JP3962342B2 - 光電式煙感知器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルス信号により間欠的に発光部を発光駆動し、発光部からの光による煙の散乱光を受光部を受光して火災を感知する光電式煙感知器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光電式煙感知器にあっては、発光用LEDと受光用素子を外部から煙が流入可能で光の入射が遮断された暗箱に設け、発光用LEDの光が直接に入射しないような位置関係を持たせて受光用素子を配置している。
【0003】
暗箱内に煙が流入した場合、発光用LEDからの光が煙に当たって散乱光が受光素子へ入射し、その光を受光素子にて電流に変換後に増幅して煙の濃度を測定し、予め定められた濃度を上回った場合、火災と判断して火災信号を受信機に送って警報を出力させる。
【0004】
このような光電式煙感知器は、発光用LED、受光素子、増幅回路、暗箱の特性など様々なばらつき要因があるため、火災に対する感度特性を均一にするために、感度調整を必要としている。この感度調整は、例えば発光用LEDに流す発光電流を調整したり、増幅回路の利得を調整したりして一定の濃度の煙で一定の出力に安定するように工夫されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−101542号公報
【特許文献2】
特開2001−143175号公報
【特許文献3】
特開2001−184573号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の光電式煙感知器の感度を調整する手段は、ボリュームであったり、調整抵抗を切り替えたりするものであり、製造段階の最終的な調整工程で手作業により調整しているため、手間と時間がかかり、製造コストの低減を妨げている。
【0007】
またボリュームを用いた手作業による感度調整では、調整値そのものに作業者によるばらつきがあり、感度調整の精度も低いという問題がある。勿論、十分に手間と時間をかければ高精度の感度調整も可能ではあるが、生産効率が下がることからむやみに時間をかけることはできない。
【0008】
更に、ボリュームによる感度調整にいたっては経年変化や環境の悪い場所での長期安定性に欠ける面もある。
【0009】
本発明は、感度調整を簡単且つ高精度に可能とし、設置後も継続して最適な感度で火災監視を行うことができる光電式煙感知器を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明の光電式煙感知器は次のように構成される。本発明は、パルス信号により間欠的に発光部を発光駆動し、発光部からの光による煙の散乱光を受光部で受信して火災を感知する光電式煙感知器であって、初期状態で、発光部を所定のパルス幅で発光させたときの受光出力値を目標値として記憶し、予め定めた所定の期間を経過する毎の受光出力の補償タイミングでは、受光出力値が目標値に一致するようにパルス信号のパルス幅を制御して、目標値に一致する受光出力が得られたときのパルス幅を調整値として保持し、補償タイミング以後は、保持した調整値のパルス幅で発光部を発光制御する発光パルス幅制御部を設けたことを特徴とする。また発光パルス幅制御部は、補償タイミングに測定した受光出力値と目標値との差が所定値を超えた場合にパルス幅を調整する。
【0011】
このように本発明は、発光部用LEDの発光パルス幅を制御することで、感知器の感度調整を簡単且つ高精度に行う。
【0012】
この発光パルス幅によって受光出力、即ち感度を制御できる理由は次のように考えることができる。
【0013】
