JP3962203B2 - 「ポリウレタン組成物及びポリウレタンの製造方法」 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐熱性と強靭性に優れた、構造材として利用できるウレタン組成物に関するものであり、本発明の組成物は、耐熱性及び強靭性の改善された注型成形材料等に利用される他、構造材等若しくはガラス繊維補強プラスチック(FRP)材の代替え材料に使用することができ、これらを使用する分野で賞用され得るものである。
【0002】
【従来の技術】
FRP材は、不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維の複合材料であり、その強靭さ,軽量さと特異な成形性を生かして航空機部材,車両車体と部材,小型舟艇,ヘルメット,波板,浴槽,便槽,浄化槽,造形物等に飛躍的に使用されている。しかしながら、これら強靭なFRP材が廃棄された場合は、粉砕が難しいためにその粉砕作業には高い経費がかかり、また粉砕と同時にガラスファイバーの粉塵が出ると言う環境上の欠点があった。そのために、FRP製品がそのまま捨てられ放置されたままになりやすいことが社会問題の一つとなっている。
【0003】
また、FRP材の原材料は主に不飽和ポリエステル樹脂,スチレンモノマーとガラス繊維で構成され、この内スチレンモノマーは、気化して皮膚・粘膜刺激性の臭気性の気体であり、また発癌性の疑いがある(InternationalAgency
for Research on Cancer)原材料であり、ガラス繊維は、皮膚・粘膜刺激性及び塵肺の可能性のある素材であるため作業環境上,環境負荷上好ましくない原材料である。
【0004】
ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分と有機ポリイソシアネート成分の反応によって得られるが、主としてこれら成分の分子量,官能基数及び化学構造を選択することによって硬い樹脂から柔らかい組成物まで任意に作り出せる特徴がある。例えば、低分子量,高官能基数の原材料から得られるウレタン樹脂は、硬く高弾性率であるが、同時に極めて脆い樹脂となる。これより分子量を上げて官能基数を下げれば適度な硬さと粘り強さの樹脂を得ることは出来るが、これらの樹脂は約50℃〜65℃間で2次転位点を有し、この転位点を越えると硬度と弾性率の急激な低下を伴うために、構造材若しくはFRP材の代替え材料としては不適当であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリウレタン樹脂のかかる欠点を解消し、耐熱性と強靭性に優れ、構造材若しくはFRP材の代替え材料としても利用できるポリウレタン組成物を提供することである。即ち、臭気等が少なく作業環境上より安全で、廃棄製品の処理がしやすい上に環境負荷上安全性が高く、しかもFRP材の用途に適合できる強靭な性能をもつポリウレタン組成物は、現在までのところ提案されておらず、構造材若しくはFRP材の代替え材料の新材料等として、各産業分野からこれら組成物の出現は強く期待されている。
【0006】
例えば、従来マネキンは、メス型にFRP材を積層するハンドレイ法により製作されていた。当然、前述のごとく作業環境は悪く、また、一体の人体を製作するのに専門職人が二日以上の時間を要している。これを回転する閉じた型内に原材料を投入し、型内で反応・硬化させれば、短時間の内にガラス繊維の補強なしで樹脂だけの製品ができるため甚だ都合がよいと言える。また、製品が樹脂だけの時は、廃棄時の粉砕処理は粉塵が舞う事もなく、しかも簡単であり甚だ都合がよい。
【0007】
さらに例えば、模擬石壁も同様に、メス型にFRP材を積層するハンドレイ法により製作されているが、速硬化性の樹脂原液を型表面にスプレイし、型表面で反応・硬化させれば、短時間の内にガラス繊維の補強なしで樹脂だけの製品ができるため甚だ都合がよいと言える。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は叙上の点鑑みて鋭意研究を重ねたところ、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを特定の可塑剤の存在下に化学反応させてポリウレタン樹脂を合成する際に、請求項1及び3に記載するように、(a)ポリオールと(b)有機ポリイソシアネートと(c)可塑剤とを混合したポリウレタン組成物であって、前記(a)ポリオールが、官能基数3.5〜4.5,平均分子量370〜560であり、開始剤がジアミンで、且つ末端に1級の水酸基を有するポリオキシポリアルキレンポリオール成分であり、前記(b)有機ポリイソシアネートが、ジフェニルメタン系ポリイソシアネート成分であり、前記(c)可塑剤が、ジオクチルフタレートもしくはジオクチルセバケートであることを特徴とする、ポリウレタン組成物を硬化させて得られたポリウレタン樹脂が、耐熱性と強靭性に優れていることを見出し本発明に至った。
