JP3963138B2 - 太陽電池内蔵瓦の施工構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、太陽電池内蔵瓦の施工構造に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、太陽電池を屋根瓦に組み込んだ太陽電池内蔵瓦の施工に有用な、作業者が棟方向を向いて当該太陽電池内蔵瓦の施工および配線作業を行うことのできる、新しい太陽電池内蔵瓦の施工構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
太陽光発電システムには、屋根瓦の葺き上げ後に支持フレームを設置して太陽電池を支持固定する屋根置きタイプがあるが、屋根瓦に加えて支持フレーム等の専用部材を必要とするために屋根への荷重負荷が大きく、また外観も屋根全体と合いにくいという懸念があった。
【0003】
そこで、太陽電池を屋根瓦に組み込んで瓦一体型とした太陽電池内蔵瓦が実現されており、これによれば、屋根置きタイプと比較して、省部材、省施工、外観向上を図ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のとおりに優れた特徴を有する従来の太陽電池内蔵瓦にあっても、施工上以下のような改良すべき点があった。
【0005】
すなわち、たとえば図10〜図12に例示したように、従来の太陽電池内蔵瓦(1)は、通常の屋根瓦の施工方法を踏襲し、軒先側から棟側へ向かって葺き上げていくものとなっており、また太陽電池(11)の配線(12)は瓦の裏側に通され、瓦と野地板や防水下葺き材等の屋根下地材(2)との間に形成される空間にて結線するようになっているため、作業者は軒先に向かっての作業姿勢となり(図11参照)、作業がしにくいといった問題や、瓦を固定してしまうと裏側の配線(12)の結線状態を確認しにくく、結線忘れや結線外れ等が生じてしまったり、瓦自体が配線(12)の上に乗り上げて圧迫や断線が生じたりする恐れがあるといった問題があったのである。
【0006】
作業者が棟側に向かって作業するとしても、施工済みの下段の太陽電池内蔵瓦(1)上に乗って上段の太陽電池内蔵瓦(1)を施工することになり、その結線作業も太陽電池内蔵瓦(1)の裏側を覗き込みながらのものとなるため、太陽電池(11)の破損の恐れや作業の困難性を考えるとやはり好ましくない。
【0007】
さらにまた、図12に例示したように、配線(12)が屋根下地材(2)上をじかに這うことになるため、侵入した水にさらされ易く、その水も溜まり易く、あるいは屋根下地材(2)としての防水下葺き材に用いられる可塑剤等の化学物質に接触し易く、配線(12)と屋根下地材(2)との状態があまり好ましいものにはなっていなかった。
【0008】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術を改良し、省部材、省施工、外観向上という太陽電池内蔵瓦の特徴はそのままに、作業者が棟方向を向いて当該太陽電池内蔵瓦の施工および配線作業を行うことができるようにした、新しい太陽電池内蔵瓦の施工構造を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、太陽電池を屋根瓦に組み込んだ太陽電池内蔵瓦の施工構造であって、太陽電池内蔵瓦の棟側端部および軒側端部には引掛部および被引掛部が設けられ、且つ太陽電池内蔵瓦の軒側端部にはさらに配線結線部が露出して設けられており、上段の太陽電池内蔵瓦の施工後にその軒側端部に露出した配線結線部にて配線結線が行われ、配線結線部では配線結線具が屋根下地材から持ち上げられて載置されており、その後下段の太陽電池内蔵瓦の棟側端部の引掛部が上段の太陽電池内蔵瓦の軒側端部の被引掛部に引っ掛けられるとともに、当該下段の太陽電池内蔵瓦によって上段の太陽電池内蔵瓦の軒側端部に露出した配線結線部が隠蔽されるようにして、順次太陽電池内蔵瓦が棟側から軒先側へ葺き下ろされることを特徴とする太陽電池内蔵瓦の施工構造を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第2には、配線結線具が載置される配線結線部の基部が鋼材棒の曲折により形成され、配線結線具を載置する部位の鋼材棒が盛り上がった形状とされている太陽電池内蔵瓦の施工構造を提供する。
さらに、この出願の発明は、第3には、太陽電池内蔵瓦の軒側端部の被引掛部が取外し可能なものとなっている太陽電池内蔵瓦の施工構造を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
たとえば図1〜図3に例示したように、この出願の発明では、まず、太陽電池(11)を屋根瓦に組み込んで一体化してなる太陽電池内蔵瓦(1)に対して、その棟側端部および軒側端部に引掛部(13)および被引掛部(14)を設け、且つ、軒側端部にさらに配線結線部(15)を露出して設けるようにしている。
【0012】
図1〜図3の実施形態では、引掛部(13)は、太陽電池内蔵瓦(1)の棟側端部から棟方向へ突出し且つ上方に屈折した形状を有するものであって、棟側端部の略全長にわたって設けられており、被引掛部(14)は、太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部から軒方向へ突出し且つ下方に屈折した形状を有するものであって、軒側端部の略全長に渡って設けられており、軒棟方向に隣接する上下段の太陽電池内蔵瓦(1)同士を施工する際に下段の太陽電池内蔵瓦(1)の引掛部(13)の上方屈折部分と上段の太陽電池内蔵瓦(1)の被引掛部(14)の下方屈折部分とが引っ掛かり合うようになっている。
