JP3963150B2 - (メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法 - Google Patents
(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸製造時の副生物と(メタ)アクリル酸エステル製造時の副生物とを分解して(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及びアルコール等を回収するための(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸との総称であり、そのいずれか一方でもよく双方でもよい。また(メタ)アクリル酸類とは、これらの酸及びこれらの酸とアルコールとから得られる(メタ)アクリル酸エステルを総称するものであり、そのうち少なくとも一種を含むものを指す。
【0003】
【従来の技術】
周知の通り、アクリル酸を生成させる反応として、プロピレンの気相酸化法がある。このプロピレンを酸化してアクリル酸を得る方法には、アクロレインまでの酸化と次の段階のアクリル酸までの酸化の条件が異なるため、それぞれを別の反応器で行う二段酸化プロセスと、一段酸化で直接アクリル酸まで酸化するプロセスとがある。
【0004】
図1は二段酸化によりアクリル酸を生成させる。更に、アルコールとの反応によりアクリル酸エステルを生成させる工程図の一例であり、プロピレン、水蒸気及び空気がモリブデン系触媒等が充填された第一反応器及び第二反応器を経て二段酸化されてアクリル酸含有ガスとなる。このアクリル酸含有ガスを凝縮塔にて水と接触させてアクリル酸水溶液とし、これに適当な抽出溶剤を加えて抽出塔にて抽出し、溶剤分離塔にて該抽出溶剤を分離する。次いで、酢酸分離塔にて酢酸を分離して粗アクリル酸とし、この粗アクリル酸から精留塔にて副生物を分離することによりアクリル酸精製物が得られる。また、このアクリル酸(精製物)がエステル化反応塔にてエステル化反応した後、抽出塔及び軽質分離塔を経て粗アクリル酸エステルとされ、この粗アクリル酸エステルが精留塔にて副生物(高沸点物)が分離されてアクリル酸エステル精製物となる。
【0005】
なお、アクリル酸エステルの種類によっては図2のような工程を経る場合もある。この場合、副生物はアクリル分離塔の缶出液として得られる。
【0006】
図2のアクリル酸エステル製造プロセスにおいては、アクリル酸、アルコール、回収アクリル酸、回収アルコールをそれぞれエステル化反応器に供給する。このエステル化反応器には強酸性イオン交換樹脂などの触媒が充填されている。この反応器から取り出された生成エステル、未反応アクリル酸、未反応アルコール及び生成水等からなるエステル化反応混合物はアクリル酸分離塔に供給される。
【0007】
このアクリル酸分離塔の塔底から未反応アクリル酸を含む塔底液を抜き出し、エステル化反応器へ循環させる。該塔底液の一部は重質分分離塔へ供給し、重質分を塔底から分離し、これを高沸分解反応器(図示せず)に供給し、分解する。分解により生じた有価物を含む分解生成物はプロセスに循環される。循環されるプロセス内の場所は、プロセス条件によって異なる。重合物などの高沸点不純物は高沸分解反応器から系外へ除去する。
【0008】
このアクリル酸分離塔の塔頂からは、アクリル酸エステル、未反応アルコール及び生成水が留出する。流出物の一部は還流液としてアクリル酸分離塔に循環され、残りは抽出塔に供給される。
【0009】
この抽出塔にはアルコール抽出のための水が供給される。塔底から流出するアルコールを含む水はアルコール回収塔に供給される。蒸留されたアルコールはエステル化反応器に循環される。
【0010】
抽出塔の塔頂から流出した粗アクリル酸エステルは軽沸分離塔Rへ供給され、その塔頂から軽沸物が抜き出され、プロセス内へ循環される。循環されるプロセス内の場所は、プロセス条件によって異なる。軽沸物を除去された粗アクリル酸エステルはアクリル酸エステル製品精製塔へ供給され、塔頂より高純度アクリル酸エステルが得られる。塔底液はアクリル酸を多く含むので、プロセス内へ循環される。循環されるプロセス内の場所はプロセス条件によって異なる。
【0011】
なお、近年では、上記のアクリル酸水溶液からのアクリル酸の回収を、抽出溶剤を用いて行う溶剤抽出法の代りに、水と共沸溶剤を用いて蒸留し、共沸分離塔の塔頂からは水と共沸溶剤との共沸混合物を留出させ、塔底からアクリル酸を回収する共沸分離法も行われている。
【0012】
