JP2006316127A - 無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物及び該組成物を用いて得られるシート状物。 - Google Patents

無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物及び該組成物を用いて得られるシート状物。 Download PDF

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Hiroaki Arai
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Abstract

【課題】
樹脂の溶解のための加熱工程を必要としない常温で低粘度の液状であり、作業性(加工性)がよく、合成皮革等のシート状物の製造に好適であり、しかも合成皮革としての十分な物性を有し、また揮発性有機物質の存在しない無溶剤型硬化性ポリウレタン樹脂組成物およびこれを用いて得られる合成皮革を提供することにある。
【解決手段】
活性水素含有高分子量化合物とポリイソシアネート及び触媒を含有する無溶剤型硬化性樹脂組成物であって、該ポリイソシアネートが、分子量200以下の短鎖グリコールとジイソシアネートとの付加物からなるプレポリマーで、イソシアネート基含有率が10〜25%であり、かつ硬化性ポリウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基が1〜4%であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無溶剤型水分硬化性ウレタン樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いて得られる合成皮革などのシート状物に関する。
近年、環境に対する問題意識が重要視され、各種製品の製造、開発に際して原料中に含まれる有機溶媒の大気中への放出、拡散が規制されるようになってきている。従来からポリウレタン樹脂は合成皮革や合成皮革用シートの製造加工に広く利用されている。合成皮革の製造加工は一般的には、乾式法と湿式法とに大別される。乾式法は、一般的には、表皮用のポリウレタン樹脂溶液に顔料、溶剤、添加剤などを混合し、離型紙上に塗布し乾燥して表面層用ポリウレタン樹脂層を調製し、該ポリウレタン樹脂層に接着用ポリウレタン樹脂を塗布した後、これに織布、編布、起毛布等の基材を圧着し、乾燥・熟成(硬化)させる方法であり、また、湿式法は、ポリウレタン樹脂組成物の溶液(通常ジメチルフォルムアミド(DMF)溶液)を織布や編布等に含浸、又は塗布し水凝固液又はDMF―水凝固液中でポリウレタン樹脂を多孔質状に固化させた後、洗浄、乾燥させる方法である。
これらの加工方法にはいずれも溶剤型のポリウレタン樹脂組成物が使用されるため加工工程において溶剤の除去を行うことが必要であり、そのため溶剤の回収や溶剤を蒸発させるための設備が必要になると共にそれらに要するエネルギーコストが高くなる等の問題や、環境汚染や人体への影響等の問題などの点から、近年、溶剤型から無溶剤型への移行が要求され多くの検討がなされてきている。
無溶剤化手段として樹脂組成物材料の水系化が図られているが、顔料混和性、調色性、乾燥速度、ピンホールや凝集物発生による均一な薄膜の形成の不安定性等の生産安定性、耐水性、表面強度等の点で応用範囲がかなり制約されるため、スエードタイプ人工皮革等の限られた範囲のみに使用されているだけで十分に広く実用化に至っていないのが実情である。
この様な現状に鑑み、高固形分のウレタン樹脂も提案され、検討が為されており、固形分濃度が高いので膜厚の厚い塗膜を得ることができるが、この場合も有機溶媒を含有しており、塗膜中に有機溶媒が残存するので根本的な解決にはなり得ない。
一方、常温で固形の反応性樹脂を加熱溶融させて接着剤やコーティング材に用いる所謂無溶剤湿気硬化性ホットメルト型のものが知られている。例えば、近年無溶剤型湿気硬化性ホットメルトポリウレタン樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。これらは軟化点が30〜160℃の範囲にあるイソシアネート基末端またはアルコキシシラン基末端のホットメルトウレタンプレポリマーを使用するものであり、特許文献1はポリオール成分として多官能性ポリオールを必須成分として用い、ポリイシシアネート成分とポリオール成分においてNCO基/OH基の当量比が1.1〜5.0であるプレポリマーを使用するものである。特許文献2は、プレポリマーのイソシアネート基当量と活性水素原子を少なくとも2個有する化合物と水の総反応基当量の比(NCO基当量/総反応基当量)が1.5〜20.0の範囲とするものである。しかし、これらはいずれも軟化点が30〜160℃である高分子量で固形のウレタンプレポリマーであり、加熱溶融して使用することが必要であり、合成皮革の加工を加熱下に作業するための設備を必要とするなど設備コストが高くなる。また特許文献1又は2記載の無溶剤型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は硬化に空気中の水分を必要とし、低い湿度環境では硬化反応が進行し難いので、安定して良好な物性を有するシート状物を生産することが極めて難しい問題がある。
