JP3961053B2 - 新規なリン酸化多糖類、その製造法及び用途 - Google Patents

新規なリン酸化多糖類、その製造法及び用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なリン酸化多糖類に関する。また、本発明は、この新規なリン酸化多糖類を製造する方法及びその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アイスクリーム、マーガリン、スプレッド類、デザート類、ドレッシング類、マヨネーズ類、ソース類等、数多くの乳化食品において、グアーガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、ペクチン、アルギン酸等の植物性多糖類が安定剤として使用されている。また、ドリンクヨーグルトやフローズンヨーグルト等においても、これらの植物性多糖類が安定剤として使用されている。ところが、乳化安定剤や安定剤として広く使用されている植物性多糖類は、供給量の変動やそれに伴う価格の不安定化、あるいは煩雑な製造工程や副産物の処理等の問題がある。
また、近年、微生物由来の多糖類の開発が進み、既にデキストラン、キサンタンガム、プルラン、カードラン等の多糖類が食品の乳化安定剤や安定剤として使用されているが、液状食品の安定化に有効な相互作用の強い多糖類の開発は進んでいない。
【0003】
一方、酪農乳酸菌のストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis) もしくはラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis) 、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris) もしくはラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris) 等の一部の菌株により生産されるリン酸化多糖類について報告がなされている (特開平3-229702号公報、Nakajima et al., Carbohydr. Res., vol.224, pp.245-253, 1992)。そして、本発明者らは、このリン酸化多糖類がたんぱく質とのイオン性相互作用を示すことを見出し、リン酸化多糖類を有効成分とする乳化安定剤及び安定剤を提案した (特願平7- 54978号、特願平7-175431号) 。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、さらに、種々の食品の安定剤として有効な物質を得ることを目的としてリン酸化多糖類の改変を試みたところ、酸性条件下でリン酸化多糖類を加熱して加水分解することにより、リン酸基のジエステル結合を介してリン酸化多糖類に結合している側鎖のガラクトースのみを遊離することができることを見出した。そして、この側鎖のガラクトースが欠如したリン酸化多糖類が、側鎖のガラクトースを有するリン酸化多糖類よりもたんぱく質とのイオン性相互作用の点で優れ、前記のような多糖類と同様に安定剤として用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、側鎖のガラクトースが欠如した新規なリン酸化多糖類を提供することを課題とする。また、本発明は、側鎖のガラクトースが欠如した新規なリン酸化多糖類の製造法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、側鎖のガラクトースが欠如した新規なリン酸化多糖類を有効成分とする安定剤を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の新規なリン酸化多糖類は、次の構造式(I)で示される。
【化3】
Figure 0003961053
(但し、式中Glcはグルコース残基を、Galはガラクトース残基を、Rhaはラムノース残基をそれぞれ示す。また、式中の数値はそれぞれの結合部位を、nは繰り返し単位をそれぞれ示す。)
【0006】
そして、本発明の新規なリン酸化多糖類は、次の構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類を酸性条件下で加熱して加水分解することにより得ることができる。
【化4】
Figure 0003961053
(但し、式中Glcはグルコース残基を、Galはガラクトース残基を、Rhaはラムノース残基をそれぞれ示す。また、式中の数値はそれぞれの結合部位を、nは繰り返し単位をそれぞれ示す。)
【0007】
