JP3967297B2 - 静電吸引型流体吐出方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク等の流体を帯電させて静電吸引することで、基板などの対象物上に該流体を吐出する静電吸引型流体吐出方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インク等の流体を対象物(記録媒体)上に吐出する流体ジェット方式にはインクジェットプリンタとして実用化されているピエゾやサーマルなどの方式があるが、その他の方式として、吐出する流体を導電性流体とし、導電性流体に電界を印加してノズルから吐出させる静電吸引方式がある。
【0003】
このような静電吸引方式の流体吐出装置(以下、静電吸引型流体吐出装置と称する)としては、例えば特許文献1、2において開示がある。
【0004】
また、特許文献4には、ノズル孔をスリット状とすると共にノズル孔に突出した針電極を設け、該針電極を用いて微粒子を含むインク吐出する装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ノズル孔より内部のインク室に電圧印加用の電極を設けた装置が開示されている。
【0006】
ここで、従来の静電吸引型流体吐出装置における流体吐出モデルを説明する。
【0007】
静電吸引型流体吐出装置とりわけオンデマンド型の静電吸引型流体吐出装置の設計要因としては、インク液体の導電性(例えば比抵抗106〜1011Ωcm)、表面張力(例えば0.020〜0.040N/m)、粘度(例えば0.011〜0.015Pa・s)、印加電圧(電場)がある。そして、印加電圧としては、ノズルに印加する電圧、およびノズルと対向電極間との距離が特に重要とされていた。
【0008】
静電吸引型流体吐出装置においては、電気流体的な不安定性を利用しており、図15にこの様子を示す。一様電界の中に導電性流体を静置すると、導電性流体の表面に作用する静電力が表面を不安定にし、曳き糸の成長を促す(静電曳き糸現象)。この時の電場は、ノズル100と、ノズル100先端のノズル孔100aと距離hを隔てて対向する対向電極101との間に電圧Vを印加したときに発生する電場E0とする。この時の成長波長λcは物理的に導くことが可能であり(例えば、非特許文献1)、次式で表される。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、γ:表面張力(N/m)、ε0:真空の誘電率(F/m)、E0:電界の強さ(V/m)である。ノズル径d(m)が、λcよりも小さい場合、成長は起こらない。すなわち、
【0011】
【数2】
【0012】
が、吐出のための条件となっていた。
【0013】
ここで、E0は平行平板を仮定した場合の電界強度(V/m)で、ノズル−対向電極間距離をh(m)、ノズルに印加する電圧をV0として、
【0014】
【数3】
【0015】
したがって、dは
【0016】
【数4】
【0017】
となる。
【0018】
【特許文献1】
特公昭36−13768号公報(公告日昭和36年8月18日)
【0019】
【特許文献2】
特開2001−88306号公報(公開日平成13年4月3日)
【0020】
【特許文献3】
特開平8−238774号公報(公開日平成8年9月17日)
【0021】
【特許文献4】
特開2000−127410号公報(公開日平成12年5月9日)
【0022】
【非特許文献1】
画像電子情報学会,第17巻,第4号,1988年,p.185-193
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
流体吐出装置では、一般的により微細なドット形成やライン形成を可能とするために、インクを吐出するノズルの径を小さくしたいといった要望がある。
【0024】
しかしながら、現在実用化されているピエゾ方式やサーマル方式などの流体吐出装置では、ノズル径を小さくして、例えば1plを下回るような微小量の流体の吐出は困難である。これは、流体を吐出するノズルが微細になるほど吐出に必要な圧力が大きくなるためである。
【0025】
また、上述のような流体吐出装置では、液滴の微細化と高精度化は相反する課題であり、両方を同時に実現するのは困難であった。これは以下の理由による。
【0026】
ノズルから吐出された液滴に付与される運動エネルギーは、液滴半径の3乗に比例する。このため、ノズルを微細化した場合に吐出される微細液滴は、吐出時の空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気滞留などによる撹乱を受け、正確な着弾を期待できない。さらに、液滴が微細になるほど、表面張力の効果が増すため、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる.このため、微細液滴は飛翔中に著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。
【0027】
またさらに、上述した従来の静電吸引型流体吐出装置における流体吐出モデルに基づくと、上記(2)式より、ノズル径の減少は吐出に必要な電界強度の増加を要請することとなる。そして、電界強度は、上記(3)式に示すように、ノズルに印加する電圧(駆動電圧)V0とノズル−対向電極間距離hとによって決まるため、ノズル径の減少は駆動電圧の上昇を招来する。
【0028】
ここで、従来の静電吸引型流体吐出装置における駆動電圧は、1000V以上と非常に高いため、各ノズル間でのリークや干渉化を考慮すると小型化および高密度化は難しく、ノズル径をさらに小さくすると上記問題がより大きなものとなる。また、1000Vを越えるような高電圧のパワー半導体は一般的に高価で周波数応答性も低い。
【0029】
尚、上記特許文献1で開示されているノズル径は0.127mmであり、特許文献2で開示されているノズル径の範囲は50〜2000μm、より好ましくは100〜1000μmといった範囲であった。
【0030】
ノズル径に関して、従来の静電吸引型流体吐出における典型的な動作条件を当てはめて計算してみると、表面張力0.020N/m、電界強度107V/mとして、上記(1)式に代入して計算すると、成長波長λcは約140μmとなる。すなわち、限界ノズル径として70μmという値が得られる。すなわち、上記条件下では107V/mの強電界を用いてもノズル径が直径70μm程度以下の場合は背圧を印加して強制的にメニスカス形成させるなどの処置をとらない限り、インクの成長は起こらず、静電吸引型流体吐出は成立しないと考えられていた。すなわち、微細ノズルと駆動電圧の低電圧化は両立しない課題と考えられていた。