また、水系のものとしてウレタン系エマルジョンの存在下にエチレン性不飽和モノマーを乳化重合して得られる特定の複合樹脂エマルジョンを使用する皮革様シート状物の製造方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。また酸価5〜40の水性ポリウレタン樹脂分散体及び該分散体と反応する架橋剤を含有する繊維積層体表皮層形成用の水性樹脂組成物を用いることも提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2003−306526号公報 特開2003−306523号公報 特開2000−355885号公報 特開2003−119677号公報
従来合成皮革等の製造加工に用いられる無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物は、通常、高分子量のポリウレタン樹脂が用いられ加熱溶融を必要とした。本発明は、樹脂の溶解のための加熱工程を必要としない常温で流動性を呈する液状であり、作業性(加工性)がよく、合成皮革等のシート状物の製造に好適であり、しかも合成皮革としての十分な物性を有し、また揮発性有機物質の存在しない無溶剤型硬化性ポリウレタン樹脂組成物およびこれを用いて得られる合成皮革を提供することにある。
すなわち、本発明は、(1)活性水素含有高分子量化合物とポリイソシアネート及び触媒を含有する無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物であって、該ポリイソシアネートが、分子量200以下の短鎖グリコールとジイソシアネートとの付加物からなるプレポリマーで、イソシアネート基含有率が10〜25%であり、かつ硬化性ウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基が1〜4%であることを特徴とする無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物、(2)上記活性水素含有高分子量化合物が、ポリエーテルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物から選ばれる少なくなとも1種であることを特徴とする上記(1)記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物、(3)上記短鎖グリコールが、炭素数2〜9で側鎖を有するグリコール、またはエーテル型グリコールであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物、(4)上記付加物からなるプレポリマーのイソシアネート基含有率が15〜22%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物に関し、さらに、(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物を、離型性支持体上に塗布し乾燥させた後、接着層を介して基材と複合一体化してなることを特徴とするシート状物、を要旨とする。
本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物は、常温で流動性を呈する液状であり、樹脂の溶解のための加熱工程を必要としなく作業性(加工性)がよく、物性を低下させることなく合成皮革等のシート状物の製造に好適であり、しかも揮発性有機物質を含有しないので有機ガスの発生がなく環境汚染や人体への影響の危険性がない。また、本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物から得られるシート状物は、イソシアネート基の湿気硬化過程で僅かな二酸化炭素を発生させるものの揮発性有機物質を含有しないので、可視光線応答型光触媒酸化チタンを用いた光触媒作用による室内環境浄化材料の基材として好適である。
本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物(以下「硬化性ウレタン樹脂組成物」と呼称することがある)は、ウレタン樹脂を構成する原料の各成分をプレポリマーの状態で使用し、製品化の段階で全体を硬化反応をさせて基材と複合一体させ目的の合成皮革などのシート状物を得ることができる、活性水素含有高分子量化合物(以下、「高分子量ポリオール」という)とポリイソシアネート及び触媒を含有する硬化性ウレタン樹脂組成物であって、該ポリイソシアネートが、分子量200以下の短鎖グリコールとジイソシアネートとの付加物からなるプレポリマーで、イソシアネート基含有率が10〜25%であり、かつ遊離NCO基が1〜4%である無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物である。
