JP3966015B2 - 放射線遮蔽部材および放射線画像記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線を遮蔽する放射線遮蔽部材とこの放射線遮蔽部材を備えた放射線画像記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、X線画像に代表される放射線画像が病気診断用などに広く用いられている。この放射線画像を得るための方式としては、被写体を透過させた放射線を増感紙と呼ばれる蛍光体層に照射し、この蛍光体層から放出された可視光をハロゲン化銀写真感光材料に照射し、この感光材料に現像処理を施して可視画像を得る、いわゆる放射線写真方式が提案され、実用化されている。
【0003】
また、近年においては、前記した放射線写真方式に代えて、照射されたX線エネルギーを蓄積し、励起光を照射すると蓄積されたX線エネルギーに応じて輝尽発光する「輝尽性蛍光体」を用いた放射線画像記録再生方式が提案されている。
【0004】
この放射線画像記録再生方式で使用される輝尽性蛍光体は、一般にシート状の支持体に積層され、放射線撮影用カセッテに収納されて取り扱われることが多い。また、放射線写真方式において使用されるいわゆるX線写真フィルムも同様に放射線撮影用カセッテに収納されて取り扱われることが多い。
【0005】
カセッテは、上記の輝尽性蛍光体シートやX線写真フィルム等の放射線画像記録層を一枚ずつ収納するものであり、放射線画像記録層はこのカセッテに収納された状態で放射線画像撮影に供される。
また、カセッテの放射線照射面と反対側には放射線線吸収率の高い鉛等の金属からなる放射線遮蔽部材が設けられ、輝尽性蛍光体シートやX線写真フィルム等を透過したX線がカセッテの外部に漏洩しないようにされていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、X線は物質中を通過(あるいは透過)する際に、通過する距離が増大するとX線強度は弱くなる。つまり、放射線吸収率の高い鉛等からなる放射線遮蔽部材については、鉛層の厚みを大きくすることによってX線の吸収量が増大することになる。このため、X線を外部に漏洩しないようにするには放射線遮蔽部材の厚みを大きくし、放射線遮蔽部材が一定量以上の放射線を吸収することが求められる。
【0007】
一方、X線は物質によって散乱されて散乱線を放出する。このX線が散乱する確率は物質の厚みとともに増大する。したがって、放射線遮蔽部材の厚みを大きくすることによって散乱線も発生しやすくなる。散乱線は、被写体を透過した放射線と比較すると低エネルギーであるが、散乱線が蛍光体層もしくは輝尽性蛍光体層に入射されると、蛍光体層もしくは輝尽性蛍光体層はこの散乱線についても反応し、被写体の放射線画像に散乱線がノイズとして映し出される場合があった。特に輝尽性蛍光体は感度が極めて高いため、輝尽性蛍光体層の後方で発生する散乱線(後方散乱線)によって正確な画像情報の蓄積が妨げられる可能性があった。
本発明の課題は、一定量以上の放射線を吸収するとともに散乱線の放射線画像記録媒体への影響を除去し、放射線線画像等の放射線画像の画質を格段に向上させることのできる放射線遮蔽部材および放射線画像記録媒体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、放射線を吸収する放射線遮蔽部材であって、放射線を吸収する金属からなる金属層が、少なくとも2層積層され、前記金属層の厚みは50μm以下であり、放射線が照射される側に配置される金属層は柱状構造を有する銅から構成されるものであることを特徴とする。
【0009】
ここで照射された放射線を吸収する金属としては、例えば、鉛、銅、ニッケル、鉄などを挙げることができ、原子番号が20以上の金属を用いることができる。また、金属層は1種の金属から構成されていても良いし、2種以上の金属からなる合金によって構成されていてもよい。
また、金属層の厚みを50μm以下に製作するには、金属条を多段圧延機で圧延する圧延法などを採用することができる。
また、柱状構造を有する銅から構成される金属層は、電解液法によって製作することができる。また、電解液法とは、電解液に溶解させた銅を回転ドラムに電着させ、回転ドラムから銅を剥離することによって製作することができる。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、放射線遮蔽部材は放射線を吸収する金属からなる金属層が少なくとも2層積層されている。放射線遮蔽部材が吸収すべき放射線の量は、少なくとも2層の金属層によって達成すればよい。このため、それぞれの金属層の厚みを薄くすることができる。このため、放射線が照射される側に配置される金属層での放射線の散乱を低減することができる。