【0031】
以上のように、従来の流体吐出装置では、ノズルの微細化と高精度化は相反する課題であり、両方を同時に実現することは困難であった。また、特に静電吸引型流体吐出装置では、ノズルの微細化と駆動電圧の低電圧化とは両立しない課題と考えられていた。
【0032】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、ノズルの微細化と微小流体の吐出及び着弾位置の高精度化、さらに、駆動電圧の低電圧化をすべて実現した静電吸引型流体吐出装置を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置は、上記の課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、該ライン描画手段は、上記電圧及び上記流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記相対移動の速度を制御することを特徴としている。
【0034】
上記の構成によれば、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、本願発明者らが提案する新たな吐出モデルにしたがって、局所電界が発生し、微細ノズル化により吐出における駆動電圧の低下が可能となる。このような駆動電圧の低下は、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となる。もちろん、駆動電圧を低下させることで、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする。
【0035】
さらに、上記吐出モデルでは、吐出に必要な電界強度は、局所的な集中電界強度に依存することになるため、対向電極の存在が必須とならない。すなわち、対向電極を要さずに絶縁性基板などに対しても印字を行うことが可能となり、装置構成の自由度が増す。また、厚い絶縁体に対しても印字を行うことが可能となる。
【0036】
ところが、このような構成では、吐出応答性は基本的に、ノズル内部の電極とノズル先端部との間の流体(吐出材料)の電気抵抗に起因するため、流体の電気伝導度の大きさによって吐出応答性が大幅に変化し、ノズルと基板との相対速度、或いはノズル−基板間に印加する電圧によって、安定したライン描画が行えなくなるといった不具合がある。該不具合は、ノズル先端径を微細化することで、電気抵抗が上昇し吐出応答性が悪化することと、基板上に形成されるドットやラインの径や幅が超微細となることが原因で生じた従来の吐出量では問題とはならなかった新たな問題である。
【0037】
これに対し、上記構成では、ライン描画手段が、ノズルと基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧をノズルと基板との間に印加してライン描画を行うにおいて、電圧及び流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせて、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように相対移動の速度を制御するので、途切れのない安定したライン描画が、線幅が太くなるなどの不具合を伴うことなく、超微細ラインが可能となる吐出可能最低電圧近傍に電圧を設定しながら、高速に実施することができる。
【0038】
本発明の第2の静電吸引型流体吐出装置は、上記の課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、該ライン描画手段は、上記相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように電圧を制御することを特徴としている。
【0039】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の作用を奏する。
【0040】
そして、上記構成では、ライン描画手段が、ノズルと基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧をノズルと基板との間に印加してライン描画を行うにおいて、相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように電圧を制御するので、間欠吐出周波数を高めて高速移動に対応することが可能となり、所望する高速にて途切れのない安定したライン描画が可能となる。
【0041】
本発明の上記第1及び第2の静電吸引型流体吐出装置においては、上記ライン描画手段は、隣接する吐出パターン同士が、該吐出パターンにおける上記相対移動の移動方向とは垂直をなす方向の径の0.5倍以上1.5倍以下で重なり合うように、上記相対移動の速度或いは上記電圧を制御することが望ましい。
【0042】
吐出パターンの相対移動方向のパターン径は、相対移動速度によって変化するが、相対移動方向とは垂直をなす方向のパターン径に対する相対移動速度による影響は少ない。そこで、このように、吐出パターンにおける相対移動の方向とは垂直をなす方向の径の0.5倍以上1.5倍以下で重なり合うように相対移動速度或いは電圧を制御することで、安定したライン描画を確実に行うことができると共に、無駄に重ねて相対移動速度を遅くする或いは電圧を大きくしすぎるといった不具合を伴うことがない。
【0043】
本発明の第4の静電吸引型流体吐出装置は、上記課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、該ライン描画手段は、上記流体の電気伝導度が10-7〜10-9S/cmである場合、上記相対移動の速度である走査速度をv(mm/sec)、上記電圧をVin(V)とすると、Vin>31v+75の関係式を満足する走査速度及び電圧にてライン描画を行うことを特徴としている。
【0044】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の作用を奏する。
【0045】
