JP3967475B2 - ポリウレタン組成物およびそれからなる皮革様シート状物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリウレタン組成物に関する。本発明のポリウレタン組成物は耐光黄変性、耐光染色堅牢性などの耐光性、耐溶剤性および洗濯堅牢性に優れることから、皮革様シート状物の原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
繊維質基材とポリウレタン弾性体からなる皮革様シート状物は、天然皮革に類似した風合いをもち、柔軟性、耐摩耗性、機械的強度に優れ、さらに加工性がよいことから人工皮革として広範囲に使用されている。しかしながら、一般的に湿式法で製造されるこのような皮革様シート状物は、耐光性が劣っており、日光や酸化窒素ガス、自動車の排気ガスなどによって変色したり、強度または伸度が低下するという欠点を有するために、その用途は大きく制限されている。皮革様シート状物のこのような欠点を改善するため、▲1▼耐光性改良剤をポリウレタン中に添加する方法、▲2▼分子鎖中に耐光機能を有する基を導入したポリウレタンを使用する方法等が提案されている。上記▲1▼の方法は、例えば、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、ホスファイト系抗酸化剤等の抗酸化剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドラジン誘導体、トリアジン誘導体などの各種安定剤の1種または2種以上をポリウレタンに添加する方法であるが、このような安定剤を配合したポリウレタン組成物を用いて、湿式法でシート状物を製造すると、添加した安定剤がポリウレタンから凝固浴中に溶出してしまうため、安定剤の効果が十分に発現されない。さらに該シート状物をドライクリーニングや洗濯すると、安定剤の効果が容易に失われるため、長期の使用には耐えない。上記▲2▼の方法としては、鎖伸長剤および/または末端停止剤の一部としてヒンダードアミン化合物を使用する方法、ポリウレタンの重合原料の一部としてピペリジン化合物を使用する方法、ポリウレタンの末端にビスフェノールモノエステル化合物を導入する方法などが提案されているが、長期間にわたる効果の持続性や、他のポリウレタンとの相溶性などが劣っている。そこで、1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとジカルボン酸またはジカルボン酸メチルエステルとの重縮合物であるヒンダードアミン化合物を製造原料として用いたポリウレタンが提案されており、該ポリウレタンを用いると、耐光性、洗濯堅牢性に優れた皮革様シート状物が得られることが知られている(特開平4−258642号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の皮革様シート状物においても、耐光性が十分に改善されているとは言い難い。また、上記の1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとジカルボン酸またはジカルボン酸メチルエステルとの重縮合物であるヒンダードアミン化合物を製造原料として用い、溶液重合によりポリウレタンを製造する場合には、該ヒンダードアミン化合物の使用割合等の製造条件によっては、重合中に重合溶液がゲル化してしまい、安定にポリウレタンを製造できず、たとえ重合中に重合溶液がゲル化することなくポリウレタンを製造できたとしても、得られたポリウレタン溶液は保存中に短期間に流動性を失ってしまい、皮革様シート状物の製造に使用できなくなることがあり、皮革様シート状物を湿式法により工業的に製造する際に一般的に行われている方法、すなわち、溶液重合によって一度に多量に製造したポリウレタン溶液を比較的長期間にわたって保存しながら皮革様シート状物の製造に使用する方法を採用することができず、皮革様シート状物を製造する度にポリウレタン溶液を調製する必要があり、工業的な取扱いが極めて劣っている。
【0004】
本発明の目的は、耐光黄変性、耐光染色堅牢性などの耐光性、耐溶剤性および洗濯堅牢性に優れ、かつ容易に製造することができ、溶液状態においても長時間、安定に保存可能であり、保存中に流動性を失うことなく工業的な取扱いが極めて容易なポリウレタン組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討した結果、特定量のリン化合物の存在下に、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネートおよび特定のヒンダードアミン化合物を溶液重合して得られるポリウレタン並びに特定の分子量を有する紫外線吸収剤からなるポリウレタン組成物を提供することによって上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、数平均分子量が500〜5,000の範囲内である高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、有機ジイソシアネート(c)および下記の一般式(1):
【化2】
(式中、R1はアルキレン基、R2は水素原子またはアルキル基、xは4〜20の整数を表す。)
