JP3965308B2 - ガスセンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質からなるシート部材を積層してなると共に、積層されたシート部材間に導体線が挟持された形態のガスセンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関に取り付けられ、排気ガスに含まれている特定成分(例えば、NOX)の濃度を検出する様々な形態のガスセンサが開発されている。そして、その中の1つとして、ジルコニアなどの固体電解質からなるシート部材(以下、「グリーンシート」という。)を複数積層してなると共に、外部機器を接続するための白金線がグリーンシート間に挟持された形態のガスセンサが知られている。
【0003】
一般的に、このガスセンサを製造するには、まず、長尺状に形成した複数のグリーンシートの片面もしくは両面に、焼成すると多孔質体となるペーストを用いて、電極及び電極からグリーンシートの長手方向に延設する長尺状のリード部のパターン(以下、「電極パターン」という。)を形成し、酸素ポンプセルや酸素濃度検出セルを構成する。次に、グリーンシート同士を貼り合わせたり、電極パターンを周囲から絶縁するためのアルミナや、ガスセンサ内部に配設されるガス室を形成するためのカーボンなどをグリーンシートにコーティングすると共に、電極パターンにおけるリード部形成箇所の先端部に白金ペーストを塗布し、この塗布箇所に白金線を載置する。
【0004】
そして、各々のグリーンシートを重ね合わせて圧着したのち、これらを焼成により一体化させてガスセンサを製造している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の製造方法では、図6に示すガスセンサ200のように、積層したグリーンシートを焼成する際、互いに対面しているグリーンシート210,220における白金線230を挟持している部分(以下、「白金線挟持部」という。)のうち、白金ペースト240が塗布されていない方の白金線挟持部にクラック250が発生する場合があるという問題点があった。
【0006】
これは、グリーンシート同士を圧着する際に、白金ペーストを塗布していない白金線挟持部には、白金線の外縁に沿った急激な歪みが生じてしまうことが原因であると考えられる。つまり、焼成時にグリーンシートが熱膨張すると、この急激に歪んだ部分に応力が集中するのである。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、焼成時における、シート部材へのクラックの発生率を低減させたガスセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、板状に形成された固体電解質からなり、少なくとも片面に電極が形成されたシート部材を複数積層した本体と、該本体のシート部材間に挟持され、一端側が前記シート部材の前記電極に接触すると共に、他端側が前記本体から突出する導体線とを有し、前記本体を構成するシート部材が焼結により一体化されるガスセンサの製造方法であって、前記本体のシート部材間に前記導体線を挟み込む時には、該導体線を挟持する両側のシート部材の前記導体線が接触する部分にそれぞれ導体ペーストを塗布することを特徴とする。
【0009】
このように製造されたガスセンサでは、従来の製造方法により製造されたガスセンサよりもクラックの発生率が低い。
これは、導体ペーストの厚みによって、シート部材における導体線が接触する部分(つまり、導体線を挟持している部分)に発生する歪みが緩やかになり、応力が分散されたことに起因すると考えられる。
【0010】
つまり、本発明によれば、焼成時において、シート部材にクラックが発生するのを抑えることができる。
尚、請求項2記載のように、前記導体ペーストの塗布厚は、前記シート部材における前記導体ペーストの塗布箇所の端部から該塗布箇所の端部に最も近い当該シート部材の端部までの距離の大きさの1/10以下の大きさに設定されていることが望ましい。
【0011】
このように塗布厚が設定されていれば、シート部材間に導体ペーストの厚みに起因する隙間が発生することがない。即ち、被測定ガス中に水分や異物が含まれていても、それらがシート部材間に侵入して、ガスセンサの絶縁性能が損なわれてしまうことがない。
【0012】
尚、導体ペーストの塗布厚を厚く設定すれば、導体線と電極との間におけるインピーダンスが増加する。そして、塗布厚の大きさによっては、ガスセンサに生じる微弱な起電力を導体線と電極との間で著しく消費させてしまったり、又、電極から導体線への起電力の伝達時間に著しい遅延を生じさせることがある。
【0013】
