JP3965606B2 - 光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類及び置換スチレンオキサイド類の製造方法及びその光学純度を高める方法 - Google Patents
光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類及び置換スチレンオキサイド類の製造方法及びその光学純度を高める方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類又は置換スチレンオキサイド類の製造方法及びその光学純度を高める方法に関するものである。
本発明の製造方法により製造される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類は医薬及び農薬の光学活性中間体として有用であり、例えば特開昭60−218387号公報に記載のケテンS,S−アセタール類の光学活性体の製造に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
光学活性スチレンオキサイド類は、特開平4−218384号公報に開示されているように微生物を利用した方法でも製造することができ、K.B.Sharpless等により報告されたスチレンの不斉ジオール化を経由した製造方法も可能である。〔J.O.C.(1992),57,2768〕。しかし、これらの不斉合成法は操作性、収率、光学純度、製造コスト等を考えた場合、未だに満足すべきものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ラセミ体のアルコールをフタル酸エステル類に導き、適切な分割剤により光学分割する方法は古くから知られている〔A.W.Ingersoll(1994),Org.React.,vol 2,376〕。しかし、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のように、ベンゼン環及びアルキル鎖に置換基のある化合物に関する記述はない。さらに、ジアステレオマー分割においては、どのような化合物にどのような分割剤が適当か等の原理原則的なものはなく、試行錯誤で検討していくしかないと文献に記載されている(化学総説No.6 光学異性体の分離、p.8、日本化学会編、1989年)。これらの事から収率、光学純度等の観点からも満足できるジアステレオマー分割法による一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類及び一般式(Ib)で表される光学活性置換スチレンオキサイド類の新規な製造方法が望まれていた。
【0004】
【化10】
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yは同一又は異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、 C1-C6アルキル基、 C1-C6アルコキシ基、 C1-C6ハロアルキル基、 C1-C6ハロアルコキシ基を示し、nは0〜3の整数を示し、*は不斉炭素原子を示す。)
一般式(Ia)及び(Ib)の置換基の定義において、ハロゲン原子とは、例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子又はヨウ素原子を示し、 C1-C6アルキル基とは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、 C1-C6アルコキシ基とは、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブチトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のアルコキシ基を示し、C1-C6 ハロアルキル基とは、例えばトリクロロメチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、クロロエチル、フルオロエチル、クロロプロピル、フルオロプロピル等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のハロアルキル基を示し、 C1-C6ハロアルコキシ基とは、例えばジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のハロアルコキシ基を示す。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類から導かれるフタル酸エステル誘導体の光学分割について鋭意研究を重ねた結果、光学活性有機アミン類を分割剤として光学分割し、これを加水分解又はアルコリシスすることからなる一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類又は一般式(Ib)で表される光学活性置換スチレンオキサイド類を効率的に製造する方法及び一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類の光学純度を高める方法を見いだし、本発明を完成させたものである。
【0006】
本発明による一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類又は一般式(Ib)で表される光学活性置換スチレンオキサイド類の製造方法は、例えば下記に図示する製造方法を例示することができる。
【化11】
【0007】
【化12】
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yは同一又は異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、 C1-C6アルキル基、 C1-C6アルコキシ基、 C1-C6ハロアルキル基又は C1-C6ハロアルコキシ基を示し、Zは同一又は異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子又は C1-C6アルキル基を示し、mは0〜2の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。)
【0008】
(1).一般式(III) で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体は、公知の方法によりラセミ体である一般式(II)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類より製造することができる〔A.W.Ingersoll(1994),Org.React.,vol2,376〕。 即ち、無水フタル酸類と一般式(II)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類とを適当な不活性溶媒、例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ピリジン等の不活性溶媒中で加熱することにより製造することができる。この場合、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を触媒量から必要に応じて過剰量の範囲から選択して使用することができる。
【0009】
