JP3964070B2 - 結晶シリコン製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン融液を冷却して一方向に徐々に凝固する結晶シリコン製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多結晶シリコン太陽電池は、今日最も多く製造されている太陽電池である。
多結晶シリコン太陽電池の発電素子(ソーラー・セル)では、多結晶シリコン基板の品質がその性能を大きく左右する。そのため、その品質を向上させるべく、その製造において様々な改良がなされてきた。
【0003】
太陽電池の最も重要な性能は、エネルギー変換効率である。このエネルギー変換効率は、基板が有する結晶粒界および結晶粒内の結晶の配向性に大きく左右される。これらは、ソーラー・セル内のキャリアの寿命の短縮や移動度の低下の原因となって、エネルギー変換効率を低下させるためである。そのため、エネルギー変換効率を向上させるためには、多結晶シリコンの製造において、その結晶粒界をできるだけ少なくすること、言い換えると、結晶粒径ができるだけ大きな結晶粒に成長させること、そして、その結晶粒内の配向性を向上させることが重要である。
【0004】
多結晶シリコンを製造する方法で代表的なものに、一方向凝固法がある。この方法では、ルツボに収容した原料の固体シリコンをヒーターにより加熱して、シリコン融液とし、次いで、ルツボを載置した冷却板に冷媒として、通常、不活性ガスまたは水を流して、シリコン融液内にルツボの底部から上部方向への正の温度勾配を付与し、シリコン融液を底部から徐々に冷却・凝固して、結晶を上方へと成長させていく。この方法によれば、太陽電池用ウェーハとして十分な数mm以上の結晶粒径を有する多結晶シリコンインゴットが得られることが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の一方向凝固法において、シリコン融液を冷却するのに長時間かかるという問題があった。また、シリコンインゴットの製造において、シリコン融液の冷却の際には、安定で一様な温度勾配をシリコン融液に付与することが常に課題となっている。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、シリコン融液の冷却時間が短縮され、シリコン融液の冷却の際に安定で一様な温度勾配をシリコン融液に付与することができる結晶シリコン製造装置を提供する事を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用した。請求項1に記載の結晶シリコン製造装置は、チャンバー内にシリコン融液を収容するルツボと、前記ルツボを載置してルツボ内のシリコン融液を冷却する冷却板と、前記ルツボおよび冷却板を包囲する複数の断熱部材で形成された包囲部とを備え、前記チャンバー内に不活性ガスを流入するためのガス流入口を具備した結晶シリコン製造装置において、前記複数の断熱部材のうちの前記冷却板の下方に配置する断熱部材は移動することが可能な可動断熱部材であり、該可動断熱部材を移動して、前記包囲部の一部に開口を形成する断熱部材移動装置を備えるとともに、前記開口が形成されていないときは前記包囲部外に配置する冷却部材と、該冷却部材を前記開口が形成されたときに該開口から挿入して前記冷却板に接近させる冷却部材移動装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この結晶シリコン製造装置においては、断熱部材移動装置によって可動断熱部材を移動させて包囲部の一部に開口を形成することができる。そして、チャンバーと包囲部との間の空間に充填された不活性ガスが、開口を通って冷却板の下方に流入する。この不活性ガスは、冷却板を介してシリコン融液を冷却する。従って、シリコン融液の冷却速度が向上する。さらには、可動断熱部材の移動量を調整して開口の大きさを調節することにより、シリコン融液の冷却速度を制御することができる。また、ガス供給口からの不活性ガスの流入量を調整することによっても、冷却速度の制御が可能である。