このため、例えば、導体ペーストの成分が白金からなる場合には、請求項3記載のように、前記塗布厚は10〜30[μm]に設定されていることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明に係る製造方法により製造されたNOXセンサの外観形状を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、NOXセンサ1は、ジルコニアからなる、長さ50mm、幅4.5mm、厚さ300μmの長尺状の3枚のグリーンシート2,3,4が順に積層されてなると共に、グリーンシート2,3の間、及び、グリーンシート3,4の間には、長さ10mm、径200μmの白金線5,6,7,8が当該NOXセンサ1の長手方向の一端から突出するように挟持されている。そして、グリーンシート2の外側の面には、外部からNOXセンサ1内部に酸素を汲み入れると共に、NOXセンサ1内部の酸素を外部に汲み出す多孔質の電極21が、白金線突出端とは反対側の一端(以下、「電極形成端」という。)付近に備えられている。
【0016】
ここで、図2は、図1におけるA−A断面図である。
図2に示すように、NOXセンサ1は、グリーンシート2の両面に多孔質の電極21,22を形成してなる第1酸素ポンプセル(以下、「第1ポンプセル」という。)20と、グリーンシート3の両面に多孔質の電極31,32を形成してなる酸素濃度検出セル(以下、「検出セル」という。)30と、グリーンシート4におけるNOXセンサ1内部側の面に電極41,42を形成してなる第2酸素ポンプセル(以下、「第2ポンプセル」という。)40とを有し、各セルの間には、アルミナを主体とするコーティング材により形成された絶縁層50,60が介挿されている。
【0017】
尚、NOXセンサ1の電極形成端における、第1酸素ポンプセル20と検出セル30との間には、多孔質体で構成された第1拡散抵抗体25と、第1拡散抵抗体25を介して外部から被測定ガスを導入する第1室26とが形成されている。
そして、検出セル30には、多孔質体からなる第2拡散抵抗体35を有し、第1室26に導入された被測定ガスを取り込む拡散孔36が形成されている。
【0018】
又、絶縁層60には、拡散孔36に取り込まれた被測定ガスを導入する第2室61が形成されており、第2ポンプセル40の電極41が第2室61に露出するようにされている。
このような構造を有するNOXセンサ1は、グリーンシート2における電極21が形成されている面(以下、「上面」という。)に長尺状のヒータ(図示せず)が積層され、このヒータにより活性温度(例えば、750℃)まで加熱された状態で被測定ガス中のNOXの濃度の検出を行う。尚、検出方法の詳細は、例えば、特開平10−221298号公報などに詳述されており、本発明の要旨とも関係がないため、その説明を省略する。
【0019】
以下、図3に示すNOXセンサ1の分解斜視図を用いてNOXセンサ1の製造方法について説明する。
まず、グリーンシート2における、電極22を形成する面(以下、「下面」という。)の白金線5を挟持する箇所に、当該グリーンシート2の厚み方向に当該グリーンシート2を貫通するスルーホール27を形成し、スルーホール27の両端が電気的な導通を有するように、スルーホール27の内壁面に白金ペーストを塗布する。
【0020】
次に、触媒機能を有する白金を材料としたペースト(以下、「電極用ペースト」という。)を用いて、グリーンシート2の両面に夫々、矩形状の電極21、22と、電極21、22に延設され、電極21、22よりも幅が細い長尺状のリード部23、24とからなる電極パターンをスクリーン印刷する。このとき、リード部23の先端部がスルーホール27を覆うようにリード部23のパターンを形成する。
【0021】
このようにして、グリーンシート2に電極パターンを形成したのち、白金線5,6、7,8を電極パターンに一体化させるための白金ペースト(以下、「白金線用ペーストという。)70をグリーンシート2の下面における、白金線6を挟持するリード部24の先端部と、スルーホール27が形成され、白金線5を挟持する部分とに10〜30μmの厚さで塗布する。
【0022】
白金線用ペースト70の塗布を終了すると、グリーンシート2の上面における電極21を除いた箇所に、アルミナをコーティングし(図示せず)、リード部23を外部から絶縁する。
又、グリーンシート2の下面における、電極22、リード部24、及び、白金線用ペースト70を塗布した部分(以下、「ペースト塗布部」という。)を除いた箇所に絶縁やグリーンシート3を貼り合わせるためのアルミナをコーティングする(図示せず)。
【0023】
以上のようにして第1ポンプセル20を得る。
