JP3963369B2 - トランジスタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランジスタに関し、特に、例えば電話機のスイッチング電源に利用される高耐圧パワートランジスタなどのトランジスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば電話機のスイッチング電源に用いられる高耐圧パワートランジスタのように、大電流を必要とするパワートランジスタにあっては、その動作電流、即ち絶対最大定格であるコレクタ電流は、主としてエミッタ領域の面積及び周囲長に関係するので、動作電流を大きくするためには、このエミッタ領域の面積及び周囲長を大きくする必要がある。しかしながら、エミッタ領域の面積及び周囲長を大きくするためにトランジスタを構成するチップサイズが大きくなることは、小型機器への実装の面で不都合がある。
【0003】
そこで、限られたチップサイズ内で、ベース領域及びエミッタ領域のコンタクト、アルミニウム配線などをできるだけ均一化し、ベース領域とエミッタ領域との接触面積及び周囲長を大きくできる工夫として、ベース領域及びエミッタ領域を櫛型に形成した構成、また、櫛歯状のエミッタ電極配線のあいだにマルチベース領域を形成した構成を有するトランジスタが提案されている。
【0004】
図3は、このようなトランジスタにおけるベース、エミッタの電極パターンの概略平面図である。図3において、31は半導体基板からなるトランジスタのコレクタ領域である。コレクタ領域31にはベース領域32が形成され、更に、ベース領域32にはエミッタ領域33が形成されている。また、エミッタ領域33内には、均一な大きさである複数のマルチベース領域34,34…が形成されている。
【0005】
複数のマルチベース領域34夫々に各1個のベースコンタクト35が形成されており、これらの横方向のベースコンタクト35を連結した櫛歯状のベース電極配線36がベースパッド37に接続されている。また、ベース電極配線36の間には、同じく横方向のエミッタコンタクト38を連結した櫛歯状のエミッタ電極配線39がエミッタパッド40に接続して設けられている。
【0006】
一方、マルチベース領域の大きさを不均一にした、具体的にはエミッタパッド近傍ではマルチベース領域の大きさを大きく、ベースパッド近傍ではその大きさを小さく設定したトランジスタも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特許第2895327号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図3に示すようなベース領域及びエミッタ領域を櫛形に構成して、櫛歯状のエミッタ電極配線のあいだにマルチベース領域を形成したトランジスタにあっては、ベースコンタクト、エミッタコンタクト及びアルミニウム配線などを均一化して構成した場合、エミッタ領域に給電するためのエミッタパッドの近傍で、エミッタ電極配線からベースコンタクトへ電流が集中して、過電流破壊が生じるという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電流及びサージを、エミッタパッド近傍に集中させることなくチップ全体に分散させることができて、高いサージ破壊耐圧を実現できるトランジスタを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、高いサージ破壊耐圧に加えて大きな電流容量も実現できるトランジスタを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るトランジスタは、コレクタ領域にベース領域が形成され、該ベース領域にエミッタ領域が形成され、該ベース領域及びエミッタ領域夫々に給電するためにベース電極配線及びエミッタ電極配線を経由してベースパッド及びエミッタパッドが形成されているトランジスタにおいて、前記エミッタパッド近傍の前記ベース領域に複数のマルチエミッタ領域が形成されており、前記ベースパッド近傍の前記エミッタ領域に複数のマルチベース領域がその大きさを均一に形成されており、前記ベース領域に前記ベース電極配線と接続するための複数のベースコンタクトが形成されており、前記マルチエミッタ領域とそれに直近の前記ベースコンタクトとの距離が、前記エミッタパッドから遠ざかるにつれて短くなるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項1のトランジスタにあっては、エミッタパッド近傍のベース領域内に複数のマルチエミッタ領域が形成され、ベース領域に形成されているベースコンタクトとマルチエミッタ領域との距離が、エミッタパッドから遠ざかるにつれて短くなるように設定している。