で示されるヒンダードアミン化合物(d)からなる製造原料をヒンダードアミン化合物(d)100重量部に対して0.1〜50重量部のリン化合物の存在下に溶液重合して得られるポリウレタン(A)100重量部並びに分子量2000以上の紫外線吸収剤(B)0.1〜20重量部からなるポリウレタン組成物であって、該リン化合物が、亜リン酸、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイト、フェニルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルのうちの1種または2種以上であるポリウレタン組成物である。
また、本発明は、繊維質基材および上記のポリウレタン組成物からなる皮革様シート状物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる高分子ポリオール(a)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。これらの高分子ポリオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを使用するのが好ましい。
【0008】
上記のポリエステルポリオールは、例えば、常法に従い、ジカルボン酸またはそのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体とポリオールとを直接エステル化反応またはエステル交換反応に付すか、ラクトンを開環重合することにより製造することができる。
【0009】
ポリエステルポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ジオールなどを挙げることができる。これらのジオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。更に、上記のジオールと共に3官能以上のポリオールを、本発明の効果が損なわれない範囲内で少量併用することができる。3官能以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。これらのポリオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0010】
ポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;これらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。これらのジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0011】
前記のラクトンの例としては、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0012】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などが挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを使用することができる。ポリカーボネートジオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを挙げることができる。更に、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを挙げることができ、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0014】
ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール、ジカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られるものを使用することができる。また、予め上記した方法によりポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをそれぞれ製造し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるか、またはポリオールおよびジカルボン酸と反応させて得られるものを使用することができる。
【0015】
高分子ポリオール(a)の数平均分子量は500〜5,000の範囲内であり、600〜3,000の範囲内であるのが好ましい。なお、本明細書でいう高分子ポリオールの数平均分子量は、いずれもJIS K−1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0016】
高分子ポリオール(a)としては、高分子ポリオール1分子当たりの水酸基の数が2.00〜2.10の範囲内のものを使用するのが好ましい。高分子ポリオール1分子当たりの水酸基の数が上記の範囲内のものを使用すると、洗濯堅牢性、耐溶剤性等により優れたポリウレタンが得られる。
【0017】
