JP3965028B2 - 酸化珪素膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法により基材上に酸化珪素膜を成膜するにあたり、基材に対して悪影響を及ぼすことの少ない酸化珪素膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品、医薬品、化学薬品等の包装には、水蒸気や酸素の透過防止のため、ガスバリア性のプラスチックフィルムが使用されている。そして、内容物の変質を防ぐためさらに良好な水蒸気や酸素の透過防止性が必要な用途には、高度なガスバリア性を有するフィルムが用いられている。
【0003】
このようなフィルムとしては、従来よりアルミ箔が知られているが、使用後の廃棄処理が問題になっている他に、基本的に不透明であり、内容物を外から見ることができない問題がある。このような問題点を解決するために、高いガスバリア性を有する酸化珪素膜をプラスチックフィルム上に成膜することにより、透明でかつ高度なガスバリア性をフィルムに付与する技術が提案されている。
【0004】
酸化珪素膜を基材上に成膜する手段としては、真空蒸着法やスパッタリング法、熱CVD法等があるが、いずれも基材を高温とする必要があることから、基材がポリエチレンフィルムである場合等の耐熱性に問題がある場合や、基材が半導体である場合等熱を加えることができない場合等においては用いることができないといった問題があった。
【0005】
このような問題を解決する手段として、プラズマCVD法が提案されている。プラズマCVD法によれば、基材の表面温度が100℃以下でも十分に酸化珪素膜を基材表面に成膜することが可能であり、上述した基材の耐熱性に問題がある場合や基材を加熱できない場合等に有効であることが確認されている。
【0006】
プラズマCVD法により酸化珪素膜を成膜する場合、原料ガスとして、有機珪素ガスと共に酸素ガスおよび不活性ガスが用いられる。この際、酸素ガスは、プラズマ中で有機珪素化合物、特に有機珪素化合物中の珪素−炭素結合を分解するために必要であり、また不活性ガスはプラズマを安定化させる等の効果があることから用いられている。
【0007】
しかしながら、有機珪素ガスと共にこの酸素ガスを用いた場合は、プラズマCVD法により酸化珪素膜を製造する際に、基材表面をエッチングしてしまうといった問題が生じる。また、不活性ガスを原料ガスに含めて用いた場合は、基材を黄変させてしまうという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、プラズマCVD法により酸化珪素膜を成膜する際に、原料ガスである有機珪素ガスと共に用いられる酸素原子を含む酸化性ガスもしくは不活性ガスによる基材に対する不具合を最小限に抑えることができる酸化珪素膜の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、反応チャンバー内での気化が可能であり、かつ下記化学式(1)または(2)で示される有機珪素化合物の内の少なくとも1種類を成分とする有機珪素ガスと、前記有機珪素ガスの体積を1とした場合に1以下の体積となる不活性ガスとを原料ガスとして用い、かつ酸素原子を含む酸化性ガスを原料ガス中に含まない状態で、反応チャンバー内でプラズマCVD法により基材に対して酸化珪素膜を成膜することを特徴とする酸化珪素膜の製造方法を提供する。
【化2】
【0011】
本発明において用いられる、置換基としてアルコキシ基を有する有機珪素化合物は、珪素とアルコキシ基の酸素との間での切断が比較的低いエネルギーで行なうことが可能であることから、酸素原子を有する酸化性ガスもしくは不活性ガスの存在が少ない場合、もしくは含まれていない場合であっても、問題無く基材上に酸化珪素膜を形成することができる。そのため、原料ガス中に酸素原子を含む酸化性ガスは不要である。よって、酸素原子を含む酸化性ガスを原料ガス中から除去することにより、基材に対するエッチングといった不具合を防止することができる。
【0012】
また、本発明においては上述した有機珪素ガスが用いられるため、比較的容易にプラズマ内で分解が生じイオン化され易い特性がある。したがって、不活性ガスの量が上述したように少ない場合であっても、プラズマを不安定化させることなく酸化珪素膜を形成することが可能となる。これにより、基材を黄変させることなくプラズマCVD法による酸化珪素膜の成膜を行なうことが可能となる。
【0015】
さらに、上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記不活性ガスを原料ガス中に含まないことがさらに好ましい。このように不活性ガスを含まなければ、基材の黄変を完全に防止することができ、基材に対するエッチングの防止と共に基材に対する不具合を効果的に防ぐことができるからである。
【0019】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記有機珪素ガスが、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランの内の少なくとも1種類を成分とするものであることが好ましい。これらの有機珪素化合物は、反応チャンバー内で気化し易く、取り扱いが容易であるからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸化珪素膜の製造方法について説明する。本発明の酸化珪素膜の製造方法における第1の特徴は、反応チャンバー内での気化が可能であり、かつ炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を成分とする有機珪素ガスと、上記有機珪素化合物1モルに対して14モル以下の酸素原子を含む酸化性ガスとを原料ガスとして用い、反応チャンバー内でプラズマCVD法により基材に対して酸化珪素膜を成膜するところにある。すなわち、プラズマCVD法による酸化珪素膜の製造方法において、原料ガスとして酸素原子を含有する酸化性ガスの使用量を低下させる、もしくは使用しないようにしたところに特徴を有するものである。
