以下、添付の図面に基づいて、本発明による洗浄乾燥装置および洗浄乾燥方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
図1には、本発明による洗浄乾燥装置の第1の実施の形態の一部を破断して示した概念構成説明図が示されており、図2には、図1に示すA−A線における断面図が示されている。
図1に示す洗浄乾燥装置10は、被洗浄物200を内部12aに配置するために上部に開閉可能な蓋部12bを設けるとともに内部12aを真空に保持可能とされた処理槽12と、処理槽12に接続され溶剤400の蒸気を生成する溶剤蒸気発生器14と、処理槽12に接続され処理槽12の内部12aを減圧するための減圧用ポンプ16と、処理槽12と減圧用ポンプ16との間に配設された溶剤回収用トラップ18とを有して構成されている。
処理槽12は、略矩形形状に形成された底面部12cと、当該底面部12cから立設された側壁部たる左右の側壁部12d,12eならびに側壁部12d,12eを連結する前壁部12f(図2参照)、後壁部12g(図2参照)と、上方側において開口し蓋部12bによって被覆される開口部12hとを有して構成されている。
そして、蓋部12bが閉じられて形成される処理槽12の内部12aは、底面部12c近傍に配設された隔壁20によって上部空間12iと下部空間12kとに仕切られている。ここで、隔壁20においては、排液用バルブ102を有した排液用配管104の一方の端部が上部空間12iに開放するようにして開口している。この排液用バルブ102を開けると、排液用配管104を介して処理槽12の上部空間12iが外部と連通すようになされている。
また、処理槽12の上部空間12i側に被洗浄物200が配置されるものであり、側壁部12eの開口部12h近傍に配設されたリークバルブ106を開放すると、上部空間12iが外部と連通するようになされている。
一方、下部空間12k内には間接加熱用オイル300が貯留されるとともに、間接加熱用オイル300を加熱するためのヒーター22ー1,22−2が配設されている。間接加熱用オイル300としては、例えば、一般に市販されている熱媒体油を用いることができ、ヒーター22−1,22−2によって加熱され、常温から130℃の範囲内で温度調整が可能なものである。
また、処理槽12の外周側を取り囲み、左右の側壁部12d,12e、前壁部12fならびに後壁部12gとの間に側方空間12mを形成するようにして外周壁24が配設されている。この外周壁24は、例えば、ステンレス鋼により形成されており、溶接によって側壁部12d,12e、前壁部12fならびに後壁部12gに組み付けられている。
そして、外周壁24には、オイル循環用ポンプ108を有したオイル供給用配管110とオイル排出用配管112とが接続されている。これらオイル供給用配管110とオイル排出用配管112とはいずれも、一方の端部側は、側方空間12m内に開放するようにして外周壁24において開口しており、他方の端部側は、下部空間12k内に開放するようにして処理槽12の側壁部12d,12eにおいて開口している。従って、オイル循環用ポンプ108の駆動により、オイル供給用配管110を介して、下部空間12k内においてヒーター22−1,22−2によって加熱された間接加熱用オイル300が側方空間12m内に供給されるとともに、オイル排出用配管112を介して、側方空間12m内の間接加熱用オイル300が下部空間12k内に排出される。
溶剤蒸気発生器14は、内部30aに溶剤400が貯留される溶剤槽30と、溶剤槽30を加熱するための加熱槽32とを有して構成されている。加熱槽32内には間接加熱用オイル302が貯留されるとともに、間接加熱用オイル302を加熱するためのヒーター34−1,34−2が配設されている。
なお、溶剤槽30の内部30aに貯留される溶剤400としては、例えば、炭化水素系の洗浄剤(液体)を用いることができる。こうした炭化水素系の洗浄剤は、大気圧下での沸点は200℃弱であるものの、減圧下における沸点は100℃程度にまで低下するものである。また、間接加熱用オイル302としては、上記した間接加熱用オイル300と同様に、例えば、一般に市販されている熱媒体油を用いることができ、ヒーター34−1,34−2によって加熱され、常温から130℃の範囲内で温度調整が可能なものである。