そして、上記構成では、ライン描画手段が、ノズルと基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧をノズルと基板との間に印加してライン描画を行うにおいて、流体の電気伝導度が10-7〜10-9S/cmである場合、相対移動の速度である走査速度をv(mm/sec)、上記電圧をVin(V)とすると、Vin>31v+75の関係式を満足する走査速度及び電圧にてライン描画を行うので、例えば銀ナノペーストのような電気伝導度が10-7〜10-9S/cmの吐出材料に限られるが、安定したライン描画を高速にて簡単に実現することができる。
【0046】
本発明の静電吸引型流体吐出方法は、上記課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うにあたり、上記電圧及び上記流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記相対移動の速度を制御することを特徴としている。
【0047】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となる。
【0048】
加えて、電圧及び流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うようにノズルと基板との相対移動の速度を制御することで、超微細な線幅を維持した状態で、安定したライン描画を高速にて行うことができる。
【0049】
本発明の他の静電吸引型流体吐出方法は、上記課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うにあたり、上記相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記電圧を制御することを特徴としている。
【0050】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となる。
【0051】
加えて、ノズルと基板の相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように、ノズルと基板間に印加する電圧を制御するので、速度と電圧を最適化して所望する高速にて途切れのない安定したライン描画が可能となる。
【0052】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図1ないし図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0053】
本実施の形態に係る静電吸引型流体吐出装置は、そのノズル径を0.01μm〜25μmとしており、かつ、1000V以下の駆動電圧にて流体の吐出制御を可能としている。
【0054】
ここで、従来の流体吐出モデルにおいては、ノズル径の減少は駆動電圧の上昇に繋がるため、50〜70μm以下のノズル径では、吐出インクに背圧を与えるなどの他の工夫を行わない限り、1000V以下の駆動電圧でのインク吐出は不可能と考えられていた。しかしながら、本願発明者らは鋭意検討の結果、あるノズル径以下では、従来の流体吐出モデルとは異なる吐出モデルでの吐出現象が起こることを突き止めた。本発明は、この流体吐出モデルにおける新たな知見に基づいてなされたものである。
【0055】
先ずは、本願発明者らによって発見された流体吐出モデルについて説明する。
【0056】
直径d(以下の説明においては、特に断らない限りノズルの内径を指す)のノズルに導電性流体を注入し、無限平板導体から高さhに垂直に位置させたと仮定する。この様子を図2に示す。このとき、ノズル先端部(ノズル孔)に誘起される電荷Qは、ノズル先端部の流体によって形成される半球部に集中すると仮定し、以下の式で近似的に表される。
【0057】
【数5】
【0058】
ここで、Q:ノズル先端部に誘起される電荷(C)、ε0:真空の誘電率(F/m)、d:ノズルの直径(m)、V0:ノズルに印加する総電圧である。また、αは、ノズル形状などに依存する比例定数であり、1〜1.5程度の値を取るが、特にd<<h(h:ノズル(正確にはノズル孔)−基板間距離(m))の時はほぼ1となる。
【0059】
また、基板として導電基板を用いた場合、ノズルと対向して基板内の対称位置に、上記電荷Qと反対の極性を持つ鏡像電荷Q’が誘導されると考えられる。基板が絶縁体の場合は、誘電率によって定まる対称位置に同様に電荷Qと逆極性の映像電荷Q’が誘導される。
【0060】
ノズル先端部における集中電界強度Elocは、先端部の曲率半径をRと仮定すると、
【0061】
【数6】
【0062】
で与えられる。ここで、kは、ノズル形状などに依存する比例定数であり、1.5〜8.5程度の値を取るが、多くの場合5程度と考えられる(P.J. Birdseye and D.A. Smith, Surface Science, 23(1970), p.198-210)。また、ここでは、流体吐出モデルを簡単にするため、R=d/2と仮定する。これは、ノズル先端部において表面張力によって流体がノズル径dと同じ曲率径を持つ半球形状に盛り上がっている状態に相当する。
【0063】
ノズル先端部の流体に働く圧力のバランスを考える。まず、静電的な圧力Peは、ノズル先端部の液面積をSとすると、
【0064】
【数7】
【0065】
となる。(5)〜(7)式より、圧力Peは、α=1とおいて、
【0066】
【数8】
【0067】
と表される。
【0068】
一方、ノズル先端部における流体の表面張力による圧力Psとすると、
【0069】
【数9】
【0070】
となる。ここで、γ:表面張力である。静電的な力により吐出が起こる条件は、静電的な力が表面張力を上回ることなので、静電的な圧力Peと表面張力による圧力Psとの関係は、
【0071】
【数10】
【0072】
となる。
【0073】
図3に、ある直径dのノズルを与えた時の、表面張力による圧力Psと静電的な圧力Peとの関係を示す。流体の表面張力としては、流体が水(γ=72mN/m)の場合を仮定している。ノズルに印加する電圧を700Vとした場合、ノズル直径dが25μmにおいて静電的な圧力Peが表面張力による圧力Psを上回ることが示唆される。このことより、V0とdとの関係を求めると、
【0074】
【数11】
【0075】
が吐出の最低電圧を与える。
【0076】
また、その時の吐出圧力ΔPは、
【0077】
【数12】
【0078】
より、
【0079】
【数13】
【0080】
となる。
【0081】
ある直径dのノズルに対し、局所的な電界強度によって吐出条件を満たす場合の吐出圧力ΔPの依存性を図4に、また、吐出臨界電圧(すなわち吐出の生じる最低電圧)Vcの依存性を図5に示す。
【0082】
