JP3966026B2 - シリカ系被膜形成用組成物、シリカ系被膜及びその製造方法、並びに電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカ系被膜形成用組成物、シリカ系被膜、シリカ系被膜の製造方法、並びに電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSI等の半導体素子といった電子デバイス部品に関しては、高集積化による配線の微細化に伴い、配線間容量の増大による信号遅延時間の増大が問題となっており、電子部品の絶縁材料に対して、耐熱性、機械特性等の他、更なる低比誘電率と熱処理工程の短縮が求められている。
【0003】
一般に配線の信号伝搬速度(v)と、配線材料が接する絶縁材料の比誘電率(ε)とは、下記式(2);
v=k/√ε …(2)、
で表される関係を示す(式中のkは定数である)。つまり、使用する周波数領域を高くすると共に、絶縁材料の比誘電率(ε)を低減することにより、信号伝搬の高速化が達成される。例えば、従来から、比誘電率が4.2程度のCVD法によって形成されるSiO2膜が層間絶縁膜の形成材料として用いられてきたが、デバイスの配線間容量を低減し、LSIの動作速度を向上させる観点から、更なる低誘電率を発現する材料が切望されている。
【0004】
これに対し、現在実用化されている低誘電率材料としては、比誘電率が3.5程度のCVD法で形成されるSiOF膜が挙げられる。また、比誘電率が2.5〜3.0である絶縁材料としては、有機SOG (Spin On Glass)、有機ポリマー等を例示できる。さらに、比誘電率が2.5以下の絶縁材料としては、膜中に空隙を有するポーラス材が有力と考えられており、LSIの層間絶縁膜に適用するための検討・開発が盛んに行われている。
【0005】
そのようなポーラス材の形成方法として、特開平11−322992号公報、特開平11−310411号公報等には、有機SOG材の低誘電率化が提案されている。この方法は、金属アルコキシシランの加水分解縮重合物と共に加熱することにより揮発又は分解する特性を有するポリマーを含む組成物から被膜を形成し、この被膜を加熱することによって空孔を形成するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らがかかる従来の方法について詳細に検討を行ったところ、このような従来方法では、最終加熱工程における有機SOGの縮合の際に、被膜に急激な応力が作用し、場合によっては下層の配線等の機能を損なうような大きな影響が生じるおそれがある。また、かかる従来方法では、被膜を最終硬化させる際の加熱温度が450℃以上と高く、且つ、その硬化に1時間程度の長時間を要する傾向にある。こうなると、入熱量(サーマルバジェット)が過度に増大し、下層のうち特に配線層の劣化が懸念される。また、入熱量の増加に伴って基板の反りが顕著となるといった問題も生じ得る。
【0007】
さらに、先述の如く、高集積化による配線の微細化が加速しており、デバイスを構成する各部材層の薄層化・多層化、及び配線層等の材料変更が進んでいる。これに対応すべく、入熱による各層の材料劣化の影響は今まで以上に大きくなると予想され、各プロセスでの熱負荷の低減による熱履歴の改善が急務となっている。
【0008】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、低誘電性に優れ、十分な機械強度を有するシリカ系被膜を得ることができると共に、そのシリカ系被膜を形成するのに、低温又は短時間で十分に硬化させることができ、しかも、被膜の急激な応力上昇を抑えることが可能なシリカ系被膜形成用組成物、それより得られるシリカ系被膜、及びその製造方法並びにそのシリカ系被膜を備える電子部品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、液状組成物からシリカ系被膜を形成する際の硬化挙動に着目し、且つ、組成物の材料成分及びその組成の観点から鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によるシリカ系被膜形成用組成物は、シロキサン樹脂を含有して成り、流動性を有し、且つ、基体上に塗布された膜状態において熱が印加されたときに硬化してシリカ系被膜が形成されるものであって、その膜状態における加熱温度に対するシリカ系被膜の応力の変化を示す曲線において、200〜400℃、好ましくは200〜350℃の温度領域に応力の極大値が存在するような硬化特性を有し、(a)成分:下記式(1);
R 1 n SiX 4-n …(1)、
(式中、R 1 は、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各R 1 は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい)で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、(b)成分:(a)成分を溶解可能な溶媒と、(c)成分:オニウム塩と、(d)成分:250〜500℃の加熱温度において熱分解又は揮発する熱分解揮発性化合物と、を含有して成り、(a)成分は、Si原子1モルに対する、H原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子、及びC原子から成る群より選ばれる少なくとも一種の原子の総含有割合が0.65モル以下のものであることを特徴とする。
また、本発明によるシリカ系被膜形成用組成物は、シロキサン樹脂を含有して成り、流動性を有し、且つ、基体上に塗布された膜状態において熱が印加されたときに硬化してシリカ系被膜が形成されるものであって、その膜状態における加熱温度に対するシリカ系被膜の応力の変化を示す曲線において、200〜400℃、好ましくは200〜350℃の温度領域に応力の極大値が存在するような硬化特性を有し、(a)成分:下記式(1);
