JP3937923B2 - 反射鏡およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、反射鏡に関し、特に、大型化が可能で、宇宙用赤外線望遠鏡や高出力レーザー装置などに適した反射鏡の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維強化複合材料は、その優れた機械的性質や低熱膨張性などにより、宇宙用赤外線望遠鏡などで使用される反射鏡への適用が期待されている。特開平10−251065号公報には、炭化珪素を主マトリックスとする炭素繊維強化複合材料の特性と、その製造方法が記載されている。この製造方法の技術概要を図4に示されたプロセスフロー図に従って以下に説明する。
【0003】
まず高強度グラファイト繊維とプリプレグ(炭素繊維クロスに合成樹脂を含浸させたシートのこと)の少なくとも2層を圧縮、硬化し、炭化する。この多孔性の炭化物に炭化可能な含浸剤(合成樹脂またはピッチ)を含浸し、再炭化し、さらにこの炭化物を最大2,400℃の温度で黒鉛(グラファイト)化する。グラファイト化した炭化物は、含有するグラファイト繊維が所定の長さになるよう細かく粉砕し、高度に炭素を含む結合剤(合成樹脂、ピッチなど)と混合したあと、この混合物を成形、硬化し炭化する。
【0004】
こうして得られる多孔性炭化物に溶融シリコンを浸透し、炭素マトリックスをシリコンカーバイドに変換すると、伸び率は大きいが、シリコンカーバイド(SiC)を主体とし少量の炭素とシリコンを含むマトリックスを炭素繊維で強化した炭素繊維強化炭化珪素系複合材料(以下、C/SiC複合材料または単に複合材料と略すことがある)を得る。
【0005】
ここで炭素繊維はグラファイト短繊維であり、部分的にシリコンカーバイドに変換されたグラファイト化炭素からなる2層以上のシェルに結合、包囲されている。このシェルは、後工程で炭素マトリックスを珪素化する際にシリコンがグラファイト繊維にまで進入するのを防ぐ。ただし、シェルの一部はシリコンカーバイドに変換されている。
【0006】
上記製造プロセスにおいて、出発物質は、いわゆる「粗糸」と呼ばれる繊維の束で、織布または織物に加工された繊維構造として或いは短繊維として存在する、高強度のグラファイト繊維である。
【0007】
マトリックスは20重量%までの元素シリコン及び少量の炭素を含むシリコンカーバイドを主とするもので、複合材料は最大5容積%の細孔(ボイド)を備えている。炭素マトリックスを珪素化する前の炭化処理は850〜950℃の範囲で行われ、グラファイト化は1800〜2200℃の温度範囲で行うのが好ましい。珪素化は、1750℃を超えない温度で行う。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した複合材料は、曲げ強度が大きく、耐熱性、耐磨耗性、耐酸性にも優れているとされるが、次のような課題を残している。すなわちプリプレグを作製するための出発物質は、「粗糸」と呼ばれる「繊維の束」であるため、含有グラファイト繊維が所定の長さになるように細かく粉砕する処理をグラファイト化された炭化物に施したとしても、炭素繊維強化炭化珪素系複合材料に仕上げられた製品成形物においては、炭素(グラファイト)繊維が束状に分散している。また、上述したように最大5容積%の細孔(ボイド)が存在する。
【0009】
このため、炭素繊維強化炭化珪素系複合材料は、宇宙用赤外線望遠鏡などの反射鏡への適用が期待されているが、上記従来の複合材料では、反射鏡の形状に表面研磨する際に、マトリックスと繊維束及びボイド部分の被研磨性が異なるために、研磨による鏡面化の加工精度を所望の高いレベルまで上げられないという問題が生じる。
【0010】
一方、反射鏡向けの従来材料として、特定のガラスや金属材料も候補として挙げられるが、それぞれに、課題がある。低歪ガラスは、熱膨張係数はゼロに近くて温度差による歪の影響が小さいが、強度、弾性率、破壊靭性値などの機械的特性が他の材料に比べて劣り、さらに、製造プロセスが複雑で、大型化が困難であり、鏡面加工するさいの加工コストと加工期間が多くかかるという不具合がある。
【0011】
金属材料としては、例えば、アルミニウムなどが考えられているが、アルミニウムは、熱膨張係数が大きいために熱応力による局部的な変形を生じやすく、温度変化のある環境では精度が確保できない、また、比重が大きく、大型化する際には重くなってしまう、などの不具合がある。