【0013】
配線結線部(15)については、太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部から軒方向へさらに突出し外に露出したものとなっている。より具体的には、受け板形状の基部(151)があり、基部(151)の棟側端部にはそれが屈延設してなる被引掛部(14)が存在し、被引掛部(14)の上面にて太陽電池内蔵瓦(1)の裏面に固定されており、他方、軒方向へ突出した基部(151)の平板部分にはジョイントボックス等の配線結線具(152)が載置されている。すなわち、このような配線結線部(15)およびそれと一体形成された被引掛部(14)が一つの瓦引掛・配線結線用部材をなし、太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部に設けられているのである。
【0014】
ところで、この瓦引掛・配線結線用部材をなす基部(151)は、図1〜図3の実施形態では、太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部の略全長にわたって延びた受け皿形状のものとなっているが(図2参照)、この場合水や湿気などが受け皿形状の基部(151)内に溜まり、配線結線具(152)等の配線周りに水気が残ってしまうことも考えられる。
【0015】
そこで、たとえば、図2に例示したように基部(151)に水抜き穴(153)を設けたり、あるいは図4および図5に例示したように基部(151)自体を鋼材棒で構成したものとすることで、水や湿気などが溜まるのを防ぐことができる。後者の場合さらには、配線結線具(152)を載置する部位の鋼材棒を若干盛り上げた形状とすることで、配線結線具(152)と屋根下地材(2)との間の空間を広げて、その空間に湿気が溜まったり、表面張力で水が配線結線具(152)に付着したりすることを、より効果的に防ぐこともできる。
【0016】
なお、図4および図5の実施形態では、被引掛部(14)は、鋼材棒の基部(151)によりなる配線結線部(15)とは別体のものとなっている。また、前述の図1〜図3の実施形態とは異なり、太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部から軒方向へ突出せず、軒側端部の裏面からそのまま下方へ屈折した形状のものとなっている。この場合でも、施工時に下段の太陽電池内蔵瓦(1)の引掛部(13)を引っ掛け可能である。
【0017】
この出願の発明では、以上のとおりの各種態様の太陽電池内蔵瓦(1)の施工を次のように行う構造としている(図6参照)。
【0018】
まず上段つまり棟側の太陽電池内蔵瓦(1)を屋根下地材(2)上に載置し、その軒側端部に露出した配線結線部(15)にて配線結線を行う(図6(a)(b)参照)。図6の実施形態では、基部(151)は固定ネジ(17)によって屋根下地材(2)に固定され、これにより太陽電池内蔵瓦(1)自体も屋根下地材(2)に固定されることとなる。また太陽電池(11)からの配線(12)は、太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部付近の裏側から、屋根下地材(2)に触れることなく、基部(151)上にて外に露出した配線結線具(152)へと導かれており、この配線結線具(152)を介して横方向の他の太陽電池内蔵瓦(1)からの配線(16)(図2も参照)と結線される。
【0019】
続いて、下段つまり軒側の太陽電池内蔵瓦(1)を、その棟側端部の引掛部(13)を上段の太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部の被引掛部(14)に引っ掛けるようにして、且つ、上段の太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端部から露出した配線結線部(15)を覆い隠すようにして、屋根下地材(2)上に載置する(図6(c)(d)参照)。
【0020】
後は、同じ手順を繰り返し、順次太陽電池内蔵瓦(1)を棟側から軒先側へ葺き下ろしていけばよい。
【0021】
以上のこの出願の発明の施工構造によれば、作業者は一貫して棟方向を向いたままで作業を行え(図1参照)、また瓦葺き作業と配線結線作業を完全に分離して行えるので、両作業がし易く、葺き仕上がりや結線状態の確認も容易に行うことができる。下段の太陽電池内蔵瓦(1)を施工する前に、上段の太陽電池内蔵瓦(1)についての横一列の結線状態を一度に目視確認できる。それぞれの配線(12)自体も、従来よりは長さに遊びが必要でなくなるので、より短くて済む。また、瓦自体が配線(12)の上に乗り上げることもないので、圧迫や断線も防止でき、配線(12)が屋根下地材(2)に触れることもないので、屋根下地材(2)との間で水が溜まったり屋根下地材(2)の化学物質に接触したりすることも防止できる。
【0022】
さて、以上のとおりに太陽電池内蔵瓦(1)を葺き終えた後、故障等が原因で一部の太陽電池内蔵瓦(1)のみを修理のために取り外したり新しいものに取り替えたりする場合が当然生じ得る。そこで、その取替えを容易に行えるようにすべく、たとえば図7(a)(b)に例示したように、被引掛部(14)を取外し可能なものとしてもよい。