R 1 n SiX 4-n …(1)、
(式中、R 1 は、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各R 1 は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい)で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、(b)成分:(a)成分を溶解可能な溶媒と、(c)成分:アンモニウム塩と、(d)成分:250〜500℃の加熱温度において熱分解又は揮発する熱分解揮発性化合物とを含有して成ることを特徴とする。
【0011】
ここで、上記「加熱温度に対するシリカ系被膜の応力の変化を示す曲線」とは、以下の方法により取得される「温度−応力曲線」を示す。
【0012】
[温度−応力曲線の取得方法]
(1)応力測定用のシリカ系被膜の形成
まず、所定のSiウエハ上に、シリカ系被膜形成用組成物を一定の厚さとなるように塗布して被膜を形成する。具体的には、外径5インチのSiウエハ(厚さ:625±25μm)のオリエンテーションフラットを基準とし、薄膜ストレス測定装置(KLA Tencor社製の装置、型式:FLX−2320)内の所定位置に収容し、周囲温度23℃±2℃、及び湿度40%±10%の雰囲気下で、このSiウエハの‘反り’の量(初期値)を計測しておく。
【0013】
次いで、この装置からSiウエハを取り出し、その上にスピンコート法でシリカ系被膜形成用組成物を塗布して被膜を形成する。その後、このSiウエハを所定の温度T℃のホットプレート条件で3分間加熱し、組成物に含まれる溶媒等を除去して硬化させ、シリカ系被膜を形成する。加熱終了後、そのシリカ系被膜の膜厚を測定する。次に、このSiウエハを、被膜形成前と同様にしてオリエンテーションフラットを基準として上記装置(FLX−2320)内の所定位置に収容し、そのSiウエハの‘反り’の量を計測する。このような加熱処理及び操作を、100℃〜300℃の範囲内の所定間隔(例えば50℃おき)の温度に対して実施する。
【0014】
また、別途、300℃で3分加熱処理して得たシリカ系被膜を、窒素(N2)ガス雰囲気下、温度400℃で30分間加熱し最終硬化させる。そして、得られたシリカ系被膜の膜厚を測定すると共に、上述した他のSiウエハと同様にしてSiウエハの‘反り’の量を計測する。
【0015】
得られたSiウエハの反りの初期値、各温度での加熱処理後の値、及び各温度でのシリカ系被膜の膜厚を用い、下記式(3);
【0016】
【数1】
で表される関係から、各加熱温度におけるシリカ系被膜の応力を算出する。
【0017】
式中、σはシリカ系被膜の応力(MPa)を示し、EはSiウエハのヤング率(dyn/cm2)を示し、bはSiウエハの厚さ(μm)を示し、νはSiウエハのポアソン比(−)を示し、lは‘反り’を求める際の表面粗さ計の走査距離(mm)を示し、dはシリカ系被膜の厚さ(μm)を示し、δはSiウエハの‘反り’の変位量(つまり‘反り’の初期値と加熱処理後の値との差の絶対値)(μm)を示す。
【0018】
そして、このようなシリカ系被膜の形成処理及び応力評価を5枚のSiウエハに対して行い、各加熱温度におけるシリカ系被膜の応力の平均値を求める。こうして得られた応力平均値(縦軸)を加熱温度(横軸)に対してプロットすることにより、温度−応力曲線を得る。なお、本発明における「応力」はその絶対値を意味するものとする。
【0019】
このようなシリカ系被膜形成用組成物は、ウエハ等の基板上に塗布された後、加熱によって硬化され、低誘電率を発現するシリカ系被膜(Low−k膜)が形成される。この際、加熱工程においては、組成物が加熱初期から後期にわたって徐々に硬化され、これに伴い応力が上昇し、最終硬化前の200〜400℃の温度領域、例えば300℃前後において極大値を示す。そして、より高い温度にて最終硬化されると、応力がその極大値よりも低減される。つまり、かかる熱印加による硬化履歴によってシリカ系被膜の応力が緩和される。
【0020】
このようなシリカ系被膜形成用組成物としては、具体的には、(a)成分:下記式(1);
R1 nSiX4-n …(1)、
(式中、R1は、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各R1は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい)で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、(b)成分:(a)成分を溶解可能な溶媒と、(c)成分:オニウム塩と、(d)成分:250〜500℃の加熱温度において熱分解又は揮発する熱分解揮発性化合物とを含有して成るものである。
【0021】
このような組成を有すると、加熱により硬化が進行するときに、(d)成分の熱分解又は揮発によって、膜中に微細孔が徐々に形成され、最終硬化時にその微細化及び形状の均一化が図られ得る。さらに、(c)成分であるオニウム塩の存在により、式(1)で表される化合物の脱水縮合反応が進み、Si−OH結合が減少することによってシロキサン結合の密度が高められる。加えて、空孔形成過程及びシロキサン結合の高密度化と最終加熱時のアニール効果とが複合的に作用して膜の応力緩和が生起され得る。ただし、作用はこれに限定されない。
【0022】
また、(a)成分が、Si原子1モルに対する、H原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子、及びC原子から成る群より選ばれる少なくとも一種の原子の総含有割合が好ましくは0.65モル以下、より好ましくは0.55以下、更に好ましくは0.50以下、特に好ましくは0.45以下のものである。また、この総含有割合の下限値は、0.20程度であることが望ましい。このようにすれば、シリカ系被膜の他の膜(層)への接着性及び機械強度の低下が抑制される。