【0021】
ここで、本発明でいう酸素原子を含有する酸化性ガスとしては、N2O、酸素ガス、CO、CO2等を挙げることができるが、一般的には酸素ガスやN2Oが用いられる。
【0022】
本発明においては、有機珪素ガスとして、反応チャンバー内での気化が可能であり、かつ炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を成分とするガスを用いている。ここで、酸素原子を含有する酸化性ガスは、切断するためには比較的高いエネルギーを必要とする炭素−珪素結合を切断するために用いられるものである。したがって、このように有機珪素ガスとして炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を用いる本発明においては、原則的には上記酸素原子を有する酸化性ガスが不要となる。
【0023】
一方、この酸素原子を含有する酸化性ガスは、反応チャンバー内においてプラズマCVD法による酸化珪素膜の形成を行なう際に、基材をエッチングしてしまい、表面の平滑性を低下させてしまうといった不具合を有するものである。
【0024】
このような点から、本発明においては、上記炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物1モルに対して14モル以下の酸素原子を含む酸化性ガスを用いることにより、基材に対するエッチングといった不具合を低減させるようにしたものである。
【0025】
本発明においては、上記有機珪素化合物に対する酸素原子を含む酸化性ガスの含有量は少なければ少ないほど、基材に対するエッチングが生じないことから好ましいのであるが、上記有機珪素化合物の種類にもよるが、この有機珪素化合物を分解するのに必要な酸素原子は存在しても、理論的には基材に対するエッチングは生じない。このような観点から、本発明においては、上記炭素−珪素結合を分子内に有さない化合物1モルに対して14モル以下の酸素原子を含む酸化性ガス量とすることが好ましく、特に好ましくは1分子あたりに含むシリコン原子数(n)に対して
n=1((RO)4Siタイプ)ならば4モル以下、
n=2((RO)3Si−O−Si(RO)3タイプ)ならば、6モル以下である。最も好ましくは、酸素原子を含有する酸化性ガスを原料ガスとして全く含まないようにして形成する場合である。
【0026】
一方、本発明の第2の特徴は、反応チャンバー内での気化が可能であり、かつ炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を成分とする有機珪素ガスと、上記有機珪素ガスの体積を1とした場合に1以下の体積となる不活性ガスとを原料ガスとして用い、反応チャンバー内でプラズマCVD法により基材に対して酸化珪素膜を成膜するところにある。すなわち、プラズマCVD法による酸化珪素膜の製造方法において、原料ガスとして不活性ガスの使用量を低下させる、もしくは使用しないようにしたところに特徴を有するものである。
【0027】
ここで、本発明でいう不活性ガスとは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)といった希ガス類元素を意味するものであり、一般的にはヘリウムもしくアルゴン等が用いられる。
【0028】
本発明においては、有機珪素ガスとして、反応チャンバー内での気化が可能であり、かつ炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を成分とするガスを用いている。これは、比較的安定な炭素−珪素結合以外の結合により、珪素と他の有機置換基とが結合されていることを意味するものであり、プラズマ内において比較的分解され易い有機珪素化合物であることを意味するものである。このように、プラズマ内で分解され易いということは、分解された成分がイオン化することからプラズマの安定に寄与することになる。
【0029】
ここで、上記不活性ガスは、一般的にはプラズマCVDにより膜を形成する際のプラズマを安定させるため等に用いられるものである。したがって、このように有機珪素ガスとして炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を用いる本発明においては、原則的にはプラズマは安定していると考えられ、上記不活性ガスは不要となる。
【0030】
一方、この不活性ガスは、反応チャンバー内においてプラズマCVD法による酸化珪素膜の形成を行なう際に、基材を黄変させるという不具合を生じさせるものである。
【0031】
このような点から、本発明においては、上記炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を成分とする有機珪素ガスの体積を1とした場合に1以下の体積となる不活性ガスを原料ガスとして用いることにより、基材を黄変させるという不具合を低減させるようにしたものである。
【0032】