【0011】
また、照射された放射線が、前記放射線が照射される側に配置される金属層を通過しても、この放射線は、次に配置される金属層に入射して吸収される。また、この次に配置される金属層によって放射線が散乱しても、生じた散乱線は、前記の放射線が照射される側に配置される金属層の裏面に吸収される。このため、50μm以下の薄さの金属層を少なくとも2層積層することによって、必要とされる放射線の吸収量を満たし、かつ、金属層を薄くすることができる。よって、放射線の散乱を低減することができ、散乱線の発生量を減少させることができる。
【0012】
また、この放射線遮蔽部材を、蛍光体層や輝尽性蛍光体層を備えた放射線画像記録層の放射線が照射される面と反対側に配置することによって、放射線の漏洩を防止するとともに、後方散乱線による放射線画像記録層への影響を除去することができ、放射線画像の画質の格段の向上を図ることができる。
【0013】
また、放射線が照射される側に配置される金属層は、柱状構造を有する銅箔から構成されている。このため、この放射線が照射される側に配置される金属層に入射する放射線のうち、柱状方向に平行に入射する放射線はこの放射線が照射される側に配置される金属層を通過し、柱状方向と交差する方向に入射する放射線はこの金属層に吸収される。したがって、柱状方向に平行な放射線はこの放射線が照射される側に配置される金属層によって散乱されることがない。したがって、放射線が照射される側に配置される金属層による散乱線の発生を防ぐことができる。
【0014】
また、放射線が照射される側に配置される金属層は柱状構造を有しているため、その表面に凹凸を備えている。このため、放射線が照射される側に配置される金属層に柱状方向と交差する方向に入射する放射線によって散乱線が発生したとしても、この散乱線は、柱状構造に形成された凹凸のため、再び放射線が照射される側に配置される金属層に吸収される。よって、散乱線を除去することができる。
【0015】
またこの柱状構造を有し、放射線が照射される側に配置される金属層を通過した放射線は、次に設けられた金属層に吸収される。また、この金属層によって放射線が散乱したとしても、前記放射線が照射される側に配置される金属層の裏面に吸収される。
したがって、以上のことより、必要とされる放射線の吸収量を満たした上で、散乱線の発生を低減することができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の放射線遮蔽部材において、放射線が照射される側に配置される金属層の厚みが30μm以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、放射線が照射される側に配置される金属層の厚みを請求項1と比較するとさらに薄くできるので、放射線が照射される側に配置される金属層による散乱線の発生量をさらに少なくすることができる。
また、この放射線が照射される側に配置される金属層を通過した放射線は、次に設けられる金属層に吸収されるので必要とされる放射線の吸収量を満たすことができる。
【0030】
請求項3記載の発明は、被写体を透過した放射線が照射されることによって被写体の放射線画像を記録する放射線画像記録層を備えた放射線画像記録媒体であって、前記放射線画像記録層の放射線が照射される面と反対側に、請求項1〜2のいずれかに記載の放射線遮蔽部材が備えられたことを特徴とする。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、請求項1〜2のいずれかに記載の放射線遮蔽部材が、放射線画像を記録する放射線画像記録層の放射線が照射される面と反対側に配置されているので、放射線画像記録層を透過した放射線を吸収するとともに、放射線画像記録層側への散乱線(後方散乱線)の発生を防ぐことができる。よって、放射線画像記録層にこの後方散乱線が記録されることを防ぎ、後方散乱線の影響を除去することができる。よって、放射線画像の画質の格段の向上を図ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明のX線遮蔽部材(放射線遮蔽部材)およびこのX線遮蔽部材を備えたX線画像記録媒体(放射線画像記録媒体)にかかる第一の実施の形態から第三の実施の形態についてそれぞれ詳細に説明する。