溶剤蒸気発生器14には、溶剤槽30の内部30aにおいて生成された溶剤400の蒸気を、処理槽12に導入するための蒸気導入用配管114が接続されている。この蒸気導入用配管114には蒸気供給用バルブ116が備えられており、蒸気導入用配管114の一方の端部側は溶剤槽30の内部30aに開放するようにして溶剤槽30に接続され、他方の端部側は処理槽12の上部空間12iに開放するようにして処理槽12の側壁部12dの開口部12h近傍において開口している。従って、蒸気供給用バルブ116を開けると、蒸気導入用配管114を介して溶剤蒸気発生器14の溶剤槽30の内部30aと処理槽12の上方空間12iとが連通する。
溶剤回収用トラップ18は、回収された溶剤400が内部18aに貯留されるものであり、内部18aには冷却コイル40が配設されている。また、溶剤回収用トラップ18には、排気用バルブ118を有した排気用配管120と、排液用バルブ122を有した排液用配管124とが接続されている。
排気用配管120の一方の端部側は、溶剤回収用トラップ18の内部18aに開放するようにして溶剤回収用トラップ18に接続されており、他方の端部側は、処理槽12の上部空間12iに開放するようにして処理槽12の側壁部12eの開口部12h近傍において開口している。従って、排気用バルブ118を開けると、排気用配管120を介して溶剤回収用トラップ18の内部18aと処理槽12の上部空間12iとが連通する。
なお、溶剤回収用トラップ18の内部18aに位置する排気用配管120の一方の端部の外周側に、冷却コイル40が配設されるように設計されている。
一方、排液用配管124の一方の端部側は、溶剤回収用トラップ18の内部18aに開放するようにして溶剤回収用トラップ18の底部18bにおいて開口しており、排液用バルブ122を開けると、排液用配管124を介して溶剤回収用トラップ18の内部18aが外部と連通するようになされている。
また、溶剤回収用トラップ18の側面部18cには、減圧するための減圧用配管126が接続されており、当該減圧用配管126には減圧バルブ128ならびに減圧用ポンプ16が備えられている。
以上の構成において、本発明による洗浄乾燥装置10を用いて被洗浄物200の洗浄乾燥を行うには、まず、溶剤蒸気発生器14において、溶剤400を溶剤槽30の内部30aに貯留するとともに、ヒーター34−1,34−2によって加熱槽32内の間接加熱用オイル302を加熱する。こうして加熱された間接加熱用オイル302によって溶剤槽30が加熱され、溶剤槽30の内部30aに貯留された溶剤400が所定の温度に加熱される。この際、溶剤400が加熱される所定の温度とは、溶剤400が大気圧下で沸点に達する温度より低い温度である。
一方、処理槽12においては、リークバルブ106を開放して、上部空間12iを外部と連通させて大気圧する。
また、処理槽12においては、ヒーター22−1,22−2によって下部空間12k内の間接加熱用オイル300を加熱するとともに、オイル循環用ポンプ108を駆動する。すると、加熱された間接加熱用オイル300が、下部空間12k内からオイル供給用配管110を介して側方空間12m内に供給され、さらに、側方空間12m内からオイル排出用配管112を介して下部空間12k内に排出されるようになって循環する。
図2においては、循環する間接加熱用オイル300の流れを破線矢印で示しており、こうして循環する加熱された間接加熱用オイル300により、処理槽12の左右の側壁部12d,12e、前壁部12fならびに後壁部12gが所定の温度に加熱される。また、上部空間12iと下部空間12kとを仕切る隔壁20も、加熱された間接加熱用オイル300によって所定の温度に加熱される。この際、処理槽12の左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20が加熱される所定の温度とは、間接加熱用オイル302によって溶剤400が加熱される所定の温度と一致するように設定されており、溶剤400が大気圧下で沸点に達する温度より低い温度である。
