JP3962285B2 - 複合めっき皮膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複合めっき皮膜に関し、詳しくはDLC膜を粉砕して得られたDLC膜粉砕物が金属マトリックス中に分散保持されてなる複合めっき皮膜に関する。本発明の複合めっき皮膜は、例えば内燃機関の摺動部品の摺動面に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
めっきにより析出した金属マトリックスと、この金属マトリックス中に分散保持された微粒子とからなる複合めっき皮膜、例えば、ニッケルめっき皮膜中に、硬質粒子であるSiC粒子や、潤滑性のある潤滑性粒子であるPTFE粒子又はMoS2 粒子等を分散させたものが従来より知られている。この複合めっき皮膜は、所定の機能をもつ微粒子を金属めっき液中に分散させ、このめっき液を用いてめっきすることにより得られる。
【0003】
このような複合めっき皮膜は、耐焼付き性、耐摩耗性、耐傷つき性、撥水性、非粘着性や防汚性等が高いため、あらゆる用途に用いられている。特に、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性が求められる摺動部材にこの複合皮膜が適用されることが多い。例えば、自動車の内燃機関においては、ピストンリングやピストンのスカート部分等の摺動面に上記複合皮膜が適用される。
【0004】
一方、特開平10−298440号公報には、自動車用ワイパーやスキー板等に適用可能で、樹脂やゴム等の高分子材料よりなるマトリックスと、このマトリックス中に分散保持された潤滑性のあるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜片とからなる複合材料が開示されている。この複合材料は、0.1〜0.3μm程度の厚さ、0.1〜5mm2 程度の大きさをもつDLC膜片(好ましくは、0.1〜1μm程度の繊維厚さ、1〜3mm程度の繊維幅及び1〜50mm程度の繊維長さをもつ繊維状のDLC膜片)を溶融樹脂やゴム等の高分子材料に添加して分散させ、これを硬化させることにより得られる。
【0005】
ここに、DLCは潤滑性が良好でかつ高硬度であることから、DLC膜片を高分子材料中に分散させることにより、潤滑性や耐摩耗性等の摺動特性等を向上させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車業界においては、高回転、高圧縮比、軽量化及び燃費向上等の対策として、軽合金部品や小型化部品を使用する要請が年々高まっている。そして、これに伴い、ピストンリング等の摺動部材表面に対する耐摩耗性や耐焼付き性等の摺動特性を従来にも増して改善する必要性が高まっている。
【0007】
しかし、金属マトリック中にSiC粒子やPTFE粒子等を分散させた上記従来の複合めっき皮膜では、耐焼付き性や耐摩耗性等を向上させるのに限界があった。
【0008】
一方、樹脂マトリックス中にDLC膜片を分散させた上記公報に開示の複合材料を複合めっき皮膜の代わりにピストンリング等の摺動部材表面に適用することも考えられる。しかし、樹脂マトリックス中にDLC膜片を分散保持させた場合、樹脂マトリックスの硬度不足や樹脂マトリックスとDLC膜片との密着力不足等により、DLC膜片の保持力が低くなる。このため、上記公報に開示の複合材料では、満足する耐焼付き性や耐摩耗性を得ることができない。
【0009】
また、上記公報に開示の複合材料のように、0.1〜0.3μm程度の厚さ、0.1〜5mm2 程度の大きさをもつDLC膜片(好ましくは、0.1〜1μm程度の繊維厚さ、1〜3mm程度の繊維幅及び1〜50mm程度の繊維長さをもつ繊維状のDLC膜片)をマトリックス中に分散させた場合、DLC膜片が大きいことから、マトリックスの表面にDLC膜片のエッジ部分が露出し易くなる。特に、繊維状のDLC膜片の場合は、DLC膜片の先端やエッジ部分がマトリックス表面から突出し易くなる。このため、上記公報に開示の複合材料では、DLC膜片の保持性に劣り、DLC膜片が脱落等し易くなるため、摺動特性を効果的に向上させることができない。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性や耐焼付き性等の摺動特性を効果的に向上させて摺動特性のさらなる向上を図ることのできる複合めっき皮膜を提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の複合めっき皮膜は、めっきにより析出した金属マトリックスと、該金属マトリックス中に分散保持されたDLC膜粉砕物とを備えた複合めっき皮膜であって、上記複合めっき皮膜中における上記DLC膜粉砕物の含有率が50体積%以下であり、かつ、該DLC膜粉砕物の最大外形寸法が10μm以下であることを特徴とするものである。
【0012】
ここに、上記DLC膜粉砕物とは、所定の膜厚で形成したDLC膜を粉砕することにより得られたものをいう。
【0013】
また、上記最大外形寸法とは、DLC膜粉砕物が略球状又は略卵状のものであれば最大外径のことをいい、DLC膜粉砕物が略立方体状、略直方体状、繊維状、板状、線状や鱗片状等であれば一辺の長さが最大となる辺の長さのことをいう。
【0014】
そして、上記DLC膜粉砕物の最大外形寸法が10μm以下であるとは、最大外径寸法が10μmを超えるようなDLC膜粉砕物は本発明の複合めっき皮膜中には含まれていないことを意味する。
【0015】