以下、本発明の新規なリン酸化多糖類を製造する方法について説明する。
まず、莢膜性粘性物を産生する性質を有する乳酸菌ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis) もしくはラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis) 、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris) もしくはラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris) を培養した後、遠心分離等の処理により菌体を除去して得られる上清にエチルアルコール等の溶媒を添加し、構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類を沈澱として回収する。なお、莢膜性粘性物を産生する性質を有する乳酸菌としては、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis) SBT 1209 (FERM P-8308)やストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris) SBT 0495 (FERM P-10053) 等を例示することができる。また、乳酸菌を培養するに際しては、乳成分含有培地、合成培地、半合成培地等、乳酸菌の増殖が良好であり、かつリン酸化多糖類の生産が良好な培地を使用することが好ましく、静置培養又は定pH培養を行うことが好ましい。
【0008】
次に、この構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類を酸性条件下で加熱して加水分解する。例えば、このリン酸化多糖類を水に溶解した後、食品用の酸として使用されている塩酸、酢酸、クエン酸、炭酸、乳酸等を最終濃度が約0.5 〜2mM となるよう添加し、80〜100 ℃で5〜20分間加熱する。
反応終了後、食品用のアルカリとして使用されている水酸化ナトリウム等を添加して中和する。そして、必要に応じて加水分解により遊離したガラクトースや中和により生じた塩類等を限外濾過や透析等の処理で除去した後、濃縮、乾燥して本発明の新規なリン酸化多糖類を得ることができる。
【0009】
なお、本発明のリン酸化多糖類を製造するに際し、構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類を酸性条件下で加熱して加水分解して、側鎖のガラクトースのみを遊離させるためには、以下の点を考慮する必要がある。すなわち、構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類のリン酸基は、側鎖のガラクトースの1位炭素とエステル結合を形成すると共に主鎖のガラクトースの3位炭素とエステル結合を形成している。そして、この2つのエステル結合の酸に対する安定性を比較した場合、主鎖のガラクトースの3位炭素とのエステル結合の方が側鎖のガラクトースの1位炭素とのエステル結合よりも安定である。したがって、低濃度の適当な酸性条件下で加熱することにより、主鎖のガラクトースの3位炭素とのエステル結合を維持してリン酸基を保持した状態で側鎖のガラクトースの1位炭素とのエステル結合のみを切断し、側鎖のガラクトースのみを遊離することができる。
【0010】
以下に、構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類から本発明のリン酸化多糖類を製造する際の加水分解条件を検討した結果を示す。
【参考例1】
乳糖濃度を 5.0%としたOttoら (FEMS Microbiol. Lett., vol.16, pp.69-74, 1990)の完全合成培地4Lに、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-10053) を接種し、3.0N水酸化カリウムを自動滴定することにより培養液のpHを 6.3に維持する定pH培養を行った。約50時間培養した後、回収した培養液を遠心分離 (50,000×g 、60分間) して菌体を完全に除去した上清に最終濃度60%となるようエタノールを混合し、遠心分離(4,000×g 、10分間) することにより沈澱を回収して、構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類4.5gを得た。なお、このようにして得られたリン酸化多糖類については、糖組成分析、リン酸含量分析、メチル化分析及び核磁気共鳴分析により、構造式 (II) で示される物質であることを確認した(Nakajima et al., Carbohydr. Res., vol.224, pp.245-253, 1992参照) 。