本発明において、上記の高分子量ポリオール成分と反応させるポリイソシアネート成分は、分子量200以下の短鎖ジオールとジイソシアネートとの付加反応物からなるプレポリマー(以下「プレポリマー」と呼称する)が用いられる。このようなプレポリマーを用いることにより、高分子量ポリオールとの加熱反応時にジイソシアネートの揮発を防ぐことができ、しかも水分との反応を抑制し、イソシアネート成分の高分子量ポリオール中への分散性を向上することができる。一般には、短鎖ジオールは極めて吸水性に富むものであり、しかもイソシアネート成分との反応性に富んでいるために、所望のウレタン樹脂のモノポリマーが得られ難くなるために、再現性の良い安定した物性を有する皮膜を得ることが困難である。
本発明においては、ウレタン樹脂の構成成分の中で反応性に富む短鎖ジオール成分を予めジイソシアネート成分と予備反応させたプレポリマーとして使用するものであり、ワンショット法で用いる場合の短鎖ジオールに起因する上記問題を解消することができる。
他方、本発明のプレポリマーの生成に分子量200を超える短鎖ジオールを使用した場合には、ウレタン結合距離間が長くなるために、凝集力が小さくなり、十分な合成皮革としての強度が得られ難くなり好ましくない。
本発明のプレポリマーの生成に使用される短鎖ジオール成分は、平均分子量200以下の短鎖グリコールで、従来から鎖伸張剤として用いられる低分子量のジオール成分が用いられる。例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、などの直鎖状の構造を有するものはプレポリマーの粘度が高くなり本発明においては好ましくなく、側鎖を有する低分子量ジオール、またはエーテル型グリコールがプレポリマーの粘度を低下させるので好ましい。このような要件を満足する短鎖ジオールとしては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジオール等が好ましいものとして例示することができる。特に好ましいものは、プロピレングリコール、ジメチロールヘプタン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
本発明における活性水素含有高分子量化合物(高分子量ポリオール)は、ポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物などを使用することができる。
ポリエーテルポリオール化合物としては、平均分子量700〜3000程度の常温で液状のポリエーテルポリオール化合物を使用することができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール/2−メチルテトラメチレンエーテルグルコール共重合体(テトラヒドロキシフラン/2−メチルテトラヒドロキシフラン共重合体、共重合モノマー比80/20〜85/15)が好適なものとして挙げられる。
これらのうち上記のポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール/2−メチルテトラメチレンエーテルグルコール共重合体(テトラヒドロキシフラン/2−メチルテトラヒドロキシフラン共重合体で平均分子量1000〜3000)が特に好適である。また、ポリプロピレングリコールで末端水酸基が、エチレンオキサイド付加方式の一級水酸基でなく、プロピレンオキサイドの重合触媒による一級水酸基であり、その含有率が70%程度としたものも比較的好ましく使用できる。例えば、三洋化成工業(株)のプライムポールPX等が使用される。
また、ポリエステルポリオール化合物としては、例えば、2,4−ジエチル−1,6ヘキサンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物などの少なくとも1種のジオールと、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも1種との縮合反応物が挙げられ、これらのうち、平均分子量1000〜3000の常温で液状のものが用いられ、特に3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び/又は2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸又イソフタル酸を使用した常温で液状のポリエステルポリオール化合物等が好ましいものとして例示することができる。
ポリカーボネートポリオール化合物としては、上記ポリステルポリオール化合物に使用されるグリコールの少なくとも1種を炭酸エステル化したもので好ましくは平均分子量が600〜3000程度のものが使用される。ポリカーボネートジオールは、3−メチルペンタンジオールを共重合させることにより結晶構造が崩れて液状化させることができるが、炭酸エステル基を含有させるために分子量が大きくなると粘度が著しく高くなり好ましくないので、分子量としては600〜3000程度が好ましく、さらに好ましくは700〜2000である。例えば、市販品として(株)クラレ製のポリオールCタイプ(1,6−へキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールを用い炭酸エステル化したもの)が好ましいものとして挙げられる。