メタクリル酸及びメタクリル酸エステルの場合は、プロピレンの代りにイソブチレンもしくはt−ブチルアルコールを用い、同様の酸化プロセス及びその後のエステル化プロセスを経てメタクリル酸精製物及びメタクリル酸エステル精製物が得られる。
【0013】
なお、(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル)を生成させる方法としては、低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルと高級アルコールとを酸等を触媒としてトランスエステル化反応させ、高級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法も行われている。このトランスエステル化反応で得られた粗(メタ)アクリル酸エステルは、触媒分離、濃縮、精留等の工程を経て精製(メタ)アクリル酸エステルとされる。
【0014】
上記の粗アクリル酸、粗メタクリル酸、粗アクリル酸エステル、粗メタクリル酸エステルを蒸留精製して分離された留分中には、ミカエル付加物などの有用な副生物が含まれているので、これを分解して(メタ)アクリル酸やそのエステル、原料アルコール等を回収することが行われている。
【0015】
アクリル酸又はアクリル酸エステルのミカエル付加物の分解方法としては、アクリル酸の製造プロセスにおいては触媒を用いない熱分解方法が一般的に採用されるが(特開平11−012222号公報)、アクリル酸エステルの製造プロセスにおいては、ルイス酸もしくはルイス塩基の存在下に加熱して分解する方法が採用されている(特開昭49−055614号公報、特開平09−110791号公報)。また、アクリル酸の製造プロセスとアクリル酸エステルの製造プロセスの両製造プロセスでのミカエル付加物を併せて熱分解する方法として、無触媒での熱分解による方法(特開平8−225486号公報)と、酸触媒を用いる分解方法(特開平9−183752号公報)とが公知である。
【0016】
【特許文献1】
特開平11−012222号公報
【特許文献2】
特開昭49−055614号公報
【特許文献3】
特開平09−110791号公報
【特許文献4】
特開平8−225486号公報
【特許文献5】
特開平9−183752号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
(メタ)アクリル酸エステルの製造工程で副生するミカエル付加反応生成物を、ルイス酸やルイス塩基を触媒として分解反応を行い、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよびアルコールを回収する方法にあっては、これら(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アルコールの高い回収率を得るような分解反応条件を採用すると、エーテル類の副生量が極端に増加し、製品を汚染したり、真空系の反応器や蒸留塔での適正操作を妨害するなどの問題があった。
【0018】
また、(メタ)アクリル酸の製造工程で副生するミカエル付加反応生成物を、無触媒で熱分解反応してアクリル酸を回収する方法にあっては、高温での操作が必要である;反応容器として高級材質のものが必要となる;分解残渣の流動性が悪く、運転の変動により閉塞トラブルなどが発生する;などの問題があった。
【0019】
エーテル類の副生の問題点について、アクリル酸メチルエステル製造プロセスおよびアクリル酸n−ブチルエステル製造プロセスを例にとって詳述する。
【0020】
アクリル酸メチルエステル製造時のミカエル付加物の分解工程では、メチルアルコール由来のジメチルエーテルが副生する。この副生ジメチルエーテルは、標準沸点が248.3Kと極めて低いため、分解反応器自身や回収先の蒸留塔などで凝縮しにくいため、副生量が増大すると真空系の制御を妨害するという弊害をもたらす。
【0021】
アクリル酸n−ブチルエステル製造時のミカエル付加物の分解工程では、n−ブチルアルコール由来のジ−n−ブチルエーテルが副生する。このジ−n−ブチルエーテルを含む留分を反応系や精製系に回収した場合、ジ−n−ブチルエーテルの標準沸点は 413.4Kであり、製品アクリル酸n−ブチルの標準沸点である420Kと極めて近接しているため、製品を汚染するという重大な問題が生じる。
