JP3961845B2 - 洗剤用ビルダーおよび洗剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた洗浄効果を発揮する洗剤用ビルダーおよび洗剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、洗剤用ビルダーや洗剤組成物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸系(共)重合体や、ポリエーテル化合物に(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合して得られるグラフト重合体のような親水性重合体を配合したものが汎用されている。
しかし、これらは、例えばポリエステル混紡布のように疎水性の合成繊維と比較的親水性の高い木綿繊維等との両方に対して充分な洗浄効果を期待できるものではなく、しかも洗濯中にクレイが付着するのを防止する再汚染防止能が充分でないなど、洗剤用ビルダーや洗剤組成物として満足のいくものではなく、さらなる性能向上が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、優れた洗浄効果を発揮し、再汚染防止能にも優れた、洗剤用ビルダーおよび洗剤組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、不飽和カルボン酸系単量体および/または不飽和酸無水物系単量体と特定の不飽和単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる共重合体へのアミノ基の導入を考え、共重合体の有するカルボキシル基の少なくとも一部にアルキレンイミンを開環付加させることによりアミノ基が導入されてなる構造を有するアミノ基含有重合体が、洗剤用ビルダーおよび洗剤組成物の用途において優れた性能を発現できることを見いだした。本発明はこのようにして完成された。
【0005】
すなわち、本発明にかかる洗剤用ビルダーは、アミノ基含有重合体を必須成分として含む洗剤用ビルダーであって、前記アミノ基含有重合体が、一般式(1a)で表される不飽和カルボン酸系単量体および/または一般式(1b)で表される不飽和酸無水物系単量体、および、一般式(2)で表される不飽和単量体を必須に含む単量体成分を共重合して得られる共重合体の有するカルボキシル基の少なくとも一部にアルキレンイミンを開環付加させることによりアミノ基が導入されてなる重合体であることを特徴とする。
【0006】
【化6】
【0007】
【化7】
【0008】
【化6】
【0009】
また、本発明にかかる別の洗剤用ビルダーは、アミノ基含有重合体を必須成分として含む洗剤用ビルダーであって、前記アミノ基含有重合体が、炭素−炭素結合を構成単位とするポリマー鎖部分と、このポリマー鎖中の炭素原子に結合した一般式(3)で表される構成部分および一般式(4)で表される構成部分とを含んでなる重合体であることを特徴とする。
【0010】
【化7】
【0011】
【化10】
【0012】
さらに、本発明にかかる洗剤組成物は、本発明の洗剤用ビルダーを必須成分として含む。
【0013】
【発明の実施の形態】
(共重合体(A))
本発明にかかる洗剤用ビルダーは、特定のアミノ基含有重合体を必須成分として含む。まず、当該アミノ基含有重合体を製造するために用いることができる、一般式(1a)で表される不飽和カルボン酸系単量体および/または一般式(1b)で表される不飽和酸無水物系単量体、および、一般式(2)で表される不飽和単量体を必須に含む単量体成分を共重合して得られる共重合体(以下、便宜上、共重合体(A)と称することがある)について説明する。
【0014】
本発明で用いることができる一般式(1a)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、前記一般式(1a)で表すことができる単量体であれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などを挙げることができる。また、これらの酸は、1価または2価の金属や、アンモニアや有機アミンにより一部が中和された部分中和物であってもよい。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明で用いることができる一般式(1b)で表される不飽和酸無水物系単量体としては、前記一般式(1b)で表すことができる単量体であれば特に限定されないが、例えば、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物などを挙げることができる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