また、第一の実施の形態から第三の実施の形態において、X線画像記録媒体を、被写体を透過させたX線を輝尽性蛍光体シート(X線画像記録層)に照射して画像情報を蓄積させる放射線画像情報記録再生方式において使用されるカセッテとして説明することとする。
【0033】
〈第一の実施の形態〉
以下、図1および図2を参照して本発明の第一の実施の形態について説明する。
まず、X線画像記録媒体としてのカセッテ10について説明する。カセッテ10は、平面形状が長方形状を呈するものであり、図2に示すように、ケーシング11、スライド板12、および上述した輝尽性蛍光体シート20、X線遮蔽部材50とを備えている。
【0034】
ケーシング11は、輝尽性蛍光体シート20を収納する収納部11aを備え、撮影時や搬送時において輝尽性蛍光体シート20が損傷するのを防止するとともに、撮影後に輝尽性蛍光体シート20に光が照射されることにより、蓄積された画像情報が消滅するのを防止するものである。
【0035】
また、X線撮影は、この収納部11aに輝尽性蛍光体シート20を収納した上で、被写体30およびケーシング11の前面板11bを透過させたX線を輝尽性蛍光体シート20に照射して行う(図2参照)。このため、ケーシング11の前面板11bは被写体30を透過したX線が輝尽性蛍光体シート20に照射されるのを阻害しないように、X線透過率が高い材料で製作するのが好ましく、同様の理由から、この前面板11bの厚さは1〜5mm程度とするのが好ましい。
【0036】
また、ケーシング11は輝尽性蛍光体シート20の物理的損傷を防止する目的で、剛性の高い材料で製作されるのが好ましい。したがって、本実施の形態においては、X線透過率が高く、かつ、剛性の高い材料である炭素繊維強化樹脂により前面板11bを構成している。
【0037】
スライド板12は、図2に示すように、一方の面(ケーシング11の前面板11b側に配置される面)に後述する輝尽性蛍光体シート20を固定した状態で、ケーシング11の収納部11a内に収納されるものである。本実施の形態においては、ケーシング11の側面内側にガイド溝11cを設け、このガイド溝11cにスライド板12の端部12aを摺動可能に嵌合させることによって、スライド板12がケーシング11に対して引出・収納可能とされている。
【0038】
また、スライド板12の材料は、輝尽性蛍光体シート20の物理的損傷を防止できる程度の剛性を有するものであればいかなるものでもよく、各種金属、合成樹脂、繊維強化樹脂などをあげることができる。
【0039】
輝尽性蛍光体シート20は、図2に示すように、シート状支持体21に輝尽性蛍光体22を積層したもので、輝尽性蛍光体22は照射されたX線エネルギーを蓄積し、励起光が照射されると、蓄積されたX線エネルギーに応じて輝尽発光するものである。
【0040】
輝尽性蛍光体22としては、米国特許第3859527号に記載されている希土類付活硫化ストロンチウム系または希土類付活ランタンオキシサルファイド系蛍光体、米国特許第4236078号に記載されている希土類付活アルカリ土類金属フルオロハライド系蛍光体、特開昭55−12144号公報に記載されている希土類付活ランタンオキシハライド系蛍光体、特開昭55−12142号公報に記載されている銅および/または鉛付活硫化亜鉛系、希土類付活アルミナ・酸化バリウム系またはシリカ・酸化アルカリ土類金属系蛍光体などをあげることができる。
【0041】
また、輝尽性蛍光体シート20は、図示していない固定手段によりスライド板12に一時的に固定され、スライド板12のスライド動作に伴ってケーシング11の収納部11a内に収納される。輝尽性蛍光体シート20の厚さは蓄積するX線量、輝尽性蛍光体22の種類、ケーシング11の収納部11aの高さなどに応じて適宜決めることができる。なお、本実施の形態においては、固定手段としてX線を吸収する鉛箔を内在させた両面テープ(図示略)を採用している。
【0042】
X線遮蔽部材50は、図2に示すように、ケーシング11の後面板11dの裏面(すなわち輝尽性蛍光体シート20のX線照射面とは反対側であって、スライド板12と後面板11dとの間)に図示しない固定手段によって固定されている。
【0043】
X線遮蔽部材50は、X線の吸収率の高い鉛箔からなる金属層51、52と、X線の吸収率の低くX線を透過させやすい高いアルミニウム、紙、木あるいは高分子材料からなる低X線吸収層60とを備えている。また、金属層51、52は低X線吸収層60を介して2層積層されている。
【0044】
2層積層された金属層51、52のうち、輝尽性蛍光体シート20に近い側に配置される金属層51、すなわち、X線が照射される側に配置される金属層(以下、第一の金属層51という)の表面には、図2に示すように輝尽性蛍光体シート20側に突出している凸条部51aが互いに隣接して複数設けられている。このため、断面視において鉛箔の表面は鋸の歯状の凹凸が形成されている(図2(a)参照)。