1分子当たりの水酸基数が2.00より大きい高分子ポリオールは、例えば、前記した高分子ポリオールの原料成分のうち、1分子中に水酸基、カルボキシル基等の重合反応性官能基を2個有する成分と、1分子中に水酸基、カルボキシル基等の重合反応性官能基を3個以上有する成分とを、所望の1分子当たりの水酸基数を有する高分子ポリオールが得られるように併用することによって製造することができる。また、このようにして製造された1分子当たりの水酸基数が2より大きい高分子ポリオールと1分子当たりの水酸基数が2の高分子ジオールとの混合物を用いてもよい。
【0018】
本発明に用いられる鎖伸長剤(b)としては特に制限はなく、通常のポリウレタンの製造に従来から使用されている鎖伸長剤のいずれを使用してもよく、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられる。これらの低分子化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明に用いられる有機ジイソシアネート(c)としては特に制限はなく、通常のポリウレタンの製造に従来から使用されている有機ジイソシアネートのいずれを使用してもよく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらの有機ジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明では、ポリウレタン(A)の製造原料として、前記の一般式(1)で示されるヒンダードアミン化合物(d)が使用される。前記の一般式(1)において、R1が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましい。該アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,3−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基などを挙げることができ、これらのなかでもエチレン基が好ましい。R2は水素原子またはアルキル基であり、アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などを挙げることができる。 これらのなかでも、R2としては、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0021】
上記の一般式(1)において、xは4〜20の整数であり、6〜15の整数であるのが好ましい。xが4より小さい場合には、十分な耐光性を得るために一般式(1)で示されるヒンダードアミン化合物を多量に配合する必要があるため、得られるポリウレタンの分子量が小さくなりすぎたり、他のポリウレタンとの相溶性が低下するなどして、皮革様シート状物の製造原料としては不適当なものとなる。また、xが20より大きくなると、一般式(1)で示されるヒンダードアミン化合物の分子量が大きくなりすぎて、ポリウレタンの重合反応に悪影響を及ぼしたり、得られるポリウレタンの引っ張り強度等の物性が劣ったものとなる。
【0022】
前記の一般式(1)で示されるヒンダードアミン化合物(d)は、1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとを重縮合させることにより製造することができる。上記のジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとしては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等のアルキルエステルなどを挙げることができる。ヒンダードアミン化合物(d)としては、耐光性の観点から、1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとコハク酸ジメチルとの重縮合物が好ましい。
【0023】
前記の高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、有機ジイソシアネート(c)およびヒンダードアミン化合物(d)を反応させてポリウレタンを製造するに当たり、各製造原料の使用割合は、ポリウレタンに付与すべき硬度などを考慮して適宜決定されるが、高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)およびヒンダードアミン化合物(d)に含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネート(c)に含まれるイソシアネート基が0.9〜1.2モルとなるような割合で各成分を反応させるのが好ましい。
【0024】
高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、有機ジイソシアネート(c)およびヒンダードアミン化合物(d)からなる製造原料において、ヒンダードアミン化合物(d)の含有割合は0.1〜30重量%の範囲内であるのが好ましく、0.2〜20重量%の範囲内であるのがより好ましい。ヒンダードアミン化合物(d)を上記の範囲内で使用することにより、耐光性等の各種物性に優れるポリウレタンをより安定に製造することができる。
【0025】
本発明で使用するリン化合物は、亜リン酸、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイト、フェニルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルであり、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