この複合めっき皮膜では、めっきにより析出した金属マトリックス中にDLC膜粉砕物が分散保持されている。DLC膜粉砕物を構成するDLCは、前述のとおり、潤滑性が良好でかつ高硬度である。
【0016】
そして、めっきにより得られた金属マトリックスにDLC膜粉砕物を分散保持させると、樹脂やゴム等の高分子材料よりなるマトリックス中にDLC膜粉砕物を分散保持させる場合と比較して、マトリックスの硬度やマトリックスとDLC膜粉砕物との密着性が高くなるため、DLC膜粉砕物の保持力が高くなる。
【0017】
また、この複合めっき皮膜では、所定の大きさのDLC膜粉砕物が所定の含有率で金属マトリックス中に分散されているため、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性を効果的に向上させることができる。
【0018】
したがって、本発明の複合めっき皮膜によれば、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0019】
好適な態様において、前記DLC膜粉砕物は粒状をなしている。
【0020】
ここに、上記粒状とは、繊維状、板状、線状、鱗片状や一辺の長さが他の辺の長さよりも極端に長い略直方体(例えば、最大の辺の長さが最小の辺の長さの10倍を超えるような略直方体)等以外の形状をいい、例えば略球状、略立方体又は最大の辺の長さが最小の辺の長さの5倍以下(より好ましくは3倍以下)の略直方体を意味する。
【0021】
DLC膜粉砕物の形状が繊維状、板状、線状や鱗片状等であると、金属マトリックスの表面にDLC膜粉砕物のエッジ部分が露出したり突出したりし易いため、DLC膜粉砕物の保持力の低下に繋がり、DLC膜粉砕物が脱落し易くなる。この点、略球状又は略立方体等の粒状のDLC膜粉砕物であれば、金属マトリックスの表面にエッジ部分が露出したり突出したりすることが少なくなる。このため、粒状のDLC粉砕物であれば、DLC粉砕物の保持力がより高くなり、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の複合めっき皮膜は、めっきにより析出した金属マトリックスと、この金属マトリックス中に分散保持されたDLC膜粉砕物とを備えている。
【0023】
上記DLC膜粉砕物は、前述のとおり、所定の膜厚(0.1〜100μm程度)で形成したDLC膜を粉砕することにより得られたものである。このDLC膜の成膜方法は特に限定されず、化学蒸着(CVD)法、プラズマCVD法やイオンビーム形成法等により成膜することができる。例えば、成膜圧力:10-3〜数Torr程度、膜形成される電力印加電極の温度:600〜800℃程度の条件で行うプラズマCVD法を利用することができる。このとき用いる原料ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、アセチレンやベンゼン等の炭素化合物ガスを例示することができる。
【0024】
DLC膜の粉砕方法も特に限定されず、例えばボールミルを用いてDLC膜を粉砕し、必要に応じてふるい等を用いて分粒することにより、所定形状及び所定の大きさをもつDLC膜粉砕物を得ることができる。
【0025】
上記金属マトリックスの種類としては、特に限定されず、ニッケル、鉄、スズ、亜鉛、銅、鉛、カドミウム、クロム、貴金属類及びこれらの合金等を適宜選択して用いることができる。
【0026】
めっきの方法も特に限定されず、無電解めっき法や電界めっき法を利用することが可能である。すなわち、所定の金属めっき液中に上記DLC膜粉砕物を所定量添加して分散させ、このめっき液を所定の基材上に無電解めっき又は電界めっきすることにより、めっきにより析出した金属マトリックスと、この金属マトリックス中に分散保持されたDLC膜粉砕物とを備えた本発明の複合めっき皮膜を得ることができる。
【0027】
例えば、無電解めっき法を利用する場合は、少なくとも金属マトリックスを構成する金属イオン、還元剤及び錯化剤を可溶塩の形で含む無電解めっき液を準備して、温度、処理時間、処理濃度を適宜設定した所定のめっき条件で、無電解めっきすることができる。なお、この無電解めっき液中には、摺動特性を損なわない範囲において、他の金属イオン、pH緩衝剤、光沢剤、平滑剤、励起剤、ピンホール防止剤の他、DLC膜粉砕物の分散性を向上させるための界面活性剤等を適宜添加することも可能である。
【0028】
この複合めっき皮膜の膜厚は特に限定されず、用途等に応じて適宜設定可能である。ただし、膜厚が50μm程度を超えると、めっき処理時間が2時間程度を超えることになる。このため、複合めっき皮膜の膜厚は現実的には50μm程度以下とされ、30μm程度以下とすることが好ましい。一方、複合めっき皮膜の膜厚が薄すぎると、この複合めっき皮膜による摺動特性向上の効果が十分に発揮できなくなったり、DLC膜粉砕物がマトリックスの表面から突出し易くなってDLC膜粉砕物の保持性の低下に繋がったりする。このため、複合めっき皮膜の膜厚は、5μm程度以上とすることが好ましく、10μm程度以上とすることがより好ましい。
【0029】
なお、本発明の複合めっき皮膜を形成する基材の種類は特に限定されず、アルミニウム、鉄や銅及びこれらの合金等を採用することができる。
【0030】
ここに、本発明の複合めっき皮膜においては、上記DLC膜粉砕物の含有率が50体積%以下であり、かつ、該DLC膜粉砕物の最大外形寸法が10μm以下である。
【0031】