本発明における上記ポリオール成分には、例えば、ひまし油、水添加ひまし油、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多官能ポリオールを併用することができる。これら多官能ポリオールを併用する場合、多官能ポリオールはジオール成分1モルに対して0.03〜0.5モルの範囲で使用される。また、短鎖ジオールを上記ジオールの一部に置き換えて併用することもできる。この場合、例えば、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなど側鎖にアルキル基を有する短鎖ジオールが好適に使用される。
本発明において、上記のジイソシアネートとしては、脂肪族または脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物等ウレタン樹脂の合成に使用されるいずれも使用することができる。脂肪族または脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが例示される。また芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが例示される。また天然物に由来するジイソシアネート化合物のリジンジイソシアネートも使用することができる。これらジイソシアネートの中でも、黄変性を抑制できる点から脂肪族または脂環式のジイソシアネート化合物が好ましい。
本発明において使用される、上記の分子量200以下の短鎖ジオールとジイシシアネートとの付加反応物であるプレポリマーは、イソシアネート基含有率が10〜25%、好ましくは15〜22%であるものが用いられる。イソシアネート基含有率が10%未満の場合には、プレポリマーの粘度が著しく高くなり過ぎ、取扱いが悪く常温で流動性を呈する硬化性ウレタン樹脂組成物を調製することが困難で、本発明の目的を達成することができず好ましくない。一方、25%を超える含有率では遊離のNCO基含有量が多くなり反応性が速くなり過ぎるために安定した物性が得られない上に、加熱時に遊離のイソシアネートが揮散する虞があり好ましくない。この様な観点から高分子量ポリオールの架橋剤として使用するプレポリマーのイソシアネート基含有率は、15〜22%の範囲にあることが好ましくイソシアネート基含有率15〜22%の範囲内にあるプレポリマーは高強度の物性を有する皮膜を得ることができるので特に好適である。
例えば、均分子量1000〜3000程度の高分子量のポリオールを用いて強度に優れたウレタン樹脂皮膜を得るには、化学量論的には使用されるグリコール成分全体の平均分子量は500〜1500程度であることが好ましい範囲であり、短鎖ジオールを高分子量ポリオールに対して当モル〜3倍モル用いることが必要である。しかしながら、このような場合でも、十分に優れた高強度等の物性を有する皮膜を得るにはジイソシアネート成分を過剰に使用し過剰のイソシアネートを水分で架橋するか又は内部のウレタン結合を更に架橋させることが必要となる。しかし、合成皮革の加工においては表面にエンボス加工を施すなど最後の仕上げ加工がなされることがあるために、表面層は熱可塑性を確保しておくことが必要となる。そのためプレポリマー中の過剰のイソシアネートは必要とする最小限に止めることが重要な点である。
このような観点から、本発明における短鎖ジオールとジイソシアネートとの付加反応物であるプレポリマーと高分子量ポリオールからなる、硬化性ウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基を1〜4%とすることが、ウレタン反応及び過剰分イソシアネート基の湿気硬化後の膜強度が優れたものとなることから重要であり、さらに混合性や硬化被膜の強度を考慮すると、プレポリマーのイソシアネート基含有率は15〜22%の範囲であることが好ましい。なお、本発明において、上記硬化性ウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基は硬化性ウレタン樹脂組成物中で水酸基により消費されるイソシアネート基を計算上除外したものをいう。
本発明における短鎖グリコールとジイソシアネートから生成されるプレポリマーに三官能ポリイソシアネートを併用することで、合成皮革における表面層、接着層の耐熱性を向上させることができる。三官能ポリイソシアネートの使用量は、プレポリマーに由来するイソシアネート成分の5〜50%であることが好ましい。
三官能ポリイソシアネートの使用量が5%未満であると、添加する効果が得られず、50%を超えて添加すると、架橋構造が著しく多くなり、伸び強度の低下と共に風合いを損ねる虞があり好ましくない。例えば、短鎖グリコールを1モル、ジイソシアネートを2モルで、遊離したイソシアネート基が実質的に存在しないプレポリマーを合成したのち、三官能ポリイソシアネートをイソシアネート基含有率が10〜25%、好ましくは15〜22%になるように添加することにより本発明のプレポリマーとして使用することができる。
