JP3961124B2 - 刺繍ミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺繍ミシンに係り、特に、針棒をxy方向に移動させつつ刺繍を実行することのできる刺繍ミシンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の刺繍ミシンでは、例えばサテンステッチで刺繍を実行しようとする場合、刺繍枠をジグザグに移動させることによって針落ち点を移動させながら刺繍を実行している。この刺繍枠の移動は、針が布から抜け出してから次に突き刺さるまでの間に実行しなければならない。このため、1つの縫い目の長さが大きくなると刺繍枠の移動に時間がかかり、その分だけ上軸の回転速度を低速に抑制しなければならず、生産性に問題があった。
【0003】
この問題を解決するべく、特公平3−52998号公報に提案された刺繍ミシンでは、針棒をスライド自在に支持する針棒支持体をミシン機枠に対してxy方向揺動可能に支持し、2個のステッピングモータを用いて針棒支持体をxy方向に揺動させることで、刺繍枠をジグザグ運動させなくてもサテンステッチを形成することのできる構成が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特公平3−52998号公報に提案された刺繍ミシンでは、一針毎にステッピングモータを正逆回転させて針棒支持体を揺動させることになり、このステッピングモータの性能によって上軸の回転速度が制限されてしまうという問題がある。加えて、ステッピングモータの駆動タイミングと主軸モータの回転角度との関係を同期させる必要があり、これによっても主軸モータの回転速度をあまり大きくすることができないという問題がある。特に、1ステッチの縫い目を長くすればするほど、針棒の揺動に時間がかかり、十分な高速化が達成できないという問題が発生する。
【0005】
また、上記特公平3−52998号公報に提案された刺繍ミシンでは、針が斜めに被縫製物に突き刺さることになり、皮革等の様な厚くて硬い被縫製物に刺繍を行う場合に、針に曲げ応力が発生するという問題もある。
【0006】
さらに、針が斜めに刺さることから、釜の剣先と針との出会いの位置を合わせ難くなるという問題もある。
【0007】
この様に、従来の刺繍ミシンでは、針棒をxy方向に移動させながら刺繍を行うことができる様になったものの、刺繍速度の高速化は未だ不十分であり、また、斜めに針を突き刺す方式となることから大きな振り幅の縫い目を形成する場合に種々の問題が生じる可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、針棒をxy方向に移動させながら刺繍を実行させる刺繍ミシンにおいて、より一層の刺繍速度の高速化を可能とし、皮革等の厚手の被縫製物に対しても無理なく刺繍を施すことができ、かつ、大きな振り幅の縫い目を形成する場合にあっても実用上の問題を生じない刺繍ミシンを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本発明の刺繍ミシンは、その基本的な構成として、上軸の回転に連動してz軸方向に上下動される針棒と、該針棒を前記z軸方向上下動可能に支持したままで、前記z軸に直交するxy平面に沿って任意の方向に水平移動可能な様にミシン機枠に支持されている針棒支持体と、前記針棒がz軸方向の上下動を2回実行する間に、前記上軸の回転を駆動力として、前記針棒支持体を前記xy平面に沿って1回往復動させ得る針棒支持体往復動部材と、該針棒支持体往復動部材による前記針棒支持体の前記往復動に連動して、上糸と下糸との縫合が成立する様に、針板及び下糸用の釜と針との出会いの位置及びタイミングを調整する出会い調整機構とを備える(以下、「(1)の刺繍ミシン」という。)。
【0010】
(1)の刺繍ミシンによれば、針棒支持体往復動部材によって針棒支持体をxy平面に沿って任意の方向に水平移動させると共に、出会い調整機構によって針板及び釜と針との出会いの位置及びタイミングを調整して上糸と下糸との縫合が成立する様にしている。従って、針は常に垂直に被縫製物に突き刺さることになり、振り幅を大きくしても針に無理な力が加わらないし、剣先と針との出会いの位置及びタイミングを概ね一定に保つことができるので確実に縫い目を形成することができる。また、針棒支持体往復動部材は上軸の回転を駆動力として利用している。従って、針棒支持体をxy平面に沿って高速に往復動させることができる。なお、上軸の駆動力を利用するに当たっては、一例として、ギヤや偏心カムなどを用いたメカニカルな機構により回転運動を往復運動に変換し、針棒支持体往復動部材による針棒支持体のx軸方向及びy軸方向の往復運動を行わせる様に構成することができる。
【0011】
ここで、より具体的な刺繍ミシンは、上記(1)の刺繍ミシンにおいて、前記x軸を上軸に沿う方向とするとき、前記針棒支持体が、ミシン機枠に対してx軸方向スライド可能に支持される第1のスライド部材と、該第1のスライド部材に対してy軸方向スライド可能に支持される第2のスライド部材とを有し、該第2のスライド部材に対して前記針棒をz軸方向上下動可能に支持させると共に、前記針棒支持体往復動部材が、前記上軸の回転によって駆動され、前記第1のスライド部材をx軸方向に往復動させるx方向往復動部材と、前記上軸の回転によって駆動され、前記第2のスライド部材をy軸方向に往復動させるy方向往復動部材とによって構成されていることを特徴とする(以下、「(2)の刺繍ミシンという。」)。
【0012】
(2)の刺繍ミシンによれば、針棒支持体は、上述の様な第1,第2のスライド部材によって構成されている。そして、x方向往復動部材によって第1のスライド部材をx軸方向にスライドさせることにより、針棒をx軸方向に往復動させながら被縫製物への刺繍を実行することができる。また、y方向往復動部材によって第2のスライド部材をy軸方向にスライドさせることにより、針棒をy軸方向に往復動させながら被縫製物への刺繍を実行することができる。そして、x方向往復動部材によって第1のスライド部材をx軸方向にスライドさせると共にy方向往復動部材によって第2のスライド部材をy軸方向にスライドさせることにより、針棒をx軸y軸に対して斜め方向に往復動させながら被縫製物への刺繍を実行することができる。こうして、針棒支持体をxy平面に沿って任意の方向に往復動させつつ刺繍を行うことができる。
【0013】
また、より具体的には、(2)の刺繍ミシンにおいて、前記第2のスライド部材を、前記上軸の回転をz軸方向の運動に変換する針棒クランクロッドに対して、x軸方向移動可能に係合支持される針棒抱き支持部材と、該針棒抱き支持部材に対して、前記針棒を固定した状態においてy軸方向移動可能に係合支持される針棒抱きと、該針棒抱きに固定された前記針棒をz軸方向移動可能に支持する針棒フレームとによって構成することを特徴とする(以下、「(3)の刺繍ミシン」という。)。
【0014】
(3)の刺繍ミシンによれば、x方向往復動部材によって第1のスライド部材をx軸方向に往復動させると、第2のスライド部材もx軸方向に往復動する。このとき、針棒抱き支持部材は針棒クランクロッドに対してx軸方向移動可能に係合支持されているので、針棒は、x軸方向へ往復動しながらも上軸によるz軸方向の上下動を伝達される。また、y方向往復動部材によって第2のスライド部材をy軸方向に往復動させると針棒もy軸方向に往復動する。このとき、針棒抱きは針棒抱き支持部材に対してy軸方向移動可能に係合支持されているので、やはり、針棒クランクロッドを介して、針棒にz軸方向の上下運動を行わせることができる。ここで、針棒抱き支持部材は、針棒がx軸方向に最大針振り幅だけ往復動されても針棒クランクロッドとの係合支持状態を維持し得る長さのシャフト部材と、このシャフト部材の先端部に設けられ、針棒がy軸方向に最大針振り幅だけ往復動されても針棒抱きとの係合支持状態を維持し得る様にy軸方向に伸びる係合支持部材とによって構成することができる。
【0015】
また、より具体的には、(3)の刺繍ミシンにおいて、前記x方向往復動部材を、それ自体のx軸方向の往復運動を前記第1のスライド部材に伝達することにより、該第1のスライド部材をx軸方向に往復動させる部材として構成し、前記針棒フレームに、x軸方向に伸びる様に固定される支軸に対してスライド可能に取り付けられると共に、それ自体からy軸方向に伸びるシャフトによってy軸方向移動可能にミシン機枠に支持されるスライドブロックと、該スライドブロックに対して、x軸及びy軸に対して斜めに形成された長孔を介して係合され、それ自体がx軸方向に移動するとき、前記スライドブロックをy軸方向に移動させる方向変換ブロックとを備えさせ、前記y方向往復動部材を、それ自体のx軸方向の往復運動を前記方向変換ブロックに伝達することにより、前記第2のスライド部材をy軸方向に往復動させる部材として構成することを特徴とする(以下、「(4)の刺繍ミシン」という。)。
【0016】
(4)の刺繍ミシンによれば、前記x方向往復動部材及びy方向往復動部材は、それぞれ上軸の回転を駆動力としてx軸方向に往復運動をし得る部材として構成されている。そして、x方向往復動部材がx軸方向に往復動することにより、第1のスライド部材がx軸方向の往復動を実行する。一方、y方向往復動部材がx軸方向に往復動すると、このx軸方向の往復動が方向変換ブロックによってy軸方向の往復動に変換されてスライドブロックに伝達される。そして、このスライドブロックは、針棒フレームに設けられたx軸方向に伸びる支軸にスライド可能に取り付けられているので、この支軸を介して、針棒フレームにy軸方向の往復動を伝達する。この結果、針棒は針棒フレームにz軸方向上下動可能に支持された状態で、x方向往復動部材及びy方向往復動部材の往復動に対応して、xy平面内を任意の方向に往復動することができる。
【0017】