次に、グリーンシート3の両面に夫々、電極用ペーストを用いて、矩形状の電極31,32と、電極31,32に延設され、電極31,32よりも幅が細い長尺状のリード部33,34との電極パターンをスクリーン印刷する。但し、リード部33は、グリーンシート2のリード部24と対面するようにパターンを形成する。又、リード部34は、その先端部がグリーンシート3を介して、リード部33の反対側に位置するようにパターンを形成する。
【0024】
そして、グリーンシート3における電極31を形成する面の白金線5を挟持する箇所と、白金線6を挟持するリード部33の先端部とに白金線用ペースト70を10〜30μmの厚さで塗布する。又、同様に、グリーンシート3における電極32を形成する面の白金線7を挟持する箇所と、白金線8を挟持するリード部34の先端部とに白金線用ペースト70を10〜30μmの厚さで塗布する。
【0025】
白金線用ペースト70の塗布を終了すると、グリーンシート3の両面における電極パターンとペースト塗布部とを除く箇所に、外部から電極パターンとペースト塗布部とを絶縁するためのアルミナをコーティングする(図示せず)。
以上のようにして検出セル30を得る。
【0026】
そして、グリーンシート4の片面に、電極用ペーストを用いて、互いに隣り合う矩形状の電極41,42と、電極41,42に延設され、電極41,42よりも幅が細い長尺状のリード部43,44との電極パターンをスクリーン印刷する。
【0027】
電極パターンの形成を終了すると、白金線7挟持するリード部44の先端部と、白金線8を挟持するリード部43の先端部とに夫々、白金線用ペースト70を10〜30μmの厚さで塗布する。
そして、グリーンシート4における電極41,42が形成されている面(以下、「上面」という。)の電極パターンを除く箇所に、電極パターンを外部から絶縁するためのアルミナを塗布する(図示せず)。又、グリーンシート4における、上面とは反対側の面全体に、グリーンシート4を補強するためのアルミナをコーティングする(図示せず)。
【0028】
以上のようにして第2ポンプセル40を作製する。
このように各セルの作製を終えると、グリーンシート2とグリーンシート3との間、及び、グリーンシート3とグリーンシート4との間に、第1拡散抵抗体25、第2拡散抵抗体35を形成する多孔質体や、第1室26、第2室61を形成するカーボン材などをコーティングする。そして、白金線5,6,7,8を挟持させながら、全てのグリーンシートを積層し、所定の圧力(4.9×105Pa)にて圧着させる。更に、圧着させたグリーンシート2,3,4を1500℃の雰囲気に1時間曝して焼成させ、ガスセンサ1を得る。
【0029】
以上のように製造されたガスセンサ1では、白金線5,6,7,8を挟持する両側のグリーンシートの白金線挟持部に全て白金線用ペーストが塗布されているため、グリーンシート2,3における白金線5を挟持している部分や、グリーンシート3における白金線7を挟持している部分のように、電極パターンが形成されていない白金線挟持部であっても、急激な歪みが発生することがない。
【0030】
即ち、グリーンシートの焼成時に、グリーンシートが熱膨張しても、白金線挟持部に応力が集中し難くなるため、焼成時における、グリーンシートへのクラック発生率を低減させることができる。
ここで、上記効果を実証するために発明者が実証実験を行っている。
【0031】
この実証実験は、図4に示す、白金線75を挟持させたグリーンシート80,90の積層体100を複数用意し、これら積層体100のグリーンシート80,90を圧着、焼成させた際に、グリーンシートにクラックが発生した積層体100の数量を測定したものである。但し、白金線用ペースト85の塗布厚を30μmに設定した複数のグリーンシート80に対して、白金線用ペースト85の塗布厚を0、5、10、20、30、40、50、60、70、80μmに設定したグリーンシート90を各塗布厚ごとに複数用意し、グリーンシート90における白金線用ペースト85の塗布厚ごとに積層体100を分類し、実証実験を行っている。
【0032】
尚、積層体を構成するグリーンシート80,90は、長さ50mm、幅4.5mm、厚さ300μmに設定され、又、白金線75は、長さ10mm、径200μmに設定されている。そして、白金線用ペースト85とグリーンシート80,90の短手方向の端部との間には0.8mmの距離Wを確保し、この部分を圧着時の接着面とした。
【0033】
又、実証実験において、グリーンシート80,90は、4.9×105Paの圧力で圧着されたのち、1500℃の雰囲気に1時間曝され、焼成されている。
ここで、図5は、実証実験の結果を示すグラフであり、グリーンシート90に施した白金線用ペースト85の塗布厚に対するクラック発生率をグラフで表したものである。
【0034】