この複合めっき皮膜におけるDLC膜粉砕物の含有率が50体積%を超えると、金属マトリックスにおけるDLC膜粉砕物の保持力が低下したり、金属マトリックスと基材との密着力が低下したりするため、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性を良好に向上させることができない。
【0032】
また、上記DLC膜粉砕物の最大外径寸法が10μmを超えた場合も、金属マトリックスにおけるDLC膜粉砕物の保持力が低下したり、金属マトリックスと基材との密着力が低下したりするため、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性を良好に向上させることができない。
【0033】
これらDLC膜粉砕物の含有率及びDLC膜粉砕物の最大外径寸法が所定範囲に設定された本発明の複合めっき皮膜では、DLC膜粉砕物の保持力が高く、また基材との密着性も高くなる。また、この潤滑性が良好でかつ高硬度のDLC膜粉砕物が、硬度の高い金属マトリックスに密着性高く保持されていることから、これによってもDLC膜粉砕物の保持力が高くなる。
【0034】
したがって、本発明の複合めっき皮膜によれば、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0035】
また、上記DLC膜粉砕物が粒状である場合、例えば略球状、略立方体又は最大の辺の長さが最小の辺の長さの5倍以下(より好ましくは3倍以下)の略直方体である場合は、金属マトリックスの表面にエッジ部分が露出したり突出したりすることが少なくなることから、DLC粉砕物の保持力がより高くなり、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0036】
よって、本発明の複合めっき皮膜は、ピストンリング、ピストンのスカート部分等の内燃機関の摺動部品や、圧縮機のピストンや斜板等の摺動面に好適に適用することができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、具体的に説明する。
【0038】
(実施例1)
<DLC膜作製工程>
成膜用原料ガス:C2 H4
成膜圧力(真空度):0.5×10-2Torr
高周波電力:周波数2.45GHz、2kW
電力印加電極の温度:700℃
の成膜条件で行うプラズマCVD法により、電極上に膜厚1μmのDLC膜を成膜した。
【0039】
<DLC膜粉砕工程>
電極の加熱・冷却を繰り返すことにより、上記DLC膜を電極から剥がした。そして、このDLC膜をボールミルで所定時間粉砕した後、ふるいを用いて分粒することにより、所定形状及び所定の大きさをもつDLC膜粉砕物を得た。このDLC膜粉砕物は、最大外形寸法が10μm以下のものばかりで、かつ、最大外径寸法の平均が1μmのものである。また、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが平均1μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0040】
<めっき液調製工程>
無電解ニッケルめっき液(奥野製薬工業株式会社製、商品名「トップニコロン」)を準備し、このニッケルめっき液中に上記DLC膜粉砕物を50g/Lの添加量で添加して、均一に分散させた。
【0041】
<めっき工程>
上記DLC膜粉砕物が添加されたニッケルめっき液を用いて、以下の条件で無電解めっきすることにより、アルミニウム合金(AC8A)よりなる基材の表面に、膜厚25μmの複合めっき皮膜を形成した。
【0042】
めっき温度:90℃
処理時間:60分
処理濃度:1dm2 /L
得られた複合めっき皮膜は、めっきにより析出したニッケルよりなる金属マトリックスと、この金属マトリックス中に分散保持されたDLC膜粉砕物とからなるもので、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率が25体積%となっている。
【0043】
(実施例2)
本実施例は、DLC膜粉砕物の大きさを変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0044】
すなわち、本実施例では、DLC膜作製工程で膜厚5μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が5μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、前記実施例1と同様、最大外径寸法が10μm以下のものばかりである。また、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが平均5μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0045】
そして、前記実施例1と同様、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚24μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0046】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が26体積%となっている。
【0047】
(実施例3)
本実施例は、DLC膜粉砕物の大きさを変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0048】
