以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
先ず本発明の実施形態における電気光学装置の構成について、図1から図3を参照して説明する。図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図3は、図2のA−A’断面図である。尚、図3においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
図1において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には夫々、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板(後述する)に形成された対向電極(後述する)との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。
図2において、電気光学装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a’により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。
また、半導体層1aのうち図中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a’に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する(特に、本実施形態では、走査線3aは、当該ゲート電極となる部分において幅広に形成されている)。このように、走査線3aとデータ線6aとの交差する個所には夫々、チャネル領域1a’に走査線3aがゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
図2及び図3に示すように、本実施形態では特に、容量線300は、導電性のポリシリコン膜等からなる第1膜72と高融点金属を含む金属シリサイド膜等からなる第2膜73とが積層された多層構造を持つ。このうち第2膜73は、容量線300或いは蓄積容量70の固定電位側容量電極としての機能の他、TFT30の上側において入射光からTFT30を遮光する遮光層としての機能を持つ。
また第1膜72は、容量線300或いは蓄積容量70の固定電位側容量電極としての機能の他、遮光層としての第2膜73とTFT30との間に配置された光吸収層としての機能を持つ。他方、容量線300に対して、誘電体膜75を介して対向配置される中継層71aは、蓄積容量70の画素電位側容量電極としての機能の他、遮光層としての第2膜73とTFT30との間に配置される光吸収層としての機能を持ち、更に、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する中間導電層としての機能を持つ。このような遮光及び光吸収については図4から図7を参照して後に詳述する。尚、これらの光吸収層としての第1膜72及び中継層71aは、ポリシリコン膜等の、遮光層としての第2膜73と比較して光吸収率が高い材質からなる。
本実施形態では、蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e(及び画素電極9a)に接続された画素電位側容量電極としての中継層71aと、固定電位側容量電極としての容量線300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
容量線300は平面的に見て、走査線3aに沿ってストライプ状に伸びており、TFT30に重なる個所が図2中上下に突出している。そして、図2中縦方向に夫々伸びるデータ線6aと図2中横方向に夫々伸びる容量線300とが相交差して形成されることにより、TFTアレイ基板10上におけるTFT30の上側に、平面的に見て格子状の遮光層が構成されており、各画素の開口領域を規定している。
他方、TFTアレイ基板10上におけるTFT30の下側には、下側遮光膜11aが格子状に設けられている。
本実施形態では特に、格子状の下側遮光膜11aの形成領域は、同じく格子状の上側の遮光層(即ち、容量電極300及びデータ線6a)の形成領域内に位置する(即ち、一回り小さく形成され、下側遮光膜11aは、容量線300及びデータ線6aの幅より狭く形成されている)。そして、TFT30のチャネル領域1aは、その低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c(即ち、LDD領域)との接合部を含めて、このような格子状の下側遮光膜11aの交差領域内に(従って、格子状の上側遮光膜の交差領域内に)位置する。
これらの遮光層の一例を構成する第2膜73及び下側遮光膜11aは夫々、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pb等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。また、このような第2膜73を含んでなる容量線300は、多層構造を有し、その第1膜72が導電性のポリシリコン膜であるため、係る第2膜73については、導電性材料から形成する必要はないが、第1膜72だけでなく第2膜73をも導電膜から形成すれば、容量線300をより低抵抗化できる。
また図3において、容量電極としての中継層71aと容量線300との間に配置される誘電体膜75は、例えば膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO膜、LTO膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄い程良い。