また、請求項2に記載するように、前記ジアミンは、エチレンジアミンであることが好ましい。
本願にかかるポリウレタンの製造方法は、請求項4に記載するように、
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを可塑剤の存在下に化学反応させて得られるポリウレタンの製造方法であって、
前記ポリオールとして、ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイドを開環附加重合させた、或いはプロピレンオキサイドを開環附加重合させた後、次いでエチレンオキサイドを開環附加重合させた、官能基数3.5〜4.5,平均分子量370〜560で、末端に1級の水酸基を有するポリオキシポリアルキレンポリオール成分を、
前記有機ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタン系ポリイソシアネート成分と、
ポリオールがイソシアネートの理論量より少なくなるように反応せしめ、末端に活性イソシアネート基を有するプレポリマーとし、
前記可塑剤として、ジオクチルフタレートもしくはジオクチルセバケートを用いることを特徴とする。
また、請求項5のポリウレタン成形物を成形する方法は、請求項4記載のポリウレタンの製造方法によって製造されたポリウレタンを用い、注型成形法又は回転成形法によってポリウレタン成形物を成形することを特徴とする。
【0009】
即ち、本発明のウレタン組成物は、特定の可塑剤の存在下に特定のポリオールと特定の有機ポリイソシアネートを反応させた時、結晶化ポリウレタンが形成され、非結晶化ポリウレタンに比べて硬度がより高く強靭で、また発生した結晶構造は100℃以上の熱安定性を有するために、耐熱性に優れたポリウレタン組成物となることを特徴とするものである。なお、その素材となる主成分のポリオール,有機ポリイソシアネート及び/若しくは可塑剤を無数の候補の中から適宜に選択することによって、例えば、得られる組成物の硬度及び機械的強さ等を調整していろいろな特性,反応性を有する組成物を得ることが出来る。
【0010】
【作用】
本発明によれば、ガラス繊維等の補強を用いずに、常用80℃以上の耐熱性を持つ強靭なポリウレタン組成物を提供できるため、注型成形材料等に利用される他、構造材等若しくはガラス繊維補強プラスチック(FRP)材の代替え材料等の新材料として各産業分野に利用出来る。しかも本発明の組成物は、主成分のポリオール,有機ポリイソシアネート及び/若しくは可塑剤を,臭気が低く、安全な素材を適宜に選択して、FRP材に比べて作業環境性、環境負荷性を大幅に改善することができる。また、本発明の組成物による製品は、廃棄上の粉砕処理も粉塵等の飛散はなく容易であり、ウレタン樹脂として公知の再利用化も可能である。
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に用いる主成分としてのポリオールとしては、ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイドを開環附加重合させた、またはプロピレンオキサイドを開環附加重合させた後、次いでエチレンオキサイドを開環附加重合させた公知の化合物を用いることが出来る。本発明においては、開始剤がジアミンで、末端に1級の水酸基を有するポリオキシポリアルキレンポリオールの使用は必須条件であるが、支障のない限りその他のポリオール、例えば公知の末端に2級の水酸基を有するポリオキシポリアルキレンポリオール,ポリエステル系ポリオール,ポリテトラメチレンポリオキシグリコール,ひまし油系ポリオール,ε−カプロラクトン系ポリオール,β−メチル−δ−バレロラクトン系ポリオール、カーボネート系ポリオール等を用いてもよく、これらの2種以上を併用することが出来る。
【0012】
前述したポリオールの開始剤としてのジアミンとは、例えばエチレンジアミン,トリメチレンジアミン,テトラメチレンジアミン,ペンタメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族系ジアミン及び4,4‘−ジフェニルメタン−ジアミン、2,6−トリレン−ジアミン等の芳香族系ジアミンを挙げることができる。また、これらの2種類以上の混合物を使用することも可能である。ここで、開始剤としてのジアミンは、反応過程におけるイソシアネート基と水分との副反応を抑制して副産物の泡の発生を極小化し、また、組成物の耐熱性を得るために必要であり、その正確な理論的な裏付けを挙げることができないが、分子内にあるアミノ基の触媒作用によりポリオールの水酸基の反応を速く確かなものして水分との副反応を抑制しつつ、確かな架橋の形成に寄与しているものと推定される。
【0013】