上記したようにして、処理槽12の左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20が所定の温度に加熱され、上部空間12iが大気圧に維持された状態で、処理槽12の蓋部12bを開けて被洗浄物200を上部空間12iに配置する。
そして、蓋部12bを閉じ、リークバルブ106を閉じてから、減圧用ポンプ16を動作させる。こうして減圧用ポンプ16を動作させ、減圧バルブ128を開けて、減圧用配管126が接続されている溶剤回収用トラップ18の内部18aを減圧する。さらに、排気用バルブ118を開け、溶剤回収用トラップ18の内部18aと排気用配管120を介して連通している処理槽12の上部空間12iを減圧する。
こうして減圧用ポンプ16の動作によって、溶剤回収用トラップ18の内部18aと処理槽12の上部空間12iとを減圧し、さらに蒸気供給用バルブ116を開けて、処理槽12の上方空間12iと蒸気導入用配管114を介して連通している溶剤蒸気発生器14の溶剤槽30の内部30aを減圧する。こうして減圧される溶剤回収用トラップ18の内部18a、処理槽12の上部空間12iならびに溶剤槽30の内部30aは、減圧用ポンプ16が動作している減圧時には、いずれもほぼ同じ圧力となり、例えば、およそ4500Pa(33.8Torr)の真空度を有するようになる。
ここで、溶剤蒸気発生器14においては、加熱された間接加熱用オイル302によって溶剤槽30の内部30aに貯留された溶剤400が所定の温度、即ち、大気圧下で沸点に達する温度より低い温度に加熱されているので、この溶剤槽30の内部30aが減圧されると、溶剤400の沸点が低下して溶剤400が沸騰する。すると、溶剤槽30の内部30aには多量の溶剤400の蒸気が発生する。
溶剤槽30の内部30aにおいて発生した溶剤400の蒸気は、蒸気供給用バルブ116が開いているので、蒸気導入用配管114を介して溶剤槽30の内部30aから処理槽12の上方空間12iに供給される。
処理槽12の上方空間12iに供給された溶剤400の蒸気は、上部空間12iに配置された被洗浄物200に接触する。この際、被洗浄物200は溶剤400の蒸気より低い温度なので、被洗浄物200は接触した溶剤400の蒸気から熱を受け取る。一方、被洗浄物200に熱を渡した溶剤400の蒸気は、被洗浄物200の表面において凝縮して液化する。こうして液化した溶剤400が被洗浄物200の表面を流れることにより、被洗浄物200の表面に残留している処理液やパーティクルなどの汚染物質などが洗い流されて物理的に除去されたり、液化した溶剤400である炭化水素系の洗浄剤によって汚染物質などが溶解されて化学的に除去されて、被洗浄物200が洗浄される。
ここで、蒸気導入用配管114を介して上方空間12iに溶剤400の蒸気が供給される処理槽12は、処理槽12を構成する左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20が間接加熱用オイル300によって所定の温度に加熱されているため、溶剤400の蒸気より低い温度にはならない。その結果、上方空間12iに供給された溶剤400の蒸気が、処理槽12を構成する左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20に接触しても、左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20において凝縮することはない。
そして、被洗浄物200の表面を流れる液化した溶剤400は、隔壁20に滴下する。この際、排液用バルブ102は閉じており、隔壁20は間接加熱用オイル300によって所定の温度に加熱されているので、隔壁20に滴下した溶剤400は再び加熱されて蒸発し溶剤400の蒸気となる。
従って、処理槽12の上部空間12iは、溶剤槽30の内部30aから蒸気導入用配管114を介して供給される溶剤400の蒸気と、隔壁20に滴下した溶剤400が蒸発して生成される溶剤400の蒸気とで満たされることになり、これら溶剤400の蒸気によって上部空間12iに配置された被洗浄物200は高速で洗浄され、短時間で洗浄を終了することができる。また、高速での洗浄と同時に、被洗浄物200は接触する溶剤400の蒸気から熱を受け取って、高速で溶剤400の蒸気の温度にまで加熱される。
