JP3963599B2 - 酸成分除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、H2O2などの酸化剤と塩酸等の酸成分を含有する排水、カチオン交換樹脂処理水あるいは糖液等の被処理液から酸成分を除去する酸除去方法、酸除去装置および酸除去装置を用いた排水回収装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸成分を含む排水等から酸成分を除去する酸除去装置としては、従来から弱塩基性陰イオン交換樹脂を塔やカラムに充填したものが用いられている。
【0003】
弱塩基性陰イオン交換樹脂の官能基は第一〜第三級アミノ基であり、これらの官能基は、水中での解離は弱く、中性塩分解反応は起こらないが、酸を効率よく吸着するという特性を有している。また、弱塩基性陰イオン交換樹脂は、再生効率がよいので、酸の除去や純水製造装置の陽イオン交換樹脂塔の後段に強塩基性陰イオン交換樹脂と併用して用いられている。
【0004】
弱塩基性陰イオン交換樹脂は母体として、主にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体または、アクリル−ジビニルベンゼン共重合体が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
アクリル酸および/またはその誘導体とジビニルベンゼン共重合体を母体とする弱塩基性陰イオン交換樹脂(以下、「アクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂」と略称する)は、母体の性質上、高いイオン交換容量を有している。しかし、半導体の工程排水等に含まれるH2O2などの酸化剤がわずかに混入した排水等を処理すると、アルカリ通液後の洗浄性が悪化してしまうため、再生剤として使用したアルカリを洗浄して、再生可能となる所定の水質にするためには、多量の洗浄水を用いるか、あるいはリークしてくるNaOHを除去するためのカチオン樹脂が必要となる。
【0006】
アクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂において、酸化剤と接触するとアルカリ再生後の洗浄性が悪くなるのは、母体のアクリル−ジビニルベンゼン共重合体の骨格に存在するC=O基の一部が、酸化剤により−COO-基となり、この−COO-基が再生剤のNaOHと接触することにより−COONaとなり、この−COONaが洗浄時に加水分解されNa+がリークするためである。
【0007】
被処理水に含まれるH2O2等の酸化剤を除去するためにアクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂塔の前段に活性炭塔を設けたとしても、活性炭塔からリークしてくるわずかなH2O2や被処理液水中のH2O2濃度の変動により活性炭塔からリークしてくるH2O2によりアクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂の洗浄性は悪化する。
【0008】
一方、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする弱塩基性陰イオン交換樹脂(以下、「スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂」と略称する)は少量のH2O2と接触しても、再生時におけるアルカリ通液後の洗浄性は良好であるが、母体の性質上、アクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂よりもイオン交換容量が少ないため、一定量の被処理液を処理するためには多量の樹脂が必要となる。そのため、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いた酸除去装置を大きくしなければならない。
【0009】
従って、H2O2等の酸化剤と酸成分を含む被処理液から酸成分を除去する装置を製造するには、樹脂量と洗浄水量のバランスを考えて、アクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂またはスチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂を使い分けるか、アクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いる場合は、リークするNaOHを除去するために後段に陽イオン交換樹脂塔を設置したり、被処理液中のカチオン除去のために後段に設置された陽イオン交換樹脂塔の樹脂量を増やさなければならず、操作の煩雑化、装置の複雑化あるいは装置の大型化を招いていた。