【0045】
この第一の金属層51および、後面板11d側に配置される金属層52(以下、第二の金属層52という)の厚さは、吸収するX線量に応じて適宜決めることができるが、50μm以下であると望ましい。また、低X線吸収層60の厚みは50μm以上であると望ましい。
【0046】
第一の実施の形態によれば、X線遮蔽部材50の第一の金属層51は放射線を吸収しやすい鉛箔から構成され、その表面には複数の凸条部51aが互いに隣接して設けられ、表面全面に凹凸が形成されている。この第一の金属層51に入射した放射線は第一の金属層51に吸収されるとともに、一部散乱されて散乱線を放出する。この時、第一の金属層51の表面には凹凸が形成されているので、散乱線は様々な方向に散乱し、隣接する凸条部51aに再び入射する。よって、第一の金属層51の表面で散乱した散乱線を金属層51の表面に形成された凸条部51aによってその大部分を吸収することができる。
【0047】
さらに、第一の金属層51の表面に複数の凸条部51aが隣接して設けられることによって、X線が入射する第一の金属層51の表面積がX線の投影面積に比べると大きくなる。このため、第一の金属層51においてX線を吸収する面積が拡大し、X線が吸収されやすくなる。したがって、表面に凹凸を備えた第一の金属層51は、その表面に凹凸を備えず第一の金属層51の厚みと等しい金属層と比較すると放射線の吸収量が多くなる。したがって、表面に凹凸のないX線遮蔽部材と比較すると、本実施の形態におけるX線遮蔽部材50はその厚みを薄くすることができる。よって、散乱線の発生を低減することができる。
【0048】
また、第一の金属層51と第二の金属層52とが低X線吸収層60を介して積層されている。そして、第一の金属層51に入射したX線が第一の金属層51を透過したとしても、このX線は第二の金属層52に入射し吸収される。また、第一の金属層51を通過したX線が、第二の金属層52によって散乱したとしても、この散乱線は低X線吸収層60を透過し第一の金属層51の裏面において吸収される。
したがって、第一の金属層51と第二の金属層52とによって必要とされるX線の吸収量を満たせばよいので、それぞれの金属層51、52の厚みを薄くすることができる。このため、第一の金属層51による散乱線の発生を低減することができる。
【0049】
また、このX線遮蔽部材50は輝尽性蛍光体シート20のX線が照射される面と反対側に配置されているので、輝尽性蛍光体シート20等を透過したX線を外部に漏洩しないとともに、輝尽性蛍光体シート20への後方で発生する後方散乱線の影響を除去し、X線画像の画質を格段に向上させることができる。
【0050】
〈第二の実施の形態〉
次に図1および図3を参照して、本発明のX線遮蔽部材70と、このX線遮蔽部材70を備えたX線画像記録媒体(カセッテ)10にかかる第二の実施の形態について説明する。なお、上述の第一の実施の形態と同様の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略し、特徴のある部分について述べる。
【0051】
本第二の実施の形態において、図3に示すX線遮蔽部材70は、第一の実施の形態と同様に、ケーシング11の後面板11dの裏面に固定されている。
X線遮蔽部材70は鉛箔からなる金属層71、72、73と、X線吸収率の低いアルミニウム、紙、木、合成樹脂などからなる低X線吸収層60とを備え、金属層71、72、73はこの低X線吸収層60を介して3層積層されている。
【0052】
図3に示すように、3層積層された金属層71、72、73のうち、輝尽性蛍光体シート20側に配置される鉛箔、すなわちX線が照射される側に配置される金属層71(以下、第一の金属層71という)には、その表面に複数の孔71aが互いに均一な間隔で表面積の30%以上に形成されている。
またそれぞれの金属層71、72、73の厚みは10μmであり、金属層71、72、73の間に設けられる低X線吸収層60の厚みはそれぞれ50μmとなっている。
【0053】
第二の実施の形態によれば、第一の金属層71に入射する放射線のうち、第一の金属層71に形成された孔71aに入射したX線は、第一の金属層71に吸収されたり散乱されることなくそのまま低X線吸収層60に入射する。したがって、第一の金属層71における散乱線の発生を低減することができる。
【0054】