本発明で用いることができる一般式(2)で表される不飽和単量体としては、前記一般式(2)で表すことができる単量体であれば特に限定されないが、例えば、R3が−CH2−の場合は、2−プロペン−1−オール(アリルアルコール)、2−メチル−2−プロペン−1−オール等の不飽和アルコール1モルに対して、炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを1〜300モル、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは5〜60モル付加した化合物を挙げることができる。炭素数2〜18のアルキレンオキサイドとしては、スチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を挙げることができるが、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを用いるのが好ましい。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合、その結合順序に制限はない。また、R3が−CH2−の場合は、R1とR4がともにメチル基とはなることは好ましくなく、R1とR4の少なくとも一方は水素であることが好ましい。
【0016】
R3がカルボニル基の場合は、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸とメトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリプロピレングリコール等のアルコキシポリアルキレングリコールとのエステル化物を挙げることができる。アルコキシポリアルキレングリコールのアルキレン部の炭素数は2〜18、好ましくは2〜3である。また、アルコキシポリアルキレングリコールのアルキレンエーテル繰り返し単位数はn=1〜300、好ましくは1〜100、さらに好ましくは5〜60である。
また、RはR3に関係なく水素原子またはアルキル基であり、アルキル基の例としてはメチル基、フェニル基が好ましい。
【0017】
エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加モル数が0モルの場合、本発明の効果が十分に発揮できず、また、300モルを越えた場合、本発明の効果の向上は見られず、単に多量の添加量が必要となるだけとなり、好ましくない。
本発明で用いるアミノ基含有重合体を製造するために必要な、上記共重合体(A)は、一般式(1a)で表される不飽和カルボン酸系単量体および/または一般式(1b)で表される不飽和酸無水物系単量体、および、一般式(2)で表される不飽和単量体を必須に含む単量体成分を共重合して得られるものであるが、当該単量体成分中には単量体(1a)および/または(1b)、(2)以外に、必要に応じて、これら単量体と共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。
【0018】
上記他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン;スチレンスルホン酸;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;ブチル(メタ)アクリレート;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アリルアルコール;3−メチル−3−ブテン−1−オール;3−メチル−2−ブテン−1−オール;2−メチル−3−ブテン−2−オール;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンホスフェートおよびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のモノもしくはジエステル;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンサルフェートおよびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオール;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールホスフェート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールサルフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオール;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールホスフェート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシエチレンエーテルヘキサン;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシプロピレンエーテルヘキサン;3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、もしくは、有機アミン塩、または、これらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステルおよびそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、または、有機アミン塩;3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、もしくは、有機アミン塩、または、これらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステルおよびそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、または、有機アミン塩;3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、もしくは、有機アミン塩、または、これらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステルおよびそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、または、有機アミン塩;などを挙げることができる。