すなわち、本実施例では、DLC膜作製工程で膜厚10μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が10μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、前記実施例1と同様、最大外径寸法が10μm以下のものばかりである。また、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが平均10μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には80wt%)を占めている。
【0049】
そして、前記実施例1と同様、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚25μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0050】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が23体積%となっている。
【0051】
(比較例1)
この比較例は、DLC膜粉砕物の大きさを変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0052】
すなわち、この比較例では、DLC膜作製工程で膜厚11μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が11μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが平均11μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には60wt%)を占めている。
【0053】
そして、前記実施例1と同様、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚25μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0054】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が24体積%となっている。
【0055】
(比較例2)
この比較例は、DLC膜粉砕物の大きさを変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0056】
すなわち、この比較例では、DLC膜作製工程で膜厚15μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が15μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが平均15μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0057】
そして、前記実施例1と同様、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚25μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0058】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が25体積%となっている。
【0059】
(比較例3)
この比較例は、DLC膜粉砕物の大きさを変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0060】
すなわち、この比較例では、DLC膜作製工程で膜厚100μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が100μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが平均100μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0061】
そして、前記実施例1と同様、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚26μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0062】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が22体積%となっている。
【0063】
(実施例4)
本実施例は、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率を変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0064】
すなわち、本実施例では、前記実施例1と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行った後、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を10g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚26μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0065】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が9体積%となっている。
【0066】
(実施例5)