【0037】
リン化合物の使用量は、前記の一般式(1)で示されるヒンダードアミン化合物(d)100重量部に対して0.1〜50重量部であり、0.2〜10重量部の範囲内であるのが好ましく、0.5〜5重量部の範囲内であるのがより好ましい。リン化合物の使用量が0.1重量部未満の場合には、溶液重合中に反応溶液がゲル化するか、溶液重合中にゲル化しない場合でも、得られたポリウレタン溶液が72時間以内に流動性を失い、取り扱いが極めて困難になるなどして保存安定性に問題を生じる。リン化合物の使用量が50重量部を越える場合には、得られるポリウレタンの耐加水分解性が劣る。
【0038】
本発明においては、分子量2000以上の紫外線吸収剤(B)が配合されている。紫外線吸収剤の分子量が2000よりも小さい場合は、それを含むポリウレタン組成物を用いて皮革様シート状物を製造する工程において、該ウレタン組成物の有機溶剤溶液を繊維質基材に含浸し、ウレタン組成物の非溶剤で凝固する際の凝固浴中に溶出したり、極細繊維不織布からなる皮革様シート状物を製造する工程において、海島型複合繊維、海島型混合繊維の海成分を抽出除去する際の抽出浴へ溶出するなどして、紫外線吸収剤がシート状物に残留しにくいことや、皮革様シート状物の製品となった後に、ドライクリーニングや洗濯により該紫外線吸収剤が脱落して、耐光性が低下することなどから長期の使用には耐えない。したがって、紫外線吸収剤(B)の分子量は、耐光性を確保する観点から、3000以上であるのが好ましく、5000以上であるのがより好ましい。
また、分子量が高すぎると溶媒に対する溶解性およびポリウレタンに対する相溶性が低下する傾向にあることから、紫外線吸収剤(B)の分子量としては、500,000以下であるのが好ましく、200,000以下であるのが好ましい。
【0039】
紫外線吸収剤(B)としては、一般に紫外線吸収剤として用いられる化合物の化学構造を有する分子量2000以上の化合物であれば特に制限されず、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、サリチル酸誘導体骨格などの紫外線吸収能を有する骨格を含む高分子化合物を挙げることができる。このような高分子化合物は、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性官能基および上記の紫外線吸収能を有する骨格を有する単量体を単独で重合するか、他のビニル化合物と共重合することにより製造することができる。また、水酸基、カルボキシル基、エステル結合などの反応性官能基を有する重合体に上記の紫外線吸収能を有する骨格を含む低分子紫外線吸収剤を反応させることによっても得ることができる。これらのうちでも、耐光性を優れたものにする観点から、ベンゾトリアゾール骨格またはベンゾフェノン骨格を有する高分子化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール骨格を有する単量体またはベンゾフェノン骨格を有する単量体と(メタ)アクリル系単量体またはスチレン系単量体との共重合体がより好ましい。
【0040】
ベンゾトリアゾール骨格を有する単量体としては、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(アクリロイルオキシブチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの単量体は1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0041】
ベンゾフェノン骨格を有する単量体としては、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。これらの単量体は1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。これらの単量体は1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0043】
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。これらの単量体は1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0044】
上記したうちでも、耐光性をより優れたものにする観点から、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールとメタクリル酸メチルとの共重合体が好ましい。
【0045】
紫外線吸収剤(B)の配合量は、ポリウレタン(A)100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内であり、0.5〜15重量部の範囲内であるのが好ましい。紫外線吸収剤(B)の配合量がポリウレタン(A)100重量部に対して0.1重量部よりも少ない場合は、紫外線吸収剤の添加による耐光性の改良がほとんど見られない。また、紫外線吸収剤(B)の配合量がポリウレタン(A)100重量部に対して20重量部よりも多い場合は、それを含むポリウレタン組成物を繊維質基材に含浸・凝固して得られる皮革様シート状物の製品の表面から紫外線吸収剤がブリードアウトして製品の外観や風合いを損ねるなどの問題が生じる。