また、より具体的には、(4)の刺繍ミシンにおいて、前記x方向往復動部材を、前記上軸の2回転に1回の割合で回転する第1の偏心カムと、該第1の偏心カムに一端を係合されると共に他端を前記第1のスライド部材に連結される第1の連結部材と、前記第1の偏心カムによる前記第1の連結部材の運動をガイドし、該第1の連結部材の運動方向を変化させて前記第1のスライド部材のx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のx軸方向の針振り幅を調節するx方向針振り幅調節部材とによって構成し、前記y方向往復動部材を、前記上軸の2回転に1回の割合で回転する第2の偏心カムと、該第2の偏心カムに一端を係合されると共に他端を前記方向変換ブロックに連結される第2の連結部材と、前記第2の偏心カムによる前記第2の連結部材の運動をガイドし、該第2の連結部材の運動方向を変化させて前記方向変換ブロックのx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のy軸方向の針振り幅を調節するy方向針振り幅調節部材とによって構成することを特徴とする(以下、「(5)の刺繍ミシン」という。)。
【0018】
(5)の刺繍ミシンによれば、x方向針振り幅調節部材及びy方向針振り幅調節部材の角度を変化させることによって、上軸の回転力を駆動源として針棒フレームをxy平面内で任意の方向に任意の振り幅にて往復動させることができる。従って、針棒をxy平面内で任意の方向に振る速度は、上軸の回転速度によって規定されることとなり、針棒をxy平面内で振ることによって上軸の回転速度を制約するといった問題が生じない。よって、刺繍速度の高速化を図ることができる。
【0019】
また、より具体的には(5)の刺繍ミシンにおいて、前記x方向針振り幅調節部材を、第1のACサーボモータによって傾き角を変化させられることにより、該傾き角の変化に応じて前記第1の連結部材のガイド方向を変化させてx軸方向の針の振り幅を調節する部材として構成し、前記y方向針振り幅調節部材を、第2のACサーボモータによって傾き角を変化させられることにより、該傾き角の変化に応じて前記第2の連結部材のガイド方向を変化させてy軸方向の針の振り幅を調節する部材として構成することを特徴とする(以下、「(6)の刺繍ミシン」という。)。
【0020】
この様にACサーボモータによるx方向針振り幅調節部材及びy方向針振り幅調節部材の角度変更を行うという構成を採用することにより、針棒の振り幅及び針棒を振る方向を高速にて変更することができ、針棒の振り幅や針棒を振る方向を変化させながらの刺繍においても高速化が可能である。
【0021】
また、より具体的には、(2)〜(6)の各刺繍ミシンにおいて、前記出会い調整機構を、前記x方向往復動部材と連係され、該x方向往復動部材による前記針棒支持体の往復動に同期して針板及び下糸用の釜をx軸方向に往復動させる針板・釜移動機構と、前記y方向往復動部材と連係され、該y方向往復動部材による前記針棒支持体の往復動に同期して前記釜の回転角度を強制的に変化させることにより、上下の糸の縫合が成立する様に、該釜の剣先を針のえぐりの範囲内で該針と出会わせる様に、該剣先と該針との出会いのタイミングを調整する釜の不等速回転機構と、前記針板に形成され、前記y軸方向に伸びる長孔からなる針孔とによって構成することができる(以下、「(7)の刺繍ミシン」という。)。
【0022】
(7)の刺繍ミシンによれば、x方向往復動部材によって針棒をx軸方向に所定の振り幅で往復動するとき、針板・釜移動機構が、このx方向往復動部材によるx軸方向の針棒の往復動に同期して針板及び下糸用の釜をx軸方向に往復動させる。また、y方向往復動部材によって針棒をy軸方向に所定の振り幅で往復動するとき、釜の不等速回転機構が、このy方向往復動部材によるy軸方向の針棒の往復動に同期して釜の回転角度を強制的に変化させることにより、上下の糸の縫合が成立する様に、釜の剣先を針のえぐりの範囲内で針と出会わせる様に、剣先と針との出会いのタイミングを調整する。そして、針板には、y軸方向に伸びる長孔からなる針孔が形成されている。従って、針棒はxy平面内を任意の方向に任意の振り幅で水平に往復動されても、この具体的な出会い調整機構によって、針板及び釜と針との出会いの位置及びタイミングが適切に調整され、上糸と下糸との縫合が確実に行われ、被縫製物に対して刺繍による縫い目が形成される。
【0023】
また、より具体的には、(7)の刺繍ミシンにおいて、前記上軸の回転を伝達されると共に第1のネジ歯車を有する第1の下軸と、該第1のネジ歯車に係合する第2のネジ歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能に支持された第2の下軸と、該第2の下軸に取り付けられる第1の平歯車と係合する第2の平歯車を有する第3の下軸と、該第3の下軸に取り付けられる第3の平歯車と係合する第4の平歯車を有する第4の下軸と、前記第4の平歯車に係合する第5の平歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能で、下糸用の釜を先端に固定されると共に前記針板とx軸方向に一体的に移動可能に係合された第5の下軸とを備え、前記針板・釜移動機構を、リンク機構を介して前記x方向往復動部材と連係され、前記第4,第5の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のx軸方向移動に対して前記第5の下軸を同じ量だけ同じ方向に移動させる手段として構成し、前記釜の不等速回転機構を、リンク機構を介して前記y方向往復動部材と連係され、前記第1,第2のネジ歯車及び前記第1,第2の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のy軸方向の移動量に応じて前記第2の下軸をx軸方向に移動させる手段として構成することを特徴とする(以下、「(8)の刺繍ミシン」という。)。
【0024】
(8)の刺繍ミシンによれば、x方向往復動部材によって針棒をx軸方向に振るときは、このx方向往復動部材とリンク機構を介して連係されている針板・釜移動機構が、第4,第5の平歯車の係合状態を保ったままで、針棒支持体のx軸方向移動に対して第5の下軸を同じ量だけ同じ方向に移動させることによって、針のx軸方向に移動と針板及び釜のx軸方向に移動とを同期させることができる。また、y方向往復動部材によって針棒をy軸方向に振るときは、このy方向往復動部材とリンク機構を介して連係されている釜の不等速回転機構が、第1,第2のネジ歯車及び第1,第2の平歯車の係合状態を保ったままで、針棒支持体のy軸方向の移動量に応じて第2の下軸をx軸方向に移動させることにより、第1,第2のネジ歯車の噛み合い位置を強制的に進めたり遅らせたりすることで釜の回転角度を変化させ、針と剣先の出会いのタイミングを適切に調整することが可能になる。
【0025】
なお、本発明の目的を達成し得る刺繍ミシンのより具体的なものとしては、主軸モータによって回転される上軸と、該上軸の先端に取り付けられ、該上軸の回転をz軸方向の上下運動に変換する針棒クランクロッドと、該針棒クランクロッドに対して、上軸に沿うx軸方向に移動可能に係合支持される針棒抱き支持部材と、該針棒抱き支持部材に対して、前記針棒を固定した状態においてy軸方向移動可能に係合支持される針棒抱きと、該針棒抱きに固定される前記針棒をz軸方向に上下動可能に支持する針棒フレームと、該針棒フレームをy軸方向移動可能に支持すると共に、自らはミシン機枠に対してx軸方向移動可能に支持される第1のスライド部材と、前記針棒フレームにx軸方向に伸びる様に固定される支軸に対してスライド可能に取り付けられると共に、それ自体からy軸方向に伸びるシャフトによってy軸方向移動可能にミシン機枠に支持されたスライドブロックと、該スライドブロックに対して、x軸及びy軸に対して斜めに形成された長孔を介して係合され、それ自体がx軸方向に移動するとき、前記スライドブロックをy軸方向に移動させる方向変換ブロックと、前記上軸に固定された第1のネジ歯車と、該第1のネジ歯車に係合する第2のネジ歯車を有し、前記上軸の2回転に1回転の割合で回転する様に前記上軸に直交して配置されるカム軸と、該カム軸に取り付けられる第1の偏心カムと、該第1の偏心カムに係合する二股部を一端に有し、他端に前記第1のスライド部材に連結される第1の運動伝達シャフトを有する第1の二股ロッドと、前記第1の偏心カムによる前記第1の二股ロッドの運動をガイドし、該第1の二股ロッドの運動方向を変化させることにより、前記第1の運動伝達シャフトにより伝達される前記第1のスライド部材のx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のx軸方向の針振り幅を調節するx方向針振り幅調節部材と、該x軸方向針振り量調節部材の傾き角度を変化させる第1のACサーボモータと、前記カム軸に取り付けられる第2の偏心カムと、該第2の偏心カムに係合する二股部を一端に有し、他端に前記方向変換ブロックに連結される第2の運動伝達シャフトを有する第2の二股ロッドと、前記第2の偏心カムによる前記第2の二股ロッドの運動をガイドし、該第2の二股ロッドの運動方向を変化させることにより、前記第2の運動伝達シャフトによる前記方向変換ブロックのx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のy軸方向の針振り幅を調節するy方向針振り幅調節部材と、該y方向針振り幅調節部材の傾き角度を変化させる第2のACサーボモータと、前記上軸の回転を伝達されると共に第3のネジ歯車を有する第1の下軸と、該第3のネジ歯車に係合する第4のネジ歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能に支持された第2の下軸と、該第2の下軸に取り付けられる第1の平歯車と係合する第2の平歯車を有する第3の下軸と、該第3の下軸に取り付けられる第3の平歯車と係合する第4の平歯車を有する第4の下軸と、前記第4の平歯車に係合する第5の平歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能で、下糸用の釜を先端に固定されると共に針板とx軸方向に一体的に移動可能に係合された第5の下軸とを備え、前記第1の二股ロッドとリンク機構を介して連係され、前記第4,第5の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のx軸方向移動に対して前記第5の下軸を同じ量だけ同じ方向に移動させる針板・釜移動機構と、前記第2の二股ロッドとリンク機構を介して連係され、前記第3,第4のネジ歯車及び前記第1,第2の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のy軸方向の移動量に応じて前記第2の下軸をx軸方向に移動させる釜の不等速回転機構と、前記針板に形成され、y軸方向に伸びる長孔からなる針孔とを備えている刺繍ミシンあげることができる(以下、「(9)の刺繍ミシン」という。)。