受光部に使用されているフォトダイオードやPINダイオードの受光電流(感度)は、放射照度Eで規定されており、mW/cm2の単位で表すことができる。即ち、放射照度E[mW/cm2]とは、ある面上に入射してくる単位面積当たりの放射パワーであると定義される。一方、発光部に使用されているLEDの放射強度Iは、mW/srの単位で表される。即ち、放射強度I[mW/sr]とは、ある1つの決まった方向に伝播する単位立体角当たりの放射パワーであると定義される。なお、1ステラジアン(sr)とは、半径1mの球の中心から、球の表面上の1m2の面積を見込んだときに張る立体角をいう。そこで光電式煙感知器の発光部につき放射強度Iを考え、受光部につき放射照度Eを考えると、両者の間には次の関係が成立する。いま発光部を発光駆動するパルス信号のパルス幅を1秒とし、仮に1Wの強度で発光したと仮定する。受光部には煙からの散乱光として、その100分の1の光が入射すると仮定した場合、受光電流に変換できるエネルギーは10mwということになる。仮に発光パルス幅が1/2の500msになった場合、空間に放出されるエネルギーは0.5Wとなり、受光素子へは5mwが変換される計算になる。当然に受光電流も半分になり、結果的に感知器の感度を発光パルス幅の変化により低下させることになる。
【0014】
また光電式煙感知器にあっては、発光部からの光はステップ的に立ち上がるが、受光素子で電気信号に変換した後に増幅した受光信号の出力は、発光を継続していると、ある時定数をもって立ち上がった後、一定に飽和する。
【0015】
このため受光出力が立ち上がって飽和する前に発光を停止させれば、発光を停止した時点の受光出力値をピーク値とする山形に変化する受光出力が得られる。そこで、発光パルスの強さ(発光電流)を一定とし、発光を受光出力が立ち上がって安定するまでの期間内で停止させれば、発光期間(発光パルス幅)にほぼ比例した受光出力のピーク値を得ることが可能である。
【0016】
本発明は、このような発光パルス幅と受光出力の関係から、発光パルス幅を制御して所定の感度に調整する。この感度調整は、光電式煙感知器に搭載しているCPUの制御処理で簡単に実現され、ボリュームや抵抗切り替えといった調整手段を必要としない。
【0017】
ここで発光パルス幅制御部は、予め定めた異なる所定感度に対応したパルス幅を選択的に設定する感度切替スイッチを備えたことを特徴とする。このように感度切替えスイッチによる発光パルス幅の選択により、簡単に調整できる。また固定感度の切替えであることから、CPUによる処理も簡単になる。
【0018】
発光パルス幅制御部は、所定感度に対応した受光出力値を目標値とし、この目標値に一致するようにパルス信号のパルス幅を制御し、目標値に一致する受光出力が得られたときのパルス幅を所定感度の調整値として保持する。即ち、発光パルス幅制御部は、所定のパルス幅初期値をもつパルス信号により発光部を発光駆動させて検出した受光出力値と目標値とを比較し、目標値より小さい場合はパルス幅を増加させ、目標値より大きい場合はパルス幅を減少させることにより目標値に一致させ、目標値に一致したときのパルス幅を調整値とする。
【0019】
このため所定感度に対応した受光出力値を目標値としてCPUに設定すると、この目標値を与える発光パルス幅に自動調整され、調整工程は極く短時間で済み、調整精度も高く、更に感知器にボリュームのような調整手段をもたないため、経年変化や環境の悪い場所での長期安定性が保証される。
【0020】
発光パルス幅制御部は、受光出力値として受光出力信号のピーク値を検出する。また発光パルス幅制御部は、受光出力値として複数回の発光駆動で得られた受光出力信号のピーク値から平均値を算出する。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による光電式煙感知器の内部回路のブロック図である。図1において、受信機側と接続される端子S,SCに続いてノイズ吸収回路1及び定電圧回路2が設けられる。定電圧回路2は受信機側からの供給電圧を、例えば+12ボルトに安定化して出力する。定電圧回路2に続いては、煙検出部3が設けられる。
【0022】
定電圧回路2の前段には伝送部4が設けられる。伝送部4に続いては定電圧回路5が設けられる。定電圧回路5は、定電圧回路2からの+12ボルトの電源供給を受けて、+3ボルトに安定化した定電圧出力を生ずる。定電圧回路5に続いてはCPU6が設けられる。CPU6に対しては、アドレス・種別設定回路7、クロック発振回路8及びリセット回路9が設けられている。
【0023】
このCPU6には、本発明による発光パルス幅の制御により感度を調整するための発光パルス幅制御部16と、煙検出部3からの受光出力信号をデジタル信号に変換して読み込むA/D変換器17が設けられている。
【0024】