また、この第一の金属層71を通過した放射線は、低X線吸収層60内を透過し、次の金属層72(以下、第二の金属層72という)に入射し吸収される。この時、第一の金属層71を通過したX線が第二の金属層72によって散乱されたとしても、この散乱線は第一の金属層71の裏面によって吸収することができる。
また、さらにX線がこの第二の金属層72を通過したとしても、X線はケーシング11の後面板11dの裏面側に配置された金属層73(以下、第三の金属層73という)によって吸収される。また、この第三の金属層73によって散乱線が生じても、上述したように、散乱線は第二の金属層72の裏面によって吸収される。
【0055】
また、X線遮蔽部材70において、金属層71、72、73を低X線吸収層60を介して3層積層することによって必要とされるX線吸収量を満たせばよいので、各層71、72、73の厚みを薄くすることができる。よって、第一の金属層71による散乱線の発生を低減することができる。また、第一の金属層71を他の金属層72、73と比較してさらに薄く構成することもできる。
【0056】
また、このX線遮蔽部材70は、輝尽性蛍光体シート20のX線が照射される面と反対側に配置されているので、輝尽性蛍光体シート20への後方で発生する後方散乱線による影響を除去することができX線画像の画質を格段に向上させることができる。
【0057】
〈第三の実施の形態〉
次に図1、図4〜図6を参照して、本発明のX線遮蔽部材80とこのX線遮蔽部材80を備えたX線画像記録媒体(カセッテ)10にかかる第三の実施の形態について説明する。なお、上述の第一の実施の形態および第二の実施の形態と同様の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略し、特徴のある部分について述べる。
【0058】
本第三の実施の形態において、図4に示すX線遮蔽部材80は、第一の実施の形態および第二の実施の形態と同様に、ケーシング11の後面板11dの裏面に固定されている。
また、X線遮蔽部材80は第二の実施の形態におけるX線遮蔽部材70の表面に孔71aが形成された鉛箔からなる第一の金属層71(図3参照)を、銅箔からなる第一の金属層81に代えたものであり、X線吸収率の低いアルミニウム、紙、木、合成樹脂などからなる低X線吸収層60と、鉛箔からなる第二の金属層82および第三の金属層83とを備えている。
【0059】
第一の金属層81はX線が照射される側に配置され、この第一の金属層81と第二の金属層82、第三の金属層83はそれぞれ低X線吸収層60を介して積層されている。また、第一の金属層81の厚みは10μmであり、第二の金属層82および第三の金属層83の厚みはそれぞれ30μm、低X線吸収層60の厚みは50μmとなっている。
【0060】
第一の金属層81は、上記したように銅箔から構成されている。この銅箔は、電解液法により製作されたものである。電解液法とは、図4に示すように、電解液100から回転ドラム110に電着させた銅を剥離させて巻き取る方法であり、このように製作された銅箔からなる第一の金属層81は図5にその断面を示すように柱状構造81aを有している。
【0061】
第三の実施の形態によれば、第一の金属層81は柱状構造81aを有する銅箔から構成されている。このため、第一の金属層81に入射するX線のうち、柱状方向に交差するX線は吸収するが、柱状方向に平行なX線は透過させる。上述のように、散乱線は金属層81に放射線が入射し、放射線が金属層81によって散乱することによって生じる。このため、第一の金属層81に柱状方向に平行に入射するX線は散乱せず、第一の金属層81による散乱線の発生を低減することができる。
【0062】
さらに、第一の金属層81を透過したX線は、低X線吸収層60を透過して、第二の金属層82に吸収される。また、第一の金属層81を透過したX線が第二の金属層82に入射することによって散乱したとしても、この散乱線は第一の金属層81の裏面によって吸収される。
さらに、第二の金属層82をX線が透過したとしても、このX線は第三の金属層83に吸収される。また、第三の金属層83によって発生した散乱線は第二の金属層82の裏面によって吸収される。
【0063】
よって、以上より、金属層81、82、83を3層積層することによって必要とされるX線の吸収量を満たせばよいので、それぞれの金属層81、82、83の厚みを薄くすることができる。本実施の形態においては、第一の金属層81の厚みを第二及び第三の金属層82、83の厚みよりもさらに薄くしている。このため、第一の金属層81によって発生する散乱線の量をさらに低減することができる。
【0064】
