JP3962779B2 - 繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法及び繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents

繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法及び繊維強化複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、表面に窒化層を有するアルミナ−シリカ系繊維と固体潤滑剤として窒化硼素粉末を用いた繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法及びこれを用いた繊維強化複合材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金やプラスチックなどの中に、アルミナなどのセラミック繊維を混在させた繊維強化複合材料、例えばFRM (Fiber Reinforced Metals)やFRP(Fiber Reinforced Plastics)は、耐摩耗性に優れているために自動車エンジンのピストンなどの各種の部材に広く使用されている。しかしながら、この繊維強化複合材料は潤滑性が十分でないことでこれを摺動部材として用いると、相手部材を摩耗させることが問題とされている。そのため、これを解消するためにマトリックスである金属やプラスチックに、セラミックス繊維とともに黒鉛、二硫化モリブテン、窒化硼素などの固体潤滑剤を混合した繊維強化複合材料が特開昭60−82645号や特開昭64−52032に提案されている。
【0003】
一方で、こうした繊維強化複合材料に用いられる強化繊維の一つであるアルミナ−シリカ系繊維などは、マトリックスとの反応が生じ補強効果が十分に得られないといった問題が指摘されていた。そのためこの強化繊維をアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で1200〜1600℃で加熱処理して、強化繊維表面を窒化して表面に窒化層を形成することにより、強化繊維と金属などのマトリックスとの反応を抑えて、繊維補強効果を向上させる方法が特開平6−330412号に提案されている。この方法は強化繊維と金属などのマトリックスとの反応を防止するには極めて有効であり、繊維強化複合材料の強度や耐摩耗性を著しく向上させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術を用いて強化繊維の表面を窒化し、これと固体潤滑剤を組み合わせて、潤滑性があってしかも金属などのマトリックスと強化繊維との反応を抑えた高強度な繊維強化複合材料を実現することが出来れば、従来にない優れた繊維強化複合材料が得られることになる。
【0005】
FRMやFRPの製造方法は、通常、繊維などの強化材料に粉体などの固体潤滑剤を付着させた成形体をあらかじめ成形し、この成形体と合金やプラスチックなどのマトリックスを複合化するものである。マトリックスとの複合化前の強化材料の成形体はプリフォームといわれ、その成形体はアルミナ−シリカなどのセラミックス繊維を溶媒中に分散して均一に混合し、その後これを成形型に注入し吸引ろ過して成形されるものである。そしてプリフォームの製造で、繊維成形体に固体潤滑剤を混合させるには、繊維と一緒に固体潤滑剤を溶媒中に分散して均一に混合し成形するか、あるいは前記方法により成形した繊維の成形体をその後、固体潤滑剤が分散した溶媒中に浸して繊維の成形体に固体潤滑剤を混合させる。
【0006】
しかしながら、こうしたプリフォームの製造方法で、表面を窒化した強化繊維と固体潤滑剤を溶媒である水中で分散して混合すると、せっかく窒化層を設けた強化繊維の表面が溶媒の水で水和してしまい、マトリックスとの反応抑制効果が失われ、繊維強化複合材料の強度が著しく低下するといった問題を生じた。また、固体潤滑剤に窒化硼素粉末を用いた場合には、この窒化硼素粉末の表面も水和してしまい、所望する潤滑性が得られないといった問題も生じた。こうした問題は、溶媒に水を用いないで有機溶媒を使用すれば解消されることであるが、有機溶媒は引火性があって装置を防爆型としなければならず、作業を煩雑にしてコスト高となった。
【0007】