煙検出部3は、LED発光回路10、受光回路11及び受光増幅回路12を備える。LED発光回路10は、間欠的に光源としてのLEDを発光している。このLEDの発光は、端子S,SCに対する受信機からの一定周期の呼出信号に同期して発光駆動してもよいし、クロック発振回路8のクロックパルスから分周した分周パルスを用いて一定時間間隔で発光してもよい。またLEDを発光駆動するパルス信号のパルス幅は、CPU6の発光パルス幅制御部16により調整されたパルス幅を使用する。
【0025】
受光回路11は、LED発光回路10で発光駆動したLEDからの光の火災により流入した煙による散乱光を受光して電気信号に変換する。受光回路11で受光された微弱な受光信号は受光増幅回路12で増幅された後、CPU6に対し煙信号として出力される。
【0026】
伝送部4は、伝送信号検出回路15と応答信号回路13で構成される。応答信号回路13には作動表示灯14が含まれる。伝送信号検出回路15は、端子S,SCに対する図示しない受信機からの各種の要求信号を受信し、CPU6に伝送要求を伝える。この受信機からの伝送要求信号は、コマンド、アドレス、チェックサムで構成される。
【0027】
CPU6は伝送信号検出回路15より受信機からの伝送要求信号を受けると、A/D変換器17で取り込んでいる受光増幅回路12からの煙データを応答する。
【0028】
応答信号回路13による作動表示灯14の点灯駆動は、CPU6が受信機に対し応答動作を行うときに点灯する。また受信機に伝送した煙データに基づいて火災が判断されたときの受信機からの火災検出信号に基づき、作動表示灯14を点灯してもよい。即ち、応答信号伝送時は作動表示灯14は点滅であり、受信機からの火災検出信号を受けたときは作動表示灯14は点灯となる。
【0029】
更に、受信機から光電式煙感知器に対する伝送要求信号は、端子S,SC間に接続する一対の信号線の電圧変化で伝送され、これに対し光電式煙感知器の伝送部4からの応答信号は受信機からの信号線間に電流を流す電流モードで伝送される。
【0030】
アドレス・種別設定回路7は、感知器アドレスをCPU6に設定し、感知器の種別を決めている。クロック発振回路8は、CPU6を動作するためにクロックパルスを発振する。リセット回路9は、受信機側での電源投入時に、CPU6に対する定電圧回路5からの電源電圧が規定電圧に立ちあがったときにリセット信号をCPU6に出力して、CPU6のイニシャルリセットを行う。
【0031】
このような光電式煙感知器において、本発明にあっては、CPU6のプログラム制御による機能として発光パルス幅制御部16を設けている。発光パルス幅制御部16は、LED発光回路10のLEDを発光駆動するパルス信号のパルス幅Wを制御して所定の感度に調整する。この発光パルス幅制御部16による感度調整は、光電式煙感知器の製造段階における最終的な調整工程で行われる。
【0032】
図2は本発明の発光パルス幅を10μsとした場合の発光パルスと煙出力のタイムチャートである。図2において、発光パルス18aはパルス幅W=10μsとして図1のLED発光回路10により与えられて、発光用LEDを発光駆動している。
【0033】
このとき検煙空間には一定の濃度の煙が流入しているか、あるいは一定の煙濃度に対応した擬似的な散乱光を受光素子に入射する試験部材がセットされている。このようなパルス幅W=10μsの発光パルス18aによりLEDを発光駆動すると、その下側に示すように若干の遅延時間後に煙出力20aが得られる。
【0034】
この煙出力20aは、発光パルス18aにより発光されている間は、ある時定数で増加しているが、発光パルス18aが停止すると減少する山形の波形となり、そのピークレベルは約0.2ボルトとなっている。
【0035】
図3は図2と同じ煙検出条件で発光パルス幅WをW=25μsに増加させた発光パルス18bでLEDを発光させたときの煙出力20bのタイムチャートである。このように発光パルス幅25μsに増加させると、煙出力20bは、発光パルス18bにより発光されている間は、ある時定数で増加し、その期間は図2の10μsに比べ25μsと長いことから更に増加し、発光パルス18bが停止すると減少する山形の波形となり、そのピーク値が約1.6ボルトに増加する。
【0036】
図4は図2と同じ煙検出条件で発光パルス幅をW=50μsとした発光パルス18cによるLEDの発光駆動で得られた煙出力20cのタイムチャートである。このときの煙出力20cは、ピークレベルとして約4ボルトが得られている。