【0011】
【試験例1】
参考例1で得られた構造式 (II) で示される公知のリン酸化多糖類を水に溶解して 1.0重量%溶液とし、塩酸濃度を1mM、 3.2mM、10mM及び32mM、加熱温度を60℃、80℃、 100℃及び 120℃、加熱時間を2分、6分、10分及び14分とし、これらの3因子の組み合わせ実験を行った。なお、加水分解終了後、反応液を直ちに冷却して水酸化ナトリウムで中和し、凍結乾燥した。そして、得られた粉末を再び水に溶解し、以下に示した方法で溶液中の遊離ガラクトース濃度と分子量変化を測定した。
【0012】
(1)遊離ガラクトース濃度の測定
加水分解により遊離したガラクトースの濃度は、糖分析用カラムION-300 (300× 7.8mm、Interaction Chromatography Inc.)を用いた液体クロマトグラフィーにより測定した。すなわち、5mM硫酸を溶出液として、流速 0.4ml/minで溶出されたガラクトースを示差屈折計で検出し、標準溶液を用いて作成した検量線から溶液中の遊離ガラクトース濃度を算出した。なお、構造式(II)で示される公知のリン酸化多糖類は、2分子のガラクトースを含むことから、別途、リン酸化多糖類をトリフルオロ酢酸により完全に加水分解して得られる遊離ガラクトース濃度を2分子と見なし、先に算出した遊離ガラクトース濃度を分子数で換算した。
【0013】
(2)分子量変化の測定
加水分解後のリン酸化多糖類の分子量変化は、アサヒパックGS-710(500× 7.5mm、旭化成工業) によるサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。すなわち、0.2M塩化ナトリウムを溶出液として、流速 0.5ml/minで溶出されたリン酸化多糖類のピークを示差屈折計で検出し、加水分解後のピークの減少率で主鎖のグリコシド結合の分解により分子量が変化したリン酸化多糖類の割合を算出した。
【0014】
図1にリン酸化多糖類から遊離したガラクトースの濃度を、また、図2にリン酸化多糖類の分子量変化をそれぞれ示す。
図1において、図中の曲線の数字は多糖類を構成する繰り返し単位であるオリゴ糖1単位当たりから遊離したガラクトースの分子数を示すことから、遊離したガラクトースが1分子以上である加水分解条件では、側鎖のガラクトースのみならず主鎖のガラクトースをも遊離することが判る。したがって、ガラクトースを1分子以上遊離する加水分解条件は望ましくない。また、遊離するガラクトースが1分子に満たないような加水分解条件では、側鎖のガラクトースの遊離が不完全となり、本発明のリン酸化多糖類の生成量が低下する原因となる。
【0015】
一方、図2において、図中の曲線の数字は加水分解により分子量が減少したリン酸化多糖類の割合を示すことから、塩酸濃度が1mMで約0〜80%、 3.2mMで約30〜90%、10mMで約50〜90%、32mMで約85〜95%のリン酸化多糖類が分解して分子量が減少したことが判る。仮に、側鎖のガラクトースが 100%遊離したとすると、構造式(II)で示される公知のリン酸化多糖類の分子量は理論的には約18%減少する。したがって、分子量が減少したリン酸化多糖類の割合が20%以下となるような条件で加水分解を行えば良い。
以上の結果から、構造式(II)で示される公知のリン酸化多糖類から本発明のリン酸化多糖類を製造するに際しての加水分解条件は、塩酸濃度が1mM、加熱温度が90〜 100℃及び加熱時間が6〜14分間であることが望ましいといえる。
【0016】
次に、本発明のリン酸化多糖類の利用性について検討した結果を説明する。
本発明のリン酸化多糖類は、構造式(II)で示される公知のリン酸化多糖類よりも負の電荷が増加することから、たんぱく質との親和性が高いという特徴を有する。通常、酸性条件下ではたんぱく質は不安定となるので、特に、たんぱく質を含有する酸性もしくは弱酸性の食品において、その安定性を向上させるために添加する安定剤の性質としてはたんぱく質との親和性が重要であるといえる。そこで、本発明のリン酸化多糖類の安定剤としての適性について検討した結果を示す。
【0017】
【試験例2】
本発明のリン酸化多糖類、参考例1で得られた公知のリン酸化多糖類、グアーガム、キサンタンガム及びローカストビーンガムの安定剤としての適性を確認する目的で、下記の試験により、溶液の粘度及びたんぱく質との親和性を調べた。なお、本発明のリン酸化多糖類としては、参考例1で得られた公知のリン酸化多糖類を塩酸濃度が1mMの溶液中で95℃、10分間加熱することにより加水分解した後、直ちに水酸化ナトリウムで中和し、限外濾過して回収したリン酸化多糖類を凍結乾燥したものを使用した。