【0023】
また、本発明によるシリカ系被膜は、本発明のシリカ系被膜形成用組成物をSiウエハ等の基体上に塗布し、塗布された被膜を加熱することにより形成される硬化膜から成るものである。
【0024】
また、シリカ系被膜の比誘電率が3.0未満であると好ましく、2.7以下であるとより好ましく、2.5以下であると更に好ましく、2.2以下であると極めて好ましい。このように、シリカ系被膜の比誘電率は、層間絶縁膜等の用いる観点から小さい程好ましいが、膜の機械強度の低下を防止する点において、下限値は1.5程度であることが望ましい。
【0025】
[比誘電率の測定方法]
ここで、本発明におけるシリカ系被膜の「比誘電率」とは、23℃±2℃、湿度40±10%の雰囲気下で測定された値をいい、Al金属とN型低抵抗率基板(Siウエハ)間の電荷容量の測定から求められる。具体的には、まず、比誘電率測定用のシリカ系被膜を形成する。例えば、N型低抵抗率Siウエハ(抵抗率<10Ωcm)上にスピンコート法でシリカ系被膜形成用組成物を、膜厚が0.5〜0.6μmとなるように塗布して被膜を形成する。次に、200℃に加熱したホットプレートで組成物中の溶媒を除去し、更に窒素(N2)ガス雰囲気下、400℃で30分加熱して最終硬化させてシリカ系被膜を形成する。
【0026】
次いで、このシリカ系被膜上に、真空蒸着装置でAl金属を直径2mmの円で、厚さ約0.1μmになるように真空蒸着する。これにより、絶縁膜がAl金属と低抵抗率基板との間に配置された構造が形成される。次に、この構造体の電荷容量を、LFインピーダンスアナライザー(横河電機社製:HP4192A)に誘電体テスト・フィクスチャー(横河電機製:HP16451B)を接続した装置を用い、使用周波数1MHzにて測定する。
【0027】
そして、電荷容量の測定値を下記式(4);
シリカ系被膜の比誘電率=3.597×10-2×電荷容量(pF)×被膜の膜厚(μm) …(4)、
に代入し、シリカ系被膜の比誘電率を算出する。
【0028】
ところで、前述の如く、本発明によるシリカ系被膜は、低誘電性に優れるものであるが、更なる低誘電率化を実現するには、例えば、組成物中の(d)成分の含有量を調整して膜中への微細孔の導入量を多くすることが有効である。しかし、このようにして微細孔の導入量を過度に増大させると、被膜の機械強度の低下を招来するおそれがあるので留意すべきである。この点において、微細孔が導入されていない状態で本来的に比誘電率が極力低い膜が得られる組成のシリカ系被膜形成用組成物を用いてシリカ系被膜を形成すると好適である。
【0029】
さらに、シリカ系被膜の弾性率が2.5GPa以上であると好ましく、3.0GPa以上であるとより好ましく、3.5GPa以上であると更に好ましく、4.0GPa以上であると特に好ましく、4.5GPa以上であると極めて好ましい。上限値は特に制限されないが、通常は30GPa程度である。この弾性率が2.5GPa未満であると、例えば、このシリカ系被膜を半導体絶縁膜として用いるときに、加工が困難となる等の不都合が生じる可能性がある。
【0030】
なお、弾性率を増大せしめるには、例えば、シロキサン樹脂中に含有する空孔の割合を減少させることが有効ではあるが、先に述べたように、比誘電率を低下させる観点からは、被膜中の空孔量を増大させることが有利であり、両者の兼ね合いを考慮することが望ましい。
【0031】
[弾性率の測定方法]
ここで、本発明におけるシリカ系被膜の「弾性率」とは、被膜の表面近傍における弾性率であり、MTS社製のナノインデンターDCMを用いて測定される値をいう。測定用のシリカ系被膜は、[比誘電率測定方法]で説明したのと同様にして作成したものを用いる。このとき、シリカ系被膜の膜厚が薄いと下地の影響を受けてしまうため、上述したように、最初の被膜厚さを0.5〜0.6μmとすることが好ましい。
【0032】
また、表面近傍とは、膜厚の1/10以内の深度、より具体的には膜表面から深さ15nm〜50nm位置をいう。さらに、測定においては、荷重と荷重速度とを、下記の式(5);
dL/dt×1/L=0.05(sec-1) …(5)
で表される関係を満たすように変動させる。式中、Lは荷重を示し、tは時間を示す。またさらに、押し込みを行う圧子には、バーコビッチ圧子(素材:ダイヤモンド)を用い、圧子の振幅周波数を45Hzに設定して測定する。
【0033】
また、本発明によるシリカ系被膜の製造方法は、本発明のシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布し、塗布された被膜を加熱して該被膜を硬化せしめることを特徴とする。
【0034】
さらに、本発明による電子部品(デバイス)は、素子構造が形成される基体上に絶縁膜が形成されたものであって、絶縁膜が、本発明のシリカ系被膜の製造方法により製造されたシリカ系被膜、又はそのシリカ系被膜を含むものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明によるシリカ系被膜形成用組成物は、上述の如く、シロキサン樹脂を含有して成り、流動性を有し、且つ、基体上に塗布された膜状態において熱が印加されたときに硬化してシリカ系被膜が形成されるものであって、前述の温度−応力曲線において、200〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは300℃前後の温度領域に応力の極大値が存在するような硬化特性を有するものである。
【0036】