三官能ポリイソシアネートは、ひまし油、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三官能ヒドロキシ化合物(トリヒドロキシ化合物)とジイソシアネートとの付加反応物として製造することができる。
本発明に使用される触媒は、ウレタン化反応に使用されるものが用いられ、例えば、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、オクチル酸ビスマス、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロウンデンセン−7(DBU)およびその脂肪酸塩、フェノール塩等が好ましい。触媒量はプレポリマー及び高分子量ポリオールの全量に対して0.001〜0.5重量%の範囲で使用され、好ましくは0.01〜0.3重量%である。
本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物の調製に際して、各成分、すなわち、本発明のプレポリマーと高分子量ポリオールとの比率(以降インデックスという)であるポリイソシアネートとの混合比率は、高分子量ポリオール成分の水酸基に対しイソシアネート基(NCO/OH)が1.03〜1.30となるように配合することが好ましい。本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物を、特に合成皮革の表面層の形成に使用する場合には、脂肪族イソシアネートを使用したプレポリマーを使用し、インデックス1.05〜1.30程度とすることが好ましい。インデックスが1.03未満では十分な硬化反応が得られず、1.30を超える場合は、ゲル化は迅速に進行するものの硬化反応完了が著しく遅くなるばかりか得られる物性、特に伸びの低下と硬化が不足するため合成皮革としての風合いが低下する傾向にある。ただし、イソシアネートの過剰分が多い方がウレタン層と基布との接着強度を向上させやすいという点があり、1.30に近いほど合成皮革の製造加工には好ましい。
一方、主として接着剤層として使用する場合には、基材中に含まれる水分との反応も考慮し、NCO/OHは1.10〜1.30とすることが好ましい。また接着剤として使用する場合は部分硬化反応させて基材に加熱圧着することが最も好ましい。この際の加熱条件は、80〜150℃の範囲である。また過剰分のイソシアネートを硬化させる上で若干の水分を空気中より供給するために製造加工工程の中で一旦大気と十分に接触させるように、加湿雰囲気を通過させるか、或いは湿度調整された大気中でシート状物の巻き返し工程を行うことが好ましい。
本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物には、加水分解防止剤、酸化防止剤、耐光性改良剤、紫外線吸収剤、顔料、防黴剤、抗菌剤、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機化合物やトリス-2-クロロエチルフォスフェート等の有機化合物の難燃剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、可塑剤等ウレタン樹脂組成物に使用されるそれ自体公知の添加剤を所望に応じて添加することができる。これら添加剤の市販品として、例えば、加水分解防止剤は、バイエル社、日清紡(株)等から販売されているポリカルボジイミド化合物、耐光性改良剤は、住友化学(株)、チバスペシャリティケミカルズ社等から販売されている2,6−ジ−tert−ブチルパラクレゾール及びその誘導体、チバスペシャリティケミカルズ社、三共(株)、共同薬品(株)、旭電化(株)、ケミプロ化成(株)、シプロ化成(株)、等から販売されているベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ヒンダートアミン等が挙げられる。
なお、本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物の調製に使用される原料はいずれも低分子量の化合物であり、調製された硬化性ウレタン樹脂組成物は室温で低粘度の液状を呈しており、加工時の加熱で粘度低下が著しいか又は基材との濡れ性が低くなる傾向があり、レべリング性や製膜性を考慮することが必要であり、これらを考慮して使用される基材との関係、加熱条件、配合液粘度、触媒条件等の加工条件等を適宜設定することが重要である。
本発明の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物を使用してシート状物の形成に使用される基材としては、例えば、綿布、ポリエステル/レーヨン、ポリエステル、ポリアミドなどからなるメリヤス編布やニット、織布、およびこれらの起毛布、不織布等、従来から合成皮革などの製造加工に使用されるものを使用することができる。なお、合成皮革としての表面強度を実用上問題ないものにするためには、ポリウレタン樹脂被膜の物理的性質のうち、破断強度として少なくとも10MPaを有するものが好ましい。