【0026】
(9)の刺繍ミシンによれば、第1,第2のACサーボモータによってx方向針振り幅調節部材及びy方向針振り幅調節部材の傾きを変化させることによって、第1,第2の二股ロッドのx軸方向の運動量を調節し、これによって針棒フレームのxy方向の移動量を制御することができる。そして、上軸に取り付けられた第1のネジ歯車の回転が第2のネジ歯車へと伝達されてカム軸を回転させ、このカム軸に取り付けられた第1,第2の偏心カムを介して、上軸の2回転に1回の割合で、これらの二股ロッドが共にx軸方向に往復運動を行うので、針棒
フレームをx軸方向及びy軸方向に移動させる速度は上軸の回転速度によって定まり、高速にて針棒をxy平面内で任意の方向に任意の振り幅にて振ることができる。また、針棒支持体のxy方向への移動開始タイミングは、第1,第2の偏心カムの形状によって上軸の回転角度に対して一定の条件を定めることができる。そして、下軸側を上述の様に構成することで、針棒のx軸方向移動に同期させて針板及び釜をx軸方向に移動させることができ、しかも針孔をy方向に伸びる長孔としているので、針棒をxy方向に移動させても的確に針孔に針を突き刺すことができる。加えて、針棒のy軸方向移動に同期させて釜の回転角度を強制的に進ませたり遅らせたりすることができるので、針と剣先の出会いのタイミングを、針棒が下死点から一定高さの位置まで上昇するタイミングに合わせるなど、剣先と針との出会いのタイミングを適切に調整することができる。よって、針をx軸方向及びy軸方向に大きく振っても確実に縫い目を形成することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図1は、刺繍ミシン1の駆動機構全体の斜視図を示す。
この刺繍ミシン1は、その大きな特徴として、針棒3をx軸方向(上軸5の軸方向)及びy軸方向(上軸5に直交する方向)に移動させ得る様にミシン機枠(図示略)に対して水平移動可能に取り付けられる針棒支持体100と、この針棒支持体100のx軸方向への移動と同期して針板7及び釜9をx軸方向に移動可能とする針板・釜移動機構300と、針棒支持体100のy軸方向の移動に対応して釜9の回転速度を変化させる釜の不等速回転機構500とを備えている。なお、この針棒支持体100、針板・釜移動機構300及び釜の不等速回転機構500については、後でその詳細な構造等を述べるとして、まず、刺繍ミシン1の駆動機構について説明する。
【0028】
この刺繍ミシン1は、通常の刺繍ミシンと同様に、主軸モータ10によって上軸5を駆動することにより縫製動作を実行する構造となっている。上軸5は、図1の全体斜視図、図2の上軸部分の分解斜視図及び図3の上軸部分の拡大斜視図に示す様に、その両端を軸受11,12によってミシン機枠(図示略)に対して水平に支持されている。この主軸モータ10の回転力は、ギヤ13、タイミングベルト14及びタイミングプーリ15を介して上軸5に伝達される様になっている。また、上軸5の後端には、フレキシブルカップリング17を介してエンコーダ19が取り付けられている。さらに、上軸5には、立軸21に対して回転を伝達するための傘歯車23が固定されている。この立軸21は、軸受24,25によってミシン機枠(図示略)に対して垂直に支持されると共に、上端及び下端に傘歯車26,27を備えている。
【0029】
また、上軸5の前端には、リンク天秤31を回動運動させるための天秤クランク33が固定されている。このリンク天秤31は、天秤支え軸35によってミシン機枠(図示略)に支持されると共に、天秤クランク33に対して偏心して取り付けられる針棒クランク37を介して天秤クランク33に偏心した状態で取り付けられている。
【0030】
また、針棒クランク37には、針棒クランクロッド39の上端が取り付けられている。この針棒クランクロッド39の下端には、図4の針棒支持体部分に関する分解斜視図に示す様に、針棒抱き41が、この針棒抱きをx軸方向に水平移動させると共にy軸方向へも移動可能に支持する針棒抱き△x△yスライドシャフト43及びこの針棒抱き△x△yスライドシャフト43をz軸方向に垂直移動可能に支持する針棒ガイド45を介して取り付けられている。
【0031】
針棒ガイド45は、針棒クランクロッド39の下端の孔39aに挿入される円筒部45aと、この針棒ガイド45の垂直方向への移動をガイドする針棒ガイドスライドブロック47のガイド溝47aにスライド可能にはめ込まれる基部45bとを有している。ここで、針棒ガイドスライドブロック47は、ミシン機枠(図示略)に対して固定されるものであり、針棒ガイド45を取り付ける際の押さえ用の針棒ガイドスライドブロック調整板49によってもう一つのガイド溝を形成する様に構成されている。
【0032】
針棒抱き△x△yスライドシャフト43は、針棒ガイド45の円筒部45aにx軸方向移動可能に挿入されるシャフト43aと、針棒抱き41をy軸方向移動可能に挿入する円筒部43bとを備えている。そして、円筒部43bの上下面には、針棒3をy軸方向に移動させるための長孔43c,43dが形成されている。また、針棒抱き41は円柱状の部材によって構成されており、針棒3を挿入するための貫通孔41aを有している。そして、針棒抱き41は、針棒抱き△x△yスライドシャフト43の円筒部43bに対してy軸方向移動可能に挿入される。なお、針棒抱き41の貫通孔41aには、図示の様に、針棒抱き△x△yスライドシャフト43の長孔43c,43dを通して針棒3が挿入され、固定される。
【0033】
次に、針棒支持体100について説明する。この針棒支持体100は、図4の分解斜視図、図5,図6の拡大斜視図に示す様に、ミシン機枠(図示略)に固定される△x方向スライド板支持ブロック101と、この△x方向スライド板支持ブロック101に対してx軸方向への移動をガイドされる△xスライド板103とを備えている。
【0034】
この△xスライド板103のスライド運動をガイドするための構造として、△x方向スライド板支持ブロック101の上下の張り出し部101a,101bには、△xスライドウェイ104,105が固定されている。一方、△xスライド板103側には、これら△xスライドウェイ104,105の間にスライド可能にはめ込まれる様に同様の構成からなる△xスライドウェイ106,107が固定されている。
【0035】
また、△xスライド板103の後端中央部分には、当該△xスライド板103にx軸方向へのスライド運動を伝達するための△xスライドシャフト(以下「x方向スライド運動伝達シャフト」と呼ぶ。)111が、軸受113で水平に支持された状態にて固定されている。なお、軸受113は、ミシン機枠(図示略)に固定される。
【0036】
さらに、△xスライド板103には、y方向に伸びる第1,第2の△yスライドシャフト115,116を支持するための軸受117,118が固定されている。そして、△xスライド板支持ブロック101には、これら軸受117,118のボス部117a,118aをx方向に移動可能に挿入支持するための長孔101c,101dが形成されている。
【0037】
一方、針棒3は、針棒フレーム121によってz軸方向に上下動可能に支持されている。そして、針棒3と平行に針棒フレーム121に取り付けられる△yスライドシャフト固定軸123によって、前述の第1,第2の△yスライドシャフト115,116が針棒フレーム121に固定されている。
【0038】
また、針棒フレーム121には、前述の第1,第2の△yスライドシャフト115,116と反対側に伸びる第3の△yスライドシャフト125が、△xスライド軸127をx方向へスライド可能に支持する状態となる様に取り付けられる。なお、符号129は、第3の△yスライドシャフト125のブロック部125aに固定される軸受であって、△xスライド軸127が、第3の△yスライドシャフト125に対してスムーズにx方向にスライドできる様にこの△xスライド軸127を支持するためのものである。また、符号131は、第3の△yスライドシャフト125をy方向移動可能に支持するための軸受であり、これは、ミシン機枠(図示略)に固定されている。
【0039】
この第3の△yスライドシャフト125のブロック部125aには、x軸及びy軸に対して45度傾いて形成された長孔133aを有する△y90度方向変換ブロック133が、ネジ135を介して取り付けられる。この△y90度方向変換ブロック133の長孔133aは、後述する様に、それ自身のx方向への運動をy方向の運動に90度方向変換して上述の第3の△yスライドシャフト125のブロック部125aに伝達させるためのものである。このため、上述のネジ135は、長孔133a内を自由に移動できる様な状態に締め付け固定されている。この△y90度方向変換ブロック133には、x方向へのスライド運動を伝達するための△yスライドシャフト(以下、「y方向スライド運動伝達シャフト」とよぶ。)141が、軸受143で水平に支持された状態にて固定されている。この軸受143もミシン機枠(図示略)に固定されている。
【0040】
ここで、針棒支持体100における針棒フレーム121のx方向への移動原理について説明する。
【0041】
x方向スライド運動伝達シャフト111がx方向に±△xだけ運動すると、△xスライド板103がx方向に±△xだけ移動する。これに伴い、この△xスライド板103に軸受117,118を介して取り付けられている第1,第2の△yスライドシャフト115,116もx方向へ±△xだけ移動することになる。この結果、この第1,第2の△yスライドシャフト115,116のx方向への±△xの運動が△yスライドシャフト固定軸123に伝わり、針棒フレーム121がx方向に±△xだけ移動することになる。これに伴い、針棒3は、針棒抱き41及び針棒抱き△x△yスライドシャフト43と共にx方向に±△xだけ移動される。なお、このとき、針棒抱き△x△yスライドシャフト43のシャフト43aは、針棒フレーム121が図示の座標系における−x方向に最大量(−△xmax )だけ移動されたときに針棒ガイド45の円筒部45aから抜け出さない長さになっている。逆に、針棒フレーム121が+x方向に最大量(+△xmax )だけ移動されたときにその移動を妨げない様に、針棒3と針棒クランクロッド39との間隔が確保されている。
【0042】
次に、針棒支持体100における針棒フレーム121のy方向への移動原理について説明する。
【0043】
