JP4247882B2 - 耐摩耗溶射皮膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Al−Si系合金に軟質相(グラファイト)を分散、あるいは硬質相(酸化クロム、炭化クロム)と軟質相(グラファイト)を同時に分散させた多相混合組織を有する溶射皮膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術としては、アルミニウム合金に固体潤滑材(BN、黒鉛、MoS2等)や硬質粒子(SiC、Si34、Al23等)を混合し、真空、又は不活性雰囲気中で焼結するという耐摩耗性アルミニウム合金の加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、Si量が26〜80wt%のAl合金を主成分とし、プラズマ溶射で耐摩耗性に優れた皮膜を作製する技術が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。また、Siを12〜60wt%含有し、粒状Siを分散させたアルミニウム合金と、グラファイトあるいはMoS2の少なくとも1種の分散相とからなる摺動特性に優れた溶射皮膜が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第2584488号公報
【特許文献2】
特開平11−172465号公報
【特許文献3】
特開2000−73135号公報
【特許文献4】
特開2000−178707号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した耐摩耗性アルミニウム合金の加工方法(例えば、特許文献1参照)は、基材表面を溶射皮膜で被覆するという技術ではなく、本発明の技術とは異なっている。上記の方法で得られたAl合金は、基材の表面に被覆するものでなく、摺動部の加工性に問題がある。また、Al合金の組成では、Si量が10〜30wt%であり、硬度に問題がある。
上述した耐摩耗性被覆部材(例えば、特許文献2、特許文献3参照)は、Al合金とSiとの組織構造であり、本発明での硬質相、軟質相を分散させた皮膜と組織構造が異なっている。上記の被覆部材では、耐摩耗性、耐焼付き性、潤滑性に問題がある。
【0005】
上述した溶射層の技術(例えば、特許文献4参照)では、溶射に用いるグラファイト粉末が金属で被覆されていないため、粒子間の密着強度が低いこと、グラファイトの歩留りが悪いことが問題となる。また、皮膜作製方法が高速ガス火炎溶射法であるため、シリンダブロックのような円筒内面への溶射を考えた場合、実用性等に問題がある。また、軟質相のみの添加では、耐焼付き性に優れていても耐摩耗性が低くなる。
【0006】
Al−Si系合金の溶射皮膜においては、Siの含有量や合金元素の添加等により、初晶Siの微細化、硬度上昇等を図り、摺動特性を向上させようとしている。しかし、これらの技術では、耐焼付き性の向上に限界がある。また、上記のように、Al−Si系合金に固体潤滑性のある材料を分散させると、耐焼付き性は向上するが、耐摩耗性は向上しない。
【0007】
本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、Al−Si系合金に軟質相(グラファイト)を分散、あるいは硬質相(酸化クロム、炭化クロム)と軟質相(グラファイト)を同時に分散させた多相混合組織を有する溶射皮膜とすることで、摺動部での耐摩耗性、耐焼付き性、初期なじみ性等といった複合的な性質を向上させるようにした溶射皮膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の耐摩耗溶射皮膜は、Siを含有するアルミニウム合金に軟質相としてグラファイトを分散させた溶射皮膜であって、溶射に用いるグラファイト粉末がグラファイトを金属で被覆した粉末であり、Al−Si系部分と軟質相部分とその他金属部分とからなる多相混合組織を有するように構成されている。この場合、Al−Si系部分、軟質相部分、その他金属部分の混合組織状態とし、表面組織状態(摺動面の組織状態)は体積比率でAl−Si系部分50〜85%、軟質相5〜20%、その他金属部分10〜30%の組成範囲とすることが好ましい。
【0009】