よって、このようなシリカ系被膜形成用組成物は、応力の極大値を示す温度領域以下の温度で硬化が進行し、その極大値を示す温度よりも高温で最終硬化を行うと、応力が低減される。よって、得られるシリカ系被膜に急激な応力が作用することが防止される。また、このように応力の極大値を示す温度領域つまり250〜400℃以下で硬化が進行すると共に、応力の極大値を示す温度領域では、十分な硬化が完了すると考えられるので、最終的なより高温での熱処理を短時間で実施し得る。よって、組成物が塗布されるウエハ等の基体への入熱量を軽減できる。したがって、下地の配線層等への熱影響を低減できる。さらに、シリカ系被膜の応力が緩和されるので、他の層(膜)との接着性を向上させることも可能となる。
【0037】
このような本発明のシリカ系組成物の具体的な組成としては、例えば、以下の(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を必須成分として含むものが挙げられる。
【0038】
〈(a)成分〉
(a)成分は、下記式(1);
R1 nSiX4-n …(1)、
で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂である。ここで、式中、R1は、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各R1は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。
【0039】
加水分解性基Xとしては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらの中では、組成物自体の液状安定性や被膜塗布特性等の観点からアルコキシ基が好ましい。
【0040】
加水分解性基Xが、アルコキシ基である式(1)の化合物(アルコキシシラン)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等のテトラアルコキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0041】
また、加水分解性基Xが、ハロゲン原子(ハロゲン基)である式(1)の化合物(ハロゲン化シラン)としては、上記の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。さらに、加水分解性基Xが、アセトキシ基である式(1)の化合物(アセトキシシラン)としては、上記の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がアセトキシ基で置換されたものが挙げられる。またさらに、加水分解性基Xが、イソシアネート基である式(1)の化合物(イソシアネートシラン)としては、上記の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がイソシアネート基で置換されたものが挙げられる。さらにまた、加水分解性基Xが、ヒドロキシル基である式(1)の化合物(ヒドロキシシラン)としては、上記の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がヒドロキシル基で置換されたものが挙げられる。
【0042】
これら式(1)で表される化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0043】
また、式(1)で表される化合物の加水分解縮合において加水分解縮合反応を促進する触媒として、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、酒石酸、トリフルオロメタンスルフォン酸等の有機酸、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等の無機酸等を用いることができる。
【0044】
この触媒の使用量は、式(1)で表される化合物1モルに対して0.0001〜1モルの範囲が好ましい。この使用量が1モルを超える場合、加水分解縮合時にゲル化が促進される傾向があり、0.0001モル未満の場合、実質的に反応が進行しない傾向がある。
【0045】
さらに、この反応において、加水分解によって副生するアルコールを、必要に応じてエバポレータ等を用いて除去してもよい。またさらに、加水分解縮合反応系中に存在させる水の量を適宜決定することができるが、この水の量としては、式(1)で表される化合物1モルに対して0.5〜20モルの範囲内の値とすると好ましい。この水量が0.5モル未満の場合及び20モルを超える場合には、シリカ系被膜の成膜性が悪化すると共に、組成物自体の保存安定性が低下する場合がある。
【0046】
また、(a)成分としてのシロキサン樹脂は、溶媒への溶解性、機械特性、成形性等の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定され且つ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算された質量平均分子量が、500〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であるとより好ましい。この質量平均分子量が500未満であると、シリカ系被膜の成膜性が劣る傾向にある。一方、この質量平均分子量が20,000を超えると、溶媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0047】
さらに、シロキサン樹脂のケイ素1原子あたりに結合しているH原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子及びC原子から成る群より選ばれる少なくとも一種の原子(以下、「特定の結合原子」という)の総数(M)が0.65以下であることが好ましく、0.55以下であるとより好ましく、0.50以下であると特に好ましく、0.45以下であると極めて好ましい。また、その下限値としては0.20程度が好ましい。
【0048】