こうして短時間のうちに被洗浄物200が溶剤400の蒸気の温度にまで加熱された後、蒸気供給用バルブ116を閉じ、溶剤槽30の内部30aから処理槽12の上部空間12iへの溶剤400の蒸気の供給を止める。ここで、処理槽12の上部空間12iにおいては、被洗浄物200の表面を流れて隔壁20上に滴下した溶剤400が溜まっているので、排液用バルブ102を開けて、隔壁20上に溜まった溶剤400を排液用配管104を介して処理槽12の外部に排出する。隔壁20上に溜まった溶剤400の排液が終了したならば、排液用バルブ102を閉じる。
そして、洗浄が終了し表面が溶剤400で濡れている被洗浄物200が処理槽12の上部空間12iに配置された状態で、蒸気供給用バルブ116を閉じた後も、減圧用ポンプ16の動作を継続させて、溶剤回収用トラップ18の内部18aと処理槽12の上部空間12iとを減圧し続ける。こうして処理槽12の上部空間12iの減圧を継続することにより、被洗浄物200の表面に残留した溶剤400は、溶剤400の蒸気の温度にまで加熱されている被洗浄物200から熱を受け取って蒸発し、即ち、蒸気圧に達して蒸発し、被洗浄物200が乾燥される。
なお、被洗浄物200を乾燥する際には排気用バルブ118が開いているので、処理槽12の上部空間12iが減圧されると、上部空間12iに充満している溶剤400の蒸気を含む気体が、処理槽12の上部空間12iから排気用配管120を介して溶剤回収用トラップ18の内部18aへの排気される。ここで、排気用配管120の溶剤回収用トラップ18の内部18aに位置する一方の端部の外周側に配設された冷却コイル40によって、処理槽12の上部空間12iから排気された気体が冷却され、液化した溶剤400が溶剤回収用トラップ18の底部18bに溜まる。こうして溶剤回収用トラップ18の底部18bに溜まった溶剤400は、排液用バルブ124を開け排液用配管124を介して回収できる。
また、隔壁20上に溜まった溶剤400の排液が終了した後において、少量の溶剤400が隔壁20上に残留していた場合には、処理槽12の上部空間12iの減圧を継続することにより、隔壁20上に残留した溶剤400は、間接加熱用オイル300によって所定の温度に加熱されている隔壁20から熱を受け取って蒸発し、隔壁20が乾燥される。
こうして被洗浄物200の乾燥が終了したならば、排気用バルブ118を閉じて、減圧用ポンプ16を停止する。そして、リークバルブ106を開放して、処理槽12の上部空間12iを大気圧にするとともに、減圧バルブ128を開いて、減圧用配管126ならびに溶剤回収用トラップ18の内部18aを大気圧に戻す。こうして上部空間12iが大気圧に維持された状態で、処理槽12の蓋部12bを開けて、洗浄乾燥が終了した被洗浄物200を上部空間12iから取り出す。
上記したようにして、本発明による洗浄乾燥装置10においては、被洗浄物200の蒸気洗浄と乾燥とが行われる処理槽12の上部空間12iを形成する、左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20が、循環する間接加熱用オイル300によって所定の温度に加熱されるようにしたため、上方空間12iに供給された溶剤400の蒸気が、処理槽12の左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20において凝縮せずに、上部空間12iに配設された被洗浄物200の表面において凝縮して液化するようになる。
このため、被洗浄物200の蒸気洗浄に必要な溶剤蒸気量以上の多量の溶剤蒸気を必要とせず、必要な量の溶剤蒸気のみを発生させて、被洗浄物200の十分な蒸気洗浄を行うことができる。つまり、本発明によれば、多量の溶剤を使用することなしに被洗浄物200を洗浄でき、溶剤の使用量は少量ですみので、溶剤の蒸気を生成するための溶剤蒸気発生器14は小型なもので十分であり、装置全体の省スペース化を実現することができるとともに、溶剤の蒸気を生成するのに多量の溶剤を加熱する必要がないので非常に省エネルギーである。