本実施例は、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率を変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0067】
すなわち、本実施例では、前記実施例1と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行った後、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を100g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚24μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0068】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が41体積%となっている。
【0069】
(実施例6)
本実施例は、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率を変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0070】
すなわち、本実施例では、前記実施例1と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行った後、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を150g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚25μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0071】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が50体積%となっている。
【0072】
(比較例4)
この比較例は、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率を変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0073】
すなわち、この比較例では、前記実施例1と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行った後、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を160g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚24μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0074】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が54体積%となっている。
【0075】
(実施例7)
本実施例は、複合めっき皮膜の膜厚を大きく変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0076】
すなわち、本実施例では、前記実施例1と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行った後、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚6μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は、処理時間を15分とすること以外は前記実施例1と同様である。
【0077】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が22体積%となっている。
【0078】
(実施例8)
本実施例は、複合めっき皮膜の膜厚を大きく変更すること以外は、前記実施例1と同様である。
【0079】
すなわち、本実施例では、前記実施例1と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行った後、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚50μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は、処理時間を150分とすること以外は前記実施例1と同様である。
【0080】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が21体積%となっている。
【0081】
(比較例5)
この比較例は、DLC膜粉砕物をニッケルめっき皮膜中に分散させないこと以外は、前記実施例1と同様である。
【0082】
すなわち、この比較例では、前記実施例1と同様の無電解ニッケルめっき液(奥野製薬工業株式会社製、商品名「トップニコロン」)を準備し、このニッケルめっき液をそのまま基材(AC8A)の表面にめっきして、膜厚25μmのニッケルめっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0083】
(比較例6)
この比較例は、DLC膜粉砕物の代わりにフッ素化合物微粒子(PTFE)をニッケルめっき皮膜中に分散させること以外は、前記実施例1と同様である。
【0084】
