリズムの構成を示す概略図である。
【図2】 プリズム設計における設計パラメータを説明する概略図である。
【図3】 仮想的な立体を想定し光線の振舞いを説明する概略図である。
【図4】 プリズムに入射した光線の全反射条件を説明する概略図である。
【図5】 プリズムを透過する光線の振舞いを説明する概略図である。
【図6】 式(8)に示す不等式の関係をプロットしたグラフである。
【図7】 2つのプリズム片からなるプリズムを透過する光線の振る舞いを説明する概略図である。
【図8】 式(5)と式(11)の不等式の関係をプロットしたグラフである。
【図9】 頂角の波長分散依存性を示すグラフである。
【図10】 2つのプリズム片からなるプリズムを用いた光線追跡の図である。
【図11】 2つのプリズム片からなるプリズムの場合について、投写レンズへの不要光の侵入を調べた計算機シミュレーションの出力図である。
【図12】 第2プリズム片の作用を説明する概略図である。
【図13】 第2プリズム片の作用を説明する概略図である。
【図14】 第2プリズム片の頂角と照明光線束のFナンバーとの関係を示すグラフである。
【図15】 第2プリズム片を規定する点の座標を決める方法を説明する概略図である。
【図16】 2つのプリズム片からなるプリズムで偏向する照明光線束を解析した計算機シミュレーションの出力図である。
【図17】 3つのプリズム片からなるプリズムの作用を説明する光線追跡の図である。
【図18】 3つのプリズム片からなるプリズムの場合について、投写レンズへの不要光の侵入を調べた計算機シミュレーションの出力図である。
【図19】 プリズム片の空気間隙の大きさとMTFの関係を示すグラフである。
【図20】 空気間隙を形成する平面の傾きとMTFの関係を示すグラフである。
【図21】 各プリズム片間の空気間隙の大きさを規定するスペーサの配置を説明する概略図である。
【図22】 各プリズムを互いに固定する固定部材の配置を説明する概略図である。
【図23】 固定部材に設けられる接着剤の配置を説明する概略図である。
【図24】 プリズム側面に到達する不要光をプリズム外部へ導く側面形状を説明する概略図である。
【図25】 光吸収手段の形状と配置を示す概略図である。
【図26】 開口部を有した光吸収手段の形状と配置を示す概略図である。
【図27】 本実施の形態2によるプロジェクタ光学系の概略図である。
【図28】 従来の反射型ライトバルブの照明方式を説明する概略図である。
【図29】 従来の反射型ライトバルブの照明方式を説明する概略図である。
【図30】 従来の反射型ライトバルブの照明方式を説明する概略図である。
【図31】 従来の反射型ライトバルブの照明方式を説明する概略図である。
【図32】 従来の発明による2つのプリズム片から構成される照明光学系の概略図である。
【図33】 DMD(2ミラー)の動作を説明する概略図である。
【図34】 従来の発明による2つのプリズム片からなる照明光学系の解決すべき問題を説明する概略図である。
【図35】従来の発明による3つのプリズム片から構成される照明光学系の概略図である。
【符号の説明】
1,10,100 プリズム、3 可変ミラー素子(DMD)、5 投写レンズ、20 光線(照明光線)、21 ON光、22 OFF光、6 投写光軸、60 照明光軸、7 遮光部材、8 照明光源、50 レンズ手段、11 第1のプリズム片、12 第2のプリズム片、13 第3のプリズム片、111,112,113,114 (第1のプリズム片11を特徴付ける)平面、121,122,123 (第2のプリズム片12を特徴付ける)平面、131,132,133 (第3のプリズム片13を特徴付ける)平面。
Claims (19)
- 外部の可変ミラー素子と、前記可変ミラー素子の法線方向に平行な投写光軸を有する外部の投写レンズとの間に配置されるプリズムであって、
前記可変ミラー素子から第1距離だけ離れた第1端部と第2端部とを備え且つ前記第1端部から前記第2端部に向かって前記可変ミラー素子に対して遠ざかる方向に傾斜しており、外部から入射する光線束を全反射して反射後の外部入射光線束を前記可変ミラー素子側へ向けて伝搬させ得る第1内面と、
前記可変ミラー素子からそれぞれ第2距離及び第3距離だけ離れた第1端部及び第2端部を備える第2内面とを備え、