【0013】
ベースコンタクトとマルチエミッタ領域との距離が、エミッタパッドの近傍では長く、ベースパッドに近い部分またはチップの端部の方では短い。不純物濃度はエミッタ領域が最も濃く、ベース領域はエミッタ領域よりも不純物濃度が薄い。従って、エミッタ領域は抵抗値が小さく、少々距離が長くなってもあまり抵抗値は増加しない。よって、ベースコンタクト,エミッタコンタクト間の抵抗値は、その間におけるエミッタ領域の長さには殆ど影響されず、その間におけるベース領域の長さに依存する。本発明では、エミッタパッドの近傍においては、他の部分に比べてベースコンタクトとマルチエミッタ領域との距離が長くなっており、他の部分に比べてベースコンタクト,エミッタコンタクト間の抵抗値が大きくなる。このようにして、ベース領域の長さ、つまりベース領域の抵抗(バラスト抵抗)の大きさを調整して、エミッタパッドの近傍と他の部分とにおいてベースコンタクト,エミッタコンタクト間の抵抗の大きさを制御している。
【0014】
このようにすることにより、給電されるエミッタパッド近傍、即ち電流が流れ易い部分では抵抗値が大きく電流が流れにくく作用し、エミッタパッドから離れて電流が流れにくい部分では抵抗値が小さく流れ易く作用するため、相殺されてチップ全体で電流が均一に流れる。その結果、活性領域が全体的に均一化され、電流の集中部分がなくなり過電流破壊が生じにくい。つまり、エミッタパッド近傍と、エミッタパッドから離れた部分とにおいて、エミッタコンタクトとベースコンタクトとの間における電流の流れ易さは同程度になって、チップ全体に活性領域が広がり、サージも、エミッタパッド近傍に集中せずに、エミッタ領域全体で均一に分散する。この結果、高いサージ破壊耐圧が得られる。
【0016】
また、ベースパッド近傍のエミッタ領域内に複数のマルチベース領域をその大きさを均一に形成している。このマルチベース領域の形成により、エミッタ領域の周囲長をかせいで大きな電気容量が得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態であるトランジスタのベース,エミッタの電極パターンの概略平面図、図2(a)は図1のA−A線における断面図、図2(b)は図1のB−B線における断面図である。
【0018】
図1,図2おいて、1は半導体基板からなるトランジスタのコレクタ領域であり、コレクタ領域1にベース領域2が形成され、ベース領域2にエミッタ領域3が形成されている。また、4はベース領域2に給電するためのベースパッド、5はエミッタ領域3に給電するためのエミッタパッドである。
【0019】
エミッタパッド5近傍のベース領域2(図1の破線Eで囲まれた領域)には、図1及び図2(a)に示すように、複数のマルチエミッタ領域6が形成され、基板表面に形成された絶縁膜7に設けられたコンタクト孔によりエミッタコンタクト8が形成されている。これらのマルチエミッタ領域6の大きさは不均一である。一方、ベースパッド4近傍のエミッタ領域3には、図1及び図2(b)に示すように、複数のマルチベース領域9が形成され、基板表面に形成された絶縁膜7に設けられたコンタクト孔によりベースコンタクト10が形成されている。これらのマルチベース領域9の大きさは均一である。このように、マルチエミッタ領域6が形成されているエミッタパッド5近傍の部分と、マルチベース領域9が形成されているベースパッド4近傍の部分とに、基板全体が2分割されている。
【0020】
横一列のベースコンタクト10はアルムニウム膜からなる1つのベース電極配線11にて連結されており、各ベース電極配線11はベースパッド4に接続されている。また、横一列のエミッタコンタクト8はアルムニウム膜からなる1つのエミッタ電極配線12にて連結されており、各エミッタ電極配線12はエミッタパッド5に接続されている。このような構成により、ベース電極配線11及びエミッタ電極配線12が何れも櫛歯状に縦方向に交互に形成される。
【0021】
本発明のトランジスタにあっては、エミッタパッド5近傍のベース領域2にマルチエミッタ領域6を形成しており、このマルチエミッタ領域6とベース領域2に形成されているベースコンタクト10との距離が、エミッタパッド5から遠ざかるにつれて短くなるようにしている。
【0022】
ベースコンタクト10,エミッタコンタクト8間の抵抗の値Rは、その間におけるベース領域2の抵抗(バラスト抵抗)の値RB とエミッタ領域3の抵抗の値RE との和で求められる。ここで、エミッタ領域3における不純物濃度は高くて抵抗が小さいため、エミッタ領域3の長さが異なっても、ベースコンタクト10,エミッタコンタクト8間の抵抗の値Rの変動にはほとんど影響を及ぼさない。これに対して、ベース領域2における不純物濃度はエミッタ領域3における不純物濃度の1/105 程度と低いので、ベース領域2の長さが長くなるとその抵抗の値も顕著に大きくなるため、ベース領域2の長さはベースコンタクト10,エミッタコンタクト8間の抵抗の値Rに大きな影響を及ぼす。