さらに、冷却部材を開口から挿入して冷却板に近接させるので、冷却部材により包囲部内からの熱輻射を受けて包囲部内を冷却するとともに、その開口から流入した不活性ガスが冷却部材により冷却され、その冷却された不活性ガスが冷却板に接気するので、冷却板を介してシリコン融液を冷却することができる。従って、シリコン融液の冷却速度が向上する。
【0009】
請求項2に記載の結晶シリコン製造装置は、請求項1に記載の結晶シリコン製造装置において、前記冷却板の周縁に配置して、該冷却板とともに前記包囲部内を前記ルツボを含む包囲部内上部と前記ルツボを含まない包囲部内下部とに仕切る仕切部材を備えたことを特徴とする。
【0010】
この結晶シリコン製造装置においては、仕切部材によって包囲部内下部内の不活性ガスがルツボを有する包囲部内上部に回り込まないので、シリコン融液に付与された一方向の温度勾配を包囲部内下部に流入された不活性ガスが乱すことが防止される。
【0011】
請求項3に記載の結晶シリコン製造装置は、請求項1または請求項2に記載の結晶シリコン製造装置において、前記冷却板が、前記チャンバー外から冷媒を導入する冷媒供給管に連結された冷媒供給口と、前記チャンバー外へ冷媒を排出する冷媒排出管に連結された冷媒排出口と、前記冷却板内部に冷媒を収容可能な中空部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この結晶シリコン製造装置においては、開口から流入した不活性ガスによる冷却に加えて、冷却版に流された冷媒がシリコン融液の熱を運び出すので、シリコン融液の冷却速度が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る結晶シリコン製造装置の第一の実施形態を図1から図4を参照して説明する。
結晶シリコン製造装置1は、チャンバー2内にシリコン融液3を収容するルツボ4と、そのルツボ4が載置されるとともにチャンバー2外から冷媒が流入されてルツボ4内のシリコン融液3を冷却する冷却板5と、ルツボ4および冷却板5を包囲する複数の断熱部材で形成された包囲部6と、ルツボ4の周囲を囲むルツボ断熱部材12と、包囲部6内でルツボ4の上方に配置された上部ヒーター7aと、下方に配置された下部ヒーター7bと、チャンバー2内に不活性ガスを流入するためのガス流入口8と、複数の断熱部材の一部である可動断熱部材6aを移動する断熱部材移動装置9と、冷却板5の周縁に配置して包囲部6内を冷却板5の上側の包囲部内上部10aと下側の包囲部内下部10bとに仕切る断熱材料の仕切部材11と、チャンバー2の壁部2aには二重構造をなして冷却水を循環させる壁中空部2bとを備えている。
【0016】
断熱部材移動装置9は、図2に示されたように、可動断熱部材6aを支持する支持棒15と、この支持棒15が固定された支持台16と、この支持台16を支持する支持柱17と、この支持柱17が固定されるエンドプレート18と、このエンドプレート18に固定されたモーター19を備える。
モーター19はピニオン19aを有し、支持台16の備えるラック16aと噛み合っている。
【0017】
冷却板5は、図3および図6に示されたように、冷媒供給口5aと冷媒排出口5bと前記冷却板内部に冷媒を収容可能な中空部5cとを備え、該中空部5cには厚さ方向に平行に複数の支柱5dが設けられている。また、冷媒供給口5aにはチャンバー2外部から冷媒を供給する冷媒供給管5eがつながれている。
【0018】
上記構成の結晶シリコン製造装置を用いて、結晶シリコンを製造する場合には、まず、ルツボ4内に原料のチップ状の固体シリコン3aを収容する。次に、雰囲気ガスとして不活性ガス、通常アルゴンガスをチャンバー2上部のガス流入口8からチャンバー2内に流入する。そして、ルツボ4内の固体シリコン3aを上部ヒーター7a、下部ヒーター7bにより加熱溶融してシリコン融液3とした後、両ヒーターをOFFにする。
【0019】
その後、チャンバー2の壁中空部2b内に冷却水の循環、断熱部材移動装置9による可動断熱部材6aの移動、冷却板5への冷媒供給管5eを通して不活性ガス、通常アルゴンガスの流入が行われ、シリコン融液3の冷却が開始される。こうして、シリコン融液3は、冷却板5と接するルツボ4の底から冷却される。シリコン融液3は、ルツボ4の底から上方へ付与された正の温度勾配に沿って、一方向に凝固結晶化されていく。