【0012】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、鏡面精度に表面研磨加工することが可能で、高強度、高剛性、低熱膨張性を具え、しかも軽量で、大型化可能な、反射鏡を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかわる反射鏡の製造方法は、溶媒に分散させたピッチ系炭素繊維を成形する工程と、成形したピッチ系炭素繊維を硬化させる工程と、硬化したピッチ系炭素繊維を第1の所定温度で焼成して炭素繊維強化炭素成形物を得る工程と、炭素繊維強化炭素成形物にシリコンの溶融液を第2の所定温度で含浸させ炭化珪素系複合材料成形物を得る工程と、得られた炭化珪素系複合材料成形物を研磨する工程を備えているものである。
【0014】
また、炭化珪素系複合材料成形物における炭素繊維の体積含有率は、30%以上、40%以下であるものである。
【0015】
また、溶媒に分散させたピッチ系炭素繊維を成形する工程において、2500℃以上、望ましくは2800℃以上で熱処理されたピッチ系炭素繊維を使用するものである。
【0016】
また、炭素繊維強化炭素成形物にシリコンの溶融液を第2の所定温度で含浸させ炭化珪素系複合材料成形物を得る工程の前に、得られた炭素繊維強化炭素成形物を反射鏡の形状に加工する工程を、備えているものである。
【0017】
また、第1の所定温度は、1650℃以上、2500℃以下であるものである。
【0018】
また、第2の所定温度は、1650℃以上、1800℃以下であるものである。
【0019】
また、研磨された炭化珪素系複合材料成形物に高反射率を有する金属の被覆膜を形成する工程を備えているものである。
【0020】
本発明にかかわる反射鏡は、ピッチ系炭素繊維を焼成して得られる炭素繊維強化炭素にシリコンを含浸させて得られる炭化珪素系複合材料成形物を有する反射鏡であって、反射鏡の炭素繊維の体積含有率は30%以上、40%以下であるものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
この発明のより詳細な狙いは、次のようである。(1) 反射鏡に適した素材として要求される鏡面精度は、例えば赤外線望遠鏡向けの場合、表面粗さ50nm(ナノメーター)以下である。(2) 温度変化による影響(歪、変形)を小さくするため、使用環境温度(約4K)から製造時の温度(室温)において熱膨張係数が小さいこと。宇宙空間で使用する赤外線望遠鏡向けの場合、望ましい熱膨張係数は、77K以下では0.2ppm以下、室温では2.5ppm/K以下である。(3) 従来のガラス、金属と比べ、軽くて、強く、大型化・軽量化が可能であること。宇宙で使用する場合は、衛星打ち上げ時の衝撃に耐えられる強度が必要である。
【0022】
図1を参照しながら、本発明にかかわる炭素繊維強化炭化珪素系複合材料から構成される反射鏡の製造プロセスを説明する。図1のフロー図においては、材料中の繊維とマトリックスの形態及び分散状態がわかりやすいように、出発原料の炭素繊維基材からグラファイト化焼成によるC/C(炭素繊維強化炭素;Carbon/Carbon)成形物までは二次元的な断面組織模式図として、また機械加工されたC/C反射鏡から鏡面研磨されたC/SiC反射鏡までは三次元的な立体図として、各工程要素が描かれている。
【0023】
まず短繊維状のピッチ系炭素繊維をバインダー(炭素繊維どうしを接合させるための糊剤)が適量添加された水溶液(溶媒)の入った容器中で攪拌し、均質に分散させる。例えば、食品添加物に使用されているセルロース系のもの(不溶性)は、細く短い繊維状で、炭素繊維に絡み付きやすく、好ましいバインダーである。
【0024】
その後、分散液を所定の寸法の治具に移して濾過し、さらに加圧して一定の寸法に成形した炭素繊維基材(炭素繊維が均質に分散した成形体のこと)を得る。次にこの炭素繊維基材にピッチまたは樹脂を含浸して硬化させる。このとき、ピッチは、加熱して溶かすと含浸し、常温に戻すと硬化するが、樹脂は含浸した後、例えば180℃で1時間ほど、大気中で加熱して硬化させる。その後、不活性雰囲気中で加熱し、含浸したピッチまたは樹脂を炭化してC/C成形物にする。
【0025】