y方向スライド運動伝達シャフト141がx方向に±△xだけ運動すると、△y90度方向変換ブロック133がx方向に±△xだけ移動し、斜め45度の長孔133aに沿ってネジ135がy方向に±△yだけ移動されることになる。この結果、第3の△yスライドシャフト125がy方向に移動し、この運動が△xスライド軸127を介して針棒フレーム121に伝達される。従って、針棒3は、針棒フレーム121と共にy方向に±△yだけ移動することになる。このとき、針棒抱き41は、針棒抱き△x△yスライドシャフト43の円筒部43b内をy方向に移動する。なお、第1,第2の△yスライドシャフト115,116は、針棒フレーム121が−y方向に最大量(−△ymax )だけ移動したときに軸受117,118から抜け出さない長さとなっている。逆に、針棒フレーム121が+y方向に最大量(+△ymax )だけ移動したときにこれを妨げない様に、△xスライド板103と針棒フレーム121とのy方向の間隔が定められている。
【0044】
なお、ここで、針棒フレーム121は、図示の座標系において、y方向スライド運動伝達シャフト141が+x方向に+△xだけ移動するときには+y方向に同じ量(+△y=+△x)だけ移動し、逆にy方向スライド運動伝達シャフト141が−x方向に−△xだけ移動するときには−y方向に同じ量(−△y=−△x)だけ移動することになる。x方向スライド運動伝達シャフト111とy方向スライド運動伝達シャフト141が共に移動する場合も同様であって、その場合は、x方向及びy方向の合成ベクトルの方向に針棒フレーム121が斜めに移動されることになる。
【0045】
次に、x方向スライド運動伝達シャフト111及びy方向スライド運動伝達シャフト141に対してスライド運動を行わせるための機構について説明する。
【0046】
x方向スライド運動伝達シャフト111及びy方向スライド運動伝達シャフト114は、図2の分解斜視図に示した様に、上軸5の左右に配置される△x針振り用二股ロッド151及び△y針振り用二股ロッド153の一端に、0点調整機能付きの連結ピン155,157で回転自在に固定されている。そして、上軸5には、これら二股ロッド151,153に対して揺動運動を行わせるための動力伝達用としてネジ歯車161が固定されている。また、上軸5の下方には、上軸5と直交する方向に伸びる針振りカム軸163が設けられている。そして、上述のネジ歯車161は、この針振りカム軸163に固定されたネジ歯車165に噛み合わされている。なお、これらネジ歯車161とネジ歯車165のギヤ比は、上軸5が2回転する間に針振りカム軸163が1回転する関係とされている。
【0047】
各二股ロッド151,153の二股部151a,153aは、この針振りカム軸163に偏心して固定された三角形状の△x針振りカム167及び△y針振りカム169に係合されている。なお、針振りカム軸163の一端には、カム位置検出用としての半円板部材171及び近接センサ173が取り付けられる。また、符号175は、針振りカム軸セットカラーである。
【0048】
また、各二股ロッド151,153に△x方向及び△y方向の針振り運動を行わせるため、各二股ロッド151,153の二股部151a,153aの分岐点の近傍には、支え軸177,179及びナット181,183を介してそれぞれ針振りスライドブロック185,187が取り付けられる。この針振りスライドブロック185,187は、図示の様に、△x振り幅調節器189及び△y振り幅調節器191に対してガイド板193〜196で押さえられる様にして取り付けられる。各二股ロッド151,153は、各針振りカム167,169の回転に合わせて、これらそれぞれの振り幅調節器189,191のガイド溝189a,191aに沿って上下方向にスライドすることになる。なお、各振り幅調節器189,191は、その裏面に設けられる円筒軸189b,191bに表側から挿入される支え軸197,199を回動中心として角度変更可能に構成されている。この支え軸197,199は、中心線調節部材201,203を介して、ミシン機枠(図示略)に対する取付位置を調節できる様に構成されている。
【0049】
また、これらの振り幅調節器189,191の上端部分には、△x振り幅制御用ACサーボモータ205及び△y振り幅制御用ACサーボモータ207の回転軸に固定されるACサーボホーン209,211との間を連結する△x針振りリンク213及び△y針振りリンク215が固定されている。
【0050】
これら△x振り幅制御用及び△y振り幅制御用の各ACサーボモータ205,207を駆動制御して、ACサーボホーン209,211を所定角度回動させ、これら各ACサーボホーン209,211に連結されている△x及び△yの各針振りリンク213,215を介して△x振り幅調節器189及び△y振り幅調節器191の角度を変化させることにより、△x針振り用二股ロッド151及び△y針振り用二股ロッド153の各支点151b,153b(x方向スライド運動伝達シャフト111及びy方向スライド運動伝達シャフト141が取り付けられる部分)のx軸方向移動量が変化させられる。この原理について図7を用いて説明する。
【0051】
図7(A)に示す様に、各振り幅調節器189,191のガイド溝189a,191aが垂直方向(z軸方向)に向いているときは、各針振りカム167,169の回転に伴って、各二股ロッド151,153がz軸方向に上下動する。このため、実際には、図の左端の各支点151b,153bは図の左右方向に微動する。この微動量は、図のL2の長さを大きくすることによって限りなく0に近付けることができる。また、L2/L1を可能な限り1に近付けることによっても同様に、各支点151b,153bの微動量を限りなく0に近付けることができる。本実施の形態では、図7(A)の状態における支点151b,153bの微動量を限りなく0に近付けることとし、この状態を振り幅=0の状態とみなすこととする。
【0052】
次に、△x方向振り幅制御用ACサーボモータ205及び△y振り幅制御用ACサーボモータ207を駆動して△x,△yそれぞれの振り幅調節器189,191を図7(B),(C)に示す様に、角度θだけ傾かせたとする。この場合、各二股ロッド151,153は図示の様に、x方向スライド運動伝達シャフト111及びy方向スライド運動伝達シャフト141と連結される各支点151b,153bを左右に大きく移動させる運動を行う。これにより、x方向スライド運動伝達シャフト111及びy方向スライド運動伝達シャフト141がスライド運動を行い、各振り幅調節器189,191の傾き角度θに対応する所定の振り幅をもって、針棒フレーム121をx、y方向に±△x,±△yだけ水平移動させる状態が実現されることになる。
【0053】
ここで、図7(A)の状態を針振り幅=0(△x=△y=0)と定義すると、二股ロッド151,153のz軸方向の上下動作の量D=(h2−h1)L2/L1となる。従って、図7(B),(C)における左端の支点151b,153bの動作量は、下記式の様になる。
【0054】
【数1】
△x=△y=tanθ(h2−h1)L2/L1
【0055】
なお、半円板171及び近接センサ173は、上軸5が奇数回目の回転を行おうとしているのか偶数回目の回転を行おうとしているのかを判別するために設けられている。刺繍のデザインとの関係から、上軸5が奇数回目の回転を行おうとする場合と偶数回目の回転を行おうとする場合とで、△x振り幅調節器189及び△y振り幅調節器191を図7(A)の+θ側に傾かせるか−θ側に傾かせるかを変更する必要があるからである。
【0056】
以上の様にして、近接センサ173の検出信号を参照しつつ、刺繍のデザイン上決定されるステッチ幅に応じて△x振り幅制御用ACサーボモータ205及び△y振り幅制御用ACサーボモータ207を+θ側又は−θ側に振り幅調節器189,191を傾かせる様に駆動する。この結果、針棒フレーム121をx、y方向に傾き角に応じた振り幅±△x,±△yだけ水平移動させつつ針棒3がz軸方向に上下動され、所望のステッチ幅で縫い目が形成されることになる。
【0057】
次に、針板・釜移動機構300について説明する。
まず最初に、図8の下軸側についての分解斜視図及び図9の下軸側についての拡大斜視図を中心に、立軸21から釜9への回転力の伝達機構を構成する部品等について説明する。
【0058】
立軸21の下端の傘歯車27には、図3に示した様に、第1の下軸301の端部に取り付けられる傘歯車303が噛み合っている。この第1の下軸301は、傘歯車303の反対側にネジ歯車305を固定されている。そして、ミシン機枠(図示略)に対しては軸受307にて水平に支持されている。
【0059】
この第1の下軸301の正面側には、第2の下軸311が平行に配置されている。この第2の下軸311の中程には、第1の下軸301のネジ歯車305と噛み合わされるネジ歯車313が取り付けられている。ここで、ネジ歯車305として、ネジ歯車313よりも軸方向長さが長いものを採用している。これは、後述の様に、第2の下軸311をx方向に移動させたときに、二つのネジ歯車305,313の噛み合いが外れない様にするためである。また、第2の下軸311の先端には、平歯車315が固定されている。なお、第2の下軸311は、ミシン機枠(図示略)に対して、2個の軸受317,319によって回転及び軸方向スライドが自在となる様に支持されている。
【0060】
また、この第2の下軸311の下方には、さらに第3の下軸321が配置されている。この第3の下軸321は、その両端に平歯車323,325を固定されている。後端側に固定される平歯車323は、第2の下軸311の平歯車315と噛み合わされている。ここで、第3の下軸321の後端側の平歯車323は、第2の下軸311に固定された平歯車315よりも軸方向長さが長いものを採用している。これも、後述の様に、第2の下軸311をx方向に移動させたときに、二つの平歯車323,315の噛み合いが外れない様にするためである。なお、符号327は、セットカラーである。
【0061】
さらに、この第3の下軸321の上方には、第4の下軸331が配置されている。この第4の下軸331には、第3の下軸321の前端側の平歯車325と噛み合わされる平歯車333が固定されている。なお、符号335はセットカラー、符号337はスペーサーである。
【0062】