【0020】
次に、上記構成の結晶シリコン製造装置の作用および効果について説明する。上記結晶シリコン製造装置1では、ルツボ4および上部ヒーター7a、下部ヒーター7bを囲む断熱材料からなる包囲部6を備えられているので、両ヒーターによる加熱を効率的に行れるとともに、高温の両ヒーターおよびルツボ4からチャンバー2の壁部2aを守られる。
【0021】
また、チャンバー2の壁部2aに壁中空部2bが備えられているので、そこに冷却水を流すことによって、固体シリコン3aの溶融後のチャンバー2およびその内部の冷却が効率的に行われる。すなわち、壁部2aが冷却水により直接冷却されるともに、チャンバー2内のアルゴンガスが冷却され、冷却された壁部2aおよび包囲部に比較して低温のアルゴンガスによって内部が冷却される。
【0022】
断熱部材移動装置は、ピニオン16aとラック19aとによりモーター19により、支持台16を昇降することにより、その支持台16に固定された支持棒15を介して可動断熱部材6aを昇降する。チャンバー2に固定されたスペースカラー20は、可動断熱部材6aを上昇させたときの支持台16のストッパーであり、セットカラー16aは下降のときのストッパーである。
この結晶シリコン製造装置1は、断熱部材移動装置9が備えられているので、可動断熱部材6aを移動させて包囲部6の一部に開口13を形成することができ、壁部2aと包囲部6との間の包囲部外空間14に充填されていた前記低温のアルゴンガスが、その開口13を通って包囲部内下部10bに流入される。この低温のアルゴンガスは、冷却板5に接して冷却するので、冷却板5によるシリコン融液3の冷却速度が向上する。
【0023】
尚、可動断熱部材6aの移動量を調整して開口13の大きさを調節することにより、シリコン融液3の冷却速度をコントロールすることができる。
また、アルゴンガスの流入量を調整することによっても、冷却速度のコントロールが可能である。
【0024】
また、仕切部材11によって、包囲部内下部10b内のアルゴンガスがルツボ4を有する包囲部内上部10aに回り込まない構成にされているので、低温のアルゴンガスがシリコン融液3内に付与された一方向の温度勾配を乱すことが防止される。
【0025】
さらに、冷却板5が中空部5cに支柱5dを備えられているので、熱伝導率が高く、加熱および冷却効率が向上している。
【0026】
次に、第二の実施形態について、図5を参照して説明する。
上述の第一の実施形態と同等な部材に対しては、同符号を付してその説明を省略する。
図5に示す第二の実施形態では、第一の実施形態の結晶シリコン製造装置1において、開口13から挿入して冷却板5に接触させる冷却部材21と、この冷却部材21を移動する冷却部材移動装置(図示しない)とを備えていることが特徴である。
ルツボ4の周囲や冷却板5の下方には、温度計28、28、・・・により温度がモニターされる。
【0027】
可動断熱部材は、複数の断熱部材26、27からなる。
また、冷却部材21は、先端に冷却部21aを備え、その冷却部21aの中空部21bにチャンバー外部から冷却水を流入するための流入管21cが接続されている。
【0028】
上記構成の結晶シリコン製造装置では、可動断熱部材26、27がその端部26a、27aを支点として図中矢印Aのように回転して、開口13を形成する。次に、冷却部材移動装置により、冷却部材21がその開口13から挿入され、冷却板5に接触される。次いで、冷却部21aへ冷却水を流す。
【0029】
従って、冷却板5は、第一の実施形態と同様に、包囲部外空間14から開口13を通って包囲部内下部10bに流入される低温のアルゴンガスにより冷却されるとともに、冷却部材21によっても冷却されるので、シリコン融液3の冷却速度がさらに向上する。
【0030】
冷却部材21の冷却部21aに、図6に示すように、フィン29を設けると、冷却効果がさらに高められる。