光吸収層として機能するのみならず容量線300の一部を構成する第1膜72は、例えば膜厚150nm程度のポリシリコン膜からなる。また、遮光層として機能するのみならず容量線300の他の一部を構成する第2膜73は、例えば膜厚150nm程度のタングステンシリサイド膜からなる。このように誘電体膜75に接する側に配置される第1膜72をポリシリコン膜から構成し、誘電体膜75に接する中継層71aをポリシリコン膜から構成することにより、誘電体膜75の劣化を阻止できる。例えば、仮に金属シリサイド膜を誘電体膜75に接触させる構成を採ると、誘電体膜75に重金属等の金属が入り込んで、誘電体膜75の性能を劣化させてしまう。更に、このような容量線300を誘電体膜75上に形成する際に、誘電体膜75の形成後にフォトレジスト工程を入れることなく、連続で容量線300を形成すれば、誘電体膜75の品質を高められるので、当該誘電体膜75を薄く成膜することが可能となり、最終的に蓄積容量70を増大できる。
図2及び図3に示すように、データ線6aは、コンタクトホール81を介して中継接続用の中継層71bに接続されており、更に中継層71bは、コンタクトホール82を介して、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。尚、中継層71bは、前述した諸機能を持つ中継層71aと同一膜から同時形成される。
また容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域からその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。この点については、図8及び図9を参照して後に詳述する。
画素電極9aは、中継層71aを中継することにより、コンタクトホール83及び85を介して半導体層1aのうち高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続されている。即ち、本実施形態では、中継層71aは、蓄積容量70の画素電位側容量電極としての機能及び光吸収層としての機能に加えて、画素電極9aをTFT30へ中継接続する機能を果たす。このように中継層71a及び71bを中継層として利用すれば、層間距離が例えば2000nm程度に長くても、両者間を一つのコンタクトホールで接続する技術的困難性を回避しつつ比較的小径の二つ以上の直列なコンタクトホールで両者間を良好に接続でき、画素開口率を高めることが可能となり、コンタクトホール開孔時におけるエッチングの突き抜け防止にも役立つ。
図2及び図3において、電気光学装置は、透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。
TFTアレイ基板10には、平面的に見て格子状の溝10cvが掘られている(図2中右下がりの斜線領域で示されている)。走査線3a、データ線6a、TFT30等の配線や素子等は、この溝10cv内に埋め込まれている。これにより、配線、素子等が存在する領域と存在しない領域との間における段差が緩和されており、最終的には段差に起因した液晶の配向不良等の画像不良を低減できる。
図3に示すように、TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電性膜からなる。また配向膜16は例えば、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性膜からなる。また配向膜22は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
対向基板20には、格子状又はストライプ状の遮光膜を設けるようにしてもよい。このような構成を採ることで、前述の如く遮光層を構成する容量線300及びデータ線6aと共に当該対向基板20上の遮光膜により、対向基板20側からの入射光がチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに侵入するのを、より確実に阻止できる。更に、このような対向基板20上の遮光膜は、少なくとも入射光が照射される面を高反射な膜で形成することにより、電気光学装置の温度上昇を防ぐ働きをする。尚、このように対向基板20上の遮光膜は好ましくは、平面的に見て容量線300とデータ線6aとからなる遮光層の内側に位置するように形成する。これにより、対向基板20上の遮光膜により、各画素の開口率を低めることなく、このような遮光及び温度上昇防止の効果が得られる。
このように構成された、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、後述のシール材により囲まれた空間に電気光学物質の一例である液晶が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなる。シール材は、TFTアレイ基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が混入されている。
更に、画素スイッチング用TFT30の下には、下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。
図3において、画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁薄膜2、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。
走査線3a上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール82及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール83が各々開孔された第1層間絶縁膜41が形成されている。
第1層間絶縁膜41上には中継層71a及び71b並びに容量線300が形成されており、これらの上には、中継層71a及び71bへ夫々通じるコンタクトホール81及びコンタクトホール85が各々開孔された第2層間絶縁膜42が形成されている。