【0046】
本発明におけるポリウレタン(A)は、前記の高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、有機ジイソシアネート(c)およびヒンダードアミン化合物(d)からなるポリウレタン製造原料を、ヒンダードアミン化合物(d)100重量部に対して0.1〜50重量部のリン化合物の存在下に溶液重合することにより製造することができる。
【0047】
上記の溶液重合は、一般にポリウレタンの溶液重合において採用されている重合方法に従って行うことができる。例えば、高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、有機ジイソシアネート(c)およびヒンダードアミン化合物(d)を溶媒中に一度に加えて、これらを重合する方法、予め高分子ポリオール(a)と有機ジイソシアネート(c)を溶媒中で反応させてプレポリマーを製造した後、鎖伸長剤(b)とヒンダードアミン化合物(d)を加えて重合するいわゆるプレポリマー法などを採用することができる。
【0048】
溶液重合に使用する溶媒としては、得られるポリウレタンを溶解または均一に分散するものであればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒を挙げることができ、これらのうち1種を使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、N,N−ジメチルホルムアミドを使用するのが好ましい。
【0049】
リン化合物はポリウレタンの重合が終了するまでに添加されていればよく、その添加方法、添加時期等は特に限定されるものではないが、ゲル化防止の観点から高分子ポリオール(a)およびヒンダードアミン化合物(d)に予め添加し、50〜150℃で30分〜5時間、減圧下または常圧下に撹拌し、十分に混合して使用するか、溶液重合に用いる溶媒中にあらかじめヒンダードアミン化合物(d)と共に溶解して使用するのが好ましい。
【0050】
このようにして得られるポリウレタン(A)に分子量2000以上の紫外線吸収剤(B)を配合することにより、本発明のポリウレタン組成物が得られる。紫外線吸収剤の配合時期および配合方法については、特に制限はなく、上記したポリウレタン(A)を製造する際の溶液重合において、重合開始前に高分子ポリオール中に添加しても、溶液重合中に重合槽へ直接添加しても、溶液重合中に重合溶媒に溶解して添加しても、重合終了後に直接または溶媒に溶解して添加しても差し支えない。
【0051】
本発明のポリウレタン組成物には、必要に応じて、例えば、抗酸化剤、染料、顔料、充填剤、凝固調節剤などを配合することができる。
【0052】
本発明のポリウレタン組成物は、皮革様シート状物の製造原料として好適に使用することができる。例えば、本発明のポリウレタン組成物の溶液を繊維質基材に含浸・塗布した後、該基材をポリウレタンの非溶剤が入っている凝固浴中に導いて湿式凝固させ、次いで水洗、乾燥することによって皮革様シート状物を製造することができる。この場合、本発明のポリウレタン組成物を単独で使用してもよいし、他のポリウレタン溶液を混合して使用してもよい。皮革様シート状物の製造に用いる繊維質基材としては、通常の繊維、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、再生セルロース等の化学繊維、天然繊維;特殊形態の繊維、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等の極細繊維、極細繊維束状繊維、多孔配列状特殊繊維などから選ばれた繊維から構成される繊維絡合不織布、繊維立毛編織布、上記の繊維から構成される不織布と編織布との積層布などの布帛を挙げることができる。極細繊維発生型繊維、剥離分割型繊維などを用いた場合には、ポリウレタン組成物の溶液の含浸・塗布の前、またはポリウレタン組成物の凝固後に、トルエン、トリクレン、パークレンなどによる溶剤抽出処理、アルカリ減量処理、アルカリや活性炭などを含んだ熱水などによる分割処理を行ってもよい。
【0053】
本発明のポリウレタン組成物および繊維質基材からなる皮革様シート状物は、天然皮革に類似した風合い、外観を有し、長期間使用しても変色や劣化が少ない。また、ドライクリーニングや洗濯によりヒンダードアミン化合物および紫外線吸収剤が皮革様シート状物から溶出することがないことから、特に衣料用途や靴用途、インテリア用途、カーシート用途などに適している。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例において、重合安定性、保存安定性、フィルム強度保持率、耐光黄変性は以下の方法により評価した。
【0055】
[重合安定性]
N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするポリウレタンを製造するための溶液重合において、重合反応中にゲル化し、撹拌翼が回転不良となるまで増粘した場合を「×」、ゲル化しなかった場合を「○」と評価した。
【0056】
[保存安定性]