また、本発明の耐摩耗溶射皮膜は、Siを含有するアルミニウム合金に軟質相としてグラファイト、及び硬質相として酸化クロム又は炭化クロムを分散させた溶射皮膜であって、溶射に用いるグラファイト粉末がグラファイトを金属で被覆した粉末であり、Al−Si系部分と軟質相部分と硬質相部分とその他金属部分とからなる多相混合組織を有することを特徴としている。この場合、Al−Si系部分、軟質相部分、硬質相部分、その他金属部分の混合組織状態とし、表面組織状態(摺動面の組織状態)は体積比率でAl−Si系部分40〜75%、硬質相10〜40%、軟質相5〜20%、その他金属部分10〜30%の組成範囲とすることが好ましい。軟質相だけでなく硬質相も同時に分散させることで、耐焼付き性だけでなく、耐摩耗性も向上させることができる。
【0010】
本発明において、表面組織として平面的に見た1つの軟質相の大きさ(長さ)は30〜100μm、1つの硬質相の大きさ(長さ)は10〜50μmとすることが好ましい。また、混合組織皮膜の気孔率は体積率で1〜10%とすることが好ましい。また、軟質相を分散させた溶射皮膜において、平均硬さは300〜500HV(ビッカース硬さ)とし、Al−Si系部分の硬さは300〜500HVとすることが好ましい。軟質相と硬質層を分散させた溶射皮膜においては、平均硬さを350〜550HVとし、Al−Si系部分の硬さは300〜500HV、硬質相部分の硬さは500〜900HVとすることが好ましい。また、これらの本発明において、溶射したときの皮膜の膜厚は100〜300μmとすることが好ましい。さらに、溶射後、加工により仕上げたときの膜厚は50〜200μm、表面粗さは算術平均粗さRaで0.1〜0.6μmとすることが好ましい。算術平均粗さRaとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、下記の数1に示す式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。下記の数1に示す式において、lは基準長さである。
【0011】
【数1】
Figure 0004247882
【0012】
本発明において、溶射に用いる粉末は、Alに対してSiが40〜60wt%、Cuが10wt%以下、Mgが5wt%以下の組成を有する粉末を、減圧下でガスアトマイズ法により処理して作製したAl−Si系合金粉末とし、粒子径は20〜70μmとすることが好ましい。また、溶射に用いる粉末は、グラファイトをMo又はNiにより膜厚1〜10μmで被覆したグラファイト粉末とし、粒子径は30〜90μmとすることが好ましい。また、溶射に用いる粉末は、1〜10μmの酸化クロム粉末又は炭化クロム粉末と1〜10μmのMo粉末を造粒焼結して作製した酸化クロム粉末又は炭化クロム粉末とし、粒子径は10〜70μmとすることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、皮膜を形成させる基材表面にブラスト処理を行い、粗面化後の表面粗さが算術平均粗さRaで3.0μm以上となる前処理を行うことが好ましい。
また、本発明の耐摩耗溶射皮膜は、大気プラズマ溶射により基材表面に作製することが好ましい。この場合、溶射に用いる粉末を溶射ガンにて供給するに際し、それぞれ別々の供給口から供給するか、全部混合して1つの供給口から供給するか、又は2種類を混合したものと他の1種類とを別々の供給口から供給するようにして作製することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。
▲1▼ 本発明は、Al−Si系部分と軟質相(グラファイト)部分とその他金属部分(ニッケルあるいはモリブデン)といった多相混合組織を有する皮膜とし、耐摩耗性、耐焼付き性に優れた溶射皮膜としたものである。また、本発明は、Al−Si系部分と軟質相(グラファイト)部分と硬質相(酸化クロムあるいは炭化クロム)部分とその他金属部分(ニッケル又は/及びモリブデン)といった多相混合組織を有する皮膜とし、耐摩耗性、耐焼付き性に優れた溶射皮膜としたものである。なお、酸化クロムには、Cr23、Cr34等があり、炭化クロムには、Cr32、Cr73、Cr236等がある。
【0015】
▲2▼ 溶射皮膜作製方法
1) 溶射粉末
Al−Si系合金粉末は、Alに対してSiが40〜60wt%、Cuが10wt%以下、Mgが5wt%以下の組成を有する粉末を、減圧下でガスアトマイズ法により処理して作製する。粒子径は20〜70μmとする。硬質相を形成する粉末である酸化クロム粉末(あるいは炭化クロム粉末)は、1〜10μmの酸化クロム粉末(あるいは炭化クロム粉末)と1〜10μmのMo粉末の造粒焼結粉末として作製する。粒子径は10〜70μmとする。軟質相を形成する粉末であるグラファイト粉末は、グラファイトをモリブデンあるいはニッケルで膜厚1〜10μmで被覆した粉末である。粒子径は30〜90μmとする。