尚、本実施形態では、第1層間絶縁膜41に対しては、1000℃の焼成を行うことにより、半導体層1aや走査線3aを構成するポリシリコン膜に注入したイオンの活性化を図ってもよい。他方、第2層間絶縁膜42に対しては、このような焼成を行わないことにより、容量線300の界面付近に生じるストレスの緩和を図るようにしてもよい。
第2層間絶縁膜42上にはデータ線6aが形成されており、これらの上には、中継層71aへ通じるコンタクトホール85が形成された第3層間絶縁膜43が形成されている。画素電極9aは、このように構成された第3層間絶縁膜43の上面に設けられている。
光吸収層72,71aは、下地絶縁膜12及び各層間絶縁膜41,42,43より吸収性のある材料で形成されている。
以上のように構成された本実施形態によれば、対向基板20側からTFT30のチャネル領域1a’及びその付近に入射光が入射しようとすると、データ線6a及び容量線300(特に、その第2膜73)からなる格子状の遮光層で遮光を行う。他方、TFTアレイ基板10側から、TFT30のチャネル領域1a’及びその付近に戻り光が入射しようとすると、下側遮光膜11aで遮光を行う(特に、複板式のカラー表示用のプロジェクタ等で複数の電気光学装置をプリズム等を介して組み合わせて一つの光学系を構成する場合には、他の電気光学装置からプリズム等を突き抜けて来る投射光部分からなる戻り光は強力であるので、有効である。)。そして、高反射率のAl膜からなるデータ線6aや、反射率の比較的高い高融点金属膜からなる第2膜73の内面(即ち、TFT30に面する側の表面)に斜めの戻り光が入射することにより発生する内面反射光、多重反射光などは、光吸収層としての第1膜72及び中継層71aにより吸収除去される。これらの結果、TFT30の特性が光リークにより劣化することは殆ど無くなり、当該電気光学装置では、非常に高い耐光性が得られる。
特に本実施形態では、光吸収層としての第1膜72及び中継層71aは、導体化したポリシリコン膜(又はアモルファスシリコン等のシリコン膜)からなり、チャネル領域も閾値電圧Vth制御のためにP、B、As等をドープした又はノンドープのポリシリコン膜(又はアモルファスシリコン等のシリコン膜)からなるので、チャネル領域における光吸収特性(周波数依存性等)と類似或いは同一の光吸収特性を、当該光吸収層が有する。従って、チャネル領域1a’で吸収されることにより光リークの原因となる周波数成分を中心として、第1膜72及び中継層71aにより光を吸収除去できるので好都合である。すなわち、TFTチャネルと光吸収層を同一の主材料で形成することにより光吸収性効果を高めている。
次に、図4から図7を参照して、本実施形態における遮光及び光吸収について更に説明を加える。ここに、図4は、画像表示領域における上側遮光膜及び下側遮光膜を抽出し且つ拡大して示す図式的な平面図であり、図5及び図6は、図4のB−B’断面における、遮光及び光吸収の様子を示す図式的な断面図である。
また、図7は、変形形態における同じく図4のB−B’断面における、遮光及び光吸収の様子を示す図式的な断面図である。
図4に示すように、本実施形態では各画素の非開口領域は、主に容量線300と、(コンタクトホール81及び82の形成用に容量線300が途切れている個所における)データ線6aとからなる遮光層により格子状に規定される。従ってこれらの容量線300及びデータ線6aにより、光抜けが生じてコントラス比が低下するのを効果的に防止できる。ここでTFT30の上側には、これらの容量線300及びデータ線6aが格子状に存在し、TFT30の下側には、格子状に配置された下側遮光膜11aが存在し、下側遮光膜11aの形成領域は、容量線300及びデータ線6aからなる格子状の遮光層の形成領域内に位置している。
従って図5に示すように、当該電気光学装置における上側(即ち、入射光の入射側)から入射する入射光L1に対しては、容量線300の第2膜73及びデータ線6aが、遮光層として機能する。従って、このような入射光L1がTFT30に到達することを防止できる。更に、下側遮光膜11aは、上側にある遮光層(即ち、容量線300の第2膜73及びデータ線6a)よりも一回り小さく形成されているので、入射光L1に含まれる斜めの成分が、上側の遮光層(容量線300及びデータ線6a)の脇を抜けて、下側遮光膜11aの内面で反射することによる内面反射光や多重反射光の発生も低減されている。
他方、図6に示すように、当該電気光学装置における下側(即ち、入射光の出射側)から入射する戻り光L2に対しては、下側遮光膜11aが遮光層として機能する。従って、このような戻り光L2がTFT30に到達することを防止できる。ここで、下側遮光膜11aは、上側にある遮光層(即ち、容量線300の第2膜73及びデータ線6a)よりも一回り小さく形成されているので、戻り光L2に含まれる斜めの成分の一部が、下側遮光層11aの脇を抜けて、上側にある遮光層の内面(特に、容量線300の内面)に向かって進む。しかしながら、上側にある遮光層(即ち、容量線300の第2膜73及びデータ線6a)とTFT30との間には、光吸収層(即ち、容量線300の第1膜72及び中継層71a)が存在するので、このように戻り光L2に含まれる斜めの成分並びに、係る成分が上側の遮光層(即ち、容量線300の第2膜73及びデータ線6a)の内面で反射することによる内面反射光L3及び多重反射光L4は、光吸収層により吸収除去される。
以上の結果、本実施形態により、各画素の開口率を高めつつ耐光性を高めることにより画素スイッチング用TFT30の光リークによる特性劣化を低減でき、最終的にコントラスト比が高く且つ明るく高品位の画像表示が可能となる。
本実施形態では好ましくは、遮光層を構成する第2膜73は、光吸収層を構成する第1膜72及び中継層71aよりも熱伝導率が高い。従って、第1膜72及び中継層71aにおいて光吸収に伴って発生する熱を、熱伝導率の高い第2膜73を介して逃がすことができる。即ち、第1膜72及び中継層71aからTFT30に伝わる熱量を低減でき、これにより、TFT30で生じる熱リークを低減できる。これらの結果、光リーク及び熱リークの両者を低減することにより、TFT30のトランジスタ特性を顕著に向上させ得る。