図4から、局所的な電界強度によって吐出条件を満たす場合(V0=700V,γ=72mN/mと仮定した場合)のノズル径の上限が25μmであることが分かる。
【0083】
図5の計算では、流体として水(γ=72mN/m)及び有機溶剤(γ=20mN/m)を想定し、k=5の条件を仮定した。この図より、微細ノズルによる電界の集中効果を考慮すると、吐出臨界電圧Vcはノズル径の減少に伴い低下することが明らかであり、流体が水の場合においてノズル径が25μmの場合、吐出臨界電圧Vcは700V程度であることが分かる。
【0084】
従来の吐出モデルにおける電界の考え方、すなわちノズルに印加する電圧V0とノズル−対向電極間距離hとによって定義される電界のみを考慮した場合では、ノズル径が微小になるに従い、吐出に必要な駆動電圧は増加する。
【0085】
これに対し、本願発明者らが提案する新たな吐出モデルのように、局所電界強度に注目すれば、微細ノズル化により吐出における駆動電圧の低下が可能となる。このような駆動電圧の低下は、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となる。もちろん、駆動電圧を低下させることで、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする。
【0086】
さらに、上記吐出モデルでは、吐出に必要な電界強度は、局所的な集中電界強度に依存することになるため、対向電極の存在が必須とならない。すなわち、従来の吐出モデルでは、ノズル−基板間に電界を印加するため、絶縁体の基板に対してはノズルと反対側に対向電極を配置するか、あるいは基板を導電性とする必要があった。そして、対向電極を配置する場合、すなわち基板が絶縁体の場合では、使用できる基板の厚さに限界があった。
【0087】
これに対し、本発明の吐出モデルでは、対向電極を要さずに絶縁性基板などに対しても印字を行うことが可能となり、装置構成の自由度が増す。また、厚い絶縁体に対しても印字を行うことが可能となる。
【0088】
また、図6に、基板との間に働く鏡像力の大きさと基板からの距離hとの相関を示す。図より明らかなように、この鏡像力は基板とノズル間の距離が近くなるほどに顕著になり、特にhが20μm以下で顕著である。
【0089】
次に、吐出流量の精密制御について考えて見る。円筒状の流路における流量Qは、粘性流の場合、以下のハーゲン・ポアズイユの式によって表される。いま、円筒形のノズルを仮定し、このノズルを流れる流体の流量Qは、次式で表される。
【0090】
【数14】
【0091】
ここで、η:流体の粘性係数(Pa・s)、L:流路すなわちノズルの長さ(m)、d:流路すなわちノズル孔の直径(m)、△P:圧力差(Pa)である。上式より、流量Qは、流路の半径の4乗に比例するため、流量を制限するためには、微細なノズルの採用が効果的である。この(14)式に、(13)式で求めた吐出圧力△Pを代入し、次式を得る。
【0092】
【数15】
【0093】
この式は、直径d、長さLのノズルに電圧Vを引加した際に、ノズルから流出する流体の流出量を表している。この様子を、図7に示す。計算にはL=10mm、η=1(mPa・s)、γ=72(mN/m)の値を用いた。いま、ノズルの直径を先行技術の最小値50μmと仮定する。電圧Vを徐々に印加していくと、電圧V=1000Vで吐出が開始する。この電圧は、図5でも述べた吐出開始電圧に相当する。そのときのノズルからの流量がY軸に示されている。吐出開始電圧Vc直上で流量は急速に立ち上がっている。
【0094】
このモデル計算上では、電圧をVcより少し上で精密に制御することで微小流量が得られそうに思えるが、片対数で示される図からも予想されるように実際上それは不可能で、特に10-10m3/s以下、微小量の実現は困難である。また、ある径のノズルを採用した場合には、式(11)で与えられたように、最小駆動電圧が決まってしまう。このため、先行技術のように、直径50μm以上のノズルを用いる限り、10-10m3/s以下の微小吐出量や、1000V以下の駆動電圧にすることは困難である。
【0095】
図から分かるように、直径25μmのノズルの場合700V以下の駆動電圧で充分であり、直径10μmのノズルの場合500V以下でも制御可能である。また、直径1μmのノズルの場合300V以下でも良いことが分かる。
【0096】
以上の考察は、連続流を考えた場合であるが、単発流とするためには、スイッチングの必要性がある。次にそれに関して述べる。
【0097】
静電吸引による吐出は、ノズル端部における流体の帯電が基本である。帯電の速度は誘電緩和によって決まる時定数程度と考えられる。
【0098】
【数16】
【0099】
ここで、ε:流体の比誘電率、σ:流体の導電率(S・m)である。流体の比誘電率を10、導電率を10-6S/mを仮定すると、τ=1.854×10-5secとなる。あるいは、臨界周波数をfcとすると、
【0100】
【数17】
【0101】
となる。このfcよりも早い周波数の電界の変化に対しては、応答できず吐出は不可能になると考えられる。上記の例について見積もると、周波数としては10kHz程度となる。
【0102】
次に、ノズル壁面における表面張力の低下について考える。電極の上に絶縁体を配置し、その上に滴下した流体と電極の間に電圧を印加すると流体と絶縁体の接触面積が増す、すなわち濡れ性がよくなることが見いだされ、エレクトロウェッティング(Electrowetting)現象と呼ばれている。この効果は、円筒形のキャピラリー形状においても成り立ち、エレクトロキャピラリー(Electrocpapillary)と呼ばれることもある。エレクトロウェッティング効果による圧力と、印加電圧、キャピラリーの形状、溶液の物性値との間に以下の関係がある。
【0103】
【数18】
【0104】
ここで、ε0:真空の誘電率、ε,一:絶縁体の誘電率、t:絶縁体の厚さ、d:キャピラリーの内径である。流体として、水を考えてこの値を計算してみると、上述の特許文献1の実施例の場合を計算してみると、高々30000Pa(0.3気圧)にすぎないが、本発明の場合、ノズルの外側に電極を設けることにより30気圧相当の効果が得られることがわかった。これにより、微細ノズルを用いた場合でもノズル先端部への流体の供給は、この効果により速やかに行われる。この効果は、絶縁体の誘電率が高いほど、またその厚さが薄いほど顕著になる。エレクトロキャピラリー効果を得るためには、厳密には絶縁体を介して電極を設置する必要があるが、十分な絶縁体に十分な電場がかかる場合、同様の効果が得られる。
【0105】