ポリウレタン組成物のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を室温で72時間静置し、該溶液が流動性を失った場合を「×」、流動性を失なわなかった場合を「○」と評価した。
【0057】
[フィルム強度保持率]
ポリウレタン組成物のN,N−ジメチルホルムアミド溶液から、厚さ0.1mmの乾式フィルムを作成し、テンシロン引張試験機により引張強度を測定した。さらに該フィルムをフェードテスター(スガ試験機株式会社製紫外線ロングライフフェードメーターFAL−5H・B・BR、紫外線カーボンアークランプ、63℃)で160時間光照射した後の引張強度を測定し、以下に示す式により耐光試験後の引張強度の保持率を評価した。
【0058】
フィルム強度保持率(%)=〔光照射後の引張強度(kgf/cm2)/光照射前の引張強度(kgf/cm2)〕×100
【0059】
[耐光黄変性]
ポリウレタン組成物のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を、不織布に含浸、凝固してなるシート状物を、フェードテスター(スガ試験機株式会社製紫外線ロングライフフェードメーターFAL−5H・B・BR、紫外線カーボンアークランプ、63℃)で160時間光照射した後、該シート状物の変色度をグレースケールを用いて判定した。なお、この値が小さいほど、著しく変色していることを示す。
【0060】
参考例1
数平均分子量が2000のポリテトラメチレングリコール495重量部および数平均分子量が2000のポリカプロラクトングリコール164重量部を、100℃で60分間、減圧下で均一に撹拌した後、N,N−ジメチルホルムアミド1500重量部中でエチレングリコール26重量部および4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアナート250重量部と反応させることによりプレポリマーを得た。さらに、4,4’−ジアミノジフェニルメタンを含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液を、該プレポリマーの残存イソシアネート基に対し0.99モル当量添加し、固形分濃度を25%として30℃で8時間反応させて400ポイズとなるように粘度調製を行い、反応停止剤としてメタノールを8部含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液を添加し、380ポイズのポリウレタン溶液を得た。
【0061】
実施例1
数平均分子量が2000のポリテトラメチレングリコール495重量部、数平均分子量が2000のポリカプロラクトングリコール164重量部、前記の一般式(1)におけるR1がCH2CH2、R2がCH3である、数平均分子量が3300のヒンダードアミン化合物〔コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジンとの重縮合物〕75重量部(ポリウレタン製造原料の7.1重量%に相当)および亜リン酸ジフェニル0.75重量部(ヒンダードアミン化合物100重量部に対して1重量部に相当)を、100℃で60分間減圧下で均一に撹拌した後、N,N−ジメチルホルムアミド1500重量部中でエチレングリコール26重量部および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート256重量部と反応させることによりプレポリマーを得た。さらに、4,4’−ジアミノジフェニルメタンを含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液を、該プレポリマーの残存イソシアネート基に対し0.99モル当量添加し、固形分濃度を25%として30℃で8時間反応させて400ポイズとなるように粘度調製を行い、反応停止剤としてメタノールを8部含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液を添加し、375ポイズのポリウレタン溶液を得た。この溶液に紫外線吸収剤としてPUVA−30M(大塚化学(株)製紫外線吸収剤(2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールとメタクリル酸メチルとの共重合体;前者対後者の重量比30/70;平均分子量70000)を60重量部(ポリウレタン100重量部に対して5.6重量部に相当)を均一に溶解し、ポリウレタン組成物の溶液を得た。この溶液は、72時間静置した後も流動性を失わなかった。また、このポリウレタン組成物の溶液から厚み0.1mmの乾式フィルムを作成し、テンシロン引張試験を実施したところ205kgf/cm2であった。該フィルムを上記のフェードテスターで160時間光照射した後、引張試験を実施したところ178kgf/cm2であった(強度保持率87%)。
【0062】