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、酸化剤と酸を含む排水を処理するための、再生時の洗浄性に優れた酸除去方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、アクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂において、全イオン交換容量あたりの第四級アンモニウム塩の割合を特定の範囲とすればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の本発明は酸化剤および酸成分を含有する被処理液を、全イオン交換容量あたりの第四級アンモニウム基の割合が、30当量%超50当量%以下である(メタ)アクリル−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする弱塩基性陰イオン交換樹脂と酸化剤を接触させて処理することを特徴とする被処理液からの酸成分除去方法に関するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の酸除去方法に用いられるイオン交換樹脂は、全イオン交換容量あたりの第四級アンモニウム基の割合が、30当量%超50当量%以下である(メタ)アクリル−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする弱塩基性陰イオン交換樹脂である。
【0017】
本発明の全イオン交換容量あたりの第四級アンモニウム基の割合が、30当量%超50当量%以下である(メタ)アクリル−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする弱塩基性陰イオン交換樹脂は、モノビニル単量体単位としての(メタ)アクリル部位とポリビニル単量体単位としてのジビニルベンゼンより構成されている。そして、モノビニル単量体単位の(メタ)アクリル部位に第一〜第三級アミノ基等の弱塩基性の官能基が導入されたものであり、本発明の場合には、強塩基性官能基である第四級アンモニウム塩が全イオン交換容量あたり30当量%超50当量%以下当量%の範囲で導入されたものである。従って、本発明の酸除去装置に用いられる弱塩基性陰イオン交換樹脂は、全イオン交換容量あたりの第一〜第三級アミノ基等の弱塩基性の官能基の割合は、50〜70当量%である。
【0018】
本発明の弱塩基性陰イオン交換樹脂の全イオン交換容量あたりの第四級アンモニウム基の割合が30当量%以下では、再生時の洗浄性の改善が十分でなく、また50当量%を超えると再生効率が悪くなるため好ましくない。
【0019】
本発明の酸除去装置は、上記の弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いたものであり、例えば塔やカラムに上記の弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填した装置を挙げることができる。また、本発明の酸除去装置は、上記の弱塩基性陰イオン交換樹脂と他のイオン交換樹脂を併用してもよい。
【0020】
本発明の酸除去方法で除去できる酸成分としては、塩酸、硫酸、フッ酸等の鉱酸や酢酸、ギ酸等の有機酸である。また、被処理液中に共存してもよい酸化剤としては、過酸化水素、次亜塩素酸などである。
【0021】
本発明の酸除去方法によって処理しうる被処理水としては、酸成分と酸化剤を含有する排水や、純水あるいは超純水の製造工程におけるH形の陽イオン交換樹脂によって脱カチオンされた酸化剤を含む酸性の液体から酸成分を除去するために用いることができる。
【0022】
本願発明の酸除去方法に用いる酸除去装置は、イオン交換樹脂を用いる2床3塔、3床4塔、4床5塔形等の複床式純水製造装置、複層床式純水製造装置、混床式純水製造装置、電気式脱イオン水製造装置などのイオン交換装置や逆浸透膜装置と組み合わせて、純水製造に用いることができる。本発明の酸除去方法の酸除去装置を複層床純水製造装置に用いる場合は、上記の弱塩基性陰イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂を同一の塔に充填した酸除去装置を陰イオン交換塔として用いてもよい。また、本発明の酸除去方法に用いる酸除去装置の前段に酸化剤濃度を低減させるために活性炭塔を設置してもよい。
【0023】
図1に本発明の酸除去方法に用いる酸除去装置を用いた、半導体工場の酸化剤と酸成分を含む排水を回収して再利用するための排水回収装置の一実施形態をフロー図で示す。
【0024】
酸化剤および酸成分を含む工程排水は、活性炭塔、請求項2に記載の酸除去装置、脱塩装置(図1の実施形態では、脱塩装置の一例として、強酸性陽イオン交換樹脂塔と強塩基性陰イオン交換塔からなるイオン交換装置を例示している)の順に通液され、雑用水として回収される。超純水の原水として回収する場合は、さらに脱塩装置から流出してくる処理水を紫外線酸化装置で処理して、活性炭塔、精密フィルターで処理される。
【0025】
排水回収装置の活性炭塔では、工程排水中の過酸化水素水の大部分が除去される。次に本発明の弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填した酸除去装置で酸成分が除去される。脱塩装置の強酸性陽イオン交換樹脂塔では、排水中のK+やNa+などのカチオンが除去され、脱塩装置の強塩基性陰イオン交換樹脂塔ではシリカおよび残りのアニオンが除去される。紫外線酸化装置では前段装置で処理できない有機物が分解除去される。活性炭塔では紫外線酸化装置で添加する酸化剤の残留物の除去および有機物の除去が行われる。精密フィルターにより微少な粒子が除去され超純水原水として回収される。