以上の議論において、注意すべき点は、これらの近似理論は従来のように電界強度として、ノズルに印加する電圧V0と、ノズル−対向電極間の距離hで決まる電界ではなく、ノズル先端における局所的な集中電界強度に基づいている点である。また、本発明において重要なのは、局所的な強電界と、流体を供給する流路が非常に小さなコンダクタンスを持つことである。そして、流体自身が微小面積において十分に帯電することであり、帯電した微小流体は、基板などの誘電体、または導体を近づけると、鏡像力が働き基板に対し直角に飛翔することとなる。
【0106】
ところが、本願発明者らが見出した新しい流体吐出モデルによる静電吸引型流体吐出では、基本的に吐出応答性が、ノズル内部の電極とノズル先端部との間の流体(吐出材料)の電気抵抗に起因するため、流体の電気伝導度の大きさによって吐出応答性が大幅に変化し、ノズルと基板との相対速度、或いはノズル−基板間に印加する電圧によって、安定したライン描画が行えないといった不具合が招来される。
【0107】
例えば、気伝導度の低い流体では吐出応答性が悪くなるため、図8に示すように、吐出ヘッド15と、基板13が載置された基板ステージ14の相対的な移動を高速で行うと、直流バイアスを印加しても、低速駆動では問題なく描けていたラインが描けず、途切れたライン描画像となってしまう。
【0108】
このような問題は、本発明の静電吸引型流体吐出では、ノズル先端径が微細であるために、ノズル内部の電極とノズル先端部との間の流体(吐出材料)の電気抵抗の上昇による吐出応答性の悪化と、基板上に形成されるドットやラインの径や幅の超微細化が原因で生じた従来の吐出量では問題とはならなかった新たな問題である。
【0109】
本実施の形態に係る静電吸引型流体吐出装置は、走査速度或いはノズル−基板間の印加電圧を制御することで、途切れないライン描画像を安定して得ることのできるものである。このような静電吸引型流体吐出装置の構成について、以下に実施の形態1、2として、具体的に説明する。
【0110】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の一形態である静電吸引型流体吐出装置における要部の側面断面図を示したものである。図中1は、先端に超微細径のノズル孔(吐出孔)が形成された超微細径のノズルである。超微細量の流体体吐出を実現するためには、低コンダクタンスの流路をノズル1近傍に設けるか、またはノズル1自身を低コンダクタンスのものにする必要がある。このためには、ガラス製キャピラリーが好適であるが、導電性物質に絶縁材でコーティングしたものでも可能である。
【0111】
ノズル孔の直径(以下、ノズル直径)の下限値は、制作上の都合から0.0lμmが好ましく、また、ノズル直径の上限値は、図3に示した静電的な力が表面張力を上回る時のノズル直径の上限が25μmであること、および、図4に示した局所的な電界強度によって吐出条件を満たす場合のノズル直径の上限が25μmであることから25μmが好ましく、15μmがより好ましい。特に、局所的な電界集中効果をより効果的に利用するには、ノズル直径は0.01〜8μmの範囲が望ましい。
【0112】
ノズル1内部には、図示しない流体源から供給路8を介して吐出すべき溶液3が供給され充填されると共に、電極2がこの溶液3に浸されるように配置されている。ノズル1は、シールドゴム4およびノズルクランプ5によりホルダー6に取り付けられている。
【0113】
また、ノズル1のノズル孔の対向面側には、所定の距離離れた位置に、ノズル1のノズル孔から吐出した溶液を基板13の表面により安定して着弾させることを目的に対向電極としての機能も有する基板ステージ14が配設され、この基板ステージ14上に基板13が載置されるようになっている。
【0114】
なお、ここでは基板ステージ14に対向基板としての機能を付与するが、上述したように、本発明によれば、ノズル先端部に於ける電界の集中効果と、対向基板に誘起される鏡像力の作用とで、先行技術のように基板を導電性にしたり、基板の背面側に対向電極を設けたりする必要はなく、基板として絶縁性のガラス基板、ポリイミドなどのプラスチック基板、セラミックス基板、半導体基板などを用いることが可能である。
【0115】
上記電極2と基板ステージ14とは駆動信号印加部9に接続されている。この駆動信号印加部9は、制御部18の制御のもと、電極2に印加する信号電圧と基板ステージ14に印加される信号電圧の少なくとも一方を制御して、ノズル1先端部と基板13との間に、単発流吐出であればパルス電圧を印加し、連続流吐出であれば直流バイアス電圧を印加するようになっている。ノズル1先端部と基板13との間に印加する電圧の極性はプラスでもマイナスでも良い。なお、基板ステージ14は接地されていてもよい。
【0116】
ヘッド駆動部16は、吐出ヘッド10を少なくともX方向に駆動するものであり、ステージ駆動部19は、基板ステージ14を少なくとも逆X方向に駆動するものである。なお、基板ステージ14側或いは吐出ヘッド10側の何れか一方側が駆動される構成であってもよい。そして、ヘッド駆動部16及びステージ駆動部19は、制御部17にて制御され、図9に示すように、吐出ヘッド10のX方向への速度vHと基板ステージ14の逆X方向への速度vSとの和である相対速度が走査速度vとなる。
【0117】
ここでは、制御部17・18、ステージ駆動部19、基板ステージ14、吐出ヘッド10、ヘッド駆動部16、及び駆動信号印加部9により、ノズル1と基板13とを相対的に移動させながら、電圧をノズル1と基板13との間に印加してライン描画を行うライン描画手段が構成されている。
【0118】
図10は、ノズル1と基板13との間に印加される駆動信号波形を示している。ここで、まず、図10を用いて、静電吸引型流体吐の吐出特性について説明する。基本的に、上記した駆動信号印加部9により吐出ヘッド10の上記したノズル1内部の電極2と基板ステージ14とに駆動信号が印加されると、その電位差によって決定される信号電圧11がノズル1と基板13との間に印加される。
【0119】
信号電圧11は、吐出可能最低電圧30以上の電圧であって、基板上に着弾した流体にて形成されるドットやラインの径・幅の大きさは、吐出可能最低電圧30で吐出させることにより最小化することができるので、超微細ドット及び超幅細ラインを安定して形成するためには、各ノズルの吐出可能最低電圧条件近傍に設定される。
【0120】
吐出可能最低電圧30とは、直流バイアスで流体吐出させた場合に、吐出が可能な最低電圧条件を意味しており、ノズル直径に依存し、ノズル1先端部(ノズル孔)の流体で形成されるメニスカスの表面電位は、この吐出可能最低電圧30に達した時点で吐出が開始されることとなる。