前記第2内面は、前記第1内面で全反射された前記外部入射光線束が入射するときには前記外部入射光線束を透過させ、前記可変ミラー素子に照射して前記可変ミラー素子によって反射される光線束の内で且つ第1反射状態にある光線束の内で前記第2内面に向かって伝播する第1束が入射するときには入射した第1反射状態光線の第1束を透過させる一方で、前記可変ミラー素子によって反射される前記光線束の内で且つ前記第1反射状態とは異なる第2反射状態にある光線束の内で前記第2内面に向かって伝播する第1束が入射するときには入射した第2反射状態光線の第1束を全反射させ得ると共に、
前記第1距離は前記第3距離よりも大きく、
前記第3距離は前記第2距離よりも大きく、
前記第1内面は、前記第2内面を透過した前記第1反射状態光線の第1束が入射するときには当該第1反射状態光線の第1束を透過させて前記投写レンズ側へ伝搬させ得るものであり、
前記プリズムは、
前記第1内面と同一平面内に有り、且つ、前記可変ミラー素子からそれぞれ第4距離及び前記第3距離だけ離れた第1端部及び第2端部を備える第3内面を更に備え、
前記第3内面は、前記第2内面に入射すること無く前記第3内面に向かって伝播して入射した第1反射状態光線の第2束を透過させて前記投写レンズ側へ伝搬させ得ると共に、前記第2内面に入射すること無く前記第3内面に向かって伝播して入射した第2反射状態光線の第2束を透過させ得る一方、
前記第2内面の前記第2端部は前記第3内面の前記第2端部に該当することを特徴とする、
プリズム。 - 請求項1記載のプリズムであって、
前記第1内面に対向する位置に配設され、入射する前記外部入射光線束を透過させて前記第1内面側へ向けて前記プリズム内を伝搬させ得る入射面である第1外面と、
前記可変ミラー素子、前記第2内面及び第3内面に対向する位置に配設され、前記第2内面の前記第1端部に該当する第1端部と前記第3内面の前記第1端部に該当する第2端部とを備え、前記第2内面を透過して入射する前記外部入射光線束を透過させて前記可変ミラー素子側へ出射すると共に、前記可変ミラー素子によって反射される前記光線束を前記プリズム内に入射し得る光作用面である第2外面と、
前記第2外面と略平行な面であって、前記投写レンズに対向する位置に配設されており、前記第3内面の前記第1端部の上方に位置する第1端部と前記第1内面の前記第2端部に隣接する第2端部とを備え、前記第1内面を透過して入射する前記第1反射状態光線の第1束と前記第3内面を透過して入射する前記第1反射状態光線の第2束とを透過させ得る出射面である第3外面とを備え、
前記第2外面と前記第3外面との間に、前記第2内面と前記第3内面と前記第1内面とが配設されていることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項2記載のプリズムであって、
前記第1外面、前記第1内面及び前記第3内面に対向する位置に配設され、前記第3外面の前記第1端部と繋がった第1端部と前記第2外面の前記第2端部の隣接上方に位置する第2端部とを備える第4外面と、
前記第4外面上に配設され、前記第3内面を透過して入射する前記第2反射状態光線の第2束を吸収する遮光部材とを備えることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項3記載のプリズムであって、
前記第2外面と同一平面内に有り、前記第2外面の前記第1端部に隣接する第1端部と前記第1外面と繋がった第2端部とを備える第5外面を更に備えることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項4記載のプリズムであって、
前記第1外面と前記第5外面と前記第1内面とを備える第1プリズム片と、
前記第2外面と前記第2内面と前記第3内面とを備える第2プリズム片と、
前記第3外面と前記第4外面とを備える第3プリズム片とを備え、
前記第1プリズム片と前記第2プリズム片と前記第3プリズム片との内の任意のプリズム片は他の2つのプリズム片と空気間隙を介して対向配設されており、
前記第3プリズム片の外面の内で前記第3外面と前記第4外面とで挟まれた面は前記第1プリズム片の前記第1内面と前記第2プリズム片の前記第3内面とに対向しており、
前記第1プリズム片の外面の内で前記第1内面と前記第5外面とで挟まれた面は前記第2プリズム片の前記第2内面に対向していることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項5記載のプリズムであって、