また、本発明による洗浄乾燥装置10においては、溶剤400の蒸気が被洗浄物200の表面において凝縮して液化し、被洗浄物200の表面から流れ落ちて滴下しても、液化した溶剤が滴下する処理槽12の部位、即ち、隔壁20が間接加熱用オイル300によって所定の温度に加熱されているので、液相の溶剤は直ちに溶剤の蒸気となる。そして、隔壁20によって再び蒸発して生成された溶剤400の蒸気は、溶剤蒸気発生器14から供給される溶剤400の蒸気とともに被洗浄物200を蒸気洗浄するので、被洗浄物100を高速で蒸気洗浄できる。その結果、短時間で被洗浄物の洗浄を行うことができ、装置のスループットも速くなる。
次に、図3を参照しながら、本発明による洗浄乾燥装置の第2の実施の形態を説明する。
なお、図3以降の各図に示す構成において、図1ならびに図2に示す構成と同一または相当する構成については図1ならびに図2と同一の符号を用いて示すことにより、その構成ならびに作用の詳細な説明は省略するものとする。
ここで、本発明による洗浄乾燥装置の第2の実施の形態(図3参照)と本発明による洗浄乾燥装置の第1の実施の形態(図1参照)とを比較すると、上記した本発明による第1の実施の形態の洗浄乾燥装置10は、排液用バルブ102を有した排液用配管104が処理槽12の隔壁20において開口しているのに対して、本発明による第2の実施の形態の洗浄乾燥装置210は、排液用バルブ202を有した排液用配管204が溶剤回収用トラップ18の内部18aと処理槽12の上方空間12iとを連通するようにして接続されている点において、第1の実施の形態の洗浄乾燥装置10と異なっている。
より詳細には、排液用配管204の一方の端部側は、溶剤回収用トラップ18の内部18aに開放するようにして溶剤回収用トラップ18の側面部18cの底部18b近傍において開口しており、他方の端部側は、処理槽12の上部空間12iに開放するようにして処理槽12の側壁部12eの隔壁20近傍において開口している。従って、排液用バルブ202を開けると、排液用配管204を介して溶剤回収用トラップ18の内部18aと処理槽12の上部空間12iとが連通する。
ここで、処理槽12の側壁部12eにおいては、開口部12h近傍において排気用配管120の他方の端部側が上部空間12iに開放するようにして開口しており、隔壁20近傍において排液用配管204の他方の端部側が上部空間12iに開放するようにして開口している。つまり、処理槽12の高さ方向における上方側に排気用配管120の開口部である排気口120aが位置するとともに、下方側に排液用配管204の開口部である排液口204aが位置している。
以上の構成において、本発明による洗浄乾燥装置210を用いて被洗浄物200の洗浄乾燥を行う際の動作について説明する。なお、上記した第1の実施の形態の洗浄乾燥装置10(図1参照)と同様な点については、上記した説明を援用することにより、その詳細な説明は省略することとする。
即ち、上記した第1の実施の形態の洗浄乾燥装置10と異なる動作としては、洗浄乾燥装置210においては、溶剤槽30の内部30aから蒸気導入用配管114を介して供給される溶剤400の蒸気と、隔壁20に滴下した溶剤400が蒸発して生成される溶剤400の蒸気とによって被洗浄物200が洗浄されている間は、排液用バルブ202は閉じられている。
そして、溶剤400の蒸気による高速での洗浄に際して、接触する溶剤400の蒸気から熱を受け取って高速で溶剤400の蒸気の温度にまで被洗浄物200が加熱された後、蒸気供給用バルブ116を閉じて、溶剤槽30の内部30aから処理槽12の上部空間12iへの溶剤400の蒸気の供給を止める。
こうして洗浄が終了し表面が溶剤400で濡れている被洗浄物200が処理槽12の上部空間12iに配置された状態で、蒸気供給用バルブ116を閉じた後も、減圧用ポンプ16の動作を継続させて、溶剤回収用トラップ18の内部18aと処理槽12の上部空間12iとを減圧し続ける。こうして処理槽12の上部空間12iの減圧を継続することにより、被洗浄物200の表面に残留した溶剤400は、溶剤400の蒸気の温度にまで加熱されている被洗浄物200から熱を受け取って蒸発し、被洗浄物200が乾燥される。