【0121】
信号電圧11を印加すると、上記電極2から電荷が流れ出し、ノズル1先端部(ノズル孔)の流体で形成されるメニスカス上に電荷が蓄積され始める。メニスカス表面の電位曲線であるメニスカス表面電位20は、飽和曲線であり、その飽和速度は印加する信号電圧11や吐出材料である流体の電気伝導度、ノズル1内部の流路形状に依存する。
【0122】
そして、メニスカス表面電位20が吐出可能最低電圧30まで到達すると、その場の電界力を受けて微小量の流体が吐出される。流体が吐出されると、メニスカス表面電位20は吐出可能最低電圧30よりも一旦低下するため、曳き糸状となった吐出流体は、ノズル1先端部にて切れることとなる。その後、メニスカス表面電位20は電極2からの電荷供給にて再度上昇し始め、再び吐出可能最低電圧30に達すると再び流体が吐出され、これを繰り返すこととなる。つまり、吐出開始後は、流体吐出に伴う電位の低下と電極からの電荷の蓄積による電位上昇の繰り返しにより、メニスカス表面電位20は吐出維持可能最低電圧30付近で鋸歯状に推移し、この周期で間欠的に吐出が繰り返されることとなる。
【0123】
この間欠吐出周期tvは、信号電圧11及び流体の電気伝導度により異なり、例えば、電気伝導度が10-8S/cm程度の銀ナノペースト材料をノズル直径約2μmのヘッドを用いて印加電圧300Vで吐出させた場合は、約66μsecである。
【0124】
次に、ライン描画条件についてであるが、図11(a)に示すように、走査速度vと各吐出条件により決定する間欠吐出周期tvとの積v×tvで、基板上の吐出間隔が決定する。そして、その吐出間隔v×tvが、単一吐出パターン(ドット)Pの走査方向のパターン幅と同等であれば、単一吐出パターンが重なることなく接しながら一直線上にならんだ状態となる。安定したライン描画とするには、走査方向に隣接する各単一吐出パターン同士が少しずつ重なるようにすることが望ましい。そこで、ここでは、図11(b)に示すように、隣接する単一吐出パターンP・Pが、副走査方向のパターン幅Dの1/2以上で重なるように、走査速度vを決定する。これにより、パターンP・P同士が分離することなく連結し、常に安定したライン描画を実現することが可能となる。
【0125】
また、ここで、重なり幅を、副走査方向のパターン幅Dの1/2以上としたのは、単一吐出パターンPは、図11(c)に示すように、走査速度vに依存して走査速度vが速くなるほど走査方向に長くなるが、副走査方向のパターン幅Dは若干の変化はあっても、走査速度vに依存して走査方向のパターンほどに変化することはないためである。
【0126】
また、隣接する単一吐出パターンP・P同士が必要以上に無駄に重なっても走査速度vは遅くなるので、副走査方向のパターン幅Dの1.5倍以下で重なり合うように走査速度vを制御することで、無駄に重ねて走査速度vを遅くしすぎるといった不具合を伴うことがない。
【0127】
これを走査方向のパターン幅をL、及び走査方向と垂直をなす副走査方向のパターン幅をDとした場合に、走査速度vを、
v<(L−1.5D)/tv……(19)
を満たすように設定することで、超微細なライン幅を維持した状態で、途切れない安定したライン描画を高速にて行うことができる。
【0128】
そこで、本実施の形態の静電吸引型流体吐出装置では、制御部17の制御のもと上記ヘッド駆動部16及びステージ駆動部18が、流体の電気伝導度と信号電圧11に応じた間欠吐出周期tvに基づいて、間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンPの隣接するもの同士が一部重なり合うように、具体的には上記式(19)を満たすように走査速度vを設定して、吐出ヘッド10及び基板ステージ14を駆動するようになっている。
【0129】
これにより、設定されている信号電圧11の条件のなかで、途切れのない安定したライン描画を高速にて行うことができ、高速ライン描画形成を実現することができる。
【0130】
(実施の形態2)
本発明に係るその他の実施形態の静電吸引型流体吐出装置について説明する。但し、本実施の形態の静電吸引型流体吐出装置も構成は基本的に実施の形態1の静電吸引型流体吐出装置と同じであるので、装置構成図としては、同じ図1を用い、同じ部分の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0131】
前述した実施の形態1の静電吸引型流体吐出装置は、信号電圧11は、吐出維持可能最低電圧30以上であるといった条件を満たした上で、吐出可能最低電圧30近傍に設定されており、走査速度vを変化させることで、安定したライン描画を可能とするものであった。これに対し、本実施の形態2の静電吸引型流体吐出装置は、信号電圧11を変化させることで、安定したライン描画を可能とするものである。
【0132】
図12(a)(b)は、駆動信号波形と間欠吐出周期との関係を示しており、まず、これを用いて、静電吸引型流体吐出の吐出特性について説明する。実施の形態1においても説明したが、信号電圧11印加後に増加し始めたメニスカス表面電位20が吐出可能最低電圧30に到達した時点で吐出が開始するが、一度流体を吐出した後は、流体吐出により放出した電荷量分の電位低下と電極2からの電荷供給分による電位上昇との繰り返しにより、間欠吐出状態が維持されることとなる。
【0133】
そして、吐出後のメニスカス表面電位20の上昇速度は、信号電圧11によって大きく異なり、例えば、図12(a)に示すように、信号電圧11が吐出可能最低電圧30にほぼ等しいような低電圧印加の場合は、メニスカス表面電位20が飽和に近い状態で電位の増減が繰り返されるため、表面電位20の増加速度は非常に遅い。そのため、メニスカス表面電位20が吐出可能最低電圧30に到達した時点で開始される吐出の時間間隔は長くなる。
【0134】
これに対し、図12(b)に示すように、信号電圧11が吐出可能最低電圧30よりも十分大きい場合は、メニスカス表面電位20が飽和に遠い状態で電位の増減が繰り返されるため、表面電位20の増加速度は非常に速くなる。そのため、メニスカス表面電位20が吐出可能最低電圧30に到達した時点で開始される吐出の時間間隔は短くなる。
【0135】
このように、同一の吐出材料で、同一のノズル直径の吐出ヘッド10を使用しても、信号電圧11が異なれば、その間欠吐出周波数は変化する。
【0136】