更にTFT30の熱リークを低減する観点からは、光吸収層としての中継層71aとTFT30との間に介在する第1層間絶縁膜41は、光吸収層としての中継層71aと上述の如く熱を逃がす機能を持つ容量線300との間に介在する誘電体膜75よりも大きく設定することが好ましい。このように設定すれば、光吸収層としての中継層71aにおいて光吸収に伴って発生する熱を、容量線300を介して一層効率良く逃がすことができる。
尚、図4から図6に示した実施形態では、下側遮光膜11aは、上側にある遮光層(即ち、容量線300の第2膜73及びデータ線6a)よりも一回り小さく形成されているので、入射光L1に含まれる斜めの成分は、下側遮光層11aの内面に到達し難い構成とされている。しかしながら、装置仕様(例えば、下側遮光膜11aをどれだけ小さくするか、入射光にどれだけ斜めに角度がついているか等)によっては、下側遮光膜11aの内面で、斜めの入射光L1が反射することによる、内面反射光や多重反射光が問題となる。
このような場合には、図7に示した変形形態のように、下側遮光膜11aの内面にも光吸収層11bを設ければよい。このように構成すれば、下側遮光膜11aの内面に到達する斜めの入射光L1や、これに起因する内面反射光L3或いは多重反射光L4を、光吸収層11bで吸収除去可能となる。光吸収層11bを形成する主材料はチャネル領域を形成する材料と同一材料であることが好ましい。
また、他の変形形態として、図8に示した変形形態でもよい。下側遮光膜11aは、上側遮光膜73,6aより内側に形成され、下側の吸収層11bは下側遮光膜11bより広く形成されている。このように構成すれば、斜めの入射光L1は下側の吸収層11bあるいは、上側の吸収層71a,72で吸収除去可能となる。また、下側の吸収層11bを透過した斜めの入射光L1は、下側遮光膜11aで反射されることなく通過するので、TFT30の半導体層に届くことがない。
図8の変形形態は、下側の吸収層11bは上側の吸収層71a,72とほぼ同じ幅で示したが、上側の吸収層71a,72より内側に形成してもよく、また広くしてもよい。
次に、容量線300を固定電位とする構成について、図9及び図10を参照して説明する。ここに、図9は、容量線300を定電位源に落とす構成の一例を示す平面図であり、図10は、容量線300を定電位源に落とす構成の他の一例を示す平面図である。
図9及び図10に示すように、画像表示領域10a内に概ねストライプ状に形成された容量線300は、好ましくは画像表示領域10aの周辺にある周辺領域にまで延設されて、一まとめにされる。そして図8に示すように、周辺領域で、例えば、TFTアレイ基板10の4隅に設けられたコンタクトホール302により、まとめて定電位配線303に接続してもよいし、図10に示すように、冗長的に設けられた複数のコンタクトホール302’により定電位配線303’に接続してもよい。尚、図9及び図10において、定電位配線303及び303’は、好ましくはデータ線6aと同じく低抵抗のAl膜から形成される。
また、このような定電位配線303及び303’が接続されている定電位源としては、TFT30を駆動するための走査信号を走査線3aに供給するための走査線駆動回路(後述する)や画像信号をデータ線6aに供給するサンプリング回路を制御するデータ線駆動回路(後述する)に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位でも構わない。
尚、TFT30の下側に設けられる下側遮光膜11aについても、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるために、容量線300と同様に、画像表示領域からその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
以上説明した実施形態では、図3に示したように多数の導電層を積層することにより、画素電極9aの下地面(即ち、第3層間絶縁膜43の表面)におけるデータ線6aや走査線3aに沿った領域に段差が生じるのを、TFTアレイ基板10に溝10cvを掘ることで緩和しているが、これに変えて又は加えて、下地絶縁膜12、第1層間絶縁膜41、第2層間絶縁膜42、第3層間絶縁膜43に溝を掘って、データ線6a等の配線やTFT30等を埋め込むことにより平坦化処理を行ってもよいし、第3層間絶縁膜43や第2層間絶縁膜42の上面の段差をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等で研磨することにより、或いは有機SOGを用いて平らに形成することにより、当該平坦化処理を行ってもよい。
更に以上説明した実施形態では、画素スイッチング用TFT30は、好ましくは図3に示したようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造を持ってよいし、走査線3aの一部からなるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース及びドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また本実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極を高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。このようにデュアルゲート或いはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース及びドレイン領域との接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。