そのため、始めに繊維と固体潤滑剤とを水中に分散させて混合して潤滑剤の付着した繊維からなる成形体を形成し、その後これを窒化することも考えられるが、その場合は、固体潤滑剤として窒化硼素以外の固体潤滑剤、例えば炭素、二硫化モリブテンなどを用いた場合は、高温の窒化処理でこれらの固体潤滑剤が分解されてしまい、この場合も所望の潤滑効果が得られなかった。また、固体潤滑剤に窒化硼素粉末を用いた場合は、その優れた耐熱性のために窒化処理では窒化硼素は分解しないものの、それに先立つ固体潤滑剤と繊維を水中に分散させる操作で、固体潤滑剤の窒化硼素粉末表面が水和してしまい、成形体の状態で、アンモニア中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で先行技術のような温度範囲、即ち1200〜1600℃で加熱処理を行っても、窒化硼素粉末表面の酸素を取り除くことが出来ず、所望の潤滑効果が得られない場合があった。また、成形体の状態で上記範囲の温度で加熱するために、変形したり割れを生じたり、さらには繊維表面の窒化が十分になされないといった問題の生ずることがあった。
【0008】
従って、この発明は、アルミナ−シリカ系繊維と固体潤滑剤である窒化硼素粉末の混合工程を水中で分散して混合するという容易で低コストな方法が採用でき、しかもアルミナ−シリカ系繊維と固体潤滑剤からなる成形体の状態でアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスの混合ガス中で高温加熱し窒化を行っても繊維表面に窒化層が確実に形成され、強化繊維とマトリックスとの反応抑制効果や窒化硼素による潤滑効果が確実に得られるアルミナ−シリカ系繊維に窒化硼素粉末が付着した繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法及びこのプリフォームを用いて優れた潤滑性と高強度を持つ繊維強化複合材料の製造方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、表面に窒化層を有するアルミナ−シリカ系繊維に窒化硼素粉末が付着した繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法であって、一般式がXAl23 ・(1−X)SiO2 、但し1≧X>0で表される組成のアルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末を水と混合し、この混合物を成形型で成形して、繊維の体積率が4容積%以上、窒化硼素粉末の体積率が1容積%以上、アルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計が5〜40容積%で、しかも表面が水和した窒化硼素粉末の付着したアルミナ−シリカ系繊維の成形体とし、この成形体をアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で1350〜1450℃で加熱してアルミナ−シリカ系繊維の表面に窒化層を形成するとともに、水和した窒化硼素粉末の表面を窒化硼素に転換することを特徴とする繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法(請求項1)及び一般式がXAl23 ・(1−X)SiO2 、但し1≧X>0で表される組成のアルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末を水と混合し、この混合物を成形型で成形して、繊維の体積率が4容積%以上、窒化硼素粉末の体積率が1容積%以上、アルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計が5〜40容積%で、しかも表面が水和して窒化硼素粉末の付着したアルミナ−シリカ系繊維の成形体とし、この成形体をアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で1350〜1450℃で加熱してアルミナ−シリカ系繊維の表面に窒化層を形成するとともに、水和した窒化硼素粉末の表面を窒化硼素に転換し、表面に窒化層を有するアルミナ−シリカ系繊維に窒化硼素粉末が付着したプリフォームとし、このプリフォームと金属又はプラスチックのマトリックスを複合化することを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法(請求項2)である。
【0010】
【発明の実施の態様】