この特定の結合原子の総数(M)が、0.65を超える場合、最終的に得られるシリカ系被膜の他の膜(層)との接着性、機械強度等が劣る傾向がある。一方、この総数(M)が0.20未満であると、絶縁膜として用いたときの誘電特性が劣る傾向にある。また、シロキサン樹脂は、これらの特定の結合原子のなかでも、シリカ系被膜の成膜性の点で、H原子、F原子、N原子、Si原子、Ti原子及びC原子のうち少なくともいずれか一種を含むとより好ましく、それらのなかでも、誘電特性及び機械強度の点において、H原子、F原子、N原子、Si原子及びC原子のうち少なくともいずれか一種を含むと一層好ましい。
【0049】
なお、この総数(M)は、(a)成分であるシロキサン樹脂の仕込み量から求めることができ、例えば、下記式(6);
M=(M1+(M2/2)+(M3/3))/Msi …(6)
で表される関係を用いて算出できる。式中、M1は、特定の結合原子のうち単一の(ただ1つの)Si原子と結合している原子の総数を示し、M2は、特定の結合原子のうち2つのケイ素原子で共有されている原子の総数を示し、M3は、特定の結合原子のうち3つのケイ素原子で共有されている原子の総数を示し、Msiは、Si原子の総数を示す。
【0050】
〈(b)成分〉
(b)成分は、(a)成分すなわち前述のシロキサン樹脂を溶解可能な溶媒であり、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、γ−ブチロラクトン等のケトン系溶媒、エチルエーテル、iso−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド等の溶媒を例示できる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
この溶媒(つまり(b)成分)の使用量としては、(a)成分(シロキサン樹脂)の量が3〜25質量%となるような量とされることが好ましい。溶媒の量が過少で(a)成分の濃度が25質量%を超えると、シリカ系被膜の成膜性等が悪化すると共に、組成物自体の安定性が低下する傾向にある。これに対し、溶媒の量が過多で(a)成分の濃度が3質量%を下回ると、所望の膜厚を有するシリカ系被膜を形成し難くなる傾向にある。
【0052】
〈(c)成分〉
(c)成分は、オニウム塩であり、例えば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。これらのなかでは、組成物の安定性により優れる点でアンモニウム塩が好ましく、例えば、テトラメチルアンモニウムオキサイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムフロライド、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等が挙げられる。
【0053】
さらに、これらのなかでは、シリカ系被膜の電気特性を向上させる観点から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等のアンモニウム塩が特に好ましい。
【0054】
また、(c)成分であるオニウム塩の使用量は、シリカ系被膜形成用組成物の全量に対して0.001ppm〜5%であることが好ましく、0.01ppm〜1%であるとより好ましく、0.1ppm〜0.5%であると一層好ましい。この使用量が0.001ppm未満であると、最終的に得られるシリカ系被膜の電気特性、機械特性が劣る傾向にある。一方、この使用量が5%を超えると、組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向にあると共に、シリカ系被膜の電気特性及びプロセス適合性が低下する傾向にある。なお、これらのオニウム塩は、必要に応じて水や溶媒に溶解或いは希釈してから、所望の濃度となるように添加することができる。
【0055】
また、オニウム塩を水溶液とした場合、そのpHが1.5〜10であると好ましく、2〜8であるとより好ましく、3〜6であると特に好ましい。このpHが1.5を下回ると、或いは、pHが10を超えると、組成物の安定性、及び成膜性等が劣る傾向にある。
【0056】
〈(d)成分〉
(d)成分は、250〜500℃の加熱温度で熱分解又は揮発する熱分解揮発性化合物であり、例えば、ポリアルキレンオキサイド構造を有する重合体、(メタ)アクリレート系重合体、ポリエステル重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアンハイドライド重合体、テトラキスシラン類等が挙げられる。
【0057】
上記ポリアルキレンオキサイド構造としてはポリエチレンオキサイド構造、ポリプロピレンオキサイド構造、ポリテトラメチレンオキサイド構造、ポリブチレンオキサイド構造等を例示できる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩等のエーテルエステル型化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等のエーテルエステル型化合物等を挙げることができる。
【0058】
また、(メタ)アクリレート系重合体を構成するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル等を挙げることができる。
【0059】
アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等の炭素数1〜6のアルキルエステル等を例示できる。
【0060】
また、メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル等の炭素数1〜6のアルキルエステル等を例示できる。
【0061】
さらに、アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル等を例示でき、メタクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル等が挙げられる。