(2).ラセミ体である一般式(III) で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールのフタル酸エステル誘導体の光学分割では、先ず該フタル酸エステル誘導体(III) を適切な不活性溶媒中に溶解し又は懸濁し、(+)又は(−)の光学活性有機アミン類を加え一般式(IV)で表されるジアステレオマー塩を生成させ、該ジアステレオマー塩(IV)を分割する。この場合、一方の塩を選択的に析出させることも可能である。又、適当な不活性溶媒中で分別結晶することもできる。光学活性有機アミン類としては、例えばα−メチルベンジルアミン、α−エチルベンジルアミン、1−(p−トリル)エチルアミン、キニジン、シンコニジン、ブルシン、2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、1−フェニル−2−(4−トリル)エチルアミン、1−ナフチルエチルアミン等を例示することができる。 分割剤であるα−メチルベンジルアミン等の光学活性有機アミン類は該フタル酸エステル類(III) に対して0.5〜2.0モル量、好ましくは0.9〜1.1モル量使用する。又、分割剤としてα−メチルベンジルアミン等のキラルアミン類とトリエチルアミン等のアキラルアミン類との混合物を使用することもでき、この場合の混合比はキラルアミン0.5〜1.0モル量の範囲で使用することができ、好ましくは0.5〜0.8モル量である。
【0010】
不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができ、好ましくはエタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等の不活性溶媒及び水/エタノール、水/イソプロパノール、n−ヘキサン/エタノール、n−ヘキサン/イソプロパノール、n−ヘキサン/アセトン、n−ヘキサン/酢酸エチル等の混合溶媒である。溶媒量はジアステレオマー塩の溶解度に応じて適宜使用すれば良いが、通常、溶質の1〜150倍量(重量比)を使用する。
【0011】
(3).光学分割したジアステレオマー塩は、適当な不活性溶媒中、適当な酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を等モル量作用させる等の通常の方法でフリーの一般式(IIIa)又は一般式(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体を製造することができる。
【0012】
(4).一般式(Ib)で表される光学活性スチレンオキサイド類は、一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体を適当な不活性溶媒中でアルカリ加水分解することにより製造することができる。不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール, イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができ、好ましくはトルエン、アルコール/水、アセトン/水等の不活性溶媒又は混合溶媒である。溶媒量は溶質が溶解する範囲から適宜選択すれば良いが、通常は溶質の2〜100倍量(重量比)である。塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基を使用することができ、好ましくは炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基である。塩基の使用量は一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体に対して1〜5倍モル量使用すれば良く、反応温度は0℃〜50℃の範囲で行えば良く、好ましくは10℃〜35℃の範囲である。
【0013】
(5).一般式(Ib)で表される光学活性スチレンオキサイド類を適当な不活性溶媒中でハロゲン化水素により開環することにより一般式(V-R) 又は(V-S) で表される光学活性2−ハロ−2−(置換フェニル)エタノール類を製造することができる。不活性溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素等の不活性溶媒を使用することができ、溶媒量は溶質が溶解する範囲から適宜選択すれば良いが、通常は溶質に対して2〜150倍量(重量比)の範囲で選択すれば良い。ハロゲン化水素としては、例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素を無水状態で使用することができ、ハロゲン化水素の使用量は等量から過剰量の範囲から適宜選択して使用すれば良い。
【0014】
(6).一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールは、一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体を適当な不活性溶媒中で酸加水分解することにより製造することができる。不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール, イソプロパノール、ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができ、好ましくは水/アルコール、水/ジオキサン、水/ジメトキシエタン等の混合溶媒である。溶媒量は溶質が溶解する範囲から適宜選択すれば良いが、通常は溶質の2〜150倍量(重量比)である。酸としては、例えば塩酸、硫酸、酢酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の無機酸又は有機酸を使用することができ、酸の使用量は基質に対して1〜50倍モル量の範囲で使用すれば良く、反応温度は0℃〜150℃の範囲で行えば良く、好ましくは50℃〜100℃の範囲である。
【0015】
(7).一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類は、一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体を酸又は塩基類の存在下にアルコリシスすることにより製造することもできる。
本反応で使用できる酸としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トルエンスルホン酸等の有機酸、塩基類としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基を使用することができ、これらの使用量は触媒量から過剰量の範囲から適宜選択して使用すれば良く、好ましくは触媒量使用するのが良い。アルコリシスにおけるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール等のアルコールを使用することができ、溶媒量は溶質が溶解する範囲から選択すれば良く、通常は溶質の2〜150倍量(重量比)である。 反応温度は1〜150℃範囲から選択すれば良く、好ましくは50〜100℃の範囲である。反応時間は反応量、反応温度等により一定しないが、1〜24時間の範囲であり、好ましくは2〜6時間である。
【0016】
(8).
【化13】
(式中、X、Y、n及び*は前記に同じ。)
一般式(Ia)で表される光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類は、適当な不活性溶媒中、適当な酸触媒の存在下にラセミ化することにより一般式(II)で表される化合物とするができる。不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール, イソプロパノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン、エチルセルソルブの不活性溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができる。酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸を使用することができる。
【0017】
(9).