この発明で用いる繊維は、一般式XAl23 ・(1−X)SiO2 、但し1≧X>0の組成を有するアルミナ−シリカ系繊維で、X=1の場合のアルミナ繊維、X=0.6の場合のムライト繊維、X=0近傍の場合のガラス繊維及びこれらの中間的な組成を有する繊維である。ただし、X=0の場合のシリカ繊維は含まない。なぜなら、シリカ繊維はこれを窒化処理する温度で分解してしまうためである。Xの値が0.2よりも小さいと繊維が軟化する場合が多いので、X≧0.2であることが好ましい。
【0011】
ここで用いる繊維の形状は特に限定されるものではなく短繊維でも長繊維でもよい。例えば、太さ1〜20μm、長さが20〜400μm程度のものが用いられる。このアルミナ−シリカ系繊維と、固体潤滑剤として用いる窒化硼素粉末を水に分散し撹拌して均一な混合状態とする。この工程において窒化硼素粉末の表面は水和してしまう。ここに用いる窒化硼素粉末の粒径は特に限定されないが、1〜20μmの範囲が好ましい。さらに、必要な場合はこれにバインダーを添加する。
【0012】
バインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)などの有機バインダー、シリカゾル若しくはアルミナゾルなどの無機バインダー又はその混合系を用いることができる。有機バインダーはその後の工程の加熱処理によって脱脂され、最終製品のプリフォームには残存しないが、無機バインダーは加熱処理によっても残存するので、これを用いると繊維同士の結合をより強固にすることが出来る。通常、これらのバインダーは、2〜5重量%程度添加される。
【0013】
水にアルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末、これに必要に応じて添加したバインダーの混合液は、次にこれを成形型に入れて成形する。通常、ろ過が可能な成形型、例えばフイルターを有する成形型や金網からなる成形型に注入しろ過して成形する。この際、通常はろ過を速めるために吸引ろ過する。また、この場合に併せて加圧すると成形体の体積率を高めることが出来る。次に、これを乾燥して表面が水和した窒化硼素粉末が付着したアルミナ−シリカ系繊維の成形体とする。さらに、バインダーに有機バインダーを用いた場合は、400〜500℃に加熱をして脱脂を行なう。無機バインダーを用いた場合は600〜700℃に加熱して硬化させる。この加熱処理によって水和した窒化硼素粉末表面は水を失って酸化硼素になる場合があり、この場合は窒化硼素粉末の表面は酸素が残存することになる。
【0014】
この成形体は、アルミナ−シリカ系繊維の体積率を4容積%以上、窒化硼素粉末の体積率を1容積%以上とする。アルミナ−シリカ系繊維の体積率が4容積%未満では、成形体中の繊維量が少なすぎて成形体の形状を保持できない。また、窒化硼素粉末の体積率が1容積%未満では必要な潤滑性を得ることができない。さらに、アルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計を5〜40容積%とする。これが5容積%未満では上記のようにアルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素のいずれかが所定の体積率に達することが出来ない。
【0015】
また、アルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計が40容積%を超えると成形体が緻密になり過ぎ、その後の工程でアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で加熱処理する際に、ガスが成形体の内部まで十分に侵入できず、アルミナ−シリカ系繊維の表面の窒化や水和した窒化硼素粉末の表面の窒化硼素への転換が成形体の内部で起こらないで、アルミナ−シリカ系繊維とマトリックスとの反応が抑制されず、また潤滑性も不十分なものになる恐れがある。成形体の体積率は、繊維や窒化硼素粉末の添加量、成形する際の加圧などによって適宜調整できる。
【0016】
この成形体は、次にアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で1350〜1450℃で加熱する。アンモニアガスのみを用いた場合は、アンモニアガスと炭化水素ガスの混合ガスを用いた場合の2倍の量のアンモニアガスを必要とするので、アンモニアガスと炭化水素ガスの混合ガスを用いるのが好ましい。ガスの混合比はアンモニアガス100容積%に対して、炭化水素ガスを0.5〜30容積%とすることが好ましい。0.5容積%未満であると窒化反応の進行速度が遅くなるため好ましくない。また、30容積%を超えると炭化水素ガスの分解によって生成されるカーボン量が多くなり、窒化反応の進行を阻害するため好ましくない。炭化水素ガスとしては特に限定されないが、LPGを用いることができる。