【0022】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの製造工程で副生するミカエル付加反応生成物等の副生物を、酸を触媒として分解を行い、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよびアルコールを回収する方法において、高い回収率を得るような分解反応条件にしても、プロセス上問題となるエーテル類の副生が抑制でき、かつ両工程からのミカエル付加物を同時に処理することができる方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法は、(メタ)アクリル酸製造時の副生物と、(メタ)アクリル酸エステル製造時の副生物との混合物を酸触媒の存在下で分解する方法であって、該酸触媒を該混合物に対し0.1〜0.8重量%添加することを特徴とするものである。
【0024】
アクリル酸エステルの製造工程で副生するミカエル付加物の分解工程において、従来は、回収率を上げるために、多量の酸触媒を使用していた。しかし、多量の触媒を使用した場合には、アルコールの脱水2量化反応等によってエーテルが副生し、ここで生成するエーテルは上述の通り、真空系の制御を妨害したり、製品を汚染する恐れがあるという弊害があった。
【0025】
本発明者の研究の結果、むしろ、酸触媒の使用量を少なくすることが、エーテルの生成を抑え、生産性も向上することが見出された。
【0026】
本発明では、(メタ)アクリル酸の製造工程で副生するミカエル付加物と(メタ)アクリル酸エステルの製造工程で副生するミカエル付加物とを一括して分解することにより、ミカエル付加物の分解を効率良く行うことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下において、(メタ)アクロレインはアクロレイン、メタアクロレインの一方又は双方を示す。
【0028】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の原料アルコールとして枝分かれのないアルコールから製造される(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。中でも(メタ)アクリル酸n−ブチルが最も好ましい。
【0029】
ミカエル付加物は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合に、反応工程や精製工程で生成する副生物であり、これらの製造過程で存在する(メタ)アクリロイル基を持つ化合物の、(メタ)アクリロイル基のα位もしくはβ位に(メタ)アクリル酸、または酢酸、またはアルコール、または水がミカエル付加した化合物である。製造過程で存在する(メタ)アクリロイル基を持つ化合物には、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸およびその(メタ)アクリル酸に(メタ)アクリル酸がミカエル付加したβ-アクリロキシプロピオン酸又はβ−メタクリロキシイソ酪酸(以下、両者を併せてダイマー)、さらにこのダイマーに(メタ)アクリル酸がミカエル付加した(メタ)アクリル酸3量体(以下、トリマー)、(メタ)アクリル酸4量体(以下、テトラマー)等のカルボン酸、および、それらの(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸がアルコールでエステル化された対応する(メタ)アクリル酸エステルがある。また、同様に(メタ)アクロレインに(メタ)アクリル酸がミカエル付加したものも含まれる。本発明のミカエル付加物として具体的には、β−アクリロキシプロピオン酸又はβ−メタクリロキシイソ酪酸およびそのエステルおよびアルデヒド体(β−アクリロキシプロパナール又はβ−メタクリロキシイソブタナール)、β−アルコキシプロピオン酸およびそのエステル、β−ヒドロキシプロピオン酸もしくはβ−ヒドロキシイソ酪酸およびそれらのエステルおよびアルデヒド体、さらにはダイマー、トリマー、テトラマー等、およびそれらのエステル、およびそれらのβ−アクリロキシ体、β−アセトキシ体、β−アルコキシ体、β−ヒドロキシ体などがある。
【0030】
本発明の(メタ)アクリル酸は、好ましくはプロパン、プロピレン、アクロレイン、イソブチレン、t−ブチルアルコール等の接触気相酸化反応で得られるものであり、ガス状酸化反応生成物を急冷、水でクエンチ後、水と(メタ)アクリル酸との分離を、共沸溶媒を用いる共沸蒸留法、または溶媒を用いる抽出法で行い、さらに酢酸などの低沸点化合物を分離した後、ミカエル付加物などの重質分と分離して高純度(メタ)アクリル酸が製造される。なお、水と酢酸を同時に共沸剤を用いて分離してもよい。上記のミカエル付加物は重質分に濃縮される。