【0019】
一般式(1a)で表される不飽和カルボン酸系単量体および/または一般式(1b)で表される不飽和酸無水物系単量体、および、一般式(2)で表される不飽和単量体を必須に含む単量体成分を共重合する方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の方法によることができる。具体的には、例えば、水、有機溶剤、あるいは、水可溶性有機溶剤と水との混合溶剤等の溶剤中での重合を挙げることができる。これら重合に用いることができる触媒系としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸塩や過酸化水素などが挙げられ、促進剤(亜硫酸水素塩やアスコルビン酸等)を併用することもできる。その他、アゾ系開始剤や有機過酸化物等も用いることができ、アミン化合物等の促進剤も併用できる。反応を有利に進める点で、過酸化水素とアスコルビン酸を併用した触媒系が好ましい。さらに、過酸化水素と、鉄イオン、バナジウム原子含有イオン、銅イオンからなる群から選択される1種以上の金属イオンとの併用系触媒がより好ましい。
【0020】
一般式(1a)で表される不飽和カルボン酸系単量体および/または一般式(1b)で表される不飽和酸無水物系単量体、および、一般式(2)で表される不飽和単量体を必須に含む単量体成分を共重合する場合の、当該単量体成分中の各単量体((1a)および/または(1b)、(2)、および、必要に応じて、前述のその他単量体)の割合は、かかる共重合体の用途により様々な割合をとりうるので、特に限定されないが、例えば、不飽和カルボン酸系単量体(1a)および/または不飽和酸無水物系単量体(1b)の合計の割合が、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上である。不飽和単量体(2)の割合も、特に限定されないが、好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。また、液体洗剤などに対する相溶性が必要な場合には、50重量%以上が好ましい。
【0021】
共重合体(A)の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは500〜1000000、より好ましくは500〜500000、さらに好ましくは500〜100000であるのがよい。
(アミノ基含有重合体)
次に、本発明で用いるアミノ基含有重合体について説明する。
本発明で用いるアミノ基含有重合体を得るためのアミノ基導入は、共重合体(A)のカルボキシル基の少なくとも一部にアルキレンイミンを開環付加させることにより行なうことができる。なお、アミノ基導入は、共重合体(A)に対して行なってもよいが、共重合体(A)を得る際の原料単量体のうちアニオン性基(カルボキシル基や酸無水物基など)を有する不飽和カルボン酸系単量体(1a)および/または不飽和酸無水物系単量体(1b)に対してあらかじめ行い、アミノアルキル化されたカルボキシル基を有する単量体を用いてその後重合するようにしてもよい。
【0022】
本発明で用いることができるアルキレンイミンは、特に限定されないが、本発明の効果が十分に発現される点で、炭素数が2〜8のアルキレンイミン、すなわち、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブテンイミン、ペンテンイミン、ヘキセンイミン、ヘプテンイミン、オクテンイミンが好ましく、特に好ましくはエチレンイミンである。
アルキレンイミンを開環付加させる方法としては、特に制限はないが、例えば、40〜150℃、好ましくは50〜100℃の温度条件下で、変換しようとする重合体もしくは単量体とアルキレンイミンとを混合攪拌することにより容易に開環付加させることができる。なお、この開環付加反応は、無溶媒で行っても良いし、例えば前記重合体(A)を得る際の重合反応で用いられる溶媒を使用することもできる。
【0023】
アルキレンイミンを開環付加させる際には、アニオン性基1モルに対して0.01〜10モルのアルキレンイミンを使用することが好ましい。より好ましくは、アニオン性基1モルに対して0.1〜5モルのアルキレンイミンを使用するのがよく、さらに好ましくは、0.1〜2モルのアルキレンイミンを使用するのがよい。アルキレンイミンが0.01モル未満であると、アミノ基導入量が少なくなり、本発明の効果を充分に発揮できなくなり、一方、10モルを越えると、得られるアミノ基含有重合体の貯蔵安定性が低下する傾向がある。