【0062】
ヒドロキシル基を有するアクリル酸及びメタクリル酸としては、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルプロピル等が挙げられる。(メタ)アクリレート系重合体を構成する(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
さらに、ポリエステルとしては、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物、ラクトンの開環重合物、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との重縮合物等を挙げることができる。
【0064】
またさらに、ポリカーボネートとしては、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリトリメチレンカーボネート、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等の炭酸とアルキレングリコールとの重縮合物等を挙げることができる。
【0065】
さらにまた、ポリアンハイドライドとしては、ポリマロニルオキシド、ポリアジポイルオキシド、ポリピメイルオキシド、ポリスベロイルオキシド、ポリアゼライルオキシド、ポリセバコイルオキシド等のジカルボン酸の重縮合物等を挙げることができる。
【0066】
加えて、テトラキスシラン類としては、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン等を挙げることができる。
【0067】
ここで、(d)成分である熱分解揮発性化合物が250℃を下回る温度で熱分解又は揮発するものであると、シロキサン骨格形成前に熱分解揮発してしまうため、所望の誘電特性が得られないおそれがある。一方、この熱分解揮発性化合物が500℃を超える温度で熱分解又は揮発するものであると、配線金属の劣化が生じるおそれがある。したがって、かかる温度範囲で熱分解又は揮発するものであれば、配線金属の劣化を抑えつつ、絶縁膜の誘電特性を調整し易くなる利点がある。
【0068】
なお、本発明のシリカ系被膜形成用組成物は、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含有しないことが望ましく、含まれる場合でも組成物中のそれらの金属イオン濃度が100ppb以下であると好ましく、20ppb以下であるとより好ましい。これらの金属イオン濃度が100ppbを超えると、組成物から得られるシリカ系被膜を有する半導体素子に金属イオンが流入し易くなってデバイス性能そのものに悪影響を及ぼすおそれがある。よって、必要に応じてイオン交換フィルター等を使用してアルカリ金属やアルカリ土類金属を組成物中から除去することが有効である。
【0069】
このようなシリカ系被膜形成用組成物は、後述するようにウエハ等の基板上に塗布された後、加熱、焼成によって硬化され、これにより、低誘電率を発現するシリカ系被膜(Low−k膜)が形成される。このとき、(d)成分の熱分解又は揮発によって、膜中に微細孔(空隙、空孔)が徐々に形成され、最終硬化時に空孔の更なる微細化及び形状の均一化が図られ得る。
【0070】
さらに、(c)成分であるオニウム塩を必須成分として含有するので、シリカ系被膜の機械強度及び電気的信頼性の向上が図られる。したがって、例えば後の工程においてCMPが施された場合、シリカ系被膜と他の層(膜)との界面において剥離が生じてしまうことを防止できる。かかる効果が奏される作用機構の詳細は、未だ不明な点があるものの、オニウム塩によって脱水縮合反応が促進されてシロキサン結合の密度が増加し、さらに残留するシラノール基が減少するため、機械強度及び誘電特性が向上されることが一因と推定される。
【0071】
そして、上記のような空孔形成過程、シロキサン結合の高密度化に加え、最終加熱時に奏され得るアニール効果が複合的に作用することによって、膜全体の応力緩和が引き起こされると考えられる。ただし、作用はこれらに限定されない。
【0072】
さらに、シロキサン樹脂における結合原子の総数が0.65以下とされることにより、更に十分な機械強度を実現でき、しかも他の膜(層)との十分な接着性が確保される。したがって、配線金属を積層したときに生じる余分なCu膜を研磨するCu−CMP工程における界面剥離の発生を一層防止できる。
【0073】
このような本発明のシリカ系被膜形成用組成物を用いて、基板上にシリカ系被膜を形成する方法について、一般にシリカ系被膜の成膜性及び膜均一性に優れるスピンコート法を例にとって説明する。まず、シリカ系被膜形成用組成物をSiウエハ等の基板上に好ましくは500〜5000回転/分、より好ましくは1000〜3000回転/分でスピン塗布して被膜を形成する。この際、回転数が500回転/分未満であると、膜均一性が悪化する傾向にある一方で、5000回転/分を超えると、成膜性が悪化するおそれがあるため好ましくない。
【0074】
次いで、好ましくは50〜300℃、より好ましくは100〜250℃でホットプレート等にて被膜中の溶媒を乾燥させる。この乾燥温度が50℃未満であると、溶媒の乾燥が十分に行われない傾向にある。一方、乾燥温度が300℃を超えると、被膜においてシロキサン骨格が形成される前にポーラス形成用の熱分解揮発性化合物((d)成分)が熱分解揮発してしまい、所望の機械強度及び低誘電特性を有するシリカ系被膜を得難くなるおそれがある。
【0075】