そして、この第4の下軸331の奥に、第5の下軸341が配置されている。この第5の下軸341は、第4の下軸331の平歯車333に噛み合わされる平歯車343を備えている。ここで、第4の下軸331に固定される平歯車333は、この第5の下軸に固定された平歯車343よりも軸方向長さが長いものを採用している。これは、後述の様に、第5の下軸311をx方向に移動させたときに、二つの平歯車331,343の噛み合いが外れない様にするためである。また、この第5の下軸341は、ミシン機枠(図示略)に対して軸方向スライド可能な様に軸受345,347で支持されると共に、前端に釜9が取り付けられている。
【0063】
上軸5の回転力は、傘歯車23,26によって立軸21へと伝達され、傘歯車27,303によって第1の下軸301を回転させる。そして、第1の下軸301の回転が、ネジ歯車305,313を介して第2の下軸311へと伝達される。さらに、この第2の下軸311の回転は、平歯車315,323を介して第3の下軸321へと伝達される。そして、第3の下軸321の回転が、平歯車325,333を介して第4の下軸331に伝達され、さらに、平歯車333,343を介して第5の下軸341へと伝達される。こうして、上軸5の回転力が釜9へと伝達される。
【0064】
次に、針板7及び釜9をx軸方向に移動させるための機構について説明する。この機構を実現するため、まず、第5の下軸341には釜9の直後の位置に2枚の円板349,351が設けられている。この2枚の円板349,351の隙間には、針板7を固定した△xスライドユニット361の足部363,365に固着されるローラ部材367,369が挿入される様になっている。また、△xスライドユニット361の足部363,365には、この円板349,351を取り囲む様に下側ブロック371が固定される。そして、△xスライドユニット361及び下側ブロック371には、それぞれ、x軸方向のスライドが可能な様にスライドユニット軸373,375が挿通されている。これらスライドユニット軸373,375は、ミシン機枠(図示略)に対して水平に固定されている。なお、符号377は内釜止めである。
【0065】
そして、既に述べた様に、第5の下軸341はx軸方向へのスライドが可能な様にミシン機枠(図示略)に固定されており、その後端には、溝付き部材381が固定されている。この溝付き部材381には、振り子軸383を中心として、針棒フレーム121の△x方向への往復動と連動して揺動される△x運動対応振り子部材385の上方腕387,389に固定されるローラ部材391,393がはめ込まれる様になっている。
【0066】
この△x運動対応振り子部材385の下端部395には、x方向の振り幅△xに対応した運動を伝達するための下側連結リンク397の一端397aが連結ピン401を介して連結されている。そして、この下側連結リンク397の他端397bが、連結ピン403を介して垂直方向に伸びる垂直連結リンク405の下端405aに連結されている。
【0067】
この垂直連結リンク405は、図8,図9に示した様に、その中程の支え孔405bを中心に回動可能な様に、支え軸407を介してミシン機枠(図示略)に支持されている。そして、図2の分解斜視図から理解できる様に、この垂直連結リンク405の上端405cには、△x針振り用二股ロッド151に対して一端409aを連結され、針棒フレーム121の△x方向の運動に同期して△x方向の運動を垂直連結リンク405に伝達するための△x運動伝達用連結ロッド409の他端409bが連結ピン411を用いて連結されている。
【0068】
以上の構成により、△x針振り用二股ロッド151においてその支点151bがx軸方向に±△xだけ移動すると、△x運動伝達用連結ロッド409が同方向に±△xだけ移動する。この結果、垂直連結リンク405は、△x運動伝達用連結ロッド409の移動に伴って、その下端405aを△x針振り用二股ロッド151の移動方向とは反対方向に移動させる様に回動される。すると、今度は、下側連結リンク397がこの垂直連結リンク405の下端405aの移動方向に移動することになる。この結果、△x運動対応振り子部材385は、その上方腕387,389を△x針振り用二股ロッド151の移動方向と同方向に回動させる。よって、△x針振り用二股ロッド151において針棒フレーム121をx方向に移動させる動作が行われると、△x運動対応振り子部材385が回動運動を行い、第5の下軸341を針棒フレーム121と同じ方向にx軸に沿って±△xだけ移動させる動作が実行される。本実施の形態においては、垂直連結リンク405の長さや回動中心の位置関係、△x運動対応振り子部材385の大きさ等を適切に定めることにより、針棒フレーム121のx軸方向の移動量△xと同じ量だけ、第5の下軸341をx軸に沿って針棒フレーム121の移動方向と同方向に移動させる様に設計してあるものとする。
【0069】
次に、釜の不等速回転機構500について説明する。
この釜の不等速回転機構500の主要な構成としては、図8,図9に示す様に、第2の下軸311の後端に固定した溝付き部材501に、振り子軸503を中心として、針棒フレーム121の△y方向への往復動と連動して揺動される△y運動対応振り子部材505の上方腕507,509に固定されるローラ部材511,513がはめ込まれる様になっている。
【0070】
この振り子部材505の上部に正面側に張り出す様に設けられたブロック515には、△y針振り運動を△y運動対応振り子部材505に伝達するための下側連結リンク517の一端517aが連結ピン519を介して連結されている。そして、この△y針振り運動伝達用の下側連結リンク517の他端517bが、連結ピン521を介して垂直方向に伸びる△y針振り運動伝達用の垂直連結リンク523の下端523aに連結されている。
【0071】
この垂直連結リンク523は、図8,図9に示した様に、その中程の支え孔523bを中心に回動可能な様に、支え軸525を介してミシン機枠(図示略)に支持されている。そして、この垂直連結リンク523の上端523cには、図2に示した様に、△y針振り用二股ロッド153に対して一端531aを連結され、針棒フレーム121の△y方向の運動に同期して△x方向に運動し、この△x方向の運動を垂直連結リンク523に伝達する△y運動伝達用連結ロッド531の他端531bが連結ピン533を用いて連結されている。
【0072】
以上の構成により、△y針振り用二股ロッド153においてその支点153bがx軸方向に移動すると、△y運動伝達用連結ロッド531が△y針振り用二股ロッド153と同方向に移動する。なお、このとき、既に述べた様に△y90度方向変換ブロック133とネジ135の作用により、針棒フレーム121は△y方向の運動を行う。従って、この△y運動伝達用連結ロッド531の△x方向への運動は、針棒フレーム121の△y方向への運動と連動した動きとなっている。そして、垂直連結リンク523は、△y運動伝達用連結ロッド531の移動に伴って、その下端523aを△y針振り用二股ロッド153の移動方向とは反対方向に移動させる様に回動される。すると、今度は、下側連結リンク517がこの垂直連結リンク523の下端523aの移動方向に移動することになる。この結果、△y運動対応振り子部材505は、その上方腕507,509を△y針振り用二股ロッド153の移動方向と反対方向に回動させる。
【0073】
よって、△y針振り用二股ロッド153において針棒フレーム121を+y方向に移動させる動作が行われると、△y運動対応振り子部材515が回動運動を行い、第2の下軸311を−x方向に移動させる動作が実行される。この結果、ネジ歯車305,313の噛み合い関係において、第2の下軸311の回転角度が進められながら回転が伝達される状態となり、釜9の回転において剣先で糸を引っかけるタイミングが強制的に早められる状態になる。逆に、△y針振り用二股ロッド153において針棒フレーム121を−y方向に移動させる動作が行われると、△y運動対応振り子部材515が回動運動を行い、第2の下軸311を+x方向に移動させる動作が実行される。この結果、ネジ歯車305,313の噛み合い関係において、第2の下軸311の回転角度が戻されながら回転が伝達される状態となり、釜9の回転において剣先で糸を引っかけるタイミングが強制的に遅らされる状態になる。
【0074】
この様に釜9の回転速度を針棒フレーム121のy方向への移動量±△yに対応させて変化させるのは、次の理由による。
【0075】
まず、釜9の回転速度を変化させない場合にどのような問題が発生するかを説明する。図10(A)に示す様に、y方向移動量△y=0の場合に針4のえぐり4aの中心部分に剣先がちょうどよいタイミングで出会う様に、針棒3のz軸方向の上下動と釜9の剣先の位置との関係が調節されている。このため、針棒フレーム121を+△y方向に最大量(本実施の形態では±△xmax =±△ymax =±6.35mm)移動させたときは、剣先が針4の位置を通過するときには針4は△y=0の場合よりも上昇した状態となり、えぐり4aの下を剣先が通過することとなってしまう。よって、上糸を剣先ですくい取ることができなくなってしまうのである。
【0076】
一方、上述の様に釜9の回転速度を可変とすることにより、図10(B)に示す様に、+y方向に針棒フレーム121を移動させたときにはその移動量+△yに見合った所定角度だけ釜9の回転角度を進め、逆に、−y方向に針棒フレーム121を移動させたときにはその移動量−△yに見合った所定角度だけ釜9の回転角度を遅らせることにより、針4が下死点から一定量上昇したときに釜9の剣先と針4とをえぐり4aの範囲内で出会わせることができる。
【0077】
この関係をタイミングチャートに示したのが図11である。図示(A),(B)の様に、天秤31及び針棒3は上軸5の1回転に1回の割合で上下運動を行っている。そして、y方向の振り幅△y=0の場合には、図示(C)の様に、針棒3が下死点から所定量上昇したときに釜9の剣先が0度の位置を通過することで針糸を的確にすくい取ることができる様に設定しておく(矢印A参照)。一方、針棒フレーム121を+y方向に移動させたとき(図11の例は+△y=+△ymax =+6.35mm)、図示(D)の様に、釜9の剣先が0度をさらに所定角度だけ越えた位置まで回転したときに針4と出会う様に設定する(矢印B参照)。これが、針棒フレーム121を+y方向に移動したときに釜9の回転角度を強制的に進ませながら釜9を回転させる理由である。また、針棒フレーム121を−y方向に移動させたとき(図11の例は−△y=−△ymax =−6.35mm)、図示(E)の様に、釜9の剣先が0度より所定角度だけ手前の位置まで回転したときに針4と出会う様に設定する(矢印C参照)。これが、針棒フレーム121を−y方向に移動したときに釜9の回転角度を強制的に遅らせながら釜9を回転させる理由である。