以上のようにして得られるアミノ基含有重合体は、炭素−炭素結合を構成単位とするポリマー鎖部分と、このポリマー鎖中の炭素原子に結合した一般式(3)で表される構成部分および一般式(4)で表される構成部分とを含んでなる。
【0024】
上記炭素−炭素結合を構成単位とするポリマー鎖部分とは、炭素−炭素の単結合(−C−C−)が連続することによって構成されたポリマー鎖をいう。そして、ポリマー鎖中の炭素原子において隣接する炭素原子との結合に関与していない結合の少なくとも一つは一般式(3)で表される構成部分に結合し、少なくとも一つは一般式(4)で表される構成部分に結合している。
本発明で用いるアミノ基含有重合体は、好ましくは、炭素−炭素結合を構成単位とするポリマー鎖部分中の炭素原子に結合したカルボキシル基(またはその塩)を有する。
【0025】
本発明で用いるアミノ基含有重合体におけるアニオン性基(カルボキシル基や酸無水物基、あるいはその塩など)とカチオン性基(アミノ基が導入された基)との比率は、カチオン性基/アニオン性基=0.01〜500(モル比)とすることが好ましく、0.05〜100(モル比)とすることがより好ましく、0.1〜10(モル比)とすることがさらに好ましく、0.2〜2(モル比)とすることが特に好ましい。アニオン性基とカチオン性基との比率がこの範囲を外れると、洗剤組成物としての性能が充分に発現できないこととなるので好ましくない。
【0026】
本発明で用いるアミノ基含有重合体は、固形分あたりのアミン価が0.01〜15mmol/gであることが好ましく、0.05〜10mmol/gであることがより好ましく、0.10〜8mmol/gであることがさらに好ましい。アミン価が上記範囲を外れると、洗浄効果が低下する恐れがある。
また、本発明で用いるアミノ基含有重合体は、固形分あたりの酸価が0.1〜10mmol/gであることが好ましく、0.5〜8mmol/gであることがより好ましく、1〜7mmol/gであることがさらに好ましい。酸価が上記範囲を外れると、洗浄効果が低下する恐れがある。
【0027】
本発明で用いるアミノ基含有重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは500〜1000000、より好ましくは500〜500000、さらに好ましくは500〜100000であるのがよい。この範囲を外れると、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
本発明で用いるアミノ基含有重合体は、そのままでも洗剤用ビルダーや洗剤組成物に用いることができるが、アミノ基含有重合体にカルボキシル基が残存している場合には、必要により、さらに塩基性物質でカルボキシル基の少なくとも一部を中和して用いることができる。すなわち、本発明で用いるアミノ基含有重合体は、カルボキシル基の少なくとも一部が塩基性物質で中和されているものであってもよい。このような塩基性物質としては、1価金属および2価金属の水酸化物、塩化物、炭酸塩および重炭酸塩;アンモニア;有機アミン等をあげることができ、これらの塩基性物質は一種類または二種類以上を使用することができる。
【0028】
また、アミノ基含有重合体にカルボキシル基が残存している場合には、カルボキシル基の少なくとも一部とアルキレンイミンの開環付加により導入されたアミノ基の少なくとも一部とが分子内で内部塩を形成していてもよい。すなわち、本発明で用いるアミノ基含有重合体は、カルボキシル基の少なくとも一部がアルキレンイミンの開環付加により導入されたアミノ基の少なくとも一部と内部塩を形成しているものであってもよい。
本発明で用いるアミノ基含有重合体は、必要により、さらに酸性物質でアミノ基の少なくとも一部を中和して用いることもできる。すなわち、本発明で用いるアミノ基含有重合体は、アミノ基の少なくとも一部が酸性物質で中和されているものであってもよい。このような酸性物質としては、塩酸、臭化水素酸、りん酸、硫酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、乳酸、(メタ)アクリル酸、蓚酸、コハク酸、マレイン酸、ポリ(メタ)アクリル酸またはその部分塩等の有機酸を挙げることができ、これらの酸性物質は一種類または二種類以上を使用することができる。このようにアミノ基を中和することで、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0029】
(洗剤用ビルダー)
本発明にかかる洗剤用ビルダーは、前記特定のアミノ基含有重合体を必須成分として含む。
具体的には、本発明にかかる洗剤用ビルダーは、前記特定のアミノ基含有重合体のみからなっていてもよいし、他の洗剤用ビルダーと混合して用いてもよい。また、本発明にかかる洗剤用ビルダーに用いるアミノ基含有重合体は、前述のように、必要に応じ、さらに塩基性物質や酸性物質で中和したものであってもよい。
【0030】