【化14】
(式中、X、Y、Z、m、n及び*は前記に同じ。)
【0018】
一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類の光学純度を高める目的で、該化合物(Ia)を無水フタル酸類と反応させて一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体とし、該化合物(IIIa)又は(IIIb)を再結晶法で精製することにより光学純度を高めた後、加水分解又はアルコリシスすることにより高光学純度の一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを製造することができる。
一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類から一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体への反応は、例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ピリジン等の不活性溶媒中で無水フタル酸等のフタル酸類と加熱下に反応させることにより製造することができる。本反応ではトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン等の塩基を触媒量から過剰量の範囲で使用することができる。
【0019】
一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体の再結晶は、例えば水、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、THF、アセトニトリル、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン等及びこれらを混合した溶媒を使用することができ、好ましくは酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素等を組み合わせた溶媒が良い。
本方法により光学純度を高めた一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸誘導体は、上記の酸又は塩基の存在下に加水分解又はアルコリシスすることにより高光学純度の一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを製造することができる。
【0020】
一般式(III')
【化15】
(式中、X、Y、Z、m、n及び*は前記に同じ。)
で表される光学活性フタル酸エステル誘導体は一般式(IIIa)又は(IIIb)を示す。
【0021】
(10).光学純度の測定は主に光学活性カラムを使用したHPLCにより行った。カラムはダイセル化学工業(株)のキラルセルOD(商品名)、キラルセルOJ(商品名)等を使用し、各化合物の極大吸収波長及び254nmのUV波長によるUV吸収の面積比から光学純度を測定した。化合物の絶対配置は、置換フェナシルハライドから公知の方法〔Modern Synthetic Method,5,115,(1989)〕により別途製造した光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール及び該化合物から誘導した各化合物を分析標品とし、光学活性カラム(キラルセルOD、キラルセルOJ)を使用したHPLCの保持時間から決定した。
【0022】
本発明により製造される一般式(Ia)で表される化合物及び一般式(V) で表される化合物は下記に図示する製造方法により医薬、農薬として有用なケテンジチオアセタール誘導体(A) を製造する際の原料化合物として有用である。
【化16】
(式中、X、Y及びnは前記に同じくし、X’はハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基又はトルエンスルホニルオキシ基を示し、Mはアルカリ金属原子を示す。)
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態として以下に本発明の代表的な実施例を示すが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの製造。
ラセミ体の2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エタノール1.0gと無水フタル酸0.66gをピリジン10mlに溶解し、該溶液にジメチルアミノピリジン0.1gを加えて3時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下に留去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、該溶液を1N−塩酸で洗浄、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより目的物1.2gを得た。(収率72%、 m.p.156〜157℃)
【0024】
実施例2. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの製造。
ラセミ体の2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エタノール20.0gと無水フタル酸13.1gをトルエン150mlに溶解し、該溶液にトリエチルアミン20mlを加えて3時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下に留去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、該溶液を1N−塩酸で洗浄、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより目的物29.5gを得た。(収率89%、 m.p.156〜157℃)
【0025】
同様の方法により以下に示す化合物を製造した。
(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4又は5−クロロ−ハイドロジェンフタレート。m.p.144−147℃ 収率75.6%
(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4,5−ジクロロ−ハイドロジェンフタレート。m.p.188−190℃ 収率78.0%
(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4又は5−メチル−ハイドロジェンフタレート。m.p.127−130℃ 収率16.3%
(2−クロロ−1−(4−メトキシフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート。m.p.112−115℃ 収率64%
(2−クロロ−1−(4−メチルフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート。m.p.128−131℃ 収率59%
(2−クロロ−1−(3−クロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート。m.p.125−128℃ 収率59%
【0026】
実施例3. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩の製造。
ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート8.0gと(+)−α−メチルベンジルアミン2.6gを酢酸エチル100mlに加えた均一溶液を減圧下に濃縮して得られた結晶を減圧下に乾燥することにより目的物10.6gを得た。(収率100%、 m.p.113〜115℃)
【0027】
実施例4. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩のジアステレオマー分離及びその複分解。
ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩1.0gをエタノール/n−ヘキサン=1:7の混合溶媒72mlに加え加熱溶解した後、−5℃で10時間冷却し、析出した結晶を濾集することにより(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩のジアステレオマーの一方の光学異性体0.3gを得た。得られた光学異性体0.3gをアセトン10mlに加熱溶解し、次いで1N−塩酸25mlを加えた後、減圧下に溶媒を留去し、析出した結晶を濾集、水洗及び乾燥することにより(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート0.22g(94%ee、S体)を得た。(収率28.2%、m.p.144〜145℃)
光学純度は(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートをトリメチルシリルジアゾメタンでメチルエステル化した後、光学活性カラム(キラルセルOD)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=254)の面積百分率から算出した。