【0031】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法としては、(メタ)アクリル酸にアルコールをエステル化反応させる方法でもよく、低級アルコールのアクリル酸エステルと高級アルコールをトランスエステル化反応させ、高級アルコールのアクリル酸エステルを製造する方法でもよい。また、製造プロセスとしては回分式、連続式いずれも可能である。これらのエステル化、トランスエステル化の触媒としては酸触媒が一般的に使用される。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル製造プロセスは、好ましくは、反応工程と、この反応工程で得られた粗アクリル酸エステル液を触媒分離、濃縮・精製等を行う為の洗浄、抽出、蒸発、蒸留等を行う精製工程よりなる。反応工程での(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルとアルコールの原料モル比、反応に用いる触媒種および量、反応方式、反応条件等は用いるアルコールの原料種によって適宜選定される。エステル化反応工程で主として副生するミカエル付加物は、有効成分を回収する蒸留塔の塔底に重質分として濃縮される。
【0033】
本発明において、ミカエル付加物の分解反応を実施する反応プロセスには、連続式、回分式、半回分式あるいは間歇抜き出し方式等いかなる方式も採用され得るが、連続式が好ましい。反応器の形式にも特に制限はなく、流通式管式反応器、薄膜流下型反応器、完全混合槽型攪拌槽反応器、循環型完全混合槽反応器等のいずれの形式も採用できる。分解反応生成物中に含まれる有用成分を反応中に蒸発または蒸留で取得する方法、または分解反応後、蒸発ないしは蒸留で取得する方法のいずれも採用できるが、高回収率を得るには前者の反応蒸留方式の方が好ましい。
【0034】
反応蒸留方式を採用した場合の反応圧力は、後述する反応温度に大きく依存し、分解反応で生成した、および分解反応原料中に含まれるアクリル酸、アクリル酸エステル、アルコール等の有用成分の大半が蒸発するような圧力が採用される。
【0035】
触媒としては、硫酸、燐酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸などから選択されるが、有機酸が好ましい。
【0036】
本発明では、酸触媒の濃度は、仕込み液基準で 0.1〜0.8重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%である。
【0037】
分解反応温度は120〜200℃が好ましい。抜き出し液基準の液滞留時間は0.5〜50時間特に2〜20時間が好ましい。なお、分解反応を連続反応で行う場合、反応時間は抜き出し液で換算した液滞留時間を反応時間とみなすことができる。例えば、反応器内の液容量が500L、抜き出し液量が100L/Hの場合、滞留時間は5時間となる。
【0038】
なお、従来は、通常の分解反応条件として、p−トルエンスルホン酸濃度が、仕込み液基準で5〜15重量%、分解反応温度が180〜230℃、反応時間は0.1〜4.0時間の条件が採用されていた。本発明者らは、エーテルの副生反応およびミカエル付加体類の分解反応を多面的に解析し、エーテル体の副生を抑制するためには、触媒としての酸を低濃度とし、かつ、比較的低い分解温度とするのが好適であることを見出した。また、(メタ)アクリル酸製造工程のミカエル付加物を同時処理することで、特開平9−183752号、同9−183753号に記載があるように、アクリル酸およびそのオリゴマーの存在はエーテルの副生を減少させるという効果も期待できる。さらに、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物を同時に一括処理することで、単位時間当たりの処理量が増加し配管内での流速を大きくでき、特に粘度が高い残渣の抜き出しが容易になる利点もある。
【0039】
本発明の分解反応条件を採用するとミカエル付加体の分解反応の進行がやや遅くなるが、反応時間をある程度長くとれば、十分高い回収率が得られる。
【0040】