上記他の洗剤用ビルダーとしては、特に限定されないが、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポウ硝、炭酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムやカリウム、ゼオライト、多糖類のカルボキシル誘導体、(メタ)アクリル酸(共)重合体塩、フマール酸(共)重合体塩などの水溶性重合体等が挙げられる。本発明にかかる洗剤用ビルダーは、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよいが、洗剤用ビルダーが液体洗剤組成物に用いられると、後述の界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤組成物となるため好ましい。
【0031】
(洗剤組成物)
本発明にかかる洗剤組成物は、本発明の洗剤用ビルダーを必須成分として含む。
本発明にかかる洗剤組成物中には、本発明の洗剤用ビルダー以外に、洗剤用界面活性剤を通常含有する。
界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、これらの界面活性剤は1種または2種以上を使用することができる。
【0032】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。
【0033】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、第4アンモニウム塩等を挙げることができる。
両性界面活性剤の具体例としては、カルボキシル型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
本発明にかかる洗剤組成物に含まれる本発明の洗剤用ビルダーの配合割合は、洗剤組成物中、好ましくは0.1〜60重量%であり、より好ましくは3〜30重量%である。洗剤用ビルダーの配合割合が0.1重量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる。他方、60重量%を超えると、経済性が低下する。
【0034】
本発明にかかる洗剤組成物に含まれる界面活性剤の配合割合は、洗剤組成物中、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは15〜50重量%である。界面活性剤の配合割合が10重量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる。他方、60重量%を超えると、経済性が低下する。
本発明にかかる洗剤組成物には、洗剤に慣用されている種々の添加剤を加えることが出来る。例えば、汚染物質の再沈着を防止するためのカルボキシメチルセルロースナトリウム、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等のよごれ抑制剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、酵素、染料、溶媒等である。
【0035】
本発明にかかる洗剤組成物は、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよいが、洗剤用ビルダーが液体洗剤組成物に用いられると、後述の界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤組成物となるため好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、得られた重合体の物性は以下の方法で測定した。
<重量平均分子量>
1)重合体(1)〜(2)の重量平均分子量は、下記条件のGPC分析で測定した。
装置:日立社製L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:SHODEX社製「SB−G、SB−804、SB−803、SB−802.5」
カラム温度:40℃
検量線:ジーエルサイエンス社製「POLYETHYLENE OXIDE STANDARD」
溶離液:0.5M酢酸+0.5M酢酸Na
流速:0.8ml/min
GPCソフト:日本分光社製「BORWIN」
2)比較重合体(1)の重量平均分子量は、下記条件のGPC分析で測定した。
装置:日立社製L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:SHODEX社製「Asahipak GF−1G、GF−710HQ、GF−310HQ」
カラム温度:40℃
検量線:アメリカンポリマースタンダード社製「ポリアクリル酸スタンダード」
溶離液:0.1M酢酸Na/アセトニトリル=75/25(重量比)
流速:0.5ml/min
GPCソフト:日本分光社製「BORWIN」
<残存酸価>
50mlのサンプル管に得られた試料ポリマー0.1gを秤量し、イオン交換水で20gになるように秤量し希釈した。さらに、該希釈液を0.5g採取し、イオン交換水約100mlで希釈し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpH11に調整した。調整後、過剰量のN/200メチルグリコールキトサン溶液5mlを加え、充分攪拌した。さらに、トルイジンブルー指示薬を6滴加えて良く攪拌しながら、N/400ポリビニル硫酸カリウム(PVSK)溶液にてコロイド逆滴定を行った。なお、青色から紫色に変わる点を終点とする。他方、空試験としてイオン交換水100mlについても同様の操作を行った。そして、これらの結果から、下記の計算式により酸価を求めた。