2) 前処理
溶射の前処理として、Al23研削材を用いて、皮膜を形成させる基材表面にブラスト処理を行い、粗面化後の表面粗さが算術平均粗さRaで3.0μm以上となる処理を行う。
【0016】
3) 溶射粉末供給方法
多相混合組織構造のAl−Si系皮膜は大気プラズマ溶射法で作製する。Al−Si系合金粉末、軟質相組成粉末(グラファイト粉末)、硬質相組成粉末(酸化クロム粉末あるいは炭化クロム粉末)を目標とする組成になるよう調製し、以下のような粉末供給方法により、粉末供給口からプラズマガンに粉末を供給することで溶射皮膜の組成を管理する。
a) 軟質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜
ア) Al−Si系粉末とグラファイト粉末を別々の供給口から供給する。
イ) Al−Si系粉末とグラファイト粉末を混合したものを1つの供給口から供給する。
のいずれかの方法で粉末を供給し、皮膜を作製する。
【0017】
b) 軟質相と硬質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜
ア) Al−Si系粉末と酸化クロム粉末(あるいは炭化クロム粉末)とグラファイト粉末をそれぞれ別々の供給口から供給する。
イ) Al−Si系粉末とグラファイト粉末を混合したものと、酸化クロム粉末(あるいは炭化クロム粉末)を別々の供給口から供給する。
ウ) Al−Si系粉末と酸化クロム粉末(あるいは炭化クロム粉末)を混合したものと、グラファイト粉末を別々の供給口から供給する。
エ) 酸化クロム粉末(あるいは炭化クロム粉末)とグラファイト粉末を混合したものと、Al−Si系粉末を別々の供給口から供給する。
オ) Al−Si系粉末とグラファイト粉末と酸化クロム粉末(あるいは炭化クロム粉末)を混合したものを1つの供給口から供給する。
のいずれかの方法で粉末を供給し、皮膜を作製する。
【0018】
▲3▼ 皮膜の組織構造
a) 軟質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜の組織構造
Al−Si系部分、軟質相部分、その他金属部分の混合組織状態とし、摺動面の組織状態(表面組織状態)は、Al−Si系部分:50〜85%、軟質相:5〜20%、その他金属部分:10〜30%の体積比率の組成範囲とする。表面組織として平面的に見た1つの軟質相の大きさ(長さ)は30〜100μmとする。残部がAl−Si系部分とその他金属部分である。また、混合組織皮膜の気孔率は、体積率で1〜10%とする。平均硬さは300〜500HVとし、Al−Si系部分の硬さは300〜500HVとする。溶射皮膜の膜厚は100〜300μmとする。
【0019】
b) 軟質相と硬質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜の組織構造
Al−Si系部分、軟質相部分、硬質相部分、その他金属部分の混合組織状態とし、摺動面の組織状態(表面組織状態)は、Al−Si系部分:40〜85%、硬質相:10〜40%、軟質相:5〜20%、その他金属部分:10〜30%の体積比率の組成範囲とする。表面組織として平面的に見た1つの軟質相の大きさ(長さ)は30〜100μm、1つの硬質相の大きさ(長さ)は10〜50μmとする。残部がAl−Si系部分とその他金属部分である。また、混合組織皮膜の気孔率は、体積率で1〜10%とする。平均硬さは350〜550HVとし、Al−Si系部分の硬さは300〜500HV、硬質相部分の硬さは500〜900HVとする。溶射皮膜の膜厚は100〜300μmとする。
【0020】
▲4▼ 皮膜の仕上げ方法
軟質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜、軟質相と硬質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜どちらも、溶射後、加工(一例として、ホーニング加工)により、膜厚は50〜200μm、表面粗さは算術平均粗さRaで0.1〜0.6μmに仕上げる。
▲5▼ 一例として、図1に、軟質相と硬質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜の断面組織を模式的に示す。基材10の表面に溶射皮膜12が形成され、溶射皮膜12は、Al−Si系合金14に軟質相16、硬質相18が分散された混合組織状態となっている。また、軟質相と硬質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜の表面組織を図2に模式的に示す。本発明の溶射皮膜は、様々な摺動部で用いることが可能である。特に、エンジンのシリンダボア内面に適用すること等が有効である。