【0037】
更に発光パルス幅Wを長くしていくと、煙出力は飽和するようになり、この飽和するまでのパルス幅が本発明の制御で有効に使用できる発光パルス幅の上限値となる。
【0038】
この図2,図3,図4における発光パルス幅を10μs,25μs,50μsとした場合の煙出力20a,20b,20cから明らかなように、受光出力が飽和レベルに達するまでの期間内で発光パルス幅を変えることで、これに応じて受光素子からの煙出力を変えることができ、この関係を利用することで、本発明にあっては、発光パルス幅の制御によって所定の感度、火災と判断する所定の煙濃度での煙出力が動作点(閾値)となるように感度調整を行い、このときパルス幅Wを調整値として保持し、この調整値を発光パルス幅として以後使用する。
【0039】
図5は感度切替スイッチを備えた本発明の実施形態の回路ブロック図であり、図1の煙検出部3とCPU6の部分を取り出している。
【0040】
図5において、LED発光回路10にはLED10aが設けられ、トランジスタQ1、抵抗R1,R2,R3による駆動回路により発光駆動される。
【0041】
受光回路11には受光素子11aが抵抗R4に直列接続されて設けられる。受光増幅回路12は帰還抵抗R5を備えたオペアンプ12aで構成されている。
【0042】
CPU6には、この実施形態にあっては、外部に複数の感度設定スイッチ21a,21b,…21nを設けている。感度設定スイッチ21a〜21nは、予め定めた異なる所定感度に対応したパルス幅を選択的に設定する。
【0043】
即ち、感度設定スイッチ21aに最小パルス幅Wminを割り当て、残りの感度設定スイッチ21b〜21nに所定の変化値ΔWずつ順次増加させた発光パルス幅Wmin+ΔW,Wmin+2ΔW,…Wmin+(n−1)ΔWを割り当てている。
【0044】
この感度設定スイッチ21a〜21nは例えばディップスイッチであり、任意の1つをオンすることで、オンした感度設定スイッチに対応した発光パルス幅が発光パルス幅制御部16により設定され、LED発光回路10のLED10aを発光駆動して、感度設定スイッチにより決まる受光出力(感度)を受光増幅回路12の煙信号として得ることができる。
【0045】
図6は図5の発光パルス幅制御部16による感度設定処理のフローチャートである。この感度設定処理にあっては、ステップS1でオン状態としている感度設定スイッチを検知し、ステップS2で、検知した感度設定スイッチに対応した発光パルス幅を取得してLED10aを発光駆動する。
【0046】
感度設定スイッチと発光パルス幅との対応関係は、テーブルデータとして予めCPU6側に記憶しておけばよい。具体的にはCPU6に対し設けているE2PROMなどの不揮発メモリに保存しておけばよい。
【0047】
図7は設定感度に自動調整する本発明の実施形態の回路ブロック図であり、図1の煙検出部3とCPU6の部分を取り出している。
【0048】
図7において、LED発光回路10はLED10aに抵抗R3を直列接続し、更にトランジスタQ2,Q3及び抵抗R6,R7で構成される定電流回路を備え、この定電流回路に対し、CPU6の出力ポートに接続されたトランジスタQ1,抵抗R1,R2のドライブ回路を設けている。
【0049】
受光回路11は受光素子11aと直列に抵抗R4を接続しており、受光増幅回路12は帰還抵抗R5を備えたオペアンプ12aで構成される。またCPU6にはオペアンプ12aからの煙出力をデジタル信号に変換して取り込むA/D変換器17が設けられ、またCPU6のプログラム制御により実現される設定感度に自動調整するための発光パルス幅制御部16を備えている。
【0050】
更に不揮発メモリとなるE2PROM22が設けられ、ここに発光パルス幅制御部16の調整処理により確定された発光パルス幅Wの値が調整値として保持されている。
【0051】
ここでLED発光回路10に定電流回路を設けている理由は、定電流回路により駆動電流を一定に維持し、発光パルス幅WのみによってLED10aの発光強度を度制御するためであり、感度調整がより高精度にできる。
【0052】
図8は図7の発光パルス幅制御部6による感度設定処理のフローチャートである。この感度設定処理は、ステップS1で調整しようとする設定感度の対応受光出力、例えば火災と判断する動作点の閾値としての受光出力値を制御目標値としてセットする。