【0023】
本発明では、エミッタパッド5近傍では、マルチエミッタ領域6,ベースコンタクト10間の距離を長くして、ベースコンタクト10,エミッタコンタクト8間の抵抗を大きくし、エミッタパッド5から遠ざかるにつれてマルチエミッタ領域6,ベースコンタクト10間の距離を短くして、ベースコンタクト10,エミッタコンタクト8間の抵抗が小さくなるようにしている。
【0024】
従って、エミッタパッド5近傍においては、エミッタパッド5に近くて電流が流れ易い反面、ベースコンタクト10,エミッタコンタクト8間の抵抗が大きいために電流が流れにくい。これに対して、ベースパッド4近傍においては、エミッタパッド5から遠くて電流が流れにくい反面、ベースコンタクト10,エミッタコンタクト8間の抵抗が小さいために電流は流れ易い。
【0025】
このように、エミッタパッド5近傍及びベースパッド4近傍の何れにおいても、電流の流れ易さと電流の流れにくさとが相殺され、エミッタパッド5近傍とベースパッド4近傍とにおいて同程度の電流が流れる。よって、電流及びサージは、エミッタパッド5近傍に集中することがなく、全体に分散されるため、サージの集中に伴う破壊を防止することができる。
【0026】
このようなサージ破壊の防止の観点のみから考えれば、エミッタパッド5近傍だけでなく基板全体にマルチエミッタ領域6を設けるようにしても良い。しかしながら、この構成では、限られたチップサイズにおいて十分な電流容量が得られないという課題が残る。そこで、本発明では、ベースパッド4近傍にマルチベース領域9を形成し、エミッタ領域3の周囲長が長く取れるようにして、大きな電流容量が得られるようにしている。また、マルチベース領域9を均一化しているため、大きな電流容量を容易に取ることが可能である。
【0027】
なお、上述した例では、エミッタパッド5近傍に設けるマルチエミッタ領域6の大きさを不均一とした場合について説明したが、エミッタパッド5から遠ざかるにつれてマルチエミッタ領域6,ベースコンタクト10間の距離を短くする条件を満たしさえすれば、マルチエミッタ領域6の大きさを均一としても良い。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明のトランジスタでは、エミッタパッド近傍のベース領域にマルチエミッタ領域を形成し、ベース領域に形成されているベースコンタクトとマルチエミッタ領域との距離が、エミッタパッドから遠ざかるにつれて短くなるようにしたので、電流の流れ易さがチップ内において均一となり、部分的な過電流による破壊が生じず、サージをエミッタパッド近傍に集中させずにチップ全体に分散させて、高いサージ破壊耐圧を実現することができる。
【0029】
また、本発明のトランジスタでは、ベースパッド近傍のエミッタ領域にマルチベース領域を均一に形成するようにしたので、エミッタ領域の周囲長をかせいで大きな電気容量が得られて、高いサージ破壊耐圧に加えて大きな電流容量も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるトランジスタのベース,エミッタの電極パターンの概略平面図である。
【図2】図1のA−A線及びB−B線における断面図である。
【図3】従来のマルチベース構造のトランジスタの電極パターンの概略平面図である。
【符号の説明】
1 コレクタ領域
2 ベース領域
3 エミッタ領域
4 ベースパッド
5 エミッタパッド
6 マルチエミッタ領域
7 絶縁膜
8 エミッタコンタクト
9 マルチベース領域
10 ベースコンタクト
11 ベース電極配線
12 エミッタ電極配線

Claims (1)

  1. コレクタ領域にベース領域が形成され、該ベース領域にエミッタ領域が形成され、該ベース領域及びエミッタ領域夫々に給電するためにベース電極配線及びエミッタ電極配線を経由してベースパッド及びエミッタパッドが形成されているトランジスタにおいて、前記エミッタパッド近傍の前記ベース領域に複数のマルチエミッタ領域が形成されており、前記ベースパッド近傍の前記エミッタ領域に複数のマルチベース領域がその大きさを均一に形成されており、前記ベース領域に前記ベース電極配線と接続するための複数のベースコンタクトが形成されており、前記マルチエミッタ領域とそれに直近の前記ベースコンタクトとの距離が、前記エミッタパッドから遠ざかるにつれて短くなるようにしたことを特徴とするトランジスタ。
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