また、蒸気供給用バルブ116を閉じた後も減圧用ポンプ16の動作を継続させて被洗浄物200を乾燥する際には、排液用バルブ202を開けておく。すると、減圧用ポンプ16の動作によって溶剤回収用トラップ18の内部18aと処理槽12の上部空間12iとが減圧されるのに伴って、被洗浄物200の表面を流れて滴下し隔壁20上に溜まっている溶剤400が、排液用配管204を介して、溶剤回収用トラップ18の内部18aに迅速に排出される。そして、隔壁20上に溜まった溶剤400の排液が終了したならば、排液用バルブ202を閉じる。
上記したようにして、本発明による洗浄乾燥装置210は、上記した第1の実施の形態の洗浄乾燥装置10と同様の効果を奏するものであり、多量の溶剤を使用することなしに被洗浄物200を洗浄でき、短時間で被洗浄物の洗浄を行うこともできる。
さらに、本発明による洗浄乾燥装置210においては、処理槽12の高さ方向における上方側に排気口120aを形成するとともに下方側の最下部に排液口204aを形成し、これら排気口120aを形成する排気用配管120ならびに排液口204aを形成する排液用配管204とが接続された溶剤回収用トラップ18を介して減圧用ポンプ16を配設するようにしている。
このため、本発明による洗浄乾燥装置210によれば、排液口204aを開放して減圧用ポンプ16を動作させると、処理槽12の隔壁20上に溜まった液相の溶剤400が、強制的かつ迅速に排液されて溶剤回収用トラップ18に貯留される。その結果、短時間で処理槽12内の不要な溶剤400を全て排液することができ、洗浄にかかる時間を短縮できるので、非常に短時間で被洗浄物の洗浄を行うことができ、装置のスループットがより一層速くなる。
次に、図4を参照しながら、本発明による洗浄乾燥装置の第3の実施の形態を説明する。
ここで、本発明による洗浄乾燥装置の第3の実施の形態(図4参照)と本発明による洗浄乾燥装置の第2の実施の形態(図3参照)とを比較すると、本発明による第3の実施の形態の洗浄乾燥装置220は、溶剤蒸気発生器14に排気用配管222と不活性ガス供給配管224とを配設している点において、第2の実施の形態の洗浄乾燥装置210と異なっている。
より詳細には、排気用配管222には排気用バルブ226ならびに排気用ポンプ228が備えられており、排気用配管222の一方の端部側は、溶剤槽30の内部30aに開放するようにして接続されている。従って、排気用バルブ226を開けて排気用ポンプ228を動作させると、排気用配管222を介して溶剤槽30の内部30aの気体が排気可能とになされている。
一方、不活性ガス供給配管224には、不活性ガス供給バルブ225が備えられており、不活性ガス供給配管224の一方の端部側は、溶剤槽30の内部30aに開放するようにして接続されている。そして、不活性ガス供給配管224を介して、図示しないタンクから溶剤槽30の内部30aには不活性ガスが供給可能となされている。なお、不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスを用いることができる。
以上の構成において、本発明による洗浄乾燥装置220を用いて被洗浄物200の洗浄乾燥を行う際の動作について説明する。なお、上記した第2の実施の形態の洗浄乾燥装置210(図3参照)と同様な点については、上記した説明を援用することにより、その詳細な説明は省略することとする。
即ち、上記した第2の実施の形態の洗浄乾燥装置210と異なる動作としては、洗浄乾燥装置220においては、被洗浄物200の洗浄のために溶剤蒸気発生器14の溶剤槽30の内部30aに溶剤400の蒸気を発生させるのに先だって、まず、排気用バルブ226を開けて排気用ポンプ228を動作させ、排気用配管222を介して溶剤槽30の内部30aにある酸素(空気)を排気する。
あるいは、不活性ガス供給バルブ225を開けて、図示しないタンクから不活性ガス供給配管224を介して溶剤槽30の内部30aに不活性ガスを供給する。すると、溶剤槽30の内部30aにある酸素が供給された不活性ガスに置換される。
こうして溶剤槽30の内部30aにある酸素を、排気するか、あるいは、不活性ガスで置換した後に、溶剤槽30の内部30aに貯留された溶剤400を間接加熱用オイル302によって所定の温度に加熱し、溶剤槽30の内部30aを減圧して溶剤400を沸騰させて溶剤400の蒸気を発生させる。