(電気光学装置の全体構成)
以上のように構成された各実施形態における電気光学装置の全体構成を図11及び図12を参照して説明する。尚、図11は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た平面図であり、図12は、図11のH−H’断面図である。
図12において、TFTアレイ基板10の上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、画像表示領域10aの周辺を規定する額縁としての遮光膜53が設けられている。シール材52の外側の領域には、データ線6aに画像信号を所定タイミングで供給することによりデータ線6aを駆動するデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線3aに走査信号を所定タイミングで供給することにより走査線3aを駆動する走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでも良いことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域10aの辺に沿って両側に配列してもよい。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的に導通をとるための導通材106が設けられている。そして、図12に示すように、図11に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板10に固着されている。
尚、TFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線6aに画像信号を所定のタイミングで印加するサンプリング回路、複数のデータ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
以上図1から図12を参照して説明した実施形態では、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(Tape Automated bonding)基板上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TNモード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
以上説明した実施形態における電気光学装置は、例えば、ライトバルブとしてプロジェクタに適用される。
図13は、このプロジェクタの構成を示す平面図である。この図に示されるように、プロジェクタ2100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってRGBの3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。ここで、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した実施形態に係る液晶パネル100と同様であり、画像信号を入力する処理回路(図示省略)から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。また、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
さて、ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ2114によってカラー画像が投射されることとなる。
なお、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー2108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、上述したようにカラーフィルタを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像はダイクロイックミラー2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bによる表示像を、ライトバルブ100Gによる表示像に対して左右反転させる構成となっている。
上述した各実施形態では、対向基板20に、カラーフィルタは設けられていない。しかしながら、画素電極9aに対向する所定領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜と共に、対向基板20上に形成してもよい。このようにすれば、プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー電気光学装置について、各実施形態における電気光学装置を適用できる。
また、対向基板20上に1画素1個対応するようにマイクロレンズを形成してもよい。あるいは、TFTアレイ基板10上のRGBに対向する画素電極9a下にカラーレジスト等でカラーフィルタ層を形成することも可能である。このようにすれば、入射光の集光効率を向上することで、明るい電気光学装置が実現できる。更にまた、対向基板20上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るいカラー電気光学装置が実現できる。
その他の適用例としては、モバイル型のパーソナルコンピュータの表示部や、携帯電話の表示部をはじめ、液晶テレビや、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた電子機器等にも適用できる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう電気光学装置及びその製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。