次に、溶媒が除去された被膜を好ましくは250〜500℃、より好ましくは250〜450℃、更に好ましくは250〜400℃の加熱温度で焼成して最終硬化を行う。最終硬化は、N2、Ar、He等の不活性雰囲気下で行うのが好ましく、この場合、酸素濃度が1000ppm以下であると好ましい。この加熱温度が250℃未満であると、十分な硬化が達成されない傾向にあると共に、(d)成分の分解・揮発を十分に促進できない傾向にある。これに対し、加熱温度が500℃を超えると、金属配線層がある場合に、入熱量が増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。
【0076】
また、この際の加熱時間は2〜60分が好ましく、2〜30分であるとより好ましい。この加熱時間が60分を超えると、入熱量が過度に増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。さらに、加熱装置としては、石英チューブ炉その他の炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール(RTA)等の加熱処理装置を用いることが好ましい。
【0077】
また、このようにして形成されるシリカ系被膜の膜厚は、0.01〜40μmであることが好ましく、0.1μm〜2.0μmであるとより好ましい。かかる膜厚が40μmを超えると、応力によってクラックが発生し易くなる一方で、0.01μm未満であると、シリカ系被膜の上下に金属配線層が存在する場合に、上下配線間のリーク特性が悪化する傾向がある。
【0078】
かかるシリカ系被膜を有する本発明の電子部品としては、半導体素子、多層配線板等の絶縁膜を有するデバイスが挙げられる。具体的には、半導体素子においては、表面保護膜(パッシベーション膜)、バッファーコート膜、層間絶縁膜等として使用することができる。一方、多層配線板においては、層間絶縁膜として好適に使用することができる。
【0079】
より具体的には、半導体素子として、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子等が挙げられる。また、多層配線板としては、MCM等の高密度配線板などが挙げられる。
【0080】
このような電子部品は、低誘電率を発現する本発明のシリカ系被膜を備えることにより、信号伝搬遅延時間の低減といった高性能化が図られると同時に高信頼性を達成できる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
〈合成例1〉
以下の手順により(d)成分である熱分解揮発性化合物を合成した。まず、1000mlのフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を300g仕込み、200mlの滴下ロートにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.0gを溶解させたメタクリル酸メチル95gと2−ヒドロキシエチルメタクリレート5gとを仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、窒素ガス雰囲気下、130℃のオイルバスで加熱攪拌しながら、滴下ロート内の溶液を2時間かけてフラスコ内に滴下した。
【0083】
次いで、30分間攪拌した後、滴下ロートにAIBN0.2gを溶解させたPGMEAを97.8g仕込み、1時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下後、更に2時間攪拌して、室温に戻し、溶液状の(d)成分である熱分解揮発性化合物を得た。
【0084】
GPC法によりこの質量平均分子量を測定したところ、10,700であった。さらに、溶液2gを金属シャーレに量り取り、150℃の乾燥機で3時間乾燥させることにより求めた熱分解揮発性化合物の濃度は13.6質量%であった。
【0085】
〈実施例1〉
テトラエトキシシラン116.7gとメチルトリエトキシシラン78.5gとをプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGP)339.8gに溶解させた溶液中に、70%硝酸0.92gを溶解させた水64.2gを攪拌下で30分かけて滴下した。滴下終了後5時間反応させ、ポリシロキサン溶液を得た。この溶液に、合成例1で得た熱分解揮発性化合物198.9gを添加し、ロータリーエバポ−レーターを用いた減圧下、温浴中で生成エタノール及び低沸点物質を留去して液状の600gのポリシロキサン/熱分解揮発性化合物を得た。次いで、この溶液に2.4%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液40.4gを添加して本発明のシリカ系被膜形成用組成物を調製した。
【0086】
〈温度−応力曲線の測定〉
(1)応力測定用サンプルウエハの製作
実施例1で得たシリカ系被膜形成用組成物を回転数1350rpm/30秒で複数のSiウエハ上にそれぞれ回転塗布して被膜を形成した。回転塗布後、Siウエハ毎に所定の条件で加熱し、被膜中の溶媒を除去してシリカ系被膜を形成した。このときの各Siウエハに対する加熱条件は、100℃/3分加熱、150℃/3分加熱、200℃/3分、250℃/3分加熱、300℃/3分加熱とした。また、別途製作した300℃/3分加熱によりシリカ系被膜を形成したSiウエハを、O2濃度が100ppm前後にコントロールされた石英チューブ炉で400℃/30分間かけてその被膜を最終硬化した。
【0087】
(2)膜厚測定
各サンプルウエハ上に形成されたシリカ系縁膜の膜厚を、エリプソメータ(ガートナー社製;エリプソメータL116B、使用波長:633nm)で測定した。具体的には、層間絶縁膜上にHe−Neレーザー光を照射し、指定波長における照射により生じた位相差から求められる膜厚を測定した。
【0088】
(3)応力評価
各サンプルウエハの‘反り’の量を上述した[温度−応力曲線の取得方法]に記載した方法及び手順に従って測定した。得られた‘反り’の変位量、上記の膜厚測定値、及びその他のパラメータ値を式(3)に代入しシリカ系被膜の応力を算出した。図1は、その算出結果をプロットしたグラフであり、実施例1で得たシリカ系被膜形成用組成物の温度−応力曲線を示すグラフである。なお、図中の黒四角のシンボルはプロット点を示し、曲線は各シンボルを結ぶように平滑化した(スムージングした)目安線である。