【0017】
これによって、アルミナ−シリカ系繊維の表面が窒化されて、表面に窒化層を有するアルミナ−シリカ系繊維が得られる。この窒化層の厚さは、通常、0.05〜0.20μmとすることが好ましい。また、この加熱処理によって、前記のアルミナ−シリカ系繊維と固体潤滑剤を水中で混合する工程で水和した固体潤滑剤の窒化硼素粉末の表面が窒化されて窒化硼素に戻され、これが本来の固体潤滑剤の性能を回復することになる。
【0018】
アンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素の混合ガス中での加熱処理の温度は1350〜1450℃であるが、これが1350℃未満では水中に分散した際に水和した窒化硼素粉末の表面を窒化して再び窒化硼素に戻すことが出来ない。また、成形体を1450℃を超える温度で加熱処理すると、成形体の収縮が大きくなり変形や割れが発生する恐れがある。
【0019】
このようにして得られたプリフォームと、マトリックスであるプラスチックや金属を複合化することによって、繊維強化複合材料を得ることができる。マトリックスが金属の場合は、例えばプリフォームを予め700〜800℃で加熱してから金型に入れ、そこに溶けた金属溶湯を流し込み、100MPa程度で加圧しながら冷却する高圧鍛造法によって複合化しFRMとすることができる。マトリックスがプラスチックの場合は、例えばプリフォームに液状の熱硬化性樹脂を含浸し熱硬化させて複合化しFRPとすることができる。
【0020】
以上のように、本発明によればアルミナ−シリカ系繊維と固体潤滑剤の混合工程を水中に分散して混合するという容易で、低コストな方法が採用できるとともに、繊維表面の窒化層によってマトリックスとの反応抑制効果が得られ、さらに窒化硼素によって潤滑効果が確実に得られるプリフォームを製造することが出来る。そして、このプリフォームを用いることによって、最終的には潤滑性があって耐摩耗性及び強度の向上した繊維強化複合材料を得ることが出来る。
【0021】
【実施例】
(実施例1及び比較例1〜2)
長さ100〜200μm、太さ3〜5μmのアルミナ−シリカの短繊維 (52wt% SiO2 ・48wt% Al23 ) と平均粒径が12μmの窒化硼素粉末を水中に分散し撹拌混合し均一な混合液とした。これによって窒化硼素粉末の表面は水和した。この混合液にシリカバインダーを3重量%添加して均一に撹拌した。次にこれを成形型に注入し、吸引ろ過して加圧成形し、100℃で乾燥して縦×横×厚さが150mm×70mm×25mmのアルミナ−シリカ系繊維に表面が水和した窒化硼素粉末が付着した成形体とした。この成形体を700℃で加熱してバインダーを加熱硬化した。
【0022】
次いで、これをアンモニアにLPGガスを5容積%添加した混合ガス中、1450℃で2時間の加熱処理を行ってプリフォームを得た。このプリフォームは、表面に厚さ1μmの窒化層を有するアルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末から形成され、繊維の体積率が15容積%で窒化硼素粉末の体積率は8容積%であり、繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計は23容積%であった。
(比較例1)
実施例1と同様な方法で、窒化硼素粉末を添加しないで繊維表面が窒化されたプリフォームを作製した。このプリフォームの繊維の体積率は15容積%であった。
(比較例2)
実施例1と同様な方法で、窒化硼素粉末を添加しないで繊維表面が窒化されたプリフォームを作製した。次に、このプリフォームを窒化硼素粉末が分散された水中に浸した後に乾燥し、窒化硼素粉末が付着されたプリフォームとした。このプリフォームの繊維の体積率は15容積%で、窒化硼素粉末の体積率は8容積%であった。
【0023】