本発明に用いる主成分の末端に1級の水酸基を有するポリオキシポリアルキレンポリオールは、官能基数3.5〜4.5、平均分子量370〜560であることが必要である。官能基数が3.5未満の場合は得られる組成物の耐熱性が乏しくなり、官能基数が4.5より大きい場合は、得られる組成物が脆くなるために好ましくない。官能基数が3.5〜4.5の間であれば特に問題はないが、高いほど組成物の硬度は高くなり、同時に可撓性は低下する。また官能基数が低い程組成物の硬度は低くなり、同時に可撓性は大きくなる。また、平均分子量が370未満の場合は、得られる組成物が脆く、分子量が560より大きい場合は、得られる組成物の耐熱性が乏しくなり好ましくない。平均分子量は370〜560の間であれば特に問題はないが、低い程組成物の硬度は高くなり、同時に可撓性は低下する。また、平均分子量が高いほど組成物の硬度は低くなり、同時に可撓性は大きくなる。
【0014】
本発明に用いる有機ポリイソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機化合物であって、前記ポリオールの水酸基に対して反応性のイソシアネート基を有するジフェニルメタン系ポリイソシアネートが用いられる。ジフェニルメタン系ポリイソシアネートの例としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),液状変性MDI,ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(PPPI)等があり、とりわけ液状変性MDI,PPPIが好ましい。これら有機ポリイソシアネートは単独で用いることができるし、または2種以上を混合して用いることもできる。
【0015】
更にまた、前記有機ポリイソシアネートを理論量より少ない前記ポリオール類と公知の技術を用いて反応せしめ、末端に活性イソシアネート基を有するプレポリマーとして用いることもできる。プレポリマーとして用いる場合は、ポリオール化合物と有機ポリイソシアネートとの反応が確実に進行しやすくなり、均質な組成物が得やすいために好ましい。これらのプレポリマーは、末端に活性イソシアネート基残量16重量%以上、好ましくは21〜29重量%を有するものがよい。末端活性イソシアネート基残量が16重量%未満の場合にはプレポリマーの液粘度が高くなり、組成物の製造に際して支障を来す。末端活性イソシアネート基残量が16重量%以上ならば特に支障はないが、29重量%を越えるとプレポリマーとして用いる効果が少なくなる。
【0016】
本発明において用いる可塑剤は、前記ポリオールと有機ポリイソシアネートが反応して析出したポリウレタン樹脂が結晶化構造を形成させるに適した特定の化合物である必要がある。この特性に適した可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート,ジオクチルセバケート等を挙げることができる。これら可塑剤は単独で用いることができるし、または2種以上を混合して用いることもできる。
【0017】
ここで、可塑剤の使用量は、ポリオール成分と有機ポリイソシアネート成分の合計量100重量部当たり上記可塑剤を10〜60重量部の範囲が好ましい。可塑剤を60重量部以上添加すると、組成物の耐熱温度が低下し、また、可塑剤を原因とするブリージングを起こしやすくなり、また、10重量部未満の場合は、得られた組成物が非結晶物となり、機械的強度及び耐熱性を損なうので好ましくない。
【0018】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを化学反応させるに際して、ポリオールの水酸基(OH)に対するイソシアネートのイソシアネート基(NCO)の当量比、即ちNCO/OHは0.8〜1.3が好ましく、より好ましくは1.0〜1.1である。この当量比が1.3を越える場合は、未反応のイソシアネート残基と水分が副反応を起こし副産物の泡を生じやすくなり、また組成物の安定した硬度を管理できにくくなり、0.8未満の場合は、得られる組成物の耐熱性に欠けるために好ましくない。
【0019】
ここで、有機ポリイソシアネートとポリオールとの間のウレタン化反応を行わせるに当たって、適宜のウレタン化触媒を用いることができる。このウレタン化触媒としては、第3級アミン化合物や有機金属化合物等の公知の触媒を用いることが可能である。例えば、トリエチレンジアミン,N,N‘−ジメチルヘキサメチレンジアミン,N,N‘−ジメチルブタンジアミン,オクチル酸鉛,ラウリル酸ジブチル錫等が好適である。ただし、このウレタン化触媒を用いることは本発明の必須の要件ではない。
【0020】
また、本発明によるポリウレタン樹脂で構成された組成物は単体として用いることもできるが,組成物の耐久性,安定性の向上を図るために、安定剤として、熱安定剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,紫外線安定剤,充填剤等を、支障のない限りにおいて、1種または2種以上混合して用いることも出来る。さらに、前述したもの以外にも、顔料,染料,難燃剤,消泡剤,分散剤,界面活性剤,水分吸着剤等を適宜添加することも可能である。
【0021】