【0089】
〈比誘電率測定〉
上記〈温度−応力曲線の測定〉(1)で作製したサンプルウエハのうち400℃/30分で最終硬化したウエハ上のシリカ系被膜の比誘電率を、上述した[比誘電率の測定方法]に従って測定した。結果を膜厚と共に表1に示す。
【0090】
〈弾性率測定〉
上記〈温度−応力曲線の測定〉(1)で作製したサンプルウエハのうち400℃/30分で最終硬化したウエハ上のシリカ系被膜の弾性率を、上述した[弾性率の測定方法]に従って測定した。結果を表1に併記する。
【0091】
【表1】
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリカ系被膜形成用組成物、シリカ系被膜及びその製造方法によれば、低誘電性に優れると共に十分な機械強度を有するシリカ系被膜を得ることができる。また、その効果特性において、200〜350℃の加熱温度領域に被膜の応力の極大値が存在することから、従来に比して低温域で硬化し、よって、そのシリカ系被膜が形成される基体への入熱量を軽減できる。しかも、200〜350℃の加熱温度領域に被膜の応力の極大値が存在するが故に、最終硬化時に応力の低減を図ることが可能となる。よって、シリカ系被膜を形成する際に、被膜の急激な応力上昇を抑えることができる。よって、下層の配線等の機能を損なうことを抑止できる。
【0093】
また、本発明による電子部品は、かかるシリカ系被膜を有するので、デバイス全体の電気的信頼性を向上させることができ、製品生産の歩留まり及びプロセス裕度の向上を図ることが可能となる。さらに、シリカ系被膜の優れた特性により、高密度且つ高品位で信頼性に優れた電子部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得たシリカ系被膜形成用組成物の温度−応力曲線を示すグラフである。
Claims (8)
- シロキサン樹脂を含有して成り、流動性を有し、且つ、基体上に塗布された膜状態において熱が印加されたときに硬化してシリカ系被膜が形成されるシリカ系被膜形成用組成物であって、
前記膜状態における加熱温度に対する前記シリカ系被膜の応力の変化曲線において、200〜400℃の温度領域に前記応力の極大値が存在するような硬化特性を有し、
(a)成分:下記式(1);
R 1 n SiX 4-n …(1)、
(式中、R 1 は、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各R 1 は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい)、
で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、
(b)成分:前記(a)成分を溶解可能な溶媒と、
(c)成分:オニウム塩と、
(d)成分:250〜500℃の加熱温度において熱分解又は揮発する熱分解揮発性化合物と、
を含有して成り、
前記(a)成分は、Si原子1モルに対する、H原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子、及びC原子から成る群より選ばれる少なくとも一種の原子の総含有割合が0.65モル以下のものである、シリカ系被膜形成用組成物。 - シロキサン樹脂を含有して成り、流動性を有し、且つ、基体上に塗布された膜状態において熱が印加されたときに硬化してシリカ系被膜が形成されるシリカ系被膜形成用組成物であって、
前記膜状態における加熱温度に対する前記シリカ系被膜の応力の変化曲線において、200〜400℃の温度領域に前記応力の極大値が存在するような硬化特性を有し、
(a)成分:下記式(1);
R1 nSiX4-n …(1)、
(式中、R1は、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各R1は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい)、
で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、
(b)成分:前記(a)成分を溶解可能な溶媒と、
(c)成分:アンモニウム塩と、
(d)成分:250〜500℃の加熱温度において熱分解又は揮発する熱分解揮発性化合物と、
を含有して成るシリカ系被膜形成用組成物。 - 前記(c)成分は、テトラメチルアンモニウムオキサイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムフロライド、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩及びテトラメチルアンモニウム硫酸塩から成る群より選ばれるものである、請求項2記載のシリカ系皮膜形成用組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物を基体上に塗布し、塗布された被膜を加熱することにより形成される硬化膜から成るシリカ系被膜。
- 比誘電率が3.0未満である請求項4記載のシリカ系被膜。
- 弾性率が2.5GPa以上である請求項4記載のシリカ系被膜。
- 請求項1又は2に記載のシリカ系被膜形成用組成物を基体上に塗布し、塗布された被膜を加熱して該被膜を硬化せしめるシリカ系被膜の製造方法。
- 素子構造が形成される基体上に絶縁膜が形成された電子部品であって、
前記絶縁膜が、請求項4記載のシリカ系被膜の製造方法により製造されたシリカ系被膜を含むものである、ことを特徴とする電子部品。
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