分解反応で得られる、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アルコールに富む留出分は、アクリル酸エステルの製造工程に全量回収される。回収先は特に限定されないが、軽質分をわずかに含むため、軽質分を分離する工程以前に回収することが好ましい。本発明の大きな利点の一つは、このように(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの両製造工程から副生物として得られる重質物の処理を一括してできること、さらに有価物の回収先は(メタ)アクリル酸エステルの製造工程のみで可能なことから、プロセスが簡素化され、建設費、運転人員、用役の削減などの効率化、コストの削減に多大な寄与をなすことである。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明について、実施例、参考例および比較例を挙げて詳細に説明する。
【0042】
実施例1
アクリル酸n−ブチルエステル製造工程の精留塔塔底液と、アクリル酸製造工程の重質分の分離のための精留塔塔底液とを分解反応に供した。
【0043】
アクリル酸n−ブチルエステルの精留塔塔底液の組成は、アクリル酸n−ブチル16重量%、β−n−ブトキシプロピオン酸n−ブチル59重量%、β−アクリロキシプロピオン酸n−ブチル4重量%、β―ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル2重量%、その他重質物19重量%で、290g/hで分解反応器に供給した。
【0044】
アクリル酸の重質分分離のための精留塔塔底液の組成は、アクリル酸21重量%、β−アクリロキシプロピオン酸51重量%、その他重質物28重量%で、分解反応器に290g/hで同時に供給した。
【0045】
分解反応器は、内径200mm、長さ400mm、材質はハステロイCであり、上部に内径30mm、長さ1000mmでコイルパックを500mm充填した蒸留塔、および付属のコンデンサー、真空系を設置した。分解反応器は外部ヒーターにより反応温度を制御し、液滞留時間は分解反応器内の液面で制御した。
【0046】
分解反応触媒として、p−トルエンスルホン酸を2.9g/h(供給液に対し0.5重量%)で供給し、反応圧力47kPa、分解温度160℃、滞留時間10時間で分解反応を実施した。
【0047】
塔底の抜き出し残渣の組成をガスクロマトグラフィーで分析した結果、アクリル酸8.4重量%、n−ブチルアルコール1.0重量%、アクリル酸n−ブチル5.1重量%、β−n−ブトキシプロピオン酸n−ブチル18.3重量%、β−アクリロキシプロピオン酸n−ブチル1.3重量%、β−ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル0.7重量%、β−アクリロキシプロピオン酸11.7重量%、p−トルエンスルホン酸1.4重量%、その他重質物52.1重量%であった。199g/hにてこの反応残渣物が得られた。
【0048】
塔頂からは383g/hにて、水0.13重量%、アクリル酸46.2重量%、アクリル酸n−ブチル33.2重量%、n−ブタノール13.0重量%、その他7.3重量%の留分が回収され、ジ−n−ブチルエーテルは0.15重量%含有されていた。
【0049】
参考例1
実施例1と全く同一装置を用いて、アクリル酸n−ブチルエステルの精留塔塔底液のみの分解反応実験を行った。原料は実施例1と同じ原料を580g/hで供給した。その他は実施例1と全く同じ条件で分解反応を実施し、塔底の抜き出し残渣の組成をガスクロマトグラフィーで分析した結果は、アクリル酸n−ブチル6重量%、β−n−ブトキシプロピオン酸n−ブチル36重量%、アクリロキシプロピオン酸n−ブチル2重量%、β−ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル0.3重量%、p−トルエンスルホン酸1.4重量%、その他54.3重量%であった。199.8g/hにてこの反応残渣物が得られた。
【0050】
塔頂からは382.5g/hにて、アクリル酸、アクリル酸n−ブチル、n−ブタノールが主成分の留分が回収され、ジ−n−ブチルエーテルは0.35重量%含有されていた。
【0051】
実施例1と参考例1より、アクリル酸の製造工程で得られるミカエル付加物が濃縮されている重質分を同時に処理しても有価物の回収は問題なく同様に実施でき、ジ−n−ブチルエーテルの副生を低減できることが認められた。
【0052】
比較例1
触媒としてp−トルエンスルホン酸を290g/h(供給液に対し5重量%)供給したこと以外は実施例1と全く同一の原料を用い、5.80kg/hで供給した。反応温度は200℃、圧力は120kPaで、滞留時間は1時間の条件で分解反応を実施した。