【0037】
酸価(mmol/g)=(f×N×(a−b))/(試料量(g)×固形分(%)/100)
f:PVSKのファクター
N:PVSK規定度(N/400)
a:空試験PVSK滴定量(ml)
b:測定試料PVSK滴定量(ml)(固形分:反応時の仕込みから算出)
<アミン価>
50mlのサンプル管に得られた試料ポリマー0.5gを秤量し、イオン交換水で30gになるように秤量し希釈した。さらに、該希釈液を0.5g採取し、イオン交換水約100mlで希釈し、0.1N塩酸でpH2.3に調整した。さらに、トルイジンブルー指示薬を6滴加えて良く攪拌しながら、N/400ポリビニル硫酸カリウム(PVSK)溶液にてコロイド滴定を行った。なお、青色から紫色に変わる点を終点とする。そして、これらの結果から、下記の計算式によりアミン価を求めた。
アミン価(mmol/g)=(f×N×a)/(試料量(g)×固形分(%)/100)
f:PVSKのファクター
N:PVSK規定度(N/400)
a:測定試料PVSK滴定量(ml)(固形分:反応時の仕込みから算出)
(参考例1)
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、300mlセパラブルフラスコに、無水マレイン酸20.4重量部、純水40.0重量部、モール塩0.0074重量部を仕込み、窒素置換後、撹拌しながら還流する温度まで昇温した(約103℃)。所定の温度になった時点で、アリルアルコールにエチレンオキサイドを5モル付加させたもの70重量部に純水28.0重量部を加えた溶液と、80%アクリル酸水溶液28.1重量部、35%過酸化水素水15.0重量部に純水を18.0重量部加えた溶液とを、それぞれ120分かけて滴下した。滴下後、還流温度下で1時間熟成し、重合を完結させ、カルボキシル基含有重合体水溶液を得た。
【0038】
得られたカルボキシル基含有重合体水溶液50重量部に、攪拌下、30℃にてエチレンイミン7.0重量部(イミノ基/カルボキシル基=1.0モル比)を30分にわたり加えた。滴下後、固形分調整のため8.8重量部の脱イオン水を加えた後、加熱して80℃まで昇温し、3時間攪拌して熟成を行い、その後冷却して、アミノ基含有重合体(1)を得た。
得られたアミノ基含有重合体(1)の重量平均分子量は20700、固形分あたり残存酸価は3.94mmol/g、固形分あたりアミン価は3.88mmol/gであった。また、得られたアミノ基含有重合体(1)を検出限界1ppm以下のガスクロマトグラフィーで分析した結果、未反応のエチレンイミンは検出されなかった。
【0039】
(実施例1)
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、300mlセパラブルフラスコに、純水82重量部を仕込み、窒素置換後、撹拌しながら80℃まで昇温した。所定の温度になった時点で、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(n=25)エステル化物87.6重量部、メタクリル酸17.2重量部、純水26.2重量部に3−メルカプトプロピオン酸0.94重量部を溶解させた溶液を4時間かけて滴下するとともに、過硫酸アンモニウム1.25重量部を10重量部の純水に溶解させたものを5時間かけて滴下した。該溶液の滴下後、80℃で1時間熟成し、重合を完結し、カルボキシル基含有重合体水溶液を得た。
【0040】
得られたカルボキシル基含有重合体水溶液50重量部に、攪拌下、30℃にてエチレンイミン2.0重量部(イミノ基/カルボキシル基=1.0モル比)を30分にわたり加えた。滴下後、固形分調整のため5.1重量部の脱イオン水を加えた後、加熱して80℃まで昇温し、3時間攪拌して熟成を行い、その後冷却して、アミノ基含有重合体(2)を得た。
得られたアミノ基含有重合体(2)の重量平均分子量は27500、固形分あたり残存酸価は2.00mmol/g、固形分あたりアミン価は1.72mmol/gであった。また、得られたアミノ基含有重合体(2)を検出限界1ppm以下のガスクロマトグラフィーで分析した結果、未反応のエチレンイミンは検出されなかった。
【0041】
(比較例1)
特開2000―80396号公報の実施例A−3に記載されている方法に準じて比較重合体(1)としてポリアクリル酸を得た。すなわち、攪拌機およびコンデンサーを備えた容量5LのSUS316製セパラブルフラスコに、イオン交換水1172重量部を仕込み、攪拌下、系の沸点(100℃)まで昇温した。そこに、80%アクリル酸水溶液2126.1重量部(アクリル酸1700.9重量部とイオン交換水425.2重量部)、15%過硫酸ナトリウム水溶液112.4重量部(過硫酸ナトリウム16.86重量部とイオン交換水95.54重量部)および45%次亜リン酸ナトリウム1水和物水溶液250.4重量部(次亜リン酸ナトリウム1水和物112.7重量部とイオン交換水137.7重量部)をそれぞれ別々の滴下口より滴下した。80%アクリル酸水溶液は180分で滴下した。15%過硫酸ナトリウム水溶液は185分で滴下した。45%次亜リン酸ナトリウム1水和物水溶液は180分で滴下した。過硫酸ナトリウムの使用量はアクリル酸1モルに対して0.003モルである。次亜リン酸ナトリウム1水和物の使用量はアクリル酸1モルに対して0.045モルである。また、反応器への初期仕込みの水系媒体量は水系媒体の合計量の55%であった。滴下期間中、反応温度は系の沸点(100〜105℃)を維持した。滴下終了後、同温度に5分間保持することにより熟成を終了し、ポリアクリル酸を得た。得られた比較重合体(1)の重量平均分子量は5000であり、固形分あたりの酸価は13.1mmol/gであった。