【0031】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る結晶シリコン製造装置によれば、以下のような効果を奏する。
【0032】
請求項1に記載の結晶シリコン製造装置によれば、断熱部材移動装置によって可動断熱部材を移動させて包囲部の一部に開口を形成することができる。そして、チャンバーと包囲部との間の空間に充填された不活性ガスが、開口を通って冷却板の下方に流入する。この不活性ガスは、冷却板を介してシリコン融液を冷却する。従って、シリコン融液の冷却速度が向上するという効果が得られる。さらには、可動断熱部材の移動量を調整して開口の大きさを調節することにより、シリコン融液の冷却速度を制御することができるという効果が得られる。
また、冷却部材により包囲部内からの熱輻射を受けて包囲部内を冷却するとともに、開口から流入した不活性ガスが冷却部材により冷却され、その冷却された不活性ガスが冷却板に接気するので、冷却板を介してシリコン融液を冷却することができ、シリコン融液の冷却速度が向上するという効果が得られる。
【0033】
請求項2に記載の結晶シリコン製造装置によれば、仕切部材によって包囲部内下部内の不活性ガスがルツボを有する包囲部内上部に回り込まないので、シリコン融液に付与された一方向の温度勾配を包囲部内下部に流入された不活性ガスが乱すことが防止されるという効果が得られる。
【0034】
請求項3に記載の結晶シリコン製造装置によれば、開口から流入した不活性ガスによる冷却に加えて、冷却版に流された冷媒がシリコン融液の熱を運び出すので、シリコン融液の冷却速度が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施形態である結晶シリコン製造装置の概略構成図である。
【図2】 図1の結晶シリコン製造装置の断熱部材移動装置の概略構成図である。
【図3】 図1の結晶シリコン製造装置の冷却板の内部構造を示す図である。
【図4】 図3の冷却板の支柱の位置を示す図である。
【図5】 本発明の第二の実施形態である結晶シリコン製造装置の概略構成図である。
【図6】 図5における冷却部材の他の実施形態である。
【符号の説明】
1 結晶シリコン製造装置
2 チャンバー
2a 壁部
2b 壁中空部
3 シリコン融液
4 ルツボ
5 冷却板
6 包囲部
6a 可動断熱部材
8 ガス流入口
9 断熱部材移動装置
10a 包囲部内上部
10b 包囲部内下部
11 仕切部材
13 開口
21 冷却部材
26 可動断熱部材
29 フィン

Claims (3)

  1. チャンバー内にシリコン融液を収容するルツボと、前記ルツボを載置してルツボ内のシリコン融液を冷却する冷却板と、前記ルツボおよび冷却板を包囲する複数の断熱部材で形成された包囲部とを備え、前記チャンバー内に不活性ガスを流入するためのガス流入口を具備した結晶シリコン製造装置において、前記複数の断熱部材のうちの前記冷却板の下方に配置する断熱部材は移動することが可能な可動断熱部材であり、該可動断熱部材を移動して、前記包囲部の一部に開口を形成する断熱部材移動装置を備えるとともに、前記開口が形成されていないときは前記包囲部外に配置する冷却部材と、該冷却部材を前記開口が形成されたときに該開口から挿入して前記冷却板に接近させる冷却部材移動装置とを備えたことを特徴とする結晶シリコン製造装置。
  2. 請求項1に記載の結晶シリコン製造装置において、前記冷却板の周縁に配置して、該冷却板とともに前記包囲部内を前記ルツボを含む包囲部内上部と前記ルツボを含まない包囲部内下部とに仕切る仕切部材を備えたことを特徴とする結晶シリコン製造装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の結晶シリコン製造装置において、前記冷却板が、前記チャンバー外から冷媒を導入する冷媒供給管に連結された冷媒供給口と、前記チャンバー外へ冷媒を排出する冷媒排出管に連結された冷媒排出口と、前記冷却板内部に冷媒を収容可能な中空部とを備えたこと特徴とする結晶シリコン製造装置。
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