JP3960427B2 - 多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定方法及びその装置 - Google Patents

多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多波長レーザ光源を用いて被測定物体の多層膜の表面形状と膜厚分布を高精度に同時測定する計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の膜厚測定方法は2つの方法がある。1つは、単色光を被測定物体に入射角度を変化させながら照射し、被測定物体からの反射光の強度変化を測定することから膜厚を求める方法である。この方法では、測定点は1つの点である。他の方法は、被測定物体に照射する光の波長を変化させながら、被測定物体からの反射光の強度変化を測定することから膜厚を求める方法である。この方法では、測定点を線上にすることができるが、面測定を行う場合には、線上の測定点を走査する必要がある。また、これら従来の2つの方法は、膜厚分布を求めることはできるが、膜の表面形状を求めることはできない。
非特許文献;(1)佐々木,位相変調干渉法による表面形状計測,
光技術コンタクト,Vol 37.No8(1999)p556〜p564
(2)佐々木,鈴木,正弦波変調干渉法におけるフィードバック
干渉計,光技術コンタクト,Vol 39.No8(2001)p501〜p509
引用例;特開2002-107283
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
測定点の走査を行うことなしに、2次元の膜厚分布及び膜の表面形状を数ナノメータの精度で測定する装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目標を達成するために、本願請求項1に係る多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定方法は、波長が変化する光を発生する光源と、前記光源からの光を分離して被測定物体の複数の反射面及び参照面で反射させた後、合成して干渉させる干渉光学系と、前記参照面を正弦波振動させる正弦波振動手段と、前記干渉光学系によって得られる干渉光を電気的な干渉信号に変換する光電変換手段と、前記干渉信号に基づいて該干渉信号の振幅と位相を求める手段と、多くの波長について求めた前記の振幅及び位相に基づいて前記被測定物体の反射面上付近の多波長逆伝搬光場を求める演算手段と、前記被測定物体の反射面付近の多波長逆伝搬光場の強度分布と位相分布から複数の反射面の位置を決定する演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0005】
本願請求項2に示すように等間隔で波長が変化する光を発生する光源と、前記光源からの光を分離して被測定物体の複数の反射面及び参照面で反射させた後、各反射光をレンズとピンホールを用いて結像し、合成して干渉させる干渉光学系を備えたことを特徴としている。
本願請求項3に示すように前記参照面を正弦波振動させる正弦波振動手段と、前記干渉光学系によって得られる干渉光を電気的な干渉信号に変換する光電変換手段を備えたことを特徴としている。
【0006】
本願請求項4に示すように前記干渉信号に基づいて該干渉信号の振幅と位相を求める演算手段と、前記求めた振幅及び位相から求められる光場を前記被測定物体の反射面付近に逆伝搬させることによって被測定物体の反射面付近の逆伝搬光場を求める演算手段を備えたことを特徴としている。
本願請求項5に示すように多くの波長について求められた被測定物体の反射面付近の逆伝搬光場の総和から求められる前記被測定物体の反射面付近の再生光場の強度分布から複数の反射面のおおまかな位置を求め、再生光場の位相分布から複数の反射面の正確な位置を求める演算手段を備えたことを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定方法及びそのための装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0008】
図1は本発明に係る多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定のための装置の実施の形態を示す概略図である。同図に示すように、この装置は、多波長レーザ光源(MWL)10と、ビームスプリッタ20と、ミラー22と、結像レンズ24と、ピンホール25と、2次元CCDイメージセンサ30と、A/D変換器31と、パソコン32から構成されている。尚、23はミラー22を正弦波振動させる圧電素子であり、21は被測定物体である。
【0009】
多波長レーザ光源(MWL)10は、一定の波長間隔で、多くの波長のレーザ光を時系列的に発生するものである。この多波長レーザ光源10からの平行光は、ビームスプリッタ20で2分され、分割された一方の光は被測定物体21の複数の反射面に入射し、ここで反射され、分割された他方の光はミラー22の反射面(参照面)に入射し、ここで反射される。被測定物体21の複数の反射面で反射された光と、ミラー22の反射面で反射された光は、ビームスプリッタ20で合成される。レンズ24によって、CCDイメージセンサ30の検出面上に被測定物体21の複数の反射面の像が形成される。このとき、レンズ24の焦点面上におかれたピンホール25によって、被測定物体21の複数の反射面で反射された光の中で、反射面にほぼ垂直な方向に反射された光だけが選択され、CCDイメージセンサ30の検出面上で、ミラー22の反射面で反射された光と干渉する。この干渉による強度分布はCCDイメージセンサ30で電気的な干渉信号に変換される。この干渉信号は、A/D変換器31によってデジタル信号に変換されたのち、パソコン32に取り込まれ、ここで、被測定物体21の複数の反射面の表面形状と膜厚分布を求めるための演算処理が行われる。
【0010】
いま、多波長レーザ光源10の波長を波長λ0から△λの間隔で(M-1)△λだけ増加させる。mを零からM-1までの整数とすると、各波長λmは次式で表現される。
λm=λ0+m△λ、m=0〜M-1 (1)
被測定物体21が2つの反射面A、Bを持ち、それぞれの面の反射率をa1、a2、光路差をL1、L2とし、ミラー22を圧電素子23によって振幅a、各周波数ωcで正弦波状に振動させると、多波長λmに対する各干渉信号S(t,m)は次式で表現される。
S(t , m) = a1 cos( Zcosωct+α1m) +a2 cos(Zcosωct+α2m)
=Amcos(Zcosωct+Φm) (2)
但し、Z=4πa/λ0、α1m=2πL1/λ0、α2m=2πL2/λ0 (3)
さて、この時間的に変化する干渉信号は、CCDイメージセンサ30のフレームレート及びシャッター時間をミラー22の正弦波振動と同期させることによって、CCDイメージセンサ30の出力から得ることができる。A/D変換器31によってパソコン32に取り込まれる式(2)の干渉信号から、正弦波位相変調干渉法に基づく演算処理によって振幅Amと位相Φmを求める。そして、被測定物体1の複数の反射面で反射された光によってCCDイメージセンサ検出面上に形成される検出光場D(m)を次式で求める。
D(m) =Amexp(jΦm) (4)
この検出光場D(m)を、光路差Lである被測定物体21の反射面付近に逆伝搬させることによって生じる光場U(m)を次式で求める。
U(m)= D(m)exp(-j2πL/λm) (5)
次に、式(5)の逆伝搬させた光場U(m)をすべての波長について足し合わせ、光路差Lにおける再生光場UR(L)を次式で求める。
【0011】
3次元構造をもつ被測定物体21の奥行き方向は光路差Lで表現され、奥行き方向に垂直な平面は(X, Y)座標で示される。図2に、X=400μmの平面Y-Lにおいて実際に得られた再生光場強度IRの分布を濃淡表示で示す。被測定物体21はビニールシートである。図2の濃淡表示において白い部分は再生光場強度IRの値は大きく、被測定物体21の反射面が存在することを示している。図3に、図2のY=400μmの線上における再生光場強度IRを光路差Lに対して示す。被測定物体21の2つの反射面A、Bの位置を示す光路差L1とL2はそれぞれ、約220μm及び530μmであることが分かる。図3に示されているように、反射面Aの存在により、再生光場強度IRは反射面Aの位置で極大値を持ち、反射面Aの位置から離れるに従って値は小さくなるが、他の反射面Bの位置において、反射面Aの存在によって生じる再生光場強度IRがほぼ零とみなせる値になる場合には、他の反射面Bの位置においても再生光場強度IRは極大値を持つ。このように2つの反射面の位置を測定できるためには、2つの反射面A、Bの光路差L1、L2の差はLS=λ0 /Bλ以上であることが必要である。但し、Bλは多波長レーザ光源11の波長走査幅であり、Bλ=M△λとなる。図3では、λ0=787nm、Bλ=6nmであり、LS=103μmとなる。2つの反射面A、Bの光路差L1、L2の差がLS=λ0 /Bλ以上である場合、再生光場の位相ΦRは反射面の位置で零あるいはπとなる。図4に、光路差L1とL2付近の再生光場の位相ΦRを光路差Lに対して5nm間隔で求めた結果を示す。被測定物体21の表面の反射面Aでは位相ΦRは零となり、裏面の反射面Bでは位相ΦRはπとなることから、光路差L1とL2を数nmの精度で正確に求めることができ、光路差L1とL2はそれぞれ、223.115μm及び530.035μmであることが分かる。
【0012】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、再生光場の位相?Rを反射面の付近で正確に求めることにより、反射面の位置を数nmの精度で求めることができる。また、2次元CCDイメージセンサを用い、干渉信号を2次元平面で検出しているため、反射面の位置を2次元平面で求めることができる。すなわち、複数の反射面の2次元表面形状と膜厚分布を同時に測定することができる。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複数の反射面の2次元表面形状および膜厚分布を測定するための装置の実施の形態を示す概略図である。
【図2】図2は測定物体21がビニールシートである場合に実際に得られたX=400μmの平面Y-Lにおける再生光場強度IRの濃淡表示図である。
【図3】図3は図2のY=400μmの線上における光路差Lに対する再生光場強度IRを示す図である。
【図4】図4は光路差L1とL2付近において5nm間隔の光路差Lに対する再生光場の位相ΦRを示す図である。
【符号の説明】
10…多波長レーザ光源(MWL)
20…ビームスプリッタ
21…被測定物体
22…ミラー
23…圧電素子
24…結像レンズ
30…2次元CCDイメージセンサ
31…A/D変換器
32…パソコン