【0023】
図7(a)(b)の実施形態では、被引掛部(14)は、太陽電池内蔵瓦(1)の軒側端面に固定ネジ(141)で取り付けられ、固定ネジ(141)の着脱によって簡単に取付け・取外し自在なものとなっている。
【0024】
この場合たとえば、まず、図8(a)に例示したように、取り外す太陽電池内蔵瓦(1a)の固定ネジ(141)および被引掛部(14)を外し、且つ、その一つ上段の太陽電池内蔵瓦(1b)の固定ネジ(141)および被引掛部(14)を外す。
【0025】
続いて、図8(b)に例示したように、取り外す太陽電池内蔵瓦(1a)の固定ネジ(17)を外し、その一つ下段の太陽電池内蔵瓦(1c)を持ち上げる。このとき、たとえば図7(c)に例示したように、配線結線部(15)をなす基部(151)の太陽電池内蔵瓦(1)の裏面との接合部分を、太陽電池内蔵瓦(1)裏面に固定された固定部(151a)と固定部(151a)に回動自在に嵌め込まれた軸部(151b)とからなる回動自在構造のものとすることで、その回動接合部分を基点として下段の太陽電池内蔵瓦(1c)を上方に開けるように持ち上げることができる。
【0026】
そして、結線を外して太陽電池内蔵瓦(1a)を取り外す。
【0027】
後は、図9(a)に例示したように、上段の太陽電池内蔵瓦(1b)の被引掛部(14)を固定ネジ(141)で取付け直し、修理後の太陽電池内蔵瓦(1a)あるいは新しい太陽電池内蔵瓦(1a)を、その引掛部(13)を上段の太陽電池内蔵瓦(1b)の被引掛部(14)に引っ掛けるようにして取り付け、固定ネジ(17)を基部(151)を通して屋根下地材(2)へ捻じ込んで固定し、結線を行い、図9(b)に例示したように、下段の太陽電池内蔵瓦(1c)を元に戻し、太陽電池内蔵瓦(1a)の被引掛部(14)を下段の太陽電池内蔵瓦(1c)の引掛部(13)に差し込んで、固定ネジ(141)で固定し直す。
【0028】
以上により、一部の太陽電池内蔵瓦(1)のみの取外し・取付けを容易に行うことができる。
【0029】
もちろん、この出願の発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能である。
【0030】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、省部材、省施工、外観向上という太陽電池内蔵瓦の特徴はそのままに、作業者が棟方向を向いて当該太陽電池内蔵瓦の施工および配線作業を行うことができるようにした、新しい太陽電池内蔵瓦の施工構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明を説明するための図である。
【図2】この出願の発明における太陽電池内蔵瓦の一実施形態を例示した斜視図である。
【図3】この出願の発明における太陽電池内蔵瓦の一実施形態を例示した側面図である。
【図4】この出願の発明における太陽電池内蔵瓦の別の一実施形態を例示した斜視図である。
【図5】この出願の発明における太陽電池内蔵瓦の別の一実施形態を例示した側面図である。
【図6】(a)〜(d)は、各々、この出願の発明の施工手順を説明するための図である。
【図7】(a)〜(c)は、各々、この出願の発明における太陽電池内蔵瓦のさらに別の一実施形態を説明するための図である。
【図8】(a)(b)は、各々、図7の実施形態におけるこの出願の発明の施工手順を説明するための図である。
【図9】(a)(b)は、各々、図8に続く施工手順を説明するための図である。
【図10】従来の太陽電池内蔵瓦の施工構造を説明するための図である。
【図11】従来の太陽電池内蔵瓦の施工構造を説明するための図である。
【図12】従来の太陽電池内蔵瓦の施工構造を説明するための図である。
【符号の説明】
1,1a,1b,1c 太陽電池内蔵瓦
11 太陽電池
12 配線
13 引掛部
14 被引掛部
141 固定ネジ
15 配線結線部
151 基部
151a 固定部
151b 軸部
152 配線結線具
153 水抜き穴
16 配線
17 固定ネジ
2 屋根下地材
Claims (3)
- 太陽電池を屋根瓦に組み込んだ太陽電池内蔵瓦の施工構造であって、
太陽電池内蔵瓦の棟側端部および軒側端部には引掛部および被引掛部が設けられ、且つ太陽電池内蔵瓦の軒側端部にはさらに配線結線部が露出して設けられており、
上段の太陽電池内蔵瓦の施工後にその軒側端部に露出した配線結線部にて配線結線が行われ、配線結線部では配線結線具が屋根下地材から持ち上げられて載置されており、その後下段の太陽電池内蔵瓦の棟側端部の引掛部が上段の太陽電池内蔵瓦の軒側端部の被引掛部に引っ掛けられるとともに、当該下段の太陽電池内蔵瓦によって上段の太陽電池内蔵瓦の軒側端部に露出した配線結線部が隠蔽されるようにして、順次太陽電池内蔵瓦が棟側から軒先側へ葺き下ろされることを特徴とする太陽電池内蔵瓦の施工構造。 - 配線結線具が載置される配線結線部の基部が鋼材棒の曲折により形成され、配線結線具を載置する部位の鋼材棒が盛り上がった形状とされている請求項1記載の太陽電池内蔵瓦の施工構造。
- 太陽電池内蔵瓦の軒側端部の被引掛部が取外し可能なものとなっている請求項1または2記載の太陽電池内蔵瓦の施工構造。
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