【0053】
続いてステップS2で、予め定めた発光パルス幅Wの初期設定を行う。この発光パルス幅Wの初期値は、予め定めた所定の最小パルス幅とする。続いてステップS3で、初期設定した発光パルス幅WによるLED10aの発光駆動を行い、ステップS4で受光増幅回路12の煙出力を受光出力としてA/D変換器17でデジタル信号に変換して読み込み、そのピーク値を検知する。
【0054】
続いてステップS5で予め設定した回数に到達したか否かチェックし、到達していないことから、ステップS6で回数を示すカウンタnを1つ増加させた後、ステップS3に戻って再度、発光駆動を行い、ステップS4の受光出力のピーク値検知を繰り返す。尚、所定回数ピーク値検知を繰り返すのは、受光出力を平均化するためである。
【0055】
ステップS5で予め設定した回数に到達すると、ステップS7で複数回の発光駆動で得られた受光出力のピーク値から平均受光出力を算出する。続いてステップS8で目標値としてセットされた受光出力の設定値と比較し、ステップS9で設定値に一致していない場合には、ステップS10に進む。
【0056】
ステップS10にあっては、平均受光出力が設定値より小さいか否かチェックし、小さければステップS11に進み、現在のパルス幅に予め定めた所定値の変化値ΔWを加えることでパルス幅を増加させた後、ステップS3からの処理を繰り返す。
【0057】
またステップS10で平均受光出力が設定値より大きかった場合には、ステップS12に進み、現在のパルス幅Wから変化値ΔWを差し引いてパルス幅を減らした後、ステップS3に戻って処理を繰り返す。
【0058】
このような設定値に平均受光出力を近付けるように発光パルス幅Wが制御されることで、最終的にステップS9で平均受光出力は設定値に一致し、これがステップS9で判別されると、ステップS13で、そのときの発光パルス幅Wを確定した調整値としてE2PROM22に保存し、それ以降、感知器を動作する際には、保存した調整値としての発光パルス幅WによるLED10aの発光駆動が行われる。
【0059】
図9は本発明の発光パルス幅制御部16を利用した汚れ補償処理のフローチャートである。図9において、この汚れ補償処理は、感知器の使用状態においてステップS1で予め定めた所定の補償タイミング、例えば1ヶ月に1回といった補償タイミングへの到達の有無をチェックしており、補償タイミングが判別されると、ステップS2に進み、ゼロ点感度設定処理が実行される。
【0060】
このゼロ点感度設定処理は、図8のフローチャートに示した感度設定処理において、ステップS1における設定感度の対応受光出力をゼロ点対応値とした設定処理である。より具体的には、補償タイミング時点の受光出力を光電式煙感知器の出荷時にE2PROM22に保持した汚れ補償初期値(感知器の使用開始時に保持した受光出力値)と比較し、汚れ補償初期値に対し現在の受光出力値が所定値を超えて増加していた場合には、ステップS2のゼロ点感度設定処理が図8のステップS1〜S13と同じ処理に従って行われる。
【0061】
ステップS2でゼロ点感度設定処理が済むと、ステップS3で調整異常の有無をチェックする。正常であればステップS1に戻り、次の補償タイミングを待つことになる。これに対し、万一、LED10aなどの故障により発光停止となったような場合には、調整異常が認識され、ステップS4に進み、受信機側に対し障害発生通知を行うことになる。
【0062】
なお上記の実施形態は、製造段階の調整工程における感度調整、感知器の使用状態における汚れ補償などにおける発光パルス幅の制御による感度調整を例にとるものであったが、本発明はこれに限定されず、光電式煙感知器に必要とされる適宜の感度調整につきそのまま適用することができる。
【0063】
また火災受信機から本発明の光電式煙感知器の発光パルス幅制御部に対し設定感度に対応した受光出力値を制御コマンドにより転送し、遠隔的に感度調整を行うようにしても良い。
【0064】
また本発明の光電式煙感知器に、所定の高感度に対応した発光パルス幅と所定の低感度に対応した発光パルス幅を発光パルス幅制御部により予め求めて保持しておき、通常は高感度の発光パルス幅による発光駆動で火災監視し、この状態で火災が判断されたら、低感度の発光パルス幅による発光駆動に切替えて火災を確定する多感度監視としても良い。