【0028】
実施例4で使用したR-(+)-フェネチルアミンを他の光学活性アミンにかえて、実施例4と同様にして製造した結果を表1に示す。
【表1】
表1
【0029】
実施例5−1. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミンによる光学分割。
実施例2で得られたラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート329.1g(0.881モル)をエタノール/n−ヘキサン=1/5の溶液7L(リットル)に加え、48〜50℃まで加温した。次いで(+)−α−メチルベンジルアミン106.7g(0.881モル)を同温度で加えた後、氷浴にて冷却下に結晶化させた。3時間晶析後、結晶を濾集し、氷冷したエタノール/n−ヘキサン=1/5溶液300mlで洗浄することにより一般式(IIIb)で表される(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩168.4gを得た。光学純度96.7% 収率38.6%
同様の方法により(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル)
4又は5−クロロ−ハイドロジェンフタレート(5−2)、(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4,5−ジクロロ−ハイドロジェンフタレート(5−3)、(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4又は5−メチル−ハイドロジェンフタレート(5−4)、(2−クロロ−1−(4−メチルフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート(5−5)、(2−クロロ−1−(4−メトキシフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート(5−6)、(2−クロロ−1−(3−クロロメチルフェニル)エチル)
ハイドロジェンフタレート(5−7)を光学分割した。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
表2
【0031】
実施例6. (R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−1,2−エチレンオキサイドの製造。
(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート0.37g(94%ee)と95%水酸化カリウム0.22gをエタノール5ml及び水1mlの混合溶媒に加えて室温下に1.5時間攪拌した。反応終了後、減圧下に溶媒を留去し、水10mlを加え目的物をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去し、目体物0.18g(93%ee)を得た。(収率96%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン UV=225)の面積百分率から算出した。
【0032】
実施例7−1. (S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールの製造。
実施例4で製造した(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート0.28g(94%ee)をジオキサン20mlに溶解し、該溶液に濃塩酸10mlを加えて9時間加熱還流を行った。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、減圧下に溶媒を留去し、得られた残渣にジエチルエーテル50mlを加え重曹水で洗浄、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより目的物0.15g(92%ee)を得た。(収率88%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=210)の面積百分率から算出した。
【0033】
7−2. (S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノ−ルの製造。
(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート126.7g(0.339モル)をn−プロパノール600mlに溶解し、トリエチルアミン34.4g(0.339モル)を加えて4時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下に留去し、目的物を酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を1N−HCl 100ml、飽和食塩水200ml、10%炭酸ナトリウム水溶液200ml、ブライン(brine)200mlで順次洗浄した。酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去することにより(S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノ−ル74.5gを得た。光学純度95%ee、収率97.4%
【0034】
実施例8. 光学活性 1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールのラセミ化。
実施例4でジアステレオマー分離時の濾液を濃縮し、実施例4と同様にして複分解し、得られた(R)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートを実施例5と同様な操作で加水分解することにより(R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノール0.25g(48%ee)を得た。得られた(R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノール0.2g(48%ee)をトリフルオロ酢酸8ml/水2mlからなる混合溶媒に溶解し、8時間加熱還流した。反応終了後、溶媒を減圧下に留去することにより目的物0.19g(0%ee)を得た。(収率93%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=210)の面積百分率から算出した。
【0035】
実施例9. 光学活性 1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールの製造。
実施例8で使用した(R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノール0.2g(48%ee)を18N−硫酸120ml/1,2−ジメトキシエタン90mlからなる混合溶媒に溶解し、3時間加熱還流した。反応終了後、溶媒を減圧下に濃縮し、残渣を水中に注ぎ、炭酸水素ナトリウムで中和した。水層から酢酸エチルで目的物を抽出し、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去することにより目的物1.0g(0%ee)を得た。(収率83%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=230)の面積百分率から算出した。
光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールは実施例2と同様にして、そのハイドロジエンフタレートに誘導し、再結晶法で精製することにより光学純度を高めることができる。
ハイドロジェンフタレート化による光学純度の低下は、80%eeの原料を用いた場合でも、生成物の光学純度は76.7%と小さい。
以下に再結晶法による実施例を示す。
【0036】
実施例10−1.
(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート4.6g(光学純度95.7%)をクロロホルム60mlに加温溶解し、n−ヘキサン60mlを加えた後、冷却下にスクラッチングし、結晶化させた。0℃で5時間放置後、結晶を濾集することにより(S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールを得た.光学純度99%ee、収率93.5%
表3に種々の光学純度の(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートを使用して実施した結果を示す。
【0037】
【表3】
表3
【0038】
参考例1. 分析標品の(S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールの製造。