【0078】
本実施の形態においては、以上の様にして釜9の回転速度を可変とすることで、y方向に針棒3を移動させても確実に縫い目が形成できる様にしている。なお、この針棒3のy方向移動に対応して、図1等に示してある様に、針板7の針孔7aはy方向の最大振り幅(本実施の形態では12.7mm)に対して針4と針板7とが衝突することのない長さを有してy方向に伸びる長孔とされている。
【0079】
次に、本実施の形態の刺繍ミシン1における制御系について説明する。
この刺繍ミシン1の制御系は、図12に示す様に、マイクロコンピュータ601を中心に構成されている。このマイクロコンピュータ601は、CPU,ROM,RAM等を備え、予めROMに記憶されている制御プログラムに従って、刺繍を実行する。このマイクロコンピュータ601には、主要な機器として刺繍データを入力するための刺繍データ入力装置603、上軸5の回転制御と刺繍枠のX軸及びY軸方向の駆動制御をするためのエンコーダ19、針振りカム167,169の位置検出用の近接センサ173、主軸モータ10、△x方向の振り幅を調節するための△x振り幅制御用ACサーボモータ205、△y方向の振り幅を調節するための△y振り幅制御用ACサーボモータ207及び刺繍枠(図示略)をミシン機枠に対してXY方向に移動させるための刺繍枠駆動装置605が接続されている。ここで、以下の説明において、X,Y又は△X,△Yと大文字のアルファベットで記載されているデータは、刺繍枠に対する制御データを意味し、△x,△yと小文字のアルファベットで記載されているデータは、針棒3の振り幅に関するデータを意味する。
【0080】
刺繍データ入力装置603は、例えば、図13(A)に示す様な刺繍を行う場合、刺繍枠駆動用XデータとYデータ、振り幅用xデータとyデータ、さらに、停止、糸切り、糸替え等のファンクションとで構成されているデータを入力するものである。ここでは、ファンクションの説明は省略し、刺繍模様生成に関してのみ説明をする。このデータは、図14に示す様に、刺繍開始位置を座標の原点(0,0)とした相対座標での△Xデータ、△Yデータと、この刺繍枠駆動用データの座標位置を原点としたときの振り幅である△xデータ、△yデータとによって刺繍模様を生成するよう構成されている。
【0081】
本実施の形態では、こうした一針データの入力に基づいて、マイクロコンピュータ601が、図15に示す様な演算処理を行うことにより、刺繍枠駆動装置605に対する制御データと、各振り幅制御用ACサーボモータ205,207に対する制御データとを算出し、刺繍を実行する様に構成されている。
【0082】
この処理では、まず、刺繍データ入力装置603から入力される刺繍データを読み込む(S10)。こうして読み込まれたデータは、前述の様に、刺繍枠駆動装置605の駆動制御に必要な△Xデータ及び△Yデータと、振り幅調節に必要な△xデータ及び△yデータによって構成されている。次のステップでは、S10で読み込んだ刺繍データの内、振り幅調節用の△xデータ及び△yデータに基づいて、各振り幅制御用ACサーボモータ205,207に対して指令すべきモータ駆動量を算出する(S20)。
【0083】
このS20のステップにおける演算では、各振り幅調節器189,191を傾かせる角度と、x方向及びy方向の振り幅の半幅に相当する△xデータ、△yデータとの関係を対応付けたテーブル等を、マイクロコンピュータ601内のROM等に予め記憶させておき、このテーブルを、S10のステップで読み込んだ△xデータ及び△yデータに基づいて参照することにより、各振り幅制御用ACサーボモータ205,207の駆動量を算出するようにしておけばよい。
【0084】
なお、本実施の形態では、各針振り幅調節器185,191の傾斜角度θと振り幅△x,△yの関係は既に述べた数1の関係となっている。従って、振り幅△x,△yが決まれば、各振り量幅調節器185,191の傾斜角度θを逆算することができる。そして、傾斜角度θと各ACサーボモータ205,207に取り付けられたACサーボホーン209,211の傾斜角度の関係を幾何学的に求めることにより、各ACサーボモータ205,207の駆動量を決定することができる。こうして振り幅△x,△yに対して各ACサーボモータ205,207の駆動量を求めた結果を予めテーブル化しておくことができるのである。また、S20の処理において、こうしたテーブルを用いずに、S10で読み込んだ振り幅△x,△yと数1の式から傾斜角度θを逆算し、この傾斜角度θだけ各振り幅調節器185,194を傾かせるのに必要な各ACサーボモータ205,207の駆動量を計算によって求める構成としておいてもよい。
【0085】
こうして、刺繍枠駆動装置605に対する制御データ△X,△Yと、針の振り幅の半幅に相当する△x,△yに対応する各ACサーボモータ205,207の駆動量が算出できたら、この算出結果に従って、各ACサーボモータ205,207に対する駆動制御(S30)、刺繍枠駆動装置605に対する駆動制御(S40)及び主軸モータ10の駆動制御を実行する(S50)。
【0086】
この結果、通常の刺繍ミシンであれば、刺繍枠を、図13(A)に示した各針落ち点P1,P2,P3,・・・が針棒3の真下に来るように、上軸5の1回転毎に大きくジグザグ運動をさせながら刺繍を実行していたのに対し、本実施の形態では、刺繍枠は、上軸5の1回転に1回の割合で、図13(B)に矢印で示す様に、振り幅の中点を通る線分上において、点M1,M2,M3,・・・の間を直線的に移動させるだけでよく、その移動量はサテンステッチにおけるピッチ(通常の刺繍機で糸密度と称している)の1/2に相当するわずかな量となる。
【0087】
この様に、刺繍枠の移動量は通常の刺繍ミシンの場合に比べて極めてわずかであるから、速やかにその移動を完了することができる上に、上述の例では+△xから−△xと、+△yから−△yまで針棒3をx,y方向に振るための駆動力は、主軸モータ10によって回転駆動される上軸5の回転力が動力として利用される構成となっているので、振り幅の大きい縫い目による刺繍を実行する場合であっても、主軸モータ10の回転速度を落とさなくてよい。
【0088】
図16は、本実施の形態の刺繍ミシンによって様々な刺繍模様を縫い上げる場合の枠の移動方向や針振り幅の関係を示すものである。例えば、上述の様に、X軸方向に刺繍枠を移動させながら振り幅2aで刺繍を実行するならば、マイクロコンピュータ601には、△x=0、△y=aとしてx、y方向の振り幅の半幅が与えられ、これに従ってACサーボモータ207を所定角度回転させると共に、刺繍枠駆動装置605を糸密度に相当する量だけ直線的に移動・停止させる制御を行うことにより、図16(A)に示す様な刺繍が実行されることになる。また、同じくx軸に沿って振り幅を0から徐々に大きくして再び0に戻す様な一針データが入力された場合には、刺繍枠は糸密度に従って上軸5の2回転に1回の割合でX軸に沿って少しずつ移動され、△y振り幅調節器191の角度を0度から徐々に大きくしていき再び0度に戻す制御が実行されることになり、図16(B)に示す様な模様の刺繍縫いを、主軸モータ10の回転速度を低下させることなく実行することもできる。さらに、同一の振り幅で円弧を描く様なサテンステッチの場合には、この円弧を描く刺繍模様の中点に沿って上軸5の1回転に1回の割合で刺繍枠が少しずつ糸密度の1/2に対応する量だけ移動され、その間に、各振り幅調節器189,191の角度を1回の針落ち毎に少しずつ変化させる様に各ACサーボモータ205,207を駆動制御することで、図16(C)に示す様な刺繍についても、やはり、主軸モータ10の回転速度を落とすことなく実行することができる。
【0089】
図16(D)に示すような刺繍を行う場合には、所定の刺繍を実行した後、次の刺繍を開始するときの縫い始めの針落ち点を刺繍の中心線に対してどちら方向にとりたいかにより、近接センサ173の検出信号に応じて△y振り幅調節器191の傾き角度θを+θからーθ、あるいは所定の最初の刺繍が−θで行われていれば−θから+θにすることにより刺繍することができる。θが同じで符号も同じであれば、図16(E)に示す刺繍となる。
【0090】
以上説明した様に、本実施の形態の刺繍ミシン1によれば、針棒支持体100をxy方向に移動させることにより、刺繍枠をサテンステッチの中点を通る軌跡に沿って少しずつなめらかに移動させるだけで、刺繍枠に過酷な往復運動を加えることなくサテンステッチ刺繍を実行することができる。このとき、刺繍枠の移動量は糸密度(通常は0.4mm〜0.5mm)に応じた量の1/2となるので、刺繍枠の移動に要する時間は極短時間となる。また、各振り幅調節器189,191の傾き角度を各ACサーボモータ205,207によって調節するだけで針の振り幅を調節することができるので、針棒支持体100をxy方向に移動させるために主軸モータ10の回転速度を下げる必要がない。従って、主軸モータ10の回転速度を高速に保ったままで各種の模様を刺繍することができる。
【0091】
また、上述の様に、刺繍枠の移動量がごくわずかであることから、主軸モータ10を高速回転させながら刺繍を行う場合であっても、刺繍枠の移動速度を大きくしなくてよい。このことから、刺繍を施す被縫製物が重い物の場合に、刺繍枠の移動停止を繰り返す中で、この被縫製物を含む刺繍枠全体に作用する慣性力は小さなものとなる。よって、刺繍の実行途中で被縫製物が刺繍枠から外れてしまうといった事態を引き起こすことがない。この結果、従来は上軸の回転速度を極低速にしなければ実施できなかった皮革の様な重い被縫製物への刺繍を、上軸の回転速度を十分に高速に保ったままで実行することができるという効果も発揮される。
【0092】
また、釜9の回転速度をy方向の針4の振り幅△yに応じて可変とする釜回転角度可変機構500を採用したので、y方向に大きく針4を振っても縫い目形成に失敗することがない。
【0093】
さらに、針4は、刺繍される布地などの被縫製物に対して常に垂直に作用するので、無理な力が加わらず、厚い布や皮革などを被縫製物して刺繍を行う場合にも何ら支障を来さない。
【0094】
以上、本発明の一実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる態様にて実施することが可能である。
【0095】
例えば、上述の実施の形態では、専用データとして△X、△Yと△x、△yとファンクションとからなるデータを入力して刺繍する構成としたが、例えば、△x、△yのデータを、△xと△yのベクトル表現のデータとしてもよい。