【0042】
[再汚染防止能:参考例2、実施例2および比較例2]
参考例1、実施例1および比較例1で得られた重合体を固形分換算で17.5ppm含む洗剤水溶液を、下記配合で、界面活性剤(SFT−70H+LAS)濃度が350ppmになるように調製した。
<配合>
非イオン界面活性剤(SFT−70H)注1):10g
陰イオン界面活性剤(LAS)注2):15.3g
ジエタノールアミン:2.5g
エタノール:2.5g
プロピレングリコール:2.5g
水:67.2g
注1)SFT−70H:ポリオキシエチレンアルキルエーテル「ソフタノール70H」 日本触媒製
注2)LAS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム「ネオペレックスF−65」 花王製
次に、綿布((財)洗濯科学協会より入手)を5cm×5cmに裁断した白布8枚を用意した。そして、前記洗剤水溶液1Lに、クレイ(試験用ダスト11種(関東ローム、超微粒)日本粉体工業技術協会)0.5gと白布8枚とを加え、ターゴトメータを用いて、洗濯時間10分(ターゴトメータ100rpm)、濯ぎ時間2分(ターゴトメータ100rpm)で、洗濯・濯ぎを3回繰り返した後、布をアイロンで乾燥させた。なお、使用した水の硬度は50ppm(炭酸カルシウム換算)、水温は25℃であった。
【0043】
上記試験前の白布(原布)および試験後の白布(汚染布)の反射率(ハンター白色度)を色差計(日本電色工業株式会社製「SE2000」)にて測定し、原布および汚染布それぞれ8枚の平均値を算出し、該平均値を用いて次式によって再汚染防止率を求め、再汚染防止能を評価した。結果を表1に示す。
再汚染防止率(%)=(汚染布の反射率/原布の反射率)×100
【0044】
【表1】
【0045】
[洗浄力:参考例3、実施例3および比較例3]
参考例1、実施例1および比較例1で得られた重合を固形分換算で50ppm含む洗剤水溶液を、下記配合で、界面活性剤(SFT−70H+LAS)濃度が350ppmになるように調製した。
<配合>
非イオン界面活性剤(SFT−70H)注1):10g
陰イオン界面活性剤(LAS)注2):15.3g
ジエタノールアミン:2.5g
エタノール:2.5g
プロピレングリコール:2.5g
水:67.2g
注1)SFT−70H:ポリオキシエチレンアルキルエーテル「ソフタノール70H」 日本触媒製
注2)LAS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム「ネオペレックスF−65」 花王製
次に、湿式人工汚染布((財)洗濯科学協会製)を5枚用意した。そして、前記洗剤水溶液500mLに汚染布5枚を加え、ターゴトメータを用いて、洗濯時間10分(ターゴトメータ100rpm)、濯ぎ時間2分(ターゴトメータ100rpm)で、洗濯・濯ぎを行なった後、布をアイロンで乾燥させた。なお、使用した水の硬度は50ppm(炭酸カルシウム換算)、水温は25℃であった。
【0046】
上記試験前および試験後の汚染布と白布((財)洗濯科学協会より入手)の反射率(ハンター白色度)を、色差計(日本電色工業株式会社製「SE2000」)にて測定し、試験前および試験後の汚染布それぞれ5枚の平均値を算出し、該平均値を用いて次式によって洗浄率を求め、洗浄力を評価した。結果を表2に示す。洗浄率(%)=[(試験後の汚染布の反射率―試験前の汚染布の反射率)/(白布の反射率−試験前の汚染布の反射率)]×100
【0047】
【表2】
【0048】
[相溶性:参考例4、実施例4および比較例4]
表3に示す成分配合(但し、表3中の数値は、有効成分の固形分換算による値であり、単位は「重量部」である)で洗剤組成物を調製した。そして、各成分が均一になるように充分に攪拌した後、濁度計(日本電色株式会社製「NDH2000」)を用いて、25℃での濁度値(Turbidity(カオリン濁度)(mg/l))を測定し、目視による観察と併せて次の3段階で液体洗剤への相溶性を評価した。結果を表3に示す。
○:濁度値(0〜50);目視で分離、沈殿または白濁が全く認められない。
【0049】
△:濁度値(50〜200);目視で僅かに白濁が認められる。
×:濁度値(200以上);目視で白濁が認められる。
【0050】
【表3】
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた洗浄効果を発揮し、再汚染防止能にも優れた、洗剤用ビルダーおよび洗剤組成物を提供することができる。
Claims (4)
- アルキレンイミンの開環付加により導入されたアミノ基の少なくとも一部が酸性物質で中和されている、請求項1に記載の洗剤用ビルダー。
- 請求項1から3までのいずれかに記載の洗剤用ビルダーを必須成分として含む洗剤組成物。
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