(S)−3,3−ジフェニル−1−メチルテトラヒドロ−1H,3H−ピロロ−〔1,2,−C〕〔1,3,2〕オキサザボール0.3gを乾燥THF5mlに加え、次いで−20℃でボラン−THF1.0M溶液3.8mlを滴下した。滴下終了後、同温度で2,4−ジクロロフェナシルクロリド2.2gを乾燥THF5mlに溶解した溶液を滴下し、室温まで昇温した後、メタノール2mlを加え、未反応のボランを分解し、反応液を水中に注ぎ目的物をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/5)で精製することにより目的物2.0g(80%ee)を得た。(収率92%)
【0039】
【発明の効果】
本発明は、医薬品の合成原料として有用な光学活性化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類又は置換スチレンオキサイド類の製造方法及びその光学純度を高める方法に関するものである。
本発明の製造方法により製造される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類は医薬及び農薬の光学活性中間体として有用であり、例えば特開昭60−218387号公報に記載のケテンS,S−アセタール類の光学活性体の製造に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
光学活性スチレンオキサイド類は、特開平4−218384号公報に開示されているように微生物を利用した方法でも製造することができ、K.B.Sharpless等により報告されたスチレンの不斉ジオール化を経由した製造方法も可能である。〔J.O.C.(1992),57,2768〕。しかし、これらの不斉合成法は操作性、収率、光学純度、製造コスト等を考えた場合、未だに満足すべきものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ラセミ体のアルコールをフタル酸エステル類に導き、適切な分割剤により光学分割する方法は古くから知られている〔A.W.Ingersoll(1994),Org.React.,vol 2,376〕。しかし、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のように、ベンゼン環及びアルキル鎖に置換基のある化合物に関する記述はない。さらに、ジアステレオマー分割においては、どのような化合物にどのような分割剤が適当か等の原理原則的なものはなく、試行錯誤で検討していくしかないと文献に記載されている(化学総説No.6 光学異性体の分離、p.8、日本化学会編、1989年)。これらの事から収率、光学純度等の観点からも満足できるジアステレオマー分割法による一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類及び一般式(Ib)で表される光学活性置換スチレンオキサイド類の新規な製造方法が望まれていた。
【0004】
【化10】
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yは同一又は異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、 C1-C6アルキル基、 C1-C6アルコキシ基、 C1-C6ハロアルキル基、 C1-C6ハロアルコキシ基を示し、nは0〜3の整数を示し、*は不斉炭素原子を示す。)
一般式(Ia)及び(Ib)の置換基の定義において、ハロゲン原子とは、例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子又はヨウ素原子を示し、 C1-C6アルキル基とは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、 C1-C6アルコキシ基とは、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブチトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のアルコキシ基を示し、C1-C6 ハロアルキル基とは、例えばトリクロロメチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、クロロエチル、フルオロエチル、クロロプロピル、フルオロプロピル等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のハロアルキル基を示し、 C1-C6ハロアルコキシ基とは、例えばジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のハロアルコキシ基を示す。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類から導かれるフタル酸エステル誘導体の光学分割について鋭意研究を重ねた結果、光学活性有機アミン類を分割剤として光学分割し、これを加水分解又はアルコリシスすることからなる一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類又は一般式(Ib)で表される光学活性置換スチレンオキサイド類を効率的に製造する方法及び一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類の光学純度を高める方法を見いだし、本発明を完成させたものである。
【0006】
本発明による一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類又は一般式(Ib)で表される光学活性置換スチレンオキサイド類の製造方法は、例えば下記に図示する製造方法を例示することができる。
【化11】
【0007】
【化12】
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yは同一又は異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子、 C1-C6アルキル基、 C1-C6アルコキシ基、 C1-C6ハロアルキル基又は C1-C6ハロアルコキシ基を示し、Zは同一又は異なっても良く、水素原子、ハロゲン原子又は C1-C6アルキル基を示し、mは0〜2の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。)
【0008】
(1).一般式(III) で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体は、公知の方法によりラセミ体である一般式(II)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類より製造することができる〔A.W.Ingersoll(1994),Org.React.,vol2,376〕。 即ち、無水フタル酸類と一般式(II)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類とを適当な不活性溶媒、例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ピリジン等の不活性溶媒中で加熱することにより製造することができる。この場合、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を触媒量から必要に応じて過剰量の範囲から選択して使用することができる。
【0009】
(2).ラセミ体である一般式(III) で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールのフタル酸エステル誘導体の光学分割では、先ず該フタル酸エステル誘導体(III) を適切な不活性溶媒中に溶解し又は懸濁し、(+)又は(−)の光学活性有機アミン類を加え一般式(IV)で表されるジアステレオマー塩を生成させ、該ジアステレオマー塩(IV)を分割する。この場合、一方の塩を選択的に析出させることも可能である。又、適当な不活性溶媒中で分別結晶することもできる。光学活性有機アミン類としては、例えばα−メチルベンジルアミン、α−エチルベンジルアミン、1−(p−トリル)エチルアミン、キニジン、シンコニジン、ブルシン、2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、1−フェニル−2−(4−トリル)エチルアミン、1−ナフチルエチルアミン等を例示することができる。 分割剤であるα−メチルベンジルアミン等の光学活性有機アミン類は該フタル酸エステル類(III) に対して0.5〜2.0モル量、好ましくは0.9〜1.1モル量使用する。又、分割剤としてα−メチルベンジルアミン等のキラルアミン類とトリエチルアミン等のアキラルアミン類との混合物を使用することもでき、この場合の混合比はキラルアミン0.5〜1.0モル量の範囲で使用することができ、好ましくは0.5〜0.8モル量である。
【0010】