而して、原料として用いられるポリオール,有機ポリイソシアネート及び可塑剤はそれぞれ常温、もしくは加温した状態で、これら3成分を混合する。可塑剤は、予めポリオール、及び/若しくは有機ポリイソシアネートに混合させておいても良い。添加剤を混合する場合には、予めポリオールに混合させておくか、または主成分の混合時に添加してもよい。
【0022】
前述の各成分を十分に混合して、この混合液が増粘し始める前にシリコン型に流し込む。透明性のある混合液は、ウレタン化反応の進行に伴って白色・不透明な結晶化ウレタンが析出し、常温下で3分〜2時間でウレタン化反応が完了する。しかる後にシリコン型から組成物を取り出すことによってウレタン樹脂から構成された耐熱性と強靭性に優れた組成物が得られる
【0023】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。特定の可塑剤の存在下にポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応により得られるポリウレタン系の組成物を、表1,表2及び表3に示す処方量に従ってA〜Mの13種類調整し、表1,表2及び表3にそれらの試験結果を示している。これらの組成物のうち、C,F,G,H,K,L及びMが本発明の実施例に該当し、その他の組成物A,B,D,E,I及びJは本発明との比較例である。なお,表1〜表3に示す各素材は次のとおりである。
【0024】
(1)ポリオール表中番号1−1:エチレンジアミン(DEA)を開始剤として、4モルのプロピレンオキサイド(PO)を付加したテトラオール(分子量320)表中番号1−2:DEAを開始剤として、4モルのEOを付加したテトラオール(分子量264)
表中番号1−3:エチレンジアミン(DEA)を開始剤として、4モルのプロピレンオキサイド(PO)を付加後、さらに4モルのエチレンオキサイド(EO)を付加したテトラオール(分子量500)
表中番号1−4:DEAを開始剤として、6.2モルのPOを付加したテトラオール(分子量450)
表中番号1−5:DEAを開始剤として、7.1モルのPOを付加したテトラオール(分子量500)
(2)有機ポリイソシアネート:表中番号2−1:ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とエチレングリコールを反応させたプレポリマー(末端活性イソシアネート基残量21重量%)
表中番号2−2:カルボジイミド変性MDI(末端活性イソシアネート基残量29重量%)
表中番号2−3:ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(PPPI)(末端活性イソシアネート基残量31重量%)
表中番号2−4:MDIとひまし油系ポリオール(官能基数2,分子量1,100)を反応させたプレポリマー(末端活性イソシアネート基残量16重量%)
(3)可塑剤表中番号3−1:ジオクチルフタレート表中番号3−2:ジオクチルセバケート表中番号3−3:ジブチルフタレート表中番号3−4:トリスクロロエチルフォスフェート(4)その他の添加剤:表中番号4−1:消泡剤:シリコン消泡剤SAG471(日本ユニカ)
表中番号4−2:水分吸着剤;合成ゼオライト粉
【0025】
以上の素材を表に示す処方に従ってスパチラによる手攪拌で約10秒間混合することにより反応を開始させて、速やかにその混合物を200×200mm,厚み5mmのシリコーン製オープン型に注型して、常温で所定時間反応を継続したのち脱型し、引き続き常温で1日間養生することによって、200×200mm,厚み5mmのシート状の組成物を得た。
【0026】
そして、このシートについて以下のような実験を行い、その結果を表1〜表3に示している。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
表中の「ポリオール」,「イソシアネート」,「水分吸着剤」,「可塑剤」,「消泡剤」欄における数値の単位は、重量部数を示す。
【0031】
表中の「反応条件」欄における「常温」とは、雰囲気温度及び液温度を示し、「硬化」欄中の「時間」は、ポリオールと有機ポリイソシアネートの合計量100gを混合して、混合液が十分にゲル化するまでの時間を示す。また、表中の「結晶性の有無」とは、上記混合液から結晶性の反応生成組成物が析出し白濁した場合に「あり」と表示し、非結晶状態のまま硬化して透明、若しくは半透明の組成物の場合に「なし」と表示した。ここで、「結晶発現時間」とは、ポリオールと有機ポリイソシアネートを混合して、上記白濁が発生するまでは、ポリオールと有機ポリイソシアネートを混合して、上記白濁が発生するまでに要した時間を示す。
【0032】
また、「硬度」は、JIS K7215(プラスチックのデュロメーター硬さ試験方法)のタイプDに準じてバネ式硬度計を用いて測定した結果の数値であり、常温で測定した結果と80℃のオーブン中に放置後、オーブン中で測定した結果の数値である。
【0033】
「曲げ強さ」は、JIS K7203に準じて測定した結果の数値であり、「曲げ撓み率」は、ASTM D790(Standard