すなわち、この比較例では、平均粒径1μmのPTFE粒子を準備した。そして、前記実施例1と同様、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にPTFE粒子を20g/L添加してめっき液を調製するとともに、めっき工程で、基材(AC8A)の表面に膜厚25μmのPTFE複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例1と同様である。
【0085】
得られたPTFE複合めっき皮膜は、PTFE粒子の含有率が20体積%となっている。
【0086】
(評価)
前記実施例1〜8及び比較例1〜6で得られためっき皮膜について、以下に示す密着性、摩擦係数、摩耗量及び焼付き荷重の各評価試験を行った。
【0087】
<密着性の評価試験>
めっき皮膜に1cm2 あたり100個の碁盤目を入れ、セロファンテープにより剥離を行った。表1中、○印は100個の碁盤目の全てで剥離が無かったことを示し、×印は100個の碁盤目中1個以上で剥離があったことを示す。
【0088】
<摩擦係数の評価試験>
スラスト型試験機を用い、以下に示す条件で、試験開始直後の摩擦係数と試験開始から100時間経過後の摩擦係数を調べた。
【0089】
すべり速度:60m/min
面圧:9.8MPa
相手材:ねずみ鋳鉄FC−25(潤滑油あり)
<摩耗量の評価試験>
LFW−1型試験機を用い、以下に示す条件で、摩擦係数を調べた。
【0090】
すべり速度:5m/min
面圧:5MPa
相手材:ねずみ鋳鉄FC−25(潤滑油あり)
試験時間:30分
<耐焼付き荷重の評価試験>
スラスト型試験機を用い、以下に示す条件で、面圧を一定周期で上昇させたときの焼付き発生面圧を求めた。
【0091】
すべり速度:60m/min
面圧:9.8MPa
相手材:ねずみ鋳鉄FC−25(潤滑油あり)
面圧上昇周期:1MPa/2min
前記実施例1〜8及び比較例1〜6で得られためっき皮膜について、密着性、摩擦係数、摩耗量及び焼付き荷重の各評価試験を表1に示すとともに、前記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られためっき皮膜について、摩擦係数の評価試験結果を図1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1及び図1の結果から明らかなように、本実施例に係る複合めっき皮膜によれば、摩擦係数及び摩耗量を低下させるとともに、焼付き面圧を増大させることができ、摺動特性を効果的に向上させて摺動特性のさらなる向上を図ることが可能となった。
【0094】
一方、DLC膜片粉砕物の最大外径寸法の平均が10μmを超える比較例1〜3に係る複合めっき皮膜では、摩擦係数及び摩耗量を効果的に低下させたり、焼付き面圧を効果的に増大させることが困難であった。特に、DLC膜片粉砕物の最大外径寸法の平均が15μm以上の比較例2及び3に係る複合めっき皮膜では、基材に対する複合めっき皮膜(金属マトリックス)の密着不良が発生し、摺動特性を向上させるというめっき皮膜としての機能を果たし得なかった。
【0095】
また、DLC膜粉砕物の含有量が50体積%を超える比較例4に係る複合めっき皮膜でも、基材に対する複合めっき皮膜(金属マトリックス)の密着不良が発生し、摺動特性を向上させるというめっき皮膜としての機能を果たし得なかった。
【0096】
さらに、DLC膜粉砕物が分散されていない比較例5に係るめっき皮膜及びPTFE粒子を分散させた比較例6に係る複合めっき皮膜では、摩擦係数及び摩耗量を効果的に低下させたり、焼付き面圧を効果的に増大させることが困難であった。
【0097】
(実施例9)
<DLC膜作製工程>
前記実施例1と同様にして、電極上に膜厚1μmのDLC膜を成膜した。
【0098】
<DLC膜粉砕工程>
前記実施例1と同様にして、上記DLC膜を電極から剥がすとともに、このDLC膜を粉砕した後、ふるいを用いて分粒することにより、所定形状及び所定の大きさをもつDLC膜粉砕物を得た。このDLC膜粉砕物は、最大外形寸法が10μm以下のものばかりで、かつ、最大外径寸法の平均が1μmのものである。また、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが1μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0099】
<めっき液調製工程>
前記実施例1と同様の無電解ニッケルめっき液を準備し、このニッケルめっき液中に上記DLC膜粉砕物を50g/Lの添加量で添加して、均一に分散させた。
【0100】
<めっき工程>
上記DLC膜粉砕物が添加されたニッケルめっき液を用いて、以下の条件で無電解めっきすることにより、アルミニウム合金(AC8A)よりなる基材の表面に、膜厚23μmの複合めっき皮膜を形成した。
【0101】
めっき温度:90℃
処理時間:60分
処理濃度:1dm2 /L
得られた複合めっき皮膜は、めっきにより析出したニッケルよりなる金属マトリックスと、この金属マトリックス中に分散保持されたDLC膜粉砕物とからなるもので、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率が27体積%となっている。
【0102】
(実施例10)
本実施例は、DLC膜粉砕物の大きさ及び形状を変更すること以外は、前記実施例9と同様である。
【0103】