また、このX線遮蔽部材80が、輝尽性蛍光体シート20のX線照射面と反対側に設けられているので、輝尽性蛍光体シート20への後方散乱線による影響を除去することができ、X線画像の画質を格段に向上させることができる。
【0065】
なお、本発明は上記第一の実施の形態から第三の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
【0066】
例えば、第一の実施の形態において、第一の金属層51の表面に複数の凸条部51aを互いに隣接させて設けるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、格子状に凸部と凹部とを配置するようにしてもよいし、第一の金属層51の表面積がX線の第一の金属層51への投影面積よりも大きくなるようになればそれでよい。
また、第一の実施の形態において、表面に凹凸を備えた第一の金属層51を、低X線吸収層60を介して他の金属層51と積層するものとしたがこれに限定されるものではなく、第一の金属層51によってのみX線遮蔽部材50を構成するものとしてもよい。
【0067】
また、第二の実施の形態において、第一の金属層71に孔71aを設けるものとしたが、孔71aの径は2mm以下であればどのような大きさであってもよい。
また、設ける孔71aの数は、特に限定されるものではないが、第一の金属層71の表面積の30%以上に設けられ、孔71aが互いに均一な間隔で設けられているとよい。
また、その断面形状は特に限定されるものではない。
【0068】
また、第二の実施の形態および第三の実施の形態において、それぞれ金属層71〜73、81〜83を低X線吸収層60を介して3層積層させるものとしたが、これに限定されるものではない。金属層71〜73、81〜83は少なくとも2層積層されるものとすれば、何層積層されていてもよい。
【0069】
また、第一の実施の形態から第三の実施の形態において、金属層51、52、71〜73、81〜83の厚みは50μm以下、10μmあるいは30μmであるとしたがこれに限定されるものではない。
それぞれの金属層51、52、71〜73、81〜83の厚みは、50μm以下であり積層されることよって吸収される放射線の量の合計が必要とされる放射線の吸収量を満たすことができれば、適宜変更可能である。
【0070】
また、低X線吸収層60の厚みは50μmであるとしたがこれに限定されるものではなく、50μm以上の厚みを有するものであればよい。
【0071】
また、第一の実施の形態および第二の実施の形態において、X線を吸収する金属層51、52、61〜63は鉛箔から構成されるものとしたがこれに限定されるものではない。また、第三の実施の形態においては第二の金属層82および第三の金属層83が鉛箔から形成されるものとしたがこれに限定されるものではない。
【0072】
それぞれの金属層51、52、71〜73、81〜83は、放射線の吸収率の高い金属あるいは物質から構成されればよく、例えば原子番号20以上の金属あるいは、実効原子番号20以上の合金から構成されるものであればよく、また、それぞれの金属層51、52、71〜73、81〜83がそれぞれ違う金属から構成されるものとしてもよい。
なお、ここで実効原子番号20以上の合金とは、合金を構成する各金属の原子番号をモル比に基づいて平均化した時の原子番号を意味する。例えば、コバルト(Co、原子番号27)と銅(Cu、原子番号29)から構成される合金において、コバルトと銅とのモル比が1:1である場合、実効原子番号は28となる。
【0073】
また、第一の実施の形態から第三の実施の形態において、X線遮蔽部材50、70、80はそれぞれ第一の金属層51、61、71に凸条部51aを備えるものとしたり、孔71aを備えるものとしたり、柱状構造81aを備えるものとしたが、特にこれら51a、71a、81aを備えないものとしてもよい。
【0074】
また、第一の実施の形態から第三の実施の形態において、X線遮蔽部材50、70、80は輝尽性蛍光体シート20のX線照射面とは反対側に配置されるものとし、カセッテ10の後面板11dの裏面に設けられるものとしたがこれに限定されるものではない。
例えば、従来公知のX線写真フィルムが収納されるカセッテに設けて、X線写真フィルムの蛍光体層のX線照射面と反対側にこれのX線遮蔽部材50、70、80を配置させるものとしてもよい。
【0075】
また、これらのX線遮蔽部材50、70、80をX線撮影が行われるX線撮影室内部の壁面に設けて、X線を吸収させるとともに、X線が壁面に入射することによって生じる散乱線の発生を防ぐこととしてもよい。さらに、X線ではなく、他のα線、β線、γ線、紫外線、電子線等の放射線を吸収し、放射線の散乱を防ぐための部材としても使用してもよく、放射線測定機器の内部にこのX線遮蔽部材50を設けるものとしてもよい。