【0065】
また製造時の調整工程で、発光パルス幅の変化に対する受光出力値の関係、即ち感度特性を予め計測して不揮発メモリに記憶しておき、発光パルス幅制御部は、所定の感度に対応して受光出力値により不揮発メモリに記憶した感度特性に基づいて対応する発光パルス幅を求めるようにしても良い。
【0066】
このために測定する感度特性は、発光パルス幅と受光出力値の関係を略直線関係とみなすことで、直線を決める2点の測定結果を不揮発メモリに記憶しておけば良い。勿論、測定結果から得られた発光パルス幅と受光出力値の関係を格納したデータテーブルを用いても良い。
【0067】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、光電式煙感知器における発光パルス幅と受光出力の関係から発光パルス幅を制御して所定の受光出力を与える所定感度に調整することで、煙感知器に設けているCPUの制御処理により簡単に感度調整を行うことができ、ボリュームや抵抗差し替えといった人為的な作業を必要とする調整手段を必要としないことから、調整作業が極短時間ででき、しかもCPUによるパルス幅制御により高精度の感度調整ができる。また、設置後も継続して適切な感度で火災監視を行うことができ、更にボリュームのような調整手段を持たないことから、感知器を経年変化や環境の悪い場所に設置しても長期安定性が補償できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光電式煙感知器の内部回路のブロック図
【図2】発光パルス幅を10μsとした場合の発光パルス出力と受光出力のタイムチャート
【図3】発光パルス幅を25μsとした場合の発光パルス出力と受光出力のタイムチャート
【図4】発光パルス幅を50μsとした場合の発光パルス出力と受光出力のタイムチャート
【図5】感度切替スイッチを備えた本発明の実施形態の回路ブロック図
【図6】図5の発光パルス幅制御部による感度設定処理のフローチャート
【図7】設定感度に自動調整する本発明の実施形態の回路ブロック図
【図8】図7の発光パルス幅制御部による感度設定処理のフローチャート
【図9】本発明による汚れ補償処理のフローチャート
【符号の説明】
1:ノイズ吸収回路
2,5:定電圧回路
3:煙検出部
4:伝送部
6:CPU
7:アドレス・種別設定回路
8:クロック発振回路
9:リセット回路
10:LED発光回路
10a:LED
11:受光回路
11a:受光素子
12:受光増幅回路
13:応答信号回路
14:作動表示灯
15:伝送信号検出回路
16:発光パルス幅制御部
17:A/D変換器
22:E2PROM
Claims (2)
- パルス信号により間欠的に発光部を発光駆動し、前記発光部からの光による煙の散乱光を受光部で受光して火災を感知する光電式煙感知器に於いて、
初期状態で、前記発光部を所定のパルス幅で発光させたときの受光出力値を目標値として記憶し、
予め定めた所定の期間を経過する毎の受光出力の補償タイミングでは、受光出力値と前記目標値との差が所定値を超えた場合に受光出力値が前記目標値に一致するように前記パルス信号のパルス幅を制御して、前記目標値に一致する受光出力が得られたときのパルス幅を調整値として保持し、
前記補償タイミング以後は、前記調整値のパルス幅で前記発光部を発光制御する発光パルス幅制御部を設けたことを特徴とする光電式煙感知器。 - パルス信号により間欠的に発光部を発光駆動し、前記発光部からの光による煙の散乱光を受光部で受光して火災を感知する光電式煙感知器に於いて、
初期状態で、前記発光部を所定のパルス幅で発光させたときの受光出力値を目標値として記憶し、
予め定めた所定の期間を経過する毎の受光出力の補償タイミングでは、所定のパルス幅初期値をもつパルス信号により前記発光部を発光駆動させて検出した受光出力値と前記目標値とを比較し、前記目標値より小さい場合はパルス幅を増加させ、前記目標値より大きい場合はパルス幅を減少させることにより前記目標値に一致させ、前記目標値に一致したときのパルス幅を所定感度の調整値として保持し、
前記補償タイミング以後は、前記調整値のパルス幅で前記発光部を発光制御する発光パルス幅制御部を設けたことを特徴とする光電式煙感知器。
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