Claims (2)

  1. 波長が変化する光を発生する光源と、前記光源からの光を分離して被測定物体の複数の反射面及び参照面で反射させた後、合成して干渉させる干渉光学系と、前記参照面を正弦波振動させる正弦波振動手段と、前記干渉光学系によって得られる干渉光を電気的な干渉信号に変換する光電変換手段と、前記干渉信号に基づいて該干渉信号の振幅と位相を求める手段と、多くの波長について求めた前記の振幅及び位相に基づいて前記被測定物体の反射面上付近の多波長逆伝搬光場を求める演算手段と、前記被測定物体の反射面付近の多波長逆伝搬光場の強度分布と位相分布から複数の反射面の位置を決定する演算手段と、を備えることにより複数の反射面の位置を求める、多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定装置。
  2. 請求項1に記載の多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定装置において、請求項1に記載の干渉信号に基づいて該干渉信号の振幅と位相を求め、前記振幅及び位相から求められる光場を被測定物体の反射面付近に逆伝搬させることによって逆伝搬光場を求め、さらに多くの波長についての前記逆伝搬光場の総和から求められる前記被測定物体の反射面付近の再生光場の強度分布から複数の反射面のおおまかな位置を求め、再生光場の位相分布から複数の反射面の正確な位置を求める演算手段を備えたことを特徴とする多層膜の表面形状と膜厚分布の同時測定装置。
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