【0096】
また、従来より蓄積されている一針データを有効に利用することも可能である。例えば、刺繍データ入力装置603を、図17(A)に示す様な刺繍を行う場合に、各針落ち点P1,P2,・・・の一針データを入力するものとして構成する。この一針データは、例えば、図18(A)に示す様な位置座標データX,Y又は図18(B)に示す様な座標原点からの座標増分値△X,△Yによって構成されている。現在実用化されている通常の刺繍ミシンにおいては、こうした一針データに基づいて刺繍枠をジグザグに大きく移動させながら刺繍を実行する。なお、以下の処理に関する説明では、図18(A)の形式で一針データが入力されるものとして説明を行う。
【0097】
この変形例では、こうした一針データの入力に基づいて、マイクロコンピュータ601が、図19に示す様な演算処理を行うことにより、刺繍枠駆動装置605に対する制御データと各ACサーボモータ205,207に対する制御データとを算出し、刺繍を実行する様に構成されている。
【0098】
この処理では、まず、刺繍データ入力装置603から入力される一針データP1,P2,P3,・・・を読み込む(S110)。そして、この一針データP1,P2,P3,・・・の中で、奇数番目の一針データP1,P3,P5,・・・同士の座標値から、刺繍枠駆動装置605に対する制御データとして、座標増分値△X,△Yを演算する(S120)。また、S110で読み込んだ一針データP1,P2,P3,・・・に基づき、奇数番目の針落ち点P1,P3,・・・と偶数番目の針落ち点P2,P4,・・・の各中点M1(P1とP2の中点),M2(P3とP4の中点),・・・の座標を算出する(S130)。そして、次に、奇数番目の針落ち点P1,P3,P5,・・・と、各中点M1,M2,M3,・・・との座標値の差を求めることにより、針振り幅の半幅である△x,△yを算出する(S140)。図17(A)及び図18(A)に示される例では、x方向の針振り幅の半幅△xは0となり、y方向の針振り幅の半幅△yとしてある値が算出されることになる。
【0099】
次に、この△x,△yの算出結果に従って、各ACサーボモータ205,207の駆動量を算出する(S150)。このACサーボモータ205,207の駆動量算出に当たっては、前述の実施の形態におけるS20の演算処理と同様にしておけばよい。
【0100】
こうして、刺繍枠駆動装置605に対する制御データ△X,△Yと、針の振り幅の半幅に相当する△x,△yに対応する各ACサーボモータ205,207の駆動量が算出できたら、この算出結果に従って、各ACサーボモータ205,207に対する駆動制御(S160)、刺繍枠駆動装置605に対する駆動制御(S170)及び主軸モータ10の駆動制御を実行する(S180)。
【0101】
この結果、通常の刺繍ミシンであれば、刺繍枠を、図17(A)に示した各針落ち点P1,P2,P3,・・・が針棒3の真下に来るように、上軸5の1回転毎に大きくジグザグ運動をさせながら刺繍を実行していたのに対し、本実施の形態では、刺繍枠は、上軸5の1回転に1回の割合で、図17(B)に矢印で示す様に、振り幅の中点M1,M2,M3,・・・を通る線分上において、各針落ち点の中点M1,M2,M3,・・・の間を直線的に移動させるだけで、図17(C)に示す様に+△yから−△yまで針棒がy方向に振られ、針の振り幅を大きくした刺繍模様を縫い上げる場合にも刺繍枠に過酷な運動をさせることがなく、上述の実施の形態と同様の効果を発揮することができる。
【0102】
【発明の効果】
本発明の刺繍ミシンによれば、針棒をxy方向に移動させながら刺繍を実行させる刺繍ミシンにおいて、針棒をz軸方向に垂直に上下動させつつ針棒をxy方向に移動させることができるので、皮革等の厚手の被縫製物に対しても無理なく刺繍を施すことができ、かつ、針と剣先の出会いのタイミングを容易に合わせることもできる。そして、刺繍枠はステッチの中心を通る軌跡を描く様に移動させるだけでよく、しかも刺繍枠の移動量は糸密度あるいはその1/2といった様に極めてわずかな移動量で足りるので刺繍の高速化を図ることができる。
【0103】
特に、本発明の刺繍ミシンにおいては、針棒をxy方向に移動させる駆動力を上軸の回転から得ているので、上軸の回転速度を振り幅に制限されることなく刺繍を実行することができる。
【0104】
加えて、刺繍枠の移動量及び移動速度は小さくてよいので、皮革等の重い被縫製物に刺繍を施す場合に、この被縫製物が刺繍枠の移動停止時の慣性力によってその支持機構から外れてしまうといった不具合も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態の刺繍ミシンの駆動機構全体の斜視図である。
【図2】 実施の形態における上軸部分の分解斜視図である。
【図3】 実施の形態における上軸部分の拡大斜視図せある。
【図4】 実施の形態における針棒支持体の分解斜視図である。
【図5】 実施の形態における針棒支持体の拡大斜視図である。
【図6】 針棒支持体の拡大斜視図を示し、(A)は背面側から見た斜視図、(B)は正面側から見た斜視図である。
【図7】 実施の形態における針振り量調節器を傾かせることによる二股ロッドの左右方向移動原理を示す説明図である。
【図8】 実施の形態における下軸側についての分解斜視図である。
【図9】 実施の形態における下軸側についての拡大斜視図である。
【図10】 実施の形態における釜の回転速度を可変とする理由及び可変とした場合の剣先と針との出会いの関係を示す説明図である。
【図11】 実施の形態における剣先と針との出会いの関係を示すタイミングチャートである。
【図12】 実施の形態における制御系のブロック図である。
【図13】 実施の形態における刺繍データを示す模式図である。
【図14】 実施の形態における刺繍データを示す説明図である。
【図15】 実施の形態における刺繍実行処理の概略手順を示すフローチャートである。
【図16】 実施の形態における刺繍例を示す説明図である。
【図17】 変形例における刺繍データを示す模式図である。
【図18】 変形例における刺繍データを示す説明図である。
【図19】 変形例における刺繍実行処理の概略手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1・・・刺繍ミシン、3・・・針棒、4・・・針、4a・・・えぐり、5・・・上軸、7・・・針板、7a・・・針孔、9・・・釜、10・・・主軸モータ、11,12,24,25・・・軸受、21・・・立軸、23,26,27・・・傘歯車、31・・・リンク天秤、39・・・針棒クランクロッド、41・・・針棒抱き、43・・・針棒抱き△x△yスライドシャフト、45・・・針棒ガイド、47・・・針棒ガイドスライドブロック、100・・・針棒支持体、101・・・△x方向スライド板支持ブロック、103・・・△xスライド板、104,105,106,107・・・△xスライドウェイ、111・・・△xスライドシャフト(x方向スライド運動伝達シャフト)、113,117,118,129,131,143・・・軸受、115・・・第1の△yスライドシャフト、116・・・第2の△yスライドシャフト、121・・・針棒フレーム、123・・・△yスライドシャフト固定軸、125・・・第3の△yスライドシャフト、125a・・・ブロック部、127・・・△xスライド軸、133・・・△y90度方向変換ブロック、133a・・・長孔、135・・・ネジ、141・・・△yスライドシャフト(y方向スライド運動伝達シャフト)、151・・・△x針振り用二股ロッド、153・・・△y針振り用二股ロッド、151a,153a・・・二股部、151b,153b・・・支点、155,157・・・連結ピン、161,165・・・ネジ歯車、163・・・針振りカム軸、167・・・△x針振りカム、169・・・△y針振りカム、173・・・近接センサ、185,187・・・針振りスライドブロック、189・・・△x針振り量調節器、191・・・△y針振り量調節器、189a,191a・・・ガイド溝、205・・・△x針振り量制御用ACサーボモータ、207・・・△y針振り量制御用ACサーボモータ、209,211・・・ACサーボホーン、213・・・△x針振りリンク、215・・・△y針振りリンク、300・・・針板・釜移動機構、301・・・第1の下軸、303・・・傘歯車、305・・・ネジ歯車、307・・・軸受、311・・・第2の下軸、313・・・ネジ歯車、315・・・平歯車、317,319・・・軸受、321・・・第3の下軸、323,325・・・平歯車、331・・・第4の下軸、333・・・平歯車、341・・・第5の下軸、343・・・平歯車、345,347・・・軸受、361・・・△xスライドユニット、371・・・下側ブロック、373,375・・・スライドユニット軸、377・・・内釜止め、381・・・溝付き部材、383・・・振り子軸、385・・・△x運動対応振り子部材、397・・・下側連結リンク、405・・・垂直連結リンク、409・・・△x運動伝達用連結ロッド、500・・・釜の不等速回転機構、501・・・溝付き部材、503・・・振り子軸、505・・・△y運動対応振り子部材、517・・・下側連結リンク、519,521・・・連結ピン、523・・・垂直連結リンク、531・・・△y運動伝達用連結ロッド、531a・・・一端、601・・・マイクロコンピュータ、603・・・刺繍データ入力装置、605・・・刺繍枠駆動装置。

Claims (9)

  1. 上軸の回転に連動してz軸方向に上下動される針棒と、
    該針棒を前記z軸方向上下動可能に支持したままで、前記z軸に直交するxy平面に沿って任意の方向に水平移動可能な様にミシン機枠に支持されている針棒支持体と、
    前記針棒がz軸方向の上下動を2回実行する間に、前記上軸の回転を駆動力として、前記針棒支持体を前記xy平面に沿って1回往復動させ得る針棒支持体往復動部材と、
    該針棒支持体往復動部材による前記針棒支持体の前記往復動に連動して、上糸と下糸との縫合が成立する様に、針板及び下糸用の釜と針との出会いの位置及びタイミングを調整する出会い調整機構と
    を備える刺繍ミシン。
  2. 請求項1記載の刺繍ミシンにおいて、前記x軸を上軸に沿う方向とするとき、
    前記針棒支持体が、ミシン機枠に対してx軸方向スライド可能に支持される第1のスライド部材と、該第1のスライド部材に対してy軸方向スライド可能に支持される第2のスライド部材とを有し、