さらに、このC/C成形物にピッチまたは樹脂を含浸し、加熱して再炭化した後、真空中または不活性雰囲気中にて2500℃以下で熱処理して、グラファイト化する。このグラファイト化C/C成形物を反射鏡形状に研削加工したのち、真空中にて1800℃以下の温度で、金属シリコンを熔融させて含浸し、マトリックス炭素を炭化珪素化する。そして最後に、この炭素繊維とSiCを主体とし少量の炭素とシリコンを含むマトリックスからなるC/SiC複合材料成形物を、鏡面研磨加工することにより、C/SiC反射鏡が完成する。この後、反射鏡の反射率を向上させるために、金やアルミニウムなどの金属をコーティングすることもある。
【0026】
ここで、ピッチとは、高分子化合物の一種である。ピッチには石油系、石炭系などが有り、常温では固体であるが、加熱すると溶融する。ピッチ系炭素繊維は、このピッチを溶融紡糸し、その後、不活性処理および炭化処理して得られる炭素繊維のことである。
【0027】
ピッチ系炭素繊維には、分散性を高めるためにあらかじめ次のような分散化処置を施しておく。先ず繊維に付着しているサイジング剤(繊維がバラバラになるのを防いで、取り扱いを容易にするための樹脂)を除去する(溶剤で洗浄するか、高温で焼き飛ばす)。次に、界面活性剤(石鹸など)の入った水溶液に炭素繊維をいれて撹拌し均質に分散させ、その後、水分を濾過すると、分散性の向上した炭素繊維の基材を得る。なお樹脂の中に炭素繊維を入れて撹拌すると毛玉になりそれがドンドン成長し、分散しないので、炭素繊維の隙間に、樹脂やピッチを含浸させるようにする。
【0028】
出発原料にピッチ系炭素繊維を使用する理由は、グラファイト化C/C成形物に溶融金属シリコンを含浸してマトリックス炭素を珪素化する際に、ピッチ系炭素繊維はシリコンと反応しにくい性質があり、繊維のSiC化による強度低下と脆化が防止されるためである。出発原料としてレーヨン系またはPAN系の炭素繊維を使用した場合、シリコン含浸時に炭素繊維もシリコンと反応しSiC化して、強度低下と脆化を招くことが、特開平7−198917号公報から示唆され、また、我々の実験結果からも確認できた。なお、PAN系の炭素繊維とは、ポリアクリロニトリルという高分子を炭化させて得られる炭素繊維のことである。
【0029】
ピッチ系炭素繊維には、ピッチ(または樹脂)含浸前に熱処理を施しておくことが望ましい。熱処理せずにピッチ(または樹脂)含浸、焼成、シリコン含浸処理を行う場合は、繊維にSiC化反応が生じ、機械的特性が低下する。一方、ピッチ(または樹脂)含浸の前に繊維を2500℃以上で熱処理を行ってから、ピッチ(または樹脂)含浸、焼成、シリコン含浸処理を行う場合は、繊維のSiC化反応が抑えられ、反応劣化は減少し、良好な特性を示す。
【0030】
以上のように炭素繊維の事前の熱処理は、炭素のグラファイト化を進めて、繊維のヤング率を高めるとともに、繊維のSiC化反応を抑えて、C/SiC反射鏡の機械的・熱的特性を向上させる効果がある。炭素繊維の事前の熱処理温度は、焼成の温度より高い方が上記効果が得られやすく、2800℃以上がより好ましい。
【0031】
また、焼成前に炭素繊維がマトリックスと均質に分散していると、反射鏡の研磨加工において鏡面精度が向上する。参考のため、特開平10−251065号公報のように束状の繊維を用いたC/SiC複合材料成形物と、本発明にかかわるC/SiC複合材料成形物(分散化処置を施した繊維を使用)の、繊維の形状及び分布状態を組織観察により比較した結果(写真)を図2に示す。束状の繊維を用いた写真(b)では炭素繊維が束状になっていて、不均質な分散状態であるが、本発明にかかわる写真(a)では繊維は束状にならず、均質に分散しているのが明瞭に示されている。
【0032】
シリコンの含浸温度は、シリコンの溶融温度(融点)から1800℃の範囲を選択しうるが、好ましいのは1650℃以上、1800℃以下の範囲である。1650℃未満の温度で含浸処理を行った場合、C/C成形物に内在しているボイド(空孔)にシリコンが十分に含浸されず、ボイドが残り、機械的特性が低下し、鏡面仕上げにも影響する。一方、1800℃を超えた温度でシリコン含浸を行った場合は、炭素繊維が反応して、強度特性が低下する。
【0033】
複合材料反射鏡において、反射鏡としての実用に適した諸特性を得るためには、炭素繊維の体積含有率は20%から50%の範囲内に、好ましくは30%から40%の範囲内に、収まることが必要である。炭素繊維の体積含有率が20%未満の場合は、機械的強度が不足し、熱膨張係数が大きい、という問題が生じる。また、体積含有率が50%を超える場合は、繊維を均質分散させるのが困難になり、さらにC/C成形物に内在しているボイドが少なくなり含浸されるシリコンの量が少なくなるためマトリックス炭素の炭化珪素化が起こりにくくなる。