【0018】
(1)溶液の粘度測定
円筒型センサーを取り付けた回転粘度計を用い、剪断速度100sec-1で各多糖類1%溶液の20℃における粘度を測定した。その結果を表1に示す。
本発明のリン酸化多糖類は、参考例1で得られた公知のリン酸化多糖類とほぼ同等の粘度を有しており、他の多糖類よりも高い粘度を有することから、安定剤としての適性を十分有することが判った。
【0019】
【表1】
Figure 0003961053
【0020】
(2)たんぱく質との親和性の測定
脱脂乳を原料として撹拌型発酵乳を製造し、表1の各多糖類を添加して穏やかに撹拌しながら5℃で放置した。なお、各多糖類の添加濃度は、本発明のリン酸化多糖類を0.10重量%添加した場合の粘度と同じ粘度になるよう、参考例1で得られた公知のリン酸化多糖類0.10重量%、グアーガム0.15重量%、キサンタンガム0.20重量%、ローカストビーンガム0.10重量%とした。1時間放置後、多糖類無添加の発酵乳も含め各発酵乳を遠心分離(500×g 、10分間) して強制的にホエーを分離し、その体積が発酵乳の総体積に占める割合を算出した。その結果を表2に示す。
【0021】
なお、発酵乳におけるホエーの分離は、酸性下で不安定となった乳たんぱく質カゼインが凝集するために発生するものであり、添加する多糖類のたんぱく質との親和性が高いほど、カゼインの凝集を抑制してホエーの分離を抑えることができる。本試験では、多糖類添加後の粘度が等しくなるよう調整しており、粘度によるホエー分離の抑制効果はいずれの多糖類も同様である。したがって、本試験におけるホエー分離の程度の差は、各多糖類のたんぱく質との親和性の大きさによるものと考えられる。
本発明のリン酸化多糖類は、他の多糖類よりも高いホエー分離の抑制効果を有することから、安定剤としての適性を十分に有するといえる。
これらの結果から、本発明のリン酸化多糖類は、乳製品、加工肉製品、飲料、デザート類等、種々の食品の安定剤として有用である。
【0022】
【表2】
Figure 0003961053
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明のリン酸化多糖類は、次の構造式(I)で示される構造を有しており、新規なリン酸化多糖類である。
【化5】
Figure 0003961053
(但し、式中Glcはグルコース残基を、Galはガラクトース残基を、Rhaはラムノース残基をそれぞれ示す。また、式中の数値はそれぞれの結合部位を、nは繰り返し単位をそれぞれ示す。)
【0024】
本発明のリン酸化多糖類は、次の構造式(II)で示される公知のリン酸化多糖類を酸性条件下で加熱して加水分解し、側鎖のガラクトースを遊離することにより得ることができる。
【化6】
Figure 0003961053
(但し、式中Glcはグルコース残基を、Galはガラクトース残基を、Rhaはラムノース残基をそれぞれ示す。また、式中の数値はそれぞれの結合部位を、nは繰り返し単位をそれぞれ示す。)
構造式(II)で示される公知のリン酸化多糖類の好ましい加水分解条件は、塩酸濃度が1mM、加熱温度が90〜100 ℃及び加熱時間が6〜14分間である。
なお、構造式(I)及び(II) のnは、前記のように繰り返し単位を示すものであるが、通常は1,000 〜5,000 の整数である。
【0025】
本発明の新規なリン酸化多糖類は、溶液形態や粉末形態で安定剤の有効成分として利用することができる。また、粉末形態の安定剤を調製するに際しては、乳糖等の賦形剤を配合しても良い。そして、本発明の新規なリン酸化多糖類を有効成分とする安定剤は、ヨーグルトやソフトタイプチーズ等の発酵乳製品、あるいはプロセスチーズや乳飲料等の非発酵乳製品、さらには一般食品の安定剤として使用することができる。
【0026】
次に実施例を示し、本発明を詳しく説明する。
【実施例1】
参考例1で得られたリン酸化多糖類4.0gを塩酸濃度1mM溶液 1.0L 中で加熱温度95℃で10分間加水分解した。そして、直ちに水酸化ナトリウムで中和し、限外濾過膜処理し、その濃縮液を凍結乾燥して本発明のリン酸化多糖類粉末3.6gを得た。なお、このようにして得られたリン酸化多糖類については、糖組成分析、リン酸含量分析、メチル化分析及び核磁気共鳴分析により、構造式 (I) で示される物質であることを確認した。
【0027】
【実施例2】