【0026】
【作用】
本発明の酸除去方法において、アルカリ通薬後の洗浄性がよい理由として、本発明の酸除去装置に用いる弱塩基性陰イオン交換樹脂は交換基の一部が第四級アンモニウム基であるため、
(1)母体の−COO-と第四級アンモニウム基が樹脂内で塩を形成し、再生時の−COONaの生成を抑制する、
(2)第四級アンモニウム基はプラスの電荷を有しているので、ナトリウムイオンとの静電的な反発により樹脂層内へのナトリウムイオンの拡散を抑制し、そのため−COONaの生成が押さえられるため、
などが考えられる。
【0027】
【実施例】
アクリル製カラムに表1に示した弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填し、本発明の酸除去装置を作製した。
【0028】
【表1】
【0029】
上記酸除去装置に、原水(純水に塩酸200mg as CaCO3/L、過酸化水素5mg as H2O2/Lとなるように溶解したもの)をLV30m/Hで充填樹脂の400倍量通液した後、2wt%NaOH水溶液を、使用した陰イオン交換樹脂の総交換容量の2倍量(当量)だけ通液(通液SV4)し、次いで樹脂量の2倍量の純水をSV4で通水(押し出し)してさらに樹脂量の2倍量の純水をSV10で通水して樹脂を再生した。この一連の通水−再生操作を100回繰り返した。
【0030】
上記処理を行った樹脂に再び上記原水を400倍量通水し、2wt%NaOH水溶液を、陰イオン交換樹脂の総交換容量の2倍量(当量)だけ通薬して再生し、ついで樹脂量の2倍量の純水をSV4で通水(押し出し)した。その後、以下の洗浄試験と通水試験を行い、その結果を表2に示した。
・洗浄試験
純水をSV10で通水し、洗浄排水のpHを測定し、pH10になるまでに要する洗浄水量を測定した。
・通水試験
上記洗浄試験終了後、上記原水をLV30m/Hで通水し、処理水のpHが5に達した点を終点とした時の処理水量を求めた。
【0031】
【表2】
【0032】
比較例1〜3
総イオン交換容量あたりの第四級アンモニウム基が0当量%、10当量%、85当量%であるアクリル系陰イオン交換樹脂を用いて、実施例1に準じて酸除去装置を調製し、実施例1と同様に通水試験と洗浄試験を行った。結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
比較例4
スチレン系の弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いて実施例1に準じて酸除去装置を調製し、実施例1と同様に通水試験と洗浄試験を行った。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表2〜表4の結果から明らかなように、従来の第四級アンモニウム基が0当量%であるアクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いた比較例1の酸除去装置に比較して、本発明の酸除去装置は洗浄水量を著しく削減できることがわかる。
【0037】
一方、第四級アンモニウム基が10当量%のアクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いた比較例2の酸除去装置は、洗浄性に改善が見られず、第四級アンモニウム基が85当量%のアクリル系陰イオン交換樹脂を用いた比較例3の酸除去装置は、洗浄性は良好なものの、現状使用している第四級アンモニウム基が0当量%のアクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いた酸除去装置(比較例1)やスチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いた酸除去装置(比較例4)よりも処理水量が低かった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の酸除去方法は、酸化剤と酸成分を含む排水等の処理において、
(1)再生時の洗浄性がよいので、洗浄水量を削減できる、
(2)リークするNaOH除去のための陽イオン交換樹脂あるいは陽イオン交換塔が不要となる、
(3)洗浄性が同程度のスチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂と比較して交換容量が高いので、装置全体を小型化できる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体工場の酸化剤および酸成分を含む工程排水を回収して再利用するための排水回収装置の一実施形態を示すフロー図。
Claims (1)
- 酸化剤および酸成分を含有する被処理液を、全イオン交換容量あたりの第四級アンモニウム基の割合が、30当量%超50当量%以下である(メタ)アクリル−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする弱塩基性陰イオン交換樹脂と酸化剤を接触させて処理することを特徴とする被処理液からの酸成分除去方法。
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