【0034】
炭素繊維強化炭素(C/C)を得るための熱処理(焼成)温度は、金属シリコンを含浸させる温度と同じか、それより高く、かつ2500℃以下であることが望ましい。このC/C化の温度範囲設定はC/C化を適当な程度に進め、後工程のマトリックスのSiC化を充分に進めるためにも重要である。C/C化の温度が金属シリコンを含浸させる温度未満の場合は、シリコン含浸の際に含浸性が悪く、ボイドが残りやすくなる。また、2500℃を超える温度でC/C化した場合は、シリコン含浸の際に、SiC化反応による成形物の膨張(寸法変化)が激しくなり、成形物に亀裂や割れが生じるため、適さない。
【0035】
本発明によるC/SiC反射鏡製品においては、実用に適した高度な鏡面精度、低熱膨張性、高剛性などの優れた特性が得られる効果があり、大型で軽量、高性能な反射鏡が製造可能である。
【0036】
実施例
分散化処置したピッチ系炭素繊維(三菱化学産資株式会社製)のチョップドファイバー(平均繊維長さ;約3mm)を3000℃で熱処理を行ってグラファイト化したのち、バインダーが添加された水溶液の入った容器の中で均質に分散させた。この分散液を所定の寸法の治具に移して、さらに加熱し炭素繊維基材の成形物を得た。このとき、成形圧力を変化させ、炭素繊維の充填率の異なる4種類の試料を作成した。
【0037】
続いて、この4種類の試料を恒温槽にて90℃で24時間乾燥させてからピッチを含浸させた。さらにこの成形含浸物を不活性雰囲気中にて約1000℃で焼成してC/C化し、その後、さらに不活性雰囲気中で2000℃の熱処理をしてグラファイト化した。次いで金属シリコンを溶融させ、このグラファイト化されたC/C成形物を真空中にて1750℃で含浸した。
【0038】
こうして得られた、C/SiC複合材料成形物に含まれる炭素繊維の体積含有率は、15%、30%、40%、および60%であった。またこの成形物を構造解析したところ、マトリックスの炭素は含浸したシリコンと反応して、SiCに変化しているが、炭素繊維は反応していないことが確認された。さらに、C/SiC複合材料成形物中のボイド(空孔)は、シリコン含浸によってほとんど埋まっており、ボイドの占める割合は、炭素繊維の体積含有率が30%と40%の試料で1容積%以下であった。
【0039】
これらのC/SiC複合材料成形物の諸特性を測定した結果、図3のような値が得られた。炭素繊維の体積含有率が40%のC/SiC複合材料成形物は、低歪ガラスより約3倍の曲げ強度(210MPa)とヤング率(260GPa)を示し、しかも破壊靭性値は約7倍の値を示した。またアルミニウムよりも、強度、ヤング率が高く、1/10以下の小さな線膨張係数(室温)となった。このC/SiC複合材料成形物の表面を研磨したところ、表面(鏡面)精度は反射鏡として問題ない高度のレベル(50nm以下)になっていることが確認できた。
【0040】
炭素繊維の体積含有率が30%のC/SiC複合材料成形物でも、ヤング率(240GPa)、曲げ強さ(180MPa)、線膨張係数(室温)、破壊靭性値ともに、低歪ガラスと比較して優れた結果となった。特開平10−251065号公報に記載のC/SiC複合材料成形物(曲げ強度:57.3Mpa,ヤング率:42.6GPa)と比較しても、炭素繊維の体積含有率が30%と40%のC/SiC複合材料成形物では、曲げ強度、ヤング率とも優れていた。
【0041】
一方、炭素繊維の体積含有率が15%の場合は、破壊靭性値、曲げ強度が極端に低下し、好ましくない結果となった。また、炭素繊維の体積含有率が約60%の場合は、繊維の部分的な配向や集合化が生じて均質に分散されないため、鏡面にならず、しかもマトリックス炭素の炭化珪素化が不十分であったため破壊靭性値、曲げ強さが低下した。
【0042】
なお、表3には記載されていないが、炭素繊維の体積含有率が30%と40%の場合、77Kにおける線膨張係数は、0.2ppm以下であり、極低温で使用される場合にも対応できることがわかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明にかかわる反射鏡の製造方法は、溶媒に分散させたピッチ系炭素繊維を成形する工程と、成形したピッチ系炭素繊維を硬化させる工程と、硬化したピッチ系炭素繊維を第1の所定温度で焼成して炭素繊維強化炭素成形物を得る工程と、炭素繊維強化炭素成形物にシリコンの溶融液を第2の所定温度で含浸させ炭化珪素系複合材料成形物を得る工程と、得られた炭化珪素系複合材料成形物を研磨する工程を備えていることにより、高強度、高剛性、低熱膨張性を具えた反射鏡を得ることができるものである。