そして、発生した溶剤400の蒸気は、溶剤槽30の内部30aから蒸気導入用配管114を介して処理槽12の上部空間12iに供給されて被洗浄物200の洗浄に用いられる。この際、溶剤槽30の内部30aにある酸素が不活性ガスに置換された場合には、溶剤400の蒸気とともに不活性ガスも蒸気導入用配管114を介して処理槽12の上部空間12iに供給されることがある。
上記したようにして、本発明による洗浄乾燥装置220は、上記した第1の実施の形態の洗浄乾燥装置10ならびに第2の実施の形態の洗浄乾燥装置210と同様の効果を奏するものであり、多量の溶剤を使用することなしに被洗浄物200を洗浄でき、短時間で被洗浄物の洗浄を行うこともできて、装置のスループットがより一層速くなるものである。
さらに、本発明による洗浄乾燥装置220においては、溶剤蒸気発生器14に、排気用バルブ226ならびに排気用ポンプ228が備えられた排気用配管222や、図示しないタンクから不活性ガスを供給する不活性ガス供給配管224を配設するようにしたため、溶剤槽30の内部30aにある酸素が排気または不活性ガスで置換される。その結果、被洗浄物200の蒸気洗浄に必要な溶剤の蒸気を発生させるために、溶剤蒸気発生器14の溶剤槽30の内部30aが、加熱された溶剤(液相)と溶剤蒸気とで満たされているものの、内部30aにある酸素が排気または不活性ガスで置換されているので、引火の可能性が低く抑えらた安全な装置とすることができる。
なお、上記した第3の実施の形態の洗浄乾燥装置220(図4参照)においては、排気用配管222と不活性ガス供給配管224とをいずれも溶剤槽30に接続するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、排気用配管222または不活性ガス供給配管224のいずれか一方のみを溶剤槽30に配設するようにしてもよい。
次に、図5を参照しながら、本発明による洗浄乾燥装置の第4の実施の形態を説明する。
ここで、本発明による洗浄乾燥装置の第4の実施の形態(図5参照)と本発明による洗浄乾燥装置の第3の実施の形態(図4参照)とを比較すると、本発明による第4の実施の形態の洗浄乾燥装置230は、処理槽12の蓋部12bに加熱手段232を配設している点において、第3の実施の形態の洗浄乾燥装置220と異なっている。
なお、加熱手段232としては、例えば、電気的な加熱手段を用いることができる。こうした電気的な加熱手段を用いることによって、蓋部12bに加熱手段232が配設されていても、処理槽12の上部空間12iに被洗浄物200を出し入れする際の蓋部12bの開閉動作をスムーズに行うことができる。
以上の構成において、本発明による洗浄乾燥装置230を用いて被洗浄物200の洗浄乾燥を行う際の動作について説明する。なお、上記した第3の実施の形態の洗浄乾燥装置220(図4参照)と同様な点については、上記した説明を援用することにより、その詳細な説明は省略することとする。
即ち、上記した第4の実施の形態の洗浄乾燥装置220と異なる動作としては、洗浄乾燥装置230においては、循環する間接加熱用オイル300によって、処理槽12の左右の側壁部12d,12e、前壁部12f、後壁部12gならびに隔壁20が所定の温度に加熱されるのとともに、通電された加熱手段232によって処理槽12の蓋部12bが加熱される。その結果、被洗浄物200の洗浄のために上方空間12iに供給された溶剤400の蒸気が、処理槽12の蓋部12bに接触しても、蓋部12bにおいて凝縮することがない。
上記したようにして、本発明による洗浄乾燥装置230は、上記した第1の実施の形態の洗浄乾燥装置10、第2の実施の形態の洗浄乾燥装置210ならびに第3の実施の形態の洗浄乾燥装置220と同様の効果を奏するものであり、多量の溶剤を使用することなしに被洗浄物200を洗浄でき、短時間で被洗浄物の洗浄を行うこともできて、装置のスループットがより一層速くなり、引火の可能性が低く抑えらた安全な装置である。