図5に示すように、グリーンシート90における白金線用ペースト85の塗布厚が0μmに設定した場合(つまり、グリーンシート90に白金線用ペーストを塗布していない場合)、焼成させた全ての積層体100にクラックが発生した。そして、塗布厚を5μmに設定した場合には、クラック発生率が塗布厚0μmのときに比べ12パーセントほど低下した。
【0035】
更に、塗布厚を10μに設定した場合には、クラック発生率が65パーセント程度に低下し、又、20μm以上の塗布厚に設定した場合には、クラックの発生が見受けられなかった。
つまり、グリーンシート80,90の両方に白金線用ペースト85を塗布することは、クラック発生率の低下に効果を有しており、10μm以上の塗布厚が特に効果的である。
【0036】
又、クラックの発生を回避するには、グリーンシート90に白金線用ペースト85を20μm以上の塗布厚で塗布することが望ましいといえる。
尚、グリーンシート90における白金線用ペースト85の塗布厚を80μm(つまり、距離Wの1/10)より大きく設定すると、グリーンシート80,90を圧着しても、白金線用ペーストの厚みにより、これらグリーンシート80,90間に隙間が生じる。このため、NOXセンサのように排気ガスに曝して用いるガスセンサでは、グリーンシート間に排気ガス中の水分が侵入し、ガスセンサの絶縁性能が低下する虞がある。
【0037】
従って、絶縁性能を低下させることなく、クラックの発生率を低下させるには、白金線用ペースト85の塗布厚は20μm〜80μmに設定することが望ましい。
更に、ガスセンサにおいて、白金線と電極との間のインピーダンスを著しく増加させないためには、白金線用ペースト85の塗布厚は10〜30μmに設定されていることが望ましい。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、本発明をNOXセンサの製造に用いたが、固体電解質からなるシート部材を積層してなると共に、導体線がシート部材間に挟持された形態の酸素センサやその他のガスを検出するガスセンサの製造に適用しても良い。
【0039】
又、上記実施形態では、グリーンシートは、ジルコニアからなっていたが、ハフニアの固溶体やペロブスカイト型酸化物固溶体、3価金属酸化物固溶体などからなっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る製造方法により製造されたNOXセンサ1の斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】NOXセンサ1の分解斜視図である。
【図4】発明者が実証実験に用いた積層体100の断面図である。
【図5】実証実験の結果を示すグラフである。
【図6】従来のガスセンサにおける白金線挟持部付近の断面図である。
【符号の説明】
1…NOXセンサ、 2…グリーンシート、 3…グリーンシート、 4…グリーンシート、 5…白金線、 6…白金線、 7…白金線、 8…白金線、 20…第1ポンプセル、 21…電極、 22…電極、 23…リード部、 24…リード部、 25…第1拡散抵抗体、 26…第1室、 27…スルーホール、 30…検出セル、 31…電極、 32…電極、 33…リード部、 34…リード部、 35…第2拡散抵抗体、 36…拡散孔、 40…第2ポンプセル、 41…電極、 42…電極、 43…リード部、 44…リード部、 50…絶縁層、 60…絶縁層、 61…第2室、 70…白金線用ペースト、75…白金線、 80…グリーンシート、 85…白金線用ペースト、 90…グリーンシート、 100…積層体、 200…ガスセンサ、 210…グリーンシート、 220…グリーンシート、 230…白金線、 240…白金ペースト、 250…クラック。
Claims (3)
- 板状に形成された固体電解質からなり、少なくとも片面に電極が形成されたシート部材を複数積層した本体と、
該本体のシート部材間に挟持され、一端側が前記シート部材の前記電極に接触すると共に、他端側が前記本体から突出する導体線と、
を有し、前記本体を構成するシート部材が焼成により一体化されるガスセンサの製造方法であって、
前記本体のシート部材間に前記導体線を挟み込む時には、該導体線を挟持する両側のシート部材の前記導体線が接触する部分にそれぞれ導体ペーストを塗布することを特徴とするガスセンサの製造方法。 - 前記導体ペーストの塗布厚は、前記シート部材における前記導体ペーストの塗布箇所の端部から該塗布箇所の端部に最も近い当該シート部材の端部までの距離の大きさの1/10以下の大きさに設定されていることを特徴とする請求項1記載のガスセンサの製造方法。
- 前記導体ペーストの成分は白金からなり、
前記塗布厚は、10〜30[μm]に設定されていることを特徴とする請求項2記載のガスセンサの製造方法。
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