上記の3種のプリフォームを高圧鍛造法によってAC8A合金(JIS H 5202-1990)と複合化させたものを T6 処理( JIS H 0001-1988)してFRMを作成し、径5mm×長さ25mmの3種のピンに加工した。その後、図1に示すような回転するディスクにこのピンを押しつけて行うピンオンディスク法によって、その摩擦係数と1000m摺動後の摩耗率を測定しそれぞれの評価を行った。なお、ピンオンディスク法に用いられたディスク材はSKH−51(JIS G 4403-1983)とし、ピンの押圧力は0.75Pa、摺動速度は12.6cm/sec とした。この結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003962779
【0025】
表1から明らかなように、実施例1のFRMは摩擦係数が最も低く、ピンやディスクの摩耗率も小さく優れた潤滑性を有する。これは固体潤滑剤の窒化硼素粉末を水中に分散させた際に水和した窒化硼素粉末表面が上記の窒化処理によって再び窒化硼素に戻り、窒化硼素粉末の潤滑性が回復したためと考えられる。また、比較例1では窒化硼素粉末を添加していないため、摩擦係数が高く、ディスクやピンの摩耗率も高く潤滑性が劣る。また、比較例2は窒化硼素粉末が混合されているために、比較例1に比べて摩擦係数や摩耗率は低いものの、その後の窒化処理がなされていないために窒化硼素粉末表面が水中で水和したままで潤滑性が低下し、実施例1に比較して摩擦係数や摩耗率が高くなっている。
(実施例2、比較例3〜6)
アンモニアガスにLPGを5容積%添加した混合ガス中での加熱処理温度を変化させた以外は、実施例1と同様な方法でプリフォームを作成した。即ち、アルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末を水中に分散して撹拌し均一に混合し、成形して乾燥しアルミナ−シリカ系繊維に表面が水和した窒化硼素粉末が付着した成形体とした。この成形体を実施例1と同様に加熱してバインダーを硬化し、更にアンモニアガスにLPGを5容積%添加したガス中で1200℃(比較例3)、1300℃(比較例4)、1350℃(実施例2)、1450℃(実施例1)、1500℃(比較例5)、1600℃(比較例6)の各温度で2時間の加熱処理を行ってプリフォームを得た。
【0026】
しかし、1500℃、1600℃で加熱処理した比較例5、比較例6については成形体の収縮が大きくなり、成形体が変形して割れが発生してプリフォームとして使用できなかった。また、実施例1,2及び比較例3,4のプリフォームは、アルミナ−シリカ系繊維の表面に窒化層が形成されており、繊維の体積率が15容積%で窒化硼素粉末の体積が8容積%であった。このプリフォームを用いて前記の実施例1や比較例1,2と同様にしてAC8A合金と複合してFRMとしピンに加工した。このピンを用いて前記実施例1や比較例1,2と同一の条件でピンオンディスク法により摩耗試験を行った。その結果を表2に示した。
【0027】
【表2】
Figure 0003962779
【0028】
表2に示すように、窒化処理温度が1350℃未満の比較例3,4では摩擦係数、ピンやディスクの摩耗率が比較例2と同程度で、固体潤滑剤の窒化硼素粉末を水中に分散した際に水和した窒化硼素粉末表面を再び窒化して窒化硼素に戻すことが出来ず、潤滑性を回復することが出来なかった。しかし、窒化処理温度が1350〜1450℃の実施例1,2の場合は摩擦係数も低く、ピン自身の摩耗率もディスクの摩耗率も小さく優れた潤滑性を有しており、水和した窒化硼素粉末表面が窒化されて窒化硼素となり、窒化硼素粉末の潤滑性が回復されていることが分かる。
(実施例3〜8,比較例7〜8)
シリカ−アルミナ系繊維と窒化硼素粉末の体積率を表3に示すように変化させて70×150×25(mm)の成形体を作成した以外は実施例1と同様な方法で、プリフォームを作成した。即ち、繊維や窒化硼素の添加量や成形する際の加圧力などを調整して成形体の体積率を調整し、実施例1と同様にして乾燥してバインダーを硬化させ、アンモニアガスにLPGを5容積%添加した混合ガス中で1450℃で2時間の加熱処理を行った。但し、繊維の体積率が4容積%未満であった比較例7は繊維の量が少な過ぎるために形状が保持できず成形出来なかった。
【0029】
次に、実施例3〜8、比較例8のプリフォームの内部のシリカ−アルミナ系繊維の窒化状態を確かめるために、プリフォーム中心部からサンプルをとりX線回折分析により結晶相を同定した。その結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
Figure 0003962779
【0031】