以下に本発明の実施例を挙げ本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
高分子量ポリオールとして、(株)クラレ製「クラレポリオールC800」(1,6−ヘキサンジオール/3−メチル−1,5−ペンタンジオール=1/9、平均分子量800)800g、ジプロピレングリコール/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(以下、DPG/HMDIと記す)(NCO基含有率:20%)504g(NCO/OH=1.2)、ジブチル錫ジラウレート(DTL)0.68g、カーボンブラック(三菱化学(株)製)1.3gおよびシリコーンオイル/シリカ系泡消剤(日本ユニカー(株)製商品名「SAG47」)0.2gを混合して表面層形成用硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した。なお、該硬化性ウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基は1.3%に調整した。
該硬化性ウレタン樹脂組成物を離型紙(旭ロール(株)製、AR−22)上に、厚さ0.4mmに塗布し、80〜130℃の温度勾配を設けて乾燥オーブン中を6分間通過して硬化させ表面層を形成した。
一方、上記「クラレポリオールC800」を800g、上記DPG/HMDIを546g、DTLを0.28g混合し接着層形成用硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した。該硬化性ウレタン樹脂組成物を上記表面層に厚さ0.15mmで塗布し、60℃で2分間加熱した後、ポリエステル繊維製ニット生地に圧着し、室温で3日間熟成した後離型紙を剥離し合成皮革シート状物を得た。
このシート状物は、強度に優れ溶剤臭は全く感知されなかった。表面層とニット生地との接着強度は50N/3cmであった。
実施例2
高分子量ポリオールとして、液状ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学(株)製PTG−L1000 数平均分子量1000)1000g(1モル)、1,3−ブタンジオール45g(0.5モル)、ジプロピレングリコール/ノルボルネンジイソシアネート(DPG/NBDI)付加物(イソシアネート基含有率:20%)756g(NCO/OH=1.2)、DTL0.9g、水酸化アルミニウム(8ミクロン/3ミクロン=70/30)180g、モレキュラーシーブ 3g、硬化ひまし油(粘度調整剤)2g、シリコーンオイル/シリカ系消泡剤(日本ユニカー(株)製、商品名「SAG47」)0.2g、カーボンブラック0.5gを混合して表面層形成用硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した。なお、該硬化性ウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基は1.4%に調整した。(但し、硬化ひまし油中の水酸基NCO/OHの計算においては考慮しないものとする。)
該硬化性ウレタン樹脂組成物を離型紙(旭ロール(株)製、AR−22)上に、厚さ0.4mmとなるように塗布し、実施例1と同様の条件で表面層を形成した。
該表面層に、実施例1で使用したと同様の接着層形成用硬化性ウレタン樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして合成皮革シート状物を得た。このシート状物は、強度に優れ溶剤臭は全く感知されなかった。
実施例3
高分子量ポリオールとして末端1級水酸基含有率70%のポリプロピレングリコール(三洋化成(株)製、商品名「プライムポールPX2000」平均分子量2000)2000g、3,3−ジメチロールヘプタン320g、3,3−ジメチロールヘプタン/HMDI(1/2)付加物(イソシアネート基含有率:16.9%)2100g(NCO/OH=1.17)、DTL0.44gを混合して表面層形成用硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した。なお、該硬化性ウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基は2.34%に調整した。該硬化性ウレタン樹脂組成物を離型紙(旭ロール(株)製、AR−22)上に、厚さ0.4mmとなるように塗布し、実施例1と同様の条件で表面層を形成した。
該表面層に、実施例1で使用したと同様の接着層形成用硬化性ウレタン樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして合成皮革シート状物を得た。このシート状物は、強度に優れ溶剤臭は全く感知されなかった。