すなわち、本実施例では、DLC膜作製工程で膜厚3μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が3μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、前記実施例1と同様、最大外径寸法が10μm以下のものばかりである。また、このDLC膜粉砕物は、1μm×3μm×1μmの略直方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0104】
そして、前記実施例9と同様のめっき液調製工程及びめっき工程を実施して、基材(AC8A)の表面に膜厚24μmの複合めっき皮膜を形成した。
【0105】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が25体積%となっている。
【0106】
(実施例11)
本実施例は、DLC膜粉砕物の大きさ及び形状を変更すること以外は、前記実施例9と同様である。
【0107】
すなわち、本実施例では、DLC膜作製工程で膜厚3μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が3μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、前記実施例1と同様、最大外径寸法が10μm以下のものばかりである。また、このDLC膜粉砕物は、3μm×3μm×1μmの略直方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0108】
そして、前記実施例9と同様のめっき液調製工程及びめっき工程を実施して、基材(AC8A)の表面に膜厚26μmの複合めっき皮膜を形成した。
【0109】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が25体積%となっている。
【0110】
(実施例12)
本実施例は、DLC膜粉砕物の大きさ及び形状を変更すること以外は、前記実施例9と同様である。
【0111】
すなわち、本実施例では、DLC膜作製工程で膜厚5μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が5μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、前記実施例1と同様、最大外径寸法が10μm以下のものばかりである。また、このDLC膜粉砕物は、1μm×5μm×1μmの略直方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0112】
そして、前記実施例9と同様のめっき液調製工程及びめっき工程を実施して、基材(AC8A)の表面に膜厚25μmの複合めっき皮膜を形成した。
【0113】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が24体積%となっている。
【0114】
(実施例13)
本実施例は、DLC膜粉砕物の大きさ及び形状を変更すること以外は、前記実施例9と同様である。
【0115】
すなわち、本実施例では、DLC膜作製工程で膜厚10μmのDLC膜を成膜するとともに、DLC膜粉砕工程で最大外径寸法の平均が10μmであるDLC膜粉砕物を得た。なお、このDLC膜粉砕物は、前記実施例1と同様、最大外径寸法が10μm以下のものばかりである。また、このDLC膜粉砕物は、1μm×10μm×1μmの略直方体形状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0116】
そして、前記実施例9と同様のめっき液調製工程及びめっき工程を実施して、基材(AC8A)の表面に膜厚26μmの複合めっき皮膜を形成した。
【0117】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が23体積%となっている。
【0118】
(評価)
前記実施例9〜13で得られた複合めっき皮膜について、前述の密着性、摩擦係数、摩耗量及び焼付き荷重の各評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表2の結果から明らかなように、摩擦係数、摩耗量及び焼付き面圧の各摺動特性は、複合めっき皮膜中のDLC膜粉砕物の形状とその大きさの影響を受けることがわかる。そして、DLC膜粉砕物の形状としては、略直方体形状の実施例10〜13よりも、略立方体形状の実施例9の方が各上記摺動特性が向上することがわかる。また、底面形状が同じもの同士の略立方体形状の中では、長さが短いものの方が好ましいことがわかる。
【0121】
したがって、DLC膜粉砕物の形状としては、略立方体形状又は略球形状が好ましいことがわかる。
【0122】
(実施例14)
<DLC膜作製工程>
前記実施例1と同様にして、電極上に膜厚1μmのDLC膜を成膜した。
【0123】
<DLC膜粉砕工程>
前記実施例1と同様にして、上記DLC膜を電極から剥がすとともに、このDLC膜を粉砕した後、ふるいを用いて分粒することにより、所定形状及び所定の大きさをもつDLC膜粉砕物を得た。このDLC膜粉砕物は、最大外形寸法が10μm以下のものばかりで、かつ、最大外径寸法の平均が1μmのものである。また、このDLC膜粉砕物は、一辺の長さが1μmの略立方体形状の粒状のものが全体の50wt%以上(具体的には70wt%)を占めている。
【0124】
<めっき液調製工程>
前記実施例1と同様の無電解ニッケルめっき液を準備し、このニッケルめっき液中に上記DLC膜粉砕物を10g/Lの添加量で添加して、均一に分散させた。
【0125】
<めっき工程>
上記DLC膜粉砕物が添加されたニッケルめっき液を用いて、以下の条件で無電解めっきすることにより、アルミニウム合金(AC8A)よりなる基材の表面に、膜厚27μmの複合めっき皮膜を形成した。