さらに、本発明による洗浄乾燥装置230においては、処理槽12の蓋部12bに加熱手段232を配設するようにしたため、蒸気洗浄のために被洗浄物200が配設される上部空間12iを形成する処理槽12の全ての部位が所定の温度に加熱されるので、必要な量の溶剤蒸気だけで被洗浄物200を高精度に洗浄することができる。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(7)に説明するように適宜に変形してもよい。
(1)上記した実施の形態の洗浄乾燥装置10においては、図2に示す破線矢印の方向で間接加熱用オイル300が流れて循環するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、オイル供給用配管110とオイル排出用配管112とが処理槽12に配設される位置を変更して、例えば、図2に示す破線矢印の方向とは反対の方向で間接加熱用オイル300が循環するようにしてもよい。
(2)上記した実施の形態においては、処理槽12の4つの側面全てを囲い込むようにして外周壁24を配設して、左右の側壁部12d,12e、前壁部12fならびに後壁部12gとの間に側方空間12mが形成されるようにしたが(図2参照)、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、図6に示すように、処理槽12の左右の側壁部12d,12eのそれぞれに、互いに独立した箱状のタンク242,244を配設するようにしてもよい。そして、この2つのタンク242,244を適当な配管によって連結して間接加熱用オイルが循環されるようにすればよい。
つまり、本発明においては、被洗浄物が配置される内部空間を形成する処理槽の部位のいずれか、即ち、処理槽の底面部あるいは処理槽内に隔壁が配設されていれば隔壁、側壁部または蓋部のうちの少なくともいずれか一つが所定の温度に加熱されるように加熱手段を配設すればよい。従って、間接加熱用オイルを循環させるための空間を、処理槽の内部空間に面する側に形成してもよく、あるいは、所定の厚みを有する処理槽の内部に電気的な加熱手段を配設するようにしてもよい。
(3)上記した実施の形態においては、洗浄乾燥装置210,220,230の排気口120aならびに排液口204aを処理槽12の側壁部12eに形成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、排気口120aならびに排液口204aを処理槽12の後壁部12gに形成したり、あるいは、排気口120aを処理槽12の高さ方向における中位の位置に形成したり、また、排気口120aや排液口204aを複数形成したり、その開口形状を変更するなど各種変更が可能なものである。
(4)上記した実施の形態においては、処理槽12の内部において被洗浄物200の洗浄と乾燥とが行われるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、被洗浄物の種類や溶剤の種類に応じては、処理槽の内部において洗浄のみを行うようにしたり、あるいは、上記した実施の形態とは異なる方法で乾燥を行うようにしてもよい。
(5)上記した実施の形態においては、各種バルブの開閉やポンプの駆動などの全体の動作は、マイクロコンピューターなどの制御手段によって制御するように構成すればよく、処理槽12内への被洗浄物200の搬出および搬入は、ロボットアームや各種搬送手段によって自動的に行うようにして、適宜必要な変更を行ってよいことは勿論である。
(6)上記した実施の形態においては、間接加熱用オイル300,302や溶剤400の種類などを例示したが、これに限られるものではないことは勿論であり、被洗浄物の種類などに応じて適宜変更するようにしてもよい。
例えば、溶剤としては炭化水素系の洗浄剤をはじめ、テルペン溶剤、シリコン系溶剤素ならびに親水性溶剤のような高沸点溶剤や、完全フッ素化液体、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコールのような低沸点溶剤も用いることができ、これら溶剤の種類に応じて、減圧時の気圧や、処理槽12を加熱する温度などを変更するとよい。
(7)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(6)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。