高流動性のポリエチレン40重量部と6−ナイロン60重量部を溶融紡糸し、延伸して得た繊度4デニール、51mmの多成分繊維(6−ナイロンが極細繊維成分)を用い、カード、クロスラッパー、ニードルパンチの各工程を通し、見掛密度0.160g/cm3の繊維絡合不織布を作成した。該不織布を加温して、海成分のポリエチレンを溶融熱固定して、見掛密度0.285g/cm3の両面平滑化した繊維絡合不織布とした。上記のポリウレタン組成物の溶液と参考例1で得られた25%のポリウレタン溶液をそれぞれの溶液に含まれるポリウレタンが重量比で1:9となる割合で混合し、さらにアルコール変性シリコーンおよびN,N−ジメチルホルムアミドを加えることにより、ポリウレタン固形分12%、アルコール変性シリコーン0.5%およびN,N−ジメチルホルムアミド87.5%からなる含浸液を調製した。該含浸液を上記繊維絡合不織布に含浸し、該含浸液をポリウレタン固形分量で120g/m2となるように表面の余分の含浸液を除去した。次いでN,N−ジメチルホルムアミドを30%含有する水溶液を含む凝固浴中で凝固し、水洗してポリウレタン組成物を多孔質構造に凝固したシート状物を得た。このシート状物を熱トルエン中で処理し、多成分繊維のポリエチレン成分を溶解除去し、6−ナイロン極細繊維束繊維絡合不織布に多孔質ポリウレタン被覆層とからなるシート状物を得た。このシート状物の表面をサンドペーパーでバフィングし、被覆層内部の気泡を露出させてスエード調外観とし、次いで仕上げ処理して得たスエード調の皮革様シート状物は、表面タッチが良好な感触であった。この皮革様シート状物に上記のフェードテスターで160時間光照射を行い耐光黄変性を評価したところ、評価値は5号であり、耐光黄変性に優れていた。
【0063】
実施例2
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとトリメチロールプロパンとアジピン酸から得られた数平均分子量が2000、1分子当たりの水酸基の数が2.02のポリエステルポリオール400重量部に、前記の一般式(1)におけるR1がCH2CH2、R2がCH3である、数平均分子量が3300のヒンダードアミン化合物〔コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジンとの重縮合物〕105重量部(ポリウレタン製造原料の20重量%に相当)およびビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト(旭電化工業(株)製「PEP−8」)5.25重量部(ヒンダードアミン化合物100重量部に対して5重量部に相当)を、100℃で60分間、減圧下で均一に撹拌した後、N,N−ジメチルホルムアミド1800重量部中で、4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアナート175重量部およびエチレングリコール31重量部と、70℃で4時間反応させ、4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアナートで400ポイズまで増粘させた。次いでクエン酸を1重量部、反応停止剤としてメタノールを8重量部含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液を添加し、固形分濃度25%で350ポイズのポリウレタン溶液を得た。この溶液に紫外線吸収剤としてPUVA−30Mを30重量部(ポリウレタン100重量部に対して4.2重量部に相当)均一に溶解し、ポリウレタン組成物の溶液を得た。この溶液について、実施例1と同様に保存安定性、フィルム強度保持率および耐光黄変性を評価した結果を下記の表1に示す。
【0064】
実施例3
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得られた数平均分子量が2000、1分子当たりの水酸基数が2.00のポリエステルジオール400重量部、前記の一般式(1)におけるR1がCH2CH2、R2がCH3である、数平均分子量が3300のヒンダードアミン化合物〔コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジンとの重縮合物〕7重量部(ポリウレタン製造原料の1.0重量%に相当)およびテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイト(アデカスタブ社製)0.1重量部(ヒンダードアミン化合物100重量部に対して1.4重量部に相当)を、100℃で60分間、減圧下で均一に撹拌した後、N,N−ジメチルホルムアミド2025重量部中で、4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアナート225重量部およびエチレングリコール43重量部と70℃で10時間反応させ、4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアナートで450ポイズまで増粘させた。次いで反応停止剤としてメタノールを8重量部含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液を添加し、固形分濃度25%で420ポイズのポリウレタン溶液を得た。この溶液に紫外線吸収剤としてPUVA−50M(大塚化学(株)製紫外線吸収剤(2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールとメタクリル酸メチルとの共重合体;前者対後者の重量比50/50;平均分子量9400)を2重量部(ポリウレタン組成物100重量部に対して0.3重量部に相当)均一に溶解し、ポリウレタン組成物の溶液を得た。この溶液について、実施例1と同様に保存安定性、フィルム強度保持率を評価した結果を下記の表1に示す。