前記第1プリズム片と前記第2プリズム片と前記第3プリズム片との内で、互いに対向し合う2つのプリズム片同士は、当該2つのプリズム片の熱膨張率に略等しい熱膨張率を有する、スペーサ及び接着剤によって固定されていることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項5記載のプリズムであって、
前記第1プリズム片と前記第2プリズム片と前記第3プリズム片との内で、互いに対向し合う2つのプリズム片同士は、互いの対向面の一方の面上に光線束の通過部分を避けて設けられた薄膜コーティングを介して、対向配置されていることを特徴とする、
プリズム。 - 外部の可変ミラー素子と、前記可変ミラー素子の法線方向に平行な投写光軸を有する外部の投写レンズとの間に配置されるプリズムであって、
前記可変ミラー素子によって生成される相違なる第1反射状態と第2反射状態とにそれぞれ対応する第1反射状態光線束と第2反射状態光線束とを選択的に偏向し得る、第1プリズム片と第2プリズム片と第3プリズム片とを備え、
(a) 前記第1プリズム片は、
外部から入射する光線束を透過可能な第1面と、
前記第1面を透過する前記外部入射光線束を全反射すると共に、前記第1プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束を透過させる第2面と、
全反射後に前記第1プリズム片内を伝搬して入射する前記外部入射光線束を透過させると共に、入射する前記第1反射状態光線束を前記第1プリズム片内に透過させる第3面とを備え、
(b) 前記第2プリズム片は、
前記第3面に対向しており、前記第3面を透過して入射する前記外部入射光線束を透過させて前記第2プリズム片内を伝搬させ、前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束を前記第3面側へ向けて透過させると共に、前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を全反射する第4面と、
前記可変ミラー素子に対向しており、前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記外部入射光線束を透過させて前記可変ミラー素子へ向けて伝搬させ、前記外部入射光線束が前記可変ミラー素子に照射することによって生成された入射する前記第1反射状態光線束及び前記第2反射状態光線束を共に透過させて前記第2プリズム片内を伝搬させると共に、前記第4面によって全反射された後に前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を少なくとも反射し得る第5面と、
前記第5面を透過後に前記第4面に到達すること無く前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束及び前記第2反射状態光線束を共に透過させ、前記第5面で少なくとも反射された後に前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を透過させると共に、前記第4面に於いて全反射された後に前記第2プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を再度全反射し得る第6面とを備え、
(c) 前記第3プリズム片は、
前記第2面と前記第6面とに対向しており、前記第1プリズム片を出射して入射する前記第1反射状態光線束と、前記第2プリズム片を出射して入射する前記第1反射状態光線束及び前記第2反射状態光線束との何れをも透過させる第7面と、
前記投写レンズに対向しており、前記第7面の透過後に前記第3プリズム片内を伝搬して入射する前記第1反射状態光線束を透過させて前記投写レンズ側へ伝搬させ得る第8面とを備えることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項8記載のプリズムであって、
前記第2面と前記第7面とは平行であり、
前記第3面と前記第4面とは平行であり、
前記第6面と前記第7面とは平行であり、
それぞれの平行面同士の間が空気間隙であることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項8記載のプリズムであって、