不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができ、好ましくはエタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等の不活性溶媒及び水/エタノール、水/イソプロパノール、n−ヘキサン/エタノール、n−ヘキサン/イソプロパノール、n−ヘキサン/アセトン、n−ヘキサン/酢酸エチル等の混合溶媒である。溶媒量はジアステレオマー塩の溶解度に応じて適宜使用すれば良いが、通常、溶質の1〜150倍量(重量比)を使用する。
【0011】
(3).光学分割したジアステレオマー塩は、適当な不活性溶媒中、適当な酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を等モル量作用させる等の通常の方法でフリーの一般式(IIIa)又は一般式(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体を製造することができる。
【0012】
(4).一般式(Ib)で表される光学活性スチレンオキサイド類は、一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体を適当な不活性溶媒中でアルカリ加水分解することにより製造することができる。不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール, イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができ、好ましくはトルエン、アルコール/水、アセトン/水等の不活性溶媒又は混合溶媒である。溶媒量は溶質が溶解する範囲から適宜選択すれば良いが、通常は溶質の2〜100倍量(重量比)である。塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基を使用することができ、好ましくは炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基である。塩基の使用量は一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体に対して1〜5倍モル量使用すれば良く、反応温度は0℃〜50℃の範囲で行えば良く、好ましくは10℃〜35℃の範囲である。
【0013】
(5).一般式(Ib)で表される光学活性スチレンオキサイド類を適当な不活性溶媒中でハロゲン化水素により開環することにより一般式(V-R) 又は(V-S) で表される光学活性2−ハロ−2−(置換フェニル)エタノール類を製造することができる。不活性溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素等の不活性溶媒を使用することができ、溶媒量は溶質が溶解する範囲から適宜選択すれば良いが、通常は溶質に対して2〜150倍量(重量比)の範囲で選択すれば良い。ハロゲン化水素としては、例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素を無水状態で使用することができ、ハロゲン化水素の使用量は等量から過剰量の範囲から適宜選択して使用すれば良い。
【0014】
(6).一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールは、一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類のフタル酸エステル誘導体を適当な不活性溶媒中で酸加水分解することにより製造することができる。不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール, イソプロパノール、ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができ、好ましくは水/アルコール、水/ジオキサン、水/ジメトキシエタン等の混合溶媒である。溶媒量は溶質が溶解する範囲から適宜選択すれば良いが、通常は溶質の2〜150倍量(重量比)である。酸としては、例えば塩酸、硫酸、酢酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の無機酸又は有機酸を使用することができ、酸の使用量は基質に対して1〜50倍モル量の範囲で使用すれば良く、反応温度は0℃〜150℃の範囲で行えば良く、好ましくは50℃〜100℃の範囲である。
【0015】
(7).一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類は、一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体を酸又は塩基類の存在下にアルコリシスすることにより製造することもできる。
本反応で使用できる酸としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トルエンスルホン酸等の有機酸、塩基類としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基を使用することができ、これらの使用量は触媒量から過剰量の範囲から適宜選択して使用すれば良く、好ましくは触媒量使用するのが良い。アルコリシスにおけるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール等のアルコールを使用することができ、溶媒量は溶質が溶解する範囲から選択すれば良く、通常は溶質の2〜150倍量(重量比)である。 反応温度は1〜150℃範囲から選択すれば良く、好ましくは50〜100℃の範囲である。反応時間は反応量、反応温度等により一定しないが、1〜24時間の範囲であり、好ましくは2〜6時間である。
【0016】
(8).
【化13】
(式中、X、Y、n及び*は前記に同じ。)
一般式(Ia)で表される光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類は、適当な不活性溶媒中、適当な酸触媒の存在下にラセミ化することにより一般式(II)で表される化合物とするができる。不活性溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール, イソプロパノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン、エチルセルソルブの不活性溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができる。酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸を使用することができる。
【0017】
(9).
【化14】
(式中、X、Y、Z、m、n及び*は前記に同じ。)
【0018】
一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類の光学純度を高める目的で、該化合物(Ia)を無水フタル酸類と反応させて一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体とし、該化合物(IIIa)又は(IIIb)を再結晶法で精製することにより光学純度を高めた後、加水分解又はアルコリシスすることにより高光学純度の一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを製造することができる。
一般式(Ia)で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類から一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体への反応は、例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ピリジン等の不活性溶媒中で無水フタル酸等のフタル酸類と加熱下に反応させることにより製造することができる。本反応ではトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン等の塩基を触媒量から過剰量の範囲で使用することができる。
【0019】
一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸エステル誘導体の再結晶は、例えば水、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、THF、アセトニトリル、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン等及びこれらを混合した溶媒を使用することができ、好ましくは酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素等を組み合わせた溶媒が良い。
本方法により光学純度を高めた一般式(IIIa)又は(IIIb)で表される光学活性フタル酸誘導体は、上記の酸又は塩基の存在下に加水分解又はアルコリシスすることにより高光学純度の一般式(Ia)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを製造することができる。
【0020】
一般式(III')
【化15】
(式中、X、Y、Z、m、n及び*は前記に同じ。)