【0044】
また、炭化珪素系複合材料成形物における炭素繊維の体積含有率は、30%以上、40%以下であることにより、高強度、高剛性、低熱膨張性を具えた反射鏡を得られるものである。
【0045】
また、溶媒に分散させたピッチ系炭素繊維を成形する工程において、2500℃以上、望ましくは2800℃以上で熱処理されたピッチ系炭素繊維を使用することにより、繊維の炭化珪素化反応が抑えられるものである。
【0046】
また、炭素繊維強化炭素成形物にシリコンの溶融液を第2の所定温度で含浸させ炭化珪素系複合材料成形物を得る工程の前に、得られた炭素繊維強化炭素成形物を反射鏡の形状に加工する工程を備えていることにより、反射鏡の研削加工が容易に行えるものである。
【0047】
また、第1の所定温度は、1650℃以上、2500℃以下であることにより、炭素繊維強化炭素成形物に亀裂や割れが生じることを防止できるものである。
【0048】
また、第2の所定温度は、1650℃以上、1800℃以下であることにより、シリコンの含浸が良好に進行するものである。
【0049】
また、研磨された炭化珪素系複合材料成形物に高反射率を有する金属の被覆膜を形成する工程を備えていることにより、反射率を向上させることができるものである。
【0050】
本発明にかかわる反射鏡は、ピッチ系炭素繊維を焼成して得られる炭素繊維強化炭素にシリコンを含浸させて得られる炭化珪素系複合材料成形物を有する反射鏡であって、反射鏡の炭素繊維の体積含有率は30%以上、40%以下であることにより、高強度、高剛性、低熱膨張性を具えた反射鏡を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかわる反射鏡の製造法を説明するためのフロー図である。
【図2】使用する炭素繊維の違いによる成形物の表面形態の差を説明するための図である。
【図3】本発明にかかわる複合材料成形物の諸特性を、他の材料で構成された成形物と比較した表である。
【図4】特開平10−251065号公報に記載された炭素繊維強化複合材料の製造方法を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
C/C 炭素繊維強化炭素、 C/SiC 炭素繊維強化炭化珪素 。

Claims (8)

  1. 溶媒に分散させたピッチ系炭素繊維を成形する工程と、成形したピッチ系炭素繊維を硬化させる工程と、硬化したピッチ系炭素繊維を第1の所定温度で焼成して炭素繊維強化炭素成形物を得る工程と、炭素繊維強化炭素成形物にシリコンの溶融液を第2の所定温度で含浸させ炭化珪素系複合材料成形物を得る工程と、得られた炭化珪素系複合材料成形物を研磨する工程を備えてなる反射鏡の製造方法。
  2. 炭化珪素系複合材料成形物における炭素繊維の体積含有率は、30%以上、40%以下であることを特徴とする請求項1記載の反射鏡の製造方法。
  3. 溶媒に分散させたピッチ系炭素繊維を成形する工程において、2500℃以上、望ましくは2800℃以上で熱処理されたピッチ系炭素繊維を使用することを特徴とする請求項1記載の反射鏡の製造方法。
  4. 炭素繊維強化炭素成形物にシリコンの溶融液を第2の所定温度で含浸させ炭化珪素系複合材料成形物を得る工程の前に、得られた炭素繊維強化炭素成形物を反射鏡の形状に加工する工程を、備えていることを特徴とする請求項1記載の反射鏡の製造方法。
  5. 第1の所定温度は、1650℃以上、2500℃以下であることを特徴とする請求項1記載の反射鏡の製造方法。
  6. 第2の所定温度は、1650℃以上、1800℃以下であることを特徴とする請求項1記載の反射鏡の製造方法。
  7. 研磨された炭化珪素系複合材料成形物に高反射率を有する金属の被覆膜を形成する工程を備えていることを特徴とする請求項1記載の反射鏡の製造方法。
  8. ピッチ系炭素繊維を焼成して得られる炭素繊維強化炭素にシリコンを含浸させて得られる炭化珪素系複合材料成形物を有する反射鏡であって、反射鏡の炭素繊維の体積含有率は30%以上、40%以下であることを特徴とする反射鏡。
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