図13に、吐出材料としてハリマ化成(株)製の銀ナノペーストを用い、吐出ヘッド10のノズル直径約1μmとして吐出させた場合の信号電圧11と間欠吐出周波数の関係を示す。図13より、信号電圧11が大きい程間欠吐出周波数は大きくなり、吐出の時間間隔が短くなる。つまり、信号電圧11が大きい程ライン描画に対し有効であることがわかる。
【0137】
またさらに、銀ナノペーストを用い、吐出ヘッド10のノズル直径約1μmとして、走査速度vとライン描画可能最低電圧との関係を調べた。その結果、図14に示すように、走査速度ごとにラインを描画するための最低電圧値が存在し、その電圧値は走査速度が大きいほど大きくなることが確認された。
【0138】
そこで、本実施の形態の静電吸引型流体吐出装置では、制御部18の制御のもと上記駆動信号印加部9が、指定の走査速度vに対し、間欠吐出現象の単一吐出パターン間隔がゼロとなるライン描画可能最低電圧以上の電圧条件の信号電圧11を設定するようになっている。
【0139】
具体的は、実施の形態1と同様に、図11(b)に示すように、走査方向に隣接する単一吐出パターンP・Pにおける重なり幅が、副走査方向のパターン幅Dの0.5倍以上1.5倍以下となる範囲で、信号電圧11を設定する。
【0140】
これにより、設定されている走査速度vの条件のなかで、途切れのない安定したライン描画を確実に形成でき、高速ライン描画形成を実現することができる。
【0141】
また、図14より、銀ナノペーストのような電気伝導度が10-7〜10-9S/cmの吐出材料に対しては、走査速度v(mm/sec)とライン描画が可能な最低信号電圧Vin(V)とを、
→Vin>31v+75 ……(20)
とすることにより、高速ライン描画形成を簡単に実現することができる。
【0142】
例えば、5mm/sec以上の高速走査時にライン描画を安定して行うためには、印加電圧を300V以上与える必要がある。
【0143】
なお、本実施の形態では、走査速度vと信号電圧11とを別々最適化して安定したライン描画を可能とする構成についてそれぞれ述べたが、信号電圧11を吐出可能最低電圧30より大きく設定すればするほど、ライン描画の線幅が増す傾向にあるため、走査速度vと信号電圧11の両方を最適化して、必要な線幅・必要な走査速度vを得るようにしてもよい。
【0144】
最後に、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【0145】
【発明の効果】
本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、該ライン描画手段は、上記電圧及び上記流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記相対移動の速度を制御することを特徴としている。
【0146】
上記の構成によれば、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となるなどの効果を奏する。
【0147】
これに加えて、ライン描画手段が、ノズルと基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧をノズルと基板との間に印加してライン描画を行うにおいて、電圧及び流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせて、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように相対移動の速度を制御するので、途切れのない安定したライン描画が、線幅が太くなるなどの不具合を伴うことなく、超微細ラインが可能となる吐出可能最低電圧近傍に電圧を設定しながら、高速に実施することができるといった効果を併せて奏する。
【0148】
本発明の第2の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、該ライン描画手段は、上記相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように電圧を制御することを特徴としている。
【0149】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の効果を奏する。
【0150】
そして、上記構成では、ライン描画手段が、ノズルと基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧をノズルと基板との間に印加してライン描画を行うにおいて、相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように電圧を制御するので、間欠吐出周波数を高めて高速移動に対応することが可能となり、所望する高速にて途切れのない安定したライン描画が可能となるといった効果を併せて奏する。
【0151】
本発明の第4の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、該ライン描画手段は、上記流体の電気伝導度が10-7〜10-9S/cmである場合、上記相対移動の速度である走査速度をv(mm/sec)、上記電圧をVin(V)とすると、Vin>31v+75の関係式を満足する走査速度及び電圧にてライン描画を行うことを特徴としている。
【0152】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の効果を奏する。
【0153】
そして、上記構成では、ライン描画手段が、ノズルと基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧をノズルと基板との間に印加してライン描画を行うにおいて、流体の電気伝導度が10-7〜10-9S/cmである場合、相対移動の速度である走査速度をv(mm/sec)、上記電圧をVin(V)とすると、Vin>31v+75の関係式を満足する走査速度及び電圧にてライン描画を行うので、例えば銀ナノペーストのような電気伝導度が10-7〜10-9S/cmの吐出材料に限られるが、安定したライン描画を高速にて簡単に実現することができるといった効果を併せて奏する。
【0154】
本発明の静電吸引型流体吐出方法は、以上のように、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うにあたり、上記電圧及び上記流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記相対移動の速度を制御することを特徴としている。