で表される光学活性フタル酸エステル誘導体は一般式(IIIa)又は(IIIb)を示す。
【0021】
(10).光学純度の測定は主に光学活性カラムを使用したHPLCにより行った。カラムはダイセル化学工業(株)のキラルセルOD(商品名)、キラルセルOJ(商品名)等を使用し、各化合物の極大吸収波長及び254nmのUV波長によるUV吸収の面積比から光学純度を測定した。化合物の絶対配置は、置換フェナシルハライドから公知の方法〔Modern Synthetic Method,5,115,(1989)〕により別途製造した光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール及び該化合物から誘導した各化合物を分析標品とし、光学活性カラム(キラルセルOD、キラルセルOJ)を使用したHPLCの保持時間から決定した。
【0022】
本発明により製造される一般式(Ia)で表される化合物及び一般式(V) で表される化合物は下記に図示する製造方法により医薬、農薬として有用なケテンジチオアセタール誘導体(A) を製造する際の原料化合物として有用である。
【化16】
(式中、X、Y及びnは前記に同じくし、X’はハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基又はトルエンスルホニルオキシ基を示し、Mはアルカリ金属原子を示す。)
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態として以下に本発明の代表的な実施例を示すが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの製造。
ラセミ体の2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エタノール1.0gと無水フタル酸0.66gをピリジン10mlに溶解し、該溶液にジメチルアミノピリジン0.1gを加えて3時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下に留去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、該溶液を1N−塩酸で洗浄、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより目的物1.2gを得た。(収率72%、 m.p.156〜157℃)
【0024】
実施例2. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの製造。
ラセミ体の2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エタノール20.0gと無水フタル酸13.1gをトルエン150mlに溶解し、該溶液にトリエチルアミン20mlを加えて3時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下に留去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、該溶液を1N−塩酸で洗浄、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより目的物29.5gを得た。(収率89%、 m.p.156〜157℃)
【0025】
同様の方法により以下に示す化合物を製造した。
(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4又は5−クロロ−ハイドロジェンフタレート。m.p.144−147℃ 収率75.6%
(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4,5−ジクロロ−ハイドロジェンフタレート。m.p.188−190℃ 収率78.0%
(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4又は5−メチル−ハイドロジェンフタレート。m.p.127−130℃ 収率16.3%
(2−クロロ−1−(4−メトキシフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート。m.p.112−115℃ 収率64%
(2−クロロ−1−(4−メチルフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート。m.p.128−131℃ 収率59%
(2−クロロ−1−(3−クロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート。m.p.125−128℃ 収率59%
【0026】
実施例3. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩の製造。
ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート8.0gと(+)−α−メチルベンジルアミン2.6gを酢酸エチル100mlに加えた均一溶液を減圧下に濃縮して得られた結晶を減圧下に乾燥することにより目的物10.6gを得た。(収率100%、 m.p.113〜115℃)
【0027】
実施例4. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩のジアステレオマー分離及びその複分解。
ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩1.0gをエタノール/n−ヘキサン=1:7の混合溶媒72mlに加え加熱溶解した後、−5℃で10時間冷却し、析出した結晶を濾集することにより(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩のジアステレオマーの一方の光学異性体0.3gを得た。得られた光学異性体0.3gをアセトン10mlに加熱溶解し、次いで1N−塩酸25mlを加えた後、減圧下に溶媒を留去し、析出した結晶を濾集、水洗及び乾燥することにより(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート0.22g(94%ee、S体)を得た。(収率28.2%、m.p.144〜145℃)
光学純度は(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートをトリメチルシリルジアゾメタンでメチルエステル化した後、光学活性カラム(キラルセルOD)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=254)の面積百分率から算出した。
【0028】
実施例4で使用したR-(+)-フェネチルアミンを他の光学活性アミンにかえて、実施例4と同様にして製造した結果を表1に示す。
【表1】
表1
【0029】
実施例5−1. ラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミンによる光学分割。
実施例2で得られたラセミ体の(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート329.1g(0.881モル)をエタノール/n−ヘキサン=1/5の溶液7L(リットル)に加え、48〜50℃まで加温した。次いで(+)−α−メチルベンジルアミン106.7g(0.881モル)を同温度で加えた後、氷浴にて冷却下に結晶化させた。3時間晶析後、結晶を濾集し、氷冷したエタノール/n−ヘキサン=1/5溶液300mlで洗浄することにより一般式(IIIb)で表される(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートの(+)−α−メチルベンジルアミン塩168.4gを得た。光学純度96.7% 収率38.6%
同様の方法により(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル)
4又は5−クロロ−ハイドロジェンフタレート(5−2)、(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4,5−ジクロロ−ハイドロジェンフタレート(5−3)、(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) 4又は5−メチル−ハイドロジェンフタレート(5−4)、(2−クロロ−1−(4−メチルフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート(5−5)、(2−クロロ−1−(4−メトキシフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート(5−6)、(2−クロロ−1−(3−クロロメチルフェニル)エチル)
ハイドロジェンフタレート(5−7)を光学分割した。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
表2
【0031】