本発明においては、上記有機珪素化合物に対する不活性ガスの量は少なければ少ないほど、基材を黄変させる度合いが少なくなることから好ましいのであるが、用途によっては、ある程度の黄変は許容範囲である場合もある。このような観点から、本発明においては、上記炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物を成分とする有機珪素ガスの体積を1とした場合に1以下の体積となる不活性ガスのガス量とすることが好ましく、最も好ましくは、不活性ガスを原料ガスとして全く含まないようにして形成する場合である。
【0033】
本発明においては、上述した第1の特徴および第2の特徴は組み合わせて用いることが好ましい。例えば、酸素原子を有する酸化性ガスが上記有機珪素ガスの成分である有機珪素化合物1モルに対して14モル以下であり、かつ上記有機珪素ガスの体積1に対して不活性ガスの体積が1以下となるようにしてプラズマCVD法により酸化珪素膜を成膜した場合は、基材がエッチングされて平滑性が損なわれる不具合を低減することができると同時に、基材の黄変を低減することが可能となるのである。本発明においては、上記酸素原子を有する酸化性ガスおよび不活性ガスの含有量が少なくなる組み合わせとすることが好ましい組み合わせであるといえ、最も好ましい組み合わせは、酸素原子を有する酸化性ガスおよび不活性ガスが原料ガスとして全く用いらずに酸化珪素膜が製造される場合である。
【0034】
本発明においては、上述したように原料ガスとして用いられる有機珪素ガスが、炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物であるが、この炭素−珪素結合を分子内に有さない有機珪素化合物として好ましい化合物は、下記化学式(1)または化学式(2)で示される化合物であるといえる。
【0035】
【化3】
【0036】
この式で示される有機珪素化合物は、全て炭素が酸素を介して珪素と結合されているものであり、この酸素と珪素との結合は比較的不安定であり、小さいエネルギーで切断することが可能であることから、本発明においては好適であるといえる。
【0037】
さらに、本発明においては、上記有機珪素化合物がテトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランであることが好ましい。これらの有機珪素化合物は上記化学式で示される化合物の中でも低分子量のものであり、気化しやすいことから取り扱いが容易であるからである。
【0038】
ここで、有機珪素化合物がテトラメトキシシランであり、酸素原子を含有する酸化性ガスが酸素ガスである場合に、テトラメトキシシランを分解するために消費される酸素から換算した酸素ガス量の上限について説明する。
【0039】
通常TMOS(テトラメトキシシラン:Si(OCH3)4)を酸素添加により分解する場合に必要な酸素量は以下の通りである。
【0040】
分解生成物は通常、H2O、CO、CO2、およびCHxの形で分解する。ここで、CHxではCH4が生成し、全ての分解生成物は等しいモル数発生すると仮定する。また計算上Cが余る場合は、必要酸素量を最大限見積もる場合を仮定し、余ったC原子数分だけCO2が余計に生成されると仮定すると、TMOSの分解は以下の通り考えられる。
【0041】
TMOS+7O → SiO2+CO+2CO2+CH4+4H2O
であるので、TMOSが1モルに対して、酸素原子7モルが必要と考えられる。したがって、これ以下の酸素量であれば、基材のエッチングに供される酸素は理論的上存在せず、よってエッチングは生じにくいと考えることができる。
【0042】
次にテトラエトキシシラン(TEOS)について考察すると、同様の計算からTEOSが1の体積量を分解するのに、酸素原子は14モル必要と考えられる。したがって、これ以下の酸素量であれば、基材のエッチングは生じにくいと考えることができる。
【0043】
本発明は、このような原料ガスを用いて反応チャンバー内でプラズマCVD法により基材に対して酸化珪素膜を成膜する。ここで、本発明で用いるプラズマCVD法としては、特に限定されるものではなく、誘導結合型であっても、容量結合型であってもよく、またリモートプラズマ方式であってもダイレクト方式であっても用いることが可能である。また、用いる反応チャンバーの形状等に関しても特に限定されるものではないが、通常は、長尺の高分子樹脂フィルムを基材として用い、それを搬送させながら連続的に酸化珪素膜を形成することができる連続成膜可能な装置が好ましく用いられる。
【0044】
また、本発明の酸化珪素膜の製造方法により得られる酸化珪素膜が、ガスバリアフィルムとして用いる場合の基材としては、上述した酸化珪素膜を保持することができるフィルムであれば特に限定されるものではなく、いかなるフィルムをも用いることができる。
【0045】
具体的には、
・エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、
・環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、
・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、
・ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、
・ポリイミド(PI)樹脂、
・ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、
・ポリサルホン(PS)樹脂、
・ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、
・ポリカーボネート(PC)樹脂、
・ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、
・ポリアリレート(PAR)樹脂、
・エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、
等を用いることができる。
【0046】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、上記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材フィルムとして用いることも可能である。
【0047】
上記に挙げた樹脂等を用いた本発明の基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0048】
本発明の基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0049】
また、本発明に用いられる基材においては、上記酸化珪素膜を形成する前にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理などの表面処理を行ってもよい。
【0050】
さらに、このような基材の表面には、酸化珪素膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0051】
基材は、ロール状に巻き上げられた長尺品が便利である。基材の厚さは、得られるガスバリアフィルムの用途によって異なるので一概には規定できないが、一般的な包装材料やパッケージ材料用の基材として用いる場合には、3〜188μmが好ましい。
【0052】
このようなフィルム上に上記本発明の酸化珪素膜の製造方法により酸化珪素膜を形成してガスバリアフィルムとするためには通常5〜300nm程度の膜厚で形成される。酸化珪素膜の厚さが5nm未満の場合は、酸化珪素膜が基材の全面を覆うことができないことがあり、ガスバリア性を向上させることができない。一方、酸化珪素膜の厚さが300nmを超えると、クラックが入り易くなること、透明性や外観が低下すること等の不具合が起こり易くなるからである。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】
【実施例】
以下、本発明の酸化珪素膜について、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1:酸素ガス(酸化性ガス))
[実施例1−1]
図1に示すように、基材20としてシート状(30cm×21cm)の2軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績社製、E5101、厚さ100μm)を準備し、プラズマCVD装置101のチャンバー102内の下部電極114にコロナ未処理面を上側(成膜面側)として装着した。
【0056】
次に、CVD装置101のチャンバー内102内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。
【0057】
原料ガスとして、テトラメトキシシラン(TMOS)ガス(信越化学工業(株)製、KBM−04)のみを用いた。
【0058】
次に下部電極114に90kHzの周波数を有する電力(投入電力150W)を印加した。そしてチャンバー102内の電極近傍に設けられたガス導入口109から、テトラメトキシシラン5sccmを導入し、真空ポンプ108とチャンバー102との間にあるバルブ113の開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内圧力を0.25Torrに保ち、バリア層付き基材上に酸化珪素膜の成膜を行った。ここでsccmとはstandard cubic centimeter per minuteの略である。成膜時間は5分間として、実施例1−1の酸化珪素膜を得た。
【0059】
[実施例1−2]
原料ガスとして、酸素ガスをTMOS1モルに対して7モルとなるように導入した以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−2の酸化珪素膜を得た。
【0060】
[比較例1−1および1−2]
原料ガスとして、酸素ガスをTMOS1モルに対して、それぞれ20モル、40モルとなるように導入した以外は、実施例1−1と同様にして比較例1−1および1−2の酸化珪素膜を得た。
【0061】
[実施例1−3]
原料ガスとして、テトラエトキシシラン(TEOS)ガス(信越化学工業(株)製、KBE−04)のみを用いた以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−3の酸化珪素膜を得た。
【0062】
[実施例1−4]
原料ガスとして、酸素ガスをTEOS1モルに対して14モルとなるように導入した以外は、実施例1−3と同様にして実施例1−4の酸化珪素膜を得た。
【0063】
[比較例1−3および1−4]
原料ガスとして、酸素ガスをTEOS1モルに対して、それぞれ20モル、40モルとなるように導入した以外は、実施例1−3と同様にして比較例1−3および1−4の酸化珪素膜を得た。
【0064】
[比較例1−5〜1−8]
原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス(東レダウコーニングシリコーンSH-200 0.65cSt)を用いた以外は、実施例1−1と同様にして比較例1−5の酸化珪素膜を得た。さらに酸素ガスをHMDSO1モルに対して、それぞれ14モル、20モル、40モル導入した以外は比較例1−5と同様にして比較例1−6〜1−8の酸化珪素膜を得た。