実施例3〜8では、ムライト、窒化硼素とともに、β−サイアロン(Si3 Al353 )が検出されており、プリフォームの内部まで十分にガスが侵入し、中心部においても繊維表面の窒化が行われていた。しかし、比較例8ではβ−サイアロンが検出されず、プリフォームの内部まではガスが侵入できず繊維表面の窒化が行われなかったことが確認された。これは繊維の体積率と窒化硼素の体積率の合計が40容積%を超え緻密な成形体であるためであった。以上のことから、アルミナ−シリカ系繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計は40容積%以下の成形体とする。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、表面に窒化層を有するアルミナ−シリカ系繊維に固体潤滑剤として窒化硼素粉末が付着した繊維強化複合材用プリフォームを、水を溶媒として製造することが出来る。このため、有機溶媒を用いて同じようなプリフォームを製造する場合と比較して容易でしかも低コストでプリフォームを製造することが出来るようになった。また、この場合に固体潤滑剤として窒化硼素を用いるので固体潤滑剤の付着したアルミナ−シリカ系繊維からなる成形体をその後に高温で窒化処理を行ってもこれが熱分解するようなことがなく、優れた潤滑性が得られることになる。さらに、1350〜1450℃で加熱し窒化処理を行うことにより、その前段階で窒化硼素粉末を水に分散させた際に水和した窒化硼素粉末の表面が窒化硼素に転換され、しかもその際の加熱によっても成形体が収縮して変形したり割れが発生することがない。さらに、内部まで十分に反応ガスが侵入でき、成形体の状態で窒化処理を行っても成形体内部の繊維表面に窒化層を確実に形成できる。従って、固体潤滑剤の潤滑効果や繊維の窒化層によるマトリックスとの反応抑制効果が確実に得られるプリフォームとすることができる。こうしたプリフォームを用いた繊維強化複合材料は優れた潤滑性と高強度を持つものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維強化複合材料の摩耗試験であるピンオンディスク法の状態を示す説明図。
【符号の説明】
1……ピン、2……ディスク。

Claims (2)

  1. 表面に窒化層を有するアルミナーシリカ系繊維に窒化硼素粉末が付着した繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法であって、一般式がXAl・(1―X)SiO、但し1≧X>0で表される組成のアルミナーシリカ系繊維と窒化硼素粉末を水と混合し、この混合物を成形型で成形して、繊維の体積率が4容積%以上、窒化硼素粉末の体積率が1容積%以上、アルミナーシリカ系繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計が5〜40容積%で、しかも表面が水和した窒化硼素粉末の付着したアルミナーシリカ系繊維の成形体とし、この成形体をアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で1350〜1450℃で加熱してアルミナーシリカ系繊維の表面に窒化層を形成するとともに、窒化硼素とは異なる、水和した窒化硼素粉末の表面を窒化硼素に転換することを特徴とする繊維強化複合材料用プリフォームの製造方法。
  2. 一般式がXAl・(1―X)SiO、但し1≧X>0で表される組成のアルミナーシリカ系繊維と窒化硼素粉末を水と混合し、この混合物を成形型で成形して、繊維の体積率が4容積%以上、窒化硼素粉末の体積率が1容積%以上、アルミナーシリカ系繊維と窒化硼素粉末の体積率の合計が5〜40容積%で、しかも表面が水和して窒化硼素粉末の付着したアルミナーシリカ系繊維の成形体とし、この成形体をアンモニアガス中又はアンモニアガスと炭化水素ガスとの混合ガス中で1350〜1450℃で加熱してアルミナーシリカ系繊維の表面に窒化層を形成するとともに、窒化硼素とは異なる、中和した窒化硼素粉末の表面を窒化硼素に転換し、表面に窒化層を有するアルミナーシリカ系繊維に窒化硼素粉末が付着したプリフォームとし、このプリフォームと金属又はプラスチックのマトリックスを複合化することを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。
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