Method oftest for Flexural Properties of Pla−stics)に準じて測定した結果の数値である。
【0034】
「アイゾット衝撃試験」は、JIS K7110(硬質プラスチックのアイゾット衝撃試験方法)に準じて1号試験片・A切欠きにて測定した結果の数値である。
【0035】
「80℃耐熱性」は、80℃の雰囲気下に30日間暴露した試験片の80℃での硬度が55以上を維持しているものを耐熱性「あり」とし、「評価」欄中に「耐熱性」と表示し、そして硬度が55未満のものを耐熱「なし」と評価し、「評価」欄中に「耐熱性に欠ける」と表示した。
【0036】
「評価」欄中の「強靭」の表示は、曲げ強さ7kg/mm2以上,曲げ撓み率25%以上を基準として評価した。
【0037】
表1〜表3の結果より、本開発の組成物は、硬度70〜75(常温),58〜63(80℃)で常温と80℃間の硬度差が小さく耐熱性に優れ、曲げ強さ5.8〜8.2kg/mm2,曲げ撓み率28〜34%,アイゾット(ノッチ)45〜80kg.cm/cmの特性を持つ強靭な組成物である。
【0038】
一般的に、FRP(不飽和ポリエステル−ガラス繊維マット)の特性は、曲げ強さ7〜28kg/mm2で、本開発の組成物の前記特性値より大きいが、曲げ撓み率は1.5〜5%と極めて低く、アイゾット衝撃値(ノッチ)も2〜10kg.cm/cmと低く、FRPは剛性はあって強いが、比較的脆い材料であると言える。
【0039】
また、近年ジシクロペンタジエンを開環重合させる組成物が、FRP代替え用樹脂(商標:メトン 帝人ハーキュレス社)として提供され、この特性は曲げ強さ6.5kg/mm2,アイゾット衝撃値(ノッチ)47kg.cm/cm,熱変形温度約100℃と公示されている。
【0040】
なお、汎用樹脂であり、一部構造材としても使用されているポリプロピレン樹脂の曲げ強さは3.3kg/mm2,アイゾット衝撃値(ノッチ)15kg.cm/cmであり、ABS樹脂の曲げ強さは5.2kg/mm2,アイゾット衝撃値(ノッチ)20kg.cm/cmである。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる組成物は、硬度70〜75(常温),曲げ強さ5.8〜8.2kg/mm2,曲げ撓み率28〜34%,アイゾット(ノッチ)45〜80kg.cm/cmの特性を持つ強靭な組成物であり、しかも常温と80℃間の硬度差が小さく耐熱性に優れた組成物でもある。本発明の組成物は、耐熱性及び強靭性の改善された注型成形材料,回転成形材料等に利用される他、構造材等若しくはFRP材の代替え材料等に使用することができ、これらを使用する分野で賞用され得るものである。また、本発明の組成物の成形は、用いる素材が低臭で、ガラス繊維等の補強的手段を用いないため、従来のFRPに較べて作業工程が簡略化される上に、作業環境上の改善と廃棄上の環境負荷上の低減にも効果を有する。
Claims (5)
- (a)ポリオールと(b)有機ポリイソシアネートと(c)可塑剤とを混合したポリウレタン組成物であって、
前記(a)ポリオールが、官能基数3.5〜4.5,平均分子量370〜560であり、開始剤がジアミンで、且つ末端に1級の水酸基を有するポリオキシポリアルキレンポリオール成分であり、
前記(b)有機ポリイソシアネートが、ジフェニルメタン系ポリイソシアネート成分であり、
前記(c)可塑剤が、ジオクチルフタレートもしくはジオクチルセバケートであることを特徴とする、ポリウレタン組成物。 - 前記ジアミンが、エチレンジアミンである請求項1記載のポリウレタン組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリウレタン組成物を硬化して得られるポリウレタン。
- ポリオールと有機ポリイソシアネートとを可塑剤の存在下に化学反応させて得られるポリウレタンの製造方法であって、
前記ポリオールとして、ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイドを開環附加重合させた、或いはプロピレンオキサイドを開環附加重合させた後、次いでエチレンオキサイドを開環附加重合させた、官能基数3.5〜4.5,平均分子量370〜560で、末端に1級の水酸基を有するポリオキシポリアルキレンポリオール成分を、
前記有機ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタン系ポリイソシアネート成分と、
ポリオールがイソシアネートの理論量より少なくなるように反応せしめ、末端に活性イソシアネート基を有するプレポリマーとし、
前記可塑剤として、ジオクチルフタレートもしくはジオクチルセバケートを用いることを特徴とする、ポリウレタンの製造方法。 - 請求項4記載のポリウレタンの製造方法によって製造されたポリウレタンを用い、注型成形法又は回転成形法によってポリウレタン成形物を成形する方法。
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