【0021】
【実施例】
▲1▼ 軟質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜の実施例(実施例1)
1) 溶射皮膜の作製方法と皮膜の組織構造
溶射粉末は下記の表1に示す組成、粒径、作製方法の溶射粉末を用いた。溶射の前処理として、Al23研削材を用いて、皮膜を形成させる基材表面にブラスト処理を行い、表面粗さがRaで3.0μm以上となるようにした。大気プラズマ溶射法を用いて、表2に示す条件で溶射を行い、膜厚が200μmの皮膜を作製した。その後、溶射皮膜を研磨し、膜厚が100μm、皮膜の表面粗さをRa0.07〜0.2μmとした。溶射皮膜の表面組織構造は、図3に示す組織構造(表面組織構造が良く分かるようにするために、本写真は、表面粗さがRa0.05μm以下となるように仕上げてある)であり、皮膜の体積比率は、Al−Si系部分:70%、グラファイト部分:10%、ニッケル部分:20%である。
【0022】
【表1】
Figure 0004247882
【0023】
【表2】
Figure 0004247882
【0024】
2) 皮膜の評価方法
往復動摩耗試験機を用いて、表3に示す試験条件で耐焼付き性を評価した。試験方法の概念図を図5に示す。耐焼付き性は、油膜切れ状態を模擬した潤滑条件での、荷重増加試験により評価した。相手材のピン試験片には、表面がCrめっきとCrN皮膜のもの2種類を用いている。Crめっきの膜厚は100μmで、硬さは1000HVである。CrN皮膜は、アークイオンプレーティング法で作製しており、膜厚は40μmで、硬さは1500HVである。
本実施例の皮膜の比較材として、鋳鉄とCrめっき(相手材)の組合せを用いた。なお、鋳鉄とCrめっきの組合せは、現状材でのシリンダライナとピストンリングの摺動を模擬したものである。鋳鉄の組成は、Fe−3.25C−2.22Si−0.74Mn−0.15P−0.022S−0.14Cr−0.24Cuである。基地が微細なパーライト組織で、片状黒鉛、炭化物が均等に分散した組織構造である。また、分散相の効果を把握するために、硬質相も軟質相も分散させていないAl−Si系合金のみで溶射した皮膜とCrめっきの組合せも比較材として用いた。
【0025】
【表3】
Figure 0004247882
【0026】
3) 皮膜の評価結果
表3に示す試験条件で焼付き試験を行った結果を図6に示す。本実施例の軟質相(グラファイト)を分散させたAl−Si系溶射皮膜とCrN皮膜(相手材)との組合せは、比較材の鋳鉄とCrめっき(相手材)の組合せの4倍以上の焼付き荷重を示した。また、本実施例の溶射皮膜は、Al−Si系合金単相の溶射皮膜と比較しても5倍程度の焼付き荷重を示した。
【0027】
▲2▼ 硬質相と軟質相を分散させたAl−Si系溶射皮膜の実施例(実施例2)
1) 溶射皮膜の作製方法と皮膜の組織構造
溶射粉末は下記の表4に示す組成、粒径、作製方法の溶射粉末を用いた。溶射の前処理として、Al23研削材を用いて、皮膜を形成させる基材表面にブラスト処理を行い、表面粗さがRaで3.0μm以上となるようにした。大気プラズマ溶射法を用いて、表5に示す条件で溶射を行い、膜厚が200μmの皮膜を作製した。その後、溶射皮膜を研磨し、膜厚が100μm、皮膜の表面粗さをRa0.07〜0.2μmとした。溶射皮膜の表面組織構造は、図4に示す組織構造(表面組織構造が良く分かるようにするために、本写真は、表面粗さがRa0.05μm以下となるように仕上げてある)であり、皮膜の体積比率は、Al−Si系部分:55%、グラファイト部分:5%、酸化クロム部分:30%、ニッケル部分:5%、モリブデン部分:5%である。
【0028】
【表4】
Figure 0004247882
【0029】
【表5】
Figure 0004247882
【0030】
2) 皮膜の評価方法
上述した表3に示す試験方法で耐焼付き性を評価した。比較材も同じである。
3) 皮膜の評価結果
表3に示す試験条件で焼付き試験を行った結果を図6に示す。本実施例の硬質相(酸化クロム)と軟質相(グラファイト)を分散させたAl−Si系溶射皮膜とCrN皮膜(相手材)との組合せは、比較材の鋳鉄とCrめっき(相手材)の組合せの3倍以上の焼付き荷重を示した。また、本実施例の溶射皮膜は、Al−Si系合金単相の溶射皮膜と比較しても4倍程度の焼付き荷重を示した。また、本実施例の溶射皮膜では、軟質相だけでなく硬質相も同時に分散させることで、耐焼付き性だけでなく耐摩耗性も向上している。