【0053】
この結果、塔底より平均2.3kg/hが反応残渣物として得られた。分解反応器上部の蒸留塔塔頂からは平均3.8kg/hにて、アクリル酸、アクリル酸n−ブチル、n−ブタノールが主成分の留分が回収され、ジ−n−ブチルエーテルは1.54重量%含有されていた。
【0054】
実施例2
実施例1と同一の分解反応装置を用い、アクリル酸メチルエステル製造プラントの重質分分離のための精留塔の塔底液とアクリル酸製造プラントの重質分(精留塔塔底液)を1:1に混合した原料を用い、実施例1と同様な触媒種、濃度、温度、液滞留時間とし、圧力は60kPaで分解反応を行った。原料の組成は、アクリル酸21重量%、β−アクリロキシプロピオン酸30重量%、β−メトキシプロピオン酸メチル6重量%、β−ヒドロキシプロピオン酸メチル4重量%、β−メトキシプロピオン酸21重量%、β−アクリロキシプロピオン酸メチル4重量%、その他重質物14重量%であり、580g/hでフィードした。
【0055】
この結果、分解反応器上部の蒸留塔塔頂からは、平均396g/hにて回収液が得られ、アセトン−ドライアイストラップに捕集されたジメチルエーテルは0.35g/hであった。
【0056】
比較例2
触媒濃度を原料供給量に対して5重量%としたこと以外は、実施例2と全く同一の原料および分解反応装置および反応条件を用い分解反応を行った。分解反応器上部の蒸留塔塔頂からは、平均397g/hにて回収液が得られ、アセトン−ドライアイストラップに捕集されたジメチルエーテルは3.8g/hであった。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル製造工程で副生するミカエル付加反応生成物を、酸を触媒として一括分解処理を行い、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよびアルコールを高率にて回収することができる。また、プロセス上および/または製品品質上問題となるエーテル類の副生を抑制できる。本発明によると、ミカエル付加物の分解反応工程をひとつに統合でき、省力化や建設費、用役費の削減等、多大な経済効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクリル酸及びアクリル酸エステルの製造工程図の一例である。
【図2】アクリル酸エステルの製造工程図の他の例である。
Claims (7)
- (メタ)アクリル酸製造時の副生物と、(メタ)アクリル酸エステル製造時の副生物との混合物を酸触媒の存在下で分解する方法であって、
該酸触媒を該混合物に対し0.1〜0.8重量%添加することを特徴とする(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法。 - 請求項1において、(メタ)アクリル酸生成時の副生物は(メタ)アクリル酸精製工程の重質分を分離する精留塔の塔底液であり、(メタ)アクリル酸エステル製造時の副生物は、(メタ)アクリル酸エステル精製工程の重質分を分離する精留塔の塔底液であることを特徴とする(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法。
- 請求項1又は2において、前記(メタ)アクリル酸製造時の副生物は、ミカエル付加物を含有することを特徴とする(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記(メタ)アクリル酸エステル製造時の副生物は、ミカエル付加物を含有することを特徴とする(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法。
- 請求項4において、ミカエル付加物は(メタ)アクリロイル基のα位もしくはβ位に水、アルコール、(メタ)アクリル酸又は酢酸が付加した化合物であることを特徴とする(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記分解処理温度が120〜200℃であることを特徴とする(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、前記分解処理時間が0.5〜20時間であることを特徴とする(メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法。
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