前記第2面と前記第6面とは同一平面内にあることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項8記載のプリズムであって、
前記第1面と前記第2面とのなす角度をαと定義し、
前記第5面と前記第6面とのなす角度をβと定義し、
前記第4面と前記第5面とのなす角度をκと定義する場合に、
前記角度αは、38.0°よりも大きく且つ50.4°よりも小さい範囲内にあり、
前記角度βは、25.0°よりも大きく且つ37.4°よりも小さい範囲内にあり、
前記角度κは16.2°よりも大きい角度であることを特徴とする、
プリズム。 - 請求項8記載のプリズムであって、
(c) 前記第3プリズム片は、
前記第7面と前記第8面とで挟まれた側面と、
前記側面上に配設されており、前記第7面の透過後に前記第3プリズム片内を伝搬して入射する前記第2反射状態光線束を遮光し得る遮光部材とを更に備えることを特徴とする、
プリズム。 - 光源と、
前記光源からの光線束を集光する集光光学系と、
前記集光光学系によって集光される集光光を入射する入射面と、ほぼ均一な光強度分布の光線束を出射する出射面とを備える光強度均一化素子と、
前記光強度均一化素子の前記出射面から出射される光線束を伝達する伝達光学系と、
前記伝達光学系によって伝達される光線束が外部から入射する光線束として入射される請求項8記載の前記プリズムと、
前記プリズムの外部に於ける、その反射面と前記光強度均一化素子の前記出射面とが前記伝達光学系及び前記プリズムを介して共役な関係となる位置に配設されており、前記プリズムから入射する光線束をその反射面で反射する際に互いに相違した反射状態に相当する第1反射状態光線束と第2反射状態光線束とを生成する可変ミラー素子と、
前記可変ミラー素子から前記プリズムへ入射し、その後、前記プリズムを出射する前記第1反射状態光線束が入射する投写レンズとを備えることを特徴とする、
投写光学系。 - 請求項13記載の投写光学系であって、
前記伝達光学系からの前記光線束及び前記第1反射状態光線束が通過する前記プリズムの部分を避けて前記プリズムの外形の一部に接することにより、前記プリズムを保持するプリズム保持部材を更に備えることを特徴とする、
投写光学系。 - 請求項14記載の投写光学系であって、
前記プリズム保持部材は、
前記プリズムを出射する前記第2反射状態光線束を遮光する部分を備えることを特徴とする、
投写光学系。 - 請求項14記載の投写光学系であって、
前記プリズム保持部材は前記投写レンズに対向する面を備え、
前記プリズム保持部材の前記対向面は、前記第1反射状態光線束が通過し得る寸法を有する光出射開口を備えることを特徴とする、
投写光学系。 - 請求項13記載の前記投写光学系と、
前記可変ミラー素子を駆動するための電気信号を生成して前記電気信号を前記可変ミラー素子に出力するために配設された信号生成部と、
前記投写光学系から投写される光線束を受けるスクリーンとを備えることを特徴とする、
投写型表示装置。 - 光源と、
前記光源からの光線束を集光する集光光学系と、
前記集光光学系によって集光される集光光を入射する入射面と、ほぼ均一な光強度分布の光線束を出射する出射面とを備える光強度均一化素子と、
前記光強度均一化素子の前記出射面から出射される光線束を伝達する伝達光学系と、
前記伝達光学系によって伝達される光線束が外部から入射する光線束として入射される請求項2記載の前記プリズムと、
前記プリズムの外部に於ける、その反射面と前記光強度均一化素子の前記出射面とが前記伝達光学系及び前記プリズムを介して共役な関係となる位置に配設されており、前記プリズムから入射する光線束をその反射面で反射する際に互いに相違した反射状態に相当する第1反射状態光線束と第2反射状態光線束とを生成する可変ミラー素子と、
前記可変ミラー素子から前記プリズムへ入射し、その後、前記プリズムを出射する前記第1反射状態光線束が入射する投写レンズとを備えることを特徴とする、
投写光学系。 - 請求項18記載の前記投写光学系と、
前記可変ミラー素子を駆動するための電気信号を生成して前記電気信号を前記可変ミラー素子に出力するために配設された信号生成部と、
前記投写光学系から投写される光線束を受けるスクリーンとを備えることを特徴とする、
投写型表示装置。
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