【0155】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となるという効果を奏する。
【0156】
加えて、電圧及び流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うようにノズルと基板との相対移動の速度を制御することで、超微細な線幅を維持した状態で、安定したライン描画を高速にて行うことができるといった効果を併せて奏する。
【0157】
本発明の他の静電吸引型流体吐出方法は、以上のように、電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うにあたり、上記相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記電圧を制御することを特徴としている。
【0158】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となるという効果を奏する。
【0159】
加えて、ノズルと基板の相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように、ノズルと基板間に印加する電圧を制御するので、所望する高速にて途切れのない安定したライン描画が可能となるといった効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例としての静電吸引型流体吐出装置の要部側面断面を含む説明図である。
【図2】本発明の基本となる吐出モデルにおいて、ノズルの電界強度の計算を説明するための図である。
【図3】表面張力圧力および静電的圧力のノズル径依存性のモデル計算結果を示すグラフである。
【図4】吐出圧力のノズル径依存性のモデル計算結果を示すグラフである。
【図5】吐出限界電圧のノズル径依存性のモデル計算結果を示すグラフである。
【図6】荷電液滴と基板の間に働く鏡像力とノズル−基板間距離の相関を示したものである。
【図7】ノズルから流出する流量と印加電圧との相関関係のモデル計算結果を示したものである。
【図8】低速駆動と高速駆動での描画パターンの相違を示す説明図である。
【図9】吐出ヘッド10と基板ステージの相対速度の関係を示す説明図である。
【図10】ノズル−基板間に印加される直流の信号電圧の波形と間欠吐出周期の関係を示す説明図である。
【図11】(a)〜(c)共に、単一吐出パターンでライン描画を形成するための条件を示す説明図である。
【図12】(a)(b)共に、ノズル−基板間に印加される直流の信号電圧の波形と、間欠吐出周期の関係を示す説明図である。
【図13】ノズル−基板間に印加する直流の信号電圧の値と、間欠吐出周波数との関係を示す説明図である。
【図14】走査速度と、ライン描画可能最低電圧との関係を示すグラフである。
【図15】静電吸引型流体吐出装置にける静電糸曳き現象による吐出流体の成長原理を示す図である。
【符号の説明】
1 ノズル
2 電極
3 流体
9 駆動信号印加部(ライン描画手段)
10 吐出ヘッド
13 基板
11 信号電圧
14 基板ステージ(ライン描画手段)
16 ヘッド駆動部(ライン描画手段)
17 制御部(ライン描画手段)
18 制御部(ライン描画手段)
19 ステージ駆動部(ライン描画手段)
20 メニスカス表面電位
Claims (6)
- 電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、
該ライン描画手段は、上記電圧及び上記流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記相対移動の速度を制御することを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、
該ライン描画手段は、上記相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように電圧を制御することを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 上記ライン描画手段は、隣接する吐出パターン同士が、該吐出パターンにおける上記相対移動の移動方向とは垂直をなす方向の径の0.5倍以上1.5倍以下で重なり合うように、上記相対移動の速度或いは上記電圧を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の静電吸引型流体吐出装置。
- 電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うライン描画手段を備え、
該ライン描画手段は、上記流体の電気伝導度が10-7〜10-9S/cmである場合、上記相対移動の速度である走査速度をv(mm/sec)、上記電圧をVin(V)とすると、
Vin>31v+75
の関係式を満足する走査速度及び電圧にてライン描画を行うことを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、
上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、
上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うにあたり、上記電圧及び上記流体の電気伝導度に応じて周波数が異なる間欠吐出現象の周期に合わせ、間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記相対移動の速度を制御することを特徴とする静電吸引型流体吐出方法。 - 電圧印加により帯電された流体を吐出ヘッドに備えられたノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、
上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、
上記ノズルと上記基板とを相対的に移動させながら、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加してライン描画を行うにあたり、上記相対移動の速度にて決定される間欠吐出された吐出パターンの隣接するもの同士が一部重なり合うように上記電圧を制御することを特徴とする静電吸引型流体吐出方法。
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