比較例1
3,3−ジメチロールヘプタン(DMH)160g、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)496gより、NCO基含有率25%のプレポリマーを合成した。DMH/HMDIのモル比は1/2.952であり、全体の約1/4の24.4%がHMDIのモノマー状態で存在する。このプレポリマーを実施例1と同様にコーティング材料として使用したが、HMDIモノマーが大量に存在するために加熱時に揮発成分が多く加熱オーブン内にHDIの蒸気が充満して作業環境が極めて悪いものであった。
比較例2
分子量400のポリプロピレングリコール400g(1モル)、ヘキサメチレンジイソシアネート546.7g(3.254モル)より、NCO基含有率25%のプレポリマーを合成した。ここに用いた短鎖ジオールは分子量が大きく、ウレタン樹脂としての物性を好ましいものとするのに、全グリコール数の平均分子量範囲が750〜1500の範囲となるようにするために、液状のポリテトラメチレングリコール(PTMG)1000gと等モルでウレタン樹脂を調製した。しかし、表面硬度が劣るものしか得られなかった。また、本発明におけるプレポリマーの全グリコールの平均分子量を1500としたものも同様に表面強度の劣るものであった。これは、全グリコールの平均分子量が好ましい範囲内にあるものの短鎖ジオールの分子量が大きく凝集力が十分でないことによるものである。
比較例3
ポリオールとして分子量が850のポリテトラメチレングリコール(PTMG850)をMDIと等モルで反応させたものを使用した場合として、PTMG850とMDIをNCO/OH=1.0となるようにするために、まず、プレレポリマーとして、PTMG850とMDIをNCO/OH=2.0で80℃にて合成したが、室温では固化してしまい流動性は全くないものであった。前記プレポリマーを80℃に加熱し、PTMGをNCO/OH=1.0となるよう混合して合成皮革用樹脂組成物としたが、極めてゴム弾性の強いものであり、合成皮革用としては使用に適さないものであった。
比較例4
ポリオールとして低分子量のポリプロピレングリコール(三井武田ケミカル(株)製 PP−DIOL−400)を実施例3のプレポリマーと当モルで使用したものでは、ガラス転移温度が室温付近のもで、冬季に極めて硬い風合いのものとなり、屈曲性が極端に低下し合成皮革としては好ましくない。ガラス転移温度はこれらの系では5℃程度であり、冬季においても風合いの良いものとする−20℃以下とすることができない。なお、ガラス転移温度は動的粘弾性試験による損失弾性率のピーク温度をもって定義する。
比較例5
ポリエステルポリオールの分子量が3000以上のものを用いて合成されるウレタン樹脂は、用途が限定され、例えば、粘着剤として使用可能であるが、低強度で耐熱性の低いものしか得られ。この場合に、三官能性ポリオールを併用した架橋剤で架橋密度を高めることにより、高強度化することは理論的には可能であるが、いわゆる合成皮革等の製造で使用されているワンショット法では、粘度上昇が激しく使用することは困難なものである。

Claims (5)

  1. 活性水素含有高分子量化合物とポリイソシアネート及び触媒を含有する無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物であって、該ポリイソシアネートが、分子量200以下の短鎖グリコールとジイソシアネートとの付加物からなるプレポリマーで、イソシアネート基含有率が10〜25%であり、かつ硬化性ウレタン樹脂組成物中の遊離NCO基が1〜4%であることを特徴とする無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物。
  2. 上記活性水素含有高分子量化合物が、ポリエーテルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物から選ばれる少なくなとも1種であることを特徴とする請求項1記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物。
  3. 上記短鎖グリコールが、炭素数2〜9で側鎖を有するグリコール、またはエーテル型グリコールであることを特徴とする請求項1または2記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物。
  4. 上記付加物からなるプレポリマーのイソシアネート基含有率が15〜22%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物。
  5. 上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の無溶剤型硬化性ウレタン樹脂組成物を、離型性支持体上に塗布し乾燥させた後、接着層を介して基材と複合一体化してなることを特徴とするシート状物。
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