【0065】
ポリエチレンテレフタレート75重量部と低密度ポリエチレン25重量部からなり、島本数が50本(ポリエチレンテレフタレートが島成分)、繊度が4.5デニールの海島繊維よりなる見掛密度0.150g/cm3の3次元絡合不織布を、温水中で面積収縮率30%となるように収縮させた後、ポリビニルアルコール10%水溶液を含浸させ、乾燥後トルエン中に浸漬してポリエチレンを溶解し、極細繊維の束が絡合した不織布を得た。上記固形分濃度25%のポリウレタン溶液にアルコール変性シリコ−ンとN,N−ジメチルホルムアミドを加え調製した、ポリウレタン13%、アルコール変性シリコーン1%およびN,N−ジメチルホルムアミド86%からなる含浸液を、この不織布に含浸し、表面の余分の含浸液を除去した後、N,N−ジメチルホルムアミドを30%含有する水溶液の凝固浴中で凝固し、温水中で水洗してポリビニルアルコールを溶出除去することにより、ポリエチレンテレフタレート極細繊維束繊維絡合不織布に多孔質ポリウレタンを含有したシート状物を得た。このシート基材の2分割スライスを行い、裏面をバフィングして厚みあわせをした後、表面をサンドペーパーでバフィング起毛して、厚さ0.7mmの繊維立毛シートを得た。このシート状物をパークレンを用いてドライクリーニング処理を5回繰り返した後、表面の毛羽をブラシ掛けして整毛しすることにより、スエード調の皮革様シート状物を得た。この皮革様シート状物について、耐光黄変性を評価した結果を下記の表1に示す。
【0066】
比較例1
一般式(1)で示されるヒンダードアミン化合物を用いない以外は実施例1と同様に行ったところ、フィルムを上記フェードテスターで160時間照射した後の強度保持率は25%と耐光性が極端に不良であり、皮革様シート状物の耐光黄変性は1号と著しく劣るものであった。
【0067】
比較例2
リン化合物を用いないこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタンの製造を行ったところ、ポリウレタンの重合中にゲル化が起こり、フィルムや皮革様シート状物の製造に使用可能なポリウレタン溶液を得ることができなかった。
【0068】
比較例3
リン化合物を用いないこと以外は実施例3と同様にしてポリウレタンの製造を行ったところ、ポリウレタンの重合中にはゲル化は起こらなかったが、得られたポリウレタン溶液を室温で72時間静置したところ、ポリウレタン溶液が流動性を失い、フィルムや皮革様シート状物の製造に使用することができなくなった。
【0069】
比較例4
紫外線吸収剤を添加しない以外は、実施例1と同様に行ったところ、フィルムを上記のフェードテスターで160時間照射した後の強度保持率は65%と耐光性が不良であり、皮革様シート状物の耐光黄変性は4号であった。
【0070】
比較例5
紫外線吸収剤として、チヌビン234(チバガイギー製紫外線吸収剤:分子量447)を使用する以外は実施例1と同様に行ったところ、フィルムを上記のフェードテスターで160時間照射した後の強度保持率は68%と耐光性が不良であり、皮革様シート状物の耐光黄変性は4号であった。
【0071】
【表1】
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、耐光黄変性、耐光染色堅牢性などの耐光性、耐溶剤性および洗濯堅牢性に優れ、かつ容易に製造することができ、溶液状態においても長時間、安定に保存可能であり、保存中に流動性を失うことがなく工業的な取扱いが極めて容易なポリウレタン組成物が提供される。
Claims (3)
- 数平均分子量が500〜5,000の範囲内である高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、有機ジイソシアネート(c)および下記の一般式(1):
で示されるヒンダードアミン化合物(d)からなる製造原料をヒンダードアミン化合物(d)100重量部に対して0.1〜50重量部のリン化合物の存在下に溶液重合して得られるポリウレタン(A)100重量部並びに分子量2000以上の紫外線吸収剤(B)0.1〜20重量部からなるポリウレタン組成物であって、該リン化合物が、亜リン酸、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイト、フェニルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルのうちの1種または2種以上であるポリウレタン組成物。 - 製造原料がヒンダードアミン化合物(d)を高分子ポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、有機ジイソシアネート(c)およびヒンダードアミン化合物(d)の合計重量に基づいて0.1〜30重量%含むことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン組成物。
- 繊維質基材および請求項1または請求項2に記載のポリウレタン組成物からなる皮革様シート状物。
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