7%還元チーズホエーに1%カゼイン加水分解物(N-Z-CASE PLUS、Sheffield Products社) を添加した培地100Lに、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-10053)を接種し、3.0N水酸化カリウムを自動滴定することにより培養液のpHを 6.3に維持する定pH培養を行った。約40時間培養した後、遠心分離機 (バクトヒュージ) で培養液中の菌体を完全に除去した上清に最終濃度60%となるようエタノールを混合し、沈澱したリン酸化多糖類108gを回収した。
【0028】
次に、このリン酸化多糖類100gを塩酸濃度1mM溶液20L 中で加熱温度95℃で10分間加水分解処理した。そして、直ちに水酸化ナトリウムで中和し、真空濃縮機で濃縮することにより、本発明のリン酸化多糖類濃縮液3.6Lを得た。そして、この濃縮液に最終濃度60%となるようエタノールを混合し、沈澱したリン酸化多糖類 90gを得た。なお、このようにして得られたリン酸化多糖類については、糖組成分析、リン酸含量分析、メチル化分析及び核磁気共鳴分析により、構造式 (I) で示される物質であることを確認した。
【0029】
実施例1及び2で得られたリン酸化多糖類の糖組成分析結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
Figure 0003961053
【0031】
【実施例3】
実施例2で得られた本発明のリン酸化多糖類濃縮液1Lに乳糖100gを配合し、顆粒状に成形して安定剤を製造した。
【0032】
【実施例4】
7%還元チーズホエーに1%カゼイン加水分解物(N-Z-CASE PLUS、Sheffield Products社) を添加した培地 10Lに、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-10053) を接種し、18℃で30時間培養した。この時点で、培養液のpHは 4.0であり、培養液中には50mMの乳酸が含まれていた。
次に、この培養液を 110℃で10分間加熱して培養液中のリン酸化多糖類を加水分解した後、遠心分離機 (バクトヒュージ) で凝集したたんぱく質や菌体を完全に除去し、噴霧乾燥して本発明のリン酸化多糖類含有粉末400gを得た。
【0033】
【実施例5】
ドリンクヨーグルトを製造するに際し、通常使用されるカラギーナンまたはペクチンに代えて、実施例1で得られた本発明のリン酸化多糖類 (純度約95%以上) の粉末 0.1重量%を配合してドリンクヨーグルトを製造した。
【0034】
【実施例6】
プレスハムを製造するに際し、通常使用されるアルギン酸ナトリウムまたはローカストビーンガムに代えて、実施例1で得られた本発明のリン酸化多糖類 (純度約95%以上) の粉末 0.3重量%を配合してプレスハムを製造した。
【0035】
【発明の効果】
本発明の新規なリン酸化多糖類は、既存の多糖類よりも粘度が高く、たんぱく質との親和性も高いので、ヨーグルト、ソフトタイプチーズ等の醗酵乳製品、プロセスチーズ、乳飲料等の非醗酵乳製品などの安定剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1におけるリン酸化多糖類から遊離したガラクトースの分子数を示す。
【図2】試験例1におけるリン酸化多糖類の分子量変化の割合を示す。

Claims (4)

  1. 次の構造式(I) で示されるリン酸化多糖類。
    Figure 0003961053
    (但し、式中Glcはグルコース残基を、Galはガラクトース残基を、Rhaはラムノース残基をそれぞれ示す。また、式中の数値はそれぞれの結合部位を、nは繰り返し単位をそれぞれ示す。)
  2. 次の構造式(II)で示されるリン酸化多糖類を酸性条件下で加熱して加水分解し、側鎖のガラクトースを遊離せしめて構造式(I) で示されるリン酸化多糖類を生成せしめ、これを採取することを特徴とする構造式(I) で示されるリン酸化多糖類の製造法。
    Figure 0003961053
    (但し、式中Glcはグルコース残基を、Galはガラクトース残基を、Rhaはラムノース残基をそれぞれ示す。また、式中の数値はそれぞれの結合部位を、nは繰り返し単位をそれぞれ示す。)
  3. 酸性条件での加熱を最終濃度が約 0.5〜2mM となるように酸を添加した酸性条件下で80〜100 ℃で加熱する請求項2記載の製造法。
  4. 構造式(I) で示されるリン酸化多糖類を有効成分とする食品用安定剤。
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