【0126】
めっき温度:90℃
処理時間:60分
処理濃度:1dm2 /L
得られた複合めっき皮膜は、めっきにより析出したニッケルよりなる金属マトリックスと、この金属マトリックス中に分散保持されたDLC膜粉砕物とからなるもので、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率が10体積%となっている。
【0127】
(実施例15)
本実施例は、複合めっき皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率を変更すること以外は、前記実施例14と同様である。
【0128】
すなわち、本実施例では、前記実施例14と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行った後、めっき液調製工程で、無電解ニッケルめっき液中にDLC膜粉砕物を50g/L添加してめっき液を調製した。そして、前記実施例14と同様のめっき工程を実施して、基材(AC8A)の表面に膜厚25μmの複合めっき皮膜を形成した。なお、無電解めっきの条件は前記実施例14と同様である。
【0129】
得られた複合めっき皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が26体積%となっている。
【0130】
(比較例7)
この比較例は、マトリックスとしてニッケルの代わりにポリアミドイミド(PAI)を採用すること以外は、前記実施例14と同様である。
【0131】
すなわち、この比較例では、前記実施例14と同様にしてDLC膜作製工程及びDLC膜粉工程を行って、前記実施例14と同様のDLC膜粉砕物を得た。
【0132】
そして、結合剤としてのPAIに溶剤としてのn−メチル−2−ピロリドンを配合して溶解したものに、上記DLC膜粉砕物を加えて撹拌を行い、粘度120cp(25℃)のコーティング材料を得た。このコーティング材料における配合割合は、体積%で、DLC膜粉砕物:PAI=10:90である。
【0133】
そして、アルミニウム脱脂済みのアルミニウム合金基材(AC8A)の表面にエアースプレーにより上記コーティング材料を塗布した後、180℃×90分の条件で焼成、硬化させて、膜厚23μmの複合樹脂皮膜を形成した。
【0134】
得られた複合樹脂皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が10体積%となっている。
【0135】
(比較例8)
この比較例は、複合樹脂皮膜中におけるDLC膜粉砕物の含有率を変更すること以外は、前記比較例7と同様である。
【0136】
すなわち、この比較例は、前記コーティング材料における配合割合を、体積%で、DLC膜粉砕物:PAI=25:75とすること以外は、前記比較例7と同様である。なお、この複合樹脂皮膜の膜厚は25μmである。
【0137】
得られた複合樹脂皮膜は、DLC膜粉砕物の含有率が25体積%となっている。
【0138】
(評価)
前記実施例14及び15で得られた複合めっき皮膜、並びに前記比較例7及び8で得られた複合樹脂皮膜について、前述の密着性、摩擦係数、摩耗量及び焼付き荷重の各評価試験を行った。その結果を表3に示す。
【0139】
【表3】
【0140】
表3の結果から明らかなように、摩擦係数、摩耗量及び焼付き面圧の各摺動特性は、樹脂マトリックスの場合よりも金属マトリックスの場合の方が効果的に向上することがわかる。特に、摩耗量及び焼付き面圧については、DLC膜粉砕物の保持力(マトリックスがDLC膜粉砕物を保持する力)の影響を受けるため、樹脂マトリックスの場合よりも金属マトリックスの場合の方が効果的に向上することがわかる。
【0141】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の複合めっき皮膜では、潤滑性及び硬度の高いDLC膜粉砕物の保持力が高く、しかも所定の大きさのDLC膜粉砕物が所定の含有率で金属マトリックス中に分散されているため、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性を効果的に向上させることができる。
【0142】
したがって、本発明の複合めっき皮膜によれば、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0143】
特に、粒状のDLC膜粉砕物を採用した場合には、DLC粉砕物の保持力がより高くなり、耐焼付き性や耐摩耗性等の摺動特性をより効果的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 DLC膜粉砕物の最大外径寸法の平均と摩擦係数との関係を示す線図である。
Claims (3)
- めっきにより析出した金属マトリックスと、該金属マトリックス中に分散保持されたDLC膜粉砕物とを備えた複合めっき皮膜であって、
上記複合めっき皮膜中における上記DLC膜粉砕物の含有率が50体積%以下であり、かつ、該DLC膜粉砕物の最大外形寸法が10μm以下であることを特徴とする複合めっき皮膜。 - 前記DLC膜粉砕物は粒状をなしていることを特徴とする請求項1記載の複合めっき皮膜。
- 前記粒状とは、略球状、略立方体又は最大の辺の長さが最小の辺の長さの5倍以下の略直方体のことである請求項2記載の複合めっき皮膜。
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