【0031】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) Al−Si系合金に軟質相(グラファイト)硬質相(酸化クロム、炭化クロム)とを同時に分散させた多相混合組織を有する溶射皮膜とすることで、摺動部での耐摩耗性、耐焼付き性、初期なじみ性、潤滑性等といった複合的な性質を向上させることができる。
(2) 基材表面を溶射皮膜で被覆するため、摺動部の加工が容易である。そして、大気プラズマ溶射法で皮膜を作製するので、シリンダブロックのような円筒内面への溶射を考えた場合でも、プラズマガンの大きさも小さく有効である。
(3) 溶射に用いるグラファイト粉末が金属で被覆されているので、作製された皮膜は、粒子間の密着強度が高く、グラファイトの歩留りも良い。したがって、溶射皮膜の性能が向上する。
(4) 本発明の溶射皮膜は、様々な摺動部で用いることが可能である。特に、エンジンのシリンダボア内面に適用すること等が有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における耐摩耗溶射皮膜の断面組織の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態における耐摩耗溶射皮膜の表面組織の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例1における耐摩耗溶射皮膜(軟質相(グラファイト)を分散させたAl−Si系溶射皮膜)の表面組織を示す走査型電子顕微鏡で撮影した写真である(倍率100倍)。
【図4】本発明の実施例2における耐摩耗溶射皮膜(硬質相(酸化クロム)と軟質相(グラファイト)を分散させたAl−Si系溶射皮膜)の表面組織を示す走査型電子顕微鏡で撮影した写真である(倍率100倍)。
【図5】本発明の実施例で用いる耐焼付き性を評価するための試験方法を説明する概念図である。
【図6】本発明の実施例における耐焼付き性の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10 基材
12 溶射皮膜
14 Al−Si系合金
16 軟質相
18 硬質相

Claims (9)

  1. Siを含有するアルミニウム合金に軟質相としてグラファイト、及び硬質相として酸化クロム又は炭化クロムを分散させた溶射皮膜であって、溶射に用いるグラファイト粉末がグラファイトを金属で被覆した粉末であり、Al−Si系部分と軟質相部分と硬質相部分とその他金属部分とからなる多相混合組織を有し、Al−Si系部分、軟質相部分、硬質相部分及びその他金属部分の混合組織状態とし、表面組織状態が体積比率でAl−Si系部分40〜75%、硬質相10〜40%、軟質相5〜20%、その他金属部分10〜30%の組成範囲であり、Al−Si系部分の硬さが300〜500HVであり、溶射に用いる粉末がAlに対してSiが40〜60wt%、Cuが10wt%以下、Mgが5wt%以下の組成を有する粉末であり、エンジンのシリンダ内径面に用いるのに適したことを特徴とする耐摩耗溶射皮膜
  2. 表面組織として平面的に見た1つの軟質相の大きさが30〜100μmである請求項記載の耐摩耗溶射皮膜。
  3. 表面組織として平面的に見た1つの軟質相の大きさが30〜100μmであり、1つの硬質相の大きさが10〜50μmである請求項又は記載の耐摩耗溶射皮膜。
  4. 混合組織皮膜の気孔率が体積率で1〜10%である請求項1〜のいずれかに記載の耐摩耗溶射皮膜
  5. 混合組織皮膜の平均硬さが350〜550HVであり、硬質相部分の硬さが500〜900HVである請求項又は記載の耐摩耗溶射皮膜。
  6. 溶射後、加工により仕上げたときの膜厚が50〜200μm、表面粗さが算術平均粗さRaで0.1〜0.6μmである請求項1〜のいずれかに記載の耐摩耗溶射皮膜。
  7. 溶射に用いる粉末は、減圧下でガスアトマイズ法により処理して作製したAl−Si系合金粉末である請求項1又は2記載の耐摩耗溶射皮膜。
  8. 溶射に用いる粉末は、グラファイトをMo又はNiにより膜厚1〜10μmで被覆したグラファイト粉末である請求項1又は2記載の耐摩耗溶射皮膜。
  9. 溶射に用いる粉末は、1〜10μmの酸化クロム粉末又は炭化クロム粉末と1〜10μmのMo粉末を造粒焼結して作製した酸化クロム粉末又は炭化クロム粉末である請求項又は記載の耐摩耗溶射皮膜。
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