    該第2のスライド部材に対して前記針棒をz軸方向上下動可能に支持させると共に、
    前記針棒支持体往復動部材が、前記上軸の回転によって駆動され、前記第1のスライド部材をx軸方向に往復動させるx方向往復動部材と、前記上軸の回転によって駆動され、前記第2のスライド部材をy軸方向に往復動させるy方向往復動部材とによって構成されていること
    を特徴とする刺繍ミシン。
  3. 請求項2記載の刺繍ミシンにおいて、
    前記第2のスライド部材を、
    前記上軸の回転をz軸方向の運動に変換する針棒クランクロッドに対して、x軸方向移動可能に係合支持される針棒抱き支持部材と、
    該針棒抱き支持部材に対して、前記針棒を固定した状態においてy軸方向移動可能に係合支持される針棒抱きと、
    該針棒抱きに固定された前記針棒をz軸方向移動可能に支持する針棒フレームと
    によって構成することを特徴とする刺繍ミシン。
  4. 請求項3記載の刺繍ミシンにおいて、
    前記x方向往復動部材を、それ自体のx軸方向の往復運動を前記第1のスライド部材に伝達することにより、該第1のスライド部材をx軸方向に往復動させる部材として構成し、
    前記針棒フレームに、
    x軸方向に伸びる様に固定される支軸に対してスライド可能に取り付けられると共に、それ自体からy軸方向に伸びるシャフトによってy軸方向移動可能にミシン機枠に支持されるスライドブロックと、
    該スライドブロックに対して、x軸及びy軸に対して斜めに形成された長孔を介して係合され、それ自体がx軸方向に移動するとき、前記スライドブロックをy軸方向に移動させる方向変換ブロックとを備えさせ、
    前記y方向往復動部材を、それ自体のx軸方向の往復運動を前記方向変換ブロックに伝達することにより、前記第2のスライド部材をy軸方向に往復動させる部材として構成すること
    を特徴とする刺繍ミシン。
  5. 請求項4記載の刺繍ミシンにおいて、
    前記x方向往復動部材を、
    前記上軸の2回転に1回の割合で回転する第1の偏心カムと、
    該第1の偏心カムに一端を係合されると共に他端を前記第1のスライド部材に連結される第1の連結部材と、
    前記第1の偏心カムによる前記第1の連結部材の運動をガイドし、該第1の連結部材の運動方向を変化させて前記第1のスライド部材のx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のx軸方向の針振り幅を調節するx方向針振り幅調節部材とによって構成し、
    前記y方向往復動部材を、
    前記上軸の2回転に1回の割合で回転する第2の偏心カムと、
    該第2の偏心カムに一端を係合されると共に他端を前記方向変換ブロックに連結される第2の連結部材と、
    前記第2の偏心カムによる前記第2の連結部材の運動をガイドし、該第2の連結部材の運動方向を変化させて前記方向変換ブロックのx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のy軸方向の針振り幅を調節するy方向針振り幅調節部材とによって構成すること
    を特徴とする刺繍ミシン。
  6. 請求項5記載の刺繍ミシンにおいて、
    前記x方向針振り幅調節部材を、第1のACサーボモータによって傾き角を変化させられることにより、該傾き角の変化に応じて前記第1の連結部材のガイド方向を変化させてx軸方向の針の振り幅を調節する部材として構成し、
    前記y方向針振り幅調節部材を、第2のACサーボモータによって傾き角を変化させられることにより、該傾き角の変化に応じて前記第2の連結部材のガイド方向を変化させてy軸方向の針の振り幅を調節する部材として構成すること
    を特徴とする刺繍ミシン。
  7. 請求項2〜請求項6のいずれか記載の刺繍ミシンにおいて、
    前記出会い調整機構を、
    前記x方向往復動部材と連係され、該x方向往復動部材による前記針棒支持体の往復動に同期して針板及び下糸用の釜をx軸方向に往復動させる針板・釜移動機構と、
    前記y方向往復動部材と連係され、該y方向往復動部材による前記針棒支持体の往復動に同期して前記釜の回転角度を強制的に変化させることにより、上下の糸の縫合が成立する様に、該釜の剣先を針のえぐりの範囲内で該針と出会わせる様に、該剣先と該針との出会いのタイミングを調整する釜の不等速回転機構と、
    前記針板に形成され、前記y軸方向に伸びる長孔からなる針孔と
    によって構成することを特徴とする刺繍ミシン。
  8. 請求項7記載の刺繍ミシンにおいて、
    前記上軸の回転を伝達されると共に第1のネジ歯車を有する第1の下軸と、
    該第1のネジ歯車に係合する第2のネジ歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能に支持された第2の下軸と、
    該第2の下軸に取り付けられる第1の平歯車と係合する第2の平歯車を有する第3の下軸と、
    該第3の下軸に取り付けられる第3の平歯車と係合する第4の平歯車を有する第4の下軸と、
    前記第4の平歯車に係合する第5の平歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能で、下糸用の釜を先端に固定されると共に前記針板とx軸方向に一体的に移動可能に係合された第5の下軸とを備え、
    前記針板・釜移動機構を、リンク機構を介して前記x方向往復動部材と連係され、前記第4,第5の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のx軸方向移動に対して前記第5の下軸を同じ量だけ同じ方向に移動させる手段として構成し、
    前記釜の不等速回転機構を、リンク機構を介して前記y方向往復動部材と連係され、前記第1,第2のネジ歯車及び前記第1,第2の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のy軸方向の移動量に応じて前記第2の下軸をx軸方向に移動させる手段として構成すること
    を特徴とする刺繍ミシン。
  9. 主軸モータによって回転される上軸と、
    該上軸の先端に取り付けられ、該上軸の回転をz軸方向の上下運動に変換する針棒クランクロッドと、
    該針棒クランクロッドに対して、上軸に沿うx軸方向に移動可能に係合支持される針棒抱き支持部材と、
    該針棒抱き支持部材に対して、前記針棒を固定した状態においてy軸方向移動可能に係合支持される針棒抱きと、
    該針棒抱きに固定される前記針棒をz軸方向に上下動可能に支持する針棒フレームと、
    該針棒フレームをy軸方向移動可能に支持すると共に、自らはミシン機枠に対してx軸方向移動可能に支持される第1のスライド部材と、
    前記針棒フレームにx軸方向に伸びる様に固定される支軸に対してスライド可能に取り付けられると共に、それ自体からy軸方向に伸びるシャフトによってy軸方向移動可能にミシン機枠に支持されたスライドブロックと、
    該スライドブロックに対して、x軸及びy軸に対して斜めに形成された長孔を介して係合され、それ自体がx軸方向に移動するとき、前記スライドブロックをy軸方向に移動させる方向変換ブロックと、
    前記上軸に固定された第1のネジ歯車と、
    該第1のネジ歯車に係合する第2のネジ歯車を有し、前記上軸の2回転に1回転の割合で回転する様に前記上軸に直交して配置されるカム軸と、
    該カム軸に取り付けられる第1の偏心カムと、
    該第1の偏心カムに係合する二股部を一端に有し、他端に前記第1のスライド部材に連結される第1の運動伝達シャフトを有する第1の二股ロッドと、
    前記第1の偏心カムによる前記第1の二股ロッドの運動をガイドし、該第1の二股ロッドの運動方向を変化させることにより、前記第1の運動伝達シャフトにより伝達される前記第1のスライド部材のx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のx軸方向の針振り幅を調節するx方向針振り幅調節部材と、
    該x軸方向針振り量調節部材の傾き角度を変化させる第1のACサーボモータと、
    前記カム軸に取り付けられる第2の偏心カムと、
    該第2の偏心カムに係合する二股部を一端に有し、他端に前記方向変換ブロックに連結される第2の運動伝達シャフトを有する第2の二股ロッドと、
    前記第2の偏心カムによる前記第2の二股ロッドの運動をガイドし、該第2の二股ロッドの運動方向を変化させることにより、前記第2の運動伝達シャフトによる前記方向変換ブロックのx軸方向の運動量を調節することにより、前記針棒のy軸方向の針振り幅を調節するy方向針振り幅調節部材と、
    該y方向針振り幅調節部材の傾き角度を変化させる第2のACサーボモータと、
    前記上軸の回転を伝達されると共に第3のネジ歯車を有する第1の下軸と、
    該第3のネジ歯車に係合する第4のネジ歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能に支持された第2の下軸と、
    該第2の下軸に取り付けられる第1の平歯車と係合する第2の平歯車を有する第3の下軸と、
    該第3の下軸に取り付けられる第3の平歯車と係合する第4の平歯車を有する第4の下軸と、
    前記第4の平歯車に係合する第5の平歯車を有すると共に、ミシン機枠に対してx軸方向移動可能で、下糸用の釜を先端に固定されると共に針板とx軸方向に一体的に移動可能に係合された第5の下軸とを備え、
    前記第1の二股ロッドとリンク機構を介して連係され、前記第4,第5の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のx軸方向移動に対して前記第5の下軸を同じ量だけ同じ方向に移動させる針板・釜移動機構と、
    前記第2の二股ロッドとリンク機構を介して連係され、前記第3,第4のネジ歯車及び前記第1,第2の平歯車の係合状態を保ったままで、前記針棒支持体のy軸方向の移動量に応じて前記第2の下軸をx軸方向に移動させる釜の不等速回転機構と、
    前記針板に形成され、y軸方向に伸びる長孔からなる針孔と
    を備えている刺繍ミシン。
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