【0076】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、放射線遮蔽部材は放射線を吸収する金属からなる金属層が少なくとも2層積層されている。したがって、少なくとも2層の金属層によって必要とされる放射線吸収量を満たせばよいので、それぞれの金属層を薄くすることができる。よって、放射線が照射される側に配置される金属層での散乱線の発生を低減することができる。
【0077】
また、この放射線遮蔽部材を放射線画像記録媒体の放射線が照射される面と反対側に配置することによって、外部への放射線の漏洩を防ぎ、後方散乱線の放射線画像記録媒体への影響を除去し、放射線画像の画質を格段に向上することができる。
【0078】
また、前記放射線が照射される側に配置される金属層は、柱状構造を有する銅箔から構成されている。このため、この放射線が照射される側に配置される金属層に入射する放射線のうち、柱状方向に平行な放射線はこの金属層を通過し、柱状方向と交差する方向に入射する放射線はこの金属層に吸収される。
したがって、柱状方向に平行な放射線はこの放射線が照射される側に配置される金属層によって散乱されることがなく、放射線が照射される側に配置される金属層での散乱線の発生を防ぐことができる。
【0080】
請求項2記載の発明によれば、請求項1と同様の効果が得られるのは勿論のこと、放射線が照射される側に配置される金属層の厚みを請求項1と比較するとさらに薄くすることができる。このため、放射線が照射される側に配置される金属層による散乱線の発生量をさらに少なくすることができる。
また、この放射線が照射される側に配置される金属層を通過した放射線は、次に設けられる金属層に吸収されるので必要とされる放射線の吸収量を満たすことができる。
【0083】
請求項3記載の発明によれば、請求項1〜2のいずれかに記載の放射線遮蔽部材が、放射線画像を記録する放射線画像記録層の放射線が照射される面と反対側に配置されているので、放射線画像記録層を透過した放射線を吸収するとともに、放射線画像記録層側への散乱線(後方散乱線)の発生を防ぐことができる。よって、放射線画像記録層にこの後方散乱線が記録されることを防ぎ、後方散乱線の影響を除去することができる。よって、放射線画像の画質の格段の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態にかかる放射線遮蔽部材が収納されるカセッテを示した概略斜視図である。
【図2】図1におけるA−A矢視断面図(a)と本発明の第一の実施の形態にかかる放射線遮蔽部材を示した概略斜視図(b)である。
【図3】本発明の第二の実施の形態にかかる放射線遮蔽部材を示した概略斜視図(a)と、その断面図(b)である。
【図4】本発明の第三の実施の形態にかかる放射線遮蔽部材を示した概略斜視図である。
【図5】本発明の第三の実施の形態にかかる放射線遮蔽部材の一構成要素としての金属層の製作方法(電解液法)を説明するための概念図である。
【図6】本発明の第三の実施の形態にかかる金属層の柱状構造を示すための拡大断面図である。
【符号の説明】
10 放射線画像記録媒体(X線画像記録媒体、カセッテ)
20 放射線画像記録層(輝尽性蛍光体シート)
30 被写体
50、70、80 放射線遮蔽部材
51、71、81 放射線が照射される側に配置される金属層(第一の金属層)
51、52、71〜73、81〜83 金属層
60 低放射線吸収層
71a 孔
81a 柱状構造
Claims (3)
- 放射線を遮蔽する放射線遮蔽部材であって、
放射線を吸収する金属からなる金属層が、少なくとも2層積層され、
前記金属層の厚みは50μm以下であり、
放射線が照射される側に配置される金属層は柱状構造を有する銅から構成されるものであることを特徴とする放射線遮蔽部材。 - 請求項1記載の放射線遮蔽部材において、
放射線が照射される側に配置される金属層の厚みが30μm以下であることを特徴とする放射線遮蔽部材。 - 被写体を透過した放射線が照射されることによって被写体の放射線画像を記録する放射線画像記録層を備えた放射線画像記録媒体であって、
前記放射線画像記録層の放射線が照射される面と反対側に、請求項1〜2のいずれかに記載の放射線遮蔽部材が備えられたことを特徴とする放射線画像記録媒体。
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