実施例6. (R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−1,2−エチレンオキサイドの製造。
(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート0.37g(94%ee)と95%水酸化カリウム0.22gをエタノール5ml及び水1mlの混合溶媒に加えて室温下に1.5時間攪拌した。反応終了後、減圧下に溶媒を留去し、水10mlを加え目的物をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去し、目体物0.18g(93%ee)を得た。(収率96%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン UV=225)の面積百分率から算出した。
【0032】
実施例7−1. (S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールの製造。
実施例4で製造した(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート0.28g(94%ee)をジオキサン20mlに溶解し、該溶液に濃塩酸10mlを加えて9時間加熱還流を行った。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、減圧下に溶媒を留去し、得られた残渣にジエチルエーテル50mlを加え重曹水で洗浄、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより目的物0.15g(92%ee)を得た。(収率88%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=210)の面積百分率から算出した。
【0033】
7−2. (S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノ−ルの製造。
(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート126.7g(0.339モル)をn−プロパノール600mlに溶解し、トリエチルアミン34.4g(0.339モル)を加えて4時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下に留去し、目的物を酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を1N−HCl 100ml、飽和食塩水200ml、10%炭酸ナトリウム水溶液200ml、ブライン(brine)200mlで順次洗浄した。酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去することにより(S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノ−ル74.5gを得た。光学純度95%ee、収率97.4%
【0034】
実施例8. 光学活性 1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールのラセミ化。
実施例4でジアステレオマー分離時の濾液を濃縮し、実施例4と同様にして複分解し、得られた(R)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートを実施例5と同様な操作で加水分解することにより(R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノール0.25g(48%ee)を得た。得られた(R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノール0.2g(48%ee)をトリフルオロ酢酸8ml/水2mlからなる混合溶媒に溶解し、8時間加熱還流した。反応終了後、溶媒を減圧下に留去することにより目的物0.19g(0%ee)を得た。(収率93%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=210)の面積百分率から算出した。
【0035】
実施例9. 光学活性 1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールの製造。
実施例8で使用した(R)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノール0.2g(48%ee)を18N−硫酸120ml/1,2−ジメトキシエタン90mlからなる混合溶媒に溶解し、3時間加熱還流した。反応終了後、溶媒を減圧下に濃縮し、残渣を水中に注ぎ、炭酸水素ナトリウムで中和した。水層から酢酸エチルで目的物を抽出し、水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去することにより目的物1.0g(0%ee)を得た。(収率83%)
光学純度は光学活性カラム(キラルセルOJ)を使用したHPLC(溶媒:n−ヘキサン/イソプロパノール=80/1 UV=230)の面積百分率から算出した。
光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールは実施例2と同様にして、そのハイドロジエンフタレートに誘導し、再結晶法で精製することにより光学純度を高めることができる。
ハイドロジェンフタレート化による光学純度の低下は、80%eeの原料を用いた場合でも、生成物の光学純度は76.7%と小さい。
以下に再結晶法による実施例を示す。
【0036】
実施例10−1.
(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレート4.6g(光学純度95.7%)をクロロホルム60mlに加温溶解し、n−ヘキサン60mlを加えた後、冷却下にスクラッチングし、結晶化させた。0℃で5時間放置後、結晶を濾集することにより(S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールを得た.光学純度99%ee、収率93.5%
表3に種々の光学純度の(S)−(2−クロロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル) ハイドロジェンフタレートを使用して実施した結果を示す。
【0037】
【表3】
表3
【0038】
参考例1. 分析標品の(S)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−2−クロロ−1−エタノールの製造。
(S)−3,3−ジフェニル−1−メチルテトラヒドロ−1H,3H−ピロロ−〔1,2,−C〕〔1,3,2〕オキサザボール0.3gを乾燥THF5mlに加え、次いで−20℃でボラン−THF1.0M溶液3.8mlを滴下した。滴下終了後、同温度で2,4−ジクロロフェナシルクロリド2.2gを乾燥THF5mlに溶解した溶液を滴下し、室温まで昇温した後、メタノール2mlを加え、未反応のボランを分解し、反応液を水中に注ぎ目的物をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水洗及び無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/5)で精製することにより目的物2.0g(80%ee)を得た。(収率92%)
【0039】
【発明の効果】
本発明は、医薬品の合成原料として有用な光学活性化合物の製造方法を提供するものである。
Claims (4)
- 一般式(II ’)) ;
で表される化合物を無水フタル酸と反応させて一般式(III’’) ;
で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類又は式(Ib ’)
- 一般式(Ia) ;
で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類を無水フタル酸類と反応させて一般式(III') ;
で表される光学活性フタル酸エステル誘導体とし、該フタル酸エステル誘導体(III')類を再結晶法で精製することにより光学純度を高めた後、アルカリ加水分解又はアルコリシスすることを特徴とする一般式(Ia) ;
で表される光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類の光学純度を高める方法。 - Xがハロゲン原子を示し、Yが水素原子、ハロゲン原子、 C1-C6アルキル基又は C1-C6アルコキシ基を示し、Zが水素原子、ハロゲン原子又は C1-C6アルキル基を示し、mが0〜2の整数を示し、nが0〜3の整数を示す請求項2記載の光学純度を高める方法。
- Xが塩素原子を示し、Yがハロゲン原子、 C1-C6アルキル基又は C1-C6アルコキシ基を示し、Zが水素原子、ハロゲン原子又は C1-C6アルキル基を示し、mが0〜2の整数を示し、nが1〜2の整数を示す請求項3記載の光学純度を高める方法。
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