【0065】
(評価方法)
1.ガス透過試験
酸素ガス透過率は、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/20)を用い、23℃、ドライ(0%Rh)の条件で測定した。水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31)を用い、37.8℃、100%Rhの条件で測定した。
【0066】
2.表面粗さ
測定には Digital Instruments製、セイコー電子製、Topometrix製等のAFMを使用できるが、今回はDigital Instruments製のNano Scpoe IIIを使用した。そして、この場合には、タッピングモードで表面形状を500nm×500nmの面積で測定したAFM像について、表面粗さとしてRMS(最小自乗平均)値を測定した。
【0067】
なお、上記タッピングモードとは、Q. Zongらが Surface Science Letter, 1993年 Vol.290, L688-690に説明している通りであり、ピエゾ加振器を用いて、先端に探針を付けたカンチレバーを共振周波数近傍(約50〜500MHz)で加振させ、試料表面上を断続的に軽く触れながら走査する方法であって、検出される振幅の変化量を一定に維持するように、カンチレバーの位置を凹凸方向(Z方向)に移動させ、このZ方向への移動に基づいた信号と平面方向(XY方向)の信号とによって3次元表面形状を測定する方法である。
【0068】
(評価結果)
評価結果を以下の表1にまとめる。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例2:ヘリウムガス(不活性ガス))
[実施例2−1]
実施例1−1と同様にして酸化珪素膜を形成し、実施例2−1の酸化珪素膜とした。
【0071】
[実施例2−2]
原料ガスとして、ヘリウムガスをTMOSの体積1に対して1となるように導入した以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−2の酸化珪素膜を得た。
【0072】
[比較例2−1〜2−3]
原料ガスとして、ヘリウムガスをTMOSの体積1に対して、それぞれ2、5、および10となるように導入した以外は、実施例2−1と同様にして比較例2−1、2−2および2−3の酸化珪素膜を得た。
【0073】
[実施例2−3]
原料ガスとして、テトラエトキシシラン(TEOS)ガス(信越化学工業(株)製、KBE−04)のみを用いた以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−3の酸化珪素膜を得た。
【0074】
[実施例2−4]
原料ガスとして、ヘリウムガスをTEOSの体積1に対して1となるように導入した以外は、実施例2−3と同様にして実施例2−4の酸化珪素膜を得た。
【0075】
[比較例2−5〜2−7]
原料ガスとして、ヘリウムガスをTEOSの体積1に対して、それぞれ2、5、および10となるように導入した以外は、実施例2−3と同様にして比較例2−5、2−6および2−7の酸化珪素膜を得た。
【0076】
[比較例2−8〜2−12]
原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス(東レダウコーニングシリコーンSH-200 0.65cSt)を用いた以外は、実施例2−1と同様にして比較例2−8の酸化珪素膜を得た。さらにヘリウムガスをHMDSOの体積1に対して、それぞれ1、2、5、および10となるように導入した以外は比較例2−8と同様にして比較例2−9〜2−12の酸化珪素膜を得た。
【0077】
(評価方法)
1.ガス透過試験
実施例1の場合と同様にして測定した。
【0078】
2.ΔYi
YiとはYellowness Indexのことで、光学的に透過で測定し、白色標準板との比較でどのくらい黄色味を帯びているか示すものである。この値が大きいほど黄色いことを示す。ΔYiはリファレンスとのYi値の差を表す。
【0079】
単体で見て(比較サンプルなしで)人間の目で見て黄色いと感じるのが大体0.5以上であるので、0.5を基準として判断した。
【0080】
(評価結果)
評価結果を以下の表2にまとめる。
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、原料ガスとして用いられる有機珪素化合物が、炭素−珪素結合を有するものではないので、この結合を分解するために用いられる酸素原子を含む酸化性ガスを上述したように最小限とすることができ、これにより基材に対するエッチングといった不具合を最小限とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマCVD装置の一例を示す構成図である。
Claims (3)
- 不活性ガスを原料ガス中に含まないことを特徴とする請求項1に記載の酸化珪素膜の製造方法。
- 前記有機珪素ガスが、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランの内の少なくとも1種類を成分とするものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化珪素膜の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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